特許拒絶査定不服審判
2021-010797
ギター
- 審判番号
- 2021-010797
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-572755
- 請求日
- 2021年08月12日
- 審決日
- 2022年09月05日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】範 云来
- 【請求人代理人】TRY国際特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 五十嵐 努
- 審判官 田中 啓介
- 分類
- P18 .121-Z (G10D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-572755「ギター」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月28日国際公開、WO2019/037507、令和 2年 9月 3日国内公表、特表2020-527247〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年8月22日、中国、2017年8月22日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年10月28日付け:拒絶理由通知書
令和3年 2月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 4月 5日付け:拒絶査定
令和3年 8月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
理由2 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1に対し、引用文献2ないし5
<引用文献等一覧>
引用文献2 "Atlansia / Victoria 48fret HALF PITCH (1/4 SOUND) Bass", [online], 2013年1月23日, [2020年10月28日検索], インターネット<URL: https://blog.goo.ne.jp/span_21/e/16baf94d99c06e0e983baefca48bf736>
引用文献3 米国特許出願公開第2009/0013848号明細書
引用文献4 特許第4450110号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献)
引用文献5 特表2005-529370号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年8月12日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
(符号A1ないしBは、本願発明を分説するため当審にて付与した。以下、符号A等を付した事項を「構成A」等という。)。
(本願発明)
「A1 ボディー(8)、指板(7)及びヘッド(1)を備え、
A2 前記ボディー(8)には、サウンドホール(9)が設けられ、
A3 前記指板(7)は、前記ボディー(8)と前記ヘッド(1)の間に取り付けられ、
A4 前記指板(7)の上方に縦方向に設置された6本の弦(6)は、一端が前記ボディー(8)のブリッジ(10)に固定され、他端が前記ヘッド(1)のチューニングペグ(3)に巻き付けられ、
A5 前記指板(7)には、二分音間隔となるようにフレット(5)が横方向に取り付けられる
A ギターであって、
B 前記2つのフレット(5)の間毎に、1本の付加フレット(4)が設けられ、四分音間隔となるように、前記フレット(5)と前記付加フレット(4)は、等間隔又は非等間隔で配置されている
A ことを特徴とするギター。」
第4 引用例の記載及び引用発明
1 引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された"Atlansia / Victoria 48fret HALF PITCH (1/4 SOUND) Bass", [online], 2013年1月23日, [2020年10月28日検索], インターネット<URL: https://blog.goo.ne.jp/span_21/e/16baf94d99c06e0e983baefca48bf736>(以下、「引用例」という。)には、写真と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した(以下、同様)。
(1)「
[図:0001393585000001.jpg]
」
(2)「先日、思わず衝動ぽちっとしてしまったこのベース。
アトランシアのヴィクトリアベースなのですが、
下の画像で分かるでしょうか。48フレットあります。
ネックがやたら長い訳ではありません。
通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間にもう1本。。。
つまり1/4音を正確に出す事が出来る優れもの!?なのです。」
(3)「
[図:0001393585000002.jpg]
」
(4)「
[図:0001393585000003.jpg]
」
(5)「特徴的なデザインのヘッド
[図:0001393585000004.jpg]
」
(6)「ブリッジ部分は各弦独立式。
[図:0001393585000005.jpg]
」
(7)「コントロール部はFホールにキレイに収まってます。
[図:0001393585000006.jpg]
」
上記(1)ないし(7)から、引用例には以下の事項が記載されている。
・上記(1)によれば、引用例にはヘッド、ネック、ボディを備え、4本の弦が張られた弦楽器が記載されている。また、上記(2)によれば、引用例の弦楽器はベースである。
・上記(5)によれば、ヘッドには、弦の先端を巻き付けるペグがあり、弦の張りを調整してチューニングできる構成であることが見て取れる。
・上記(3)によれば、ボディとヘッドの間には、ネックの表側に貼り付けられた指板があり、指板の上方には4本の弦が配置されている。
ここで、本願発明の指板の「縦方向」について、本願の図1を参照すると、「弦6」が配置された方向が指板の「縦方向」である。
そうすると、引用例の弦は、本願の図1の「弦6」と同じ方向に設置されており、引用例の4本の弦は指板の上方に縦方向に設置されたものといえる。
したがって、引用例のベースは、ボディとヘッドの間には、ネックの表側に取り付けられた指板があり、4本の弦が指板の上方に縦方向に設置されたものである。
・上記(2)によれば、引用例のベースは、指板に48フレットを有しており、通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間に、もう1本フレットを設けることによって1/4音を正確に出す事が出来るものである。
ここで、本願発明の指板の「横方向」について、本願の図1を参照すると、「フレット5」が取り付けられた方向が指板の「横方向」である。
そうすると、引用例のフレットは、本願の図1の「フレット5」と同じ方向に取り付けられており、引用例の指板は、横方向に48フレットが取り付けられたものといえる。
したがって、引用例のベースは、指板には横方向に48フレットが取り付けられており、通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間に、もう1本フレットを設けることによって1/4音を正確に出す事が出来るものである。
・上記(4)、(6)、(7)によれば、ボディにはビックアップ、各弦独立式弦のブリッジ部分、及び弦の設置部分を挟んで上下対称に2つの開口したFホールが設けられており、下方のFホールにはコントロール部が収まっていることが見て取れる。
・上記(6)によれば、ボディのブリッジは、弦の一端をボディに固定するものといえる。
2 引用発明
上記記載事項及び写真を勘案すると引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ヘッド、ネック、ボディを備え、4本の弦が張られたベースであって、
ヘッドには、弦の先端を巻き付けるペグがあり、弦の張りを調整してチューニングできる構成であり、
ボディとヘッドの間には、ネックの表側に取り付けられた指板があり、4本の弦が指板の上方に縦方向に設置されており、
指板には横方向に48フレットが取り付けられており、通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間に、もう1本フレットを設けることによって1/4音を正確に出す事が出来るものであり、
ボディにはビックアップ、各弦独立式弦のブリッジ部分、及び弦の設置部分を挟んで上下対称に2つの開口したFホールが設けられており、下方のFホールにはコントロール部が収まっており、
ボディのブリッジは、弦の一端をボディに固定するものである、
ベース。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)構成A1について
引用発明のベースは「ボディ」、「指板」、「ヘッド」を備えており、引用発明と本願発明は「ボディー、指板及びヘッドを備え」る点で共通する。
(2)構成A2について
引用発明のボディに設けられた「Fホール」は、通常「f」の形状をしたサウンドホールのことであるから、引用発明と本願発明は「前記ボディーには、サウンドホールが設けられ」ている点で共通する。
(3)構成A3について
引用発明のネックの「指板」は、ボディとヘッドの間に取り付けられたものであり、引用発明と本願発明は「前記指板は、前記ボディーと前記ヘッドの間に取り付けられ」ている点で共通する。
(4)構成A4、Aについて
引用発明は、4本の弦が指板の上方に縦方向に設置されており、各弦の一端がボディのブリッジに固定され、他端がヘッドのペグに巻き付けられたものである。
また、引用発明のヘッドのペグは、弦の張りを調整してチューニングできる構成であり、チューニングペグといえるものであるから、引用発明と本願発明は「前記指板の上方に縦方向に設置された弦は、一端が前記ボディーのブリッジに固定され、他端が前記ヘッドのチューニングペグに巻き付けられ」たものである点で共通する。
そして、引用発明の「ベース」と本願発明の「ギター」はともに「弦楽器」である点で共通する。
ただし、本願発明は6本の弦が設置されたギターであるのに対して、引用発明は4本の弦が設置されたベースである点で相違する。
(5)構成A5について
引用発明の指板の横方向に取り付けられた「48フレット」は、「通常スケール24フレット仕様」のものを含んでいる。
また、通常の弦楽器はフレットが二分音間隔、すなわち全音の半分の間隔であるから、引用発明の48フレットのうち、「通常スケール24フレット仕様」のものは二分音間隔に配置されていると認められる。
したがって、引用発明と本願発明は「前記指板には、二分音間隔となるようにフレットが横方向に取り付けられる」点で共通する。
(6)構成Bについて
引用発明の指板の48フレットが「通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間に、もう1本フレットを設ける」構成であることは、本願発明の構成Bの「前記2つのフレットの間毎に、1本の付加フレットが設けられ」ることに相当する。
そして、引用発明は上記構成を採用することによって四分音、すなわち「1/4音」を正確に出す事が出来るから、引用発明の指板の48フレットは、四分音間隔となるように等間隔又は非等間隔で配置されたものといえる。
したがって、引用発明と本願発明は「前記2つのフレットの間毎に、1本の付加フレットが設けられ、四分音間隔となるように、前記フレットと前記付加フレットは、等間隔又は非等間隔で配置されている」点で共通する。
(7)以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
A1 ボディー、指板及びヘッドを備え、
A2 前記ボディーには、サウンドホールが設けられ、
A3 前記指板は、前記ボディーと前記ヘッドの間に取り付けられ、
A4’前記指板の上方に縦方向に設置された弦は、一端が前記ボディーのブリッジに固定され、他端が前記ヘッドのチューニングペグに巻き付けられ、
A5 前記指板には、二分音間隔となるようにフレットが横方向に取り付けられる
A’ 弦楽器であって、
B 前記2つのフレットの間毎に、1本の付加フレットが設けられ、四分音間隔となるように、前記フレットと前記付加フレットは、等間隔又は非等間隔で配置されている
A’ ことを特徴とする弦楽器。
<相違点>
本願発明は6本の弦が設置されたギターであるのに対して、引用発明は4本の弦が設置されたベースである点。
2 判断
(1)相違点についての判断
引用発明は、4本の弦が張られたベースに関する発明であるが、その特徴は「通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間に、もう一本フレットを設けることによって1/4音を正確に出す事が出来る」という音のスケールの間隔に関するものであって、弦の本数や発音域の高低とは直接の関係のない事項を特徴としているものである。
したがって、4本の弦が張られたベース以外の、弦の本数や発音域の高低が異なる同様の弦楽器にも、引用発明の上記特徴を適用することが可能であることは、当業者ならば考え得ることであり、特に、フレットを指で押さえて音高を指定して弦をはじくことで発音をするというベースと同じ演奏方法であり、弦の数が通常6本で発音域がより高いギターに適用可能であることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用発明を6本の弦が設置されたギターとして実現することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)効果について
本願発明の効果は、引用発明から想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において「当該引用文献2は、個人のウェブページ等に掲載されている事項であって、表示されている掲載時期に、引用しようとするウェブページ等に掲載されている事項がその内容のとおりに掲載されていたことについての疑義があります。また、その記載内容及び画像についても、事実であるか明らかではなく、その技術的な意味も不確実です。よって、出願人は、当該引用文献2は、引用例としての適格性を備えておらず、当該引用文献2を引用することは妥当ではない」旨主張している。
しかしながら、引用例(原査定で引用した引用文献2)として引用した当該ウェブページは、インターネット上のウェブページ等を扱うデジタルアーカイブのウェイバックマシン(internet archive、wayback machine)を使用して、2013年2月7日のものとされるアーカイブデータ情報を確認してみると、URL「https://web.archive.org/web/20130207064132/https://blog.goo.ne.jp/span_21/e/16baf94d99c06e0e983baefca48bf736」と表示される。
そして、上記URLのうち、「https://blog.goo.ne.jp/span_21/e/16baf94d99c06e0e983baefca48bf736」の部分は収集した当該コンテンツのURLを示し、数字部分の「20130207064132」(下線は当審で付与)は、当該コンテンツが収集された日時(保存日時)を示すものと認められるから、引用例のウェブページは、2013年2月7日にウェイバックマシンにより収集され保存されたものである。
したがって、引用例のウェブページは、本願優先日(2017年8月22日)前の2013年2月7日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能になったものと認められ、上記請求人の主張は採用できない。
イ また、請求人は審判請求書において「引用文献2には、『先日、思わず衝動ぽちっとしてしまったこのベース。アトランシアのヴィクトリアベースなのですが、下の画像で分かるでしょうか。48フレットあります。ネックがやたら長い訳ではありません。通常スケール24フレット仕様のフレットとフレットの間にもう1本。。。つまり1/4音を正確に出す事が出来る優れもの!?なのです。』と記載されているのみであり、4本の弦のベースの画像が掲載されています。
引用文献2は、個人のウェブページ等に掲載されている事項であって、本願発明とは明らかに異なるものです。
特に、引用文献2には、6本の弦を有するギターにおいて、二分音間隔となる2つのフレットの間毎に、1本の付加フレットを増設して、四分音間隔となるように、フレットと付加フレットは、等間隔又は非等間隔で配置するという技術思想は開示されていません。
技術的な意味が不確実な引用文献2において、本願発明の技術的特徴を特定することはできませんし、当業者が引用文献3-5のような周知技術を適用することはできません。」旨主張している。
しかしながら、引用例が「個人のウェブページ等に掲載されている事項」であることをもって、発明に該当しないという理由にならない。
また、6本の弦を有するギターにおいて、請求人が主張する構成を採用することは、上記相違点についてで述べたとおり、当業者が容易になし得ることである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(4)判断についてのまとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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