特許拒絶査定不服審判
2022-001991
機上現像型平版印刷版原版用粒子、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
- 審判番号
- 2022-001991
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-533409
- 請求日
- 2022年02月09日
- 審決日
- 2023年08月02日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】富士フイルム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 佐藤 海
- 分類
- P18 .121-Z (B41N) / P18 .575-Z (B41N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第41条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-533409「機上現像型平版印刷版原版用粒子、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月 6日国際公開、WO2020/026809〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和1年)7月17日(特許法第41条に基づく優先権主張 2018年(平成30年)7月30日、2018年(平成30年)10月31日)を国際出願日とする出願であって、令和3年8月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和4年2月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年5月30日及び令和5年3月22日に上申書が提出されたものである。
第2 令和4年2月9日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和4年2月9日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和3年10月29日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至16を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至16へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位、及び、親水性基を有する構成単位を有する樹脂を含有する粒子であって、
前記粒子が界面活性剤によって粒子化された粒子であり、
前記親水性基が、-OH、-CN、-CONR1R2、-NR2COR1(R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。R1とR2は結合して環を形成してもよい。)、-NR3R4、-N+R3R4R5X-(R3~R5は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を表し、X-はカウンターアニオンを表す)、又は、下記式POにより表される基であり、
前記粒子の全質量に対する前記樹脂の含有量が、50質量%~100質量%である
機上現像型平版印刷版原版用粒子。 【化1】
[図:0001402141000001.jpg]
式PO中、LPはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、RPは水素原子又はアルキル基を表し、nは1~100の整数を表す。
【請求項2】
前記親水性基を有する構成単位が、N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位を含む、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子。
【請求項3】
前記樹脂における前記親水性基を有する構成単位の含有量が、前記樹脂の全質量に対し、3質量%~40質量%である、請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子。
【請求項4】
支持体と、画像記録層と、をこの順で有し、
前記画像記録層が、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子を含む、
機上現像型平版印刷版原版。
【請求項5】
前記画像記録層の、前記支持体側とは反対の側に、オーバーコート層を更に有する、請求項4に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項6】
前記オーバーコート層が、ポリビニルアルコールを含む、請求項5に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項7】
前記画像記録層が、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を更に含む、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項8】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、及び、重合性化合物を更に含む、請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項9】
前記赤外線吸収剤が、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤である請求項8に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項10】
前記赤外線吸収剤が、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤である請求項8又は請求項9に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項11】
前記赤外線吸収剤が、シアニン色素である請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項12】
前記赤外線吸収剤が、下記式1で表される化合物である請求項8~請求項11のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化2】
[図:0001402141000002.jpg]
式1中、R1は赤外線露光によりR1-L結合が開裂する基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc又は-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A1、A2及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A1及びA2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は-NR10-を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【請求項13】
前記式1におけるR1が、下記式2で表される基である請求項12に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化3】
[図:0001402141000003.jpg]
式2中、RZは、アルキル基を表し、波線部分は、前記式1中のLで表される基との結合部位を表す。
【請求項14】
前記画像記録層が、前記粒子とは異なるポリマー粒子を更に含む、請求項4~請求項8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項15】
請求項4~請求項14のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項16】
請求項4~請求項14のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位、及び、親水性基を有する構成単位を有する樹脂を含有する粒子であって、
前記粒子が界面活性剤によって粒子化された粒子であり、
前記親水性基が、-OH(ただし、-COOHは含まない。)、-CN、-CONR1R2、-NR2COR1(R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。R1とR2は結合して環を形成してもよい。)、-NR3R4、-N+R3R4R5X-(R3~R5は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を表し、X-はカウンターアニオンを表す)、又は、下記式POにより表される基であり、
前記粒子の全質量に対する前記樹脂の含有量が、50質量%~100質量%である
機上現像型平版印刷版原版用粒子。
【化1】
[図:0001402141000004.jpg]
式PO中、LPはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、RPは水素原子又はアルキル基を表し、nは1~100の整数を表す。
【請求項2】
前記親水性基を有する構成単位が、N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位を含む、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子。
【請求項3】
前記樹脂における前記親水性基を有する構成単位の含有量が、前記樹脂の全質量に対し、3質量%~40質量%である、請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子。
【請求項4】
支持体と、画像記録層と、をこの順で有し、
前記画像記録層が、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子を含む、
機上現像型平版印刷版原版。
【請求項5】
前記画像記録層の、前記支持体側とは反対の側に、オーバーコート層を更に有する、請求項4に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項6】
前記オーバーコート層が、ポリビニルアルコールを含む、請求項5に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項7】
前記画像記録層が、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を更に含む、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項8】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、及び、重合性化合物を更に含む、請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項9】
前記赤外線吸収剤が、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤である請求項8に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項10】
前記赤外線吸収剤が、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤である請求項8又は請求項9に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項11】
前記赤外線吸収剤が、シアニン色素である請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項12】
前記赤外線吸収剤が、下記式1で表される化合物である請求項8~請求項11のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化2】
[図:0001402141000005.jpg]
式1中、R1は赤外線露光によりR1-L結合が開裂する基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc又は-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A1、A2及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A1及びA2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は-NR10-を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【請求項13】
前記式1におけるR1が、下記式2で表される基である請求項12に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化3】
[図:0001402141000006.jpg]
式2中、RZは、アルキル基を表し、波線部分は、前記式1中のLで表される基との結合部位を表す。
【請求項14】
前記画像記録層が、前記粒子とは異なるポリマー粒子を更に含む、請求項4~請求項8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項15】
請求項4~請求項14のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項16】
請求項4~請求項14のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。」
2 補正目的及び新規事項追加の有無について
(1)本件補正は、本件補正前の請求項2が引用する請求項1の「機上現像型平版印刷版原版用粒子」の発明特定事項である「親水性基」の構成について、「-OH(ただし、-COOHは含まない。)」と-COOH基を含まないものに補正するもの(以下「補正事項」という。)であって、本件補正後の請求項2が引用する請求項1は、本件補正前の請求項2が引用する請求項1に記載した「-OH」という事項の記載表現を残したままで、請求項2が引用する請求項1に係る発明に包含される一部の事項である「-COOH(基)」のみを請求項2が引用する請求項1に記載した事項から除外することを明示した、いわゆる「除くクレーム」である。
(2)そうすると、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかである。
(3)よって、請求項2に係る補正である補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(4)また、本件補正後の請求項2が引用する請求項1が、本件補正前の請求項2が引用する請求項1に記載した「-OH」という事項の記載表現を残したままで、請求項2が引用する請求項1に係る発明に包含される一部の事項である「-COOH(基)」のみを請求項2が引用する請求項1に記載した事項から除外するだけの「除くクレーム」であることからすると、新たな技術的事項を導入するものではないことも明らかである。
(5)よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2(3)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項2に係る発明(令和4年2月9日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】乃至【請求項16】(以下、それぞれ「本件補正発明1」乃至「本件補正発明16」という。))における本件補正発明2が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項2に係る発明
本件補正発明2は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】及び【請求項2】に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前である平成24年11月15日に頒布された刊行物である特表2012-528749号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) ネガ型画像形成性要素を熱画像化して、融合したコアシェル粒子から本質的になる露光領域と非露光領域とを有する画像化された要素を得る工程と、
B) 前記画像化された要素を印刷機上で、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて現像して、前記非露光領域のみを除去する工程とを含み、
前記画像形成性要素が、親水性基板を含んでおり、かつその上には、赤外線吸収性化合物および熱画像化時に融合するコアシェル粒子から本質的になる単一の感熱画像形成性層を有しており、
前記コアシェル粒子のコアが、疎水性熱可塑性ポリマーからなり、 前記コアシェル粒子のシェルが、前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーに共有結合している親水性ポリマーからなり、
前記感熱画像形成性層が、10重量%未満の遊離ポリマーを含む、 画像形成方法。
【請求項2】
前記画像形成性層が、5重量%未満の遊離ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーが、40℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチレンラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリアミドである少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コアシェル粒子が、25~150nmの平均粒径を有する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記コアシェル粒子のシェルが、1~10nmの平均厚さを有しており、平均して前記コアシェル粒子の体積の5~25%を占め、前記コアが、20~120nmの平均サイズを有する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記シェルが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルテトラゾール、スルホン化(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ホスホネート化(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの1つまたは複数から誘導されたポリマーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記親水性シェルポリマーが、前記疎水性熱可塑性コアポリマーに、前記疎水性コアポリマー中の反応性(メタ)アクリル酸基を介して共有結合している、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記赤外線吸収性化合物が、画像形成性層の全乾燥重量に対して、前記単一の感熱画像形成性層中に5~30%の量で存在する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記コアシェル粒子のシェルまたはコアのいずれかが、少なくとも部分的に架橋している、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記画像化が、700~1400nmの波長の赤外レーザーを用いて行なわれる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記画像形成性要素が、平版印刷版原版であり、親水性表面を有するアルミニウム含有基板を有する、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
親水性表面を含むアルミニウム含有基板を有し、請求項1から12までのいずれかに記載の方法によって調製される平版印刷版。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成性層中の熱融合性コアシェル粒子を用いる画像化およびネガ型画像形成性要素の印刷機上現像の方法に関する。その画像化された要素は、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて印刷機上で現像することができる。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
文脈から他のことを示していない限り、本明細書で使用する場合、用語「画像形成性要素」、「ネガ型画像形成性要素」、および「平版印刷版原版」は、本発明の実施に役立つ実施形態の言及であることを意図している。
【0018】
加えて、文脈から他のことを示していない限り、本明細書に記載の様々な成分、例えば、「コアシェル粒子」、「赤外線吸収性化合物」、および類似の用語は、そのような成分の混合物も指す。したがって、(原文における)冠詞の「1つの(aまたはan)」は、必ずしも単一の成分のみを指すことを意図していない。
【0019】
「単層」又は「単一・・・層」の画像形成性要素とは、画像を得るために必要な1つの層のみを有する本発明の画像形成性要素を意味する。コアシェル粒子(以下で定義する)が、通常は最外層であるこの画像形成性単層中に位置づけられている。しかしながら、そのような要素は、基板のどちらか一方の側および画像形成性層の下部にさらなる非画像化層を含むことができる。
【0020】
別段の指摘がない限り、百分率は、乾燥重量によるパーセントを指す。
【0021】
ポリマーに関する用語に対する定義の明確化のために、国際純正応用化学連合(「IUPAC」、the International Union of Pure and Applied Chemistry)によって出版された「高分子科学の基本的述語の用語集(Glossary of Basic Terms in Polymer Science)」、Pure Appl .Chem.、68巻、1996年、2287~2311頁を参照すべきである。しかしながら、本明細書に明確に示されている定義は、支配的なものとみなすべきである。
【0022】
別段の指摘がない限り、用語「ポリマー」は、オリゴマーを含む高分子量ポリマーおよび低分子量ポリマーを指し、ホモポリマーおよびコポリマーを含める。
【0023】
用語「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーから生じるポリマーを指す。すなわち、それらは、少なくとも2つの異なる化学構造を有する繰り返し単位を含む。
【0024】
用語「主鎖」は、複数のペンダント基が結合することができるポリマー中の原子の鎖を指す。そのような主鎖の例は、1つまたは複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全部炭素の」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ポリマーが縮合反応またはいくつかのその他の方法によって形成されてヘテロ原子を含むことができる。
【0025】
コアシェル粒子 本発明の実施に使用されるコアシェル粒子は、一般的には、1つまたは複数の疎水性ポリマーを含有する疎水性ポリマーコアを有する。有用な疎水性ポリマーは、「熱可塑性」であり、一般に、少なくとも40℃または典型的には少なくとも50℃のガラス転移温度を有しており、かくして、ガラス転移温度より高い適切な温度で加熱する熱画像化中に、溶融または融合させることができることを意味する。有用な疎水性熱可塑性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチレンラクトン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリアミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの種類の中で代表的なポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリメチレンラクトン、ポリ[(メタ)アクリロニトリル]、およびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0026】
該コアは、概して20~120nm、一般的には30~100nmの平均直径を有しており、コアポリマー(1つまたは複数)の体積は、その粒子の体積の75~95%である。
【0027】
有用なコアシェル粒子のシェルは、該コア用疎水性ポリマー(1つまたは複数)と結合することができる反応性の基を有する1つまたは複数の親水性ポリマーから成る。いくつかの例において、該シェルポリマーは、それらが該コアポリマー(1つまたは複数)よりも一層水を好むという意味で「親水性」である。例えば、該シェルポリマーは、水酸化物等の適当な塩基によって部分的または完全に中和されているカルボキシ、スルホ、またはホスホ基等の酸性基を含有することができる。例えば、該シェルポリマーは、カルボキシ基を含有することができ、そのカルボキシ基の5~80モル%が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムにより中和されている。かくして、該シェルポリマー(1つまたは複数)は、少なくとも一部は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルテトラゾール、(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ホスホネート化(メタ)アクリレート、環状尿素メタクリレート(Plex-O 6850)ビニルホスホン酸、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、およびスルホン化(メタ)アクリレートの1つまたは複数から誘導することができる。そのようなポリマーは、例えば、1つまたは複数の(メタ)アクリルアミドと組み合わせて使用することができる
【0028】
いくつかの実施形態において、該シェルは、(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、N-(メタ)アクリロイルテトラゾール、ビニルピロリドン、またはそれらの混合物から誘導された繰り返し単位を含むポリマーを含む。
【0029】
他の実施形態において、該シェルポリマーは、(メタ)アクリル酸、スルホン化(メタ)アクリレート、リン酸エステル(メタ)アクリレート、ビニルホスホン酸、またはそれらの混合物の1つまたは複数と、1つまたは複数の(メタ)アクリルアミドとから誘導される。
【0030】
該親水性シェルポリマーは、該疎水性コアポリマーに該疎水性コアポリマー中の反応性(メタ)アクリル酸基を介して共有結合することが望ましい。
【0031】
該シェルの厚さは、一般に1~10nmであり、一般に、平均して該コアシェル粒子の体積の5~25%である(いくつかの粒子は5%未満であり得、その他は25%を超えるが、その平均の体積は書き留めた範囲内である)。該シェルは、殆どまたはすべての粒子のコアを完全に覆うと考えられるが、シェルがコアを一部分のみ覆っているいくつかの粒子があり得る。
【0032】
結果として生じるコアシェル粒子は、一般に、25~150nmまたは35~110nmの平均粒径を有する。
【0033】
該コアシェル粒子は、一般に、以下の実施例に対して記載されているような分散液として調製される。一般に、該コアポリマーは、既知の反応物質および条件を用いて初期の分散液を得る、乳化重合または懸濁重合によって形成される。適当な反応時間の後、モノマーおよび遊離基開始剤をその分散液に加えてその個々のポリマーコアの周りにシェルポリマー(1つまたは複数)を形成する。そのコアシェル分散液は、もちろん沈殿に対して安定でもよいが、または、界面活性剤を添加してそのコアシェル粒子を適当な時間安定化させることができる。」
エ 上記ア及びイより、コアシェル粒子は印刷機上で現像する平版印刷版原版を構成するものであると認める。
オ 上記ウより、コアシェル粒子は、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリロニトリルを含有し乳化重合によって形成されたコアポリマーの周りに繰り返し単位を含むビニルピロリドンを含むシェルポリマーを形成して界面活性剤を添加して粒子化した粒子と認める。
上記ア乃至ウの記載事項及び上記エ及びオの認定事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリロニトリルを含有し乳化重合によって形成されたコアポリマーの周りに繰り返し単位を含むビニルピロリドンを含むシェルポリマーを形成して界面活性剤を添加して粒子化した、印刷機上で現像する平版印刷版原版を構成するコアシェル粒子。」
(3)対比
本件補正発明2と引用発明とを対比する。
ア 後者の「ポリスチレン」、「ポリ(メタ)アクリロニトリル」、「『コアポリマーの周りに』形成した『繰り返し単位を含むビニルピロリドンを含むシェルポリマー』」、「界面活性剤」、及び「印刷機上で現像する平版印刷版原版を構成するコアシェル粒子」は、それぞれ、前者の「芳香族ビニル化合物により形成される構成単位」、「アクリロニトリル化合物により形成される構成単位」、「『N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位』である『親水性基を有する構成単位』」、「界面活性剤」、及び「機上現像型平版印刷版原版用粒子」に相当する。
イ 後者の「ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリロニトリルを含有し乳化重合によって形成された『コアポリマー』の周りに繰り返し単位を含むビニルピロリドンを含む『シェルポリマー』を形成」したものは、「コアポリマー」の周りに「シェルポリマー」を形成した「粒子」といえるから、前者の「芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位、及び、親水性基を有する構成単位を有する樹脂を含有する粒子」に相当する。
ウ 後者の「印刷機上で現像する平版印刷版原版を構成するコアシェル粒子」が、「コアポリマー」の周りに「シェルポリマー」を形成して界面活性剤を添加して粒子化したものであるから、前者の「機上現像型平版印刷版原版用粒子」と後者の「印刷機上で現像する平版印刷版原版を構成するコアシェル粒子」とは、「粒子が界面活性剤によって粒子化された粒子」との概念で一致する。
そうすると、本件補正発明2と引用発明とは、
【一致点】
「芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位、及び、親水性基を有する構成単位を有する樹脂を含有する粒子であって、
前記粒子が界面活性剤によって粒子化された粒子であり、
前記親水性基が、-NR2COR1(R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。R1とR2は結合して環を形成してもよい。)により表される基であり、
前記親水性基を有する構成単位が、N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位である、
機上現像型平版印刷版原版用粒子。」
で一致し、以下の点で相違する。
【相違点】
本件補正発明2が、「粒子の全質量に対する樹脂の含有量が、50質量%~100質量%である」のに対し、引用発明は、その点が明らかでない点。
(4)判断
ア 上記相違点について、以下、検討する。
本願の願書に添付した明細書には、以下のように記載されている。
「【0027】
…
特定粒子の全質量に対する樹脂成分の含有量は、80質量%~100質量%であることが好ましく、90質量%~100質量%であることがより好ましい。
また、特定粒子の全質量に対する特定樹脂の含有量は、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましい。」
イ 上記記載からすると、粒子の全質量に対する樹脂の含有量の数値範囲に技術的意義や臨界的意義が示されているものでもないから、引用発明において、コアシェル粒子のコアもシェルもポリマーだから、コアシェル粒子の質量中ポリマーの部分が高い比率を占めるようにすることは、当業者が適宜なし得るところ、全質量に対する樹脂の含有量について「50質量%~100質量%である」と特定することは、当業者が適宜設計し得る事項である。
そうすると、上記相違点は、引用発明から、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、本件補正発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本件補正発明2の効果も、引用発明から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(5)独立特許要件についての検討のまとめ
以上検討したように、本件補正発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件補正発明2は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件補正発明は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
4 本願発明について
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年10月29日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位、及び、親水性基を有する構成単位を有する樹脂を含有する粒子であって、
前記粒子が界面活性剤によって粒子化された粒子であり、
前記親水性基が、-OH、-CN、-CONR1R2、-NR2COR1(R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。R1とR2は結合して環を形成してもよい。)、-NR3R4、-N+R3R4R5X-(R3~R5は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を表し、X-はカウンターアニオンを表す)、又は、下記式POにより表される基であり、
前記粒子の全質量に対する前記樹脂の含有量が、50質量%~100質量%である
機上現像型平版印刷版原版用粒子。 【化1】
[図:0001402141000007.jpg]
式PO中、LPはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、RPは水素原子又はアルキル基を表し、nは1~100の整数を表す。
【請求項2】
前記親水性基を有する構成単位が、N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位を含む、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版用粒子。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和3年8月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下のものを含むものである。
(進歩性)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特表2012-528749号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・備考
引用文献1の段落[0028]には、「融合性コアシェル粒子(機上現像型平版印刷版原版用粒子)」の「シェル」がビニルピロリドンよりなるポリマーを含んでも良い旨記載されている。
したがって、請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易にその発明をすることができたものである。
3 引用例
令和3年8月24日付けの拒絶理由通知書で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
上記「第2 2(1)」のとおり、本願発明は、本件補正発明2から「(ただし、-COOHは含まない。)」との事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3(3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
【一致点】
「芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位、及び、親水性基を有する構成単位を有する樹脂を含有する粒子であって、
前記粒子が界面活性剤によって粒子化された粒子であり、
前記親水性基が、-NR2COR1(R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。R1とR2は結合して環を形成してもよい。)により表される基であり、
前記親水性基を有する構成単位が、N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位である、
機上現像型平版印刷版原版用粒子。」
で一致し、以下の点で相違する。
【相違点】
本願発明が、「粒子の全質量に対する樹脂の含有量が、50質量%~100質量%である」のに対し、引用発明は、その点が明らかでない点。
そうすると、上記「第2 3(4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-001991