2022-006152
電磁波シールドフィルム
- 審判番号
- 2022-006152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-513347外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月22日
- 審決日
- 2023年03月06日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】タツタ電線株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人G-chemical
- 分類
- P18 .537-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2020年(令和2年)12月1日(優先権主張 令和元年12月3日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年1月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由(サポート要件)について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
1 本願の課題について
本願の発明の詳細な説明における、
「【発明が解決しようとする課題】【0006】近年、シールドフィルムには、プリント配線板に貼り付ける際、位置合わせをしやすいという性能が求められる場合がある。このため、シールドフィルムには、透明性が求められる傾向がある。透明性を向上させる方法として、シールドフィルムにおける金属層を薄くすることが考えられる。しかしながら、この方法では、透明性が向上する一方、高温高湿環境や電解質が存在する環境において透明金属層が劣化して白濁して透明性が損なわれる、シールド性能が低下する、すなわち、耐環境性に劣るという問題があった。【0007】また、近年、高温・高圧条件下ではなく、比較的緩やかな条件でプリント配線板に接着することができる導電性接着剤層を有するシールドフィルムが求められる傾向がある。しかしながら、シールドフィルムにおける導電性接着剤層として従来の異方導電性粘着シートを用いた場合、外部グランドとの電気的接続が不安定であるという問題があった。電気的接続の安定性を向上させるべく、従来の異方導電性粘着シートにおける導電性粒子の配合量を増やす方法が考えられる。この場合、接続安定性を向上させることができるが、金属層の薄膜化による耐環境性の低下を補うことはできず、また透明性が低下する。」
という記載によれば、本願の課題は、「位置合わせ」がしやすく、「緩やかな条件でプリント配線板に接着することができ」る「シールドフィルム」を得ることであり、課題を解決するための手段は、「シールドフィルム」の「透明性を向上させ」ると共に、「高温・高圧条件下」でなくとも接着し得る「導電性接着剤層」を用いることであると認められる。
2 令和3年11月2日提出の意見書について
出願人は、令和3年11月2日提出の意見書において、
「4-1.本発明がサポート要件を満たすことの説明透明性に関して、本発明は「第1絶縁層」の厚さを1-15μmに限定しております。「第1絶縁層」はこの範囲で透明性に優れることを記載しております(0026段落)。……「導電性接着剤層」に関して、導電性粒子の配合量を増やすことが透明性を低下させることが記載されており(0007段落)、したがって、「導電性接着剤層」を不透明にする要因は導電性粒子にあると考えられます。本発明は導電性粒子の含有量を5-20質量%に抑えることで透明性を確保しており(0059段落)、さらに透明性に優れる球状導電性粒子を使用しております(0044段落)。したがって、本発明の「導電性接着剤層」が不透明な構成が許容されておらず、透明性を有することは明らかです。「第3絶縁層」に関しては、「第2絶縁層」と同様の組成のものが記載されており、厚さも「第2絶縁層」と同様であると開示されているため(0065、0066、0068段落)、上記の「第2絶縁層」に関する説明から不透明な構成が許容されておらず、透明性を有することは明らかです。以上より、本発明は不透明な構成は許容されておらず、透明性を有するため本発明の課題を解決し得るものである考えられます。」
と主張している。
3 「第1絶縁層」が不透明である構成が許容されている点について
(1)同意見書と同日提出の手続補正書を用いて補正された請求項1においては、「第1絶縁層」に関して「厚さは1-15μmであり」とのみ記載されているところ、厚さが1-15μmでありさえすれば全ての絶縁層が透明になるわけでないことは明らか(必要であれば引用例1、2参照。)である。
(2)引用例1の記載
「【0018】図1(b)不透明絶縁膜となるブラックポリイミドをスピンコートにより全面に塗布し,厚さ5μmのブラックポリイミド膜3を形成する。」
(3) 引用例2の記載
「【0043】絶縁層50の平面視形状は、図2に示すように、パターン配線40の平面視形状と略同じである。つまり、本実施の形態では、絶縁層50は、ストライプ状に形成されている。また、絶縁層50は、パターン配線40の上面40a及び側面40bを覆うので、パターン配線40より一回り大きく形成されている。言い換えると、絶縁層50は、平面視においてパターン配線40が内側に位置するように設けられている。例えば、絶縁層50の線幅は、31μm以上300μm以下である。絶縁層50の膜厚は、例えば、1μm以上10μm以下である。【0044】本実施の形態では、絶縁層50は、不透明な絶縁材料から形成されている。なお、不透明とは、目視した際に反対側が透けて見えない程度に、可視光に対する透過率が十分に低いことである。例えば、絶縁層50の光の透過率は、10%以下である。」
(4)そうすると、補正後請求項1において、「第1絶縁層」を透明とする構成は記載されていない。
4 「導電性接着剤層」が不透明である構成が許容されている点について
(1)「導電性接着剤層」が透明である為には、「導電性接着剤」の大部分を占める「バインダー成分」が透明であることを要するところ、補正後請求項1において、「バインダー成分」が透明であるとは規定されていない。
また、接着剤のバインダー成分であれば必然的に透明になるわけでないことは明らか(必要であれば引用例3参照。)である。
(2)引用例3の記載
「好適実施例の詳細な説明…………ビーズ1を不透明な接着剤バインダ物質を用いて固着する……」
(第5頁第11行-第15行)
(3)そうすると、補正後請求項1において、「導電性接着剤層」を透明とする構成は記載されていない。
5 「第3絶縁層」が不透明である構成が許容されている点について
特許請求の範囲において、「第3絶縁層」と「第2絶縁層」とが関連する旨の規定はなされていないから、「第3絶縁層」に関する出願人の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づくものでなく、考慮の対象となり得ない。
6 以上のとおりであるから、請求項1-7、9には、透明性を有するための構成が依然として記載されていない。
したがって、請求項1-7、9には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1-7、9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
<引用文献等一覧>
引用例
1.特開平4-324683号公報
(周知技術を示す文献)
2.特開2017-97169号公報
(周知技術を示す文献)
3.特表2001-524219号公報
(周知技術を示す文献)
第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年12月5日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
理由(サポート要件)について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
出願時の技術常識を踏まえたうえで、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否か、との観点で以下検討する。
本願明細書【0006】-【0007】の記載によれば、本願の課題は、「位置合わせ」がしやすく、「緩やかな条件でプリント配線板に接着することができ」る「シールドフィルム」を得ることであり、課題を解決するための手段は、「シールドフィルム」の「透明性を向上させ」ることであると認められる。
しかしながら、請求項7、9において、「第3絶縁層」が不透明である構成が許容されていることは明らかであるから、請求項7、9に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるといえる。
したがって、請求項7、9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
第4 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、令和5年1月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-8は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】第1絶縁層、透明金属層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層されており、前記第1絶縁層は透明基材であり、厚さは1~15μmであり、前記第2絶縁層は透明層であり、樹脂から形成される樹脂層、または無機物から形成される無機物層からなり、厚さは10~500nmであり、続きを表示(全22行)前記導電性接着剤層は、バインダー成分及び球状導電性粒子を含み、前記球状導電性粒子のメディアン径は3~50μmであり、前記球状導電性粒子の含有割合は、前記導電性接着剤層100質量%に対し5~20質量%であり、前記導電性接着剤層の厚さと前記球状導電性粒子のD50の比が0.5~1.2である電磁波シールドフィルム。【請求項2】前記第2絶縁層と前記透明金属層とは直接積層している請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。【請求項3】前記第2絶縁層は前記無機物層を有する請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。【請求項4】前記無機物層は前記透明金属層と直接積層している請求項3に記載の電磁波シールドフィルム。【請求項5】前記第2絶縁層は前記無機物層と前記樹脂層の積層構造を有する請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。【請求項6】前記樹脂層は前記導電性接着剤層と直接積層しており、前記無機物層は前記透明金属層と直接積層している、請求項5に記載の電磁波シールドフィルム。【請求項7】全光線透過率が62%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。【請求項8】請求項1~7のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルムを備えたシールドプリント配線板。」
第5 当審拒絶理由についての判断
理由(サポート要件)について
出願時の技術常識を踏まえたうえで、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否か、との観点で以下検討する。
令和5年1月31日にされた手続補正において、不透明である構成が許容されている「第3絶縁層」という事項を特許請求の範囲から削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
第6 原査定についての判断
理由(サポート要件)について
出願時の技術常識を踏まえたうえで、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否か、との観点で以下検討する。
1 原査定で指摘されている「第1絶縁層」が不透明である構成が許容されている点については、令和5年1月31日にされた手続補正において、「前記第1絶縁層は透明基材であり」と補正されているから、この拒絶の理由は解消した。
2 原査定で指摘されている「導電性接着剤層」が不透明である構成が許容されている点については、令和4年4月22日提出の審判請求書における「本発明では、導電性接着剤層において、バインダー成分と球状導電性粒子以外の成分を含んでもよいことを記載しておりますが、あくまでこれは本発明の効果を損なわない範囲であることを開示しております(本明細書、0060段落)。したがって、バインダー成分にあえて着色剤を添加し、不透明化することは考えらません。」及び「当業者であれば、明細書中の記載より、バインダー成分と球状導電性粒子を含んだ本発明の導電性接着剤層が、不透明な構成を許容されていないと認識できると考えられます。」との主張を踏まえれば、「導電性接着剤層」が不透明である構成は許容されていないと認められる。したがって、この拒絶の理由は解消した。
3 原査定で指摘されている「第3絶縁層」が不透明である構成が許容されている点については、上記第5のとおり、令和5年1月31日にされた手続補正において、不透明である構成が許容されている「第3絶縁層」という事項を特許請求の範囲から削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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