2022-001362
粘着剤組成物
- 審判番号
- 2022-001362
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-191984外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月28日
- 審決日
- 2023年09月12日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月29日の出願であって、令和3年1月29日付けの拒絶理由の通知に対し、同年5月19日に意見書が提出されたが、同年10月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和4年1月28日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和4年1月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年1月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「シクロペンテン開環重合体とタッキファイヤとを含有し、前記タッキファイヤは、脂肪族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、水素添加型脂環族系石油樹脂、非スチレン系脂肪族芳香族共重合系、ロジン系樹脂から選択される、粘着剤組成物。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年9月29日の出願時の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「シクロペンテン開環重合体とタッキファイヤとを含有する、粘着剤組成物。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「タッキファイヤ」について、前記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
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ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-126966号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
「【請求項1】メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合するシクロペンテン開環重合体の製造方法であって、前記シクロペンテンに対して、0.001~1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とするシクロペンテン開環重合体の製造方法。」
「【0001】本発明は、優れたホットフロー性を有するシクロペンテン開環重合体の製造方法に関する。」
「【0009】
本発明の目的は、ホットフロー性に優れ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れたシクロペンテン開環重合体を提供することにある。
「【0010】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、シクロペンテンに対して、0.001~1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、シクロペンテンと反応させて、ポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造を導入することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0011】すなわち、本発明によれば、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合するシクロペンテン開環重合体の製造方法であって、前記シクロペンテンに対して、0.01~1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とする。」
「【0013】本発明の製造方法によれば、ホットフロー性に優れシクロペンテン開環重合体を製造することができ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れたシクロペンテン開環重合体を提供することができる。」
「【0058】(ゴム組成物)本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、各種配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムを添加することにより、ゴム組成物とすることができる。配合剤としては、特に限定されないが、たとえば、シリカ、カーボンブラックなどの無機粒子が挙げられる。また、シクロペンテン開環重合体以外のゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。特に、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、ポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造を有し、これにより、ホットフロー性に優れるものであるため、上記配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムと混合し易く、そのため、これらを含有するゴム組成物を容易に製造することができる。【0059】さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、ゴム加工分野において通常使用されるその他の配合剤、例えば、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、充填剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、配合目的に応じた量を適宜採用することができる。【0060】本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体、および該シクロペンテン開環重合体を用いて得られるゴム組成物は、ホットフロー性に優れ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れ、各種配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムに対する分散性に優れるものである。そのため、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体、および該シクロペンテン開環重合体を用いて得られるゴム組成物は、上記特性を活かし、広範な用途に使用することができる。具体的には、シール剤、封止材、接着剤、粘着剤などの粘接着剤用途への利用;熱可塑性エラストマー用途への利用;トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用;ホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品などのゴム製品への利用;耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの樹脂強化ゴムとして利用が可能になる。」
(イ)前記(ア)から、特に引用文献1の【請求項1】及び【0060】の記載に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シクロペンテンに対して、0.001~1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、シクロペンテンと反応させるシクロペンテン開環重合体の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体を用いて得られるゴム組成物であって、ホットフロー性に優れ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れ、各種配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムに対する分散性に優れ、広範な用途に使用することができ、具体的には、シール剤、封止材、接着剤、粘着剤などの粘接着剤用途への利用;熱可塑性エラストマー用途への利用;トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用;ホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品などのゴム製品への利用;耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの樹脂強化ゴムとして利用が可能になる、ゴム組成物。」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-221093号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
「【0001】本発明は、粘着剤組成物に関する。」
「【0006】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。即ち、本発明は、イオン液体(A)と、(メタ)アクリル重合体(B)を含有してなる粘着剤組成物(Y)であって、(A)と(B)の溶解度パラメータの差の絶対値が1.5以下である粘着剤組成物;及び前記粘着剤組成物を、支持体の片面又は両面に塗布してなる粘着シート;である。」
「【0062】本発明の粘着剤組成物(Y)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、添加剤(D)を含有させることができる。添加剤(D)としては、粘着性付与樹脂(D1)、可塑剤(D2)、充填剤(D3)、顔料(D4)、紫外線吸収剤(D5)及び酸化防止剤(D6)等が挙げられる。(D)は、単独でも2種以上を併用してもよい。【0063】粘着性付与樹脂(D1)としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂及びスチレン系樹脂等が挙げられる。」
「【0070】・・・(途中省略)・・・粘着剤組成物(Y)の重量に基づく(D1)~(D6)の合計含有率は、好ましくは0~20重量%であり、更に好ましくは0.5~18重量%、特に好ましくは1~15重量%である。」
(イ)前記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「(メタ)アクリル重合体を含有してなる粘着剤組成物に添加し得る添加剤として、粘着性付与樹脂等が挙げられ、粘着性付与樹脂としては、ロジン樹脂等が挙げられる。」
ウ 引用文献5
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-23225号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
「【0001】本発明は、光学部材用粘着剤組成物に関する。また本発明は、当該光学部材用粘着剤組成物により形成される粘着剤層に関する。さらに、本発明は、当該光学部材用粘着剤組成物層を有する粘着型光学部材に関する。前記光学部材としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられ、粘着型光学部材は、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置に好適に用いられる。」
「【0013】すなわち本発明は、スチレン系ブロックエラストマー100重量部に対し、芳香族環またはその水添物を有するタッキファイヤー40~250重量部、およびシランカップリング剤0.01~2重量部を配合してなり、かつ前記タッキファイヤーは屈折率1.53~1.75であることを特徴とする光学部材用粘着剤組成物、に関する。」
「【0033】前記タッキファイヤーの具体例としては、例えば、スチレンオリゴマー、フェノキシエチルアクリレートオリゴマー、スチレンとαメチルスチレンの共重合体、ビニルトルエンとαメチルスチレンの共重合体、テルペンフェノール類およびその水添物、ロジンフェノール類およびその水添物、芳香族系石油樹脂およびその水添物などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンオリゴマー、スチレンとαメチルスチレンの共重合体が好ましい。」
(イ)前記記載から、引用文献5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「スチレン系ブロックエラストマーを含有してなる粘着剤組成物に添加し得るタッキファイヤーとして、ロジンフェノール類およびその水添物などが挙げられる。」
エ 引用文献6
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-124372号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
「【0001】本発明は、粘着剤組成物、及び当該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する導電性粘着シートに関する。」
「【0007】本発明は、優れた粘着力を有し、且つ粘着剤層の表面抵抗率及び体積抵抗率が低く、帯電防止性及び導電性に優れた導電性粘着シートの粘着剤層の形成材料となり得る粘着剤組成物を提供することを目的とする。」
「【0012】[粘着剤組成物]本発明の粘着剤組成物は、ウレタン系ポリマー(A)、粘着付与樹脂(B)、及びカーボンナノ材料(C)を含むものであり、より高い粘着物性を発現させる観点から、架橋剤、もしくは硬化促進剤及び架橋助剤を含むことが好ましい。なお、本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上記(A)成分以外の樹脂成分や、上記以外のその他の添加剤を含有してもよい。・・・(以下省略)・・・」
「【0044】<(B)成分:粘着付与樹脂>本発明で用いる粘着付与樹脂は、ウレタン系ポリマー(A)と混合することが可能な粘着性を向上させる樹脂を意味する。当該粘着付与樹脂の質量平均分子量(Mw)は、通常1万未満であり、樹脂成分とは区別されるものである。なお、粘着付与樹脂(B)の質量平均分子量(Mw)は、得られる粘着剤組成物の粘着物性を向上させる観点から、好ましくは400~4000、より好ましくは800~1500である。【0045】本発明の粘着剤組成物では、粘着付与樹脂(B)として、軟化点が110℃以上のテルペンフェノール系粘着付与樹脂を含有する。本発明で用いるテルペンフェノール系粘着付与樹脂とは、松ヤニやオレンジの皮等の天然物から得られる精油成分であるテルペン系樹脂とフェノールとの共重合体であって、当該共重合体の少なくとも一部又は完全に水素化した水素化テルペンフェノール系樹脂も含まれる。・・・(以下省略)・・・」
「【0047】(B)成分としては、上記の軟化点が110℃以上のテルペンフェノール系粘着付与樹脂以外の他の粘着付与樹脂を1種以上含んでもよい。他の粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、及びそのエステル化合物等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペンフェノール系樹脂以外のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α-又はβ-メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂を水素化した樹脂;等が挙げられる。」
(イ)前記記載から、引用文献6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ウレタン系ポリマーを含有してなる粘着剤組成物に添加し得る粘着付与樹脂として、ロジン系樹脂、C5系石油樹脂などが挙げられる。」
オ 引用文献7
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-107140号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
「【0001】本発明は、活性エネルギー線により硬化し得るポリオキシアルキレン系重合体を含有する粘着剤組成物に関する。」
「【0007】本発明は、(メタ)アクリロイル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有する粘着剤組成物を提供することを目的とする。」
「【0009】すなわち本発明は、(I)一般式(1):-Z-C(=O)-C(R1)=CH2 (1)(式中、R1は水素原子、または、炭素数1~20の炭化水素基、Zは2価の有機基である。)で表される置換基を分子内に平均1個以上有する数平均分子量が3,000以上のポリオキシアルキレン系重合体(A)、および、粘着付与樹脂(B)、および、重合開始剤(C)を含有する粘着剤組成物。【0010】(II)粘着付与樹脂(B)の添加量が、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、20重量部から80重量部である(I)に記載の粘着剤組成物。」
「【0074】本発明の粘着剤組成物は、粘着力を向上させる目的で粘着付与樹脂(B)を含有する。粘着付与樹脂(B)としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、変成フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、キシレン樹脂、クロマン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂などがあげられる。・・・(途中省略)・・・【0075】粘着性付与樹脂(B)の使用量としては、特に制限されないが、重合体(A)100重量部に対し、5重量部から100重量部が好ましく、20重量部から80重量部がより好ましい。使用量がこの範囲を下回ると十分に効果を得られない可能性があり、この範囲を上回ると粘度が高くなり過ぎ、作業性が悪くなる懸念がある。また、本発明の粘着剤組成物においては、二種類以上の粘着性付与樹脂を併用してもよい。」
(イ)前記記載から、引用文献7には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「活性エネルギー線により硬化し得るポリオキシアルキレン系重合体を含有してなる粘着剤組成物に添加し得る粘着付与樹脂として、石油樹脂、ロジンエステル樹脂などが挙げられる。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「シクロペンテンに対して、0.001~1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、シクロペンテンと反応させるシクロペンテン開環重合体の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体」は、本件補正発明の「シクロペンテン開環重合体」に相当する。
(イ)引用発明の「ゴム組成物」と本件補正発明の「粘着剤組成物」とは、ともに「組成物」である点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シクロペンテン開環重合体を含有する組成物。」
<相違点1>
「シクロペンテン開環重合体を含有する組成物」について、本件補正発明は、「粘着剤組成物」であるのに対し、引用発明は、「広範な用途に使用することができ、具体的には、シール剤、封止材、接着剤、粘着剤などの粘接着剤用途への利用;熱可塑性エラストマー用途への利用;トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用;ホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品などのゴム製品への利用;耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの樹脂強化ゴムとして利用が可能になる」ものであるが、粘着剤の用途に限定されていない点。
<相違点2>
前記相違点1に伴って、本件補正発明は、組成物が「タッキファイヤ」を含有するものであって、かつ、該「タッキファイヤ」が「脂肪族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、水素添加型脂環族系石油樹脂、非スチレン系脂肪族芳香族共重合系、ロジン系樹脂から選択される」ものであるのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。
(4)判断
ア 以下、相違点1及び2について、合わせて検討する。
引用発明のシクロペンテン開環重合体を含有するゴム組成物は、所定の特性を活かし、広範な用途に使用することが可能なものであって、例えば粘着剤などの粘接着剤用途への利用も可能なものであって、粘着剤用途に用いることを阻害するような特段の事情もみられないから、引用発明の組成物について、粘着剤組成物としての用途を選択することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用文献2及び引用文献5ないし7に記載された技術的事項(前記(2)のイ(イ)、ウ(イ)、エ(イ)及びオ(イ)参照。)にもみられるように、各種の高分子化合物をベースポリマーとする粘着剤組成物を構成するに際して、必要に応じて、ロジン系樹脂などのタッキファイヤ(粘着付与樹脂)を添加することは、本願出願時に周知の事項であって、引用発明と、引用文献2及び引用文献5ないし7に記載された技術とは、いずれも、粘着剤組成物に係る技術分野に属するものであり、かつ、粘着剤組成物に所望の粘着特性を付与することを目的とする点で共通するものである。
してみると、引用発明のゴム組成物について、粘着剤組成物としての用途を選択したのに伴い、粘着剤組成物に所望の粘着特性を付与するために、ロジン系樹脂などの周知のタッキファイヤ(粘着付与樹脂)を添加することは、当業者が適宜なし得たことである。
イ また、本件補正発明の効果について、本願明細書の【0006】には、「本発明の課題は、粘着特性に優れた接着剤組成物を提供すること」、同【0098】の【表1】には、シクロペンテン開環重合体にタッキファイヤを添加して得られた実施例とタッキファイヤを添加しない比較例との粘着力評価試験により、タッキファイヤを添加した実施例は、良好な粘着力を示し、粘着特性に優れるものであることが記載されている。これに対して、タッキファイヤは粘着付与樹脂であることから粘着性を向上させる機能を有するものであり、前記周知技術として引用した引用文献6、7にも、タッキファイヤ(粘着付与樹脂)を粘着力を向上させる目的で組成物に添加することが記載されている(引用文献6【0044】、引用文献7【0074】参照)。
してみると、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2及び引用文献5ないし7に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ 請求人は、審判請求書6頁7~21行において、「引用文献1には、シクロペンテン開環共重合体の製造方法とその製造方法により得られたシクロペンテン開環重合体が開示されているだけで、本願発明の技術思想(シクロペンテン開環重合体と、脂肪族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、水素添加型脂環族系石油樹脂、非スチレン系脂肪族芳香族共重合系、ロジン系樹脂から選択されるタッキファイヤと、を含有することで、粘着特性に優れた粘着剤組成物を得ること)は記載または示唆されておりません。また、引用文献2~7には、シクロペンテン開環共重合体以外の重合体(アクリル系、スチレン系、ウレタン系、ポリオキシアルキレン系の重合体)を含む粘着剤組成物が開示されているだけで、本願発明の技術思想は記載または示唆されておりません。すなわち、請求項1の発明からは、引用発明1及び引用文献2~7に記載の発明(以下引用発明2~7といいます)では得られない有利で顕著な効果が得られます。このような状況の下、引用発明1に引用発明2~7を適用することは、当業者が容易になし得る事項ではなく、また、引用発明1に引用発明2~7を適用して本願発明に想到する動機付けがありません。」と主張する。
しかしながら、前記アに記載したとおり、引用発明のシクロペンテン開環重合体を含有するゴム組成物を粘着剤組成物としての用途に採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明のゴム組成物を粘着剤組成物として用いる場合には、前記アに記載したとおり、必要に応じて、ロジン系樹脂などのタッキファイヤ(粘着付与樹脂)を添加することは、本願出願時における周知の事項であるから、引用発明のゴム組成物にロジン系樹脂などの周知のタッキファイヤ(粘着付与樹脂)を添加することは、当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、請求人による主張の根拠は、引用文献1~7に「本願発明の技術思想(シクロペンテン開環重合体と、脂肪族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、水素添加型脂環族系石油樹脂、非スチレン系脂肪族芳香族共重合系、ロジン系樹脂から選択されるタッキファイヤと、を含有することで、粘着特性に優れた粘着剤組成物を得ること)」が記載または示唆されていないことだけであって、引用発明を粘着剤として用いることの阻害要因があることや、粘着剤にロジン系樹脂などのタッキファイヤ(粘着付与樹脂)を添加することが周知技術であっても、その周知技術を引用発明に適用することの阻害要因があること等を根拠とするものでないから、本件補正発明の容易想到性は、前記ア及びイのとおりである。
してみると、前記主張は採用できない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年1月28日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月29日の出願時の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし7に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献2、引用文献5ないし7及びそれらの記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「タッキファイヤ」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用文献3ないし4を参酌するまでもなく、引用文献1に記載された発明(引用発明)、引用文献2及び引用文献5ないし7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-001362