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特許拒絶査定不服審判

2022-001967

三次元表面粗度評価装置及び三次元表面粗度評価方法並びに三次元表面粗度データ取得装置及び三次元表面粗度データ取得方法

審判番号
2022-001967
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-529864
請求日
2022年02月09日
審決日
2022年10月27日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】中国塗料株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 中塚 直樹
  • 審判官 濱野 隆
  • 審判官 佐藤 久則
分類
P18 .121-Z (G01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-529864号「三次元表面粗度評価装置及び三次元表面粗度評価方法並びに三次元表面粗度データ取得装置及び三次元表面粗度データ取得方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年2月1日国際公開、WO2018/021210〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年7月24日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成28年7月27日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和元年 6月19日付け:拒絶理由通知書 同年 8月23日 :意見書の提出 令和2年 1月31日付け:拒絶理由通知書 同年 6月11日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月27日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和3年 4月 9日 :意見書、手続補正書の提出 同年10月29日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年11月 9日 :原査定の謄本の送達) 令和4年 2月 9日 :審判請求書の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1~6に係る発明は、令和2年6月11日に提出された手続補正書により補正された請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項3の記載は次のとおりである。 以下、請求項3に係る発明を「本願発明」という。 「 【請求項3】 測定対象の三次元表面粗度データを取得する三次元表面粗度データ取得方法であって、 前記測定対象の要素の平均長さRSmを事前に評価し、 該RSmの少なくとも2倍以上の計測幅を有する二次元レーザー変位計によって、X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得することを特徴とする三次元表面粗度データ取得方法。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性) 本願発明は、下記の引用文献1、2、7及び8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:三重野紘央、増田宏「船底塗料の塗膜表面粗度による抵抗増加について-船底外板塗料による船体抵抗低減」、日本マリンエンジニアリング学会誌、2013年、48巻、3号、300~307頁 引用文献2:KEYENCE「超高速インラインプロファイル測定器 LJ-V7000シリーズ ユーザーズマニュアル」、2013年 引用文献7:特開2011-163852号公報 引用文献8:軍司愛美、正円大雅、三重野紘央、川口靖夫「不規則粗面の線測定に基づく粗度統計量評価と流体摩擦抵抗の予測」、日本機械学会流体工学部門講演会講演論文集(2015.11.7-8、東京)、2015年11月6日、1506 第4 引用文献等 1 引用文献1 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献1には、以下の記載がある。下線は当審において付与した。以下同様である。 ア 302頁左欄29行~303頁左欄30行 「 4. 表面粗度パラメーターの測定,可視化 表面粗度と一言にいっても,その形成要因によって形状やサイズは大きく異なる.表面粗度の計測方法も,その形状のサイズや硬度によって適したものを選択する必要がある.機械加工により形成された粗度,金属面の下地処理に使われているようなブラストメディアを吹き付けて形成した粗度の形状は,機械加工の刃の形状や加工間隔,ブラストメディアの形状によって異なる.これらの加工によって形成されたような波長が短い粗度に関しては,細い触針をもつ水平分解能及び,垂直分解能が高い接触型の測定装置,特に軟らかい表面は非接触のレーザー測定器による測定が適している. さらに細かい塗料のつや等に寄与するような数百ナノメートル程度の微細な粗度や顔料粒子に起因する粗度,生体表面の微細構造等を観察するには,共焦点レーザー顕微鏡や分子間力顕微鏡等の分解能が高い装置により表面を計測することが適当である. 筆者らが現在塗膜粗度測定に用いている装置及び,表面粗度の解析事例について紹介する.塗膜粗度は形成要因にもよるが,前述したような機械加工により形成した粗度と比較して,長い波長でサイズが大きい領域に属する為,評価長さが短い装置では測定には適しない.そこで筆者等はX-Yステージに取り付けたレーザー変位計に試験板をセットし30mm×30mmの範囲(121ポイント,250μmピッチ×121ライン)をスキャンすることにより表面粗度の断面プロファイルを取得する装置を開発した.取得した変位データにより3Dプロファイルを描画し,同時に30mmの評価長さでの粗度評価パラメーター,Rz,Rzjis,Ra,Rq,Rsk,Rku,RSmを算出する(JIS B 0601).本装置による評価は,3Dプロファイルによる可視化により,粗度形状が感覚的に理解できるのに加え,数値による比較が簡単に行える為,利便性が高い.図3に表面粗度形状の測定例を示す.最大高さRzはドライスプレーの表面と現行加水分解型防汚塗料が100μmを超えるのに対して,「SEAFLO NEO」とシリコーン防汚塗料は50~60μmである.また波長RSmはドライスプレーの1871μm,現行加水分解型防汚塗料の3454μm,「SEAFLO NEO」の5255μm,シリコーン防汚塗料の6703μmと長くなる傾向である.ドライスプレーの粗度は,極めて波長が短く砂粗度に近い粗度となるのに対し,シリコーン防汚塗料や「SEAFLO NEO」のように波長が長く粗度が低いものは,波状粗度の中でも,傾斜が小さいものに属すると考えられる.この装置による測定は塗膜の形状の違いを比較的正確に捉えていると考えられ,この装置の評価長さや,測定ピッチや分解能は塗膜形状測定に適した設定になっていると考えている.ドライスプレーのような波長が極端に短い粗度に関してのみ測定ピッチを短くする必要があると考えられる.従来のBSRA粗度測定装置の評価長さが50mmであることは,塗膜粗度の特徴を適切に捉えられる評価長さであることが一つの理由であると考えられる.」 イ 図3 各防汚塗料の表面粗度プロファイル 「 [図:0001392888000001.jpg] 」 (2) 引用発明の認定 前記(1)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「 X-Yステージに取り付けたレーザー変位計に試験板をセットし30mm×30mmの範囲(121ポイント、250μmピッチ×121ライン)をスキャンすることにより表面粗度の断面プロファイルを取得する塗膜粗度測定装置であって、 取得した変位データにより3Dプロファイルを描画し、同時に30mmの評価長さでの粗度評価パラメータであるRz、Rzjis、Ra、Rq、Rsk、Rku、RSmを算出するものであり、 最大高さRzが100μmを超えるドライスプレーの表面(波長RSmは1871μm)と現行加水分解型防汚塗料(波長RSmは3454μm)を測定対象としたときや、最大高さRzが50~60μmの「SEAFLO NEO」(波長RSmは5255μm)とシリコーン防汚塗料(波長RSmは6703μm)を測定対象としたとき、この装置による測定は塗膜の形状の違いを比較的正確に捉えており、この装置の評価長さや、測定ピッチや分解能は塗膜形状測定に適した設定になっている、 塗膜粗度測定装置。」 (3) 技術常識1の認定 前記(1)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。 [技術常識1] 「表面粗度は、その形成要因によって形状やサイズは大きく異なり、その計測方法も、その形状のサイズや硬度に適したものを選択する必要があり、塗膜粗度は、機械加工により形成した粗度と比較して長い波長でサイズが大きい領域に属するため、評価長さが短い計測装置では測定には適しないこと。」 2 引用文献8 (1) 引用文献8の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献8には、以下の記載がある。 ア 1頁左欄下から5行~2頁左欄下から14行 「2. 本研究における解析と検討の流れ 本研究では,不規則な形状をもつ粗度を,単純な形態の突起物の群で置き換える.これをSet of Multi-dispersed Cone Model(SMCM)と呼ぶさらに解析を簡単化するため突起物は円錐であると考える.円錐状突起物は頂点の高さ3hpeakと少数の形状パラメータ(高さと底面の直径との比H/R),また突起物群は様々な頂点の高さ(後に説明する3hpeak)をパラメータとする存在確率密度関数(pdf),3fpeakで数学的に把握されるものとする.H/Rは群に対して一定であると考える.壁面形状が波状であるか,あるいは波の複合である場合,表面形状は少数のフーリエ成分で表されて好都合であるが,粗面が種々の粒子径をもつ砂粒群で覆われている場合は,本研究のpdf3fpeak(3hpeak)を用いる方法が実用には適している. 本研究では,不規則な粗度表面の解析と摩擦抵抗との関係式の提案・検証を,次の3ステップを踏んで行う. A. 表面粗さの線測定と統計量の抽出(4.1節に記述) 与えられた粗度表面の高さを点測定し,測定点を1方向(例えば円筒の周方向x)にスキャンして粗さ曲線h(x)を取得する.この測定を「線測定」と呼ぶ.粗さ曲線からピークを見出し,ピークの高さ2hpeakをパラメータとするpdf2fpeak(2hpeak)を計算する. B. 線測定に基づく3次元的曲面の推定と検証(4.2) A.で得られた粗さ曲線は,3次元的曲面として存在する突起物群の特性をそのまま代表しているわけではない.A.の測定を行う線が不規則的に配置された突起の頂点を必ず通る保証はなく,突起の裾野を通る場合も多いので,そのため2fpeak(2hpeak)と3fpeak(3hpeak)とは別個の関数となる.しかし妥当性のあるいくつかの仮定をおくと両関数は変換可能となる(詳細は付録に記述する).この変換が現実の粗度面で妥当であるかを,線測定から得られた2fpeak(2hpeak)から算出した3fpeak(3hpeak)Fと,面測定から実測した3fpeak(3hpeak)Mとの比較により検証する. C. 突起群モデルに基づく圧力抵抗式の提案と検証(4.3) 個々の突起(3hpeakを代表スケールとする)に対して圧力抵抗を表現する簡単な式を立て,突起群に対しては3fpeak(3hpeak)の重みつき積分によって圧力抵抗成分を算出することを試みる.この方式を実証するため,A.で計測した粗度表面をもつ試験体を水中で駆動し,表面に働く応力を実測し,この実測値とモデルに基づく推算値を比較し,検討する. なお,粗度の3次元的曲面を忠実に計測できる機器がある場合にはA.,B.のステップは必要なく,計測により直接3fpeak(3hpeak)Mを得てC.のステップに進めばよいが,船底での測定作業では多くの場合それは困難であり,またB.に示す変換可能性が確かであるなら面測定が可能な高価な装置は必要なくなることが本解析の有利点である. 3. 実験方法 流れ系は回転2重円筒の形態で,2つの円筒の間に水を満たしていて,そこに回転クエット乱流が形成される.両円筒のうち外筒(内半径165mm)は固定されており,内筒(外半径155mm,高さ300mm)が可変速モータにより回転する.流れの概略を図1に示す.外円筒はステンレス鋼性で,外筒のさらに外部には試験中に温度を一定に保つため,恒温槽が設置してある.内円筒は塩化ビニール樹脂製で取り替え可能な試験体となっており,円筒の側面に粗度を作成する.今回の実験では船底塗料を種々の条件で吹き付け,異なる粗度面を作成した. 内筒を支える回転軸に設置したトルクメータによって回転に要するトルクを測定し,内円筒に作用する流体抵抗を計算した.回転数は300~1000rpmとし,800rpmまでは50rpm刻み,1000rpmまでは100rpm刻みとした.回転時の内円筒表面の速度をUwとし,速度スケールには0.5Uwを用いる. また,粗度の測定実験では,粗さ測定用のレーザ,超高速インラインプロファイル測定器(キーエンス製 LJ-V7200)を用い,内円筒にレーザを照射し,その反射から3点測量の原理で表面の高さhを得る.回転軸を回転させ,測定点を周方向に走査することで線測定を行い,2次元的粗度曲線h(x)を得た.この測定ではx方向に0.1mm間隔で10000点のデータを取得し2次元的な意味でのピークのpdf 2fpeak(2hpeak)を算出した.さらにステップBの解析を検証する目的で,3次元的な粗さの測定を行った.インラインプロファイル測定器には,高さ方向にセンサが並んでおり,これに対して周方向に試験体を回転させて粗度の3次元的曲面形状を測定する.z方向に0.02mm間隔で800点,x方向には0.1mm間隔で10000点のデータを取得し,3次元的な意味でのピークのpdfの実測値3fpeak(3hpeak)Mを得た.」 イ 図1 「 [図:0001392888000002.jpg] 」 (2) 引用文献8技術事項の認定 前記(1)において摘記した事項から、引用文献8には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献8技術事項」という。) [引用文献8技術事項] 「船底塗料を吹き付けて粗度面を作成した試験体に対して、粗さ測定用のレーザを照射し、超高速インラインプロファイル測定器(キーエンス製 LJ-V7200)を用いて、回転軸を回転させて測定点を周方向(x方向)に走査することで線測定を行って2次元的粗度曲線h(x)を得て、x方向に0.1mm間隔で10000点のデータを取得して2次元的な意味でのピークの存在確率密度関数2fpeak(2hpeak)を算出するとともに、前記インラインプロファイル測定器の高さ方向(z方向)に並んだセンサを用いて面測定を行い、周方向(x方向)に試験体を回転させて粗度の3次元的曲面形状を測定し、z方向に0.02mm間隔で800点、x方向には0.1mm間隔で10000点のデータを取得して3次元的な意味でのピークの存在確率密度関数の実測値3fpeak(3hpeak)Mを得て、線測定から得られた2fpeak(2hpeak)から算出した3fpeak(3hpeak)Fと、面測定から実測した3fpeak(3hpeak)Mとの比較により、両関数の変換可能性を検証すること。」 3 引用文献2 (1) 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献2には、以下の記載がある。 ア 13-6頁 「 [図:0001392888000003.jpg] 」 イ 13-7頁 「 [図:0001392888000004.jpg] 」 ウ 13-9頁 「 [図:0001392888000005.jpg] 」 (2) 引用文献2記載事項の認定 前記(1)において摘記した事項から、引用文献2には次の事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2記載事項」という。) [引用文献2記載事項] 「キーエンス製のLJ-V7200が二次元レーザー変位計であること。」 4 引用文献10及び引用文献11 (1) 引用文献10の記載事項 当審において新たに引用する吉田一朗「はじめての精密工学 表面粗さ -その測定方法と規格に関して-」精密工学会誌、78巻、4号、2012年、301~304頁(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。 ア 301頁右欄下から14行~302頁右欄8行 「 3. 表面粗さの評価方法 表面粗さの測定・評価は,他のさまざまな計測と同様に,統計的に十分な量かつ,経済的時間的コストの面で合理的な方法で実施されることが必要である.表面粗さの工業上の共通の取り決めとしての評価方法は,ISO/JIS規格などさまざまな規格に定められている.現行のJIS規格の方法は,統計的に合理性があるかどうかの検証をした研究が複数あり4)5),測定・評価方法の一つの指針として参考となる. ISO/JIS規格において,表面粗さの評価は,大きく分けて次の3つの曲線:断面曲線,粗さ曲線,うねり曲線に分けて行われる2)(紙面の関係から,モチーフパラメータやプラトー構造表面パラメータについては次の機会としたい). [図:0001392888000006.jpg] これらは,波長帯域によって示すと図2のようになり,形状誤差うねり,粗さおよび量子化誤差やノイズなどの微細な成分に分離処理される.測定からパラメータ算出までのデータ処理の大まかな流れは,図3のようになっている2).断面曲線は,測定断面曲線から形状誤差および粗さ成分より短い波長成分,すなわち高周波成分を,カットオフ値λSのローパス特性をもつ輪郭曲線フィルタによって除去した曲線である.粗さ曲線は,断面曲線から粗さ成分よりも長い波長成分,すなわち低周波成分を,カットオフ値なのハイパス特性をもつ輪郭曲線フィルタによって除去した曲線である.うねり曲線は,カットオフ値λCのローパス特性およびカットオフ値λfのハイパス特性の輪郭曲線フィルタによって帯域通過させた曲線である. 以上の処理により得られたそれぞれ三つの曲線から,表面性状パラメータを計算する.各曲線の表面性状パラメータの記号は,どの曲線のパラメータであるかを分かりやすく明確にするために,断面曲線の場合はP,粗さ曲線の場合はR,うねり曲線の場合はWから始まるパラメータとなっており,その次の記号がパラメータの幾何学的,統計的な意味を表している.例えば,Raのaはarithmeticalを表しており,計算は輪郭曲線の高さ方向の絶対値平均を行う.また,RSmのSmは輪郭曲線要素の平均長さを表しており,表面凹凸の平均波長を計算している.」 イ 302頁右欄9行~303頁右欄10行 「 4. 表面粗さの測定 本章では,表面粗さを測定する前の準備や測定条件について説明する. (中略) 4.2 測定条件の設定 触針式表面粗さ測定において,設定する必要性のある主要な測定条件としては,触針の形状,評価長さ,輪郭曲線 フィルタのカットオフ値λS,λC,λf,サンプリング間隔,表面性状パラメータ,測定速度,測定力,z方向倍率などが挙げられる.以下に,これらの決定方法を解説する. (中略) 4.2.4 基準長さ,評価長さ,カットオフ値の決定 基準長さ,評価長さ,カットオフ値には密接な関係があり,ISO/JIS規格では,基準長さが測定する長さを決定する際の基本の単位となっている.基準長さは,カットオフ値λC,λfに等しく,断面曲線の場合は評価長さに等しい.この基準長さは,輪郭曲線の特性を求めるために用いる輪郭曲線のX軸方向の長さである.表面凹凸の幾何特性などをあらわす統計量を信頼足るものにするために,これらの長さが推奨されているが,粗さ関係JIS原案作成委員会の前委員長の話によれば,古くからの経験によるところも大きく,いつ頃から使用され始めた長さであるかは定かではない.また,評価長さは1つ以上の基準長さを含む必要があり,特に粗さ曲線の評価長さは,カットオフ値の5倍とすることを規格内で標準としている.そのため,表面の粗さ測定に必要な測定長さは,基準長さの6倍以上となる.これは,フィルタのエンドエフェクトや測定開始時の駆動系の安定性も考慮して,評価長さとカットオフ値と予備長さなどを合算した長さが必要となるためである.ただし,あくまで標準であるため,この測定長さが確保できず,評価長さが標準よりも短くなる場合やより長く測定する場合には,図面や手順書,仕様書などに明記すればよい.」 (2) 引用文献11の記載事項 当審において新たに引用する宮本紘三、田中信行「特集 形状計測におけるソフトウェアの役割/解説 表面粗さ測定器におけるデータ処理と形状評価」精密工学会誌61巻、8号、1995年、1077~1081頁(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。 ア 1078頁右欄11行~16行 「 1.4 基準長さ・評価長さとパラメータ値の求め方 粗さ曲線から極端な大きさの山や谷(きず)のない部分を評価長さだけ抜き取り,この評価長さに含まれる基準長さごとに,基準長さ範囲でパラメータ値を求めたうえ,その値を評価長さ内で平均してパラメータ値とする.ここで,基準長さはカットオフ値相当の長さである(図2).」 イ 図2 「 [図:0001392888000007.jpg] 」 ウ 1078頁17行~1079頁11行 「 1.5 パラメータの定義 (中略) 4) 凹凸の平均間隔Sm 粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り,抜取り部分において1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め,この多数の凹凸の間隔の算術平均値をmmで表したもの(図6). [図:0001392888000008.jpg] ここで,Smi:凹凸の間隔,n:基準長さ内で凹凸の間隔の個数. ・凹凸の間隔Smi:Smは凹凸の平均周期を求めるものであるのでSmを求めるときの山頂の高さと谷底の深さをどの程度のものに設定するかによって,Sm値が変わってくる.このため,Smで取り扱う山谷の大きさはそれぞれ最大高さRyの10%以上とし,平均線を中心にして±10%の不感帯を設け,この不感帯を越えて現れてくる1組の山谷の間隔をSmiとしている.ただし,山と谷のうち,一部分が基準長さの始端や終端で遮られるものはSmでは山や谷と見なさない.」 エ 図6 「 [図:0001392888000009.jpg] 」 (3) 技術常識2の認定 前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)。 [技術常識2] 「要素の平均長さRSmは、表面凹凸の平均波長を表すパラメータであり、評価長さに含まれる基準長さごとに、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、凹凸の間隔の算術平均値を基準長さごとに算出して、その値を評価長さ内で平均したものであること。」 5 引用文献5 (1) 引用文献5の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献5(特開2014-222156号公報)には、以下の記載がある。 「【0022】 本実施形態の厚み検査装置10は、一方の変位センサ1aの投光装置11がライン状の光を、被検査物TOの一表面10aの法線方向から被検査物TOの検査面11aに投光する。厚み検査装置10は、被検査物TOの一表面10a側において、一方の変位センサ1aの距離センサ12が、投光装置11の光の投光方向と所定の角度だけずれた方向から検査面11aを含む被検査物TOの所定の領域12aを撮影する。また、厚み検査装置10は、他方の変位センサ1bの投光装置11が、ライン状の光を被検査物TOの他表面10bの法線方向から被検査物TOの検査面11bに投光する。厚み検査装置10は、被検査物TOの他表面10b側において、他方の変位センサ1bの距離センサ12が、投光装置11の光の投光方向と所定の角度だけずれた方向から検査面11bを含む被検査物TOの所定の領域12bを撮影する。厚み検査装置10は、一表面10a側の検査面11aと、他表面10b側の検査面11bとを対向した位置としている。 【0023】 厚み検査装置10は、移動装置により被検査物TOを移動させながら、一方の変位センサ1aで被検査物TOを測定することにより、図2(a)に示す、被検査物TOの一表表面10a側全面にわたる画像を取得することができる。図2(a)に示す画像は、第1の変位データに基づいて、被検査物TOの仮想の基準面から一表面10a側における表面までの表面高さを表示している。同様に、厚み検査装置10は、移動装置により被検査物TOを移動させながら、他方の変位センサ1bで被検査物TOを測定することにより、図2(b)に示す、被検査物TOの他表表面10b側全面にわたる画像を取得することができる。図2(b)に示す画像は、第2の変位データに基づいて、被検査物TOの仮想の基準面から他表面10bにおける表面までの表面高さを表示している。」 「【0027】 そこで、図2(a),図2(b)に示す画像の変位データから、被検査物TOの短手方向に沿った表面高さの平均値を差し引いて、被検査物TOの反りや被検査物TOの移動中の振動による誤差成分を除去したものを参考として図4に示す。図4(a)に示す画像は、被検査物TOの一表面10aにおける誤差成分を除去した表面の高さを示している。図4(b)に示す画像は、被検査物TOの他表面10bにおける誤差成分を除去した表面の高さを示している。図4(a)の画像からは、被検査物TOの一表面10a側において、被検査物TOの短手方向に反りがあるが概ね平滑であることがわかる。また、図4(b)の画像からは、被検査物TOの他表面10b側において、被検査物TOの表面で表面の高さが高い厚み異常部(図4(b)のa4を参照)があることがわかる。すなわち、図4(a),図4(b)の画像からは、凹凸となる厚み異常部a4が被検査物TOの他表面10b側にあることがわかる。」 「【図1】 [図:0001392888000010.jpg] 」 (2) 周知技術1の認定 上記(1)の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は当業者にとって周知の技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。) [周知技術1] 「ライン状の光を被検査物の表面に投光し、被検査物の表面を撮影した画像から得られる変位データに基づいて被検査物の仮想の基準面から表面までの高さを測定する二次元変位センサにおいて、変位データから被検査物の短手方向に沿った表面高さの平均値を差し引いて、誤差成分を除去した表面の高さを抽出すること。」 6 引用文献12 (1) 引用文献12の記載事項 当審において新たに引用する横田浩二(中国塗料株式会社技術生産本部防汚技術部)「-低燃費型船底塗料-3次元粗度解析による船体摩擦抵抗の可視化」船舶海洋技術セミナー発表資料、2016年4月15日、SEA JAPAN 2016(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 ア 8頁下のスライド 「 [図:0001392888000011.jpg] 」 イ 9頁上のスライド 「 [図:0001392888000012.jpg] 」 (2) 周知技術2の認定 上記(1)の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は当業者にとって周知の技術であったと認められる(以下「周知技術2」という。) [周知技術2] 「車輪である移動機構と、塗料により塗装された状態の測定対象の三次元表面粗度データを生成する演算装置とを備える三次元表面粗度評価装置。」 第5 当審の判断 1 本願発明について (1) 本願発明と引用発明の対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「試験板」は、本願発明の「測定対象」に相当し、引用発明の「表面粗度の断面プロファイル」により描画される「3Dプロファイル」は、本願発明の「三次元表面粗度データ」に相当する。 イ 引用発明の「塗膜粗度測定装置」は、「表面粗度の断面プロファイルを取得する」方法を実行するための装置であるから、本願発明と引用発明は、「測定対象の三次元表面粗度データを取得する三次元表面粗度データ取得方法」である点において一致する。 ウ 本願発明の「二次元レーザー変位計」と、引用発明の「レーザー変位計」は、「レーザー変位計」である点で共通するから、引用発明の「取得した変位データ」は、本願発明の「変位データ」に相当する。 (2) 一致点及び相違点の認定 前記(1)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。 ア 一致点 「測定対象の三次元表面粗度データを取得する三次元表面粗度データ取得方法であって、レーザー変位計によって変位データを取得する三次元表面粗度データ取得方法。」 イ 相違点 本願発明では、「前記測定対象の要素の平均長さRSmを事前に評価し、該RSmの少なくとも2倍以上の計測幅を有する二次元レーザー変位計によって、X軸方向の一定間隔毎に変位を測定する」のに対して、引用発明では、「測定は塗膜の形状の違いを比較的正確に捉えており、この装置の評価長さや、測定ピッチや分解能は塗膜形状測定に適した設定になっている」ものの、測定対象のRSmを事前評価しているか明らかではなく、「X-Yステージ」により「30mm×30mmの範囲(121ポイント、250μmピッチ×121ライン)をスキャンすることにより表面粗度の断面プロファイルを取得する」ものであるから、計測幅を有する二次元レーザー変位計であるとはいえない点。 (3) 本願発明についての判断 前記相違点について検討する。 ア RSmの事前評価について (ア) 引用発明は、「30mmの評価長さでの粗度評価パラメータ」を「算出するもの」であるところ、「塗膜粗度は、機械加工により形成した粗度と比較して長い波長でサイズが大きい領域に属するため、評価長さが短い計測装置では測定には適しないこと」は技術常識であるから(技術常識1を参照)、引用発明では、塗膜粗度の波長が長いことに対応して「塗膜形状測定に適した設定」となるように「評価長さ」を「30mm」としたものであるといえる。 (イ) ここで、「要素の平均長さRSm」は、「表面凹凸の平均波長を表すパラメータ」であるから(技術常識2を参照)、塗膜粗度の波長の長短を判断するための指標となるものであるところ、「要素の平均長さRSm」は、「評価長さに含まれる基準長さごとに、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、凹凸の間隔の算術平均値を基準長さごとに算出して、その値を評価長さ内で平均したものである」から(技術常識2を参照)、測定装置の評価長さを設定するにあたり、測定対象の要素の平均長さRSmがどの程度であるかを事前に見積もり(評価)しておくことは、最適な形状測定を実行するために当業者が当然なすべき事項である。 (ウ) したがって、「塗膜形状測定に適した設定」となるように「評価長さ」を「30mm」とした引用発明において、測定対象(塗膜)の要素の平均長さRSmを事前に評価することは、当業者が当然なすべき事項である。 イ 二次元レーザー変位計について (ア) 引用文献8技術事項には、船底塗料を吹き付けて粗度面を作成した試験体に対して、粗さ測定用のレーザを照射し、超高速インラインプロファイル測定器(キーエンス製 LJ-V7200)の高さ方向(z方向)に並んだセンサを用いて「面測定」を行い、周方向(x方向)に試験体を回転させて粗度の3次元的曲面形状を測定し、z方向に0.02mm間隔で800点、x方向には0.1mm間隔で10000点のデータを取得することが開示されている。 (イ) ここで、引用文献8技術事項の「面測定」は、高さ方向(z方向)に並んだセンサを用いて行われるものであるから、引用文献8技術事項の「面測定」で使用される超高速インラインプロファイル測定器(キーエンス製 LJ-V7200)は、二次元レーザー変位計であるといえる。 なお、キーエンス製のLJ-V7200が二次元レーザー変位計であることは、引用文献2(LJ-V7000シリーズのユーザーズマニュアル)の記載からも明らかである。 (ウ) また、引用文献8技術事項の「面測定」において「x方向には0.1mm間隔で10000点のデータを取得すること」は、「X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得する」ことであるといえる。 (エ) そして、引用発明及び引用文献8技術事項は、塗膜の表面粗度の3次元プロファイルをレーザー変位計により取得している点で共通するから、引用発明において引用文献8技術事項の「面測定」技術を適用することにより、「X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得する」「二次元レーザー変位計」であるように構成することは当業者ならば格別の困難性はない。 ウ RSmと計測幅の関係について 引用発明の「測定対象」は、「ドライスプレーの表面(波長RSmは1871μm)」、「現行加水分解型防汚塗料(波長RSmは3454μm)」、「「SEAFLO NEO」(波長RSmは5255μm)」、「シリコーン防汚塗料(波長RSmは6703μm)」であるところ、引用発明において引用文献8技術事項の「面測定」技術を適用したとき、「30mmの評価長さ」に適合するような計測幅とすることは、測定装置の分解能や測定精度を考慮して当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないというべきであり、上記測定対象のRSm(1871~6703μmの範囲)と計測幅の関係について、「RSmの少なくとも2倍以上の計測幅を有する」ように構成することは、当業者ならば格別の困難性はない。 エ 小括 前記ア~ウの検討内容を踏まえると、前記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明の奏する効果も、引用発明、引用文献8技術事項及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に予測し得たものにすぎない。 したがって、本願発明は、当業者が容易に発明することができたものである。 2 請求人の主張について (1) 審判請求書における主張の概要 請求人は、審判請求書において概略次の主張をしている。下線は当審において付した。 引用文献1において「評価長さが短い装置では塗膜粗度の測定には適しない」としているのは、あくまでも「要素の平均長さRSm」を精度良く測定するためには、評価長さが十分に長い必要があるという意味である。 これに対して、本願発明において、計測幅をRSmの2倍以上とする理由は、取得した変位データをY軸方向に平均化して基準面データを生成する際に、基準面データに表面粗度形状が含まれないようにするためである。 特に、本願発明においては、二次元レーザー変位計を用いてY軸方向の変位データを同時に取得するようにしている。この場合、点状レーザー(一次元レーザー)を用いてサンプリングにより取得した変位データと比べ、多くの情報が含まれていることになる。このような変位データを用いて、Y軸方向に平均化して基準面データを生成する場合に、どの程度の長さで平均化すれば、基準面データに表面粗度形状が含まれず、精度の高い表面粗度測定を行うことができるのか、という基準となる長さが、従来は知られていなかった。 このように、本願発明においては、塗膜粗度(要素の平均長さRSm)を測定するために必要な「評価長さ」の基準ではなく、基準面データを生成するために必要な「平均化する長さ」の基準を示したことに新規性及び進歩性を有するものである。 (2) 請求人の主張の検討 請求人の上記主張は、「前記変位データを、前記計測幅(RSmの2倍以上である計測幅)においてY軸方向に平均化して、各座標の基準面データを生成」するという構成を含む請求項1及び請求項4に係る発明についてしたものであって、上記「基準面データ」に係る構成を含まない本願発明(請求項3に係る発明)についてしたものではない。 よって、請求人の上記主張によって、前記1において説示した本願発明についての当審の判断は左右されない。 3 補正案について 前記1において説示したとおり、本願発明については、進歩性が認められないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 しかしながら、請求人は、審判請求書において補正案1及び2を提示していることから、当審において、上記補正案についても念のため検討した。 次の(2)及び(3)において検討したとおり、補正案1及び補正案2の請求項1及び請求項4に係る発明は、いずれも当業者が容易に発明することができたものである。 したがって、これら補正案に係る発明は、いずれも進歩性を満たすものでないから、補正の機会を新たに付与することは妥当ではないと判断した。 (1) 補正案の内容 ア 補正案1 [請求項1] 測定対象の三次元表面粗度データを生成する三次元表面粗度評価方法であって、 二次元レーザー変位計によって、X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得し、 前記変位データを、前記二次元レーザー変位計のレーザー幅以下である所定の計測幅においてY軸方向に平均化して、各座標の基準面データを生成し、 各X-Y平面座標の前記変位データから、前記各座標の基準面データを減算して、前記測定対象の三次元表面粗度データを生成するものであり、 前記二次元レーザー変位計の計測幅が、平均化するY軸方向の長さであり、 該平均化するY軸方向の長さが、測定対象の要素の平均長さRSmの2倍以上17.6倍以下であることを特徴とする三次元表面粗度評価方法。 [請求項4] 計測幅を調節可能な二次元レーザー変位計と、 前記二次元レーザー変位計をX軸方向に移動させる移動機構と、 前記二次元レーザー変位計のX軸方向の移動距離を読み取る移動距離読取装置と、 前記二次元レーザー変位計により取得された変位データと、前記移動距離読取装置により取得された移動距離データとに基づき、測定対象の三次元表面粗度データを生成する演算装置と、 を備える三次元表面粗度評価装置であって、 前記移動機構が、車輪またはクローラーであり、 前記二次元レーザー変位計は、一定間隔毎にY軸方向の座標の変位データを読み取り可能となるように、該二次元レーザー変位計の幅方向がY軸方向と一致するように配置され、 前記二次元レーザー変位計の計測幅は、事前に評価した測定対象の要素の平均長さRSmの少なくとも2倍以上に調節され、 前記演算装置は、 前記二次元レーザー変位計によりX軸方向の一定間隔毎に取得された前記変位データを、前記二次元レーザー変位計のレーザー幅以下である所定の計測幅においてY軸方向に平均化して、各座標の基準面データを生成し、 各X-Y平面座標の前記変位データから、前記各座標の基準面データを減算して、前記測定対象の三次元表面粗度データを生成するように構成され、 前記二次元レーザー変位計の計測幅が、平均化するY軸方向の長さであり、 該平均化するY軸方向の長さが、測定対象の要素の平均長さRSmの2倍以上17.6倍以下であることを特徴とする三次元表面粗度評価装置。 イ 補正案2 [請求項1] 塗料により塗装された状態の測定対象の三次元表面粗度データを生成する三次元表面粗度評価方法であって、 二次元レーザー変位計によって、X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得し、 前記変位データを、前記二次元レーザー変位計のレーザー幅以下である所定の計測幅においてY軸方向に平均化して、各座標の基準面データを生成し、 各X-Y平面座標の前記変位データから、前記各座標の基準面データを減算して、前記測定対象の三次元表面粗度データを生成するものであり、 前記二次元レーザー変位計の計測幅が、平均化するY軸方向の長さであり、 該平均化するY軸方向の長さが、測定対象の要素の平均長さRSmの2倍以上17.6倍以下であることを特徴とする三次元表面粗度評価方法。 [請求項4] 計測幅を調節可能な二次元レーザー変位計と、 前記二次元レーザー変位計をX軸方向に移動させる移動機構と、 前記二次元レーザー変位計のX軸方向の移動距離を読み取る移動距離読取装置と、 前記二次元レーザー変位計により取得された変位データと、前記移動距離読取装置により取得された移動距離データとに基づき、塗料により塗装された状態の測定対象の三次元表面粗度データを生成する演算装置と、 を備える三次元表面粗度評価装置であって、 前記移動機構が、車輪またはクローラーであり、 前記二次元レーザー変位計は、一定間隔毎にY軸方向の座標の変位データを読み取り可能となるように、該二次元レーザー変位計の幅方向がY軸方向と一致するように配置され、 前記二次元レーザー変位計の計測幅は、事前に評価した測定対象の要素の平均長さRSmの少なくとも2倍以上に調節され、 前記演算装置は、 前記二次元レーザー変位計によりX軸方向の一定間隔毎に取得された前記変位データを、前記二次元レーザー変位計のレーザー幅以下である所定の計測幅においてY軸方向に平均化して、各座標の基準面データを生成し、 各X-Y平面座標の前記変位データから、前記各座標の基準面データを減算して、前記測定対象の三次元表面粗度データを生成するように構成され、 前記二次元レーザー変位計の計測幅が、平均化するY軸方向の長さであり、 該平均化するY軸方向の長さが、測定対象の要素の平均長さRSmの2倍以上17.6倍以下であることを特徴とする三次元表面粗度評価装置。 (2) 補正案1の検討 ア 補正案1の請求項1に係る発明について (ア) 対比 前記1(1)に示した本願発明と引用発明の対比結果を踏まえつつ、補正案1の請求項1に係る発明(以下「補正案1発明1」という。)と引用発明を対比すると、両者は次のaに示す一致点において一致し、以下のbに示す相違点において相違する。 a 一致点 「測定対象の三次元表面粗度データを取得する三次元表面粗度データ取得方法であって、レーザー変位計によって変位データを取得する三次元表面粗度データ取得方法。」 b 相違点 補正案1発明1では、「二次元レーザー変位計によって、X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得し、 前記変位データを、前記二次元レーザー変位計のレーザー幅以下である所定の計測幅においてY軸方向に平均化して、各座標の基準面データを生成し、 各X-Y平面座標の前記変位データから、前記各座標の基準面データを減算して、前記測定対象の三次元表面粗度データを生成するものであり、 前記二次元レーザー変位計の計測幅が、平均化するY軸方向の長さであり、 該平均化するY軸方向の長さが、測定対象の要素の平均長さRSmの2倍以上17.6倍以下である」のに対して、引用発明ではそのような構成を備えていない点。 (イ) 判断 a 二次元レーザー変位計について 引用発明において引用文献8技術事項の「面測定」技術を適用することにより、「X軸方向の一定間隔毎に変位を測定することにより変位データを取得する」「二次元レーザー変位計」であるように構成することは当業者ならば格別の困難性はない。 b 基準面データの生成について 「ライン状の光を被検査物の表面に投光し、被検査物の表面を撮影した画像から得られる変位データに基づいて被検査物の仮想の基準面から表面までの高さを測定する二次元変位センサにおいて、変位データから被検査物の短手方向に沿った表面高さの平均値を差し引いて、誤差成分を除去した表面の高さを抽出すること」は、周知技術であるから(周知技術1を参照)、引用発明に引用文献8技術事項の「面測定」技術を適用するにあたり、変位データを計測幅の方向に平均化して各座標の基準面データを生成し、変位データから各座標の基準面データを減算して、測定対象の三次元表面粗度データを生成するように構成することは、当業者が適宜なし得た測定データに係る信号処理にすぎない。 c 計測幅について 引用発明に引用文献8技術事項の「面測定」技術を適用したとき、測定対象のRSm(1871~6703μmの範囲)と計測幅の関係について、「測定対象の要素の平均長さRSmの2倍以上17.6倍以下である」ように計測幅を設定することは、測定装置の分解能や測定精度を考慮して当業者が適宜なし得た設計事項にすぎず、格別のものではない。 なお、「所定の計測幅」が、「二次元レーザー変位計のレーザー幅以下である」ことや、「平均化するY軸方向の長さ」であることは、技術常識1、2から自明な事項であり、格別のものではない。 d 小括 前記a~cの検討結果を踏まえると、前記相違点に係る補正案1発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、補正案1発明1の奏する効果は、引用発明、引用文献8技術事項、周知技術1及び技術常識1、2から当業者が予測できる程度のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。 したがって、補正案1発明1は、引用発明、引用文献8技術事項、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 補正案1の請求項4に係る発明について (ア) 前記アに示した補正案1発明1の検討結果を踏まえつつ、補正案1の請求項4に係る発明(以下「補正案1発明4」という。)について検討する。 (イ) 「車輪である移動機構と、塗料により塗装された状態の測定対象の三次元表面粗度データを生成する演算装置とを備える三次元表面粗度評価装置」は、周知の技術である(周知技術2を参照)。 (ウ) また、二次元レーザー変位計の計測幅を調節可能なものとし、事前に評価した測定対象の要素の平均長さRSmの少なくとも2倍以上に調節することは、技術常識1、2に基づいて当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。 (エ) したがって、補正案1発明4は、引用発明、引用文献8技術事項、周知技術1、2及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 補正案2の検討 前記(2)に示した補正案1の検討結果を踏まえつつ、補正案2の請求項1、4に係る発明(以下、それぞれ「補正案2発明1」及び「補正案2発明4」という。)について検討する。 引用発明においても、塗料により塗装された状態の測定対象の三次元表面粗度データを測定している。 したがって、補正案2発明1は、引用発明、引用文献8技術事項、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、補正案2発明4は、引用発明、引用文献8技術事項、周知技術1、2及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-001967

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