特許拒絶査定不服審判
2022-000797
粘着シート
- 審判番号
- 2022-000797
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-177947外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月19日
- 審決日
- 2023年06月27日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】リンテック株式会社
- 【請求人代理人】IBC一番町弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-177947「粘着シート」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日出願公開、特開2019- 52257〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 7月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年10月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」といい、謄本発送は10月20日)
令和4年 1月19日 :審判請求書の提出
令和5年 4月17日 :上申書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和3年7月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「 【請求項1】
金属材料によって形成された基材層と、
当該基材層の片方の面の側に設けられた粘着剤層と、
前記基材層の片方の面と前記粘着剤層との間、およびこれと反対の前記基材層の他方の面の側のうち、少なくとも前記基材層の片方の面と前記粘着剤層との間に、前記基材層と一体に設けられた樹脂層と、を有し、
前記基材層の厚みが、7μmより大きく15μm未満であり、
前記樹脂層の総厚みが、25μmより大きく40μm以下である、粘着シート。」
第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定には「この出願については、令和3年4月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。」と記載されている。
そして、当該理由2は、請求項1、2、4に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献2:特開2001-351369号公報
第4 引用文献
1 引用文献2の記載事項
前記引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】 基材の片面に情報表示部を有し、他面に粘着剤層を有する粘着ラベルであって、前記粘着ラベルは、ハードディスクドライブの筐体外面に貼付されることでハードディスクドライブ駆動時の発生音を低減することが可能なハードディスクドライブ用粘着ラベル。
【請求項2】 基材が、金属箔の両面に樹脂フィルム層が積層されたものからなる請求項1記載のハードディスクドライブ用粘着ラベル。
【請求項3】 基材を構成している金属箔の厚みが10μm以上である請求項2記載のハードディスクドライブ用粘着ラベル。
【請求項4】 粘着ラベルの背面側に形成される樹脂フィルム層の厚みが25μm以上125μm以下である請求項2又は3記載のハードディスクドライブ用粘着ラベル。」
(2)「【0011】本発明の粘着ラベルは、制振性を発揮できる剛性を有し、かつ粘着ラベルとしての貼付作業性を満足させる点からは、前記基材における、樹脂フィルム層/金属箔/樹脂フィルム層の各々の厚み又は構成として、例えば、以下の厚み又は構成を例示することができる。
(1)情報表示部が形成される粘着ラベル背面側の樹脂フィルム層の厚みとしては、通常6μm以上125μm以下(6μm~125μm)であり、好ましくは25μm以上125μm以下(25μm~125μm)である。当該樹脂フィルム層が6μmよりも薄い場合は、基材全体が金属箔の特性に支配され、皺が入り易くなり、また、非常に薄いために安定的にラミネートすることが、非常に難しくなる。また、当該樹脂フィルム層の厚みを25μm以上とすることにより、粘着ラベルの背面側となる樹脂フィルム層表面に熱転写方式の印刷手段により情報表示部を形成する場合に、インク転写時の熱が金属箔を介して散逸することで発生すると考えられる印刷不良の問題をより一層改善することができる。なお、情報表示部としてバーコード等を印刷する場合は、当該樹脂フィルム層に特に白色等に着色した樹脂フィルム(例えば白色ポリエチレンテレフタレートフィルム等)を用いることにより、バーコード等の読み取り性に優れた特性が得られる。
【0012】(2)金属箔としては、基材としての剛性を保つ観点からは、その厚みは10μm以上(好ましくは15~150μm)であることが望ましい。該金属箔の厚みが10μmよりも薄い場合は、基材の剛性を高めるといった目的を達成できない場合がある。また、基材の剛性を高めるためには、その厚みは厚いほど良いが、厚くなりすぎると粘着ラベルとして厚くなりすぎ、ハードディスクドライブの製品厚さに影響することになるので、金属箔としては、その厚みが150μm以下であることが望ましい。」
(3)「【0037】実施例3
基材として、次の基材Cを用いた。
基材C:ドライラミ接着による積層方式により、白色ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:25μm)/アルミニウム箔(厚み:15μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:9μm)からなる基材Cを作製した。
【0038】また、粘着剤としては、次の粘着剤配合物Cを用いた。
粘着剤配合物C:配合物としてアクリル酸:10重量部、アクリル酸イソノニル:90重量部、光開始剤として商品名「イルガキュア184(チバガイギー社製)」:0.1重量部を三つ口フラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌して反応系内の窒素置換を行った。その後、UVランプにより約150mJとなるようにUV光を照射し、重合率約10%の反応を行いプレポリマーを得た。さらにこのプレポリマー:100重量部に対し、内部架橋剤としてTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)を0.14重量部とイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)1重量部を加えて攪拌し、粘着剤配合物C(アクリル系粘着剤C)を調製した。
【0039】前記粘着剤配合物Cを、シリコーン系剥離剤層が表面に形成されているポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナC1)のシリコーン系剥離剤層側の面に、厚さが25μmとなるように塗布し、さらに別の剥離ライナC2(前記剥離ライナC1と同様の剥離ライナである)のシリコーン系剥離剤層側の面を貼り合せ、配合物表面を空気層から遮断する状態にてUVランプにて約2000mJのUV光を照射し配合物を反応させて、粘着シートCを作製した。前記粘着シートCの片側の剥離ライナ(剥離ライナC1及び剥離ライナC2のうちいずれか一方の剥離ライナ)を剥がし(又は除去し)、130℃のオーブン中で約1分乾燥させることにより、アクリル系粘着剤Cからなる粘着剤層から揮発成分を除去した後に、基材Cの厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルム層側の面に貼り合せて、基材付き粘着シートCを作製した。
【0040】前記基材付き粘着シートCの基材背面側に印刷を施すことにより、実施例3に係る粘着ラベルCを作製した。
【0041】上記にて作製した粘着ラベルCを市販の2.5インチハードディスクドライブ(a)のトップカバー外面の約56%に貼り付け、実施例1と同様にして騒音レベルの測定を行ったところ、表1に示される結果が得られた。表1に示されているように、実施例3に係る粘着ラベルCを貼り付ける前に27.7dB(A)であったで騒音レベルが、貼り付けた後は26.4dB(A)となった。」
2 引用文献2に記載された発明
(1)引用文献2の【請求項1】を引用する【請求項2】には、「基材の片面に情報表示部を有し、他面に粘着剤層を有する粘着ラベルであって」、前記「基材が、金属箔の両面に樹脂フィルム層が積層されたもの」であり、「前記粘着ラベルは、ハードディスクドライブの筐体外面に貼付されることでハードディスクドライブ駆動時の発生音を低減することが可能なハードディスクドライブ用粘着ラベル」が記載されている。
(2)引用文献2の実施例3に注目すると、「白色ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:25μm)/アルミニウム箔(厚み:15μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:9μm)からなる基材C」を基材として用いること(【0037】)、「アクリル系粘着剤Cからなる粘着剤層」を有する「粘着シートC」を作製し、「当該基材Cの厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルム層側の面に貼り合わせて、基材付き粘着シートCを作製すること」(【0039】)、「前記基材付き粘着シートCの基材背面側に印刷を施すことにより、実施例3に係る粘着ラベルCを作製した」こと(【0040】)が記載されている。
(3)してみると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基材の片面に情報表示部を有し、他面に粘着剤層を有する粘着ラベルであって、前記基材は、白色ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:25μm)/アルミニウム箔(厚み:15μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:9μm)からなる基材であり、基材の厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルム層側の面に粘着剤層を有しており、前記粘着ラベルは、ハードディスクドライブの筐体外面に貼付されることでハードディスクドライブ駆動時の発生音を低減することが可能なハードディスクドライブ用粘着ラベル。」
第5 当審の判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「アルミニウム箔」、「粘着シート」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム層」及び「粘着ラベル」は、本願発明の「基材層」、「粘着剤層」、「樹脂層」及び「粘着シート」にそれぞれ相当する。
(2)引用発明の「基材は、白色ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:25μm)/アルミニウム箔(厚み:15μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム層(厚み:9μm)からなる基材であり、基材の厚さ9μmのポリエチレンテレフタレートフィルム層側の面に粘着剤層を有し」は、本願発明の「基材層の片方の面と」「粘着剤層との間に、」「基材層と一体に設けられた樹脂層と、を有し」に相当する。
(3)引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム層」の総厚みは34μmであるから、本願発明の「前記樹脂層の総厚みが、25μmより大きく40μm以下である」を充足する。
(4)以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
本願発明と引用発明とは、
「金属材料によって形成された基材層と、
当該基材層の片方の面の側に設けられた粘着剤層と、
前記基材層の片方の面と前記粘着剤層との間、およびこれと反対の前記基材層の他方の面の側のうち、少なくとも前記基材層の片方の面と前記粘着剤層との間に、前記基材層と一体に設けられた樹脂層と、を有し、
前記樹脂層の総厚みが、25μmより大きく40μm以下である、粘着シート。」
の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
基材層の厚みが、本願発明は、「7μmより大きく15μm未満」であるのに対し、引用発明は、「15μm」である点。
2 相違点について
(1)前記第4、1(2)に摘記した引用文献2の【0011】、【0012】には、粘着ラベルは、「制振性を発揮できる剛性を有し、かつ粘着ラベルとしての貼付作業性を満足させる点からは、前記基材における、樹脂フィルム層/金属箔/樹脂フィルム層の各々の厚み又は構成として、例えば、以下の厚み又は構成を例示することができる。」と記載され、「金属箔としては、基材としての剛性を保つ観点からは、その厚みは10μm以上(好ましくは15~150μm)であることが望ましい。該金属箔の厚みが10μmよりも薄い場合は、基材の剛性を高めるといった目的を達成できない場合がある。また、基材の剛性を高めるためには、その厚みは厚いほど良いが、厚くなりすぎると粘着ラベルとして厚くなりすぎ、ハードディスクドライブの製品厚さに影響することになるので、金属箔としては、その厚みが150μm以下であることが望ましい。」と記載されている。
(2)そうすると、引用発明を認定したのと同じ文献に、アルミニウム箔の厚さを、基材としての剛性を保つ観点と製品厚さに影響しないようにする観点から、10μm以上150μm以下の範囲で調整する技術が記載されているので、アルミニウム箔の厚さが15μmである引用発明において、必要とする剛性及び製品厚さに応じてアルミニウム箔の厚さを調整し、10μm以上15μm未満の厚さとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)そして、本願発明の効果について検討すると、本願明細書には、基材層の厚さを7μmより大きく30μm未満にすることで、浮きを防止して被着体の形状に追従させる効果が記載されているが(【0070】、【0075】~【0077】)、引用発明は、アルミニウム箔の厚さが15μmであるため、引用文献2に効果の記載がないとしても、浮きを防止して被着体の形状に追従させる効果を奏するものといえ、また本願明細書には、基材層の厚さが「7μmより大きく15μm未満」であることにより、「15μm」である場合と比較して有利な効果を奏することは記載されていないため、本願発明が、引用発明と比較して有利な効果を奏するものとは認められない。また、仮に、基材層の厚さが「7μmより大きく15μm未満」であることにより、「15μm」である場合と比較してより一層浮きを防止して被着体の形状に追従させる有利な効果を奏するとしても、引用文献2には、樹脂フィルム層/金属箔/樹脂フィルム層の各々の厚みについて、粘着ラベルとしての貼付作業性を満足させる観点を考慮して調整することが記載されており(【0011】)、浮きを防止して被着体の形状に追従させるという効果の記載はないものの、貼付作業性という関連する事項が記載されているといえるので、本願発明の基材層の厚さを「7μmより大きく15μm未満」に調整することにより浮きを防止して被着体の形状に追従させる効果が、引用文献2の記載から当業者が予測し得ない顕著な効果であるとまでは認められない。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、審判請求書において、「引用文献2において、厚み「15μm」は、下限値として開示されており(段落「0012」第1文参照)、本願発明のように上限値に設定することは、一切記載も示唆もされていません。」とし、「上限値を僅か「15μm」に設定すると、金属箔の厚み、ひいては剛性が、引用文献2の発明の想定より非常に小さく狭い範囲に制限されてしまい、制振性の向上が妨げられ、駆動時発生音を低減させる上で極めて不利になってしまいます。これは、引用文献2の発明の本質的目的に反します。」、「当業者は、引用文献2の発明において、下限値として設定されている「15μm」を、上限値に設定しようとは考えず、引用文献2から本願発明が容易に案出されたとは言えないと思料します。」と主張している。
しかしながら、引用文献2の【0012】には、金属箔の厚みは「10μm以上」であることが明記されており、好ましい範囲として「15μm以上」と記載されているにすぎないため、引用文献2記載の発明において、金属層の厚みとして、10μm以上15μm未満の範囲の厚みを採用することを妨げる特段の事情は見当たらず、当業者が容易になし得たことであるといえるので、前記審判請求人の主張は採用できない。
(2)また審判請求人は、審判請求書において、引用文献2に記載の発明の「防音・制振による騒音低減」と、本願発明の「被着体の表面形状への良好な追従」とでは、全く異なっており、「本願発明の効果は、引用文献2の発明の効果とは全く異質で有利なものです。」と主張している。
しかしながら、前記2(3)で検討したとおり、基材層の厚さが「7μmより大きく15μm未満」である本願発明はその相違が微少な発明を含んでいる以上、「15μm」である引用発明と比較して有利な効果を奏するとは認められない。また、仮に浮きを防止して被着体の形状に追従させる有利な効果を奏するとしても、前記2(3)で検討したとおり、引用文献2には粘着ラベルとしての貼付作業性を満足させる観点が記載されていることから、審判請求人の主張する前記効果が引用文献2の記載から当業者が予測し得ない顕著な効果であるとまでは認められない。
(3)なお、令和5年4月17日に提出された上申書において、審判請求人は、「出願人は、審理の充実および審理負担の軽減をより一層促進すべく、本願発明と引用発明との差異、および本願発明の特許性について更なるご説明を申し上げる用意がございます。」とし、「また、機会が与えられますならば必要に応じて補正することも考えております。」、「審判官合議体におきまして、万一、拒絶すべきとご判断されるような場合には、そのまま拒絶審決されることは是非とも回避いたしたく存じます。本審判事件におきまして、万一拒絶すべきとのご判断の場合には、面接、あるいは拒絶理由の通知等の機会を何卒賜りますよう、上申いたします。」と申出ている。しかしながら、審判請求時に補正を行う機会があり、また審判請求書や上申書において本願発明の特許性の更なる説明を行う機会があったのであるから、前記申出は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-000797