特許拒絶査定不服審判
2021-009905
希薄過酸化水素(DHP)ガスを含むクリーンルームおよびその使用方法
- 審判番号
- 2021-009905
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-554851
- 請求日
- 2021年07月26日
- 審決日
- 2022年06月01日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シネクシス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
- 【請求人代理人】松谷 道子
- 【請求人代理人】江間 晴彦
- 審判長/審判官
- 審判長 林 茂樹
- 審判官 平城 俊雅
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-Z (F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-554851「希薄過酸化水素(DHP)ガスを含むクリーンルームおよびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日国際公開、WO2016/172223、平成30年 5月24日国内公表、特表2018-513343〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2016年4月20日(優先権主張外国庁受理、2015年4月20日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成31年4月18日に手続補正書が提出され、令和2年6月23日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年11月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年3月9日付け(発送日:令和3年3月23日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和3年7月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、令和3年9月16日に手続補正書(方式)が提出され、令和3年11月1日付けで上申書が提出されたものである。
2 本願発明
本願の請求項1~29に係る発明は、令和2年11月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~29に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成する1つ以上の装置を含むクリーンルームであって、前記PHPGは水酸化されておらず、さらに0.015百万分率(ppm)未満のオゾンを含み、前記クリーンルームは少なくとも0.005から最大1.0ppmの定常状態濃度の希薄過酸化水素(DHP)ガスを含み、オゾンの濃度が0.015ppmより低く、かつ、少なくとも国際標準化機構(ISO)14644クラス8の要件を満たす、クリーンルーム。」
3 拒絶の理由
原査定における請求項1に対する拒絶の理由(理由2)は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1~3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2012-517862号公報
2.特開2011-10892号公報(周知技術を示す文献)
3.米国特許出願公開第2005/0226764号明細書(周知技術を示す文献)
4 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特表2012-517862号公報には、次の事項が図面とともに記載されている(下線は当審にて付した。また、「・・・」は記載の省略を意味する。以下同様)。
(1-a)「【請求項1】
(a)溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形で結合した水、オゾン、プラズマ種、及び/又は有機種が実質的にない精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成することと、
(b)環境中において、表面上及び空気中の両方において微生物制御、及び/又は殺菌/改善を行うように上記過酸化水素ガスが作用するよう、上記PHPGを上記環境中へ放出することとを特徴とする環境の微生物制御、及び/又は殺菌/改善をする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
上記生成されたPHPGは、プラス及びマイナスに帯電された構造物及び/又は微生物上の部位へ静電的に引き付けられ、その結果、水和した過酸化水素又はオゾンのいずれかと比較したとき、微生物制御、及び/又は殺菌/改善における上記PHPGの有効性を向上させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
上記供給されたPHPGは、0.005ppmと0.40ppmとの間の濃度であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
上記供給されたPHPGは、未処理の空気と、既に上記PHPGで処理されたわずかに循環する空気との間で供給空気のバランスをとることによって、所望の濃度に能動的に調整されうることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
環境の上記微生物制御、及び/又は殺菌/改善は、室内空気処理、水清浄器、カビ除去装置、バクテリア除去装置、及びウイルス除去装置を含んでいることを特徴とする方法。」
(1-b)「【0012】
要約すれば、環境中に放出するためのPHPGの生成は、従来の技術で達成されていなかった。過酸化水素水を蒸発させる方法は、せいぜい、水和した形の過酸化水素を生成するにすぎない。また、光触媒システムは、過酸化水素を生成することはできても、それらには環境中に放出するためのPHPGの生成を厳しく抑制する複数の制限を有している。
【発明の概要】
【0013】
本発明の1つの局面では、環境の微生物制御、及び/又は殺菌/改善を行う方法が開示されている。通常、この方法は、(a) 過酸化水素ガスを優先的に生成する光触媒帆、つまり、帆のような空気透過性の形態を提供することと、(b) 例えば水和(溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形)、オゾン、プラズマ種、及び/又は有機種が実質的にない精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成することと、(c)環境中において、より好ましくは表面上及び空気中の両方において微生物制御、及び/又は殺菌/改善を行うように上記PHPGが作用するよう、主としてPHPGからなるガスを上記環境中へ放出することである。」
(1-c)「【0027】
ここで使用されているように、「精製過酸化水素ガス」又はPHPGという用語は、少なくとも水和(溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形)が実質的になく、さらにオゾンが実質的にない過酸化水素のガス形態を通常意味している。
・・・
【0030】
本発明のもう一つの側面は、例えば、水和(溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形)、オゾン、プラズマ種、及び/又は、有機種を実質的に含まない精製過酸化水素ガス(PHPG)から成るガスを生成するためのディフューザ装置に関する。例えば図1及び図2を参照すると、ディフューザ装置は、概ね(a)紫外光源4と、(b)金属又は金属酸化物触媒基板構造3と、(c)空気分配機構5,6及び/又は7とを備えている。
・・・
【0033】
本発明では、「オゾンが実質的にない」という表現は、略0.015ppm以下であって、オゾンのLOD(level of detection,検出レベル)以下のレベルまで下がったオゾン量を一般に意味している。このようなレベルは、人間の健康に対する一般的な許容限以下である。この関連で、米国食品医薬品局(FDA)は、室内の医療機器のオゾン排出量を0.05ppm以下と定めている。米国労働安全衛生局(OSHA)は、労働者は平均濃度0.10ppm以上のオゾンに8時間曝されてはならないと定めている。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、0.1ppmのオゾン上限は常に超えられてはならないと推奨している。米国環境保護庁(EPA)の環境空気品質基準は、オゾンに対して室外平均濃度0.08ppmで最大8時間と定めている。この明細書に記載されている上記ディフューザ装置は、ドレージャーチューブによって検出可能なレベルのオゾンを生成しないことを常に実証している。」
(1-d)「【0070】
本発明の或る態様では、PHPGは、オゾン,プラズマ種,有機種が実質上ない状態において、例えば既述の範囲の紫外光で活性化されたときに光触媒による吸着水分子の酸化によって生成されてもよい。一実施形態では、内側を光触媒で被覆されたディフューザ基板(又は内側を薄い帆状の通気性光触媒構造で覆われたディフューザシェル)が、紫外光ランプの上及び周囲に配置されてもよい。ディフューザ内の開口は、紫外光の電源と構造上の支持部が嵌め込まれる枠の役割を果たしてもよい。組み立てられたとき、上記ディフューザ装置は、次のように動作してもよい。即ち、(a) 流体分配機構は、空気を有機性の蒸気及びダストフィルタを通してディフューザ内に送り込んで過圧を作り、(b) 空気は、基板及び/又はディフューザシェルの細孔又は通気孔を通ってディフューザ外へ流れ、(c) 空気中に含まれる湿気は、光触媒の表面に吸着し、(d)ランプによって生成された紫外光は、光触媒を照射して活性化し、光触媒は、吸着した水を酸化すると共に吸着した酸素を還元してPHPGを生成し、(e) ディフューザ装置内で生成されたPHPGは、ディフューザの細孔又は通気孔を通ってディフューザから出て、周囲環境へ急速に移動する。
【0071】
いくつかの実施形態では、PHPGは、中圧水銀アーク(MPMA)ランプによって生成される。MPMAランプは、紫外光のみならず赤外域の波長をもつ可視光を発する。ランプを選ぶ際、紫外域の出力を詳しく調べることが重要である。紫外域のスペクトル出力は、グラフで表され、重要な紫外域波長で比例した出力を示すことがある。MPMAランプの広いスペクトルは、その機能性の故に選ばれる。
・・・
【0074】
実施例
発明を次の実施例に制限する意図はないが、本発明の一実施形態では、(a)装置は、長さ50.8cm,半径21.6cmの1/4円筒状をなし、(b)1/4円筒は、壁と天井の出会いが成す90°の角度に適合するように設計され、1/4円筒の真っ直ぐな両面が天井と壁にぴったりと接し、1/4円筒の湾曲面が外方かつ下方に向かって室に面し、(c)1/4円筒の下から見た右端は、毎分6.79m3の最大出力をもつ可変速度ファンおよび活性炭からなる疎水性の高効率吸気口フィルタを収容し、(d)1/4円筒の左端は、ファン用の電源コネクタおよび1/4円筒の中心に位置し,1/4円筒の長手方向に延びる35.6cmの中圧水銀アーク(MPMA)ランプを収容し、(e)光を1/4円筒の湾曲面の内側に向かって反射する通気口付き金属反射板が、MPMAランプの背後に配置され、(f)1/4円筒の湾曲面は、装置の外へ空気は流すが光は洩らさない構造となっている。
【0075】
湾曲した帆状の光触媒構造は、1/4円筒の湾曲面の直ぐ内側に平行に配置され、(a) 光触媒基板は、長さ45.7cm、高さ27.9cmの枠に入れられ、頂部から底部まで半径21.0cmの円弧を成し、(b) 結晶性二酸化チタン粉で被覆されたガラス繊維からなり、(c) 二酸化チタンは、ガラス繊維の全面を完全に覆うように5層で塗布された後、光触媒の結晶を相互に、かつガラス繊維に結合させるべく、炉内で焼結される。
【0076】
運転中、ファンとMPMAランプは電源がオンされ、(a) 吸入空気は、活性炭からなる疎水性の高効率入口フィルタを経て装置内に吸い込まれ、上記吸気口フィルタは、吸入空気から湿気を除去することなく、揮発性有機炭化水素(VOC)を吸着して除去し、(b) 吸入空気は、装置の背部に送られ、通気口付き金属反射板によって光触媒構造および1/4円筒の湾曲面の内側に向かって均一に方向転換され、(c) 吸入空気中の湿気と酸素は、MPMAランプからの波長255nmから380nmの光で活性化された光触媒上に吸着され、(d) 活性化された光触媒は、水を酸化してヒドロキシルラジカルにし、このヒドロキシルラジカルが結合して過酸化水素となる一方、二酸素が同時に光触媒上で還元されて過酸化水素となり、(e) 生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が、光触媒から離れる空気の流れによってすぐに運び去られ、光は通さない装置の通気面を通って、室内へ放出される。」
(1-e)段落【0076】には「生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が、光触媒から離れる空気の流れによってすぐに運び去られ、光は通さない装置の通気面を通って、室内へ放出される。」と記載され、段落【0070】には「ディフューザ装置内で生成されたPHPGは、ディフューザの細孔又は通気孔を通ってディフューザから出て、周囲環境へ急速に移動する。」と記載されているから、引用例1には、ディフューザ装置で生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が放出される室内が記載されているといえる。
(1-f)【請求項1】には「(a)溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形で結合した水、オゾン、プラズマ種、及び/又は有機種が実質的にない精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成することと、
(b)環境中において、表面上及び空気中の両方において微生物制御、及び/又は殺菌/改善を行うように上記過酸化水素ガスが作用するよう、上記PHPGを上記環境中へ放出することとを特徴とする環境の微生物制御、及び/又は殺菌/改善をする方法。」が記載され、
【請求項3】には「請求項1に記載の方法において、
上記供給されたPHPGは、0.005ppmと0.40ppmとの間の濃度であることを特徴とする方法。」が記載され、
【請求項5】には「請求項1に記載の方法において、
環境の上記微生物制御、及び/又は殺菌/改善は、室内空気処理、水清浄器、カビ除去装置、バクテリア除去装置、及びウイルス除去装置を含んでいることを特徴とする方法。」が記載されているから、引用例1には、請求項1に記載された方法により室内空気処理された、精製過酸化水素ガス(PHPG)は、0.005ppmと0.40ppmとの間の濃度である室内が記載されているといえる。
(1-g)段落【0027】には「『精製過酸化水素ガス』又はPHPGという用語は、少なくとも水和(溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形)が実質的になく、さらにオゾンが実質的にない過酸化水素のガス形態を通常意味している。」と記載され、段落【0033】には「本発明では、『オゾンが実質的にない』という表現は、略0.015ppm以下であって、オゾンのLOD(level of detection,検出レベル)以下のレベルまで下がったオゾン量を一般に意味している。」と記載されているから、引用例1には、オゾンが略0.015ppm以下である室内が記載されているといえる。
上記(1-a)~(1-g)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「ディフューザ装置で生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が放出される室内であって、
精製過酸化水素ガス(PHPG)は、少なくとも水和(溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形)が実質的になく、
オゾンが略0.015ppm以下であって、
精製過酸化水素ガス(PHPG)は、0.005ppmと0.40ppmとの間の濃度である室内。」
(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2011-10892号公報には、次の事項が図面とともに記載されている。
(2-a)「【0021】
一方、本実施形態の室内除染システムBは、除染剤に過酸化水素を使用してクリーンルームを除染するシステムであり、図1に示すように、過酸化水素発生装置11と過酸化水素分解装置12を備えて構成されている。過酸化水素発生装置11は、例えば、過酸化水素水を貯留するタンクから送水ポンプの駆動とともに過酸化水素水を吸引し、これとともに過酸化水素水を加熱面に滴下してフラッシュ蒸発させて、過酸化水素ガス(過酸化水素蒸気)を発生させるように構成されている。また、過酸化水素分解装置12は、触媒として白金触媒などを備え、過酸化水素ガスを含む空気から過酸化水素を白金触媒などで分解して除去するように構成されている。」
(2-b)「【0028】
このように放出ラインS2に切替えた段階で、過酸化水素発生装置11を駆動し、この過酸化水素発生装置11で発生した過酸化水素ガスを放出ラインS2に放出する。これにより、放出ラインS2によって過酸化水素ガスを含む空気が循環し、過酸化水素ガスがクリーンルーム1に供給される。また、過酸化水素発生装置11から所定の過酸化水素投入量の過酸化水素を投入した段階で過酸化水素発生装置11の駆動を停止する。そして、本実施形態では、ダクト15、17、19、8に断熱処理が施されるとともに、これらダクト15、17、19、8内が加温されているため、放出ラインS2で過酸化水素ガスを含む空気が循環する際に、過酸化水素がダクト15、17、19、8で結露することがない。このため、従来の室内除染システムと比較し、過酸化水素投入量が少なくて済む。」
(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された米国特許出願公開第2005/0226764号明細書には、次の事項が図面とともに記載されている(当審による訳文を()内に示す。)。
(3-a)「[0001] The present invention relates to a method for decontaminating a clean-room, in which the clean-room is supplied with gaseous H2O2, and also relates to a system for decontaminating a clean-room, which system comprises an H2O2 supply device for supplying the clean-room with H2O2.」
(本発明は、ガス状のH2O2を供給することでクリーンルームを除染するための方法に関するものであり、更に、クリーンルームを除染するためのシステムであって、H2O2を用いたクリーンルームを供給するための過酸化水素供給手段を備える装置に関するものである。)
(3-b)「[0044] In the first example embodiment shown in FIG. 1 of an inventive system for decontaminating a clean-room 1, an H2O2 supply device 2 is disposed outside a periphery 3 of the clean-room 1. An open-loop control and close-loop control device 31 controls the conditions in clean-room 1, in particular the pressure relationships and the air conditions. The H2O2 supply device 2 comprises, for example, as described in CH-A-689 178 at least one liquid-H2O2-filled H2O2 supply vessel, at least one evaporator unit in the form of a heating plate for vaporizing the H2O2 and at least one H2O2 line between the at least one H2O2 supply vessel and the at least one heating plate. The at least one heating plate is disposed in the clean-room 1, so that the H2O2 which is fed from the at least one H2O2 supply vessel via the at least one H2O2 line is vaporized directly in the clean-room 1 on the at least one heating plate. The supply of H2O2 to the clean-room 1 is controlled by an open-loop control and closed-loop control device 21 which preferably comprises a stored-programmable control. Usually, sufficient H2O2 is vaporized in the clean-room 1 so that in clean-room 1 an H2O2 concentration of approximately 100-5000 ppm is present for approximately from 10 to 120 minutes.」
(クリーンルーム1を除染するための本発明のシステムの図1に示す、第1の実施形態例では、クリーンルーム1の外周3の外側に配置されているH2O2供給装置2が設けられている。開ループ制御および閉ループ制御装置31は、クリーンルーム1内の、特に圧力及び空気の状態を制御する。このH2O2供給源装置2は、例えば、特許文献CH-A-689 178に記載されているように、少なくとも1つの液体過酸化水素で満たされたH2O2供給源容器と、H2O2を気化させるための加熱プレートと、少なくとも1つの過酸化水素供給容器と少なくとも1つの加熱板との間の少なくとも1つの過酸化水素ラインから構成される。少なくとも1つの加熱プレートは、クリーンルーム1内に配置されている、少なくとも1つの過酸化水素ラインを介して少なくとも1つのH2O2供給源容器から供給されるH2O2は少なくとも1つの加熱プレート上にクリーンルーム1内で直接気化させるようになっている。クリーンルーム1に供給することによって、メモリプログラム可能な制御を含むことが好ましいが、開ループ制御および閉ループ制御装置21によって制御される。通常、クリーンルーム1内のH2O2濃度約100-5000ppmで約10-120分間存在するようにするために、クリーンルーム1の中で十分なH2O2が気化される。)
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ディフューザ装置」は、本願発明の「装置」に相当する。また、本願発明の「装置を含む」に関して、本願明細書の段落【0026】には、「『~を含む』という用語は、『それを含むがそれには限定されない』ことを意味する。」と記載されているから、引用発明の「ディフューザ装置で生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が放出される室内」は、本願発明で特定される「装置を含む」ものといえる。
よって、引用発明の「ディフューザ装置で生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が放出される室内」と、本願発明の「精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成する1つ以上の装置を含むクリーンルーム」とは、「精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成する1つ以上の装置を含む空間」である点で共通する。
イ 本願発明における「水酸化」について、広辞苑第六版によれば、「水酸化物の名称に冠する語」であり、「水酸化物」は、「水酸基OHをもつ無機化合物の総称」であるところ、引用発明の「精製過酸化水素ガス(PHPG)」は、水酸化物でないことは自明である。
本願明細書の「水酸化されておらず」(段落0022参照)に対応する原文が「non-hydrated」であり、本願明細書に「非水和」又は「水和されていない」(何れも原文には「non-hydrated」)という記載が多数ある(段落0003,0004,0049,0100)点を考慮すると、請求項1に記載された「水酸化」は「水和」であると考えられる。
仮に、本願発明の「水酸化」が「水和」でないとしても、引用発明の「精製過酸化水素ガス(PHPG)は、少なくとも水和(溶液中の水、又は共有原子価、ファンデルワールス力、又はロンドン分散力によって結合されている水分子の形)が実質的にな」い点は、本願発明の「PHPGは水酸化(水和)されて」いない点に相当する。
ウ 引用発明の「オゾンが略0.015ppm以下」である点は、本願発明の「0.015百万分率(ppm)未満のオゾンを含」む点及び「オゾンの濃度が0.015ppmより低」い点に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成する1つ以上の装置を含む空間であって、前記PHPGは水酸化されておらず、さらに0.015百万分率(ppm)未満のオゾンを含み、オゾンの濃度が0.015ppmより低い空間。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
精製過酸化水素ガス(PHPG)を生成する1つ以上の装置を含む「空間」に関して、本願発明は、「クリーンルーム」であるのに対し、引用発明は、「室内」である点。
[相違点2]
本願発明は、「少なくとも0.005から最大1.0ppmの定常状態濃度の希薄過酸化水素(DHP)ガスを含」むのに対し、引用発明は、「精製過酸化水素ガス(PHPG)は、0.005ppmと0.40ppmとの間の濃度」であるが、定常状態濃度であるか不明である点。
[相違点3]
本願発明は、「少なくとも国際標準化機構(ISO)14644クラス8の要件を満たす」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
6 判断
ア 相違点1、3は関連するのでまとめて検討する。
クリーンルーム内に過酸化水素を供給することは、例えば、引用例2の段落【0028】、及び引用例3の[0001]、[0044]に記載されているとおり、周知の技術である。
一方、引用発明は、精製過酸化水素ガス(PHPG)が室内に放出されるものであり、当該室内は、あらゆる室内が概念的に含まれるものであり、クリーンルーム等の特殊な環境を排除するものではない。
また、本願発明における「国際標準化機構(ISO)14644クラス8」とは、クリーンルームの空気清浄度により定められた国際規格であり、どのレベルの国際規格に適合したクリーンルームとするかは、当業者が用途に応じて適宜選択できるものであり、クリーンルームに「国際標準化機構(ISO)14644クラス8」を採用した点に格別な技術的意義は認められない。
そして、引用発明と周知の技術とは、過酸化水素が室内に供給される点において共通するものであるから、引用発明において、精製過酸化水素ガス(PHPG)が放出される「室内」に代えて、周知の技術に記載された「クリーンルーム」とすることは当業者にとって格別困難なことではなく、その際に「クリーンルーム」を、国際標準化機構(ISO)14644クラス8の要件を満たすように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。
イ 相違点2について検討する。
引用発明における精製過酸化水素ガス(PHPG)の濃度は、0.005ppmから0.40ppmであるから、濃度の薄い過酸化水素ガス、すなわち本願発明でいう「希薄過酸化水素(DHP)ガス」であるといえる。
そして、引用発明は、ディフューザ装置で生成された精製過酸化水素ガス(PHPG)が室内に放出されるものであるから、当該ディフューザ装置を安定して駆動することにより、引用発明において特定される濃度の範囲を定常状態濃度とすることは当業者が適宜なし得たことである。
さらに、本願発明において、精製過酸化水素ガス(PHPG)の濃度の上限を最大1.0ppmとすることに臨界的意義は認められない。
よって、引用発明において、少なくとも0.005から最大1.0ppmの定常状態濃度の希薄過酸化水素(DHP)ガスを含むように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 本願発明が奏する効果について
本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書、及び令和3年11月1日付けの上申書において、「引用文献2および引用文献3で生成される過酸化水素は、必然的に過酸化水素と水は共沸混合物を形成していますので、必然的に水和していることになります。このことは、ここに参考資料1として提出します1986年1月14日に発行された米国特許第4,564,514号に示されております。一方で、本願発明の「ガス」は、そのようなものと異なります。水溶液から水和しないガス状の過酸化水素を調製することはできません。このことは、これは、過酸化水素が水と共沸混合物を形成するというよく知られた事実に基づいています。ここに参考資料2として提出します2007年1-2月に発行されたPHARMACEUTICAL ENGINEERING、Carl Hultmanらおよび参考資料3として提出します2013年9月に発行されたPharmaceutical Technology、James P. Agalloco およびJames E. Akersに裏付けられると思料いたします。過酸化水素ガスは、加熱、ネブライザー、蒸発などの方法では水から分離することはできないのであります。実際には、純粋な過酸化水素の液体を分離するためには、別の共沸物質(例えば、トルエンまたは他の有機液体など水と共沸する物質)を用いる必要があります。
これらの参考資料には、非水和型の過酸化水素を調製することがいかに困難であるかが示されていると思料いたします。
対照的に、本願発明の方法では、真のガス形態の過酸化水素をその場で生成します。真の気体である過酸化水素は、水の存在によって遮られることがないので、顕著により効果的になります。水は、過酸化水素と同じ部位に結合し、効果を低下させると考えられます。これにより、はるかに低濃度の過酸化水素で有効になります。また、水分を避けることで、結露や過湿の問題を防ぐことができます。」と主張する(審判請求書、及び令和3年11月1日付けの上申書における「(2)特許法第29条第2項に基づく理由について」)。
確かに、引用文献2および引用文献3で生成される過酸化水素は、液体過酸化水素を気化して製造するものであるから、水和しているものであるといえる。
しかしながら、引用文献1には、水和が実質的にない精製過酸化水素ガス(PHPG)をディフューザ装置で生成して室内に放出する点が開示されており、上記で主張する「真のガス形態の過酸化水素をその場で生成する」点は、引用文献1に開示されているものである。
そして、上記「6 ア」で検討したとおり、引用発明と(引用文献2及び引用文献3に記載された)周知の技術とは、過酸化水素が室内に供給される点において共通するものであるから、引用発明において、精製過酸化水素ガス(PHPG)が放出される「室内」に代えて、周知の技術に記載された「クリーンルーム」とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
よって、請求人の主張は採用できない。
オ まとめ
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-009905