2022-005020
測定チャネルを貫流する流動媒体の少なくとも1つのパラメータを決定するセンサ
- 審判番号
- 2022-005020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-102670外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月05日
- 審決日
- 2022年11月21日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 分類
- P18 .121-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年5月24日(パリ条約による優先権主張2016年5月25日、ドイツ)の外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
(同年12月 7日 :原査定の謄本の送達)
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年11月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】測定チャネル(24)を貫流する流動媒体の少なくとも1つのパラメータを決定するためのセンサ(10)であって、前記センサ(10)は、センサハウジング(12)と、前記流動媒体の前記パラメータを決定するための、前記測定チャネル(24)内に配置された少なくとも1つのセンサチップ(34)と、を有し、前記センサハウジング(12)は、前記流動媒体の主流れ方向(18)の方を向いた、前記チャネル構造(14)への入口(16)と、前記チャネル構造(14)からの少なくとも1つの出口(28)と、を有し、前記チャネル構造(14)は、壁部分(50)により画定される、前記センサ(10)において、前記チャネル構造(14)の内側の前記壁部分(50)は、少なくとも部分的に電気的絶縁特性を有し、前記チャネル構造(14)の外側の前記壁部分(50)に隣接する前記センサハウジング(12)の領域(52)は、導電特性を有し、前記壁部分(50)は、電気絶縁材料で製造され、前記センサハウジング(12)の、前記壁部分(50)に隣接する前記領域(52)は、導電材料で製造され、前記電気絶縁材料は、絶縁性プラスチックであり、前記導電材料は、導電性プラスチックであり、前記壁部分(50)に隣接する前記領域(52)は、センサ接地と電気的に接続される、ことを特徴とする、センサ(10)。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性)本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献3に記載された発明及び引用文献1、2に記載された周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2001-311637号公報(周知技術を示す文献)
2.特開2005-300187号公報(周知技術を示す文献)
3.特開昭64-010127号公報
第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献3に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献3には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 産業上の利用分野
「<産業上の利用分野>本発明は内燃機関の吸入空気流量を検出する熱線式空気流量計、特に悪い電磁環境での使用に最適な熱線式空気流量計に関するものである。」(1頁右欄2-5行)
(イ) 発明が解決しようとする問題点
「<発明が解決しようとする問題点>…(中略)…本発明は、前述したような熱線式空気流量計の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は悪い電磁環境下で使用しても、外乱信号によって誤動作を生ぜず、常に被測定吸入空気の流量を正しく検出可能な熱線式空気流量計を提供することにある。」(2頁左上欄12行-同右上欄20行)
(ウ) 問題点を解決するための手段及び作用
「<問題点を解決するための手段>前述の目的を達成するために、本発明ではハウジングに被測定吸入空気の流路が形成され、該流路に発熱抵抗体が配設され、前記被測定吸入空気との接触による前記発熱抵抗体の温度変化に伴なう抵抗値の変化から、前記被測定吸入空気の流量を測定する熱線式空気流量計において、前記発熱抵抗体が導電性ケースで電磁気的に覆われ、該導電性ケースが前記ハウジングに固定され、且つ前記導電性ケースがアースされた構成となっている。<作用>本発明では、悪い電磁環境下で使用されても、発熱抵抗体が導電性ケースで電磁的に覆われ、且つこの導電性ケースがアースされているので、外乱信号によって発熱抵抗体を流れる電流が変化して誤動作することがなく、熱線式空気流量計は常に被測定吸入空気の流量を精度よく検出する。また、発熱抵抗体が導電性ケースで覆われているために、熱線式空気流量計の取り扱い時に、発熱抵抗体が機械的に保護される。」(2頁左下欄1-20行)
(エ) 図面の説明及び第1の実施例
「<実施例>以下、本発明の実施例を第1図乃至第8図を用いて詳細に説明する。ここで、第1図は本発明の第1の実施例の構成を示す断面図、第2図は第1図における要部の構成を示す正面図、第3図は第2図のX-X断面図、第4図は本発明の第2の実施例の構成を示す断面図、第5図は本発明の第3の実施例の要部の構成を示す正面図、第6図は第5図のX-X断面図、第7図は本発明の第4の実施例の要部の構成を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-X断面図、第8図は本発明の第5の実施例の構成を示す断面図である。第1の実施例は、第1図に示すように合成樹脂材の筒状のハウジング10の両端に、それぞれ被測定吸入空気5の吸入口11及び流出口12が形成され、ハウジング10は壁体13によって、メイン空気流路14とバイパス空気流路15とに仕切られている。続きを表示(全14行)このハウジング10の上面に挿通孔18が形成され、壁体13の挿通孔18に対向する位置に凹部19が形成され、これらの挿通孔18及び凹部19にわたって、後述するように発熱抵抗器としてのホットワイヤ1、コールドワイヤ2及びこれらの支持ピン9を覆って配設される導電性ケース6が、固定可能な構成となっている。即ち、第2図及び第3図に示すように、導電性ケース6は筒状に形成され、この導電性ケース6の下方には前述のバイパス空気流路15に位置して配される貫通孔16が形成されている。そして、貫通孔16部分を除いて導電性ケース6には、合成樹脂材の支持部材8が充填され、この支持部材8には導電材の支持ピン9が固定保持されている。また、支持ピン9の先端は支持部材8の端面から貫通孔16内に突出配設され、一方の支持ピン9間に、白金線を巻回し表面にガラス材をコーティングしたホットワイヤ1が溶接固定されている。さらに他方の支持ピン9間に、被測定吸入空気5の温度を検出するホットワイヤ1と同一構造のコールドワイヤ2が、溶接固定されている。このようにして、ホットワイヤ1、コールドワイヤ2及びこれらの支持ピン9を覆って配設される導電性ケース6が、金属材のバース4(当審注:前後の文脈から見て、ベース4の明らかな誤記である。)に導電性接着剤7により、或は溶接の手段によって固定されている。また、ベース4上に熱線式空気流量計の回路部17が組み込まれ、この回路部17を被ってベース4にはモールドケース3が固定されている。そして、このように導電性ケース6が固定されたベース4が、第1図に示すようにハウジング10の上面に例えば接着剤を用いて固定されている。この固定取り付け状態で、前述のホットワイヤ1及びコールドワイヤ2は、バイパス空気流路15内に位置し、吸入口11から吸入される被測定吸入空気5の一部が、バイパス空気流路15を通って貫通孔16を通過する際に、ホットワイヤ1及びコールドワイヤ2が被測定吸入空気5に曝されるように構成されている。なお、前述の導電性ケース6は、金属或いは導電性樹脂材で形成する場合の他に、非導電性樹脂材で形成し、その表面に導電材を化学メッキした構造とすることも出来る。」(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)
(オ) 第1図
「[図:0001396886000001.jpg]」
(カ) 第2図
「[図:0001396886000002.jpg]」
(キ) 第3図
「[図:0001396886000003.jpg]」
(ク) 第4の実施例
「 第7図に第1図と同一部分に同一符号を付して要部の構成を示すのは、本発明の第4の実施例であり、この第4の実施例では導電材で導電性ケース6とベース4とが一体に形成された構成となっている。この第4の実施例のものも、全体が第1図のようにバイパス空気流路15を有する方式、或は第4図のようにメイン空気流路14のみを有する方式のいずれの熱線式空気流量計としても、組立てることが出来る。また、第4の実施例の他の部分の構成は、前述の第1或は第2の実施例と同一である。」(3頁右下欄16行-4頁左上欄7行)
(ケ) 第7図
「[図:0001396886000004.jpg]」
(コ) 各実施例において共通する事項
「なお、各実施例においては、ホットワイヤとコールドワイヤとは、それぞれ対応する支持ピンを介して回路部17の所定個所に接続され、回路部17には、ホットワイヤとコールドワイヤとを構成回路素子として、ブリッジ回路が形成されている。また、回路部17のアース線がベース4に電気的に接続され、ベース4がアースされている。従って、導電性ケース6はベース4を介してアースされ、ホットワイヤ、コールドワイヤ及びこえらの支持ピンは、導電性ケース6によって電磁気的にシールドされた構成となっている。以上に述べたような構成の本発明の各実施例について、その動作を第1の実施例により説明する。回路部17には電流供給手段が設けられ、この電流供給手段によってホットワイヤ1の温度が、予め設定された標準温度になるように、ホットワイヤ1に電流が供給される。被測定吸入空気が、ハウジング10の吸入口11から吸入されると、吸入された空気によってホットワイヤ1の温度が低下して、ホットワイヤ1の抵抗値が減少する。そこで、このホットワイヤ1の抵抗値の変化によって、標準温度時に平衡状態であったブリッジ回路の平衡がくずれるので、電流供給手段によって、ホットワイヤ1に供給する電流を増加させることによって、ホットワイヤ1の温度を上昇させ、ホットワイヤ1の抵抗値を増加させて、ブリッジ回路を再び平衡状態とすることが出来る。このようにして、被測定吸入空気の流量が多い時には、ホットワイヤ1に供給する電流を増加させ、被測定吸入空気の流量が少ない時には、ホットワイヤ1に供給する電流を減少させて、ホットワイヤ1の温度を予め設定した標準温度に保持する。この場合、ホットワイヤ1に供給される電流値と、被測定吸入空気の流量との間には単調増加特性があるので、ホットワイヤ1に供給される電流値に基づいて被測定吸入空気の流量を検出することが出来る。」(4頁右上欄16行-同右下欄15行)
イ 引用文献3から読み取れる事項の認定
(ア) 引用文献3の「被測定吸入空気5の一部が、バイパス空気流路15を通って貫通孔16を通過する」(3頁右上欄15-17行)との記載及び第1図から、「貫通孔16は、被測定吸入空気5の流れに沿って、被測定吸入空気5の流入口と流出口を形成する」との事項が読み取れる。
(イ)a 第4の実施例の要部の構成を示す図である第7図(A)及び(B)から、第4の実施例の導電性ケース6はその断面が円形であることが読み取れる。
b このことと、引用文献3の第1の実施例における「導電性ケース6は筒状に形成され」(3頁左上欄7-8行)という記載及び「第4の実施例の他の部分の構成は、前述の第1或は第2の実施例と同一である」(4頁左上欄6-7行)という記載を勘案すると、引用文献3の第1実施例における「導電性ケース6」は「円筒状に形成されている」といえる。
ウ 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献3の記載事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「被測定吸入空気の流量を測定する熱線式空気流量計であって、(2頁左下欄1-20行)円筒状に形成され、下方にはバイパス空気流路15に位置して配される貫通孔16が形成された導電性ケース6と、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行、前記イ(イ)の認定事項)貫通孔16部分を除いて導電性ケース6に充填され、導電材の支持ピン9が固定保持される合成樹脂材の支持部材8と、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)先端が支持部材8の端面から貫通孔16内に突出配設された支持ピン9と、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)続きを表示(全15行)一方の支持ピン9間に溶接固定されたホットワイヤ1と、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)他方の支持ピン9間に溶接固定された、被測定吸入空気5の温度を検出するコールドワイヤ2と、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)を備え、ホットワイヤ1、コールドワイヤ2及びこれらの支持ピン9を覆って配設される導電性ケース6が、金属材のベース4に固定されており、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)ベース4上に熱線式空気流量計の回路部17が組み込まれ、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)被測定吸入空気5の一部が、貫通孔16を通過する際に、ホットワイヤ1及びコールドワイヤ2が被測定吸入空気5に曝されるように構成されており、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)貫通孔16は、被測定吸入空気5の流れに沿って、被測定吸入空気5の流入口と流出口を形成し、(前記イ(ア)の認定事項)導電性ケース6は、導電性樹脂材で形成し、(2頁右下欄1行-3頁左下欄3行)回路部17のアース線がベース4に電気的に接続され、ベース4がアースされ、導電性ケース6はベース4を介してアースされており、(4頁右上欄16行-同右下欄15行)ホットワイヤ1に供給される電流値に基づいて被測定吸入空気の流量を検出する、(4頁右上欄16行-同右下欄15行)熱線式空気流量計」
(2) 引用文献1、2に記載された事項及び周知技術の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(ア) 実施例
「【0011】図1は本発明の第一の実施例である熱式空気流量センサ1を示す断面図である。図2は図1に示す熱式空気流量センサ1の上面図である。図1,図2において、熱式空気流量センサ1は半導体センサ素子2とそれを支持する基板8と副通路11a、外部への入出力を行う金属端子28等を含み構成され、そして半導体センサ素子2はシリコン等の半導体基板の下面より異方性エッチングにより電気絶縁膜からなるダイヤフラムを形成し、ダイヤフラム上に形成された発熱抵抗体3と半導体基板上に形成されて温度を計測するための感温抵抗体4を含み構成されている。また、制御回路は感温抵抗体4の温度に対して所定の温度だけ高くするように発熱抵抗体3に加熱電流を流す制御を実行し空気流量を示す空気流量信号を得るものである。エンジンで発生した熱を受けて主空気通路12が暖められると主空気通路12を介してハウジング15やカバー13,副通路11aに熱が伝わり、それが半導体センサ素子2に伝わってしまう。さらに主空気通路12が暖められるとその内壁からの熱放射によっても前記の部材が加熱され、半導体センサ素子2に伝わってしまう。半導体センサ素子2上に形成された感温抵抗体4が実際に流れている空気の温度よりも高くなるため、これが出力特性の誤差要因となる。さらに発熱抵抗体3からの放熱量自身も半導体センサ素子2が温度上昇することで変化し、これが出力特性の誤差要因となる。そこで本発明ではハウジング15やカバー13,副通路11a(囲い)等の構成部材に熱伝導率の小さいPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂やPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂といった樹脂材料を用いるとともに、その表面を輻射率の小さい被覆材6,6a,6bで覆う構造とした。」
(イ) 図1
「[図:0001396886000005.jpg]」
(ウ) 図2
「[図:0001396886000006.jpg]」
イ 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献2には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。
(ア) 実施例
「【0025】図7は、主流路部材11及びバイパス流路部材12の側面に取り付けられる流量センサ基板21とそれに実装された熱式流量センサ211を示す斜視図である。また、図8は、主流路部材11の側面にバイパス流路部材12及び流量センサ基板21が取り付けられた状態を示す断面図である。なお、図7では、流量センサ基板21の下面(裏面)が見えるように流量センサ基板21を傾けて描いている。流量センサ基板21の下面には、半導体チップ部品である熱式流量センサ211が実装されている。つまり、バイパス流路の壁面の一部を構成する流量センサ基板21の下面に熱式流量センサ211が配置されている。」
(イ) 図7
「[図:0001396886000007.jpg]」
ウ 周知技術の認定
前記アに摘記した引用文献1の「半導体センサ素子2」、前記イに摘記した引用文献2の「半導体チップ部品」は、いずれも「半導体チップ」であるといえるから、以下の技術事項は周知技術であると認められる。
<周知技術>
「熱式流量センサのセンサ素子として半導体チップを用いること」
2 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア(ア) 引用発明は、「被測定吸入空気5の一部が、貫通孔16を通過する際に、ホットワイヤ1及びコールドワイヤ2が被測定吸入空気5に曝されるように構成されており」、「ホットワイヤ1に供給される電流値に基づいて被測定吸入空気の流量を検出する」ものであり、貫通孔16において被測定吸入空気の流量を検出しているから、引用発明の「貫通孔16」は、本願発明の「測定チャネル(24)」に相当する。
(イ) 前記(ア)を踏まえると、引用発明の「貫通孔16を通過する」「被測定吸入空気5」は、本願発明の「測定チャネル(24)を貫流する流動媒体」に相当する。
(ウ) 引用発明の「被測定吸入空気の流量を測定する熱線式空気流量計」は、本願発明の「流動媒体の少なくとも1つのパラメータを決定するためのセンサ(10)」に相当する。
(エ) 前記(イ)~(ウ)をまとめると、本願発明と引用発明は、「測定チャネルを貫流する流動媒体の少なくとも1つのパラメータを決定するためのセンサ」である点で一致する。
イ(ア)a 引用発明において、「ホットワイヤ1」は、「先端が支持部材8の端面から貫通孔16内に突出配設された支持ピン9」のうちの「一方の支持ピン9間に溶接固定された」ものであり、「被測定吸入空気5の温度を検出するコールドワイヤ2」は「他方の支持ピン9間に溶接固定された」ものであり、引用発明の熱線式空気流量計は、「ホットワイヤ1に供給される電流値に基づいて被測定吸入空気の流量を検出する」ものである。
b したがって、引用発明の「ホットワイヤ1」及び「コールドワイヤ2」と本願発明の「センサチップ(34)」は、「前記流動媒体の前記パラメータを決定するための、前記測定チャネル内に配置された少なくとも1つのセンサ要素」である点で共通する。
(イ) 「ホットワイヤ1、コールドワイヤ2及びこれらの支持ピン9を覆って配設される導電性ケース6」及び「貫通孔16部分を除いて導電性ケース6に充填され、導電材の支持ピン9が固定保持される合成樹脂材の支持部材8」は、「ホットワイヤ1」及び「コールドワイヤ2」を覆っているから、前記(ア)bの検討結果も踏まえると、引用発明の「導電性ケース6」及び「支持部材8」は全体として、本願発明の「センサハウジング(12)」に相当する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「センサは、センサハウジングと、前記流動媒体の前記パラメータを決定するための、前記測定チャネル内に配置された少なくとも1つのセンサ要素と、を有[する]」点で共通する。
ウ(ア) 本願発明の「前記チャネル構造(14)」は前記されていないが、発明の詳細な説明の【0027】の「チャネル構造14は、図1のセンサハウジング12に関して下側22で主流体出口21(図2)に連通しうる主チャネル20と、主チャネル20から分岐したバイパスチャネル又は測定チャネル24と、を有する。」との記載を参酌すると、本願発明の「測定チャネル(24)」を有するものである。
(イ) そうすると、引用発明の「貫通孔16」は「測定チャネル(24)」に相当するとともに(前記ア(ア))、「チャネル構造(14)」にも相当するといえるから、引用発明の「貫通孔16」が「被測定吸入空気5の流れに沿って形成[する]」「被測定吸入空気5の流入口と流出口」は、本願発明の「前記流動媒体の主流れ方向(18)の方を向いた、前記チャネル構造(14)への入口(16)と、前記チャネル構造(14)からの少なくとも1つの出口(28)」に相当する。
(ウ) 前記(イ)の検討結果、前記イ(イ)の検討結果である「引用発明の「導電性ケース6」及び「支持部材8」は、本願発明の「センサハウジング(12)」に相当すること」及び「「貫通孔16」は、「導電性ケース6」に「形成された」ものであること」を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記センサハウジングは、前記流動媒体の主流れ方向の方を向いた、前記チャネル構造への入口と、前記チャネル構造からの少なくとも1つの出口と、を有[する]」点で一致する。
エ(ア)a 本願発明の「前記チャネル構造(14)は、壁部分(50)により画定される」との発明特定事項について検討する。
b チャネル構造(14)の「画定」について、本願の発明の詳細な説明の【0029】には、「チャネル構造14は、少なくとも3つの側面で、測定チャネルカバー48の内部で壁部分50によって画定されている。上記画定の第4の側面は、センサハウジング12の下側22によって実現されうる。」と記載されている。
c 前記bで摘記した記載によれば、本願発明の「前記チャネル構造(14)」の「壁部分(50)」による「画定」は、チャネル構造(14)の全ての境界面を画定することは要しないものと解するのが相当である。
(イ) ここで、引用発明の「貫通孔16部分を除いて導電性ケース6に充填され[る]」「支持部材8」について検討すると、支持部材8は、貫通孔16部分を除いて円筒状の導電性ケース6に充填されたものであるから、概略円柱に貫通孔16を形成した形状であり、後記の参考図に示すように、貫通孔16に沿って貫通孔16の大部分を囲んでいるものと認められる。
<参考図>
「[図:0001396886000008.jpg]」
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「貫通孔16」は、「貫通孔16部分を除いて導電性ケース6に充填され[る]」「支持部材8」によって「画定される」といえるから、引用発明の「支持部材8」は本願発明の「壁部分(50)」に相当する。
(エ) そして、引用発明の「貫通孔16」は本願発明の「チャネル構造(14)」に相当すること(前記ウ(イ))及び前記(ウ)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記チャネル構造(14)は、壁部分(10)により画定される」点で一致する。
オ(ア) 引用発明の「支持部材8」は、貫通孔16の大部分を囲んでおり(前記エ(イ))、本願発明の「壁部分(50)」に相当するから(前記エ(ウ))、本願発明の「前記チャネル構造(14)の内側の前記壁部分(50)」に相当する。
(イ) 引用発明の「支持部材8」は、「導電材の支持ピン9が固定保持される」ものであり、当該「支持ピン8」間にはホットワイヤ1が溶接固定されることから、「支持部材8」が絶縁性であることは自明である。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記チャネル構造の内側の前記壁部分は、少なくとも部分的に電気的絶縁特性を有[する]」点で一致する。
カ(ア) 前記エ(イ)のとおり、引用発明の「支持部材8」は、概略円柱に貫通孔16を形成した形状であり、貫通孔16部分を除いて円筒状の導電性ケース6に充填されたものであるから、円柱状の支持部材8における貫通孔16の第2図(前記1(1)ア(カ))における左右方向外側には、導電性ケース6が隣接して位置している(前記参考図における右図参照)。
(イ) そうすると、引用発明の「導電性ケース6」及び「支持部材8」は、本願発明の「センサハウジング(12)」に相当する(前記イ(イ))ことを踏まえれば、引用発明の円柱状の支持部材8における貫通孔16の外側に、支持部材8に隣接して位置している当該「導電性ケース6」は、本願発明の「前記チャネル構造(14)の外側の前記壁部分(50)に隣接する前記センサハウジング(12)の領域(52)」に相当するといえる。
(ウ) そして、引用発明の「導電性ケース6」は導電性を有しているから、本願発明と引用発明は、「前記チャネル構造の外側の前記壁部分に隣接する前記センサハウジングの領域は、導電特性を有[する]」点で一致する。
キ(ア) 引用発明の「支持部材8」は「合成樹脂材」であるところ、「支持部材8」が絶縁性であることは自明であるから(前記オ(イ))、引用発明の絶縁性である「支持部材8」が「合成樹脂材」であることは、本願発明の「前記壁部分(50)は、電気絶縁材料で製造され[る]」こと及び「前記電気絶縁材料は、絶縁性プラスチックであ[る]」ことに相当する。
(イ) 引用発明の「導電性ケース6は、導電性樹脂材で形成[する]」ものであることは、本願発明の「前記センサハウジング(12)の、前記壁部分(50)に隣接する前記領域(52)は、導電材料で製造され[る]」こと及び「前記導電材料は、導電性プラスチックであ[る]」ことに相当する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)をまとめると、本願発明と引用発明は、「前記壁部分は、電気絶縁材料で製造され、前記センサハウジングの、前記壁部分に隣接する前記領域は、導電材料で製造され、前記電気絶縁材料は、絶縁性プラスチックであり、前記導電材料は、導電性プラスチックであ[る]」点で一致する。
ク 引用発明は「回路部17のアース線がベース4に電気的に接続され、ベース4がアースされ、導電性ケース6はベースを介してアースされて[いる]」から、本願発明と引用発明は「前記壁部分に隣接する前記領域は、センサ接地と電気的に接続される」点で一致する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
ア 一致点
「測定チャネルを貫流する流動媒体の少なくとも1つのパラメータを決定するためのセンサであって、前記センサは、センサハウジングと、前記流動媒体の前記パラメータを決定するための、前記測定チャネル内に配置された少なくとも1つのセンサ要素と、を有し、前記センサハウジングは、前記流動媒体の主流れ方向の方を向いた、前記チャネル構造への入口と、前記チャネル構造からの少なくとも1つの出口と、を有し、前記チャネル構造は、壁部分により画定される、前記センサにおいて、前記チャネル構造の内側の前記壁部分は、少なくとも部分的に電気的絶縁特性を有し、前記チャネル構造の外側の前記壁部分に隣接する前記センサハウジングの領域は、導電特性を有し、前記壁部分は、電気絶縁材料で製造され、前記センサハウジングの、前記壁部分に隣接する前記領域は、導電材料で製造され、前記電気絶縁材料は、絶縁性プラスチックであり、前記導電材料は、導電性プラスチックであり、前記壁部分に隣接する前記領域は、センサ接地と電気的に接続される、センサ」である点。
イ 相違点
センサ要素が、本願発明は「センサチップ(34)」であるのに対して、引用発明は「ホットワイヤ1」及び「コールドワイヤ2」である点。
3 判断
(1) 相違点についての検討
前記相違点について検討する。
前記1(2)ウで認定したとおり、「熱式流量センサのセンサ素子として半導体チップを用いること」は周知技術であるから、引用発明において、センサ素子の小型化等のために、ホットワイヤ1及びコールドワイヤ2に代えて半導体チップを採用することは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(2) 効果についての検討
本願発明の奏する効果についても、本願発明の構成が奏するものとして、技術水準から当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
(3) 相違点の判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張について
(1) 審判請求書における請求人の主張内容
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請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 主張1 支持部材8を壁部分(50)と認定することに対して
引用文献3には「そして、貫通孔16部分を除いて導電性ケース6には、合成樹脂材の支持部材8が充填され、この支持部材8には導電材の支持ピン9が固定保持されている。」(第3頁左上欄第11~14行)と記載されており、引用文献3記載の発明の「支持部材8」を上記説示のように「壁」と認定することは適切ではない。
イ 主張2 支持部材8の外側に導電性ケース6が位置するとの認定に対して
引用文献3第3図の記載から明らかなように、引用文献3記載の発明の「貫通孔16」からみて「支持部材8」の外側に「導電性ケース6」があるわけではなく、引用文献3の「支持部材8」「導電性ケース6」について、上記説示のように「貫通孔16の内側の壁部分8」「貫通孔16の外側の壁部分に隣接するハウジング6、8の領域6」と認定することも適切ではない。
したがって、引用文献3記載の発明の「支持部材8」「導電性ケース6」を請求項1に係る発明の「前記チャネル構造(14)の内側の前記壁部分(50)」「前記チャネル構造(14)の外側の前記壁部分(50)に隣接する前記センハウジング(12)の領域(52)」と対比することも適切ではない。
ウ 小括
したがって、令和3年11月30日拒絶査定は引用文献3記載の発明の認定を誤ったものであり、その結果として、請求項1に係る発明と引用文献3記載の発明の相違点を看過したものである。
(2) 請求人の主張についての検討
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ア 主張1についての検討
本願発明の「壁部分(50)」は、それによりチャネル構造(14)が画定されるものであるところ、引用発明の「支持部材8」は貫通孔16に沿って貫通孔16の大部分を囲んでいるものと認められ、貫通孔16は、貫通孔16部分を除いて導電性ケース6に充填される支持部材8によって画定されるといえるから、引用発明の「支持部材8」は本願発明の「壁部分(50)」に相当することは、前記2(1)エ(イ)及び(ウ)で説示したとおりである。 請求人の主張には、合議体の認定を覆す根拠は認められないから、採用できない。
イ 主張2についての検討
引用発明の「支持部材8」は、貫通孔16に沿って貫通孔16の大部分を囲んでおり、本願発明の「壁部分(50)」に相当するから、本願発明の「前記チャネル構造(14)の内側の前記壁部分(50)」に相当することは前記2(1)オ(ア)において検討したとおりである。
また、引用発明の支持部材8は、概略円柱に貫通孔16を形成した形状であり、貫通孔16部分を除いて円筒状の導電性ケース6に充填されたものであるから、円柱状の支持部材8における貫通孔16の第2図(前記1(1)ア(カ))における左右方向外側には、導電性ケース6が隣接して位置していることは前記2(1)カ(ア)で検討したとおりである。
請求人の主張は、合議体の認定内容を覆すに足るものではないから、採用できない。
5 当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-005020