特許拒絶査定不服審判
2021-014755
キャッシュレスカード
- 審判番号
- 2021-014755
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-248956
- 請求日
- 2021年09月25日
- 審決日
- 2023年01月25日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】鈴木 計芳
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 芳枝
- 審判官 田合 弘幸
- 審判官 窪田 治彦
- 分類
- P18 .121-WZ (A45C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-248956号「キャッシュレスカード」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月2日出願公開、特開2020-99657号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年12月14日付け 手続補正書の提出
令和3年 3月30日付け 拒絶理由通知書
令和3年 6月 7日付け 意見書、手続補正書の提出
令和3年 8月13日付け 拒絶査定
令和3年 9月27日受付 審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 5月18日付け 拒絶理由通知書
令和4年 7月25日付け 意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年7月25日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「 レジスターでの支払い時のキャッシュレス化に対応するためのクレジットカードまたはデビットカードまたはプリペイドカードであって、表面と裏面と厚さ方向の側面とを有する前記カードの、前記側面および前記表面の縁部および前記裏面の縁部にカードの種類を特定し得る目印が施されており、前記目印が着色および模様および文字コードによるものであることを特徴とする、キャッシュレスカード。」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
当審において令和4年5月18日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知の技術的事項、又は、引用文献2に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1 実願昭58-128426号(実開昭60-36272
号)のマイクロフィルム
引用文献2 特開平11-227371号公報
引用文献3 特開平8-39972号公報
引用文献4 登録実用新案第3034112号公報
第4 引用文献
1 引用文献1
(1) 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア 「処理装置で読み出し可能なメモリーを内蔵したカードにおいて、記憶内容などを示す情報を表面上端もしくは側面に表示したカード。」(実用新案登録請求の範囲)
イ 「[考案の技術分野]
この考案は、キヤッシュカード、クレジットカード、IDカード類のカードに関する。
[考案の技術的背景とその問題点]
従来、カードの記憶内容などを示す情報はカードの表面に大きい字で印刷されており、使用者はそれを目印にしてカードを使いわけていた。しかし、そのような表示法では、今後のカードの需要の増大に従い、多数枚のカードの中から所用のカードを検索するのに手間がかかるようになる。
[考案の目的]
本考案は上記のような従来技術の欠点を除去し多数枚のカードの中から所用のカードを検索するのを容易ならしめることを目的とする。
[考案の概要]
この目的を達成するために、本考案は記憶内容などを示す情報をカードの表面上端に表示したり、あるいは側面に表示したりする。」(明細書第1ページ第8行~第2ページ第5行)
ウ 「[考案の実施例]
記憶内容などを示す情報を表面上端に表示したカード1の場合には、第1図に示すように段のついたケース2を用いて、一段に一枚のカードを入れるようにする。第2図はこれを第1図の矢印方向から見た図である。こういうふうに見ると、各カードの表示内容を一覧でき、所用のカードをすぐに検索できる。
記憶内容などを示す情報を側面に表示したカードの場合には、第3図のように重ねて並べる。そして、この保管ケース3の側面に拡大鏡4をセットしてガイド5によりスライドできるようにしておく。拡大鏡を適当にスライドさしながらカードの束の側面をみると、各カードの表示内容を一覧でき、所用のカードをすぐに検索できる。」(明細書第2ページ第10行~第3ページ第4行)
エ 「4.図面の簡単な説明
第1図は、本考案の記憶内容などを示す情報を表面上端に表示したカードとそのケースの一実施例を示す側面図、第2図は第1図のカードを矢印方向からみた図である。第3図は本考案の記憶内容などを示す情報を側面に表示したカードについての一実施例を示す図である。」(明細書第3ページ第5行~第11行)
オ 引用文献1には、第1図及び第2図として、以下の図が示されている。
「 第1図 第2図
[図:0001395765000001.jpg]
」
カ 引用文献1には、第3図として、以下の図が示されている。
「 第3図
[図:0001395765000002.jpg]
」
(2) 引用文献1から理解できる事項
前記ア~カの記載から、引用文献1には、以下の事項が記載されていることが理解できる。
キ 前記カの第3図の図示内容から、カードが表面と裏面と厚さ方向の側面とを有することが看取される。
ク 前記イ、ウの記載、及び前記オ、カの第1図~第3図の図示内容から、カードの記憶内容などを示す情報は使用者が当該カードを検索するための目印であり、前記情報が印刷された字によるものであることが理解できる。
(3) 引用文献1に記載された発明
前記ア~クの事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「キャッシュカード、クレジットカード、IDカード類のカードであって、表面と裏面と厚さ方向の側面とを有する前記カードの、前記側面もしくは前記表面の上端に前記カードの記憶内容などを示す情報が表示されており、前記情報は使用者が当該カードを検索するための目印であり、前記情報が印刷された字によるものである、カード」
2 引用文献2
(1) 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 所定のサイズと任意の厚さを有するカード基材からなり、当該カード基材における上下長端縁の側面の内、少なくともどちらか一方に着色部を設けてなるカード。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプリペイドカード、IDカード、キャッシュカード、クレジットカード等、各種プラスチックカード、ラミネートカード等のカード類に関する。」
ウ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、プリペイドカードを代表とするカード類の基材は、そのサイズが規格により決められており、一般的には幅54mm、長さ86mm程度である。また、カード基材の色は特別な場合を除いて白色であるため、何らの加工も施さない限り、カードの長短端縁の側面も通常白色である。したがって、複数のカードを重ねた状態でカード入れのカード保持部に収納した場合では、各カードの表裏面の印刷や印字を確認しない限り、その長端縁の側面を見るだけで各カードを識別することは全く不可能である。
【0004】そこで、本発明は、このような問題に鑑み、複数のカードを重ねてカード保持部に収納した場合であっても、特定のカードを長端縁の側面から識別できるようにしたカードの提供を目的とするものである。」
エ 「【0008】
【発明の実施形態】以下、本発明のカードについて、実施例を揚げて詳述する。なお、添付図面において、図1は本発明のカードの斜視図、図2は図1のカードにおける着色部を設けた長端縁の側面の拡大説明図、図3は本発明のカードの使用説明図である。
【0009】図1に示すように、本実施例のカード1は「ID磁気カード」として構成されており、幅54mm、長さ86mmの規格サイズで、厚さ1mmの白色のプラスチック板をカード基材2としてなる。そして、そのカード基材2の表面には、タイトル、書誌的事項などの一般印刷4や氏名、年令などの可変印刷5の他、磁気ストライプ6や写真7などが施されている。なお、そのカード基材2の裏面にも所定の印刷、印字が施されているが、ここでは図示しない。
【0010】このカード1の特徴は、図2に示すように、カード基材2における上下長端縁の側面L1、L2の内、上側の長端縁の側面L1に間欠的に矩形の赤色の着色部3が設けたところにある。したがって、このカード1が他の規格サイズのカードと重ね合わされ、その表裏面が全く見えない状態であっても、図3に示す如く、この着色部3により、容易に他のカードと区別できる。また、本実施例では、上側の長端縁の側面L1のみに着色部3を設けたことにより、本カード1をカード保持部に収納する際、カードの上端縁を揃えるためのガイドとなると共に、保持部に収納された状態であっても、一目でこのカードを識別することができる。
【0011】なお、本実施例のカード1においては、着色部3を上側の長端縁の側面L1のみに設けているが、本発明はこれに限定されず、着色部3を下側の長端縁の側面L2に設けても、あるいは上下両方の長端縁の側面L1、L2に設けてもよい。また、着色部3は、必ずしも本実施例のように間欠的に設けなくてもよく、識別できる範囲において、側面全面あるいは所定部のみに設けてもよい。さらに、着色部3は本実施例のような赤色に限ることなく、また、カード基材2は白色に限ることなく、例えば、カードの種類に応じて特定の色の組み合わせとすることにより、複数のカードを重ねてカード保持部に収納した場合であっても、それぞれの色の組み合わせにより各カードを識別できるようにすることもできる。」
オ 「【0012】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のカードによれば、カード基材における上下長端縁の側面に着色部を設けたことにより、複数のカードを重ねてカード保持部に収納した場合であっても、特定のカードを側面から識別でき、また、上側の長端縁の側面のみに着色部を設ければ、カードを適切な方向で保持部に収納する際、カードの上端縁を揃えるためのガイドとなるといった効果を奏する。」
カ 引用文献2には、図1及び図2として、以下の図が示されている。
「【図1】 【図2】
[図:0001395765000003.jpg]
」
キ 引用文献2には、図3として、以下の図が示されている。
「【図3】
[図:0001395765000004.jpg]
」
(2) 引用文献2から理解できる事項
前記ア~キの記載から、引用文献2には、以下の事項が記載されていることが理解できる。
ク 前記エの【0009】及び【0010】の記載から、カードが、表面と裏面と厚さ方向の側面とを有することが理解できる。
ケ 前記エの【0010】及び【0011】の記載から、カードには、上側の長端縁の側面に「各カードを識別できる」着色部3が設けられ、着色部3が間欠的に設けられた矩形の着色または間欠的に設けていない着色によるものであることが理解できる。
(3) 引用文献2に記載された発明
前記ア~ケの事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「クレジットカード、プリペイドカード、IDカード、キャッシュカード等のカードであって、表面と裏面と厚さ方向の側面とを有する前記カードの、上側の長端縁の前記側面に各カードを識別できる着色部3が設けられ、前記着色部3が間欠的に設けられた矩形の着色または間欠的に設けていない着色によるものである、カード」
3 引用文献3及び引用文献4
(1) 引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はクレジットカード、銀行預金カード等のIDカードの形状に関する。」
イ 「【0007】
【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明よりなるIDカードであり、カード1上端綾より5ミリ幅内に爪掛け用溝2が形成されており、またカード1上端綾より5ミリ幅内に内容のタイトル3が標記されている。図3、図4、図5、には爪掛け用溝2の形状例が示される。図3、図4はカード1上端に平行且つカード面に垂直な壁をカード1上端側になす凹形状をなし、図5はカード1上端に平行、且つカード面に垂直な壁をカード1上端側になす穴形状である。図1は本発明よりなるIDカードをカードケースに収めた状態をしめす。爪掛け溝2に爪、指先、もしくはコイン等のピック状の物、を掛けて引き出すことにより容易にカード1を引き出すことができる。又、タイトル3を見ることにより容易に使用するIDカードを見分けられる。」
ウ 引用文献3には、図1及び図3として、以下の図が示されている。
「【図1】 【図3】
[図:0001395765000005.jpg]
」
(2) 引用文献4には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、種々の金融機関で用いられているキャッシュカード、IDカード、テレホンカード、オレンジカード、クレジットカード、プリペードカード、メンバーズカード、貸し出しカードなどとして用いられている、ICカード、磁気カードなどに関する物である。」
イ 「【0006】
【実施例】
図1、および図2は、本願考案の縁付きカードの1実施例を示すもので、図1は携帯用箔押器全体の斜視図であり、図2は図1におけるA-A線における断面図である。各図において、1が本考案の縁付きカードであって、ICカード,IDカード磁気カードなどと呼ばれているものや、記録手段を有しない表裏に印刷などが施されているだけの種々のカード類であって、2はカード本体、3はその周側面あって、該周側面には被覆層4が形成されている。この被覆層4は、カード本体2の周側面3に種々の色彩をもつ箔、テープ、塗料、エナメルなどのうちの1つ又は複数のものによって色付け又は柄付けされたものである。
【0007】
このような縁付きカード1は、例えば、幅が120cm程度の合成樹脂、金属、厚紙、無機物などのシートに必要な印刷を施し、さらに必要であれば情報を記録させた後、カッターによってカード本体2が所望の大きさに切り出される。切り出されたカード本体2は、重ねられることにより、その切断された周側面3が外表面に出た角柱状になるので、その角柱状の側面を連続的に又は100枚単位ごとにバッチ処理により、箔、インクテープ、塗料、エナメルなどのうちの1つ又は複数種を用いて色付け又は柄付けされ、被覆層4が形成される。」
ウ 「【0009】
【効果】
本願考案によれば、カード本体の周側面にインクテープ、塗料、エナメルなどの1種又は複数種により色付け又は柄付けされ被覆層が形成されているので、綺麗で見た目に美しく心を和ませてくれ、滑らかであることから、人に触れても傷付けることがなく安全であり、さらに、カードの、種類により色や柄を変えておくことにより、複数枚のカードを重ねて持っていても、周側面をみただけで識別力があるカードになる。」
エ 引用文献4には、図1及び図2として、以下の図が示されている。
「【図1】 【図2】
[図:0001395765000006.jpg]
」
第5 対比・判断
1 引用発明1を主引用発明とする場合
(1) 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
引用発明1における「クレジットカード」は、一般にクレジットカードが、店舗のレジスターでの支払時にキャッシュレス決済を行うために利用されることを踏まえると、本願発明における「レジスターでの支払い時のキャッシュレス化に対応するためのクレジットカード」に相当し、引用発明1における「カード」は、本願発明における「キャッシュレスカード」に相当する。
引用発明1における「表面の上端」は、本願発明における「表面の縁部」に相当する。また、引用発明1における「カードの、前記側面もしくは前記表面の上端」と、本願発明における「カードの、前記側面および前記表面の縁部および前記裏面の縁部」とは、「カードの、収納時に視認可能な箇所」という限りにおいて一致する。
引用発明1における「カードの記憶内容などを示す情報」は、「使用者が当該カードを検索するための目印であ」ることから、本願発明における「カードの種類を特定し得る目印」に相当し、引用発明1における「表示されており」との事項は、本願発明における「施されており」との事項に相当する。また、引用発明1における「印刷された字」と、本願発明における「着色および模様および文字コード」とは、「目視判別可能な特徴」という限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「レジスターでの支払い時のキャッシュレス化に対応するためのクレジットカードであって、表面と裏面と厚さ方向の側面とを有する前記カードの、収納時に視認可能な箇所にカードの種類を特定し得る目印が施されており、前記目印が目視判別可能な特徴によるものである、キャッシュレスカード」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
「キャッシュレスカード」に関して、本願発明は、クレジットカード「またはデビットカードまたはプリペイドカード」であるのに対して、引用発明1は、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード類のカードである点。
<相違点1-2>
「カードの、収納時に視認可能な箇所」及び「目視判別可能な特徴」に関して、本願発明は、カードの「前記側面および前記表面の縁部および前記裏面の縁部」に、「着色および模様および文字コード」による目印を施すのに対して、引用発明1は、カードの前記側面もしくは前記表面の上端に、印刷された字による、カードの記憶内容などを示す情報が表示されている(目印が施されている)点。
(2) 判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1-1について
本願発明では、カードの種類が「クレジットカードまたはデビットカードまたはプリペイドカード」と択一的に特定されているところ、そのうちの「クレジットカード」には、前記(1)に示したとおり、引用発明1における「クレジットカード」が相当するから、相違点1-1は実質的な相違点ではない。
また、念のため、その他の選択肢について予備的に検討するに、デビットカードやプリペイドカードは、クレジットカードと同じように店舗のレジスターでの支払時等にキャッシュレス決済を行うために利用されるものであることを勘案すると、引用発明1における「クレジットカード、キャッシュカード、IDカード類のカード」の対象に、「デビットカード」や「プリペイドカード」を含めるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点1-2について
(ア) 目印を施す箇所について
引用発明1の「クレジットカード、キャッシュカード、IDカード類のカード」が、財布のカードポケットやカード収容具等に収容された際に、カードの側面と表面の上端とが、もしくはカードの側面と裏面の上端とが、視認可能であることは明らかである(必要ならば、引用文献2の図3(前記「第4」2(1)キ)、引用文献3の図1(前記「第4」3(1)ウ)を参照)。
そして、「多数枚のカードの中から所用のカードを検索するのを容易ならしめること」(前記「第4」1(1) イ)を目的とした引用発明1において、さらにカードの検索を容易とすべく、カードの記憶内容などを示す情報を、この視認可能なカードの側面、表面の上端及び裏面の上端の三箇所に表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 目印として施す目視判別可能な特徴について
本願発明における「文字コード」は、請求項1の記載に基づくと「カードの種類を特定し得る目印」として機能するものであるから、「カード毎に一意に定まり、かつ、文字に関連する表示情報」ということができる。そして、引用発明1における「情報が印刷された字」も、「カードの記憶内容などを示す情報」であるから、「カード毎に一意に定まり、かつ、文字に関連する表示情報」である点で、本願発明における「文字コード」と相違するものではない。
また、カードに識別力を付与するために、着色や模様を施すことは、例えば、引用文献2及び引用文献4に示されるように(前記「第4」2(1)エ、カ、及び3(2) イ~エを参照。)、従来周知の技術的事項(以下「周知技術1」という。)である。
してみれば、「多数枚のカードの中から所用のカードを検索するのを容易ならしめること」(前記「第4」1(1) イ)を目的とした引用発明1において、さらにカードの検索を容易とすべく、「情報が印刷された字」だけでなく、「着色」及び「模様」をも組合せて用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、念のため、本願明細書の段落【0009】、【0022】の記載を参酌して、本願発明における「文字コード」が、「文字を符号に変換した表示情報」を意味するものとした場合について予備的に検討するに、各種カードに種々の情報に対応する符号(バーコード等)を印刷することは、文献を例示するまでもなく周知の事項であるから、引用発明1において、「カードの記憶内容などを示す情報」として、「情報が印刷された字」に代えて、「文字を符号に変換した表示情報」を用いるようにすることに、格別の困難性は見いだせない。
(3) 本願発明の作用効果について
請求人は、令和4年7月25日付けの手続補正書において、本願発明により「複数種類のカードがカードケースの中で重なっていても、目印を一瞥するだけでどのカードがどこに納められているかを簡単に知ることが出来る、と言う所期の効果が得られています」と主張する。
しかしながら、引用文献1には、「記憶内容などを示す情報を表面上端に表示したカード1の場合には、・・・(中略)・・・こういうふうに見ると、各カードの表示内容を一覧でき、所用のカードをすぐに検索できる」及び「記憶内容などを示す情報を側面に表示したカードの場合には、・・・(中略)・・・カードの束の側面をみると、各カードの表示内容を一覧でき、所用のカードをすぐに検索できる。」(前記「第4」1(1)ウ)との効果が記載されており、本願発明の作用効果は、引用発明1及び周知技術1から当業者が予測できる範囲のものであるから、前記請求人の主張は採用することはできない。
(4) まとめ
したがって、本願発明は、引用発明1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 引用発明2を主引用発明とする場合
(1) 対比
本願発明と引用発明2を対比する。
引用発明2における「クレジットカード」は、一般にクレジットカードが、店舗のレジスターでの支払時にキャッシュレス決済を行うために利用されることを踏まえると、本願発明における「レジスターでの支払い時のキャッシュレス化に対応するためのクレジットカード」に相当し、引用発明2における「プリペイドカード」、及び「カード」は、本願発明における「プリペイドカード」、及び「キャッシュレスカード」に相当する。
引用発明2における「カードの、上側の長端縁の前記側面」と、本願発明における「カードの、前記側面および前記表面の縁部および前記裏面の縁部」とは、「カードの、収納時に視認可能な箇所」という限りにおいて一致する。
引用発明2における「各カードを識別できる着色部3」は、本願発明における「カードの種類を特定し得る目印」に相当し、引用発明2における「設けられ」との事項は、本願発明における「施されており」との事項に相当する。
引用発明2における「間欠的に設けられた矩形の着色または間欠的に設けていない着色」と、本願発明における「着色および模様および文字コード」とは、「目視判別可能な特徴」という限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明2とは、
「レジスターでの支払い時のキャッシュレス化に対応するためのクレジットカードまたはプリペイドカードであって、表面と裏面と厚さ方向の側面とを有する前記カードの、収納時に視認可能な箇所にカードの種類を特定し得る目印が施されており、前記目印が目視判別可能な特徴によるものであることを特徴とする、キャッシュレスカード」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
「キャッシュレスカード」に関して、本願発明は、クレジットカード「またはデビットカード」またはプリペイドカードであるのに対して、引用発明2は、クレジットカード、プリペイドカード、IDカード、キャッシュカード等のカードである点。
<相違点2-2>
「カードの、収納時に視認可能な箇所」及び「目視判別可能な特徴」に関して、本願発明は、カードの「前記側面および前記表面の縁部および前記裏面の縁部」に、「着色および模様および文字コード」による目印を施すのに対して、引用発明2は、カードの前記側面に、間欠的に設けられた矩形の着色または間欠的に設けていない着色による着色部3が設けられる(目印が施されている)点。
(2) 判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点2-1について
本願発明では、カードの種類が「クレジットカードまたはデビットカードまたはプリペイドカード」と択一的に特定されているところ、そのうちの「クレジットカード」及び「プリペイドカード」には、前記(1)に示したとおり、引用発明2の「クレジットカード」及び「プリペイドカード」が相当するから、相違点2-1は実質的な相違点ではない。
また、念のため、その他の選択肢について予備的に検討するに、デビットカードは、クレジットカードと同じように店舗のレジスターでの支払時等にキャッシュレス決済を行うために利用されるものであることを勘案すると、引用発明2における「クレジットカード、プリペイドカード、IDカード、キャッシュカード等のカード」の対象に、「デビットカード」を含めるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2-2について
(ア) 目印を施す箇所について
カードに識別力を付与するための目印を表面の上端に設けることは、例えば、引用文献1及び引用文献3に示されるように(「第4」1(1)ウ、オ、及び3(1)イ、ウを参照)、従来周知の技術的事項(以下「周知技術2」という。)であることに鑑みれば、引用発明2において、財布のカードポケットやカード収容具等に収容された際のカードの識別力をさらに高めるために、各カードを識別できる着色部3(目印)を、収容時に視認可能なカードの側面、表面の上端及び裏面の上端の三箇所に表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 目印として施す目視判別可能な特徴について
引用発明2では、着色部3を「間欠的に設けられた矩形の着色または間欠的に設けていない着色」としており、この引用発明2における「間欠的に設けていない着色」、及び「間欠的に設けられた矩形の着色」は、本願発明における「着色」、及び「模様」に相当するものであるが、このように、カードに識別力を付与するために、着色や模様を施すことは、前記1(2)イ(イ)で述べたように、従来周知の技術的事項(周知技術1)でもある。
また、カードに識別力を付与するために、文字に関連する表示情報を付加することも、例えば、引用文献1及び引用文献3に示されるように(前記「第4」1(1)イ、及び3(1)イ、ウを参照)、従来周知の技術的事項(以下「周知技術3」という。)である。
してみれば、「特定のカードを長端縁の側面から識別できるようにしたカードの提供」(前記「第4」2(1)ウ)を目的とする引用発明2において、さらに識別力を高めるために、周知技術1及び周知技術3に鑑みて、着色部3を着色及び模様から構成し、文字に関連する表示情報も組合せて用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、念のため、本願明細書の段落【0009】、【0022】の記載を参酌して、本願発明における「文字コード」が、「文字を符号に変換した表示情報」を意味するものとした場合について予備的に検討するに、各種カードに種々の情報に対応する符号(バーコード等)を印刷することは、文献を例示するまでもなく周知の事項であるから、引用発明2に、周知技術4を適用する際、文字に関連する表示情報として、「文字を符号に変換した表示情報」を用いるようにすることに、格別の困難性は見いだせない。
(3) 本願発明の作用効果について
請求人は、令和4年7月25日付けの手続補正書において、本願発明により「複数種類のカードがカードケースの中で重なっていても、目印を一瞥するだけでどのカードがどこに納められているかを簡単に知ることが出来る、と言う所期の効果が得られています」と主張する。
しかしながら、引用文献2には、引用発明2が「複数のカードを重ねてカード保持部に収納した場合であっても、特定のカードを側面から識別でき」る(「第4」2(1)オ)との効果を有することが記載されており、本願発明の作用効果は、引用発明2、周知技術1、周知技術2及び周知技術3から当業者が予測できる範囲のものであるから、前記請求人の主張は採用することはできない。
(4) まとめ
したがって、本願発明は、引用発明2、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014755