特許拒絶査定不服審判
2022-006308
熱線反射透光性基材、熱線反射窓
- 審判番号
- 2022-006308
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-049516外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月26日
- 審決日
- 2023年06月13日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 49516「熱線反射透光性基材、熱線反射窓」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日出願公開、特開2018-173630〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月16日(先の出願に基づく優先権主張 平成29年3月31日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 6月 8日付け:拒絶理由通知
同年 8月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 1月25日付け:拒絶査定
同年 4月26日 :審判請求書の提出
同年12月 8日付け:拒絶理由通知
令和 5年 2月 9日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、令和5年2月9日に提出された手続補正書の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「透光性基材と、
前記透光性基材の一方の面上に配置されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に直接配置された透明導電性酸化物を含有する透明導電性酸化物層と、
前記透明導電性酸化物層上に直接配置された表面保護層と、を有し、
前記表面保護層の材料は有機材料または無機材料であり、前記有機材料が、アクリル系、ウレタン系、エステル系、エポキシ系、オレフィン系のいずれかであり、
前記透明導電性酸化物層の側から測定した放射率が0.60以下である熱線反射透光性基材。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和4年12月8日付け拒絶理由通知書により当審が通知した拒絶の理由は、本件出願の請求項1~7に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特表2013-521160号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1(特表2013-521160号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付した。)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
低放射透明複合材料フィルムであって:
透明なフィルム基材と;
前記透明なフィルム基材と親和性の耐摩耗ハードコート材料からなる下層と;
少なくとも1つの赤外線反射層と;
を備え、
前記複合材料フィルムが約0.30未満の放射率を有し、前記下層が前記透明なフィルム基材と前記赤外線反射層との間に配置されている;
低放射透明複合材料フィルム。」
(2)「【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本開示は、放射による熱エネルギーの伝達を最小限に抑えるための、また電磁干渉(EMI)を遮蔽する用途に適した、放射率の低い(低放射)窓フィルムの分野に関する。」
(3)「【0027】
好適な実施例の記載
従来の窓フィルムと比較して放射率が著しく低い一方で、望ましいレベルの可視光線透過性(VLT)を有し、摩耗やひび割れを起こしにくく、電磁干渉(EMI)を遮蔽できる複合材料フィルムを本願に記載する。一実施例においては、この複合材料フィルムは、耐摩耗性の硬化アクリレート樹脂を含有する下層を片側に有する透明なフィルム基材と、前記下層を被覆する少なくとも1つの赤外線反射層とから構成されている。
【0028】
前記下層は、前記複合材料フィルムの機械的強度に加えて、驚くべきことに、前記下層が前記複合材料フィルムの外面上に設けられていないにもかかわらず、摩耗耐性も向上させる利点を有する。換言すれば、前記下層が、前記複合材料が貼り付けられている表面と前記赤外線反射層との間に設けられているので、前記赤外線反射層が、反射したい場所のより近くに露出される。従って、前記複合材料フィルムを窓の内側に配置すると、室内からの赤外線は、前記下層を透過せずに、前記下層から反射される。或いは、前記複合材料フィルムを窓の外側に配置すると、屋外又は外側からの赤外線は、前記下層を透過せずに、前記下層から反射される。この結果、前記複合材料フィルムの放射率(即ち、赤外線を放射又は輻射する能力)は著しく低下しうる。
【0029】
複合材料フィルムは一般に、窓の内表面又は外表面、好適には内表面に貼り付けられる。ここで使用する「上部」という用語は、複合材料において、反射されることが望ましい場所に露出されている側をさす。フィルムの放射率とは、「上部」表面からの赤外線エネルギーの放射率の測定値(即ち、窓の内側に配置された場合に室内に反射される赤外線エネルギー)である。これとは逆に、「底部」は、複合材料において、窓に貼り付けられている側をさす。本開示において使用される赤外線エネルギーという用語は、通常、波長のより短い赤外線と比較してより直接に熱を伴っている、波長のより長い赤外線をさすことも理解されるべきであるが、いかなる波長の赤外線が反射されてもよい。
・・・省略・・・
【0042】
図1を参照すると、片側を下層(12)で被覆された透明なポリマーフィルム基材(11)を備えた複合材料フィルム(10)の一実施例が示されている。前記下層(12)は赤外線反射層(20)で被覆されている。必ずしも不可欠ではないが、前記赤外線反射層(20)が更に保護トップコート(13)で被覆されていてもよい。上述のように、前記複合材料フィルム(10)の底部は、前記基材の前記下層(12)で被覆されていない側であり、前記複合材料フィルム(10)の上部は、露出している側である。
【0043】
屋外又は屋内窓フィルムとして、或いは壁に貼り付けられる絶縁材として用いられる場合には、前記基材(11)の底部に、前記基材を窓に接着させるための手段が更に設けられていてもよい。図1に例示するように、前記複合材料(10)に、前記基材(11)に接して設けられた接着剤層(14)が含まれてもよい。前記接着剤層(14)は、前記基材(11)を窓、壁又は任意の別の基材に接着させるのに適したいかなる接着剤からなっていてもよい。窓に接着する場合には、感圧接着剤が好適であり、アクリル系接着剤が特に好適である。Gelva(登録商標)263(Cytec Industries社から入手可能)は、そのような接着剤の一例である。前記接着剤層(14)に剥離ライナー(15)が貼り付けられていてもよい。前記剥離ライナー(15)は、粘着性の接着剤層(14)からの剥離効果を付与する。図示された実施例における剥離ライナー(15)が、前記接着剤層(14)が前記基材(11)に接している状態のまま前記接着剤層(14)から剥離されることの可能なシリコーン剥離コーティングが施された、任意のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えていてもよい。或いは、前記接着剤層及び前記剥離層が、透明な歪みのない接着剤及びポリプロピレンライナーを備えていてもよい。
【0044】
前記透明なフィルム基材(11)は、柔軟な透明ポリエステルフィルムから構成されている。前記基材は、好適には、厚さ約2ミル(0.05ミリメートル)のポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムである。必ずしも不可欠ではないが、前記PET又はPENフィルムを紫外線吸収剤で処理して、最大で99%の紫外線を吸収できるようにしてもよい。そのような紫外線(UV)吸収フィルムの一例が、その開示全体が本願中に引用をもって援用された、米国特許第6,221,112号に記載されている。Melinex(登録商標)454又はST505ポリエステルフィルム(DuPont Teijin Films、「DuPont」社から入手可能)は、そのような好適なフィルムの例である。加えて、前記フィルムの表面が、前記フィルムへの接着性を向上させるための薬品で処理されていてもよい。
【0045】
前記下層(12)は、その底部側に配置された基材(11)とその上部側に配置された赤外線反射層(20)との間に配置されてこれらと接着された中間層をなし、底部側及び上部側に配置されたこれらの光学層(即ち、前記複合材料フィルム(10))の強度、硬度及び耐久性を向上させる。更に、前記赤外線反射層(20)は多くの場合、大気腐食しやすい金属を含有するが、前記下層(12)は、前記下層(12)が前記赤外線反射層(20)を被覆していないにもかかわらず、亀裂に対する抵抗性という点で高レベルの耐久性を付与する。この結果、前記複合材料フィルム(10)においては、機械的強度及び、摩耗、亀裂及び引掻きに対する抵抗性が、放射率に悪影響を及ぼすことなく向上されている。換言すれば、前記下層(12)は、金属製の赤外線反射層(20)を、摩耗及び亀裂しにくいように保護する。本開示の下層の摩耗Δヘイズ値は、約5%未満、約3%乃至約5%及び約4.1%である。
【0046】
前記下層(12)が、前記基材(11)と親和性であり、その表面に従来のロールツーロール方式にて貼付可能な、その用語が当業者によって容易に理解される任意のハードコートから構成されていてもよい。そのようなハードコートの例には、高度に架橋されたポリマーコーティング、熱硬化アクリレートコーティング、シリケート、チタネート、ジルコネート又はこれらの組み合わせを用いた熱硬化ゾルゲルコーティング、ハイブリッド有機無機ゾルゲル材料(例えばFraunhofer社から入手可能なOrmocer(登録商標)コーティングなど)及び熱硬化シロキサンハードコートが含まれるが、これらに限定されることはない。適切な場合には、前記ハードコートの熱硬化を、オーブンなどの熱又はNIR加熱によって行ってもよい。
【0047】
好適な下層(12)は、ナノ粒子を含有しない、紫外線硬化型ポリアクリレート組成物である。特に好適な下層(12)は、ナノ粒子を含有し、アクリル系樹脂、金属酸化物ナノ粒子、架橋剤、光開始剤、溶剤及び界面活性剤から構成された紫外線硬化型ポリアクリレート組成物である。以下により詳細に説明するように、これらの全てが前記組成物に必要な成分というわけではない。更に、以下の組成物は、含有される溶剤により、重量パーセントが異なる。前記溶剤は、湿った下層(12)を基材(11)に貼り付けるのを助けるためにのみ加えられ、乾燥時に揮発する。従って、例えば以下に記載のアクリル樹脂及びナノ粒子の重量パーセントが、前記湿った下層(12)組成物に含有される溶剤の量及び種類によって異なってもよいことは、当業者に容易に理解されよう。
・・・省略・・・
【0056】
赤外線反射層(20)を、下層(12)上に重畳し、当業者に周知の方法であるスパッタリング又は、例えば蒸着或いは任意の化学的又は物理的析出を含めた任意の適切な析出方法によって、前記下層(12)に貼付してもよい。赤外線反射層(20)は、赤外線波長領域内で反射率の高いいかなる透明な金属層から構成されていてもよい。図1の実施例では、赤外線反射層(20)は、アルミニウム、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、パラジウム、タングステン、チタン又はこれらの合金からなる群から選択される金属層から構成されたコア層(16)である。一般には金及び銀並びにこれらの合金が好適である。以下により詳細に説明するように、赤外線反射層における金属及び合金の種類及び量を、所望の放射率及びVLTが得られるように変えてもよい。例えば、タングステン及びチタンは、銀及び金よりも光をよく吸収するので、VLTがより低い実施例においては最も有用であろう。
【0057】
更に、赤外線を反射する、図1における赤外線反射層(20)は、金属又は導電性の金属酸化物の単層構造であってもよいし、金属、金属酸化物及び/又はその他の、金属を含有した又は含有しない光学層を積層した多層構造であってもよいことは、当業者に容易に理解されるであろう。例えば、複数の透明な導電性の層又は誘電性の層を、金属製のコア層と組み合わせて使用して、赤外線反射及びVLTを制御し、前記金属製のコア層を腐食から保護してもよい。インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウム錫酸化物(ITO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫及びその他の金属酸化物又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されることはない、当業でその用語が理解されているいかなる透明な導電性の層も好適である。これらの透明な導電性の層の多くは、十分に薄い場合には、当業でその用語が理解されているように、誘電性の層としても使用可能である。IZO、ITO、二酸化ケイ素、酸化アルムニウム、窒化ケイ素又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されることはない、可視光線を透過させるいかなる誘電体も好適である。ある層が、透明な導電性の層、誘電性の層又はこれらの組み合わせから構成されている場合に、これを本願中で「スペーサ層」と呼ぶ。上述の積層多層構造の複数の例を、図2-4に図示すると共に、以下により詳細に説明する。
【0058】
前記フィルム(10)の機械的特性及び物理的特性を、熱特性及び光学的特性に悪影響を及ぼすことなく向上させるために、酸化窒化ケイ素(SiOxNy)及び酸化窒化アルミニウム(AlOxNy)などの硬質セラミックスを添加してもよい。或いは、特定の色又は反射レベルを創出するために、より厚いセラミック及び/又は金属酸化物層を、赤外線反射層(20)と組み合わせて又はその一部として用いてもよいが、これらの層は、吸収率がより高くなりやすいので、寒冷気候下では保温レベルが低くなってしまうおそれがある。従って、金属、合金、金属酸化物及び硬質セラミックスの層の種類、量及び厚さを、所望の放射率、VLT、機械的強度及び外観が得られるように変更してもよい。
【0059】
保護トップコート(13)は、複合材料の放射率に大きく影響しないように、透明であり、スパッタリングされた赤外線反射層(20)の表面を密封し、非常に薄く(例えば0.5ミクロン未満)なければならない。従って、保護トップコート(13)は、引掻きに耐えうる硬さを複合材料フィルム(10)に付与するものではない。
【0060】
この保護トップコート(13)は、望ましいレベルの放射率、VLT及び摩耗耐性を得るために必ずしも不可欠ではないことは、当業者に容易に理解されよう。しかし、保護トップコート(13)は、別の更なる利点を複合材料フィルム(10)にもたらす。例えば、トップコート(13)は、大気汚染された地域におけるガス状の硫黄化合物などの大気汚染物質や、指紋からの塩素イオンなどを含むがこれらに限定されることはない汚染物質の侵入を防止する。トップコート(13)がなければ、これらの汚染物質によって、複合材料フィルム(10)の物理的及び/又は機械的特性が損なわれるおそれがある。トップコート(13)は、その下の赤外線反射層の化学的バリアとしても機能し、そのことによって、腐食を防止すると共に、表面上に傷をつけることなく研磨剤を用いることも可能にする。更に、幾つかの実施例においては、複合材料フィルム(10)の取り付け及び洗浄が容易となるように、トップコート(13)が低い表面エネルギー及び摩擦を有してもよい。具体的には、スキージ又はその他の取り付け又は洗浄装置が、複合材料フィルム(10)の表面上をより容易に移動することが可能である。
【0061】
下層(12)が、以前より保護ハードコートに必要とされていたこれらの(例えば摩耗耐性などの)利点の多くを更にもたらし、非常に薄い保護層を用いることを可能にするので、保護トップコート(13)の上述の利点を、複合材料フィルム(10)の放射率を大きく損なうことなく実現することが可能である。本願で言及されていないその他の利点は、当業者に容易に理解されるであろう。
【0062】
保護トップコート(13)は一般に、ポリシラザン、フルオロアルキルシラン及びフルオロシランを含むがこれらに限定されることはない、何らかの形のシリコンを含有する。保護トップコート(13)が、例えば約7wt%乃至約8wt%のポリシラザンを含有してもよい。G-Shield(登録商標)(KiON Specialty Polymers社から入手可能)は、そのようなポリシラザンの一例である。或いは、保護トップコート(13)が約0.5wt%乃至約1.5wt%、約0.5wt%未満及び約1.50wt%未満の範囲内のフルオロアルキルシラン又はフルオロシランから構成されていてもよい。Dynasylan(登録商標)F8261(Evonik Industries社から入手可能)及びFluorolink(登録商標)S10(Solvay Solexis Spa of Italy社から入手可能)はそれぞれ、そのようなフルオロアルキルシラン及びフルオロシランの一例である。保護トップコート(13)が、溶剤、光酸化触媒、光開始剤及びその他の、(例えばSilanex AB社から入手可能なSivo(登録商標)Clearなどの)撥水剤などの添加剤を更に含有してもよい。
【0063】
しかし、シリコンベースの化合物が必ずしも不可欠ではないことは、当業者に容易に理解されよう。代わりに、保護トップコート(13)が単に、フィルム表面を処理し、放射率に大きく影響を及ぼすことなく上述の利点をもたらすためにのみデザインされていてもよい。例えば、ガラス表面を処理するために用いられる、ワックスタイプのコーティングなどの仕上げ加工又は防汚用のフルオロカーボンなども利用可能である。
【0064】
好適な保護トップコート(13)の一つが、紫外線又は電子線硬化された、約1.0重量部のフルオロシラン樹脂、約0.5乃至約1.5重量部の光開始剤及び約97乃至約99重量部の溶剤から構成されるフッ化樹脂である。
【0065】
溶剤は、組成物を薄め、赤外線反射層(20)により容易に塗布することのできる溶液を調製するために添加される。乾燥後に、前記溶剤は前記溶液から揮発するので、最終的な乾燥したトップコート(13)には溶剤が殆ど又は全く含有されない。好適な溶剤には、イソプロピルアルコール(IPA)、グリコールエーテル、酢酸ブチル、キシレン、水及びこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されることはない。組成物が、これらの溶剤の1つ又は複数を含有してもよい。好適なフルオロシレンには、フルオロアルキルシレンが含まれるが、これらに限定されることはない。Fluorolink(登録商標)S10(Solvay Solexis Spa of Italy社から入手可能)は、そのようなフルオロシレンの一例である。好適な光開始剤には、Cyracure(登録商標)6976(Dow Chemicals社から入手可能)及びChivacure(登録商標)1176(Chitech社から入手可能)が含まれる。
【0066】
特に好適なトップコート組成物は、約70wt%のIPA、約20wt%のグリコールエーテル、約5.9wt%の水、約1.48wt%のフルオロシラン分散体及び約1.48wt%の光開始剤を含有する。本願中で好適な組成物について述べる場合に、組成物の総計が100wt%を超えても、又はそれ未満であってもよいことに留意すべきである。このことは単に、所与の重量パーセント値は厳密なものではなく、おおよその(又は「約」)重量パーセント値を表すように四捨五入されてもよいという事実を表していることは、当業者に容易に理解されよう。更に、上述のように、本願中に記載の重量パーセント値が、添加される溶剤の量及び種類によって異なってもよいことは、当業者に容易に理解されよう。
【0067】
保護トップコート(13)組成物の上述の成分は、混合され、均一かつ平滑な被覆のための、リバースグラビア法を含むがこれに限定されることはない任意の好適な方法を用いて、ウェットフィルム膜厚が約1ミクロン乃至約3ミクロンとなるように赤外線反射層(20)に被覆される。PETフィルムへの塗布後に、コーティングをオーブン内で約80℃乃至約110℃の温度で5乃至20秒間乾燥させる。次に、保護トップコート(13)を毎秒約20乃至30メートルの搬送速度で紫外線硬化させる。最終的な硬化・乾燥された保護トップコート(13)の厚さは、約0.5ミクロン未満、好適には約0.05ミクロンである。」
(4)「
[図:0001401110000001.jpg]
」
2 引用発明
上記1より、引用文献1には、その特許請求の範囲の請求項1に記載の低放射透明複合材料フィルムに係る、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「低放射透明複合材料フィルムであって:
透明なフィルム基材と;
前記透明なフィルム基材と親和性の耐摩耗ハードコート材料からなる下層と;
少なくとも1つの赤外線反射層と;
を備え、
前記複合材料フィルムが約0.30未満の放射率を有し、前記下層が前記透明なフィルム基材と前記赤外線反射層との間に配置されている;
低放射透明複合材料フィルム。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)透光性基材
引用発明の「透明なフィルム基材」は、透光性である。
そうすると、引用発明の「透明なフィルム基材」は、本願発明の「透光性基材」に相当する。
(2)ハードコート層
引用発明の「下層」は、その文言、透明なフィルム基材と親和性の耐摩耗ハードコート材料からなるものであること、及び、引用文献1の【0046】における「前記下層(12)が、前記基材(11)と親和性であり、その表面に従来のロールツーロール方式にて貼付可能な、その用語が当業者によって容易に理解される任意のハードコートから構成されていてもよい」との記載からみて、透明なフィルム基材の一方の面上に配置されているといえる。また、引用発明の「下層」は、その材料からみて、ハードコート層であるといえる。
そうすると、引用発明の「下層」は、本願発明の「ハードコート層」に相当し、本願発明の「前記透光性基材の一方の面上に配置された」という要件を満たしている。
(3)透明導電性酸化物層
引用発明の「少なくとも1つの赤外線反射層」の「赤外線」について、引用文献1の【0029】に「本開示において使用される赤外線エネルギーという用語は、通常、波長のより短い赤外線と比較してより直接に熱を伴っている、波長のより長い赤外線をさすことも理解されるべきであるが、いかなる波長の赤外線が反射されてもよい」と記載されている。そして、本願発明の「透明導電性酸化物層」は、本件明細書の【0033】に「透明導電性酸化物層13は、透明導電性酸化物を含有する層であり、透明導電性酸化物からなる層とすることもできる。本発明の発明者の検討によれば、透明導電性酸化物が含有するキャリアにより遠赤外線を反射することができる。」と記載されていることからみて、遠赤外線を反射することができる層である。
そうすると、引用発明の「少なくとも1つの赤外線反射層」は、本願発明の「透明導電性酸化物層」と、赤外線を反射することができる点で共通する。
(4)熱線反射透光性基材
引用発明の「低放射透明複合材料フィルム」は透明であるから、透光性である。また、引用発明の「低放射透明複合材料フィルム」は「透明なフィルム基材」及び「少なくとも1つの赤外線反射層」を備えるから、熱線を反射する基材であるといえる。
そうすると、引用発明の「低放射透明複合材料フィルム」は、本願発明の「熱線反射透光性基材」に相当し、本願発明の「透光性基材」と、「前記透光性基材の一方の面上に配置されたハードコート層」とを有するという要件を満たしている。
2 一致点
前記1より、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「透光性基材と、
前記透光性基材の一方の面上に配置されたハードコート層と、
赤外線反射層と、を有する熱線反射透光性基材。」
3 相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明においては、「透明導電性酸化物層」が「ハードコート層上に直接配置された透明導電性酸化物を含有する」層であるのに対し、引用発明においては、「少なくとも1つの赤外線反射層」が下層上に直接配置されているのかが定かでなく、また、透明導電性酸化物を含有する層のみからなる単層であるのかが定かでない点。
(相違点2)
本願発明においては、「表面保護層」が「前記透明導電性酸化物層上に直接配置」され、また、「前記表面保護層の材料は有機材料または無機材料であり、前記有機材料が、アクリル系、ウレタン系、エステル系、エポキシ系、オレフィン系のいずれかであり、前記透明導電性酸化物層の側から測定した放射率が0.60以下である」のに対し、引用発明においては、表面保護層に相当する層を有することは特定されておらず、また、表面保護層の材料も、その放射率も不明である点。
第6 判断
1 相違点1について
(1)引用文献1の【0056】及び【図1】には、引用発明を具現化した典型的な態様として、単層の赤外線反射層がハードコート材料からなる下層上に直接配置されたものが示されている。
そして、引用文献1には、上記【0056】の記載に続けて、【0057】に、「赤外線を反射する、図1における赤外線反射層(20)は、金属又は導電性の金属酸化物の単層構造であってもよいし、金属、金属酸化物及び/又はその他の、金属を含有した又は含有しない光学層を積層した多層構造であってもよいことは、当業者に容易に理解されるであろう。例えば、複数の透明な導電性の層又は誘電性の層を、金属製のコア層と組み合わせて使用して、赤外線反射及びVLTを制御し、前記金属製のコア層を腐食から保護してもよい。インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウム錫酸化物(ITO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫及びその他の金属酸化物又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されることはない、当業でその用語が理解されているいかなる透明な導電性の層も好適である。」と記載されている。
そうすると、かかる記載に接した当業者であれば、ITO薄膜が赤外線を反射することは、本願の優先日前に、例えば、「原納 猛,外1名、“透明電極膜ITOの基本物性”,表面技術,日本,表面技術協会,1989年5月,第40巻,第5号,p.52-56」に記載されるように当業者に周知の技術的事項であり、また、窓に用いる赤外線反射膜として、透明導電性酸化物を含有する単層の膜も、本願の優先日前に周知であった(例えば、実願昭54-184962号(実開昭56-100977号)のマイクロフィルムの2頁16行~3頁2行、特開平7-24957号公報の【0002】、【0004】等参照。)ことを踏まえれば、引用文献1の記載から、赤外線反射層が、ITO等の導電性の金属酸化物の単層構造であるものを観念し得るといえる。
確かに、当該「導電性の金属酸化物の単層構造」が、「透明」であるか否かについて、引用文献1の【0057】には明示の記載はないが、引用発明は、そもそも、引用文献1の【0002】に、「1.発明の分野 本開示は、放射による熱エネルギーの伝達を最小限に抑えるための、また電磁干渉(EMI)を遮蔽する用途に適した、放射率の低い(低放射)窓フィルムの分野に関する」と記載されるとおり、放射率の低い(低放射)窓フィルムに係る技術分野に属するものであって、光が透過する窓に適用され、透明なフィルムであることを前提とするものであるから、上述の周知技術を併せ考えれば、引用文献1に記載の「導電性の金属酸化物の単層構造」が、「透明」であることは当業者であれば当然に認識し得る。
してみれば、引用発明1において、赤外線反射層として、透明な、導電性の金属酸化物単層構造を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである
(2)請求人は、令和5年2月9日付け意見書において、「引用文献1に記載された発明では、透明導電性酸化物の単層とした場合に、金属層等と比較して、赤外線波長領域内の反射率が高いことは開示されていません。さらに、引用文献1の請求項1では、放射率を所定の範囲内とすることが規定されており、透明導電性酸化物の単層とした場合に充足していることも開示されていません。」と主張する。しかしながら、前記(1)で述べたとおり、透明導電性酸化物層ないしITO膜は、自体単層であっても赤外線を反射することは、先の出願前に周知であり、引用文献1に記載がなくても当業者であれば理解し得る事項である。また、本件明細書あるいは意見書に記載の内容を検討しても、透明導電性酸化物層と金属層と比較して特に優れた赤外線波長域内の反射率であると認めるに足るデータが示されているわけでもないから、赤外線波長領域内の反射率が高いことが、当業者の予測を超える格別なものとすることはできない。したがって、請求人の主張は採用できない。
(3)したがって、前記(1)及び(2)より、引用発明において、赤外線反射層として透明導電性酸化物層を採用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである
2 相違点2について
(1)赤外線反射層の表面を保護するために、赤外線反射層上に保護トップコートを直接配置することは、引用文献1の【0059】~【0067】及び【図1】に示されるように、当該分野においてしばしばなされることであって、これら赤外線反射層の表面を保護するための材料についても、アクリル系、ウレタン系、エステル系、エポキシ系等の有機樹脂、有機成分と無機成分が化学結合した有機・無機ハイブリッド材料は、本件優先日前に、ごく普通に用いられるものである(例えば、国際公開第2015/133370号の[0064]~[0079]、国際公開第2017/047281号の[0025]~[0036]等参照。本願明細書【0050】~【0060】の記載と同様のことが記載されている。)。
ここで、放射率についてみると、引用発明の放射率は「約0.30未満」であって、当該放射率は、引用文献1の【0029】に、「複合材料フィルムは一般に、窓の内表面又は外表面、好適には内表面に貼り付けられる。ここで使用する「上部」という用語は、複合材料において、反射されることが望ましい場所に露出されている側をさす。フィルムの放射率とは、「上部」表面からの赤外線エネルギーの放射率の測定値(即ち、窓の内側に配置された場合に室内に反射される赤外線エネルギー)である。これとは逆に、「底部」は、複合材料において、窓に貼り付けられている側をさす」、【0043】に、「屋外又は屋内窓フィルムとして、或いは壁に貼り付けられる絶縁材として用いられる場合には、前記基材(11)の底部に、前記基材を窓に接着させるための手段が更に設けられていてもよい。図1に例示するように、前記複合材料(10)に、前記基材(11)に接して設けられた接着剤層(14)が含まれてもよい」と記載されていることからみて、赤外線反射層の側から測定したものであることは当業者にとり明らかである。
そして、引用文献1の【0059】には、「保護トップコート(13)は、複合材料の放射率に大きく影響しないように、透明であり、スパッタリングされた赤外線反射層(20)の表面を密封し、非常に薄く(例えば0.5ミクロン未満)なければならない」と記載されており、上記の周知技術を示す文献にも、赤外線反射基板の表面を保護するための層は、赤外線の吸収を小さくして、放射率を大きくしないようにするものとする旨記載されている(特に、国際公開第2015/133370号の[0065]、国際公開第2017/047281号の[0035]等参照。)。そうすると、熱線反射透光性基材という引用発明1の目的に照らせば、保護トップコートを、複合材料の放射率を増加させないよう構成とすることは、当業者が当然に考慮すべき事項であるといえる。
してみれば、放射率が約0.30未満である引用発明において、保護トップコートを設けるに際し、その放射率を、0.30未満の値に大きく影響しないものとすること、すなわち、フィルムの放射率は、0.60以下として、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)請求人は、令和5年2月9日付け意見書において、「引用文献1には「保護トップコート(13)は、複合材料の放射率に大きく影響しないように、透明であり、スパッタリングされた赤外線反射層(20)の表面を密封し、非常に薄く(例えば0.5ミクロン未満)なければならない。」([0059])のように記載されていることから、保護トップコートに用いる材料についても強く制約され、[0062]~[0064]に開示されていない材料を選択することは当業者といえどもできないものと思料いたします」と主張するが、前記(1)で述べたとおり、赤外線反射基板の表面を保護するための層の材料として、アクリル系、ウレタン系、エステル系、エポキシ系等の有機樹脂、有機成分と無機成分が化学結合した有機・無機ハイブリッド材料を用いることは、先の出願前に周知であり、当該周知の材料から材料を選択することは、当業者であれば容易になし得たことであるから、請求人の主張は採用できない。
3 効果について
本願発明の効果は、先の出願当時本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた程度のものであり、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。
4 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-006308