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特許異議申立

2021-700445

包装機

審判番号
2021-700445
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-076817
登録番号
6782015
請求日
2021年05月11日
審決日
2022年04月19日
公報発行日
2022年06月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大森機械工業株式会社
  • 【権利者代理人】松井 伸一
  • 【異議申立人】金子 修一
  • 【異議申立人】山崎 敏之
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 藤井 眞吾
  • 審判官 塩治 雅也
分類
P1651.121-Y (B65B) / P1651.536-Y (B65B) / P1651.537-Y (B65B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6782015号発明「包装機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6782015号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6782015号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成29年4月7日の出願であって、令和2年10月21日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月11日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 5月11日 :特許異議申立人金子修一(以下「申立人1」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て 令和3年 5月11日 :特許異議申立人山崎敏之(以下「申立人2」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て 令和3年11月 5日付け:取消理由通知書 令和4年 1月 6日 :特許権者による意見書の提出 第2 本件発明 特許第6782015号の請求項1~7の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 包装機から生じる波形信号を検出する検出手段と、 前記検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた周波数ごとのレベルと、記憶した周波数ごとの基準レベルとに基づいて前記包装機の故障の兆しの有る異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段を備え、 前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行うことを特徴とする包装機。 【請求項2】 前記制御手段は、前記周波数ごとのレベルの、対応する周波数の前記基準レベルからのズレの変化に基づいて前記異常状態か否かを判定するものであることを特徴とする請求項1に記載の包装機。 【請求項3】 前記基準レベルは、正常状態の包装機で被包装物を包装処理した際に得られる波形信号を周波数分析して得られたサンプルデータに基づくものであることを特徴とする請求項1または2に記載の包装機。 【請求項4】 前記基準レベルからずれたレベルの周波数から異常原因を特定する機能を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の包装機。 【請求項5】 前記周波数ごとのレベルに基づき、異常動作を検知する機能を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の包装機。 【請求項6】 前記検出手段は、包装機から発生する振動を検出する振動検出手段であり、 前記波形信号は、前記包装機の振動に基づく振動波形信号であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の包装機。 【請求項7】 前記制御手段は、前記周波数ごとのレベルの、対応する周波数の前記基準レベルからのズレをそれぞれ求め、その求めた各ズレの総和に基づいて前記異常状態か否かを判定するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の包装機。」 第3 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 請求項1~7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [進歩性]本件発明1~7は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらに係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開平8-217028号公報(申立1の甲2、申立2の甲2) 2.特開平5-79903号公報(申立1の甲4) 3.特開2010-166686号公報(申立1の甲3) 4.実公平3-46342号公報(申立2の甲4) 5.特許第4972359号公報(申立1の甲6) ※ 申立1:申立人1による申立。 ※ 申立2:申立人2による申立。 ※ 甲第●号証を「甲●」という。 2 当審の判断 (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のように、操作員が運転中の包装機の各部を監視し、その発する異常音等から正異常を適確に判断するには、操作員に高度の熟練を必要とすると共に、操作員を監視のために割当てなければならないという問題がある。また、出来上がった液体充?容器を検査し、正異常を判断する場合は、多くの不良製品を製造してしまうという問題がある。そこで、簡単な構成で運転中の包装機の各部の正異常を判定できる技術が要求されている。 【0004】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、簡単な構成で自動的に包装機の各部が正常か否かを判断できる包装機の診断装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、液体充?容器を製造する包装機の所定の各部が正常に作動又は機能しているか否かを診断する包装機の診断装置であって、所定の各部に音波を検出する音波センサ及び/又は機械振動を検出する振動センサを設け、該音波センサ及び/又は振動センサの出力を処理解析することにより、該各部が正常に作動又は機能しているか否かを検出する診断手段を設けたことを特徴とする。」 「【0016】上記構成の包装機1の診断を要する各部に接近して、音波や機械的振動を検出するセンサS1~S6を配置する。センサS1は包装機1の駆動部の近傍に設けたセンサで、例えば、図3に示すようにモータ31で減速機32を介してメインシャフト33が回転駆動するように構成した駆動部であっては、駆動部全体の振動や音が良く伝播してくる減速機32やギヤー34のボックスに設置する。」 「【0021】図1は包装機の診断装置のシステム構成を示す図である。図示するように診断装置はA/D変換器15ー1、15-2、15-3、・・・・・、15-n、入出力装置16、CPU17、RAM18、音波・振動パターン登録手段19、警報手段20及び表示手段21で構成される。A/D変換器15ー1、15-2、15-3、・・・・・、15-nのそれぞれにはセンサS1、S2、S3、・・・・・、Snの出力が入力され、入出力装置16を通してCPU17に取り込まれる。 【0022】音波・振動パターン登録手段19にはセンサS1、S2、S3、・・・・・、Snが設けられた部分が正常に作動及び機能している場合に発生する音波や機械振動のパターンを予め登録させておく。センサS1、S2、S3、・・・・・、Snで検出され電気信号に変換された音波や振動は、A/D変換器15ー1、15-2、15-3、・・・・・、15-nにより、ディジタル信号に変換される。該ディジタル信号はCPU17で処理され、音波・振動パターン登録手段19に登録されている音波や振動パターンと比較できる形式のパターンに変換され、RAM18に格納される。 【0023】更に、CPU17はRAM18に格納しているセンサS1、S2、S3、・・・・・、Snの各々が検出した音波や振動パターンと予め音波・振動パターン登録手段19に登録されている各部が正常に作動及び機能した場合の音波や振動パターンと比較し、各部が正常に作動及び機能しているかを判断する。そして異常と判断した場合は、警報手段20を作動して警報を発すると共に、表示手段21にどの部分が異常であるかを表示する。また、場合によっては停止信号を出力し、包装機1を停止する。」 「【0031】包装機1の上記センサS1乃至センサS6が設置されている各機構部もそれが正常に作動又は機能している場合に発する音波(ノイズ)と、故障等で異常に作動又は機能している場合に発する音波(ノイズ)とは異なる。従って、この各機構部に接近して、音波センサを設け、該音波センサの出力を解析することにより、当該音波センサが設置している機構部が正常な作動又は機能しているかを判断することができる。この場合、各機構部が正常に作動又は機能している場合に音波パターンを図1の音波・振動パターン登録手段19に登録しておき、機構部に設置した音波センサの出力から得られる音波パターンと比較することにより、当該機構部の診断ができることは当然である。 【0032】また、包装機1の上記各機構部の振動レベルも各部が正常に作動又は機能している場合と、故障等で異常に作動又は機能している場合とでは異なる。従って、この各機構部に接近して、振動センサを設け、該振動センサの出力を解析することにより、当該振動センサが設置している機構部が正常な作動又は機能しているかを判断することができる。この場合、各機構部が正常に作動又は機能している場合に振動レベルパターンを図1の音波・振動パターン登録手段19に登録しておき、機構部に設置した振動センサの出力から得られる振動レベルパターンと比較することにより、当該機構部の診断ができることは当然である。」 「【図1】 [図:0001385162000001.jpg] 」 上記に摘記、あるいは図示した事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「包装機の診断を要する各部に接近して配置され、音波や機械的振動を検出するセンサと、A/D変換器、入出力装置、CPU、RAM、音波・振動パターン登録手段、警報手段及び表示手段で構成され、CPUは、センサの各々が検出した音波や振動パターンと予め音波・振動パターン登録手段に登録されている各部が正常に作動及び機能した場合の音波や振動パターンと比較し、各部が正常に作動及び機能しているかを判断し、異常と判断した場合は、警報手段を作動させて警報を発すると共に、表示手段にどの部分が異常であるかを表示させる、包装機の診断装置を備えた、包装機。」 イ 引用文献2 引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、回転機の運転範囲のうち、定格点近傍を基準に異常診断用の閾値を定めているので、定格点近傍以外の運転範囲では異常の診断ができないという問題がある。最近の日負荷変化の激しい電力需要に追随させて発電プラントを運転するには、発電プラントの補機である回転機の起動中や、通常運用最低負荷から定格点迄の広範囲に渡って、異常の有無を検知できるようにする必要がある。万が一、回転機に異常が発生しこれが拡大していくと、プラント補機の停止に発展することになり、合理化等で予備機を持たない最近の発電プラントでは、発電出力の急減に至ることになり、経済的のみならず社会的に問題になってしまう。また、従来は、回転機の異常診断結果は、中央制御室内の制御監視盤等の警報窓に表示されたり、或いは計算機に入力されて画面に表示されてプラント運転員に告知されるが、近年の予防保全に対する要請の高まりから、斯かる回転機の異常発生を現場保守員にも提供する診断情報の確立が急務となっている。 【0005】本発明の目的は、回転機の異常診断範囲を回転機の全運転範囲に拡大し、一般的に最も異常が発生する起動開始点から定格点近傍迄の回転機の異常診断を良好に行え、回転機の異常が重大事故に発展する可能性を判断して回転機を停止させることのできる異常診断方 法及びその装置を提供することにある。」 「【0009】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例に係る回転機異常診断装置のシステム構成図である。図示しない回転機に取り付けられた加速度センサ1は、回転機の運転音を検出し、この検出信号はチャージ増幅器4にて増幅され、周波数分析器5にて周波数分析され、その加速度スペクトル分析結果が異常診断装置6に入力される。更に、回転機には回転機運転負荷検出器3と回転数検出器2が取り付けられ、各検出信号が異常診断装置6に入力される。異常診断装置6には警報装置7が接続され、異常診断装置6が回転機の異常を検出したとき警報指令を警報装置7に出力し、警報装置7は警報表示や音による警報を発する。回転機運転負荷検出器3は、例えば回転機にて駆動されるポンプの吐出流量を検出する。 【0010】図2は、周波数分析器5の分析結果の一例を示すグラフである。加速度センサ1の検出信号である加速度Gの波形を周波数軸上に取ると図2に示す様にグラフとなり、これが実測データとして周波数分析器5から回転機異常診断装置6に伝送装置等(図示せず)で送られる。図2に示すグラフの様に、回転機の振動音のピークは、振動周波数帯域毎にあり、このピークが回転機の運転状態により高くなったり低くなったりする。そこで、本実施例では、図3に示す様に、周波数帯域を、複数の帯域、例えば8つの帯域F1,F2,F3,F4,F5,F6,F7,F8に分割し、各帯域において二重線で図示する閾値を設定し、各帯域における振動音ピークが閾値を超えるか否かを見て異常がどの周波数帯域で発生したのかや、振動音ピークが閾値を超える周波数帯域のパターンからどのような種類の異常が発生したのかを診断するものである。回転機の振動音は、回転機の運転状態により変化し、起動時の正常な振動音と通常運転中における正常な振動音とは各周波数帯域におけるピークの現れ方が異なる。そこで、本実施例では、各周波数帯域毎かつ回転機の運転状態毎に夫々の閾値を図4に示す様にテーブルとしてメモリに格納しておき、回転機の運転状態に従って各周波数帯域毎の閾値を読み出して使用する。回転機の運転状態が時間の経過に従って起動状態から低負荷状態,中負荷状態,高負荷状態と移行したときは、時間の関数或いは運転状態の移行の検出に従って使用する閾値を該当運転状態のものに自動的に変更する。」 「【図1】 [図:0001385162000002.jpg] 」 「【図2】 [図:0001385162000003.jpg] 」 「【図3】 [図:0001385162000004.jpg] 」 上記に摘記、あるいは図示した事項から、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 「回転機の異常診断方法において、回転機に取り付けられた加速度センサ1は、回転機の運転音を検出し、その検出信号は周波数分析され、各帯域毎における振動音ピークが、各帯域において設定された閾値を超えるか否かを見て異常がどの周波数帯域で発生したのかや、振動音ピークが閾値を超える周波数帯域のパターンからどのような種類の異常が発生したのかを診断し、回転機の異常が重大事故に発展する可能性を判断すること。」 (2)本件発明1について ア 対比 引用発明の「包装機」は本件発明1の「包装機」に相当する。 引用発明の「包装機の診断を要する各部に接近して配置され、音波や機械的振動を検出する」ことは本件発明1の「包装機から生じる波形信号を検出する」ことに相当するから、引用発明の「センサ」は本件発明1の「検出手段」に相当する。 引用発明の「異常と判断した場合は、警報手段を作動して警報を発すると共に、表示手段にどの部分が異常であるかを表示する」ことは、本件発明1の「前記異常状態の場合に報知する」ことに相当するから、引用発明の「センサの各々が検出した音波や振動パターンと予め音波・振動パターン登録手段に登録されている各部が正常に作動及び機能した場合の音波や振動パターンと比較し、各部が正常に作動及び機能しているかを判断し、異常と判断した場合は、警報手段を作動させて警報を発すると共に、表示手段にどの部分が異常であるかを表示させる」「CPU」と、本件発明1の「前記検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた周波数ごとのレベルと、記憶した周波数ごとの基準レベルとに基づいて前記包装機の故障の兆しの有る異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段」であって、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ものとは、「検出手段から出力される波形信号と、記憶した波形信号とに基づいて前記包装機の異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段」の限りで一致する。 そうすると、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「包装機から生じる波形信号を検出する検出手段と、 前記検出手段から出力される波形信号と、記憶した波形信号とに基づいて前記包装機の異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段を備えた包装機。」 [相違点1] 「検出手段から出力される波形信号と、記憶した波形信号とに基づいて包装機の異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段」に関して、本件発明1は、「前記検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた周波数ごとのレベルと、記憶した周波数ごとの基準レベルとに基づいて前記包装機の故障の兆しの有る異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段」であって、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」のに対して、引用発明は、「センサの各々が検出した音波や振動パターンと予め音波・振動パターン登録手段に登録されている各部が正常に作動及び機能した場合の音波や振動パターンと比較し、各部が正常に作動及び機能しているかを判断し、異常と判断した場合は、警報手段を作動させて警報を発すると共に、表示手段にどの部分が異常であるかを表示させる」「CPU」である点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 「異常状態か否かの判定」について、引用発明は、「センサの各々が検出した音波や振動パターンと予め音波・振動パターン登録手段に登録されている各部が正常に作動及び機能した場合の音波や振動パターンと比較し、各部が正常に作動及び機能しているかを判断」するものであって、本件発明1のように「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」もの、すなわち、故障発生の前の「機械変化の予兆(きざし)」を見つける(本件明細書の段落【0008】)ものではなく、また、引用文献1には、そのように判定することについて示唆もない。 引用文献2の【0004】を参照すると、引用文献2記載事項は、予防保全として、すなわち、故障の発生を未然に防止するために行われるものであるが、「斯かる回転機の異常発生を現場保守員にも提供する診断情報の確立」(引用文献2の【0004】)ために行われるものであって、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことについては、引用文献2に記載も示唆もされていない。 また、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことは、他の引用文献や申立人1、申立人2が提出した他の甲号証に記載も示唆もされていない。 そうすると、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことが、引用文献1及び引用文献2に記載も示唆もされておらず、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 よって、本件発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討した相違点1と同じ相違点を含むものであるので、同じ理由により、当業者が引用発明及び引用文献2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第4 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(実施可能要件) [申立1の申立理由1]本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、次の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 本件発明1~7は、異常状態か否かの判定を、故障発生時の基準レベルからのズレよりも少ない状態における基準レベルからのズレに基づいて行うものの、その判定を行う基準となる基準レベルからのズレをどのように定めることにより課題を解決することができるようになるのかについて、何ら開示されていない。 (2)申立理由2(サポート要件) [申立1の申立理由2]本件特許は、特許請求の範囲の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 故障発生時の基準レベルからのズレよりも少ない状態における基準レベルからのズレ、すなわちしきい値をどのように定めることにより、本件特許の課題を解決することが可能になるのか明らかではない。 (3)申立理由3(明確性) [申立1の申立理由3]本件特許は、特許請求の範囲の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ア どのような異常状態が、本件発明1における「包装機の故障の兆しの有る異常状態」であるのか、また、どのような状態が「故障発生」であるのか不明である。 イ 本件発明1の「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことについて、どのようにしきい値を定めることで異常状態と判定するのか不明である。 (4)申立理由4(進歩性) ア [申立1の申立理由4]本件特許の請求項1~7に係る発明は、申立1の甲1に記載された発明、申立1の甲2に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ [申立2の申立理由]本件特許の請求項1~7に係る発明は、申立2の甲1に記載された発明、申立2の甲2に記載された事項、及び申立2の甲3に記載された事項又は申立2の甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 申立1の甲1、申立2の甲1:特開2006-234785号公報(以下、単に「甲1」という。) 申立1の甲2、申立2の甲2:特開平8-217028号公報(引用文献1。以下、単に「甲2」という。) 申立1の甲3:特開2010-166686号公報(引用文献3) 申立1の甲4:特開平5-79903号公報(引用文献2) 申立1の甲5:特開平5-52712号公報 申立1の甲6:特許第4972359号公報(引用文献5) 申立1の甲7:特開平8-165974号公報 申立1の甲8:特許第3176771号公報 申立2の甲3:特開2004-63040号公報 申立2の甲4:実公平3-46342号公報(引用文献4) 2 当審の判断 (1)申立理由1(実施可能要件)について 「故障発生時の基準レベルからのズレよりも少ない状態における基準レベルからのズレ」に関して、本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある(下線は当審が付したもの。以下同じ。)。 「【0036】 制御部41が判定する異常状態は、実際に故障等を生じているのではないが、このまま使用し続けると故障等を発生するおそれがある状態である。この異常状態か否かの判断は、例えば、制御部41は、求めた各周波数成分のレベルと、基準データ記憶部43に格納していた正常時のそれぞれに対応する周波数成分のレベル(基準レベル)と比較し、どの周波数のレベルにどれほどの変化があったかに基づき行う。この故障の兆しのある異常状態と判定するレベルの変化は、例えば、基準レベルから一定量のズレというように、しきい値処理で行う。係る判定を行う際のしきい値は、故障発生時のレベルよりは基準レベルからのズレ量が少ない所定の値とすると良い。・・・」 当該記載によると、「実際に故障等を生じ」ている状態の周波数成分のレベルを「故障発生時のレベル」と設定することができ、また、当該「故障発生時のレベル」よりは「基準レベルからのズレ量が少ない所定の値」を、「故障の兆しのある異常状態と判定するレベルの変化」とすることによって、「異常状態か否かの判定」を行う基準となる「基準レベルからのズレ」をしきい値として定めることができる。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (2)申立理由2(サポート要件)について ア 発明が解決しようとする課題 発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【0006】、【0017】の記載から見て、「予防保守モードで動作させて診断を行うため、予め診断するタイミングを事前に決めておく必要」がある「結果、例えば、そのタイミングが遅いと実際に故障を生じてしまい修理復旧に時間がかかるという問題を生じ、逆にタイミングが早くて頻繁に診断をすると、正規の包装作業が行えず、生産性が低下するという問題」があったところ、「包装機の故障の兆しを発見し、早目のメンテナンスを促すことで包装機の故障による生産停止を予防する包装機の予防保全を行える」ようにすることである。 イ 発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明には、上記アの課題に関して、次の記載がある。 「【0007】 上述した課題を解決するために、本発明の包装機は、(1)包装機から発生する振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた周波数ごとのレベルと、記憶した周波数ごとの基準レベルとに基づいて前記包装機の故障の兆しの有る異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段を備え、前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行うようにした。周波数分析は、例えばFFT(高速フーリエ変換)を用いると良い。 【0008】 波形信号は、例えば包装機で発生した、振動(例えば振動検出器で検出)、音(例えばマイクで検出)、装置の特定部位の変位(例えば光学センサで検出)などのアナログ電気信号がある。例えば包装機は、動作に伴い各部で振動を生じる。例えば経年変化・経年劣化などによりスムーズ・滑らかに動かなくなると、その時の振動の状態は初期の正常に動作していたときのものと異なる。振動の異なり具合は、例えば劣化の程度により異なる。稼働中の包装機の振動は、色々な装置で発生する振動の合成であり、ノイズなども含まれるため、単純に振幅でみてもわからない。そこで本発明では、包装機から発生する振動に対応する波形信号を周波数分析して周波数ごとに分け、周波数ごとに基準レベルと比較することで、機械変化の予兆(きざし)すなわち故障の兆しを見つけ、報知するようにした。ユーザは、係る報知に基づき、包装機に対するメンテナンスを行うことで、装置破損による機械ダウンを防止し予防保全をすることができる。本発明によれば、実際に包装処理を行っている際に異常状態の有無の判断ができる。よって、異常状態にならなければ、そのまま継続して通常の包装処理を行うことができ、診断のために包装機を停止する必要も無い。」 ウ 判断 発明の詳細な説明の上記イ【0007】、【0008】の記載を参照すると、本件発明1は、「包装機から生じる波形信号を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた周波数ごとのレベルと、記憶した周波数ごとの基準レベルとに基づいて前記包装機の故障の兆しの有る異常状態か否か判定し、前記異常状態の場合に報知する制御手段を備え、前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことを発明特定事項とすることによって、上記アの課題を解決できるものである。 エ 小括 よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 (3)申立理由3(明確性)について ア 上記1(3)アについて 「兆し」は、一般に「物事の起ころうとする前ぶれ。兆候。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味するため、本件発明1における「包装機の故障の兆しの有る異常状態」とは、「包装機の故障が起ころうとする前ぶれが有る」状態を意味することは明らかである。 また、「故障発生」は、文字どおり「故障」が「発生」することを意味することは明らかである。 イ 上記1(3)イについて 上記(1)で示したように、異常状態を判定するしきい値は、「故障の兆しのある異常状態と判定するレベルの変化」とすることによって、「異常状態か否かの判定」を行う基準となる「基準レベルからのズレ」として定めることができることができる。 ウ 小括 よって、本件発明1~7は明確である。 (4)申立理由4(進歩性)について 申立理由4(上記1(4))のア、イの理由は、いずれも甲1を主引用例とする理由である。 ア 甲1に記載された発明 甲1(【請求項1】、【0027】、【0028】)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「回転或いは摺動する少なくとも一つの部品を備えた、機械設備の異常診断装置であって、 前記機械設備から発生する信号を電気信号として出力する少なくとも一つの検出部と、 前記電気信号の波形の周波数分析を行い、該周波数分析で得られたスペクトルに基づき算出した基準値より大きい該スペクトルのピークを抽出し、該ピーク間の周波数と回転速度信号或いは移動速度信号に基づき算出した前記部品の損傷に起因する周波数成分とを比較照合し、その照合結果に基づき前記部品の異常の有無及び異常部位を判定する信号処理部と、 を備え、 異常が検出された場合にはライトやブザー等の警報器を使って異常の通知を行う機械設備の異常診断装置。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「機械設備から生じる波形信号を検出する検出手段と、 前記検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた検出値と、基準値とに基づいて、機械設備が異常の状態か否かを判定し、異常の状態の場合に報知する制御手段を備えた包装機。」 [相違点A] 本件発明1は「包装機」であるのに対して、甲1発明は「機械設備」である点。 [相違点B] 「制御手段」が「検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた検出値と、基準値とに基づいて、機械設備が異常の状態か否かを判定」することに関して、本件発明1は、「制御手段」が「前記検出手段から出力される波形信号を周波数分析して得られた周波数ごとのレベルと、記憶した周波数ごとの基準レベルとに基づいて前記包装機の故障の兆しの有る異常状態か否か判定」し、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」のに対して、甲1発明は、「信号処理部」が「前記電気信号の波形の周波数分析を行い、該周波数分析で得られたスペクトルに基づき算出した基準値より大きい該スペクトルのピークを抽出し、該ピーク間の周波数と回転速度信号或いは移動速度信号に基づき算出した前記部品の損傷に起因する周波数成分とを比較照合し、その照合結果に基づき前記部品の異常の有無及び異常部位を判定する」点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点Bについて検討する。 「異常状態か否かの判定」について、引用発明は、「前記電気信号の波形の周波数分析を行い、該周波数分析で得られたスペクトルに基づき算出した基準値より大きい該スペクトルのピークを抽出し、該ピーク間の周波数と回転速度信号或いは移動速度信号に基づき算出した前記部品の損傷に起因する周波数成分とを比較照合し、その照合結果に基づき前記部品の異常の有無及び異常部位を判定」するものであって、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことについて、甲1には、記載も示唆もされていない。 また、上記第3の2(2)イで示したとおり、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことは、甲2(引用文献1)や申立人1、申立人2が提出した他の甲号証に記載も示唆もされていない。また、提出された証拠からは、周知技術であるともいえない。 そうすると、「前記異常状態か否かの判定は、故障発生時の前記基準レベルからのズレよりも少ない状態における前記基準レベルからのズレに基づいて行う」ことが、甲1に記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえないから、甲1発明において、相違点Bに係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 よって、本件発明1は、相違点Aを検討するまでもなく、当業者が甲1発明、甲2に記載された事項、他の甲号証に記載された事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討した相違点Bと同じ相違点を含むものであるので、同じ理由により、当業者が甲1発明、甲2に記載された事項、他の甲号証に記載された事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700445

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