2021-012241
無線システムにおける前方誤り訂正符号選択
- 審判番号
- 2021-012241
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-518243外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月13日
- 審決日
- 2022年08月12日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エイ・ティ・アンド・ティ インテレクチュアル プロパティ アイ,エル.ピー.
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】吉澤 弘司
- 【請求人代理人】三村 治彦
- 【請求人代理人】岡部 洋
- 分類
- P18 .121-WZ (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年10月4日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 2年 7月30日付け 拒絶理由通知書
11月13日 意見書・手続補正書
令和 3年 4月30日付け 拒絶査定
9月13日 審判請求書・手続補正書
12月24日 前置報告書
令和 4年 3月 4日付け 拒絶理由通知書
6月 6日 意見書・手続補正書
以下では、令和3年4月30日付け拒絶査定のことを「原査定」という。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年6月6日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】プロセッサと、前記プロセッサによって実行されると、無線ネットワークの第1の無線システム特性を取得することと、前記第1の無線システム特性に基づいて第1の前方誤り訂正符号を決定することと、第1のユーザー機器とネットワークデバイスの無線アクセスネットワークデバイスとの間の第1の通信に前記第1の前方誤り訂正符号を用いることと、を含む動作を実行する命令を記憶するメモリと、を備え、前記第1の前方誤り訂正符号を用いることは、第2の前方誤り訂正符号による誤り訂正ビットの搬送を停止するように、および、前記第1の前方誤り訂正符号による前記誤り訂正ビットの搬送を開始するように前記第1の通信を変更することを含む、システム。」
第3 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1~3、6、7、15及び18に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
請求項4、5、8~14、16及び17に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載の発明及び引用文献3に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
引用文献1.特開平9-116486号公報
引用文献2.特開平9-298526号公報
引用文献3.特開2009-188926号公報(周知技術を示す文献)
第4 文献の記載事項
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1 文献1の記載事項
(1)原査定で引用された特開平9-116486号公報(以下、「文献1」という。)には、以下の事項(下線は強調のため当審にて付与した。以下同様。)が記載されている。
ア 「【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明が適用される大ゾーン方式の無線伝送システムの構成図であり、移動局2と固定局3はそれぞれ上り伝送路、下り伝送路からなる無線伝送路で中継局1と接続されている。そして、詳細は後述するように、中継局1では、移動局2と固定局3からの信号を受信して上り伝送路における誤り率(エラーレート)を検出し、この検出誤り率に基づいて自局に備えられている誤り訂正方法を切り換え、かつ同時に誤り訂正切換信号を下り伝送路を通して移動局2と固定局3に送信する。移動局2と固定局3はこの誤り訂正切換信号を受信すると、自局の誤り訂正方法を切り換え、以降はこの切り換えた誤り訂正方法により中継局1に対する無線伝送を実行する。
【0009】図2は前記中継局1と、移動局2とにおける本発明に関係する部分の内部構成を示すブロック図である。なお、固定局3は移動局2と同じ構成であるので、図示は省略する。中継局1には、移動局2や固定局3との間で無線接続される無線部11と、この無線部11で受信した信号を復号し、かつその際に誤り率を検出してこの検出情報を出力するチャンネルコーデック12と、この検出誤り率を一定の基準値と比較し、検出誤り率が基準値よりも劣化されたときに劣化情報を出力する上りエラーレート監視部13と、この劣化情報が入力されたときに誤り訂正方法を切り換える切換信号を前記チャンネルコーデック12に対して出力する誤り訂正方法切換部14と、前記各部を制御するためのCPU15が備えられる。
イ 「【0013】なお、この実施形態では、前記中継局1のチャンネルコーデック12に備えられる複数の誤り訂正方法と、移動局2の誤り訂正符号化・復号化部22に備えられる複数の誤り訂正方法は、それぞれ同一の順位が設定されており、この順位に従って順序的に選択されるように構成されている。【0014】このように構成される中継局1、移動局2、及び固定局3で構成される大ゾーン方式の通信伝送システムでは、図3にフローチャートを示すように、中継局1においては、無線部11で受信した移動局2や固定局3からの上り伝送路での誤り率、すなわち上りエラーレートを常時チャンネルコーデック12において検出する。このときには、予め無線伝送システムにおいて設定されている第1の順位の誤り訂正符号を用いての無線伝送が行われる。そして、この誤り率BERは上りエラーレート監視部13において基準値と比較され、誤り率BERが基準値よりも小さいときには、無線伝送路の回線品質が良好であるとし、現在の誤り訂正方法による無線伝送を継続させる。【0015】一方、誤り率BERが基準値よりも大きいときには、無線伝送路の回線品質が劣化されたとし、誤り訂正方法切換部14は切換信号をチャンネルコーデック12に送出する。チャンネルコーデック12では、この切換信号を無線部11により下り伝送路を開始移動局2及び固定局3に送信する。また、これと同時にチャンネルコーデックでは切換信号に基づいて、誤り訂正符号を第2の順位の符号に切り換える。そして、以降はこの切り換えた誤り訂正符号を用いて誤り訂正の符号化と復号化を実行する。」
ウ 図1
[図:0001392649000001.jpg]
エ 図2
[図:0001392649000002.jpg]
(2)前記(1)によれば、文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照での便宜のため、引用発明を構成毎に分説し、それぞれの構成にA~Iの記号を付した。
「A 大ゾーン方式の無線伝送システムであって(【0008】)、B 移動局2と固定局3はそれぞれ上り伝送路、下り伝送路からなる無線伝送路で中継局1と接続されており(【0008】)、C 固定局3は移動局2と同じ構成であり(【0009】)、D 中継局1には、続きを表示(全15行)D1 移動局2や固定局3との間で無線接続される無線部11と、D2 この無線部11で受信した信号を復号し、かつその際に誤り率を検出してこの検出情報を出力するチャンネルコーデック12と、D3 この検出誤り率を一定の基準値と比較し、検出誤り率が基準値よりも劣化されたときに劣化情報を出力する上りエラーレート監視部13と、D4 この劣化情報が入力されたときに誤り訂正方法を切り換える切換信号を前記チャンネルコーデック12に対して出力する誤り訂正方法切換部14と、D5 前記各部を制御するためのCPU15D6 が備えられ(【0009】)、E 前記中継局1のチャンネルコーデック12に備えられる複数の誤り訂正方法と、移動局2の誤り訂正符号化・復号化部22に備えられる複数の誤り訂正方法は、それぞれ同一の順位が設定されており、この順位に従って順序的に選択され(【0013】)、F 中継局1においては、無線部11で受信した移動局2や固定局3からの上り伝送路での誤り率、すなわち上りエラーレートを常時チャンネルコーデック12において検出し、このときには、予め無線伝送システムにおいて設定されている第1の順位の誤り訂正符号を用いての無線伝送が行われ、この誤り率BERは上りエラーレート監視部13において基準値と比較され(【0014】)、G 誤り率BERが基準値よりも小さいときには、無線伝送路の回線品質が良好であるとし、現在の誤り訂正方法による無線伝送を継続させ(【0014】)、H 誤り率BERが基準値よりも大きいときには、無線伝送路の回線品質が劣化されたとし、誤り訂正方法切換部14は切換信号をチャンネルコーデック12に送出し、チャンネルコーデック12では、この切換信号を無線部11により下り伝送路を開始移動局2及び固定局3に送信し、これと同時にチャンネルコーデックでは切換信号に基づいて、誤り訂正符号を第2の順位の符号に切り換え、以降はこの切り換えた誤り訂正符号を用いて誤り訂正の符号化と復号化を実行する(【0015】)、I 無線伝送システム。」
2 文献2の記載事項
(1)原査定で周知技術を示すために引用された特開2009-188926号公報(以下、「文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】IMT-Advanced(International Mobile Telecommunication Advanced)システムは、IMT-2000システムから進化した第4世代移動通信システムであり、より向上した移動通信サービスの提供を目標とする。【0003】IMT-Advancedシステムでは、IMT-2000システムより高い周波数帯が割り当てられることが予想される。よって、IMT-Advancedシステムでは、IMT-2000システムと比較して伝搬損失が高くなるため、1つの無線通信基地局装置(Evolved NodeB:eNB)が提供するセルカバレッジは制限される可能性がある。そこで現在、米国のIEEE802.16jおよび欧州のWINNER Project等において、eNBのセルカバレッジを拡大させてセルエッジでの無線通信端末装置(User Equipment:UE)のパフォーマンスを改善するために、無線通信中継装置の設置が検討されている。IEEE802.16jで検討されている無線通信中継装置は、中継局(Relay Station:RS)と呼ばれる。」
イ 「【0006】また、IMT-Advancedシステムでは、ARQに前方誤り訂正(Forward Error Correction:FEC)を併用したハイブリッドARQ(Hybrid ARQ:HARQ)を適用することが検討されている。HARQにはチェイス合成(Chase Combining)法およびIR(Incremental Redundancy)法がある。」
ウ 「【0024】(実施の形態1)図2は、本実施の形態に係るIMT-Advancedシステムの構成を示す図である。図2に示すIMT-Advancedシステムは、UE100、RS130、eNB160、コアネットワーク(Core Network:CN)を具備する。【0025】eNB160は、無線リソースの割当および管理を担当するとともに、アップリンク(Uplink:UL)を介してUE100の物理階層から転送される情報を受信し、ダウンリンクを介してUE100にデータを転送する。すなわち、eNB160は、UE100に対して無線アクセスネットワークのアクセスポイントの役割を担当する。」
(2)前記(1)によれば、次の技術(以下、「周知技術」という。)が周知であったと認められる。
「第4世代移動通信システムであるIMT-Advancedシステムであって、ARQに前方誤り訂正(FEC)を併用したHARQを適用することが検討されており、UE100(User Equipment)、eNB160(無線通信基地局装置)を具備し、eNB160は、アップリンク(Uplink:UL)を介してUE100の物理階層から転送される情報を受信し、ダウンリンクを介してUE100にデータを転送し、eNB160は、UE100に対して無線アクセスネットワークのアクセスポイントの役割を担当する、IMT-Advancedシステム。」
第5 本願発明と引用発明との対比
1 引用発明の「CPU15」(分説D5)は、本願発明の「プロセッサ」に相当し、本願発明と引用発明とは「プロセッサ」を備える点で一致する。
2(1)引用発明の「大ゾーン方式の無線伝送システム」(分説A)は、「中継局1」と「移動局2」及び「固定局3」とを無線伝送路で接続しているから、無線ネットワークであるといえる。
(2)引用発明の「検出情報」は、受信した信号を復号した際の誤り率を検出した情報であり(分説D2)、「検出誤り率」(分説D3)と同義であると認められる。
引用発明の「検出情報」及び「検出誤り率」は、「無線伝送システム」(分説A)における中継局と移動局及び固定局との間の無線接続(分説D1)の伝送誤り率であるから無線システムの特性であるといえる。
そして、前記(1)に鑑みれば、引用発明の「検出情報」及び「検出誤り率」は、無線ネットワークの無線システム特性である。
そうすると、引用発明の「検出情報」及び「検出誤り率」は、本願発明の「無線ネットワークの第1の無線システム特性」に相当する。
(3)引用発明の「チャンネルコーデック12」は、「検出情報」として誤り率を検出している(分説D2)。
(4)他方、引用発明の「CPU15」は、「チャンネルコーデック12」を制御する(分説D5)。
そして、CPUが命令に従って動作を実行するものであること、及び、CPUに対する命令がメモリに記憶されることは、文献を示すまでもない技術常識であるから、引用発明は、当然、CPUへの命令を格納するメモリを備える。
そうすると、上記並びに前記(1)~(3)によれば、引用発明の「CPU15」は、メモリに記憶された命令に従って「チャンネルコーデック12」を制御して「無線伝送システム」の誤り率としての「検出情報」を取得させているといえるから、本願発明と引用発明とは「前記プロセッサによって実行されると」、「無線ネットワークの第1の無線システム特性を取得すること」「を含む動作を実行する命令を記憶するメモリ」を備える点で一致する。
3(1)引用発明は、「上りエラーレート監視部13」が「検出誤り率」を一定の基準値と比較して基準値よりも劣化したときに劣化情報を出力し(分説D3)、「誤り訂正方法切換部14」が劣化情報の入力を受けて誤り訂正方法を切り換える切換信号を「チャンネルコーデック12」に対して出力する(分説D4)という動作を行う。より具体的には、誤り率BERが基準値よりも小さいときには現在の誤り訂正方法(分説Fの「第1の順位の誤り訂正符号」)による無線伝送を継続させ(分説G)、誤り率BERが基準値よりも大きいときには誤り訂正符号を第2の順位の符号に切り換える(分説H)、という動作を行う。要するに、引用発明は、「上りエラーレート監視部13」、「誤り訂正方法切換部14」及び「チャンネルコーデック12」によって、「検出誤り率」に基づいて誤り訂正符号を「第2の順位の符号」に切り換えるという動作を行うものと認められる。
(2)引用発明の「第2の順位の符号」は、「チャンネルコーデック12に備えられる複数の誤り訂正方法」(分説E)の1つであると認められ、中継局1の無線部11が受信した信号を復号して誤り率を検出している(分説D2)から、伝送路で発生する誤りを受信側で訂正する誤り訂正のための符号、すなわち、前方誤り訂正符号であると認められる。
そうすると、引用発明の「第2の順位の符号」は、本願発明の「第1の前方誤り訂正符号」に相当する。
(3)他方、引用発明の「CPU15」は、「チャンネルコーデック12」、「上りエラーレート監視部13」及び「誤り訂正方法切換部14」を制御する(分説D5)。
そして、CPUが命令に従って動作を実行するものであること、及び、CPUに対する命令がメモリに記憶されることは、文献を示すまでもない技術常識であるから、引用発明は、当然、CPUへの命令を格納するメモリを備える。
そうすると、上記並びに前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記プロセッサによって実行されると」、「前記第1の無線システム特性に基づいて第1の前方誤り訂正符号を決定すること」「を含む動作を実行する命令を記憶するメモリ」を備える点で一致する。
4(1)引用発明は、「誤り訂正符号を第2の順位の符号に切り換え、以降はこの切り換えた誤り訂正符号を用いて誤り訂正の符号化と復号化を実行する」(分説H)ものである。
ここで、前記「符号化と復号化を実行する」対象が移動局2及び固定局3と中継局1とを接続する「上り伝送路、下り伝送路からなる無線伝送路」(分説B)での通信であることは明らかである。
また、前記「符号化と復号化を実行する」主体は、前記3(2)によれば、「チャンネルコーデック12」である。
すなわち、引用発明の「チャンネルコーデック12」は、「移動局2」と「中継局1」との間の「無線伝送路」での通信に「第2の順位の符号」を用いるものである。
(2)本願発明の「ユーザー機器」に関して、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0075】その上、「ユーザー機器(UE)」、「モバイル局」、「モバイル加入者局」、「加入者機器」、「アクセス端末」、「端末」、「ハンドセット」のような用語及び類似の術語は、無線通信サービスの加入者又はユーザーが、データ、制御、音声、ビデオ、サウンド、ゲーミング、又は実質的に任意のデータストリーム若しくはシグナリングストリームを受信又は伝達するのに利用する無線デバイスを指す。上記用語は、本主題の明細書及び関連図面において交換可能に利用される。」
上記記載によれば、「ユーザー機器」という用語は、「モバイル局」と交換可能とされており、「モバイル局」の「モバイル」は、明らかに英語のmobileのことであるから、「モバイル局」は「移動局」と言い換えることができる。
そうすると、引用発明の「移動局2」は、本願発明の「ユーザー機器」に対応し、該「移動局2」と該「ユーザー機器」とは、無線通信サービスの加入者又はユーザーがデータストリーム若しくはシグナリングストリームを受信又は伝達するのに利用する無線デバイス(以下、「加入者無線デバイス」という。)である点で共通する。
(3)前記2(1)のとおり、引用発明の「大ゾーン方式の無線伝送システム」(分説A)は、無線ネットワークであるといえる。
そうすると、引用発明の「中継局1」は、無線ネットワークを構成する機器であるから、ネットワークデバイスであるといえる。
よって、本願発明の「ネットワークデバイスの無線アクセスネットワークデバイス」と、引用発明の「中継局1」とは、「ネットワークデバイス」である点で共通する。
(4)他方、引用発明の「CPU15」は、「チャンネルコーデック12」を制御する(分説D5)。
そして、CPUが命令に従って動作を実行するものであること、及び、CPUに対する命令がメモリに記憶されることは、文献を示すまでもない技術常識であるから、引用発明は、当然、CPUへの命令を格納するメモリを備える。
そうすると、上記並びに前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記プロセッサによって実行されると」、「加入者無線デバイスとネットワークデバイスとの間の第1の通信に前記第1の前方誤り訂正符号を用いること」「を含む動作を実行する命令を記憶するメモリ」を備える点で一致する。
5(1)引用発明は、「第1の順位の誤り訂正符号を用いて」行われた無線伝送の誤り率BERを検出し(分説F)、誤り率BERが基準値よりも大きいときには、誤り訂正符号を第2の順位の符号に切り換え、以降はこの切り換えた誤り訂正符号を用いて誤り訂正の符号化と復号化を実行する(分説H)ものである。「切り換える」とは「取りかえて別のものにする」(広辞苑)ことを意味するから、引用発明は、誤り率BERが基準値よりも大きいために「第2の順位の符号」を使用すると決定した際に、「第1の順位の誤り訂正符号」の使用を停止し、「第2の順位の符号」の使用を開始するように無線伝送路による通信を変更するものである。
(2)技術常識によれば、誤り訂正符号を用いることにより、伝送すべき情報データから、実際に伝送される符号語が作成される。
従って、引用発明において「第1の順位の誤り訂正符号」を使用した場合、該符号による符号語が作成されて、該符号語が無線通信路によって搬送されることが明らかである。同様に、引用発明において「第2の順位の符号」を使用した場合、該符号による符号語が作成されて、該符号語が無線通信路によって搬送されることが明らかである。
そうすると、上記及び前記(1)によれば、引用発明は、「第2の順位の符号」を使用すると決定した際に、「第1の順位の誤り訂正符号」による符号語の搬送を停止し、「第2の順位の符号」による符号語の搬送を開始するように無線伝送路による通信を変更するものである。
(3)引用発明の「第1の順位の誤り訂正符号」は、本願発明の「第2の前方誤り訂正符号」に相当する。
また、本願発明の「誤り訂正ビット」は、技術常識に照らして、使用した誤り訂正符号によって作成された符号語の一部であることが明らかである。
そうすると、上記及び前記(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記第1の前方誤り訂正符号を用いることは、第2の前方誤り訂正符号による符号語の少なくとも一部の搬送を停止するように、および、前記第1の前方誤り訂正符号による符号語の少なくとも一部の搬送を開始するように前記第1の通信を変更することを含む」点で共通する。
6 引用発明は「大ゾーン方式の無線伝送システム」である。
よって、本願発明と引用発明とは「システム」である点で一致する。
7 前記1~6によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「プロセッサと、前記プロセッサによって実行されると、無線ネットワークの第1の無線システム特性を取得することと、前記第1の無線システム特性に基づいて第1の前方誤り訂正符号を決定することと、加入者無線デバイスとネットワークデバイスとの間の第1の通信に前記第1の前方誤り訂正符号を用いることと、を含む動作を実行する命令を記憶するメモリと、を備え、前記第1の前方誤り訂正符号を用いることは、第2の前方誤り訂正符号による符号語の少なくとも一部の搬送を停止するように、および、前記第1の前方誤り訂正符号による符号語の少なくとも一部の搬送を開始するように前記第1の通信を変更することを含む、システム。」である点。
〈相違点1〉
通信に関わるデバイスが、本願発明では「第1のユーザー機器」及び「ネットワークデバイスの無線アクセスネットワークデバイス」であるのに対し、引用発明では「移動局2」及び「中継局1」である点。
〈相違点2〉
誤り訂正符号を用いた際に搬送されるものが、本願発明では「誤り訂正ビット」であるのに対し、引用発明では符号語(前記5(2)を参照)である点。
第6 判断
1 相違点1について
引用発明の「中継局1」は、「大ゾーン方式の無線伝送システム」における中継局であり、これは、技術常識によれば、移動無線通信システムの基地局の一種であると認められる。
他方、基地局を用いる移動無線通信システムとして、IMT-Advancedシステムは周知である(前記第4、2(2))。
また、IMT-Advancedシステムでは、引用発明と同様に前方誤り訂正を適用することが検討されていた(前記第4、2(2))。
そうすると、引用発明の「大ゾーン方式の無線伝送システム」に代えて周知のIMT-Advancedシステムのような移動無線通信システムを用いることは、容易になし得る。
そして、引用発明のシステムをIMT-Advancedシステムに代えることにより、引用発明の「中継局1」及び「移動局2」は、当然、eNB160及びUE100に代わる。
IMT-AdvancedシステムのeNB160は、無線アクセスネットワークのアクセスポイント、すなわち、無線アクセスネットワークデバイスである。
IMT-AdvancedシステムのUE100は、User Equipmentのことであるから、ユーザー機器であり、これを「第1のユーザー機器」と称することは任意である。
以上によれば、本願発明の相違点1に係る構成は、当業者が容易になし得る。
2 相違点2について
誤り訂正の技術分野において、情報ビットに検査ビットを付加して符号語とする誤り訂正符号は文献を挙げるまでもない周知技術であるから、引用発明の符号語を、情報ビット及び検査ビットからなる符号語として構成することは容易になし得ることであり、この場合の検査ビットは誤り訂正に用いられるから、これを「誤り訂正ビット」と呼ぶことは任意である。
3 効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明及び文献2に記載された技術の奏する効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別のものとは認められない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-012241