特許拒絶査定不服審判
2021-011436
自動変速機
- 審判番号
- 2021-011436
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-138492外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月27日
- 審決日
- 2022年07月20日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (F16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-138492「自動変速機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月 7日出願公開、特開2019- 19886、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願は、平成29年7月14日の出願であって、令和3年2月10日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月14日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年6月2日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。
これに対し、同年8月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1~3に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2013-189992号公報
引用文献2:特開2006-97767号公報
第3 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、令和3年4月14日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりである。
【請求項1】
オイルクーラと、
電動オイルポンプと、
プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリに巻きかけられた動力伝達部材と、を有するバリエータと、を有し、
前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線は、前記セカンダリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記オイルクーラとの間に位置し、
前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線は、前記セカンダリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記電動オイルポンプとの間に位置し、
前記電動オイルポンプの前記プライマリプーリ側の端部は、前記オイルクーラの前記プライマリプーリ側の端部よりも、前記プライマリプーリに近い位置に配置されていることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1において、
前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記オイルクーラとの間に第1壁を有し、
前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記電動オイルポンプとの間に第2壁を有し、
前記第2壁の前記電動オイルポンプ側の表面は、前記第1壁の前記オイルクーラ側の表面よりも、前記プライマリプーリに近い位置に配置することを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2壁に形成された油路を介して、前記電動オイルポンプからコントロールバルブユニットへ作動油を供給することを特徴とする自動変速機。
第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
1.引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、車両に関し、より特定的には、信号待ちや一時停止時に、エンジンのアイドリングを自動的にストップする機能(アイドリングストップ機能)を備えた車両に関する。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1~3に開示されるように、アイドリングストップ機能を備えた車両の自動変速機に、エンジンの一時停止時に変速機内にオイルを供給するための電動オイルポンプが設けられる構造が知られている。このような構造を備える車両において、電動オイルポンプの作動を制御するためのドライバ部と、エンジンルーム内のラジエータとの位置関係によっては、ラジエータから排出される高温の空気がドライバ部の冷却に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0009】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、電動オイルポンプの作動を制御するためのドライバ部の冷却性能を良好とする車両を提供することである。」
ウ「【0027】
自動変速機21は、エンジン14から入力された動力を、駆動輪に対して、減速または加速して出力したり逆回転にして出力したりする。自動変速機21は、変速比を無段階に(連続的に)変化させる無段変速機(Continuously variable transmission:CVT)である。エンジン14と自動変速機21とは、互いに締結され、一体とされている。エンジン14と自動変速機21とは、エンジンルーム12内で車両幅方向に並んでいる。」
エ「【0030】
車両100は、信号待ちや一時停止時に、エンジンのアイドリングを自動的にストップする機能(アイドリングストップ機能)を有する。
【0031】
車両100は、電動オイルポンプ31をさらに有する。電動オイルポンプ31は、自動変速機21に設けられている。電動オイルポンプ31は、アイドリングストップ時に、エンジン14の運転時に作動する通常のオイルポンプ(後述するCVTオイルポンプ51)に替わって作動する。以下、電動オイルポンプ31の動作について説明する。
【0032】
図2から図4は、図1中の電動オイルポンプの動作を説明するための回路図である。図2から図4を参照して、自動変速機21は、オイルパン54、オイルストレーナ55、CVTオイルポンプ51、CVTバルブボディ53および逆止弁52を有する。
【0033】
オイルパン54には、オイルが貯留されている。オイルは、ATF(Automatic transmission fluid)と呼ばれ、自動変速機21に内蔵された無段変速機構部の作動油として用いられたり、図示されないトルクコンバータに供給されたり、機械要素間の焼き付き防止のための潤滑油として機能したりする。オイルストレーナ55は、オイルパン54から自動変速機21の各部位に供給されるオイル中の異物を除去する。
【0034】
CVTオイルポンプ51は、オイルパン54に貯留されたオイルを吸引し、自動変速機21の各部位に供給する。CVTオイルポンプ51は、エンジン14から自動変速機21に伝達された動力によって駆動するギヤ式ポンプである。CVTバルブボディ53には、複数のソレノイドが内蔵されており、オイルパン54から自動変速機21の各部位に供給する油圧を制御する。逆止弁52は、電動オイルポンプ31のオイル吐出部に設けられている。
【0035】
電動オイルポンプ31は、オイルを圧送するポンプ部32と、ポンプ部32を回転駆動させるモータ部33とから構成されている。車両100は、オイルポンプモータドライバ部34をさらに有する。オイルポンプモータドライバ部34は、電動オイルポンプ31の作動を制御するためのドライバ部として設けられている。」
オ「【0040】
図5は、図1中の車両に搭載された自動変速機を示す斜視図である。図5中において、矢印103に示す方向にエンジン14が存在し、矢印102に示す方向(車両前方側)にラジエータ61が存在する。図6は、図5中の自動変速機に設けられた電動オイルポンプおよびオイルポンプモータドライバ部を示す断面図である。
【0041】
図5および図6を参照して、自動変速機21は、第1ケース体としてのケース56と、第2ケース体としてのハウジング57と、第3ケース体としてのリヤケース58とを有する。
【0042】
ケース56に対してエンジン14の側にハウジング57が配置され、その反対側にリヤケース58が配置されている。ケース56は、両端が開口された筒形状を有する。ケース56には、主に、プーリやベルト、各種ギヤなどから構成される無段変速機構部や、ディファレンシャル機構部が収容されている。ハウジング57は、筒状に延びて、ケース56とエンジン14との間を接続している。ハウジング57には、主に、トルクコンバータが収容されている。リヤケース58は、ケース56の一方の開口端を塞ぐように設けられている。」
カ「【0045】
オイルポンプモータドライバ部34は、電動オイルポンプ31と一体に設けられている。オイルポンプモータドライバ部34は、モータ部33の回転軸101の延長上に位置して電動オイルポンプ31に設けられている。電動オイルポンプ31は、オイルパン54の直上に設けられている。
【0046】
オイルポンプモータドライバ部34は、モータ部33に対してポンプ部32の反対側に設けられている。ポンプ部32が自動変速機21に埋設され、モータ部33およびオイルポンプモータドライバ部34が自動変速機21から突出する。オイルポンプモータドライバ部34は、その自動変速機21から突出する先端に設けられている。オイルポンプモータドライバ部34が一体に設けられた電動オイルポンプ31は、全体として、回転軸101に沿って柱状に延伸する形状を有する。」
キ「【0062】
図10は、図5中の自動変速機をエンジン側から見た側面図である。図11は、図5中の自動変速機を車両前方側から見た正面図である。図10および図11中では、自動変速機21から図5中のハウジング57が取り外された状態が示されている。図12は、図10および図11中の自動変速機から電動オイルポンプを取り外す際の解体組み立て図である。」
ク「【図5】
[図:0001387137000001.jpg]
」
ケ「【図10】
[図:0001387137000002.jpg]
」
コ 摘記事項オ及びケから、【図10】には、ケース56に収納されたプーリとベルトなどから構成される無段変速機構部が看取できる。
以上の事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
(引用発明)
「電動オイルポンプ31と、
プーリとベルトなどから構成される無段変速機構部と、を有し、
電動オイルポンプ31は、オイルパン54の直上に設けられている自動変速機21。」
2.引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機のオイルポンプ配置構造に関する。」
イ「【0009】
[自動変速機の概略]
図1は、本発明の自動変速機を表す概略断面図である。変速機ハウジング100は、サイドカバー110と変速機ケース120とトルクコンバータケース130とから構成される。変速機ハウジング100内には、エンジンからのトルクを増幅するトルクコンバータ200と、発進クラッチを有する前後進切換機構300と、入出力間で無段変速するベルト式無段変速機構400と、アイドラギヤ500と、ディファレンシャルギヤ600と、を備えている。また、各装置への圧油や潤滑油を供給する機構として、ベーンポンプ700と、オイルストレーナ710と、コントロールバルブユニット720と、オイルクーラ730(図2参照)と、を備えている。」
ウ「【0012】
ベルト式無段変速機構400は、前後進切換機構300から入力された回転と一体に回転するプライマリプーリ410(可動プーリ410a及び固定プーリ410b)と、駆動輪を所定の減速比で一体に回転するセカンダリプーリ420(可動プーリ420a及び固定プーリ420b)と、各プーリの溝間に巻回されたベルト430から構成されている。セカンダリプーリ420に設けられた、セカンダリプーリ軸30の端部には出力ギヤ40が固定され、アイドラギヤ500に噛み合わされる。なお、プライマリプーリ410は、本発明の入力側変速要素に相当する。」
エ「【0014】
ベーンポンプ700は、ロータと、このロータに偏心して取り付けられるカムリングと、ロータとカムリングにより構成される油室を仕切るベーンと、から構成されている。ベーンはロータの溝にはめ込まれ、その内側はロータ中心軸と各溝に設けられた油路に供給される作動油が、ロータ回転時の遠心力によりベーンをカムリングに押圧する。この構成により、ベーンをスプリングによりカムリングに押圧する構成のものに比べて、部品点数が少なく、また長寿命化が図れる。ロータのトルクコンバータ200側の端部にはドリブンスプロケット701が固定され、変速機入力軸20と一体に回転するドライブスプロケット50にチェーン51を介して連結される。
【0015】
ベーンポンプ700の吸入口側にはオイルストレーナ710が設けられ、吐出口側にはコントロールバルブユニット720が設けられる。コントロールバルブユニット720の上面には、複数の電磁制御弁及び各種センサ(油温センサ、液圧センサ等)である電子部品721が配置される。」
オ「【0018】
図2に示すように、ベルト式無段変速機構400は第1収装室121に収装される。ベルト式無段変速機構400はプライマリプーリ410が第1収装室121の前方側下部に収装され、セカンダリプーリ420が第1収装室121の後方側上部に収装される。また、第1収装室121の下部は開口しており、各装置を潤滑した潤滑油が開口部よりオイルパン740に排出される。
【0019】
また、図3に示すように第2収装室122に、アイドラギヤ500と、ディファレンシャルギヤ600とベーンポンプ700が収装される。」
カ「【図2】
[図:0001387137000003.jpg]
」
キ「【図3】
[図:0001387137000004.jpg]
」
第5 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「電動オイルポンプ31」は、本願発明1の「電動オイルポンプ」に相当する。
引用発明の「プーリとベルトなどから構成される無段変速機構部」は、無段変速機のプーリ及びベルトが「プライマリプーリ」、「セカンダリプーリ」、「プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻きかけられたベルト」からなることが技術常識であるから、本願発明1の「プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリに巻きかけられた動力伝達部材と、を有するバリエータ」に相当する。
引用発明の「自動変速機21」は、本願発明1の「自動変速機」に相当する。
してみると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「電動オイルポンプと、
プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリに巻きかけられた動力伝達部材と、を有するバリエータと、を有する自動変速機。」
(相違点)
本願発明1は、「オイルクーラ」を有し、
「前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線は、前記セカンダリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記オイルクーラとの間に位置し、
前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線は、前記セカンダリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記電動オイルポンプとの間に位置し、
前記電動オイルポンプの前記プライマリプーリ側の端部は、前記オイルクーラの前記プライマリプーリ側の端部よりも、前記プライマリプーリに近い位置に配置されている」のに対して、
引用発明は、「オイルクーラ」を有さず、「電動オイルポンプ31は、オイルパン54の直上に設けられている」点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、「オイルクーラ730」を備え、「プライマリプーリ410・・・と、駆動輪を所定の減速比で一体に回転するセカンダリプーリ420・・・と、各プーリの溝間に巻回されたベルト430」が記載されているとともに、【図2】から、プライマリプーリ410の軸中心を通る鉛直線がセカンダリプーリ420の軸中心を通る鉛直線とオイルクーラ730との間に位置することが看取できる。
しかしながら、引用文献2には、ベーンポンプ700が記載されているが、電動オイルポンプは、記載されていない。
してみると、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項を考慮しても、「前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線は、前記セカンダリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記電動オイルポンプとの間に位置」すること及び「前記電動オイルポンプの前記プライマリプーリ側の端部は、前記オイルクーラの前記プライマリプーリ側の端部よりも、前記プライマリプーリに近い位置に配置されている」ことは、いずれの文献にも記載も示唆もされておらず、当該構成により、「パワープラント共振により振動する電動オイルポンプ21の振幅が小さくなり、振動する電動オイルポンプ21が生じる騒音の音響パワーレベルが小さくなる。」(段落【0092】)という顕著な効果を奏するものであるから、設計的事項ということもできない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2~3について
本願発明2、3も、本願発明1の「前記プライマリプーリの軸中心を通る鉛直線は、前記セカンダリプーリの軸中心を通る鉛直線と、前記電動オイルポンプとの間に位置」すること及び「前記電動オイルポンプの前記プライマリプーリ側の端部は、前記オイルクーラの前記プライマリプーリ側の端部よりも、前記プライマリプーリに近い位置に配置されている」ことと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1~3は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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