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特許拒絶査定不服審判

2022-006845

機械の設計方法

審判番号
2022-006845
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-125996外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月09日
審決日
2023年02月14日
公報発行日
2023年03月31日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (B60L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-125996「機械の設計方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月17日出願公開、特開2019-9953、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 6項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成29年6月28日の出願であって、令和2年9月25日付け(発送日:同年10月6日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年2月1日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年7月26日付け(発送日:同年8月3日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年9月26日に意見書が提出されたが、令和4年2月14日付け(発送日:同年2月15日)で拒絶査定がされた。これに対し、令和4年5月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について

1 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1-6に係る発明(以下「本願発明1-6」という。)は、令和3年2月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
コンピュータによって実行される、駆動モータと、前記駆動モータを駆動するための電流を発電する燃料電池スタックと、前記駆動モータを駆動するための電流を放電する二次電池とを備えるパワーユニットを1つ以上搭載する車両を設計する方法であって、
前記車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの搭載数n(nは自然数)の最小値を決定し、
前記車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池スタックが出力可能な最高出力に前記nを乗じた値を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定する、
続きを表示(全25行)
車両の設計方法。
【請求項2】
前記第3出力値は、前記巡航走行において、前記二次電池のSOCが維持可能なように予め決定されている
請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
前記車両は、前記燃料電池スタックと電気的に接続され、前記燃料電池スタックの発電電圧を制御する燃料電池用コンバータと、
前記燃料電池スタックに供給するための水素を貯蔵する水素タンクと、前記燃料電池スタックによる発電のための補機類とを搭載し、
前記nが2以上の場合、前記燃料電池用コンバータ、前記水素タンクおよび前記補機類の搭載数を、前記燃料電池用コンバータと、前記水素タンクと、前記補機類との少なくとも何れかが、前記nとなるように決定する
請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の設計方法。
【請求項4】
前記nが2以上の場合、前記自動車は、貨物自動車である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の設計方法。
【請求項5】
前記自動車が貨物自動車である場合、前記nは2以上である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の設計方法。
【請求項6】
燃料電池車両の製造方法であって、
前記燃料電池車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの搭載数をn(nは自然数)の最小値を決定し、決定された搭載数の燃料電池スタックを含む燃料電池モジュールを製造し、
前記燃料電池車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池スタックが出力可能な最高出力に前記nを乗じた値を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定し、決定された最高出力の二次電池を製造し、
製造された前記燃料電池モジュールおよび前記二次電池を前記燃料電池車両に搭載する、
製造方法。」

2 拒絶査定の理由

拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献については引用文献一覧参照)

・請求項 1-6

・引用文献 1-3

<引用文献一覧>

1.特開2002-118979号公報

2.特開2016-147519号公報

3.特開2000-73779号公報

3 当審の判断

(1)本願発明1について

ア 引用文献1

引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(ア)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記構成については、電力の出力効率の更なる改善が望まれていた。本発明は、燃料電池と充放電可能な蓄電器とを併用する直流電源の出力効率を更に向上する技術を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では、燃料電池と充放電可能な蓄電器とを並列接続した直流電源において、燃料電池および蓄電器の最大出力を、次の条件で設定した。」

(イ)「【0007】第2の構成として、燃料電池の最大出力を、端子から所定期間継続的に出力する電力目標値以上とした。こうすれば、電力目標値に相当する電力を、運転効率の高い燃料電池から継続的に出力可能となり、エネルギ効率を向上することができる。本発明の直流電源をモータ駆動車両に適用する場合には、上記電力目標値は、例えば、車両の巡行性能に基づいて設定することができる。燃料電池の最大出力は、直流電源に要求される電力との出力比で考慮してもよい。」

(ウ)「【0009】上述した第1~第3の構成で考慮される条件を、適宜組み合わせて燃料電池、蓄電器の出力を設定してもよい。全ての条件を考慮して設定することが最も好ましい。
【0010】第1~第3の構成においては、それぞれ燃料電池と蓄電器の最大総出力が、前記出力端子に要求される最大要求電力以上となることが望ましい。こうすれば、電源に接続された負荷装置の能力を十分に活用可能な電力を供給することが可能となる。最大総出力と最大要求電力とを一致させれば、電源の能力も十分に活用でき、エネルギ効率、スペース効率を最適化することができる。」

(エ)「【0013】本発明は、直流電源としての構成の他、該電源を利用した種々の装置、例えばモータ駆動する車両として構成することも可能である。また、第1~第3の構成で列挙した条件を満たすように、燃料電池および蓄電器の出力を設定する工程を備える直流電源の設計方法として構成してもよい。」

(オ)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、ハイブリッド車両に適用した実施例を、以下の項目に分けて説明する。A.装置の構成:B.電力制御処理:C.出力比の設定:D.効果:
【0015】A.装置の構成:図1は実施例としての電源システムを搭載した車両の構成を示す説明図である。この車両は、車輪63L,63Rに連結された同期モータ61を駆動力源として走行する。同期モータ61の電源は、電源システム1である。電源システム1から出力される直流は、インバータ60で三相交流に変換され同期モータ61に供給される。同期モータ61は、制動時に発電機として機能することもできる。
【0016】電源システム1は、燃料電池40、バッテリ20、DC-DCコンバータ等から構成される。燃料電池40は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する装置である。本実施例では、固体高分子型の燃料電池を用いた。これに限らず、燃料電池40には、燐酸型、溶融炭酸塩型など種々のタイプの燃料電池を適用可能である。発電に利用される水素ガスは、アルコール等の原料を改質して生成される。本実施例では、発電を行うスタック、燃料ガスを生成する改質器等を含めて燃料電池40と称する。なお、改質器に代えて、水素吸蔵合金、水素ボンベなどを利用して水素ガス自体を貯蔵する構成を採ることも可能である。
【0017】バッテリ20は、充放電可能な二次電池である。本実施例では、ニッケル水素バッテリを用いるものとした。その他、種々のタイプの二次電池を適用可能である。また、バッテリ20に代えて、二次電池以外の充放電可能な蓄電器、例えばキャパシタを用いても良い。
【0018】燃料電池40とバッテリ20とはインバータ60に並列接続されている。燃料電池40からインバータ60への回路には、バッテリ20からの電流または同期モータ61で発電された電流が逆流するのを防止するためのダイオード42が設けられている。並列に接続された電源の電力を適切に使い分けるためには、両者の相対的な電圧差を制御する必要がある。本実施例では、この目的から、バッテリ20とインバータ60との間にDC-DCコンバータ30が設けられている。DC-DCコンバータ30は直流の電圧変換器である。DC-DCコンバータ30は、バッテリ20から入力されたDC電圧を調整してインバータ60側に出力する機能、燃料電池40またはモータ61から入力されたDC電圧を調整してバッテリ20に出力する機能を奏する。DC-DCコンバータ30の機能により、バッテリ20の充放電が実現される。」
(カ)「【0033】C.出力比の設定:上述の電力制御で説明した通り、本実施例では、燃料電池40を主電源として使用し、バッテリ20は燃料電池40の応答遅れを補償する補助的な電源として使用する。かかる前提下での車両のエネルギ効率は、燃料電池40とバッテリ20の出力比によって変動する。本実施例では、高いエネルギ効率を実現するため、システム設計時に、次に示す手順で出力比を設定した。
【0034】図4は燃料電池とバッテリの出力比の設定方法を示す工程図である。まず、車両に搭載されるモータの最大出力を設定する(ステップS20)。車両の重量、目標とする最大車速、加速度などに基づいて設定することができる。次に、こうして設定された最大出力をモータの運転効率で除することにより、最大要求電力を設定する(ステップS22)。モータの出力に併せて、補機での消費電力を考慮してもよい。モータの能力を十分に活用するためには、燃料電池40およびバッテリ20の最大出力合計値は、この最大要求電力以上である必要がある。
【0035】一方、燃料電池40とバッテリ20の出力比の下限値、上限値を車両の走行状態を代表する所定の基準に基づいて設定する。出力比とは、「燃料電池の最大出力/バッテリの最大出力」を意味する。例えば、下限値は連続巡行性能に基づき設定することができる(ステップS24)。一例として、車両重量2000kg、モータ効率80%の車両を考える。4.5%勾配、120km/時での連続巡行性能を目標値として設定すると、要求電力は約65kWと算出される。仮に最大要求電力が100kWであったとすれば、連続巡行の要求電力を燃料電池40で出力するために必要となる出力比は0.65以上と設定される。
【0036】出力比の上限値は、バッテリの回生能力に基づいて定めることができる(ステップS26)。車両のエネルギ効率を十分に高めるためには、制動時にモータ61で回生された電力をバッテリ20に充電することが望ましい。回生電力を充電できない程、バッテリ20の容量が小さい場合には、エネルギ効率の低下を招くことになる。例えば、車両重量2000kg、モータ効率80%の車両について、いわゆる10-15モードでの運転を行った場合、減速時の最大回生電力は、約20kWと算出される。仮に最大要求電力が100kWとすれば、この回生電力を充電するためにバッテリ20の容量は20kWが必要となるから、出力比の上限値は0.8と設定される。
【0037】出力比の下限値、上限値は、これらの運転状態に関わらず、車両の目標性能に応じて種々設定可能であることは言うまでもない。
【0038】次に、車両のエネルギ効率、上限値、下限値を考慮して出力比を設定する(ステップS28)。効率は、例えば、次の方法で評価することができる。
【0039】図5は出力比と燃費比の関係を示す説明図である。車両重量2000kg、モータ効率80%の車両について、出力比を変化させた場合の燃費の変動をシミュレートした結果である。10-15モードでの結果(図中の実線)、およびLA4モードでの結果(図中の破線)を示した。LA4モードとは、米国において、燃費算出基準として用いられる運転モードである。燃費比とは、各出力比での燃費を、最大燃費で正規化した値をいう。図示する通り、出力比が40%~80%の範囲で非常に燃費比が高くなることが分かる。
【0040】エネルギ効率が高くなる範囲で、先に説明した出力比の上限値80%、下限値65%を考慮すると、本実施例においては、出力比は65%~80%の範囲が適切である。出力比がこの範囲に入る条件、および最大出力の和が最大要求電力以上となる条件を満足するように燃料電池40およびバッテリ20の出力を設定する(ステップS30)。燃料電池40とバッテリ20の最大出力の和が最大要求電力と一致する設定が最も好ましい。」

(キ)(イ)及び(ウ)から燃料電池と蓄電池の最大総出力は燃料電池の最大出力と蓄電池の最大出力の和であるといえる。そして(ウ)に記載されたとおり、燃料電池と蓄電池の最大総出力と最大要求電力とを一致させる場合、最大要求電力から、燃料電池の最大出力を減じた値が、蓄電池の最大出力になることは明らかである。

上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されている。

<引用発明1>

「モータと、前記モータに利用される電力を出力する燃料電池と、前記モータに利用される電力を出力する蓄電池とを搭載する車両を設計する方法であって、
前記車両の所定時間継続的に出力する電力目標値以上となるように燃料電池の最大出力を決定し、
前記車両の最大要求出力から、前記燃料電池の最大出力を減じた値を、前記蓄電池の最大出力に決定する、
車両の設計方法。」

<引用発明2>

「車両の製造方法であって、
前記車両の所定時間継続的に出力する電力目標値以上となるように燃料電池の最大出力を決定し、決定された最大出力の燃料電池を製造し、
前記車両の最大要求出力から、前記燃料電池の最大出力を減じた値を、前記蓄電池の最大出力に決定し、決定された最大出力の蓄電池を製造し、
製造された前記燃料電池および前記蓄電池を前記車両に搭載する、
車両の製造方法。」

イ 引用文献2

引用文献2には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は、マルチロータヘリコプタなどの飛行体に関する。」
(イ)「【0131】
そこで、単数のバッテリセルを全体電池として利用するのではなく、複数のバッテリセルを複合電池として利用することが、望ましい。
【0132】
より具体的には、たとえば、バッテリユニット400aが有する2個のバッテリセル420の内の第一のバッテリセル420を60C程度の瞬時の最大電流値に対応したリチウムイオン二次電池で構成し、第二のバッテリセル420を30C程度の定格の最大電流値に対応した燃料電池で構成することが、望ましい。
【0133】
このとき、マルチロータヘリコプタ100の離陸直後の時間帯においてはリチウムイオン二次電池で構成されたバッテリセル420が60C程度の瞬時の最大電流値に対応するために利用され、マルチロータヘリコプタ100の巡航中の時間帯においては燃料電池で構成されたバッテリセル420が30C程度の定格の最大電流値に対応するために利用される。」

ウ 引用文献3

引用文献3には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエンジン発電機に関し、特に、燃料タンクを複数備えたエンジン発電機に適用して有効な技術に関するものである。」
(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、給油の手間の削減や燃料切れによる作業中断を回避すべく、長時間の連続運転が可能なエンジン発電機が求められている。かかる要請に対しては、燃料タンクを大型化して対応するのが一般的であるが、この場合、大型の燃料タンクを新たに別途製造する必要があり、燃料タンクを再設計して別仕様のものを準備しなければならない。このため、本発明者らは、既存の燃料タンクを複数個搭載する方式に想到し、これにより燃料貯留量を増加させ、連続運転時間の延長とコスト低減の要請を両立させることが可能となった。」

エ 本願発明1と引用発明1の対比・判断

(ア)対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「モータ」は、その構成、機能又は技術的意義からみて本願発明1の「駆動モータ」に相当し、以下同様に「燃料電池」は「燃料電池スタック」に、「蓄電池」は「二次電池」に、「所定時間継続的に出力する電力目標値」は「巡航走行に際して要求される第2出力値」に、「車両の最大要求出力」は「車両に要求される最高出力である第1出力値」に、「最大出力」は「最高出力」に、それぞれ相当する。

さらに、引用発明1の「モータに利用される電力を出力する燃料電池」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1の「駆動モータを駆動するための電流を発電する燃料電池スタック」に相当し、同様に「モータに利用される電力を出力する蓄電池」は「駆動モータを駆動するための電流を放電する二次電池」に、相当する。

また、引用発明1において「前記車両の所定時間継続的に出力する電力目標値以上となるように燃料電池の最大出力を決定」する際には、「車両の所定時間継続的に出力する電力目標値」を取得していることは明らかであるから、引用発明1の「前記車両の所定時間継続的に出力する電力目標値以上となるように燃料電池の最大出力を決定」することと、本願発明1の「前記車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの搭載数n(nは自然数)の最小値を決定」することとは、「車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの最大出力を決定」することという限りにおいて一致している。

また、引用発明1の「前記車両の最大要求出力から、前記燃料電池の最大出力を減じた値を、前記蓄電池の最大出力に決定する」ことと、本願発明1の「前記車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池スタックが出力可能な最高出力に前記nを乗じた値を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定する」こととは、「前記車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池スタックが出力可能な最高出力を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定する」ことという限りにおいて一致している。

したがって、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、それぞれ以下のとおりである。

<一致点>

「駆動モータと、前記駆動モータを駆動するための電流を発電する燃料電池スタックと、前記駆動モータを駆動するための電流を放電する二次電池とを搭載する車両を設計する方法であって、
前記車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの最大出力を決定し、
前記車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池スタックが出力可能な最高出力を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定する、
車両の設計方法。」

<相違点1>

本願発明1は、「コンピュータによって実行される」ものであるのに対して、引用発明1は、コンピュータによって実行されるかどうか不明である点。

<相違点2>

本願発明1は、駆動モータ、燃料電池スタック及び二次電池を含む「パワーユニット」が車両に搭載されているのに対して、引用発明1は、それらを含む「パワーユニット」として車両に搭載されているかどうか不明である点。

<相違点3>

巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの最大出力を決定することについて、本願発明1は、「燃料電池スタックの搭載数n(nは自然数)の最小値を決定」するのに対して、引用発明1は、燃料電池スタックの搭載数を決定することはしておらず、燃料電池の最高出力について、本願発明1は「燃料電池スタックが出力可能な最高出力に前記nを乗じた値」として求めるのに対して、引用発明1は搭載数nを使って求めていない点。

(イ)当審の判断

事案に鑑み、上記相違点3について検討する。

引用発明1は、引用文献1の段落【0003】からみて「燃料電池と充放電可能な蓄電器とを併用する直流電源の出力効率を更に向上する技術を提供すること」を目的とするものであり、燃料電池スタックの搭載数を決めることについての記載や示唆はなく、ましてや「燃料電池スタックの搭載数n(nは自然数)の最小値を決定」することについて記載も示唆もない。

また、引用文献2及び3にも燃料電池スタックのサイズや出力を任意に設計しようとすると、設計に要する工数や費用が莫大になるという燃料電池特有の課題、又は、巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの最大出力を決定する際に「燃料電池スタックの搭載数n(nは自然数)の最小値を決定」することについて記載や示唆はなく、加えてそのことが周知の事項であるとする証拠もない。

そして、本願発明1は、巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの最大出力を決定する際に「燃料電池スタックの搭載数n(nは自然数)の最小値を決定」することにより、本願段落【0065】に記載された「新規に燃料電池車を設計するための開発コスト及び開発期間が、燃料電池モジュール50を新たに設計する手法に比べて圧縮される。」という効果を奏する。

ゆえに、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。また、引用発明1に引用文献2又は引用文献3に記載された事項を適用しても上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項にはならない。

以上のとおり、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は当業者が引用文献1-3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明2-5について

本願発明2-5は、本願発明1を直接または間接的に引用するものである。本願発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらを直接または間接的に引用する本願発明2-5も当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本願発明6について

ア 引用文献1、引用文献2及び引用文献3

引用文献1、引用文献2及び引用文献3に記載された事項は、上記(1)ア-ウに記載したとおりである。

イ 本願発明6と引用発明2の対比・判断

(ア)対比

本願発明6と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「車両」は、その構成、機能又は技術的意義からみて本願発明6の「燃料電池車両」に相当し、以下同様に「燃料電池」は「燃料電池モジュール」に、「蓄電池」は「二次電池」に、「所定時間継続的に出力する電力目標値」は「巡航走行に際して要求される第2出力値」に、「車両の最大要求出力」は「燃料電池車両に要求される最高出力である第1出力値」に、「最大出力」は「最高出力」に、それぞれ相当する。

また、引用発明2において「前記車両の所定時間継続的に出力する電力目標値以上となるように燃料電池の最大出力を決定し、決定された最大出力の燃料電池を製造」する際には、「車両の所定時間継続的に出力する電力目標値」を取得していることは明らかであるから、引用発明2の上記事項と、本願発明6の「前記燃料電池車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池スタックの搭載数をn(nは自然数)の最小値を決定し、決定された搭載数の燃料電池スタックを含む燃料電池モジュールを製造」することとは、「前記燃料電池車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池モジュールの最高出力を決定し、決定された最大出力の燃料電池モジュールを製造」することという限りにおいて一致している。

また、引用発明2の「前記車両の最大要求出力から、前記燃料電池の最大出力を減じた値を、前記蓄電池の最大出力に決定し、決定された最大出力の蓄電池を製造」ことと、本願発明6の「前記燃料電池車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池スタックが出力可能な最高出力に前記nを乗じた値を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定し、決定された最高出力の二次電池を製造」こととは、「前記燃料電池車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池モジュールの最高出力を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定し、決定された最高出力の二次電池を製造」ことという限りにおいて一致している。

したがって、本願発明6と引用発明2との一致点及び相違点は、それぞれ以下のとおりである。

<一致点>

「燃料電池車両の製造方法であって、
前記燃料電池車両の巡航走行に際して要求される第2出力値を取得し、取得した前記第2出力値以上となるように、前記巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池モジュールの最高出力を決定し、決定された最大出力の燃料電池モジュールを製造し、
前記燃料電池車両に要求される最高出力である第1出力値から、前記燃料電池モジュールの最高出力を減じた値を、前記二次電池の最高出力に決定し、決定された最高出力の二次電池を製造し、
製造された前記燃料電池モジュールおよび前記二次電池を前記燃料電池車両に搭載する、
製造方法。」

<相違点4>

巡航走行において第3出力値を出力可能な燃料電池モジュールの最高出力を決定し、決定された最大出力の燃料電池モジュールを製造することについて、本願発明6は「燃料電池スタックの搭載数をn(nは自然数)の最小値を決定し、決定された搭載数の燃料電池スタックを含む燃料電池モジュールを製造」するのに対して、引用発明2は、燃料電池スタックの搭載数を決定することはしておらず、燃料電池モジュールの最高出力について、本願発明6は「燃料電池スタックが出力可能な最高出力に前記nを乗じた値」として求めるのに対して、引用発明2は搭載数nを使って求めていない点。

(イ)当審の判断

相違点4は、上記(1)エ(ア)の相違点3と実質的に同じものである。そうすると、上記(1)エ(イ)で述べたのと同様の理由により、本願発明6は当業者が引用文献1-3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括

したがって、本願発明1-6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第3 まとめ

以上のとおり、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。

また他に拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-006845

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