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特許拒絶査定不服審判

2022-004235

配列検出システムの調整および較正の特徴

審判番号
2022-004235
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-568770
請求日
2022年03月22日
審決日
2024年03月05日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】イルミナ インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】松谷 道子
  • 【請求人代理人】江間 晴彦
  • 【請求人代理人】佐藤 剛
審判長/審判官
  • 審判長 上條 肇
  • 審判官 福井 悟
  • 審判官 加々美 一恵
分類
P18 .536-WZ (C12M) / P18 .537-WZ (C12M) / P18 .65 -WZ (C12M) / P18 .113-WZ (C12M) / P18 .121-WZ (C12M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-568770「配列検出システムの調整および較正の特徴」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月21日国際公開、WO2019/055856、令和 2年11月26日国内公表、特表2020-533951〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年9月14日(パリ条約による優先権主張 2017年9月15日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年 3月18日付け 拒絶理由通知書 令和3年 6月29日 意見書、手続補正書の提出 令和3年11月19日付け 拒絶査定 令和4年 3月22日 拒絶査定不服審判の請求 令和5年 5月30日付け 拒絶理由通知書 令和5年12月27日 意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~20に係る発明は、令和3年6月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 ターゲット内のエンティティと特異的に相互作用する場合に1つ以上の機械的変化を示す機械的変化センサー、ここに各々のエンティティはタイプを有し; 1つ以上の機械的変化を信号に変換する機械的変化-信号トランスデューサー; 信号を使用してターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定する分析サブシステム;および 1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化し、および 配列-検出システムを制御して、信号を生成し、信号のサンプルを収集し、および信号を分析してターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定する 制御サブシステム を含む配列検出システム。」 第3 当審で通知した拒絶理由の概要 令和5年5月30日付けで当審が通知した拒絶理由は、下記の理由3(実施可能要件)、理由4(サポート要件)及び理由5(明確性要件)を含むのである。それらの理由の概要は、以下のとおりである。 理由3(実施可能要件) 本願明細書の記載からでは、ヌクレオチド配列(ターゲット内のエンティティのタイプの配列)を決定できる「機械的変化を信号に変換する機械的変化-信号トランスデューサー」、「信号を使用してターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定する分析サブシステム」、「制御サブシステム」を理解することができない。 よって、これらを具体化し、機能させること、更に、これらよりターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定することは、当業者に過度の試行錯誤、実験を要すると認められるので、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由4(サポート要件) 請求項1に係る発明の解決しようとする課題は、ターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定できる配列検出システムの提供であると認められる。 本願明細書には、「第1のタイプ」、「第2のタイプ」(図12の「第1の実施形態」、「第2の実施形態」)という2つのシステムが記載されている。 本願明細書には、「第1のタイプ」のシステムに関し、図1~11などを用いて説明がなされているが、「機械的変化-信号トランスデューサー」、「分析サブシステム」、「制御サブシステム」として、具体的にどのような装置やシステムを使用するかについて十分な説明がなされていない。 また、請求項1に係る発明が、図13に関する「第2のタイプ」のシステムと解しても、「機械的変化-信号トランスデューサー」、「分析サブシステム」、「制御サブシステム」として、具体的にどのような装置やシステムを使用すれば、ヌクレオチド配列(ターゲット内のエンティティのタイプの配列)を決定できるのか、理解することはできない。 よって、請求項1に係る発明は、上記の課題を解決できることを当業者が認識できるように本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは認められないので、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由5(明確性要件) 請求項1には、「ターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定する分析サブシステム」、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化し、および、配列-検出システムを制御して、信号を生成し、信号のサンプルを収集し、および信号を分析してターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定する、制御サブシステム」が記載されているが、本願の図13、11、12等を参照しても、「分析サブシステム」、「制御サブシステム」が具体的に如何なるものか、理解、特定できない。 更に、「制御サブシステム」についてみれば、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」における「操作パラメータ」が具体的に何であるのか不明であり、「配列-検出システム」の「初期化」も具体的に如何なる技術的事項を意図しているのか、本願の出願時の技術常識に照らしても、理解、特定できない。 よって、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第4 本願明細書等の記載 この出願の願書に添付した明細書及び図面(以下、明細書、図面を、「本願明細書」、「図面」といい、これらを総称して「本願明細書等」ということがある。)には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。)。 本a 「【0003】 概要 本明細書では、ターゲット内のエンティティと特異的に相互作用する場合に1つまたはそれを超える機械的変化を示す機械的変化センサーを含む検出システムを論じる。各エンティティは、タイプ、1つまたはそれを超える機械的変化を信号に変換する機械的変化-信号トランスデューサー、および信号を使用してターゲット内のエンティティのタイプを決定する分析サブシステムを有する。本明細書は、活性部位内のヌクレオチドポリリン酸と特異的に会合する場合に機械的変化を示す核酸-ポリメラーゼ機械的変化コンポーネント;核酸-ポリメラーゼ機械的変化コンポーネントにおける機械的変化を出力信号に変換する機械的変化-信号トランスデューサー、および核酸ポリマーターゲット内のモノマータイプの配列を外部信号を使用して決定する分析サブシステムを含む、配列検出システムをさらに論じる。」 本b 「【発明を実施するための形態】 【0034】 本明細書では、ターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定し得る信号を生成する配列ディテクターを論じる。・・・配列ディテクターは、信号を分析してエンティティタイプの配列を決定する、マイクロプロセッサ制御の信号分析コンポーネントなどのコンポーネントを含んでもよい。ターゲットにはエンティティの配列が含まれ、各エンティティにはタイプがある。・・・本明細書においては、ターゲットおよび対応する配列ディテクターの2つの異なる例について、以下の2つのサブセクションで論じている。第1の例のターゲットは、ストリングまたはワイヤで一緒に接続されたマクロスケールオブジェクトの線形配列である。各オブジェクトは、4つの異なる形状のいずれか1つを有する。オブジェクトのタイプは、オブジェクトの形状に対応する。第1の対応する配列ディテクターは、ターゲットが機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーが各オブジェクトと特異的に相互作用し、可変レジスターによるオブジェクトの形状の電気信号特性に変換される機械的変化センサーにおける機械的変化を生じる際に、時間変化する電気信号を生成する。第2の例のターゲットは、共有結合によって互いに結合したモノマーの配列を含む生体高分子である。以下の説明で例として使用するDNAおよびRNAポリマーにおいては、化学組成および構造が互いに異なる4つの一般的に発生する異なるタイプのモノマーがあり、追加のタイプのモノマーはあまり発生しない。第2の対応する配列ディテクターは、ターゲット生体高分子が機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーがモノマーと特異的に会合して機械的変化センサー内における機械的変化を生じ、ついでそれがカップラーによって可変レジスターに連絡される際に、時間変化する電気信号を生成する。これらの2つのタイプのディテクターは例であって、他の構成も存在し、実施し得る。」 本c 「第1のタイプの機械的変化ベースの電気機械的配列ディテクター 【0035】 図1は、1つの例において、最初の(タイプの)機械的変化ベースの配列ディテクター、へのターゲット入力、および決定された配列表示出力を示す。ターゲット102は、オブジェクト104~116の線形配列である。この例では、ターゲットに含まれるオブジェクトには4つの異なるタイプが存在する:(1)タイプaという円筒形オブジェクトタイプ120;(2)タイプbという立方体オブジェクトタイプ122;(3)タイプcという球体オブジェクトタイプ124;および(4)タイプdという四角錐オブジェクトタイプ126。ターゲット102は、オブジェクト104~116がしっかりと取り付けられるワイヤまたはコードなどの線形間隔部材130を含む。ターゲットは、ターゲット内のオブジェクトタイプ132の配列の記号表示を出力する第1のタイプの配列ディテクターに機械的に入力される。 【0036】 図2は、第1のタイプの機械的変化ベースの配列ディテクターをベースとする配列検出システムの1つの実施形態を示す。配列検出システム202には、ターゲット206が機械的に入力される機械的変化ベースの配列ディテクター204が含まれる。機械的変化ベースの配列ディテクターは、ターゲット208を機械的に出力し、電気信号210を分析サブシステムに出力する。分析サブシステムは、特定の配列ディテクターのコンピュータシステム212で実行されるコンピュータプログラムとして実装され、電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列を決定し、オブジェクトタイプ214の決定した配列をコンピュータディスプレイデバイス216上に出力する。・・・ 【0037】 図3A~3Fは、1つの例において、図2に示す配列検出システムの機械的変化センサーコンポーネントを示す。図3Aに示すように、機械的変化センサーコンポーネント302は、タイン306を含む多数の柔軟なバネ状のタインが取り付けられた剛性の円形リング304を含む漏斗型デバイスである。・・・機械的変化センサーコンポーネントを通過すると、オブジェクトは図3Fに示すように柔軟なタインを外側に押し、機械的変化コンポーネントの漏斗形状をゆがめる。 【0038】 図4は、1つの例において、図2に示す配列検出システム内の機械的変化-検出サブシステムによる機械的変化センサーコンポーネントの形状の変化からの電圧信号の生成を示す。図4の左手側には、機械的変化センサーコンポーネントの漏斗様形状が歪んでいない場合の機械的変化-検出サブシステム402が示されている。図4の右側には、機械的変化センサーコンポーネントの漏斗様形状が、機械的変化-センサーコンポーネント内のオブジェクトの存在によって歪んだ場合の、機械的変化-検出サブシステム404が示されている。機械的変化-検出サブシステム402には、機械的変化センサーコンポーネント302、ポテンショメーター406、および電圧計408が含まれる。機械的変化センサーコンポーネント302は、一端が機械的変化センサーコンポーネントのタイン412の1つに取り付けられ、もう1つの端が摺動可能なポテンショメーターアーム414に取り付けられたコードまたはワイヤ410によってポテンショメーター406に機械的に接続されている。コードまたはワイヤ410は、3つの自由に回転するプーリー416~418を通過する。摺動可能なポテンショメーターアーム414は、ポテンショメーターアームシリンダ422内の弱いバネ420の力に抗してタイン412によって第1の位置に保持される。図4の右手側に示すように、オブジェクトの存在によって機械的変化センサーコンポーネントが歪むと、タイン412が下向きに押され、その結果、摺動可能なポテンショメーターアーム414がポテンショメーターアームシリンダー422内のバネ420によって上向きに引っ張られる。この例では、ポテンショメーター406は可変レジスターとして機能する。可変レジスターは、変更可能な電流フローに対する抵抗を備えた回路エレメントであり、ポテンショメーターは可変レジスターの一例である。図4の左手側に示す位置では、ポテンショメーターアームは抵抗426下方のポテンショメーター回路424に接続されており、その結果、電圧計408を通過する場合に電圧の低下はほとんどまたは全くない。しかしながら、ポテンショメーターアームが図4の右手側に示す位置にある場合、ポテンショメーターアームは抵抗428の途中のポイントでポテンショメーター回路424に接続され、その結果、電圧計を通過する場合に著しい電圧降下が存在する。したがって、機械的変化-検出サブシステムは、機械的変化センサーコンポーネントの形状の歪みの程度に応じて、変化する電圧信号を生成する。出力電圧信号の大きさは、機械的変化センサーコンポーネントの歪みの程度に対応する。 ・・・ 【0040】 図6A~6Dは、1つの例において、ターゲット内で発生する4種類のオブジェクトの各々によって生成される電圧信号を示す。・・・データは、矢印624などの矢印、および垂直破線626および628などの垂直破線によって図6Aー6Dの各プロットに示すように、電圧信号がピーク高さの半分まで上昇したときに開始し、信号がピーク高さの半分まで戻ったときに終了する各電圧ー信号曲線の領域から収集される。分析サブシステムは、各々のオブジェクト表示電圧ー信号曲線、平均電圧大きさ630のような平均電圧の大きさμ、分散632のような分散σ2、および面積634のような電圧ー信号曲線下の面積Aから計算する。 ・・・ 【0045】 図9を参照して論じたように、配列検出システムの分析サブシステムによる平均電圧の大きさおよび分散を含む2つの派生値の使用は、図1を参照して記載するターゲットが各オブジェクトまたはターゲット内のエンティティを同定するのに十分である。 【0046】 図11は、図1~10を参照して先に論じた配列検出システムをまとめたものである。オブジェクトまたはエンティティの配列1102を含むターゲットは、配列検出システム1104に入力され、機械翻訳コンポーネント1108によって機械的変化コンポーネント1106を介して機械的に翻訳される。電源1110は、機械翻訳のための電力を提供する。機械的変化コンポーネント1106は、カプラー1112によって可変抵抗コンポーネント1114に機械的に結合されている。機械的カプラーは、マクロスケールデバイスではストリングやコードなどの物理的カプラー、あるいはナノスケールおよびマイクロスケールデバイスではDNAポリマーなどの線形分子によって2つ以上のエンティティを結合する。可変抵抗コンポーネント1114は、機械的変化コンポーネント1106の形状の変化によって引き起こされるカプラー1112の動きに応答して、電流1116に対する可変抵抗を提供する。電源1118は、電流フロー1116を駆動する。測定コンポーネント1120は、機械的変化コンポーネント1106の形状の変化とともに変化する出力電気信号1122を生成するために、電流フローチャネルまたは電流フロー自体の電位を測定する。出力信号は、図11には示されていない分析サブシステムによって計算処理され、ターゲット1102中のオブジェクトタイプの配列の表示を生成する。」 「 [図:0001412542000001.jpg] 」(図1) 「 [図:0001412542000002.jpg] 」(図2) 「 [図:0001412542000003.jpg] 」(図4) 「 [図:0001412542000004.jpg] 」(図9) 「 [図:0001412542000005.jpg] 」(図11) 本d 「第2のタイプの機械的変化ベースの電気機械配列ディテクター 【0047】 本明細書で論じている第2の(タイプの)配列検出システムは、マクロスケール、マイクロスケール、およびナノスケールのコンポーネントを含む混合スケールのデバイスである。第2の配列検出システムは、核酸ポリマー内のデオキシヌクレオチドモノマーの配列を決定する。 【0048】 ・・・第1の配列検出システムでは、ターゲットの機械翻訳の電源はバッテリーまたは線電流から得られる電流であるのに対し、第2の配列検出システムでは、ターゲットの機械翻訳の電源はホスホアンヒドリド結合の加水分解および無機ピロリン酸塩の加水分解により生成された化学エネルギーである。第1の配列検出システムでは、ターゲットを翻訳する機械翻訳器は2対の逆回転電気モーター駆動ギアドラムであり、表2の行1210に示されているとおり、第2の配列検出システムでは、機械翻訳器はE.coli DNAポリメラーゼのクレノウ・フラグメントである。第1の配列検出システムにおいては、機械的変化コンポーネントは一連の漏斗様のばねまたは剛毛であり、第2の配列検出システムでは、表の3行目1212に示すように、機械的変化コンポーネントはDNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントである。第1の配列検出システムにおいては、カプラーはコードまたはワイヤであり、第2の配列検出システムでは、表の4行目1214に示すように、カプラーはDNAポリマーである。第1の配列検出システムでは、可変レジスターはポテンショメーターであり、第2の配列検出システムでは、表の5行目1216に示すように、可変レジスターはMspAーポリンチャネル内に存在するDNAポリマーカップラーの一部分である。・・・したがって、第1および第2の配列検出システムは、構成と操作が互いに似ているが、異なる特定のタイプのコンポーネントを含む。 【0049】 図13は、1つの例において、第2の配列検出システムに含まれる機械的変化ベースの配列ディテクターを示す。以下の議論では、機械的変化ベースの配列ディテクター1302を「セル」という。以下の議論では、機械的変化ベースの配列ディテクター1302を「セル」という。図13の図は、さまざまなコンポーネントの相対的なサイズおよび体積を反映していない。多くの実施形態においては、セル1302はマクロスケールまたはマイクロスケールのデバイスであるが、機械的変化センサーコンポーネント1304はナノスケールのコンポーネントである。図13は、コンポーネントの相対的なスケールを正確に描写するのではなく、機械的変化ベースの配列ディテクターのさまざまなコンポーネントの全体的な構成ならびに相対的な位置および向きを示すことを目的としている。 【0050】 セル1302は、テフロンバリア1312および脂質二重層1314によって第2の溶液含有チャンバー1310から分離された第1の溶液含有チャンバー1308を備えた2部分容器1306を含む。1つの実施形態において、脂質二重層は、1,2ージフィタノイルーsnーグリセロールー3ーホスホコリンを含む。テフロンバリアは、脂質二重層で覆われた開口部1316を含むため、第1の溶液含有チャンバー1308および第2の溶液含有チャンバー1310は、開口部1316内の脂質二重層のみによって分離される。脂質二重層を通る狭いチャネル1316は、マイコバクテリアのポリン(「MspAポリン」)、8回転対称性を有する8量体のタンパク質凝集体によって提供される。狭いチャネルは、2つの溶液含有チャンバー間でイオンの受動拡散を可能にするのに十分な幅である。第1および第2の溶液含有チャンバー1308および1310は、pH 8.0の緩衝液を含む。・・・第1の溶液含有チャンバー1308には、デオキシヌクレオチド三リン酸およびプライマー関連デオキシリボ核酸テンプレートがさらに含まれる。プライマー関連デオキシリボ核酸テンプレート1318~1319は、第2の配列検出システムによってデオキシヌクレオチドモノマーの配列が決定されるターゲットである。ある種の実施形態において、第2の溶液含有チャンバー1310には、以下に論じるロックコンポーネントがさらに含まれる。第2の溶液含有チャンバー1310内の溶液は正電極または参照電極1320と流体接触し、第1の溶液含有チャンバー1308内の溶液は、負電極1322と流体接触する。 ・・・電極を通してセルに電圧が印加されると、負イオンはポリンチャネルを通って正の陽極に向かって流れ、正イオンはポリンチャネルを通って負の電極に向かって流れる。1つの例において、DNAまたはRNAポリマーが細孔内に存在する場合、マイナスイオンの下向きの流れを抑制し得る。・・・ 【0051】 別の実施形態において、テフロンバリアおよび脂質二重層を使用するのではなく・・・合成ポリマー膜が使用する。1つの例において、トリブロックコポリマーを膜に使用し得る。・・・ 【0052】 1つの実施形態において、機械的変化センサーコンポーネント1304は、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントである。クレノウ・フラグメントは、プロテアーゼで処理するかまたは遺伝子組み換え細菌株から目的の断片を発現させることにより、E.coli DNAポリメラーゼIから5’→3’エキソヌクレアーゼ構造ドメインを除去することにより得られる。クレノウ・フラグメントは、5’→3’重合機能を保持している。さらに後述するように、プライマー関連DNAテンプレートおよびデオキシヌクレオチド三リン酸を供給すると、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントは、デオキシヌクレオチド三リン酸の逐次重合を触媒して、配列に相補的なコピーDNA鎖をテンプレートDNA鎖に形成する。結合成分1324は、DNAポリマーテザーである。それは、DNAポリマーは負に帯電し、印加電圧下で正極に向かって移動するため、機械的変化センサーコンポーネント1304に取り付き、電極に印加される電圧によってポリンチャネルに引き込まれる。以下にさらに論じるように、ポリンチャネル内の狭いくびれにまたがるDNAポリマーテザーの小さな領域は、狭いくびれに沿って、2つの溶液含有チャンバー間のイオンの流れを調整する可変レジスターとして、狭いくびれに対するDNAーポリマーテザーの小さな領域の位置に依存して異なる程度で一緒に作用する。E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントおよびポリンを含むシステムはE.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント内の活性部位を占める各々の異なるタイプのデオキシヌクレオチド三リン酸に対して差異を示すため、異なるデオキシヌクレオチド三リン酸が活性部位と特異的に会合した場合にDNAーポリマーテザーはポリンチャネル内の狭いくびれに対して異なる動的位置を有し、それは伸長するDNAポリマー鎖内に逐次的に取り込まれる各々の異なるタイプのデオキシヌクレオチド三リン酸についてポリンチャネルを通る異なる動的電流に反映される。分子と活性部位との間の特異的な会合にはキーインロックまたは誘導適合型の会合が含まれ、そこでは、分子の特定の静電気的および化学的な特徴が相補的な静電気的および化学的特徴の活性部位と関連して、活性部位と特異的に会合しない分子に対してよりも分子または分子のクラスに対してより大きな結合親和性に通じる。違いは、1つまたはそれを超えるコンホメーション変化、ポリンチャネルに対するクレノウ・フラグメントの動き、およびその他の変化に起因し得る。以下に論じる電流検出回路は、ポリンチャネルを流れる電流の変化に対応して変化する電圧信号を生成する。別の実施形態においては、上記のクレノウ・フラグメントの代わりに、多くの異なるポリメラーゼ、ポリメラーゼフラグメント、および配列決定のために生体高分子ターゲットと相互作用する他のタイプの生体分子を使用できる。デオキシヌクレオチドヘキサホスフェートなどのより大きなリン酸エステル、異なる炭水化物成分、異なる塩基、および異なる官能基を有するヌクレオチドなど、さまざまなタイプの天然および合成ヌクレオチドを使用できる。多くのさらなるタイプの機械的変化コンポーネントを使用して、さまざまな種類のターゲット生体高分子および合成ポリマーを配列決定することができる。これには、酵素やその他のタンパク質、配列特異的な様式でターゲットタンパク質と相互作用するタンパク質/核酸複合体が含まれる。また、第2の配列検出システムに適用する場合のフレーズ「機械的変化センサーコンポーネント」は、第2の配列検出システムに適用する場合、1つの例として、信号生成が、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化、ポリンに関するポリメラーゼフラグメントの相対的位置の変化、および/またはポリンに関するポリメラーゼフラグメントの向きの変化を示すことを示すことに注意されたい。ある種の実施形態において、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化は、可変レジスターの動きに通じる機械的変化を提供する。最終的に、機械的変化センサーコンポーネント、および機械的変化センサーコンポーネントとターゲットおよび細孔含有成分との相互作用により、可変レジスターの位置に機械的変化が生じる。別の実施形態において、DNAポリマー以外の結合コネクタおよび可変レジスターを使用できる。 【0053】 第1の配列検出システムはマクロスケールシステムであり、第2の配列検出システムはマクロスケールおよびナノスケールのコンポーネントを含む混合スケールシステムであるが、第2の配列検出システムは第1の配列検出システムに類似している。両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントを使用して、機械的変化センサーコンポーネントによって現在処理または関連付けられているオブジェクトまたはエンティティの種類によって異なる機械的信号を生成する。両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントによって処理する、またはそれと会合する現在のオブジェクトまたはエンティティのタイプで変化する機械的信号を生成するために機械的変化センサーコンポーネントを用いる。両方の配列検出システムは、可変抵抗コンポーネントに機械的変化センサーコンポーネントを結合するために機械的結合を採用する。両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントによって生成された機械信号を電気信号に変換することにより、出力電圧信号を生成する。両方の配列検出システムは、出力信号の計算分析を使用して、ターゲット配列内のオブジェクトまたはエンティティのタイプの配列を識別するために一緒に使用される複数の派生値を生成する。第2の配列検出システムでは、検出したデオキシヌクレオチドーモノマータイプの配列は、テンプレート鎖ターゲット内のデオキシヌクレオチドーモノマータイプの配列に相補的であり、逆の極性を有している。」 「 [図:0001412542000006.jpg] 」(図13) 本e 「【0055】 図15は、1つの例において、並列配列決定を提供するセルのアレイを示す。並列配列決定は、システムの配列決定スループットを増大するために使用できる。セルのアレイには、セル1502などの複数のセルと、複数のセルからの電圧信号出力を並行して処理および分析する分析サブシステム1504が含まれる。一般に、配列検出システムによって出力される配列には、機械的変化センサーコンポーネント、機械的に結合し可変抵抗コンポーネント、および電流または電位測定回路を含む、配列検出システムコンポーネントにしばしば存在する種々の異なる操作エラーソースによるエラーが含まれ得る。したがって、望ましい精度のレベルに応じて、複数の同一のターゲットを配列決定し、複数の同一のターゲットについて決定した複数の配列からコンセンサス配列を計算で生成できる。多くの場合、複数のターゲットの配列が望ましい。図15に示すセルのアレイでは、各セルに複数の異なるタイプのターゲットのそれぞれの複数のコピーをロードし得る。セルは、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメントとプライマー会合テンプレートとのランダムな会合に基づいて非決定的な順序で処理され、複数のタイプのターゲットから配列情報を連続的に生成する。分析サブシステム1502は、セル1504などの複数のセルから配列情報を連続的に収集し、各配列を特定のターゲットによって生成された配列のグループに割り当て、その後、各ターゲットのタイプから得られた配列のグループから各々の異なるタイプのターゲットについてコンセンサス配列を集める。並列処理を使用すると、複数のターゲットについて迅速かつ効率的なコンセンサス配列決定ができる。 ・・・ 【0065】 図22A~22Bは、1つの例において、第2の配列検出システムの可変抵抗コンポーネントを示す。図22Aに示すように、DNAーポリマーテザー2202はDNAポリメラーゼ2204に付着し、ポリンチャネルを通って脂質二重層2206の下方のセルの第2の溶液含有チャンバー1310まで伸びている。デオキシヌクレオチド三リン酸は、コピー鎖伸長の間にDNAポリメラーゼの活性部位に特異的に会合しているため、DNAポリメラーゼの動的コンホメーションの変化は、ポリンチャネルの狭い構造2208と比較してDNAーポリマーテザーの翻訳をもたらす。 【0066】 図22Bは、ポリンチャネルの狭い狭窄に関するDNAーポリマーテザーの翻訳が、ポリンチャネルを通るイオンの流れに対する抵抗を変化させることを示す。図22Bは、ポリンチャネル2210~2213内のDNAポリマーテザーの4つの異なる位置を示す。DNAーポリマーテザーは、直径の異なる一連の円として表される。円2216などの大径の円は、1つまたはそれを超えるデオキシヌクレオチドモノマーを表し、それは生まれたチャネルの狭い狭窄2218内に位置する場合に、ポリンチャネルを通るイオン流に高い抵抗を与える。・・・したがって、ポリンチャネル内のDNAポリマーテザーの位置付けは、ポリンチャネルを通るイオン流に対する抵抗を変化させ、DNAポリメラーゼの活性側へのデオキシヌクレオチド三リン酸の特異的な取り込みによって生成される機械的な機械的ー変化信号を、図14A~14Bを参照して先に論じた電流ー電圧変換回路により、出力電圧信号に変換される。 第2のタイプの形状ー変化ベースの配列ディテクターの較正および調整 【0067】 図23は、1つの例において、DNAポリメラーゼを可変抵抗コンポーネントに機械的に結合し、さらに可変抵抗コンポーネントの一部を形成するDNAポリマーテザーのいくつかの特徴を示す。DNAーポリマーテザー2302は、ある種の実施形態において、DNAポリマーテザーがDNAポリメラーゼに結合するリンカー2304、ある種の実施形態において、約6つのデオキシヌクレオチドモノマーを含むプレーレポーター領域2306、一般的に少なくとも4つのデオキシヌクレオチドモノマーを含むレポーター領域2308、および数個から数十個のデオキシヌクレオチドモノマー2310を含むポストーレポーター領域を含む。レポーター領域2308は、DNAポリメラーゼが、第2の配列検出システムの形状変化センサーコンポーネントによって示される形状変化を一緒に含む種々の異なるコンホメーションを示す場合に、ポリンチャネル内の狭い狭窄内にある領域である。種々のDNAポリマーテザー領域の長さは、異なるポリンおよび/または異なるDNAポリメラーゼを使用する異なる実施形態によって変化し得る。領域は、DNAポリマーテザーのDNAポリメラーゼへの付着点とポリンチャネルの狭い狭窄の間の距離、およびDNAポリメラーゼのコンホメーション変化によって誘導されるDNAポリマーテザーの位置の変位範囲によって定義される。 【0068】 図23の下部に示すように、DNAポリマーテザーは、一般的に、ある程度の寸法の柔軟性を有している。セル2312に比較的低い電圧が印加されると、DNAポリマーテザーは種々の緩和状態2314のいずれかに落ち着くが、セル2316に高い電圧が印加されると、DNAポリマーテザーは種々の伸張状態または緊張状態2318のいずれかに落ち着く。所定のデオキシヌクレオチドモノマー2320は、緩和状態ではプレ-レポーターとレポーター領域の境界に存在し得るが、伸張した状態または緊張状態では、同じデオキシヌクレオチドモノマーがレポーター領域内のウェルに存在し得る。セルに印加する電圧を変えることにより、DNAテザーの静止位置またはベースライン位置、特に、ポリンチャネルの狭窄に対するレポーター領域の静止位置またはベースライン位置に対して、比較的細かい調整が行われる。これは、セルの出力電圧の大きさおよび機械的ー電気的信号変換の応答性に関してセルを較正する手段を提供する。 ・・・ 【0076】 図28は、1つの例において、第2のタイプの配列検出システムの操作を構成、較正、および調整するために調整し得る異なるタイプのパラメータをリストしている。最初の列2802には、配列検出の開始前にのみ一般的に調整可能な初期固定値のパラメータが含まれるが、ある種のマイクロ流体および他の実施形態において、セルの溶液を含むチャンバー中の溶液の組成を動的に変更することが可能かもしれず、これらの他のパラメータを動的に調整することが可能かもしれない。第2の列2804は、セルの操作中に調整できる値を有するパラメータを示すが、その調整にはかなりの遅延時間が伴う。第3の列2806は、セルの操作中に容易かつ直接的に調整できる連続的に調整可能なパラメータを含む。この3番目のグループのパラメータは、セルの操作中にコントロールコンポーネントによってセルを微調整するための基礎を提供する。 【0077】 列2802に示されている最初に固定されたパラメータには、セルチャンバーで使用される緩衝液の1つまたはそれを超える一価カチオン/塩化物塩の一価カチオンのタイプ、一価カチオン/塩化物塩の濃度、セルチャンバーで使用される二価カチオン/塩化物塩のタイプおよび濃度、セルチャンバーで使用されるpH緩衝化合物(またはその複数)のタイプ、ジチオトレイトールなどの還元剤を含む他のセルチャンバー緩衝液成分のタイプおよび濃度、DNAポリメラーゼのタイプ、ポリンのタイプ、テザーのタイプおよび構造は、可変抵抗コンポーネントにDNAポリメラーゼを機械的に結合するためにおよび可変抵抗コンポーネントの一部として使用されるテザーのタイプおよび構造、プライマー会合テンプレートのタイプ、プライマー会合テンプレート濃度、ヌクレオチド三リン酸のタイプおよび濃度、膜または二重層の構成要素、電極のタイプ、セルチャンバーの容積、形状および寸法、ならびにセルの他のさまざまなパラメータが含まれる。異なるタイプの電極を使用する場合、異なるタイプの塩を電解質として使用できる。 【0078】 最初に固定されたパラメータの多くは、図26を参照して先に論じたヌクレオチド三リン酸?付加サイクルの長さに直接影響する。ヌクレオチド三リン酸-付加サイクルの長さは、ヌクレオチド三リン酸のタイプおよび濃度、ポリメラーゼのタイプ、緩衝液のpH、および種々のイオン化した塩の濃度に敏感である。1つの例において、ある種の場合においては、K+の代わりにNa+、Li+、Rb+、NH4+および/またはCs+を用いると、ヌクレオチド三リン酸?付加サイクルを延長し、開孔電流を増加させ、または塩基識別を増加させる。これらのカチオンは、これらのカチオンの塩と種々の異なる無機および有機アニオンとを添加することによって導入し得る。他のカチオン、アニオン、および他の溶液成分の濃度は、ヌクレオチド三リン酸-付加サイクルの長さに影響し得る。したがって、第2のタイプの配列検出システムの操作を構成、較正、および調整するために調整できるパラメータとし得る。セルのタイプごとに、列2802に示されているパラメータの値を実験により評価して、最適またはほぼ最適な操作に合わせてセル操作を調整する。これには、ヌクレオチド三リン酸?付加サイクルの長さを調整して、配列決定精度の閾値レベルを保持しつつ望ましい配列決定速度を提供することが含まれる。 【0079】 ある種のパラメータはセル操作中に調整可能で、ヌクレオチド三リン酸-付加サイクルの長さや、第2のタイプの配列検出システムの他の多くの操作特性に大きく影響する。これらは、化学反応およびシステムならびに他の多くのタイプのシステムの決定的で再現可能な結果を得るために変化および制御される古典的なパラメータである。これらのパラメータには、セルおよびその内容物の温度、圧力、およびpHが含まれる。ラグタイムに関連付けられる調整可能なパラメータは、最初に固定されたパラメータと同様に、実験により評価して、望ましいセル操作特性を提供するパラメータ値を選択し得ることに注意されたい。 【0080】 調整可能なパラメータには、セルに印加する電圧の大きさ、印加電圧の極性、ならびに電流-電圧コンバーター回路および分析サブシステムの動作に関連する種々の機器パラメータが含まれ、マイクロ秒、ミリ秒、およびより長い時間尺度でセル操作を微調整する機会を提供する。第2のタイプの配列検出システムの操作を制御するためのこれらのパラメータの使用については、一連の制御フロー図で以下に記載する。 【0081】 図29A~29Cは、1つの例において、ポリンチャネル内にDNAポリマーテザーを確実に保持するためのロックオリゴヌクレオチドの使用を示す。図29Aは、図24で以前に使用したのと同じ図の規則を使用して、ロックオリゴヌクレオチドを有するDNA-ポリマーテザーを示す。図29Aに示すように、ロックオリゴヌクレオチド2902は、DNA-ポリマーテザー2904のデオキシヌクレオチド-モノマー配列の一部に相補的なデオキシヌクレオチド-モノマー配列を有し、水素結合および塩基スタッキングを介してDNA-ポリマーテザーと安定して会合する。図29B~Cは、セル操作中のロックオリゴヌクレオチドの使用を示す。最初は、DNAポリメラーゼ2906およびDNAーポリマーテザー2908は、ポリン2910と会合しない。セル2912に電圧降下を印加すると、DNAポリマーテザーの糸がポリンチャネル2914に通り、DNAポリメラーゼがポア2916内に落ち着く(seat)。次いで、ロックオリゴヌクレオチドは、セルの第2の溶液含有チャンバーに伸びるDNAーポリマーテザー2918の部分と会合する。図29Cに示すように、ロックオリゴヌクレオチドは、逆極性の電圧2922がセルに印加される場合にDNAポリマーテザーがポリンチャネル2920から引き出されるのを防ぐ。その結果、印加された電圧降下2924の元の極性を復元すると、ポリン2926内にDNAポリメラーゼが再度落ち着く(reseat)。しかしながら、はるかに大きな逆の大きさの電圧降下2928を適用すると、ロックオリゴヌクレオチド2930をDNAポリマーテザー2932から剥ぎ取り、DNAポリメラーゼとDNAポリマーテザーがポートから完全に解離するのに十分な力が発生する。ある種の実施形態において、ロックオリゴヌクレオチド以外のロックコンポーネントを使用し得る。例えば、ビオチン基をテザーに結合し、ストレプトアビジンをロックコンポーネントとして使用し得る。別の実施形態においては、他のタイプの生体高分子ロックコンポーネントも使用し得る。 【0082】 図30A~30Hは、第2のタイプの配列検出システムを使用した配列決定プロセスの一例を示す制御フロー図を提供する。ステップには、分析サブシステム内に実装された制御コンポーネントを含む、配列検出システムの制御コンポーネント内の制御ロジックによって実行される自動制御アクティビティが含まれるが、技術者が実行する手動および半手動のステップも含み得る。 【0083】 図30Aは、ルーチンの「検出配列」についての制御-フロー図を提供し、これは、配列検出システムが最初に構成され、その後いくつかの異なる終了条件の1つが発生するまで出力信号を生成するように操作する1つの配列決定の実行を行うための配列検出システムの操作を表す。ステップ3002において、ルーチンの「検出配列」は、それぞれが一定のインデックスに関連付けられる配列ディテクター操作上のパラメータ値のアレイへのポインターparamを受け取る。セルに印加して配列同定情報を含む出力信号を生成する電圧の大きさを含むパラメータなどの特定のパラメータは、param[ボルトを読む]として示し、ここでボルトを読むとはポインターparamによって示されるパラメータのアレイ中のパラメータに関するインデックスである。これらのパラメータ値には、図28を参照して先に論じた種々の固定および調整可能なパラメータの値が含まれる。パラメータ値には、以下にさらに論じるいくつかのしきい値、およびこれも以下に論じる種々のタイミングパラメータも含まれる。ステップ3004においては、ルーチン「セットアップ・セル」は、配列-識別実験用の配列-検出セルを構成することをいう。セル構成には、自動構成ステップ、半自動構成ステップ、および手動構成ステップの1つまたはそれを超えるものが含まれる。テキスト「(param)」は、ポインターparamが引数としてルーチンにパスされることを示す。ステップ3006においては、ルーチンの「シークエンサーを構成する」を呼び出して、配列-ディテクターを準備して出力信号を生成し始める。図30Bに参照して、ルーチンの「シークエンサーを構成する」を以下に論じる。ルーチン「シークエンサーを構成する」がステップ3008で決定される成功の表示に戻る場合、ステップ3010で「シークエンサーを読む」が呼ばれ、配列ディテクターの分析サブシステムによってセルに導入された生体高分子の配列が決定される出力信号を生成する。その他、ルーチンの「シークエンサーを構成する」が失敗表示に戻る場合、ステップ3012においてエラー取り扱いルーチンが呼ばれる。このエラー取り扱いルーチンは配列識別実験用の配列-ディテクターを構成する不可能性を報告し得、ある種の実施形態において、自動化された改善ステップを行って構成の失敗を取り扱い、および/または技術者および他の個人に警告を行う。 【0084】 1つの実施形態において、セルに電圧を印加し、出力電圧信号を分析して、図25を参照して先に論じた配列情報マスキングノイズの期間を探る。配列情報マスキングノイズが検出されると、制御ロジックは、DNAポリマーテザーがポリンチャネルを介して引き込まれたこと、およびDNAポリメラーゼ機械的変化センサーコンポーネントがポリン内に定着したと推測する。ステップ3016で、ローカル変数トライが0に初期化される。ステップ3018では、アレイcurrentDataによって表されるメモリバッファが、信号サンプルを保存するメモリバッファ内の次の位置を示すインデックスnxtSampleとともに初期化される。ステップ3020では、パラメータ値param[電圧を構成]によって示される大きさおよびパラメータparam[Polを構成]によって示される極性を有する電圧が、サンプリングされた出力信号がメモリバッファcurrentDataに収集される間にセルに印加される。ステップ3022では、メモリバッファcurrentData中のデータが分析されて、パラメータ値param[ノイズT]によって示される閾値ノイズレベルを超えるノイズがサンプリングされた信号に観察されるかどうかを判定する。ステップ3024で決定されるように、このようなノイズが観察されると、ルーチンの「シークエンサーを構成する」は、機械的変化-センサーコンポーネントがポリン内に定着したと推測する。ステップ3026で決定されるように、パラメータ値param[ロック]が0に等しくない場合、図29A~29Cを参照して先に論じたように、ステップ3028でテザーがロックされる。その後、ルーチンの「シークエンサーを構成」は成功の表示に戻る。ステップ3024で決定されるようなノイズが観測されない場合、およびステップ3030で決定されるローカル変数トライの値がパラメータ値param[リトライ]よりも小さい場合、ステップ3032において逆極性電圧がセルに簡単に印加され、ステップ3018で開始する、ポリン内にDNA-ポリメラーゼ機械的変化-センサーコンポーネントを再び定着させようとする準備として、ステップ3034でローカル変数トライの値を増分する。ローカル変数トライに保存された値が、ステップ3030で決定されたパラメータparam[リトライ]の値以上である場合、失敗の指示がルーチン「シークエンサーを構成」によって戻される。 【0085】 図30Cは、図30Aのステップ3010で「配列を読む」と呼ぶルーチンの制御-フロー図を提供する。ルーチン「配列を読む」は、配列検出システムによって行われる配列決定の実行を表す。ルーチン「配列を読む」は、終了条件が発生するまで一連の電圧-印加サイクルを繰り返す。ステップ3040において、アレイcurrentDataによって表されるメモリバッファは、信号サンプルを保存するメモリバッファ内の次の位置を示すインデックスnxtSampleとともに初期化される。ステップ3042で、ルーチン「配列を読む」は、param[ボルトを読む]および極性パラメータ[Polを読む]の電圧をパラメータバッファ[間隔を読む]で示される時間だけセルに適用し、メモリバッファcurrentDataにサンプリングされた出力信号を収集する。ステップ3044で、ルーチン「配列を読む」は次に、パラメータparam[間隔を逆転]で示される時間の長さにわたって、大きさparam[電圧を逆転]および極性param[Polを逆転]の電圧をセルに印加する。この逆の極性の電圧印加は、図25を参照して先に論じたように、シーケンス情報マスキングノイズの発生を抑制する。ステップ3046で、ルーチン「配列を読む」は、ルーチン「終了をチェック」を呼び出すことにより、終了イベントをチェックする。ステップ3048で決定されるように、終了イベントが発生すると、ルーチン「配列を読む」が戻る。そうでない場合、制御は別の電圧印加サイクルのステップ3042に戻る。図30Bは、図30Aのステップ3010でルーチンの「シークエンサーを構成」という制御ーフロー図を提供する。ルーチンの「シークエンサーを構成」は、配列ー決定実験を行うための配列検出システムの構成を示す。 ・・・ 【0086】 図30Dは、図30Dのステップ3046で呼び出されるルーチン「終了をチェック」の制御フロー図を提供する。・・・ 【0087】 本発明を特定の実施形態に関して説明したが、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではない。本発明のスピリット内での修正は、当業者に明らかであろう。例えば、特定の配列検出システムは、種々の異なるタイプの機械的変化センサーコンポーネント、機械的カプラー、可変抵抗コンポーネント、電気信号生成コンポーネントおよび回路を使用できる。たとえば、特定の配列検出システムでは、さまざまな種類の機械的変化センサーコンポーネント、機械的カプラー、可変抵抗コンポーネント、電気信号生成コンポーネントおよび回路を使用し得る。例えば、前記した第2の配列検出システムは、異なるDNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼフラグメントを使用し、異なるポリンを使用し、異なるタイプのポリマーを含む異なるタイプの機械的カプラーを使用し、多くの異なる形状、サイズ、および構成のセルを用い得る。MspAーポリンの代わりに使用できるポリペプチド細孔の例には、αーヘモリシン、Mycobacterium smegmatisポリンA、グラミシジンA、マルトポリン、OmpF、OmpC、PhoE、Tsx、Fーpilus、SP1、ミトコンドリアポリン(VDAC)、Tom40、外膜ホスホリパーゼA、およびナイセリア自動輸送体リポタンパク質(NaIP)が含まれる。先に論じたクレノウ・フラグメントに代えて使用できるポリメラーゼまたはその断片の例には、T7 DNAポリメラーゼ、真核生物ミトコンドリアDNAポリメラーゼγ、E.coli DNA Pol I、Thermus aquaticのPol I、Bacillus stearothermophilus Pol、真核生物DNAポリメラーゼα、δ、およびε、DNAポリメラーゼζ、T4 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、RB69バクテリオファージDNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼIII アルファサブユニット、古細菌Euryarchaeotaサブドメイン由来のポリメラーゼ、真核生物ポリメラーゼPolβ、Polσ、Polλ、Polμ、S.cerevisiae Pol4、Polη、Pol イオタ、Pol カッパ、E.coli Pol IV(DINB)、E.coli Pol V(UmuD’2C)、レトロウイルス逆転写酵素および真核生物テロメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼなどのウイルスRNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼI、RNAポリラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、RNAポリメラーゼVなどの真核生物RNAポリメラーゼ、および古細菌RNAポリメラーゼが含まれる。別のテザーの例には、PEG(ポリエチレングリコール)、PPG(ポリプロピレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)、およびPE(ポリエチレン)のような合成ポリマーが含まれる。さらに、例えば、DNA、RNA、PNAまたはLNAラベル、モルホリノ、または鏡像異性DNAが含まれる。・・・多数の異なるタイプの修飾デオキシヌクレオチド三リン酸を、7ーデアザ デオキシアデノシン三リン酸に加えて、コピー鎖伸長に使用し得る。コピー鎖伸長は、テンプレート鎖の配列を決定するためにのみ使用されるため、配列決定中に生成されるコピー鎖の化学組成は、第2の配列検出システムの正常な操作とは無関係である。」 「 [図:0001412542000007.jpg] 」(図15) 「 [図:0001412542000008.jpg] 」(図28) 第5 当審の判断 事案に鑑み、理由5、理由4、理由3の順で検討する。 1.理由5(明確性要件)の検討 (1)明確性要件の判断規範 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、その技術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものと解される。 (2)「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」する「制御サブシステム」について 本願明細書の【0076】には「図28は、1つの例において、第2のタイプの配列検出システムの操作を構成、較正、および調整するために調整し得る異なるタイプのパラメータをリストしている。最初の列2802には、配列検出の開始前にのみ一般的に調整可能な初期固定値のパラメータが含まれるが、ある種のマイクロ流体および他の実施形態において、セルの溶液を含むチャンバー中の溶液の組成を動的に変更することが可能かもしれず、これらの他のパラメータを動的に調整することが可能かもしれない。」との記載があり、同【0077】~【0080】及び図28には、pH緩衝液のタイプ、ポリメラーゼのタイプ、ポリンのタイプを始めとする多数のパラメータが列挙されているが(いずれも本e)(下線は当審で付与した。以下、同様。)、配列-検出システムを初期化するために用いられる操作パラメータが多数挙げられたパラメータのうちのどれであるのか、また、その操作パラメータが如何なる条件に至った場合に配列-検出システムが初期化されるかについての記載は、本願明細書に何ら存在しない。 また、本願明細書には、【0084】、【0085】以外に「初期化」の文言はなく、【0084】、【0085】においても、それぞれ「1つの実施形態において、セルに電圧を印加し、出力電圧信号を分析して、図25を参照して先に論じた配列情報マスキングノイズの期間を探る。配列情報マスキングノイズが検出されると、制御ロジックは、DNAポリマーテザーがポリンチャネルを介して引き込まれたこと、およびDNAポリメラーゼ機械的変化センサーコンポーネントがポリン内に定着したと推測する。ステップ3016で、ローカル変数トライが0に初期化される。ステップ3018では、アレイcurrentDataによって表されるメモリバッファが、信号サンプルを保存するメモリバッファ内の次の位置を示すインデックスnxtSampleとともに初期化される。」、「図30Cは、図30Aのステップ3010で「配列を読む」と呼ぶルーチンの制御-フロー図を提供する。ルーチン「配列を読む」は、配列検出システムによって行われる配列決定の実行を表す。ルーチン「配列を読む」は、終了条件が発生するまで一連の電圧-印加サイクルを繰り返す。ステップ3040において、アレイcurrentDataによって表されるメモリバッファは、信号サンプルを保存するメモリバッファ内の次の位置を示すインデックスnxtSampleとともに初期化される。」との記載があるだけで(いずれも本e)、これらの箇所の初期化が、同【0077】~【0080】、【0083】及び図28に多数列挙された操作パラメータのうちのどの操作パラメータに従ったものか、また、操作パラメータがどの条件に至った場合に配列-検出システムが初期化されるかについての記載は本願明細書に存在しない。 そして、本願明細書の他の記載や本願の出願時の技術常識を参酌しても、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」する「制御サブシステム」が、具体的に如何なるものであるかについて、当業者は理解し、特定することができないので、請求項1の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確というべきである。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和5年12月27日提出の意見書において、「本願の図28は、初期固定パラメータのリスト2802、初期固定だが調整可能なパラメータのリスト2804、および継続的に調整可能なパラメータのリスト2806を含む動作パラメータのリストを示す。・・・これらのパラメータは、本出願の段落[0076-0080]で説明されています。・・・図30A~Dに提供される制御フロー図は、制御サブシステムの動作を示し、ステップ3002、3020、3042、3044、および3052を含む、制御パラメータが受信され、適用され、使用されるステップを示します。2つの実施形態の操作特徴は、上で引用した段落を含め、本願全体で詳細に説明されており、図28に列挙され、本願の段落[0076-0080]で説明されている動作パラメータと、配列検出システムの制御との関係を理解するための完全かつ完全な基礎を提供します。出願人は、上記の詳細な議論および図を考慮すると、「動作パラメータ」は明らかであると確信します。」、「配列検出システムの初期化については、以下の段落[0083]で説明されています。」と指摘し、更に、「上記の文章およびイラストのすべてが、「機械的変化センサー」、「機械的変化信号トランスデューサー」、「分析サブシステム」、「配列検出システム」、「操作パラメータ」、「配列検出システムの初期化」、「信号」、「ターゲット」、および「エンティティ」という語句の意味を完全かつ完全に説明していると確信します。」等と指摘する。 しかし、審判請求人が指摘する全ての箇所を参照しても、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」という文言は全く見当たらないし、審判請求人が「配列検出システムの初期化」が記載されていると主張している【0083】を参照しても、「初期化」の文言はなく、【0083】に、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」に対応した具体的な記載があるとは認められない(そもそも、審判請求人は、【0083】を摘記するだけで、かかる箇所の記載が、「配列検出システムの初期化」に対応していることについて具体的な説明を行っていない。)。 そうすると、審判請求人の上記指摘を考慮に入れても、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」する「制御サブシステム」が具体的に如何なるものか理解、特定することはできないから、令和5年5月30日付け拒絶理由通知書で示した明確性要件違反の拒絶理由が解消するとはいえない。 よって、審判請求人の主張は、理由がない。 (4)理由5(明確性要件)の検討のまとめ 以上からすると、この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.理由4(サポート要件)の検討 (1)サポート要件の判断規範 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。 (2)本願発明が解決しようとする課題 本願明細書の【0003】に「本明細書では、ターゲット内のエンティティと特異的に相互作用する場合に1つまたはそれを超える機械的変化を示す機械的変化センサーを含む検出システムを論じる。各エンティティは、タイプ、1つまたはそれを超える機械的変化を信号に変換する機械的変化-信号トランスデューサー、および信号を使用してターゲット内のエンティティのタイプを決定する分析サブシステムを有する。」と記載されることから、本願発明が解決しようとする課題は、ターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定できる配列検出システムを提供することにあると認められる。 (3)サポート要件の検討 ア.「制御サブシステム」について 本願発明の「配列検出システム」は、「配列-検出システムを制御して、信号を生成し、信号のサンプルを収集し、および信号を分析してターゲット内のエンティティのタイプの配列を決定する制御サブシステムを含む」ものであるが、第5の1(2)、(3)で検討したとおり、本願明細書には、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」する「制御サブシステム」について具体的に説明する記載はなく、本願の出願時の技術常識に照らしても、当該「制御サブシステム」が具体的にどのような装置、システムであるのかについて当業者は理解、特定することができない。 したがって、本願発明は、「制御サブシステム」に関して、上記(2)で示した課題を解決できることを当業者が認識できるように本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。 イ.「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」について 本願明細書によると、本願発明は、「第1のタイプ」(本c)、「第2のタイプ」(本d)の2つの実施形態を含むものである。 以下では、それぞれのタイプにおける「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」について検討する。 (ア)第1のタイプについて 本願明細書には、「第1のタイプ」の「分析システム」に関する記載として、本願明細書の【0034】に「第1の例のターゲットは、ストリングまたはワイヤで一緒に接続されたマクロスケールオブジェクトの線形配列である。各オブジェクトは、4つの異なる形状のいずれか1つを有する。オブジェクトのタイプは、オブジェクトの形状に対応する。第1の対応する配列ディテクターは、ターゲットが機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーが各オブジェクトと特異的に相互作用し、可変レジスターによるオブジェクトの形状の電気信号特性に変換される機械的変化センサーにおける機械的変化を生じる際に、時間変化する電気信号を生成する。」(本b)、同【0036】に「機械的変化ベースの配列ディテクターは、ターゲット208を機械的に出力し、電気信号210を分析サブシステムに出力する。分析サブシステムは、特定の配列ディテクターのコンピュータシステム212で実行されるコンピュータプログラムとして実装され、電気信号を処理してターゲット内のオブジェクトタイプの配列を決定し、オブジェクトタイプ214の決定した配列をコンピュータディスプレイデバイス216上に出力する。」(本c)、同【0038】に「機械的変化-検出サブシステムは、機械的変化センサーコンポーネントの形状の歪みの程度に応じて、変化する電圧信号を生成する。出力電圧信号の大きさは、機械的変化センサーコンポーネントの歪みの程度に対応する。」(本c)、同【0045】に「図9を参照して論じたように、配列検出システムの分析サブシステムによる平均電圧の大きさおよび分散を含む2つの派生値の使用は、図1を参照して記載するターゲットが各オブジェクトまたはターゲット内のエンティティを同定するのに十分である。」(本c)、同【0046】に「測定コンポーネント1120は、機械的変化コンポーネント1106の形状の変化とともに変化する出力電気信号1122を生成するために、電流フローチャネルまたは電流フロー自体の電位を測定する。出力信号は、図11には示されていない分析サブシステムによって計算処理され、ターゲット1102中のオブジェクトタイプの配列の表示を生成する。」(本c)との記載がある。 しかし、これらの本願明細書の記載及び図1、2、4、11を合わせみても、「第1のタイプ」の「ターゲット」、「エンティティ」、「機械的変化センサー」が、具体的にいかなるものを想定しているのか(例えば、それらは、如何なる大きさのものか、図1、4以外に如何なる形状をとり得るのか、如何なる材質のものか、如何なる方法で入手できるものか、如何なる用途に用いられるものか等)明らかでないので、それらの特定を前提とした「第1のタイプ」の「機械的変化-信号トランスデューサー」が具体的に如何なるものであるのか、また、実際に、この「機械的変化-信号トランスデューサー」より、エンティティのタイプの配列を決定できるような電気信号(電圧信号)を「分析サブシステム」に与えることができるのかについて、当業者が認識できるように本願明細書及び図面が記載されているとは認められない。 よって、本願明細書、図面及び本願の出願時の技術常識を参酌しても、本願発明の「第1のタイプ」における「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」が、具体的にどのような装置、システムであるのかについて当業者は理解、特定できない。 (イ)第2のタイプについて 本願明細書には、「第2のタイプ」の「分析システム」に関する記載として、【0034】に「第2の例のターゲットは、共有結合によって互いに結合したモノマーの配列を含む生体高分子である。以下の説明で例として使用するDNAおよびRNAポリマーにおいては、化学組成および構造が互いに異なる4つの一般的に発生する異なるタイプのモノマーがあり、追加のタイプのモノマーはあまり発生しない。第2の対応する配列ディテクターは、ターゲット生体高分子が機械的変化センサーを通過し、機械的変化センサーがモノマーと特異的に会合して機械的変化センサー内における機械的変化を生じ、ついでそれがカップラーによって可変レジスターに連絡される際に、時間変化する電気信号を生成する。」(本b)、【0052】に「第2の配列検出システムに適用する場合のフレーズ「機械的変化センサーコンポーネント」は、第2の配列検出システムに適用する場合、1つの例として、信号生成が、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化、ポリンに関するポリメラーゼフラグメントの相対的位置の変化、および/またはポリンに関するポリメラーゼフラグメントの向きの変化を示すことを示すことに注意されたい。ある種の実施形態において、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化は、可変レジスターの動きに通じる機械的変化を提供する。最終的に、機械的変化センサーコンポーネント、および機械的変化センサーコンポーネントとターゲットおよび細孔含有成分との相互作用により、可変レジスターの位置に機械的変化が生じる。」(本d)、【0053】に「両方の配列検出システムは、機械的変化センサーコンポーネントによって生成された機械信号を電気信号に変換することにより、出力電圧信号を生成する。両方の配列検出システムは、出力信号の計算分析を使用して、ターゲット配列内のオブジェクトまたはエンティティのタイプの配列を識別するために一緒に使用される複数の派生値を生成する。」(本d)、【0055】に「分析サブシステム1502は、セル1504などの複数のセルから配列情報を連続的に収集し、各配列を特定のターゲットによって生成された配列のグループに割り当て、その後、各ターゲットのタイプから得られた配列のグループから各々の異なるタイプのターゲットについてコンセンサス配列を集める。並列処理を使用すると、複数のターゲットについて迅速かつ効率的なコンセンサス配列決定ができる。」(本e)との記載がある。 以上の本願明細書の記載及び図13の具体例(本d)を参酌すると、「第2のタイプ」の「ターゲット」、「エンティティ」、「機械的変化センサー」は、それぞれ、DNAおよびRNAポリマー、具体的にはDNAテンプレート、ヌクレオチドモノマー(NPT)、ポリメラーゼフラグメント(または可変レジスターとも解される。)に相当すると認められる。 しかし、【0052】に記載された「ポリメラーゼフラグメントの形状の変化、ポリンに関するポリメラーゼフラグメントの相対的位置の変化、および/またはポリンに関するポリメラーゼフラグメントの向きの変化」、「ポリメラーゼフラグメントの形状の変化」により提供される「可変レジスターの動きに通じる機械的変化」等から生じる機械信号より得られる電気信号(出力電圧信号)だけで、実際にDNAおよびRNAポリマーのヌクレオチド配列(ターゲット内のエンティティのタイプの配列)を決定できることが本願の出願日における技術常識であったとは認められないし、事実、本願の出願前に頒布された文献(令和5年5月30日付け拒絶理由通知書で提示した引用例1(国際公開第2016/196755号))の請求の範囲や図面によると、ヌクレオチド配列の決定においては、本願明細書に何らの説明がない、ヌクレオチドに含まれるタグやレポーター領域を有する持続性テザー等の追加的手段が必要であることが記載されている。 そうすると、本願明細書等の記載から、「第2のタイプ」の「機械的変化-信号トランスデューサー」が具体的に如何なるものであるのか、また、実際に、「機械的変化-信号トランスデューサー」より、ヌクレオチド配列を決定できるような電気信号(電圧信号)が「分析サブシステム」に与えられ、その電気信号(電圧信号)を使用するだけでヌクレオチド配列が決定できることを当業者が認識できるとは認められない。 よって、本願発明の「第1のタイプ」より具体化された「第2のタイプ」であっても、本願明細書等の記載及び本願の出願時の技術常識より、「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」が、具体的にどのような装置、システムであるのかについて当業者は理解、特定できない。 (ウ)小括 以上からすると、本願発明は、「第1のタイプ」及び「第2のタイプ」のいずれにおいても、「機械的変化-信号トランスデューサー」及び「分析サブシステム」に関して、上記(2)で示した課題を解決できることを当業者が認識できるように、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。 (4)審判請求人の主張 審判請求人は、令和5年12月27日提出の意見書において、第1の実施形態は、段落0035~0039において、図1~5を参照して説明され、第2の実施形態配列は、段落[0047~0084]で、図13~29Cを参照して説明されており、電圧信号解析はいずれの実施形態でも同様で、2つの形態で共通の解析サブシステムが使用され、その分析は、図6A~10を参照して段落0040~0046で詳細に論じられている旨、ターゲットDNAポリマー内の異なるヌクレオチドは異なる電圧信号プロファイルを生成し、解析サブシステムは、これらの電圧信号プロファイルに基づいてエンティティのタイプを決定する旨、を主張する。 しかし、「第1のタイプ」の「ターゲット」、「エンティティ」、「機械的変化センサー」が、具体的にいかなるものを想定しているのか(例えば、それらが如何なる大きさのものか、図1、4以外に如何なる形状をとり得るのか、如何なる材質のものか、如何なる方法で入手できるものか、如何なる用途に用いられるものか等)、本願明細書をみても判然としないし、2つのタイプで共通できるような解析サブシステムが具体的に如何なるシステムであるのかも理解、特定できない。 また、本願明細書等の記載、更には、本願の出願日における技術常識を参酌しても、ポリメラーゼフラグメントの形状の変化等から生じる機械信号より得られる電気信号(電圧信号)を使用するだけで実際にヌクレオチド配列が決定できることを当業者が認識できるとは認められない。 よって、審判請求人の主張は、理由がない。 (5)理由4(サポート要件)の検討のまとめ 以上からすると、本願発明は、上記(2)で示した課題を解決できることを当業者が認識できるように、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められないので、この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.理由3(実施可能要件)の検討 (1)実施可能要件の判断規範 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。 (2)実施可能要件の検討 上記2(3)アで検討したとおり、本願明細書には、「1つ以上の操作パラメータに従って配列-検出システムを初期化」する「制御サブシステム」について具体的に説明する記載はなく、本願の出願時の技術常識に照らしても、当該「制御サブシステム」が具体的にどのような装置、システムであるのかを当業者は理解、特定することができない。 また、上記2(3)イで検討したとおり、本願明細書等を参照しても、「機械的変化-信号トランスデューサー」が具体的に如何なるものであるのか、また、実際に、「機械的変化-信号トランスデューサー」より、エンティティのタイプの配列を決定できるような電気信号(電圧信号)を「分析サブシステム」に与え、その電気信号(電圧信号)を使用するだけで実際にヌクレオチド配列等のエンティティのタイプの配列が決定できることを当業者が認識できたとは認められない。 そうすると、本願明細書等の記載及び本願の出願時の技術常識を参酌しても、「制御サブシステム」、「機械的変化-信号トランスデューサー」、「分析サブシステム」を具体化し、機能させること、更に、これらを用いることで、実際にターゲット内のエンティティのタイプの配列(ヌクレオチド配列)を決定することは、当業者に過度の試行錯誤・実験を要するものと認められる。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 (5)理由3(実施可能要件)の検討のまとめ 以上からすると、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、本願発明について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第6 むすび 以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が、請求項1に係る発明について、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は、請求項2~20について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-004235

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