意匠無効審判
2021-880015
マイクロニードルシート
- 審判番号
- 2021-880015
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 意願2020-023544
- 登録番号
- 1680005
- 請求日
- 2021年12月16日
- 審決日
- 2022年12月13日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 北の達人コーポレーション
- 【請求人代理人】特許業務法人レガート知財事務所
- 【被請求人】ヤーマン 株式会社
- 【被請求人代理人】新保 斉
- 【被請求人代理人】上田 望美
- 【被請求人代理人】西本 政司
- 【被請求人代理人】塚本 鳩耶
- 【被請求人代理人】佐藤 滉祐
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 弘樹
- 審判官 小林 裕和
- 審判官 渡邉 久美
- 分類
- D1113.113-Y (B7-1)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第2項、意匠法第3条第1項第3号、意匠法第48条第1項第1号、意匠法第3条、意匠法第6条、意匠法第24条、意匠法第6条第7項、意匠法第52条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の意匠登録第1680005号「マイクロニードルシート」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)意匠登録第1680005号の意匠登録を無効とする。
(2)審判費用は被請求人の負担とする。
2 答弁の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)本件審判の請求は成り立たない。
(2)審判費用は請求人の負担とする。
第2 手続の経緯
1 本件登録意匠の出願から意匠公報の発行までの経緯
本件登録意匠についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和 2年10月30日 :出願(意願2020-23544)
同年11月 6日 :早期審査に関する事情説明書の提出
同年12月 8日付け:早期審査に関する報告書
令和 3年 1月27日付け:登録査定
同年 2月 5日 :意匠権の設定登録
同月22日 :意匠公報の発行
2 本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の概略は、以下のとおりである。
令和 3年12月16日 :審判請求書の提出
令和 4年 3月14日 :審判事件答弁書の提出
同年 5月23日 :審判事件弁駁書の提出
同年 7月22日付け:審理事項通知
同年 9月15日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同月29日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年10月13日 :口頭審理
同月27日 :上申書の提出(被請求人)
同年11月 7日受付:上申書の提出(請求人)
同月16日付け:審理終結通知
第3 請求人が主張する無効理由
1 無効理由1(意匠法第3条第1項第3号違背)
意匠登録第1680005号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)は、意匠登録第1657009号の意匠(甲第1号証の意匠、以下「甲1意匠」という。)に類似するものであり、意匠法第3条1項3号に該当し、意匠法第48条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきものである。
2 無効理由2(意匠法第3条第2項違背)
本件登録意匠は、甲1意匠及び意匠登録第1122097号の意匠(甲第2号証の意匠。以下「甲2意匠」という。)に基づいて容易に創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項に該当し、意匠法第48条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきものである。
第4 当事者の主張及び証拠方法
1 無効理由1(意匠法第3条第1項第3号違背)
(1)請求人の主張
ア 意匠に係る物品
本件登録意匠は、美容有用成分を肌に導入するためのマイクロニードルを
備えたマイクロニードルシートであり、正面側に多数の突起からなるマイク
ロニードル部を備え、その周囲の貼着部を肌面に貼着するものである。他方、甲1意匠は、頬や目元などに貼付して使用する美容用シートであって、粘着面を肌に貼り付けることによってマイクロニードルが皮膚に剌入され、化粧剤や薬剤成分を人体に供給することができるものである。
すなわち、両物品共に、美容を目的として美容有用成分を人体(肌)に供
給するものであって、用途機能が共通する同種の物品である。
イ 両意匠の態様
(ア)本件登録意匠
i 基本的構成態様
正面視において、
A 本体シート部のぼぼ全域にマイクロニードル部が設けられ、その周囲の残余の縁部に貼着部が設けられている。
B 前記本体シート部の形状は略逆二等辺三角形状である。
C 前記本体シート部の上縁は緩やかな凹弧をなし、他の2縁は緩やかな凸孤をなしている。
D 前記本体シート部の隅部はRをなしている。
E 前記マイクロニードル部は、多数の微小突起で構成されている。
ii 具体的態様
正面視において
A-1 前記貼着部の幅は、上縁部では幅が狭く、左右の縁部において下方に向けて次第に幅広とされている(被請求人の基本的構成態様A)。
B-1 前記本体シート部の縦(左右中央の縦寸法)と横(最大横寸法)の寸法比は約1:1.7である。
C-1 本体シート部の最も長い一辺の凹部の底部までの高さは、全高に対して約14.1%である(被請求人の具体的構成態様C-1)。
D-1 本体シート部の一つの隅部のRの曲率半径は、他の2隅部のRの曲率半径よりも大きい(被請求人の具体的構成態様D-1、2、4)。
E-1 本体シート部の表面とマイクロニードル部のベース面とは面一である。
背面視において
F-1 物品全体が半透明で構成され、マイクロニードル部の基部が透過して視認される。
(イ)甲1意匠
i 基本的構成態様
正面視において、
a 本体シート部のほぼ全域にマイクロニードル部が設けられ、その周囲の残余の縁部に貼着部が設けられている。
b 前記本体シート部の形状は略逆二等辺三角形状である。
c 前記本体シート部の上縁は緩やかな凹弧をなし、他の2縁は緩やかな凸孤をなしている。
d 前記本体シート部の隅部はRをなしている。
e 前記マイクロニードル部は、多数の微小突起で構成されている。
ii 具体的態様
正面視において
a-1 前記貼着部の幅は、全周にわたって同じ幅とされている(被請求人の基本的構成態様a)。
b-1 前記本体シート部の縦(左右中央の縦寸法)と横(最大横寸法)の寸法比は約1:1.3である。
c-1 本体シート部の最も長い一辺の凹部の底部までの高さは、全高に対して約7.0%である(被請求人の具体的構成態様c-1)。
d-1 本体シート部の3つの隅部のRの曲率半径は、ほぼ同じである(被請求人の具体的構成態様d-1、2、4)。
e-1 本体シートの上にマイクロニードル部のベースシートが層着されている。
背面視において
f-1 マイクロニードル部の基部は現れていない。
ウ 類否判断
(ア)基本的構成態様
まず、基本的構成態様において、両意匠は完全に一致している。
(イ)具体的構成態様
具体的構成態様において、
(具体的構成態様A-1とa-1)
本件登録意匠は
A-1 前記貼着部の幅は、上縁部では幅が狭く、左右の縁部において下方に向けて次第に幅広とされている(被請求人の基本的構成態様A)。
のに対して甲1意匠は
a-1 前記貼着部の幅は、全周にわたって同じ幅とされている(被請求人の基本的構成態様a)。
という差違があるが、貼着部の幅については種々の公知例(甲3、甲11)があり、幅をどのようにするかは単なる選択に過ぎず、類否への影響は小さい。
(具体的構成態様B-1とb-1)
本件登録意匠は
B-1 前記本体シート部の縦(左右中央の縦寸法)と横(最大横寸法)の寸法比は約1:1.7である。
のに対して、公知意匠は
b-1 前記本体シート部の縦(左右中央の縦寸法)と横(最大横寸法)の寸法比は約1:1.3である。
という差違があるが、同じく「逆二等辺三角形」という特徴を備え、シリニズ商品と認識されるものであり、類否への影響は一定程度に留まる。
(具体的構成態様C-1とc-1)
本件登録意匠は、
C-1 本体シート部の最も長い一辺の凹部の底部までの高さは、全高に対して約14.1%である(被請求人の具体的構成態様C-1)。
のに対して、甲1意匠は
c-1 本体シート部の最も長い一辺の凹部の底部までの高さは、全高に対して約7.0%である(被請求人の具体的構成態様c-1)。
という差違があるが、窪みの深さの差違は2倍程度に留まるのであり、類否への影響は小さい。
(具体的構成態様D-1とd-1)
本件登録意匠は、
D-1 本体シート部の一つの隅部のRの曲率半径は、他の2隅部のRの曲率半径よりも大きい(被請求人の具体的構成態様D-1、2、4)。
のに対して、甲1意匠は
d-1 本体シート部の3つの隅部のRの曲率半径は、ほぼ同じである(被請求人の具体的構成態様d-1、2、4)。
という差違があるが、「逆二等辺三角形」の頂部にRを形成したという共通性に埋没するものであり、類否への影響は一定程度に留まる。
(具体的構成態様E-1とe-1)
本件登録意匠は、
E-1 本体シート部の表面とマイクロニードル部のベース面とは面一である。
のに対して、甲1意匠は
e-1 本体シートの上にマイクロニードル部のベースシートが層着されている。
という差違があるが、通常の観察においてベースシートの存在が格別認識されることはなく、類否判断においては無視される差違である。
(具体的構成態様Fとf)
背面視において、本件登録意匠は、
F-1 物品全体が半透明で構成され、マイクロニードル部の基部が透過して視認される。
のに対して、甲1意匠は
f-1 マイクロニードル部の基部は現れていない。
という差違があるが
甲1意匠において「基部が透過して視認される」態様を排除しているとは解釈できず、類否に影響するものではない。
(ウ)類否
以上の次第であるから、基本的構成態様がもたらす美感の共通性を凌駕する具体的構成態様は存在せず、両意匠を全体として観察したとき、本件登録意匠は甲1意匠に類似するというべきである。
エ 被請求人の主張に対する反論
(ア)請求人の基本的構成態様bについて
被請求人は、甲1意匠においては「略二等辺三角形状」ではなく「正三角形状」であると主張する。
両意匠の「骨格的形状」である基本的構成態様の認定においては、まず「三角形状」であることが重要なのである。曲玉形状が主流であるこの種の物品の意匠において、「三角形状」のものは数が少なく、「三角形状」であること自体が意匠の特徴点になりえるためである。
ところで、「三角形」といっても種々の形状があるので、請求人は、一定の形状に特定するものとして「二等辺三角形状」と記述しているものである。
「正三角形」は「二等辺三角形」の概念に含まれるものであるところ、甲1意匠は「「略逆正三角形状である」と呼ぶ方がはるかに自然である。」(後記(2)ウ(ア))というが主観に基づいた主張にすぎない。
(イ)被請求人の具体的構成態様B-1について
甲3号証の意匠などを含めて、甲1意匠以外には、どの意匠にも、「隅・角」を認識させる造形はなく、曲率半径の大きい曲線・円弧のみで処理された造形である。そのような意匠の中で、甲1意匠1、甲2意匠、そして本件登録意匠は「隅・角」を認識させる曲率半径の小さい曲線処理、すなわち「隅・角を認識させる造形処理」をしたものであり、その結果としての「略逆三角形状」という造形は、高く評価されるべきものであり、基本的構成態様をなすものというべきである。
(ウ)被請求人の「具体的構成態様D-1及びd-1の差違点」について
両意匠における「隅R」の曲率が異なることは争わないが、「隅Rを備える」点で共通するものである。そして、隅Rの曲率の差違は、両意匠の縦横比の差違に基づくものに過ぎない。本件登録意匠は甲1意匠よりも横に長い形状であり、被請求人は「二等辺三角形状」「正三角形状」と区別する。
しかしながら、本体シートの輪郭形状はマイクロニードル部の領域選択の観点から決定され、本件登録意匠が甲1意匠よりも横に長い形状であることは、マイクロニードル部を左右に広くする選択をして結果にすぎない。そして、二等辺三角形において横に長くする(底辺を長くする)ならば、底辺に対向する頂角は角度が大きく、他の二角は角度が小さくなる。その結果として、必然的に、本件登録意匠においては曲率半径r1が小さく、曲率半径r2は大きくなるのであり、甲1意匠においては曲率半径R1、R2共に小さくなるのである。
したがって、差違点D-1とd-1は、「隅Rを備える」という共通点に吸収される程度のものにすぎず、類否に及ぼす影響は小さい。
(エ)「逆二等辺三角形」と「逆正三角形」
被請求人は、本件登録意匠と甲1意匠との差違を強調するために、本件登録意匠は「逆二等辺三角形」であり、甲1意匠は「逆正三角形」であると、再三主張する。しかしながら、甲1意匠を採寸すれば「正三角形に近い逆三角形」であるということができるとしても、両意匠共に、一見して「逆三角形」であり「逆二等辺三角形」である。
すなわち、両意匠共に「逆二等辺三角形」という範疇のものであり、これを「シリーズ商品と認識される程度」ということに誤りはない。そして、「正三角形」は「二等辺三角形」の一態様にすぎないのであるから、「逆二等辺三角形という輪郭形状が多大な寄与をする」ことにおいて、本件登録意匠と甲1意匠とに差違はない。
(オ)被請求人の「具体的構成態様H及びhの差違点」について(請求人の「具体的構成態様E-1とe-1」について)
被請求人は、「願書の記載に基づかない推測は許されない」という。請求書において「本件登録意匠においてマイクロニードル部のベース面が図面に現されていないものの、意匠の態様に影響しないものであるとして図面に現さなかったものと推測される。」と記載した趣旨は、マイクロニードル部のベース面の有無は些細な差違に過ぎないことを言うものである。差違点として掲げる必要もない差違であるが、「ベース面の有無」という構成に係る差違であることから採りあげたにすぎない。
この差違は、詳細に観察してはじめて認識するにすぎないものであり、類否判断では無視してよい差違である。
また、本体部シート、ベースシートともに極めて薄いものである。甲1意匠の実施品における寸法は、マイクロニードルの高さが250-290μm、マイクロニードルシートの厚さが2.5-2.9μm、貼着シートの厚さが300μmである。
意匠図面においては、薄いフィルムであっても厚さがある以上表裏を示す2本の線を表すことが原則とされている。したがって、シートの厚みは強調されてしまうのであり、図面通りに解釈すると極薄のシートが重ねられている意匠においても、厚紙が重ねられているように理解されかねない。
意匠図面がそのようなものであることを前提として、常識に基づいて図面を解釈することになる。
本件においても同様であり、図面に現されているように明瞭に「段差」が認識されるものではない。そして、需要者(使用者)にとっては、マイクロニードルが本体シートに設けられているか、ベースシートに設けられているかということは、使い勝手に影響するものではないので、関心を持って観察することはない。
したがって、ベースシートの態様が意匠の要部となることはない。
(カ)被請求人の「具体的構成態様I及びiの差違点」について
意匠法6条7項は「透明であることを特定する場合」であり、透明の説明がないことをもって「透明」であることを否定するものではない。線図で現された意匠は、色彩を特定していないものと解釈されるのであり、「透明」も色彩の範疇のものと理解される。また、透明であることが一般的である場合(例えば窓ガラス)、透明の説明は不要とされている。本件物品は本体シート部が透明又は半透明のシートであることが普通であるから、甲1意匠が「不透明」であると解釈すべき理由はない。
「透光性を有することについて何ら記載もなく図面上(背面図)でも現れていない甲1意匠は不透明な意匠を示すと解釈される。」という被請求人の主張は、独自の解釈にすぎない。
(キ)請求人の発言「被請求人側が幾何学的にこれだけ違うという主張をしているが、数値がどのように視覚的影響に及ぼすのか説明されていない、ある形状がどのように受け取られるのかは数値の問題ではない」の趣旨は、被請求人は曲率を測り、それに基づいて種々の主張を行っているが、「三角形」と「曲玉」とを、数値に基づいて切り分けることはできていない、というものである。
請求人は、「多角形の角」を認識するか否か、という基準を打ち出しているのであるが、被請求人は、曲率を持ち出して主張するものの、「三角形」と「曲玉」の、数値に基づく切り分けには成功していない。「数値があれば客観的」というものではない。
被請求人は、数値を持ち出すものの、それは添え物であって、結局は「主観」に頼っているとしか言いようがない。
(2)被請求人の主張
以下に述べるように本件登録意匠は、甲1意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に該当に該当しない。
ア 意匠に係る物品
請求人の「両物品共に、美容を目的として美容有用成分を人体(肌)に供給するものであって、用途機能が共通する同種の物品である」との主張は認める。
イ 構成態様
(ア)基本的構成態様の対比
本件登録意匠 甲1意匠
A 本体シート部の内側中央部より a 本体シート部の内側中央部にマ
上方に偏ってマイクロニードル イクロニードル部が設けられ、
部が設けられ、その周囲の残余 その周囲の残余の縁部に貼着部
の縁部に貼着部が設けられてい が設けられている。
B 前記本体シート部の形状は略逆 b 前記本体シート部の形状は略逆
二等辺三角形状である。 正三角形状である。
C 前記本体シート部の上縁は緩や c 前記本体シート部の上縁は緩や
かな凹弧をなし、他の2縁は緩 かな凹弧をなし、他の2縁は緩
やかな凸弧をなしている。 やかな凸弧をなしている。
D 前記本体シート部の隅部はRを d 前記本体シート部の隅部はRを
なしている。 なしている
E 前記マイクロニードル部は、多 e 前記マイクロニードル部は、多
数の微小突起(マイクロニード 数の微小突起(マイクロニード
ル)で構成されている。 ル)で構成されている。
したがって、両意匠における基本的構成態様において、
a 本件登録意匠では、マイクロニードル部が設けられるのが本体シート部の内側中央部より上方に偏っているのに対し、甲1意匠では本体シート部の内側中央部に設けられている点
b 本件登録意匠では、本体シート部の形状は略逆二等辺三角形状であるのに対し、甲1意匠では略逆正三角形状である点について相違し、その他の点で共通する。
(イ)具体的構成態様の対比
本件登録意匠 甲1意匠
A-1 マイクロニードル部は、全 a-1 マイクロニードル部は、全体
体の輪郭形状より一回り小 の輪郭形状より一回り小さい
さく、貼着部(上側は第1 略相似形であって、三辺とも
の幅で略等幅、下側の2辺 に略等幅だけ小さい形状であ
は第1の幅よりも広く、か る。
つ、下端に向けて漸次幅が
広くなる縁部)の形状分だ
け、小さい形状である。
A-2 マイクロニードル部周辺の a-2 マイクロニードル部周辺の縁
縁部(貼着部)は、上側は 部も略等幅に形成されてい
第1の幅で略等幅、下側の る。
2辺は第1の幅よりも広
く、かつ、下端に向けて漸
次幅が広くなる形状であ
る。
B-1 本体シート部の各頂点の角 b-1 本体シート部の各頂点の角度
度は1つの頂点が85度、 は57.5度から64.5度
残りの2つの頂点が各4 であり、逆略正三角形状であ
7.5度であり、略直角二 る。
C-1 本体シート部の最も長い一 c-1 本体シート部の最も長い一辺
辺の凹状の底部までの高さ の凹状の底部までの高さは、
は、全高に対して約14. 全高に対して約7.0%であ
1%である。 る。
D-1 本体シート部の角部のRに d-1 本体シート部の各角部のRの
おいて、底角に対応する曲 曲率直径R1、R2はいずれ
率直径r1は略直角二等辺 も、略正三角形状の各辺長A
三角形状の各辺長a及びb 及びBに対して十分に小さ
に対して十分に小さい一 い。
方、頂角に対応する曲率直
径r2は略直角二等辺三角
形状の等辺長aとほぼ等し
く、斜辺長bと比べてもや
や短い程度である。
D-2 本体シート部の略直角二等 d-2 本体シート部の略正三角形状
辺三角形状の略直角部のR の各角部のRのその曲率中心
の曲率中心は、略直角部の が、何れも略正三角形状の頂
頂点から離隔している。 点近傍に位置する。
D-3 マイクロニードル部の各角 d-3 マイクロニードル部の各角部
部のRの曲率半径は、本体 のRの曲率半径は、本体シー
シート部のRの曲率半径と ト部のRの曲率半径より小さ
同程度である。 い。
D-4 マイクロニードル部の略直 d-4 マイクロニードル部の各角部
角二等辺三角形状の略直角 のRの曲率中心は、何れも本
部のRの曲率中心は、略直 体シート部と相似な略正三角
角部の頂点から離隔してい 形状の頂点近傍に位置する。
る。
E-1 マイクロニードル部に設置 e-1 マイクロニードルの高さは本
されたマイクロニードルの 体シート部縁部の厚さとほぼ
高さは、本体シート部縁部 同じで、マイクロニードル基
の厚さに満たない微細なも 底部分を加えると本体シート
のである。 部縁部の厚さを超える高さで
ある。
E-2 本件登録意匠の公報の各図 e-2 本件意匠公報の各図において
においてマイクロニードル マイクロニードルは間隔を
は微細に表れ、公報の原寸 空けて独立して表れ、公報
において本数を容易に看取 の原寸において本数を十分
できない。例えば底面図に 目視できる。底面図に表れ
表れるマイクロニードルを るマイクロニードルは横に
拡大して数えると横に59 19本である。
本である。
F 正面視において前記本体シート f 正面視において前記本体シート
部の縦(左右中央の縦寸法)と 部の縦(左右中央の縦寸法)と
横(最大横寸法)の寸法比は 横(最大横寸法)の寸法比は
1:1.7である。 1:1.3である。
G 正面視において前記貼着部の幅 g 正面視において前記貼着部の幅
は、上縁部では幅が狭く、左右 は、全周にわたって同じ幅とさ
の縁部において下方に向けて次 れている。
第に幅広とされている。
H 正面視において本体シート部の h 正面視において本体シートの上
表面とマイクロニードル部のべ にマイクロニードル部のベース
ース面とは面一である。 シートが層着されている。
I 背面視において本体シート部は i 背面視においてマイクロニード
透光性g素材があるで構成され、 ルの基部は現れていない。
マイクロニードルの基部が透過
して視認される。
したがって、上記14点の具体的構成態様の全てにおいて、両意匠は相違する。
ウ 評価及び類否判断
(ア)請求人の基本的構成態様bについて
請求人は甲1意匠の基本的構成態様bとして、本体シート部の形状は略逆二等辺三角形状であると定義しているが、本件登録意匠は明らかに3辺のうちの一辺が長く、略逆二等辺三角形状と言えるのに対し、甲1意匠は3辺がほとんど同一長に見え、「略逆正三角形状である」と呼ぶ方がはるかに自然である。一見して三角形状が異なるのに、あえて甲1意匠を二等辺三角形状と呼んで共通点であると評価することは認められない。よって請求人の主張する基本的構成態様bは採用することができず、共通点とはなり得ない。したがって、差異点として評価する。
(イ)被請求人の具体的構成態様B-1について
そもそも本件登録意匠の大きなRの角は三角形の角とは見なせないのではないか。そうであれば、請求人は基本的構成態様Bの「前記本体シート部の形状は略逆二等辺三角形状である。」についても撤回し、本件登録意匠は公知意匠に照らして基本的構成態様に重大な相違があることを認めるべきである。
請求人は「意匠の「骨格的形状」である基本的構成態様の認定においては、まず「三角形状」であることが重要なのであるが、「三角形」といっても種々の形状があるので、請求人は、一定の形状に特定するものとして「二等辺三角形状」と記述しているものである。」(前記(1)エ(ア))と述べるが、都合良く「二等辺三角形状」までは特定に必要で、「直角二等辺三角形」は、想起できないというのは筋が通らない。二等辺三角形といっても頂角によって全く印象は異なり、「二等辺三角形状」では形状を特定することにならない。
(ウ)被請求人の「具体的構成態様D-1及びd-1の差違点」の評価
本件登録意匠と甲1意匠とを対比すると特に頂角に対応する曲率直径r2がR2に比して格段に大きい。すなわち、本件登録意匠ではかなり緩やかなRであるのに対し、甲1意匠では尖った印象を看者に与える。また、本件登録意匠では、r2と当辺長aがほぼ等しいので下側の曲線は曲率直径r2(≒当辺長a)を直径とする円形の一部が頂角に現れる印象を看者に与える。本件登録意匠が全体に横長であることと相まって、需要者が注意を引く差違点であると評価される。
(エ)被請求人の「具体的構成態様H及びhの差違点」の評価(請求人の「具体的構成態様E-1とe-1」について)
本件登録意匠のマイクロニードル部の高さは本体シート部縁部の厚さに満たない微細なものである。一方、甲1意匠ではマイクロニードル部のベース面(基底部分)を層着して、厚みが増している。ベース面を具備することでマイクロニードルの高さを増し、存在感を強く印象付ける意匠となっている。マイクロニードル部は本物品の性質、目的、用途、使用態様に照らして需要者(取引者を含む)が関心を持って観察する部位であることから、注意を引く差違点であると評価される。
請求人は、本件登録意匠においてマイクロニードル部のベース面、が図面に現されていないものの、意匠の態様に影響しないものであるとして図面に現さなかったものと推測されると述べているが、本件登録意匠の範囲は、「願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな型若しくは見本により現された意匠に基づいて定めなければならない」(意匠法24条)とされているので、願書の記載に基づかない推測は許されない。
また、請求人は、「通常の観察においてベースシートの存在が格別認識されることはなく、類否判断においては無視される差違である」(前記(1)ウ(イ))と主張する。
この主張も何ら理由付けがないが、甲1意匠では斜視図として顕著にベースシートが厚みをもっており、この図を見れば2層から構成されていることは容易に認識される。
同時に、マイクロニードル自体の高さも際立っており、剣山状のベースシートとマイクロニードルが目を引くことは明らかである。
本物品は、「マイクロニードルが皮膚に刺入され、化粧材や薬剤成分を人体の供給」(甲1:意匠に係る物品の説明)であるから、マイクロニードルに看者の注意が向けられない理由はない。
ベースシートがどのように本体シート部に付設されているかの態様は、意匠の要部であると思料する。
(オ)被請求人の「具体的構成態様I及びiの差違点」の評価
マイクロニードル部は本物品の性質、目的、用途、使用態様に照らして需要者(取引者を含む)が関心を持って観察する部位であり、透光性がある素材で構成され、マイクロニードルの基部が視認できるかどうかは、一定の注意を引く差違点であると評価される。甲1意匠において、本体シート部の素材の説明がないので、甲1意匠の願書の記載、又は図面の記載から甲1意匠では基部が透過して視認されるとは認められない。この点、意匠法第6条第7項では「第一項の規定により提出する図面に意匠を記載し、又は第二項の規定により提出する写真若しくはひな形に意匠を現す場合において、その意匠に係る物品、建築物又は画像の全部又は一部が透明であるときは、その旨を願書に記載しなければならない」と規定されている。透光性を有することについて何ら記載もなく図面上(背面図)でも現れていない甲1意匠は不透明な意匠を示すと解釈される。請求人は、甲1号証の意匠の実施品である請求人の商品を挙げているが、甲1意匠の範囲の認定には何ら用いることのできない資料であり、当該商品でマイクロニードル部が視認できるかどうかは全く関係がない。
(カ)類否判断
本件登録意匠と、甲1意匠とを対比すると、両意匠の共通点はいずれもありふれた態様であって、その形態が注意を引く程度は小さいと評価される。一方、差違点である、基本的構成態様及び具体的構成態様はすべて需要者の注意を引く部分であって、意匠全体の美観に与える影響が大きい。これらを総合判断すると、共通点が相対的に注意を引く程度が小さいのに対し、差違点は多岐に亘り、意匠全体に及ぶ。また、マイクロニードル部にせよ、貼着部にせよ、マイクロニードルシートにおいて需要者が最も注目する部位であり、これらの多くの差違点は、ありふれた態様の共通点を軽く凌駕するものであり、意匠全体の美観に与える影響は相対的にはるかに大きいものと評
価できる。
したがって、本件登録意匠と甲1意匠とは類似しない、と結論される。
(キ)口頭審理において請求人は、「被請求人側が幾何学的にこれだけ違うという主張をしているが、数値がどのように視覚的影響に及ぼすのか説明されていない、ある形状がどのように受け取られるのかは数値の間題ではない」という趣旨の発言をされた。
この点、被請求人は視覚的印象からも明確に差違点を挙げている。ごく概要だけを述べれば、本件登録意匠のマイクロニードル部は上方に偏っているのに対して甲1意匠は等幅の緑部の中央に設けられていること、本件登録意匠の本体シート部は逆二等辺三角形であり、甲1意匠は逆正三角形であること、本件登録意匠の長い一辺は大きく凹んでいるのに対して、甲1意匠ではその程度が僅かであること、角のRの大小関係が大きく異なること、などである。
同時に被請求人は、視覚的印象に与える影聾が大きいか小さいかは、客観的に判断されるべきであり、その大小を立証するために幾何学的な観点は不可欠であると考えている。
2 無効理由2(意匠法第3条第2項違背)
(1)請求人の主張
ア 本件登録意匠の創作が容易であることの理由
(ア)貼着部の幅について
本件登録意匠は、貼着部の幅は、上縁部では幅が狭く、左右の縁部において下方に向けて次第に幅広とされている(A-1 被請求人の基本的構成態様A)のに対して甲1意匠は全周にわたって同じ幅とされている(a-1 被請求人の基本的構成態様a)という差違があるが、貼着部の幅については種々の公知例があり、幅をどのようにするかは単なる選択、設計事項に過ぎず、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない(甲11)。
(イ)本体シートの縦横比について
本件登録意匠は、本体シート部の縦(左右中央の縦寸法)と横(最大横寸法)の寸法比は約1:1.7である(B-1)のに対して、公知意匠は約1:1.3である(b-1)という差違がある。
本件登録意匠は横長の「逆二等辺三角形状」であるところ、甲2意匠は縦横比約1:2の「逆二等辺三角形状」である。甲2意匠は「化粧用パックシート」であって、「目じり等に付着する」ものであるから、意匠の創作に際して参照されるべき形態である。
したがって、縦横比約1:2の甲2意匠を参照して、マイクロニードルシートにおける本体シートの形状を、縦横比を約1:1.7とすることは設計事項に過ぎず容易なことであり、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない。
(ウ)上縁凹部の深さについて
本件登録意匠は、本体シート部の最も長い一辺の凹部の底部までの高さは、全高に対して約14.1%である(C-1 被請求人の具体的構成態様C-1)のに対して、甲1意匠は約7.0%である(c-1 被請求人の具体的構成態様c-1)という差違がある。
甲2意匠における対応部分の比率は約19%であって、本体シートの対応部分の比率を約14.1%とすることは設計事項に過ぎず容易なことであり、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない。
(エ)隅部Rの曲率半径について
本件登録意匠は、本体シート部の一つの隅部のRの曲率半径は、他の2隅部のRの曲率半径よりも大きい(D-1 被請求人の具体的構成態様D-1、2、4)のに対して、甲1意匠は 本体シート部の3つの隅部のRの曲率半径は、ほぼ同じである(d-1 被請求人の具体的構成態様d-1、2、4)という差違がある。
甲2意匠においても、本件登録意匠と同様、本体シート部の一つの隅部のRの曲率半径は、他の2隅部のRの曲率半径よりも大きい。本体シートの隅部のRの曲率半径を本件登録意匠のようにすることは設計事項に過ぎず容易なことであり、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない。
(オ)マイクロニードル部のベース面
本件登録意匠は、本体シート部の表面とマイクロニードル部のベース面とは面一である(E)のに対して、甲1意匠は本体シートの上にマイクロニードル部のベースシートが層着されている(e)という差違がある。
この種の物品において、ベースシートを備えたもの(甲10)も、ベースシートのないもの(甲9)も、いずれも存在するのであり、何れを採用するかは設計事項に過ぎず容易なことであり、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない。
(カ)透光性の有無
本件登録意匠は、物品全体が半透明で構成され、マイクロニードル部の基部が透過して視認される(F)のに対して、甲1意匠はマイクロニードル部の基部は現れていない(f)という差違がある。
この種物品において、物品全体(本体シート)が透光性を有するもの(甲第5号証のリスト番号15)も、透光性を有さないもの(同18、19)も、いずれも存在するのであり、何れを採用するかは設計事項に過ぎず容易なことであり、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない。
イ 小括
以上の次第であるから、本件登録意匠は、甲1意匠及び甲2意匠に基づいて、容易に創作できたものというべきである。
ウ 被請求人の主張に対する反論
(ア)請求人の主張の要点は、「甲1意匠に基づいて甲2意匠を参照して横幅を広げて、本件登録意匠の本体シート部の形状とすること、そしてその形状の本体シートにマイクロニードル部を形成することは、きわめて容易に行えることであり、そこに創作性を認めることができない。」というものである。しかるに、被請求人の回答は「創作容易|という請求人の主張に対応したものではない。すなわち、「物品が類似するものとして答弁する」というが、3条2項の公知形態は、物品の類否を問わないものである。そして、「差違点の評価に対する甲2意匠の影響」という観点は、類否判断(3条1項3号)の観点であって、3条2項該当性の判断の観点ではない。
(イ)「基本的構成態様A及びaの差違点」において、「甲2意匠はマイクロニードル部を備えていないから、創作非容易性には何ら影響しない。」というが、甲2意匠は本体シートの形状の例であり、マイクロニードル部の有無は創作容易であるという評価に影響しない。
(ウ)「基本的構成態様B及びbの差違点」において、「甲2意匠は上記の通り逆三角形状であるが、甲3号証に開示されるように逆二等辺三角形状については他にも公知意匠が存在していることから、基本的構成態様B及びbの差違点の評価には影響しない。」と主張する。もし逆二等辺三角形状については他にも公知意匠が存在している、というのであれば、一層創作容易ということになるのであって、被請求人の主張は類否判断と混同したものである。なお、請求人は「逆二等辺三角形状については他にも公知意匠が存在している」という主張を認めるものではない。
(エ)「具体的構成態様A-1及びa-1の差違点」において、「需要者が注意を引く差違点であると評価される。」「甲2意匠はマイクロニードル部を備えていないから」と主張するが、類否判断に係るものであり創作容易であるという評価とは無関係である。
(オ)被請求人は、「甲2意匠はマイクロニードル部を備えておらず」というが、請求人はそのことを前提とした主張をしている。すなわち、本件登録意匠も甲2意匠も、「顔の美容」を目的として「対象部位に貼り付け」て使用するものであるから、「本体シートの輪郭形状のデザイン」においては、甲2意匠の形状は参照されるべきものである、ということである。
そのうえで、請求人は、マイクロニードル部の配置態様において、本件登録意匠のようにすることは創作に当たらない、と主張しているのである。
(2)被請求人の主張
以下に述べるように本件登録意匠は、甲1意匠及び甲2意匠の各登録意匠公報に開示されている意匠に基づいて容易に創作することができないものであり、意匠法第3条第2項に該当に該当しない。
ア 甲2意匠
意匠登録1122097(甲2意匠)は、物品「化粧用パックシート」の意匠公報であり、【意匠に係る物品の説明】には、「本物品は、化粧のための顔面パックに用いるものであり、不織布又は合成樹脂シート等の支持体層にパック剤を塗布してなるパック剤部と離形シートからなる。使用に際しては、パック剤部を離形シートからはがして、パック剤層が顔面の鼻や目じり等に付着するように当てて使用するものである」と記載されている。
したがって、本件登録意匠「マイクロニードルシート」と異なり、マイクロニードル部や貼着部を備えない構成である。しかしながら、本件登録意匠と肌面に美容作用を行うシート体として一定の程度用途と機能が共通する物品であるので、物品が類似するものとして答弁する。
イ 差違点の評価に対する甲2意匠の影響
(ア)基本的構成態様A及びaの差違点
本件登録意匠において、マイクロニードル部は本体シート部の内側中央部よりも上方に偏って設けられている。一方、甲1意匠では、マイクロニードル部は本体シート部の内側中央部に設けられている。
甲2意匠はマイクロニードル部を備えていないから、創作非容易性には何ら影響しない。
(イ)基本的構成態様B及びbの差違点
本件登録意匠において、本体シート部の形状は略逆二等辺三角形状であるのに対し、甲1意匠では本体シート部の形状は略逆正三角形状である。
本体シート部は、本物品の外形そのもの、全体をなす部分であり、視覚的印象に与える影響は大きい。
この点、甲2意匠は上記の通り略逆二等辺三角形状であるが、甲3号証に開示されるように逆二等辺三角形状については他にも公知意匠が存在していることから、基本的構成態様B及びbの差違点の評価には影響しない。
(ウ)具体的構成態様A-1及びa-1の差違点
マイクロニードル部が、甲1意匠では全体の輪郭形状より一回り小さい略相似形であるのに対して、本件登録意匠では、マイクロニードル部と本体シート部は非相似形であり、視覚的印象に与える影響は大きく、需要者が注意を引く差違点であると評価される。
甲2意匠はマイクロニードル部を備えていないから、創作非容易性には何ら影響しない。
ウ マイクロニードル部の態様について
甲2意匠はマイクロニードル部を備えておらず、仮に外形形状がある程度本件登録意匠と類似していたとしても、これに本件登録意匠のような特徴的な配置方法によりマイクロニードル部を設ければ、単なる寄せ集めや置き換えで意匠が創作できるものではない。甲1意匠の外形形状を甲2意匠の外形形状に変形させたとしても、本件登録意匠のマイクロニードル部とは全く異なる形状にしかならない。
3 証拠方法
(1)請求人
請求人は、以下の甲第1号証ないし甲第12号証(令和3年12月16日付けの証拠説明書によれば、第12号証は原本。それ以外は全て写しである。)を、審判請求書の添付書類として提出した。
甲第1号証 意匠登録第1657009号公報
甲第2号証 意匠登録第1122097号公報
甲第3号証 意匠検索リスト
甲第4号証 意匠登録第1648605号公報
甲第5号証 商品リスト
甲第6号証 「3Dマイクロフィラーアイ|ヤーマン公式通販サイ
ト」の抜粋
甲第7号証 「『チークポアパッチ』年齢毛穴に刺して届ける新発
想ケア」の抜粋
甲第8号証 「毛穴悩みと決別!」の抜粋
甲第9号証 意匠登録第1443862号公報
甲第9号証の2 意匠登録第1443864号公報
甲第10号証 意匠登録第1480336号公報
甲第10号証の2 意匠登録第1480743号公報
甲第11号証 知財高判平成27年7月16日
甲第12号証 甲1意匠の実施品「CHEEK PORE PATCH」の写真
(2)被請求人
被請求人は、以下の乙第1号証ないし乙第9号証(全て写しである。)を、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書の添付書類として提出した。
乙第1号証の1 韓国意匠30-2018-0000147号公報
乙第1号証の2 韓国意匠30-2018-0000147号公報の翻訳文
乙第2号証の1 市場に存在した美容シートの一例
乙第2号証の2 @cosme
乙第2号証の3 プレスリリース
乙第2号証の4 プレスリリース
乙第2号証の5 @cosme
乙第2号証の6 @cosme
乙第3号証 乙2-1の各現物の写真
乙第4号証 実登3192249号公報
乙第5号証 登録意匠と甲1意匠の図の対比
乙第6号証 特許庁意匠審査基準
乙第7号証 意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き
乙第8号証 平成24年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件
乙第9号証 意匠出願2020-023544 審査官通知書
第5 当審の判断
1 本件登録意匠
(1)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品(以下「本件物品」という。)は、意匠公報(別紙第1参照。別紙第1は審判請求書の「別紙1」。)の記載によれば「マイクロニードルシート」であり、「意匠に係る物品の説明」には、「本物品は、美容有用成分を肌に導入するためのマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートである。正面側に多数の突起からなるマイクロニードル部を備え、その周囲の貼着部を肌面に貼付する。」と記載されているから、本件物品は美容のために肌に貼付するものであって、正面側のマイクロニードル部が美容有用成分を肌に導入する機能を有している。
また、「意匠の説明」の記載「本物品は全体が半透明で構成されており、背面側にはマイクロニードルの基部が透過する。」により、本物品は全体が透光性を有している。
(2)本件登録意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合
本件登録意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(形状等)は、以下のとおりである。
ア 全体の形状
全体は、正面から見て上辺が内側に窪んで凹弧状に表され、左下辺と右下辺が外側に膨らんで凸弧状に表されて、角部がR状に形成された、左右対称状の略逆三角形シートであって、正面には、微小のマイクロニードルを多数配したマイクロニードル部が、周囲に余地部(貼着部)を残して設けられている。
イ 正面から見た構成態様
(ア)シートの外形状
シートの外形状は、最大横幅:最大縦幅(シートの全高)の比が約16:9であり、中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている。
上辺の窪み幅は、最大縦幅の約1/7.2である。
(イ)マイクロニードル部の外形状
マイクロニードル部の外形状は、最大横幅:最大縦幅(マイクロニードル部の全高)の比が約20:9であり、中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている。
(ウ)貼着部の幅
マイクロニードル部周囲の貼着部の幅は、中央下の位置で最も広く、その位置から左上と右上の手前の位置まで、外側にいくにつれて次第に狭くなり、左上と右上の位置においてまた広くなっている。上部においては、一定の幅で、細帯状に表されている。中央下の位置、左上と右上の手前の位置、左上と右上の位置、及び上部のそれぞれの貼着部の幅の比は、約2.5:1.4:2.2:1であり、上部の細帯状の貼着部の幅が最も狭くなっている。
ウ マイクロニードル部の構成態様
正面から見て、針状のマイクロニードルが千鳥状に59列配されており、マイクロニードルは二重線状に表されたマイクロニードル部の外周上にも形成されている。
底面から見ると、シートの正面側(表面側)が太線状に表され、マイクロニードルが、その太線状部から伸びている。マイクロニードルの高さ:シート(太線状部を含む)の高さの比は、約1:2である。
エ 背面から見た態様
背面から見ると、マイクロニードル部の二重線状外周と、マイクロニードルの基部が透けて見えている。
2 無効理由1について
(1)甲1意匠
ア 甲1意匠について
甲1意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である令和2年(2020年)4月13日に日本国特許庁が発行した意匠公報(別紙第2参照)に掲載された、意匠登録第1657009号の意匠である。
イ 甲1意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲1意匠の意匠に係る物品(以下「甲1物品」という。)は「美容用シート」であり、意匠に係る物品の説明には「本物品は、頬や目元などに貼付して使用する美容用シートである。また、本物品は、化粧剤や薬剤成分を針状に成型してなるマイクロニードル部と、当該マイクロニードルを中央域に有するとともに、同面上の縁沿いに粘着面を形成した本体シート部とからなる。上記粘着面を肌に貼り付けることによってマイクロニードルが皮膚に刺入され、化粧剤や薬剤成分を人体に供給することができるものである。」と記載されているから、甲1物品は美容のために頬や目元などに貼付するものであって、マイクロニードルが化粧剤や薬剤成分を人体に供給する機能を有している。
ウ 甲1意匠の形状等
甲1意匠の形状等は、以下のとおりである。
ア 全体の形状
全体は、正面から見て上辺が内側に窪んで凹弧状に表され、左下辺と右下辺が外側に膨らんで凸弧状に表されて、角部がR状に形成された、左右対称状の略逆三角形シートであって、正面には、微小のマイクロニードルを多数配したマイクロニードル部が、周囲に余地部(貼着部)を残して設けられている。
イ 正面から見た構成態様
(ア)シートの外形状
シートの外形状は、最大横幅:最大縦幅(シートの全高)の比が約4:3であり、中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりもやや大きく表されている。
上辺の窪み幅は、最大縦幅の約1/15である。
(イ)マイクロニードル部の外形状
マイクロニードル部の外形状は、最大横幅:最大縦幅(マイクロニードル部の全高)の比が約4:3であり、中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりもやや大きく表されている。
(ウ)貼着部の幅
マイクロニードル部周囲の貼着部の幅は、左上と右上の位置以外のほとんどの位置で一定した幅になっており、左上と右上の位置とそれ以外の貼着部の幅の比は、約1.5:1である。
ウ マイクロニードル部の構成態様
正面から見て、針状のマイクロニードルが略格子状に13段19列配されており、マイクロニードルはマイクロニードル部の外周付近には形成されていない。
底面から見ると、シートの正面側(表面側)に、マイクロニードル部の基部が層状に形成され、マイクロニードルが、その基部から伸びている。マイクロニードルの高さ:基部の高さ:シートの高さの比は、約2.5:1:2.5である。
(2)本件登録意匠と甲1意匠の対比
ア 意匠に係る物品の対比
本件登録意匠の意匠に係る物品と甲1意匠の意匠に係る物品は、共に美容のために肌に貼付するものであって、マイクロニードル部が美容(化粧)に係る成分を供給する機能を有するものであるから、共通する。
イ 形状等の対比
(ア)形状等の共通点
(共通点1)全体の共通点
全体は、正面から見て上辺が内側に窪んで凹弧状に表され、左下辺と右下辺が外側に膨らんで凸弧状に表されて、角部がR状に形成された、左右対称状の略逆三角形シートであって、正面には、微小のマイクロニードルを多数配したマイクロニードル部が、周囲に余地部(貼着部)を残して設けられている。
(共通点2)シートの外形状の共通点
シートの中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている。
(共通点3)マイクロニードル部の外形状の共通点
マイクロニードル部の外形状の中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている。
(共通点4)マイクロニードルの形状の共通点
マイクロニードルは、針状である。
(イ)形状等の相違点
(相違点1)シートの外形状の相違点
シートの最大横幅:最大縦幅の比が約16:9であるか(本件登録意匠)、約4:3であるか(甲1意匠)、で相違し、上辺の窪み幅が最大縦幅の1/7.2であるか(本件登録意匠)、約1/15であるか(甲1意匠)、で相違する。
また、中央下のRが左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている程度について、本件登録意匠の方が甲1意匠よりも大きい。
(相違点2)マイクロニードル部の外形状の相違点
マイクロニードル部の最大横幅:最大縦幅の比が約20:9であるか(本件登録意匠)、約4:3であるか(甲1意匠)、で相違する。
また、中央下のRが左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている程度について、本件登録意匠の方が甲1意匠よりも大きい。
(相違点3)貼着部の幅の相違点
本件登録意匠では、中央下の位置の貼着部の幅が最も広く、外側にいくにつれて次第に狭くなり、上部においては、一定の幅で、細帯状に表されており、最も広い幅は最も狭い幅の約2.5倍になっているのに対して、甲1意匠では、ほとんどの位置で一定した幅になっている。
(相違点4)マイクロニードル部の構成態様の相違点
本件登録意匠のマイクロニードルは千鳥状に59列配され、マイクロニードル部の外周上にも形成されており、底面から見たマイクロニードルの高さ:シートの高さの比が約1:2であるのに対して、甲1意匠のマイクロニードルは略格子状に13段19列配され、マイクロニードル部の外周付近には形成されておらず、底面から見たマイクロニードルの高さ:基部の高さ:シートの高さの比が約2.5:1:2.5である。
(相違点5)背面から見た態様の相違点
本件登録意匠を背面から見ると、マイクロニードル部の二重線状外周と、マイクロニードルの基部が透けて見えている。これに対して、甲1意匠では、透けて見えておらず、シートは不透明であると認められる。
(3)本件登録意匠と甲1意匠の類否判断
ア 意匠に係る物品の類否判断
本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共通する。
イ 形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、共に美容(化粧)に係るものであって、人体に貼り付けるものであるから、需要者は、全方向から物品を詳細に観察することとなり、実際に貼り付ける際には、物品の向きにも気を付けることから、物品が有する縦横の構成比率や、角部のRの大きさなどに特に注意を払うこととなる。そして、物品を剥がす際には、貼着部の幅が剥がしやすさに寄与するから、貼着部の幅にも注意を払うこととなる。したがって、両意匠の類否判断においては、これらを前提として、需要者の視点から、物品の各部の形状を評価することとする。
(ア)形状等の共通点の評価
共通点1、すなわち、上辺が内側に窪んで凹弧状に表され、左下辺と右下辺が外側に膨らんで凸弧状に表されて、角部がR状に形成された、左右対称状の略逆三角形シートであって、正面にマイクロニードル部と貼着部が設けられた共通点は、両意匠の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、需要者がこの概括的共通点に美感を抱くとはいい難い。
共通点2及び共通点3、すなわち、シートの外形状とその内側に設けられたマイクロニードル部の外形状について、中央下のRが左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている共通点は、その部分のみに着目した際に特に顕現する共通点であり、後述する相違点を圧して、需要者に共通の美感を抱かせる程のものとはいい難い。
そして、マイクロニードルが針状である共通点4については、マイクロニードルが針状であることは、本件登録意匠の出願前から例を挙げるまでもなくありふれているので、需要者が針状の形状に特に着目するとはいい難い。
このように、いずれの共通点も、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。
(イ)形状等の相違点の評価
これに対して、本件登録意匠と甲1部分の形状等の相違点については、以下のとおり評価される。
まず、相違点1で指摘した、シートの最大横幅:最大縦幅の比が約16:9であるか(本件登録意匠)、約4:3であるか(甲1意匠)の相違は、需要者が一見して気が付く相違であって、甲1意匠に比べて横に広がった本件登録意匠のシートに対して、需要者は甲1意匠とは異なる美感を抱くこととなる。そして、シート中央下のRが左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている程度について本件登録意匠の方が甲1意匠よりも大きい相違も、本件登録意匠が甲1意匠に比べて横広がりであることと連動しており、中央下のRの大小の相違も需要者に異なる視覚的印象を与えているということができる。
また、本件登録意匠の上辺の窪み幅(最大縦幅に対する幅)が甲1意匠に比べて約2倍(=1/7.2÷1/15)である点も、本件登録意匠が甲1意匠に比べて横広がりであることとあいまって、上辺が下方にうねったような視覚的印象を需要者に与えているといえる。
そうすると、相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
同様に、相違点2、すなわち、マイクロニードル部の最大横幅:最大縦幅の比が約20:9であるか(本件登録意匠)、約4:3であるか(甲1意匠)の相違、及びマイクロニードル部中央下のRが左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている程度について本件登録意匠の方が甲1意匠よりも大きい相違も、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
次に、貼着部の幅の相違点3については、ほとんどの位置で一定した幅になっている甲1意匠の貼着部に比べて、中央下の位置の貼着部の幅が最も広く、外側にいくにつれて次第に狭くなり、上部において一定の幅で細帯状に表されている本件登録意匠の貼着部は、最も広い幅が最も狭い幅の約2.5倍になっていることも踏まえると、需要者に対して独特の美感を起こさせるというべきである。そうすると、相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
そして、背面から見た際に、マイクロニードル部の二重線状外周と、マイクロニードルの基部が透けて見えている本件登録意匠と、シートが不透明であって透けて見えていない甲1意匠の相違点5は、両意匠の全体を観察する需要者が気に留める相違であって、両意匠が需要者に与える視覚的印象に変化をもたらす相違であるというべきである。そうすると、相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいとはいえない。
他方、マイクロニードル部の構成態様の相違点4は、個々のマイクロニードルが微小であること、甲1意匠の基部の高さも全体の高さの1/6と薄いことから、マイクロニードルの配列や基部の有無の相違に対して、需要者が特段注意を払うとはいい難い。したがって、相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、両意匠の形状等の相違点1ないし相違点3、及び相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても、相違点は、総じて両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすということができる。
(ウ)請求人の主張について
請求人は、「透明であることが一般的である場合(例えば窓ガラス)、透明の説明は不要とされている。本件物品は本体シート部が透明又は半透明のシートであることが普通であるから、甲1意匠が「不透明」であると解釈すべき理由はない。」と主張する。
しかし、仮にシート部が透明又は透光性を有する美容用シートの存在がありふれているとしても、甲1意匠の意匠公報(別紙第2参照)には甲1意匠が透明又は透光性を有する旨の説明がなく、「背面図」においてもマイクロニードル部の外周やマイクロニードルの基部が透けているように表されていない。これに対して、本件登録意匠の背面図では、前記1(2)エで認定したとおり、透けて見えているマイクロニードル部の二重線状外周と、マイクロニードルの基部が表されており、両意匠の背面を観察する需要者は、透けて見える形状等の有無の相違に対して注意を向けるというべきである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
ウ 総合判断
以上のとおり、本件登録意匠と甲1意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形状等においては、共通点が類否判断に及ぼす影響がいずれも小さいのに対して、相違点は総じて類否判断に及ぼす影響は大きく、共通点が需要者に与える美感を覆して本件登録意匠と甲1意匠を別異のものと印象付けるものであるから、本件登録意匠は、甲1意匠に類似するということはできない。
(4)小活
本件登録意匠は、甲1意匠(意匠登録第1657009号の意匠)に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当しないので、同項柱書の規定により本件登録意匠について意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する無効理由1には、理由がない。
3 無効理由2について
本件登録意匠が、甲1意匠及び甲2意匠の形状等に基づいて、当業者が容易に創作をすることができた意匠であるか否かについて検討し、判断する。
(1)甲1意匠
甲1意匠の認定は、前記2(1)のとおりである。
(2)甲2意匠(別紙第4参照)
ア 甲2意匠について
甲2意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成13年(2001年)9月25日に日本国特許庁が発行した意匠公報(別紙第3参照)に掲載された、意匠登録第1122097号の意匠である。
イ 甲2意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲2意匠の意匠に係る物品(以下「甲2物品」という。)は「化粧用パックシート」であり、意匠に係る物品の説明には「本物品は、化粧のための顔面パックに用いるものであり、不織布又は合成樹脂シート等の支持体層にパック剤を塗布してなるパック剤部と離形シートからなる。使用に際しては、パック剤部を離形シートからはがして、パック剤層が顔面の鼻や目じり等に付着するように当てて使用するものである。」と記載されているから、甲2物品には、化粧(美容)のために顔面に貼付するパック剤部が設けられており、パック剤部には不織布又は合成樹脂シート等の支持体層にパック剤を塗布されている。
ウ 甲2意匠の形状等
甲2意匠において、本件登録意匠の形状等と対比されるパック剤部の形状等を認定する。甲2意匠には、雛形シート上に、向き合って配置された一対のパック剤部が表されており、そのうち正面図右下に表されているパック剤部の形状等について、本件登録意匠の向きに合わせて認定する。
ア 全体の形状
全体は、正面から見て上辺が内側に窪んで凹弧状に表され、左下辺と右下辺が僅かに外側に膨らんで凸弧状に表されて、角部がR状に形成された、左右対称状の略逆三角形シートである。
イ 正面から見た構成態様
外形状は、最大横幅:最大縦幅(シートの全高)の比が約15:9であり、中央下のRは、左上角部と右上角部のRよりも大きく表されている。
上辺の窪みは、角部から緩やかに下降し、中央部において更に僅かに湾曲して下降するように表されている。
上辺の窪み幅は、最大縦幅の約1/5である。
ウ 底面から見た構成態様
底面から見ると、シートは2層で表されている。
(3)創作非容易性の判断
マイクロニードルシートの物品分野において、シートの外形状を、正面から見て上辺を内側に窪ませて、左下辺と右下辺を外側に膨らませて凸弧状に表し、角部をR状に形成して左右対称状の略逆三角形シートとすることは、甲2意匠に見られるように、本願の出願前に公然知られている。
しかしながら、本件登録意匠のように、シートの上辺の窪み幅を最大縦幅の約1/7.2にするとともに、最大横幅:最大縦幅の比が約20:9であるマイクロニードル部を正面側に配し、マイクロニードル部周囲の貼着部の幅を、中央下の位置で最も広くさせて、その位置から左上と右上の手前の位置まで、外側にいくにつれて次第に狭くさせていく形状等は、甲1意匠及び甲2意匠には見られない。
したがって、甲1意匠及び甲2意匠に基づいて、当業者が容易に本件登録意匠の創作をすることができたということはできない。
(4)請求人の主張について
請求人は、「貼着部の幅については種々の公知例があり、幅をどのようにするかは単なる選択、設計事項に過ぎず、本件登録意匠独自の創作として評価されるべきものではない(甲11)。」と主張する。
しかしながら、本件登録意匠の貼着部の幅は、前記1(2)イ(ウ)で認定したとおり、中央下の位置、左上と右上の手前の位置、左上と右上の位置、及び上部のそれぞれの貼着部の幅の比が、約2.5:1.4:2.2:1となっており、この比は本件登録意匠に独特なものであって、甲1意匠及び甲2意匠に基づいて当業者が容易に創作ができたものとはいい難い。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(5)小括
以上のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠及び甲2意匠の形状等に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできないので、意匠法第3条第2項が規定する意匠には該当せず、本件登録意匠について意匠登録を受けることができないとすることはできない。
したがって、請求人が主張する無効理由2には、理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2には理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録意匠の登録は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-880015