審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-003893

通信方法、対応するシステム、装置、信号及び乗物

審判番号
2022-003893
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-057403外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月15日
審決日
2023年02月21日
公報発行日
2023年04月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 57403「通信方法、対応するシステム、装置、信号及び乗物」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日出願公開、特開2019-176474、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成31年3月25日(パリ条約による優先権主張2018年3月26日 イタリア)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 3月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 8月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年11月 4日付け:拒絶査定(原査定)
令和 4年 3月15日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

出

令和 4年 8月16日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 4年11月21日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

本願請求項1~19に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A: 特開2004-280304号公報

第3 当審拒絶理由の概要

当審が令和4年8月16日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

本願請求項1,2,4~17に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1: 特開2004-280304号公報(原査定の引用文献A)

第4 本願発明

本願請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、令和4年11月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであり、本願発明1は次のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1装置(10)と一組の第2装置(201,202,...,20n)とをバス(30)を介して結合し、
該第1装置(10)をマスタ装置として構成して該バス(30)上を、
a)該一組の第2装置(201,202,...,20n)における第2装置による実行のための動作を表す一組の動作データメッセージ部分を担持しており該第2装置からの応答を必要とするものではない第1メッセージ、及び
b)該一組の第2装置(201,202,...,20n)における第2装置へアドレスする第2メッセージであって、該第2メッセージがアドレスされて予期されている応答期間内に該第1装置(10)に対して応答を要求する該第2装置(201,202,...,20n)の内の一つを識別する識別子を伝達しアドレスされた該第2装置(20i)のみからの応答をトリガーする該第2メッセージ、
を送信し、及び
該第2装置(201,202,...,20n)をスレーブ装置として構成して、
c)マスタ装置として構成されている該第1装置(10)から送信される該第1メッセージを該バス(30)上で受信し、前記一組の動作データメッセージ部分における夫々の動作データメッセージ部分を読み取り、且つ読み取った該夫々の動作データメッセージ部分の関数として夫々の動作を実行し、
d)マスタ装置として構成されている該第1装置(10)から送信される該第2メッセージを該バス(30)上で受信し且つマスタ装置として構成されている該第1装置(10)へ向けて反応メッセージを該バス(30)上を送信させることにより前記予期されている応答期間内に該第2メッセージに関して応答させる、
ことを包含しており、スレーブ装置として構成されている該一組の第2装置(201,202,...,20n)における前記第2装置を複数の第2装置のサブセットに配置させることを包含しており、その場合にマスタ装置として構成されている該第1装置(10)は該第1メッセージが専用とされている前記第2装置の該サブセットを識別するサブセット識別インデックスを有している第1メッセージを該バス(30)上を送信する方法。」

なお、本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8は、本願発明1を引用する「システム」の発明である。

第5 引用文献の記載、引用発明等

1 引用文献1、引用発明

(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。

「【0029】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明の好適な一実施の形態を実現するシステム全体を示している。図2に示すように、PLC10と各種のスレーブ20が、フィールドバス30を介して接続されネットワークシステムを構築している。
【0030】
続きを表示(全23行)
PLC10は、CPUユニット11やマスタユニット12などの各機能ごとに生成されたユニットを連結することにより構成されている。その各ユニットはPLCバス(内部バスとも言う。図示せず)につながれていて、PLCの各ユニット間でバス通信をしてデータ通信ができるようになっている。そして、このマスタユニット12は、フィールドバス30に接続され、そのフィールドバス30に複数台の各スレーブ20がマルチドロップ接続によってつながれて、マスタユニット12と各スレーブ20との間で通信を行うようになっている。さらに、マスタユニット12は、PLC10の内部バスを介してCPUユニット11のIOメモリにアクセスし、IOデータ等の読み書きを行うようになっている。
【0031】
さらに説明すると、マスタユニット12がスレーブ20の接続端子につながれた入力機器からの入力信号(オン/オフ状態)をフィールドバス通信によって取り込んで、マスタユニット12が取り込んだ入力信号(入力データ)を内部バス通信によってCPUユニット11に送信し、CPUユニット11が入力信号を受け取る。CPUユニット11は、その入力信号に基づいてユーザプログラムによって予め定められた論理演算をし、その演算結果を含んだ出力信号(出力データ)を、内部バスを介してマスタユニット12に送信する。マスタユニットはその出力信号をフィールドバス通信によってスレーブに送信する。各ユニットでは受信した出力信号を接続端子に接続された出力機器に対して出力する。
【0032】
なお、入力信号と出力信号をあわせてI/Oデータと呼ぶことがある。つまり、INデータは入力機器からスレーブへ、スレーブからマスタユニットへ、マスタユニットからCPUユニットへと伝わる。また、OUTデータはCPUユニットからマスタユニットへ、マスタユニットからスレーブへ、スレーブから出力機器へと伝わる。
【0033】
マスタユニット12は、図3に示すように、フィールドバスに接続され、実際にデータの送受を行う通信インタフェース12aと、その通信インタフェース12aを介してマスタ-スレーブ間通信をし、スレーブ20との間でI/Oデータの送受を行ったり、所定のコマンドの送信並びにそれに基づくレスポンスの受信を行うマスタ用ASIC12bと、各種の制御を行うMPU12dと、各種の制御実行時にワークエリア等として使用されるRAM12cと、上記制御を行うプログラムや、各種の設定データ等が格納されたEEPROM12eと、CPUユニットなどと内部バスを介して通信を行うためのインタフェース12hと、動作状態(通信状態)や異常/正常などを示すLED表示部12f並びにアドレスの設定などを行うための設定スイッチ12gを備えている。
【0034】
MPU12dが行う制御としては、CPUユニット11その他のユニット等と通信したり、マスタ用ASIC12bを動作させたりするようになっている。特に本発明との関係でいうと、フィールドバス30に接続されたスレーブ20と通信をし、二重アドレスが発生していないかをチェックするようになっている。具体的な処理機能は後述する。
【0035】
スレーブ20は、図4に示すように、フィールドバスに接続され、実際にマスタユニット12との間でI/Oデータや各種メッセージ等の送受を行う通信インタフェース20aと、その通信インタフェース20aを介して取得したマスタ-スレーブ間通信をし、I/Oデータの送受を行ったり、マスタユニット12からの所定のコマンドの受信並びにそれに基づくレスポンスの送信を行うスレーブ用ASIC20bと、各種の制御を行うMPU20dと、上記制御を行うプログラムや、各種の設定データ,IOデータ等が格納されたEEPROM20eと、端子台の構造となっていて入力機器または出力機器(I/O機器)の配線を接続しI/Oデータの送受を行うI/O部20jと、動作状態(通信状態)や異常/正常などを示すLED表示部20f並びにノードアドレスの設定などを行うための設定スイッチ20gを備えている。さらに、入力電圧(24V)を5Vに降圧し、スレーブ20内の各素子に電源供給する電源部20iを備えている。なお、スレーブには3種類あって、それぞれ入力スレーブ、出力スレーブ、入出力スレーブがある。例えば入力スレーブは、入力機器を接続するのみであり、INデータを格納しINデータを送信する構成となっている。
【0036】
次に、本発明の要部となる通信プロトコルについて説明する。まず、上記したマスタユニット12並びにスレーブ20が発行するコマンドは、以下のようになっている。図5に示すように、本プロトコルの通信サイクルの開始タイミングはマスタ局であるマスタユニット12が管理する。そして、通信サイクルはOUT_frameから始まり,EVE_frame,IN_frameとつづく。各フレームの送信タイミングは、予め定められた時間監視により行う。
【0037】
送信タイミングの時間監視の説明をすると、マスタユニットと各スレーブとの間の通信サイクルの開始タイミングは、OUT_frameの正常受信完了をもって合わせられる。つまり、通信同期のタイミングをOUT_frameの正常受信完了タイミングとしているわけである。そして、それにつづくEVE_frame,IN_frameのそれぞれのフレーム内容(通信データサイズ,通信タイミング,通信サイクルなど)は常に固定になっている。このようにマスタユニット12とスレーブ20との間では、毎周期で同じ通信サイクル、かつ通信タイミングで通信が行われる。なお、図示はしていないが、OUT_frameとEVE_frameとの間に、互いの接続確認をするためのCN_frameを送信するサイクルを設けても良い。
【0038】
ここで、OUT_frameは、マスタユニット12からスレーブ20へのOUTデータ転送用フレームであって、このOUT_frameに各スレーブに対して送信するOUTデータが含まれている。また受信する側の各スレーブ20にとっては、このOUT_frameが通信サイクルの開始を表すフレームとなる。つまり、各スレーブ20はこのOUT_frameの受信完了時点から計時を開始すべく内部カウンタ(タイマ)を起動し、予め設定した送信タイミングで所定のフレームをマスタユニット12に対して送信する。
【0039】
そして、OUT_frameのデータ構造は、図6に示すようになっている。すなわち、OUT_frameは、「フレームヘッダ」と、マスタユニット12から所定のスレーブ(OUTスレーブ)20へ送る出力データである「OUTデータ」と、フレームチェックシーケンスである「CRC」からなる。」
「【0046】
各スレーブ20は、OUT_frameを正常受信すると、OUTデータ中のマスタが設定したOUTデータ開始エリア(マスタが設定)から自局のOUTデータサイズ(外部端子モード設定により決まる)だけのデータを取り出し、受信バッファに格納する。そしてMPU20dとASIC20bとの動作により、取り込んだOUTデータをI/Oバッファに転送し、自局の接続端子を介して接続された出力機器に対してOUTデータを出力することで、OUTデータリフレッシュが行われる(図8参照)。図示のように、例えば多点スレーブのOUTスレーブ#1のOUTデータサイズが2ブロック分で、通常のOUTスレーブ#2のOUTデータサイズが1ブロック分とすると、そのようにブロックサイズを設定しておくことにより、異なる点数のOUTスレーブに対してもOUTデータの送信が可能となる。
【0047】
IN_frameは、スレーブ(INスレーブ)20からマスタユニット12へのINデータ転送用フレームである。どのスレーブがいつ、どれだけのデータサイズのIN_frameを転送するかは、Bus Configuration時にマスタユニット12が設定する。」
「【0054】
各INスレーブ20は、OUT_frameを正常受信したならば、IN_frameタイムドメインのためのタイマを起動する。また、正常受信した時の自局のINデータを内部バッファに取り込む。そして、IN_frameタイムドメインを待って、内部バッファに格納しておいた自局のINデータをIN_frameに乗せて送信する。つまりIN_frameをタイムドメインは、後述するように、Bus Configuration時にマスタユニットが設定したOUT_frameを受信してから各スレーブがIN_frameを送信するまでの経過時間であり、各スレーブごとに設定される。従って、各スレーブは、OUT_frameの正常受信に伴い同時にタイマを起動させ、それぞれ設定された所定の時間が経過した際に、IN_frameを送信することになる(図11参照)。従って、各スレーブに設定するタイムドメインを、「多点スレーブか否か」や「多連送フレームか否か」などを考慮してフレーム長に合わせて適宜に設定することにより、各IN_frameは、衝突することなく送信することができる。
【0055】
一方、受信側(マスタユニット12)は、CRCチェックを正常に行えたならばIN_frameを正常受信する。そして、送信元アドレスをチェックし、フレームに格納されたINデータを受信バッファに格納する。
続きを表示(全20行)
【0056】
また、多連送フレームの場合には、n回の受信のうち1回でも正常受信した場合には、その正常受信したデータをINデータとし、受信バッファに格納する。つまり、通常この種の多連送フレームの場合、受信したデータが一致した場合に、データ化けなどが無い場合に、正規のものと判断するようにしたが、本実施の形態では、1つでも正常受信した場合には、それを正規のものと判断して記憶保持するようにした。なお、複数のIN_frameが正常受信されてもそれらのデータ間の一致チェックは行わないようにしている。従って、エラー処理は、多連送された全てのIN_frameがエラーだった場合のみとなる。このように複数のIN_frame間の一致チェック処理を省略することにより、短時間で確実にINデータの送信をするとができる。
【0057】
EVE_frameは、通信サイクル中のメッセージデータ転送フレームである。いつどのノードが転送するかはマスタが決定し、OUT_frame中のEVENT送信許可アドレスに格納するノードアドレスで通知する。このEVE_frameはコマンドフレームとレスポンスフレームの2フレームで1セットとなる。
【0058】
このフレームのデータ構造は、図12に示すようになっている。ここで、「スタート」はフレームの開始を示すもので、「コマンド」はフレーム識別コード,プロトコル制御コードであり、「宛先アドレス」はこのイベントデータを送信する宛先アドレスであり、「送信元アドレス」はこのイベントデータを送信したノードに設定された送信元アドレスであり、「レングス」は送信するイベントデータのデータ長であり、「イベントデータ」は送信する内容であるイベントデータであり、「CRC」はフレームチェックシーケンスである。
【0059】
そして、イベントデータ転送の用途としては、ステータス読み出しと書き込みのためのイベントデータ転送(マスタユニット12からスレーブ20宛)と、アプリケーションが使用するイベントデータ転送がある。
【0060】
具体的には、マスタユニット12とスレーブ20(OUTスレーブ)との間で、以下に示す手順によりイベントデータ転送が実行される。すなわち、マスタユニット12のファームウェアが、1つの通信サイクル内でどのノードがEVE_frameを送信するかを、毎サイクル毎に決定(設定)する。
【0061】
そこで、マスタユニット12が、通信サイクル内でイベントデータ転送を行う場合には、図13に示すように、まず、マスタユニット12が送信するタイミングでOUT_frameのイベント送信許可アドレスに自局ノードアドレスをのせて送信する(▲1▼)。このOUT_frameを正常受信したスレーブ20は、イベント送信許可アドレスが自局でないので、EVE_frameは送信しない。
【0062】
また、上記した▲1▼で送信したOUT_frameのイベント送信許可アドレスでマスタユニット12のアドレスが指定されているため、マスタユニット12は、OUT_frame送信後、EVE_frameタイムドメインとなったらEVE_frameを送信する(▲2▼)。スレーブ20が、上記▲2▼により発行されたEVE_frameを正常受信すると、自局宛か否かを判断し、自局宛の場合には受信データを参照する。そして、レスポンスの要求があった場合には、レスポンスを返し(▲3▼)、無ければ受信したまま処理を終了する。
【0063】
上記のレスポンスがEVE_frameで返送されると、各ノードはそれを受信する。そして、マスタユニット12はそのEVE_frameを正常受信し、自局宛ならば受信データを参照する。」
「【図2】
[図:0001395982000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001395982000002.jpg]
」
「【図13】
[図:0001395982000003.jpg]
」

(2)引用文献1には、「本発明の要部となる通信プロトコル」(段落【0036】)との記載があり、当該「通信プロトコル」は、「PLC10と各種のスレーブ20が、フィールドバス30を介して接続され」た「ネットワークシステム」(段落【0029】)において行われる通信の方法を示すものといえる。

(3)上記(1)の記載について、上記(2)も考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「PLC10と各種のスレーブ20が、フィールドバス30を介して接続されたネットワークシステムにおける方法であって、
PLC10は、CPUユニット11やマスタユニット12などの各機能ごとに生成されたユニットを連結することにより構成され、マスタユニット12は、フィールドバス30に接続され、そのフィールドバス30に複数台の各スレーブ20がマルチドロップ接続によってつながれて、マスタユニット12と各スレーブ20との間で通信を行うようになっており、
マスタユニット12はスレーブ20の接続端子につながれた入力機器からの入力信号(オン/オフ状態)をフィールドバス通信によって取り込み、
マスタユニットは出力信号をフィールドバス通信によってスレーブに送信し、各ユニットでは受信した出力信号を接続端子に接続された出力機器に対して出力し、
続きを表示(全19行)
入力信号と出力信号をあわせてI/Oデータと呼び、つまり、INデータは入力機器からスレーブへ、スレーブからマスタユニットへと伝わり、また、OUTデータはマスタユニットからスレーブへ、スレーブから出力機器へと伝わり、
スレーブ20は、入力機器または出力機器(I/O機器)の配線を接続しI/Oデータの送受を行うI/O部20jを備え、
通信プロトコルの通信サイクルの開始タイミングはマスタ局であるマスタユニット12が管理し、通信サイクルはOUT_frameから始まり,EVE_frame,IN_frameとつづき、各フレームの送信タイミングは、予め定められた時間監視により行い、
マスタユニット12とスレーブ20との間では、毎周期で同じ通信サイクル、かつ通信タイミングで通信が行われ、
OUT_frameは、マスタユニット12からスレーブ20へのOUTデータ転送用フレームであって、
OUT_frameは、「フレームヘッダ」と、マスタユニット12から所定のスレーブ(OUTスレーブ)20へ送る出力データである「OUTデータ」と、フレームチェックシーケンスである「CRC」からなり、
各スレーブ20は、OUT_frameを正常受信すると、OUTデータ中のマスタが設定したOUTデータ開始エリア(マスタが設定)から自局のOUTデータサイズ(外部端子モード設定により決まる)だけのデータを取り出し、取り込んだOUTデータをI/Oバッファに転送し、自局の接続端子を介して接続された出力機器に対してOUTデータを出力し、
IN_frameは、スレーブ(INスレーブ)20からマスタユニット12へのINデータ転送用フレームであり、
各INスレーブ20は、OUT_frameを正常受信したならば、自局のINデータをIN_frameに乗せて送信し、
EVE_frameは、通信サイクル中のメッセージデータ転送フレームであり、
このフレームのデータ構造において、「宛先アドレス」はこのイベントデータを送信する宛先アドレスであり、「送信元アドレス」はこのイベントデータを送信したノードに設定された送信元アドレスであり、「イベントデータ」は送信する内容であるイベントデータであり、
マスタユニット12とスレーブ20(OUTスレーブ)との間で、イベントデータ転送が実行され、マスタユニット12のファームウェアが、1つの通信サイクル内でどのノードがEVE_frameを送信するかを、毎サイクル毎に決定(設定)し、
マスタユニット12が、OUT_frame送信後、EVE_frameを送信し、スレーブ20が、EVE_frameを正常受信すると、自局宛か否かを判断し、自局宛の場合には受信データを参照し、そして、レスポンスの要求があった場合には、レスポンスを返し、無ければ受信したまま処理を終了し、
上記のレスポンスがEVE_frameで返送されると、各ノードはそれを受信し、そして、マスタユニット12はそのEVE_frameを正常受信し、自局宛ならば受信データを参照する、
方法。」

第6 当審拒絶理由について(引用発明との対比・判断)

1 本願発明1について

(1)対比

ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「マスタユニット12」は、「各スレーブ20との間で通信を行う」から、本願発明1の「マスタ装置として構成し」た「第1装置」に相当する。

(イ)引用発明の「スレーブ20」は、「複数台」であり、それぞれ、「入力機器または出力機器(I/O機器)の配線を接続しI/Oデータの送受を行うI/O部20jを備え」るから、「複数台」のうちの特定の一組の「スレーブ20」に、「入力機器」が接続されず「出力機器」のみが接続されることが、当然にあり得るものである。

そして、引用発明の「出力機器」のみが接続された上記一組の「スレーブ20」は、本願発明1の「一組の第2装置」に相当する。

(ウ)引用発明は、「マスタユニット12は、フィールドバス30に接続され、そのフィールドバス30に複数台の各スレーブ20がマルチドロップ接続によってつながれて」いるものであり、ここで、「フィールドバス30」は、本願発明1の「バス」に相当する。

この点について、上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明と本願発明1とは、

「第1装置と一組の第2装置とをバスを介して結合し」た

ものである点で一致する。

(エ)引用発明は、「マスタユニット」が「出力信号をフィールドバス通信によってスレーブに送信し、各ユニットでは受信した出力信号を接続端子に接続された出力機器に対して出力し」、「INデータは入力機器からスレーブへ、スレーブからマスタユニットへと伝わり、また、OUTデータはマスタユニットからスレーブへ、スレーブから出力機器へと伝わ」るものである。

また、引用発明の「OUT_frame」は、「マスタユニット12からスレーブ20へのOUTデータ転送用フレームであって」、「マスタユニット12から所定のスレーブ(OUTスレーブ)20へ送る出力データである「OUTデータ」」からなるものであり、これを「各スレーブ20」が「正常受信する」と、「OUTデータ中のマスタが設定したOUTデータ開始エリア(マスタが設定)から自局のOUTデータサイズ(外部端子モード設定により決まる)だけのデータを取り出し、取り込んだOUTデータをI/Oバッファに転送し、自局の接続端子を介して接続された出力機器に対してOUTデータを出力」するものである。

ここで、引用発明の「マスタユニット」が「出力信号をフィールドバス通信によってスレーブに送信」することは、具体的には、「OUTデータ」を含む「OUT_frame」、すなわち、「OUTデータ」を担持する「OUT_frame」を送信することによってなされるものであり、「OUTデータ」は、「マスタユニットからスレーブへ、スレーブから出力機器へと伝わ」るから、上記(イ)で述べた、「入力機器」が接続されず「出力機器」のみが接続された「スレーブ20」に到達することが明らかである。よって、当該「OUTデータ」は、「入力機器」が接続されず「出力機器」のみが接続された「スレーブ20」に関連する一組のデータメッセージ部分であるといえる。

また、引用発明の「各INスレーブ20」は、「OUT_frameを正常受信したならば、自局のINデータをIN_frameに乗せて送信」するものの、「INデータ」は、「入力機器からスレーブへ、スレーブからマスタユニットへと伝わ」るから、「入力機器」が接続されず「出力機器」のみが接続された「スレーブ20」は「INスレーブ20」ではなく、当該「スレーブ20」にとっては、「OUT_frame」は、それへの応答としての「IN_frame」を送信することを必要とするものではないといえる。

以上のことについて、上記(イ)で検討した点を踏まえると、引用発明における、「入力機器」が接続されず「出力機器」のみが接続された「スレーブ20」に関連する「OUTデータ」を担持する「OUT_frame」と、本願発明1の「該一組の第2装置(201,202,...,20n)における第2装置による実行のための動作を表す一組の動作データメッセージ部分を担持しており該第2装置からの応答を必要とするものではない第1メッセージ」とは、「該一組の第2装置に関連するデータ一組のデータメッセージ部分を担持しており該第2装置からの応答を必要とするものではない第1メッセージ」である点で共通する。

(オ)引用発明の「EVE_frame」は、「宛先アドレス」が「イベントデータを送信する宛先アドレス」であるとされ、また、引用発明は、「マスタユニット12とスレーブ20(OUTスレーブ)との間で、イベントデータ転送が実行され」ること、「マスタユニット12が、OUT_frame送信後、EVE_frameを送信し、スレーブ20が、EVE_frameを正常受信すると、自局宛か否かを判断し、自局宛の場合には受信データを参照し、そして、レスポンスの要求があった場合には、レスポンスを返」すこと、及び、「上記のレスポンスがEVE_frameで返送されると、各ノードはそれを受信し、そして、マスタユニット12はそのEVE_frameを正常受信し、自局宛ならば受信データを参照する」ことがなされるものである。

ここで、「EVE_frame」の「宛先アドレス」が、「OUTスレーブ」のうち、特に、上記(イ)で述べた、「入力機器」が接続されず「出力機器」のみが接続された「スレーブ20」に設定される場合が、当然にあり得るものであり、その場合、当該「スレーブ20」のみからの「レスポンス」が、「EVE_frame」によってトリガーされるといえる。

また、引用発明は、「通信サイクルはOUT_frameから始まり,EVE_frame,IN_frameとつづき、各フレームの送信タイミングは、予め定められた時間監視により行」うとされるものであるから、「上記のレスポンスがEVE_frameで返送される」ことも、「予め定められた時間監視により行」われるものであって、「マスタユニット12はそのEVE_frameを正常受信し、自局宛ならば受信データを参照する」ことは、上記「マスタユニット12」に対して「レスポンス」を返すことを、「マスタユニット12」が「OUTスレーブ」に要求したことに対応して行われる動作であるといえる。

そして、引用発明において、上記「宛先アドレス」の設定がなされること、「EVE_frame」、「予め定められた時間監視により行」うこと、「宛先アドレス」、「レスポンス」は、それぞれ、本願発明1の「第2装置へアドレスする」こと、「第2メッセージ」、「予期されている応答期間内に」行うこと、「該第2装置の内の一つを識別する識別子」、「応答」に相当する。

(カ)上記(エ)、(オ)について、上記(ア)~(ウ)で検討した点を踏まえると、引用発明において、「マスタユニット」が「OUTデータ」を含む「OUT_frame」及び「EVE_frame」を「フィールドバス通信によって」送信することと、本願発明1の

「該第1装置(10)をマスタ装置として構成して該バス(30)上を、
a)該一組の第2装置(201,202,...,20n)における第2装置による実行のための動作を表す一組の動作データメッセージ部分を担持しており該第2装置からの応答を必要とするものではない第1メッセージ、及び
b)該一組の第2装置(201,202,...,20n)における第2装置へアドレスする第2メッセージであって、該第2メッセージがアドレスされて予期されている応答期間内に該第1装置(10)に対して応答を要求する該第2装置(201,202,...,20n)の内の一つを識別する識別子を伝達しアドレスされた該第2装置(20i)のみからの応答をトリガーする該第2メッセージ、
を送信」する

こととは、

「該第1装置をマスタ装置として構成して該バス上を、
a)該一組の第2装置に関連する一組のデータメッセージ部分を担持しており該第2装置からの応答を必要とするものではない第1メッセージ、及び
b)該一組の第2装置における第2装置へアドレスする第2メッセージであって、該第2メッセージがアドレスされて予期されている応答期間内に該第1装置に対して応答を要求する該第2装置の内の一つを識別する識別子を伝達しアドレスされた該第2装置のみからの応答をトリガーする該第2メッセージ、
を送信」する

ことである点で共通する。

(キ)上記(エ)で述べた引用発明の構成における、「OUT_frame」を「各スレーブ20」が「正常受信する」と、「OUTデータ中のマスタが設定したOUTデータ開始エリア(マスタが設定)から自局のOUTデータサイズ(外部端子モード設定により決まる)だけのデータを取り出」すことと、本願発明1の

「該第2装置(201,202,...,20n)をスレーブ装置として構成して、
c)マスタ装置として構成されている該第1装置(10)から送信される該第1メッセージを該バス(30)上で受信し、前記一組の動作データメッセージ部分における夫々の動作データメッセージ部分を読み取り、且つ読み取った該夫々の動作データメッセージ部分の関数として夫々の動作を実行」する

こととは、上記(ウ)、(エ)で検討した点を踏まえると、

「該第2装置をスレーブ装置として構成して、
c)マスタ装置として構成されている該第1装置から送信される該第1メッセージを該バス上で受信し、前記一組のデータメッセージ部分における夫々のデータメッセージ部分を読み取」る

ことである点で共通する。

(ク)上記(オ)で述べた引用発明の構成における、「マスタユニット12が、OUT_frame送信後、EVE_frameを送信し、スレーブ20が、EVE_frameを正常受信すると、自局宛か否かを判断し、自局宛の場合には受信データを参照し、そして、レスポンスの要求があった場合には、レスポンスを返」し、「上記のレスポンスがEVE_frameで返送されると、各ノードはそれを受信し、そして、マスタユニット12はそのEVE_frameを正常受信」することは、上記(ウ)、(オ)で検討した点を踏まえると、

「d)マスタ装置として構成されている該第1装置から送信される該第2メッセージを該バス上で受信し且つマスタ装置として構成されている該第1装置へ向けて反応メッセージを該バス上を送信させることにより前記予期されている応答期間内に該第2メッセージに関して応答させる」

ことである点で、本願発明1と一致する。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。

(一致点)

「第1装置と一組の第2装置とをバスを介して結合し、
該第1装置をマスタ装置として構成して該バス上を、
a)該一組の第2装置における第2装置に関連する一組のデータメッセージ部分を担持しており該第2装置からの応答を必要とするものではない第1メッセージ、及び
b)該一組の第2装置における第2装置へアドレスする第2メッセージであって、該第2メッセージがアドレスされて予期されている応答期間内に該第1装置に対して応答を要求する該第2装置の内の一つを識別する識別子を伝達しアドレスされた該第2装置のみからの応答をトリガーする該第2メッセージ、
を送信し、及び
該第2装置をスレーブ装置として構成して、
c)マスタ装置として構成されている該第1装置から送信される該第1メッセージを該バス上で受信し、前記一組のデータメッセージ部分における夫々のデータメッセージ部分を読み取り、
d)マスタ装置として構成されている該第1装置から送信される該第2メッセージを該バス上で受信し且つマスタ装置として構成されている該第1装置へ向けて反応メッセージを該バス上を送信させることにより前記予期されている応答期間内に該第2メッセージに関して応答させる、
ことを包含している方法。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願発明1の「第1メッセージ」が「担持」する「一組の」データメッセージ部分は、「該一組の第2装置(201,202,...,20n)における第2装置による実行のための動作を表す」、「動作データメッセージ部分」であるのに対して、引用発明の「OUTデータ」は、「スレーブ20」による「実行のための動作を表す」ものではない点。

(相違点2)

本願発明1の「該第2装置(201,202,...,20n)」は、「読み取った該夫々の動作データメッセージ部分の関数として夫々の動作を実行」するのに対して、引用発明の「各スレーブ20」は、「取り込んだOUTデータをI/Oバッファに転送し、自局の接続端子を介して接続された出力機器に対してOUTデータを出力」する点。

(相違点3)

本願発明1は、「スレーブ装置として構成されている該一組の第2装置(201,202,...,20n)における前記第2装置を複数の第2装置のサブセットに配置させることを包含しており、その場合にマスタ装置として構成されている該第1装置(10)は該第1メッセージが専用とされている前記第2装置の該サブセットを識別するサブセット識別インデックスを有している第1メッセージを該バス(30)上を送信する」ものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えるものではない点。

(2)判断

事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。

スレーブ装置として構成されている一組の第2装置における前記第2装置を複数の第2装置のサブセットに配置させ、マスタ装置として構成されている第1装置が、第1メッセージが専用とされている前記第2装置の該サブセットを識別するサブセット識別インデックスを有している第1メッセージを送信することは、引用文献1には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったともいえない。

よって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2~8について

本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8は、本願発明1を引用する「システム」の発明であって、いずれも、相違点3に係る技術的事項を有しているから、本願発明2~8も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括

以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。

第7 原査定についての判断

令和4年11月21日に提出された手続補正書により補正された請求項1~8は、相違点3に係る技術的事項を有するものとなった。

そして、当該技術的事項は、原査定における引用文献A(引用文献1)には記載されておらず、本願の優先日前における周知技術でもないので、本願発明1~8は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明をすることができたものではない。

よって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-003893

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)618件(121・H04L)
  • 2025-011291拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ネットワークにおけるケーブル障害の診断
    共通の審決分類: 121・H04L
  • 2025-012719拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)異常判定装置および異常判定方法
    共通の審決分類: 121・H04L
  • 2025-010820拒絶査定不服審判 / 2026-08-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)データ伝送方法および装置
    共通の審決分類: 121・H04L
  • 2025-014512拒絶査定不服審判 / 2026-07-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)バス加入機器、バスシステム、および2線式バスシステム内でのデータ伝送方法
    共通の審決分類: 121・H04L
  • 2025-013953拒絶査定不服審判 / 2026-07-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)HARQコードブックを決定する方法、HARQフィードバック情報の受信方法、及びそ…
    共通の審決分類: 121・H04L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存