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特許拒絶査定不服審判

2021-014090

グラビアオフセット印刷用凹版およびその製造方法

審判番号
2021-014090
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-021148
請求日
2021年10月15日
審決日
2023年04月26日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】マクセル株式会社
  • 【請求人代理人】森本 聡
審判長/審判官
  • 審判長 藤本 義仁
  • 審判官 古屋野 浩志
  • 審判官 松田 直也
分類
P18 .121-WZ (B41N) / P18 .537-WZ (B41N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 21148「グラビアオフセット印刷用凹版およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年5月21日出願公開、特開2020-75515〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成27年10月15日に出願した特願2015-203640号の一部を令和2年2月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年12月14日付け:拒絶理由通知書 令和3年 2月19日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年 7月13日付け:拒絶査定 令和3年10月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和4年 9月30日付け:拒絶理由通知書(当審) 令和4年12月 2日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年12月2日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「 【請求項1】 底面を備える一群の溝を有するパターン凹部(1)が形成されたパターン層(2)と、ガラス板で形成されたベース層(3)とを備えているグラビアオフセット印刷用凹版であって、 パターン層(2)が、接着層(4)を介してベース層(3)に接着固定されており、 パターン凹部(1)内の表面は、パターン層(2)を形成する素材で構成され、パターン凹部(1)の底面には、接着層(4)が露出されておらず、 パターン凹部(1)の開口面側の出隅部分に、部分円弧状の丸面部(9)が形成されていることを特徴とするグラビアオフセット印刷用凹版。」 第3 当審において通知した拒絶理由の概要 上記令和4年9月30日付け拒絶理由通知書において通知した理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、次に概略を記した理由を含むものである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項 の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 理由1.(進歩性) ・請求項 1 ・引用文献等 1、3 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開昭58-139140号公報 引用文献3:特開2013-71334号公報 第4 当審の判断 1 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1 ア 記載事項 当審拒絶理由において引用した本願の出願前に公開された特開昭58-139140号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。 (ア)「 本発明はインキ転移性の改良された感光性樹脂凹版材に関するものである。 凹版材を使用するグラビア印刷は、まず版面にインキを全面に載せ、版面に付着したインキをドクターナイフで掻き取つて凹部のみにインキを保持せしめ、かかる凹部のインキを被印刷物に転写することによつて実施されている。 また、グラビア印刷の変形としてタンポ印刷またはタコ印刷と呼ばれている曲面印刷が行なわれている。これはグラビア印刷と同じく凹版材の版面上にインキを全面に載せ、ドクターナイフで掻き取つて凹部にインキを保持せしめ、そのインキをシリコーンゴム等の柔軟なパツド面に転写せしめて、最後に該パツドのインキ付着面を曲面形状の被印刷体に圧着することによつてインキを転写するという、グラビアドライオフセツト印刷であり、スクリーン印刷に比較してシヤープでかつ再現性の良い印刷が可能である。」(第1頁右欄10行-第2頁左上欄8行) (イ)「 本発明の感光性樹脂凹版材の一実施態様を示す図面を用いて説明する。第1図において1は支持体であり、その表面に接着処理を施した層1’が存在する。2は本発明の特徴であるインキ転移層であり、3は感光性樹脂層である。第2図において、3’は第1図の感光性樹脂3が製版によつて変化した凹部形成層であり、凹部の底面はインキ転移層である。 本発明の積層構造を有する感光性樹脂凹版材にポジフイルムを密着して活性光線で露光し、ついで感光性樹脂の溶剤で未露光部をインキ転移層の表面が露出するまで完全に除去することによつて深さ一定の凹部が形成される。インキ転移層2の表面は凹部形成層3’と同様に硬化によつて高度に三次元架橋されているのでインキで膨潤することなく、また凹版材としてインキ転移性を良化させた凹部形成層と類似の組成物であるのでインキの転移量は十分であり、長時間におよぶ印刷時の転移量の均一性、安定性も良好である。この点でインキ転移層を設けない感光性樹脂凹版材よりもはるかにすぐれている。 本発明で使用される感光性樹脂層としては、各種の基体ポリマーに光重合成分と光増感剤、熱安定剤、可塑剤などを配合したものが用いられる。」(第2頁左下欄20行-第3頁左上欄5行) (ウ)「 本発明で使用される感光性樹脂層としては、各種の基体ポリマーに光重合成分と光増感剤、熱安定剤、可塑剤などを配合したものが用いられる。」(第3頁左上欄2-5行) (エ)「 本発明のインキ転移層は、各種の基体ポリマに重合成分と重合開始剤、安定剤、可塑剤などを配合ののち、加熱および活性光線照射など従来公知の方法で硬化させた樹脂層である。基体ポリマや重合開始剤は感光性樹脂層に用いたのと全く同じであつても良いし、異なつていても硬化後のこのインキ転移層が感光性樹脂層と接着層なしで容易に、強固に接着できる程度に親和性の高い樹脂を与えるものであれば任意で良い。例えば、各層のポリマが同じ溶剤可溶性ポリアミドというように類似していれば、インキ転移層の上に感光性樹脂層を設ける際に、両層のごく界面でポリマ相互の融合接着が期待できるので好ましい。このインキ転移層が感光性樹脂組成物の光硬化してなる樹脂層である場合には、同一の原料および組成物を使用できるので生産効率的な面から見ても特に好適である。」(第3頁右上欄20行-左下欄16行) (オ)「 本発明における支持体は、材質として金属およびプラスチツク、木材、ガラス、セラミツクスなど非金属のいずれも採用でき、その形状も板状およびシリンダ状のいずれであつても良い。金属材質としては鉄またはアルミニウムが好ましく、非金属材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどプラスチツクが好ましい。支持体が板状の場合には寸法安定性および可撓性の点でポリエステルフイルムが好ましく、特に適度の剛性を有している100~400μmのポリエチレンテレフタレートフイルムが最も好ましい。 これら支持体表面の接着処理は従来公知の方法で行なうことが出来る。例えばアルミニウムの場合の砂目立て処理やプラスチツクの場合のマツト化処理などである。十分な接着力を得るためには、支持体とインキ転移層の材質から適当に組成を決定された、第1図の接着処理層1’を介して接着する方法が好ましい。接着処理層成分としては通常、金属にはエポキシ系、フエノール樹脂系、プラスチツクにはポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系などが単独あるいは混合して用いられる。接着処理層は、支持体表面に任意の方法で設けることができる。」(第3頁左下欄17行-第4頁左上欄1行) (カ)「 このようにして得られた支持体と感光性樹脂層との間にインキ転移層を介在させてなる感光性樹脂凹版材は通常の露光、現像工程を経る製版によつて容易にグラビア印刷や曲面印刷用の印刷版とすることができる。」(第4頁左下欄17行-右下欄1行) (キ)「実施例1、比較例1 アルコール可溶性ポリアミドであるBASF社製の共重合ポリアミド“ウルトラアミド-1C”を基体ポリマとし、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレートとトリアクリルホルマールを光重合性モノマとし、ベンゾインメチルエーテルを光増感剤とし、t-ブチルカテコールとトリフエニルフオスフインを耐熱安定剤とする感光性樹脂のエタノール40%(重量)濃度の溶液を調製した。 この溶液を、あらかじめポリエステル系接着剤を30μmの厚さに塗布したポリエステルフイルム(厚さ250μm)上に乾燥後の膜厚が30μmとなるように流延した。これを、100℃のオーブンに5分間入れて溶媒を完全に除去した。このようにして、接着層を介してポリエステルフイルムと接着された未硬化インキ転移層に高圧水銀灯からの紫外線を空気中で2分間照射し全面露光した。このような露光を行なうことによつて前記インキ転移層はアルコールで全く溶解および膨潤することがないことが確かめられた。 次いで、感光性樹脂組成物として、上記未硬化のインキ転移層と同じ組成物溶液に染料として“ダイレクトスカイブルー”(住友化学(株)製)を0.02重量%添加した溶液を調整した。この溶液を、乾燥後の厚さが30μmとなるように流延し、100℃のオーブンに5分間入れて乾燥した。 このようにして、ポリエステルフイルムで裏打ちされた、厚さ30μmのインキ転移層と厚さ30μmの感光性樹脂層とから成る積層構造を有する感光性樹脂凹版材が得られた。 比較のために、同じ250μmの厚さのポリエステルフイルム上に厚さ30μmのポリエステル系接着層を設けた基板上に、感光性樹脂組成物を乾燥後の厚さが30μmとなるよう流延した。100℃のオーブンに5分間入れて溶剤を除去して、インキ転移層を持たない感光性樹脂凹版材を得た。 これらの版材上に、線幅50~200μmで構成される明朝文字および直径50~300μmの独立点から成る曲面印刷用のポジフイルムを真空密着し、ケミカル灯で4分間露光した。その後、エタノール/水=80/20(重量比)の混合溶剤を入れたブラシ式洗い出し機で現像した。未露光部分の染料の青色が完全に消失した時点を現像終了とした。その後、50℃のオーブンで10分間乾燥した後に、2分間さらにケミカル灯で後露光した。版面硬度はシヨアD65であつた。 かくして得られた凹版材を太平工業(株)製のパツド印刷機“T-15型”の版台に両面テープで接着固定した。次いで、凹版の全面に大日本インキ(株)製スクリーン用インキに少量の溶剤(イソホロン)を添加して粘度を下げたものを載せると同時にドクターナイフにて版上のインキをスキージ除去した。次にシリコーンゴムパツド(シヨアA硬度6)上に凹部画像を転写し、最後にABS樹脂製ガスライタの曲面部分に印刷した。 得られた印刷物を比較すると、本発明の実施例1に係るインキ転移層を有する版材はきわめてシヤープでかつインキの転移量も均一でかつ十分なものであつたが、インキ転移層を有しない版材のものは全体のインキ転移量が不十分であり、しかも部分的に不均一な転移をしていることがわかつた。この原因を調べて見ると、ポリエステルフイルム基板上の接着剤層がインキによつて膨潤しているためであることがわかつた。インキ転移層を有するものは、インキによる膨潤を全くうけないためにインキの抜けが良好であることも確認された。 このように、インキ転移層を有する感光性樹脂凹版材は曲面印刷用版材としてすぐれたものであることがわかつた。」(第4頁右下欄4行-第5頁左下欄18行) イ 認定事項 上記「ア」の(ア)には、引用文献1の「感光性樹脂凹版材」が「凹版材を使用するグラビア印刷」に係るものであること、当該「グラビア印刷」に関しその「変形として」「グラビアドライオフセツト印刷」があること、及び、その工程において「インキをシリコーンゴム等の柔軟なパツド面に転写」するとともに、「該パツドのインキ付着面を曲面形状の被印刷体に圧着することによつてインキを転写する」手順を含むことが記載されている。 一方、上記「ア」の(キ)には、ポリエステルフイルムで裏打ちされた、未硬化のインキ転移層と同じ組成物溶液による、厚さ30μmのインキ転移層と厚さ30μmの感光性樹脂層とから成る積層構造を有する「感光性樹脂凹版材」を、版台に両面テープで接着固定し、凹版にスクリーン用インキを載せると同時にドクターナイフにて版上のインキをスキージ除去し、シリコーンゴムパツド上に凹部画像を転写し、ABS樹脂製ガスライタの曲面部分に印刷することが記載されているが、凹版からシリコーンゴムパツドに転写するとの手順を含むことからみて、上記「感光性樹脂凹版材」は、上記「ア(ア)」に示された「グラビアドライオフセツト印刷」に用いられるとみることができるから、引用文献1には下記の事項が記載されていると認められる。 「グラビアオフセット印刷に用いられる感光性樹脂凹版材。」 ウ 引用発明 上記「ア」における記載事項(ア)~(キ)及び「イ」の認定事項より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ガラスからなる支持体と、支持体表面に設けた接着処理層と、接着処理層を介して支持体に接着されたインキ転移層であって、全面を露光処理によつて未硬化のインキ転移層を硬化させたインキ転移層と、インキ転移層の表面が露出するまで完全に除去することによつて深さ一定の凹部が形成された、インキ転移層と同一の原料および組成物を使用し光硬化してなる、インキ転移層の上に設けられた、凹部形成層とからなり、凹部の底面はインキ転移層であるグラビアドライオフセツト印刷の印刷版とする感光性樹脂凹版材。」 (2)引用文献3 ア 記載事項 当審拒絶理由において引用した本願の出願前に公開された特開2013-71334号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0007】 そこで、発明者は、このような現象が発生せずに所望の凹部パターン内に満たされたインキを安定してインキ剥離性の転写層を有する転写体へインキの転移が確実かつ均等に行われ、更に転写体を被印刷体に圧着して転写体上におけるインキ皮膜のパターンを被印刷体に転写することが安定して行われ、しかも、膜厚の細線を可能にするためには、凹部パターンを形成するガラス版や金属版に空気が容易に逃げられる工夫が必要であることに着目した。」 (イ)「【0037】 図19は、本発明の他の実施形態のグラビアオフセット印刷用凹版102であって、例えば、ガラスビーズまたはアルミナ、弾力性のある樹脂に研磨剤をまぶした粒状の砂をエアー圧で吹き付けるブラスト加工法によって、転写体105を作用させる凹版102の面に0.01から0.1ミクロン程度の細かい凹凸を全面的に形成したものである。このため、凹部パターン101のエッジ部121にも細かい凹凸からなる凹凸部が形成され、この部分で後述する凹部パターンのインキ領域から抜くための空気抜き用通路を形成する。 【0038】 図20は、図19のものに、さらに時間をかけてブラスト加工を加え、全面を削りもしくは腐食を行い、凹部パターン101のエッジ部121の角が滑らかになった状態にしたものである。凹部パターン101のエッジ部121は角が滑らかになった状態の欠けまたは凹部が形成される。この部分で後述する凹部パターンのインキ領域から抜くための空気抜き用通路を形成する。」 イ 引用文献3に記載の技術事項 上記「ア」における記載事項からみて、引用文献3には次の技術事項(以下「引用文献3に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「グラビアオフセット印刷用凹版102の凹版102の面に0.01から0.1ミクロン程度の細かい凹凸を全面的に形成したものに、さらに時間をかけてブラスト加工を加え、全面を削りもしくは腐食を行い、凹部パターン101のエッジ部121の角が滑らかになった状態にすること。」 2 対比・判断 (1)本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「ガラスからなる支持体」、「接着処理層」は、それぞれ、本願発明1の「ガラス板で形成されたベース層(3)」、「接着層(4)」に相当する。 また、引用発明の「グラビアオフセツト印刷の印刷版とする感光性樹脂凹版材」は、後述する相違点は別にして、本願発明の「グラビアオフセット印刷」に相当する。 イ 引用発明の「凹部」は、本願発明の「パターン凹部(1)」と「凹部」である点で共通する。 ウ 引用発明の「インキ転移層」は「凹部の底面」である一方、「凹部が形成された」「凹部形成層」が「凹部」をなすものであることからみて、「インキ転移層」と「凹部形成層」とからなる「層」をなすとともに、これらが併せて凹部を形成するとみることができる。 したがって、引用発明の「インキ転移層」と「凹部が形成された」「凹部形成層」とは、本願発明の「凹部(1)が形成されたパターン層(2)」と、「凹部(1)」「が形成された」「層(2)」である点で共通する。 エ 引用発明は、「凹部の底面」が「インキ転移層である」から、本願発明の「パターン凹部(1)」と引用発明の「凹部」とは、「底面を備える」ものである点で共通する。 オ 引用発明において、「凹部形成層」が「上に設けられた」「インキ転移層」が「接着処理層を介して支持体に接着され」ていることは、上記「ウ」において論じたことからすると、本願発明の「層(2)が、接着層(4)を介してベース層(3)に接着固定されて」いることに相当する。 カ 引用発明の、「凹部」が「インキ転移層」と「凹部形成層」により「凹部を形成する」こと、かつ、「凹部形成層」が「インキ転移層と同一の原料および組成物を使用し光硬化してなる」ものであることからみて、当該「凹部」の側面と底面とは「同一の組成物の」「感光性樹脂層」からなるといえるから、本願発明の「凹部(1)」と引用発明の「凹部」とは、「凹部(1)内の表面は、層(2)を形成する素材で構成され」るものである点において共通する。 キ 上記「イ」で論じたことに加え、引用発明において、接着処理層が支持体とインキ転移層底面との間に位置することからみて、引用発明の「インキ転移層」が「凹部の底面」であることは、本願発明の「凹部(1)の底面には、接着層(4)が露出されて」いないことに相当する。 (2)一致点及び相違点について 以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、 「 底面を備える凹部(1)が形成された層(2)と、ガラス板で形成されたベース層(3)とを備えているグラビアオフセット印刷用凹版であって、 層(2)が、接着層(4)を介してベース層(3)に接着固定されており、 凹部(1)内の表面は、層(2)を形成する素材で構成され、凹部(1)の底面には、接着層(4)が露出されていない、 グラビアオフセット印刷用凹版。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 上記「(1)イ」に関し、本願発明は、「凹部(1)」が「一群の溝を有するパターン凹部(1)」であるのに対し、引用発明では、「凹部」が「一群の溝を有するパターン」凹部であるとは特定されていない点。 [相違点2] 上記「(1)ウ」に関し、本願発明1は、「層(2)」が「パターン層(2)」であるのに対し、引用発明は、「インキ転移層」と「凹部が形成された」「凹部形成層」とを併せたものは、「層」ではあるものの「パターン」層であるとは特定されていない点。 [相違点3] パターン凹部に関して、本願発明が「パターン凹部(1)の開口面側の出隅部分に、部分円弧状の丸面部(9)が形成されている」のに対して、引用発明は当該構成を備えていない点。 (3)判断 上記相違点1~3について検討する。 ア 相違点1及び相違点2について 相違点1と相違点2は、いずれも「パターン」に関するものであるから併せて検討する。 引用発明の「感光性樹脂凹版材」は「グラビアドライオフセツト印刷」に用いられるものであって、引用発明の「凹版材」の「凹部」が、印刷における“像”を形成するものであって、当該凹部に保持したインキを被印刷物に転写するためのものであることからすれば、当該「凹部」を「一群の溝を有するパターン」とすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項であるか、あるいは、当該「凹部」は印刷のための凹部として当然に「一群の溝」として「パターン」をなすものである。 そして、引用発明において「凹部」を「一群の溝を有するパターン」とし得るか、あるいは、そのような態様を備えるものであることからすれば、引用発明の「インキ転移層」と「凹部が形成された」「凹部形成層」とを併せたものは、本願発明の「パターン層」となし得るといえるか、あるいは、本願発明の「パターン層」に相当すると認められる。 してみると、引用発明において、上記相違点1及び上記相違点2の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるか、あるいは、上記相違点1及び上記相違点2は実質的に相違点ではない。 イ 相違点3について 次に相違点3について検討すると、引用文献3に記載の技術事項における「凹部パターン」、「エッジ部121」は、それぞれ本願発明の「パターン凹部(1)」、「開口面側の出隅部分」に相当する。 また、引用文献3に記載の技術事項における「角が滑らかになった状態にすること」、「グラビアオフセット印刷方式で使用するところの、凹部パターン101を彫刻した凹版」は、それぞれ本願発明の「部分円弧状の丸面部(9)」を「形成」すること、「グラビアオフセット印刷用凹版」に相当し、上記相違点に係る構成を備えていると認められる。 そして、引用発明と引用文献3に記載の技術事項とは、グラビアオフセット印刷用凹版という同一の技術分野に属するものであり、凹部パターン内に満たされたインキを転写体へのインキの転移が安定して確実に行われるようにする点において課題が共通するから、引用発明の凹部に対し引用文献3に記載の技術事項を適用して相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者であれば容易に予測し得る程度のものである。 (4)審判請求人の主張について 審判請求人は審判請求書において、次のとおりの主張をしている。 ア「 しかしながら、各引用文献には、今回補正した本願発明の構成、すなわち、底面を備える一群の溝を有するパターン凹部が形成されたパターン層が、接着層を介してベース層に接着固定され、パターン凹部の底面には接着層が露出されていない構成については記載されていません。」 イ「 これに対して、引用文献1では、凹部が凹部形成層(感光性樹脂層)とインキ転移層との2つの層で構成、つまり、凹部における側面が凹部形成層(感光性樹脂層)によって構成され、凹部における底面がインキ転移層によって構成されるので、印刷対象の充填と転写に適した凹部の設定が困難となります。」 ウ「 なお、引用文献2ないし4には、凹部が形成された印刷用凹版が開示されており、該印刷用凹版の凹部は底面を備えているものの、これら印刷用凹版は凹部が形成された材質(基板・基材)のみで構成され、印刷用凹版(基板・基材)の下面(凹部が形成された面とは反対側の面)側には別の材質を有さない構成ですので、凹部が2つの材質(層)で構成されるとともに、凹部を構成する2つの材質(層)以外に複数の材質(層)が積層して構成される引用文献1に記載の発明に、凹部が形成された1つの材質(基板、基材)のみで構成される引用文献2ないし4に記載の発明を適用することはできないものと思料いたします。」 まず、上記主張「ア」についてみると、上記「(1)ウ」及び「(3)ア」において論じたとおり、「インキ転移層」と「凹部形成層」とを併せたものは、本願発明の「パターン層(2)」に相当するとみることができるから、引用発明は「底面を備える一群の溝を有するパターン凹部が形成されたパターン層が、接着層を介してベース層に接着固定され」るとの構成を備えるものであるといえるし、上記「(1)カ」において論じたとおり、引用発明において「インキ転移層」が「凹部の底面」であることは、本願発明の「パターン凹部(1)の底面には、接着層(4)が露出されて」いないことに相当するといえるから、引用発明が上記の記載されていないとする構成を備えていると認められ、請求人の当該主張「ア」は当を得ていないものであるといえる。 また、上記主張「イ」についてみると、上記「(1)オ」において論じたとおり、引用発明の「凹部」は「インキ転移層」と「凹部形成層」により形成されるものであり、かつ、「インキ転移層と同じ組成物の感光性樹脂層」を用いて「凹部形成層」からなることからみて、当該「凹部」の側面と底面とは「同じ組成物の感光性樹脂層」からなるものであって、上記「1(1)ア(イ)」のとおり、引用発明は、インキ転移層を設けることにより、設けない場合よりもインキの転移性が長時間均一性、安定性に良好であるものとしているのであるから、請求人の主張は失当である。 さらに、上記主張「ウ」についてみると、上記引用文献3に記載の技術事項として引用された構成は、相違点におけるパターン凹部(1)の開口面側の出隅部分の形状に係るものであって、印刷用凹版の積層構造とは関係のない部分に対し適用されるものであるから、請求人の当該主張「ウ」は当を得ていないものであるといえる。 3 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 上記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、上記の結論のとおり審決する。

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2021-014090

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    共通の審決分類: 121・B41N、537・B41N
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