特許拒絶査定不服審判
2021-009717
築造物形成方法
- 審判番号
- 2021-009717
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-135796外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月20日
- 審決日
- 2023年01月04日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (E02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-135796「築造物形成方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 2月25日出願公開、特開2022- 32225〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年8月11日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年12月21日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 2月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 4月21日付け:拒絶査定(同年5月11日送達)
令和 3年 7月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年11月22日 :上申書の提出
令和 4年 6月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 7月15日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、令和3年7月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1についてみれば、その記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意することと、
用意された前記混合材料を締め固めて圧縮しながら成形することと、
前記混合材料を固化することと、
を含み、
前記混合材料を固化することが、前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くすることとを含む、
築造物形成方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審が通知した令和4年6月9日付け拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
(新規性)
令和3年7月20日提出の手続補正書による補正後の本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)
令和3年7月20日提出の手続補正書による補正後の本願請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 永友 大彰,今泉 繁良,土居 洋一、「ベントナイト混
合土の石灰・ドロマイトによる土質改良効果、土木学会関
東支部技術研究発表会講演概要集」、日本、2004年発行、
31-7巻、P.43-44
引用文献2: 特開2004-278041号公報
引用文献3: 特開2013-2185号公報
引用文献4: 特開2011-219993号公報
第4 引用文献の記載
1 引用文献1
(1)引用文献1には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
ア 「1.研究目的
廃棄物量の増加、質の多様化に伴い、廃棄物最終処分場に高い遮水性が要求されている。近年、その遮水法のひとつとして難透水性ベントナイト混合土に着目し、その透水性に 関する研究が進められている。しかし、ベントナイト混合土の強度に関する研究は比較的行われていない。そこで本研究では生石灰、軽焼ドロマイトを土質改良材として用い、ベントナイト混合土の強度改良に効果があるかを検証する。」(1ページ左欄1行-10行)
イ 「(2)供試体作成の諸条件および作成方法
母材として用いるベントナイト混合土は、含水比ω=13%、ベントナイト添加率α=14%とする。そのベントナイト混合土に対して表-2の添加率で土質改良材を添加していく。供試体の作製には、内径5cm、高さ11.96cmのモールドを使用し、重量1.175kg,落下高さ15.04cmのランマーを用いて、締固め層数3層、1層当りの締固め回数を35回で締固めた。」(1ページ左欄18行-右欄5行)
ウ 「3.結果、考察
図-2に、一軸圧縮試験から得られた応力-ひずみの関係を示した。また、表-3に実験値から算出した値をまとめた。」(2ページ左欄1行-4行)
エ 「5%の生石灰・ドロマイトを混入することによって、無添加のものよりも高い一軸圧縮強度が得られた。・・・(中略)・・・これは土中の水分が、改良材の消化反応によって多量にうばわれ、著しく含水比が低下したことにより、土の吸着力が失われたためと考える。」(2ページ左欄5行-14行)
オ 表-2は次のものである。(1ページ右欄中段)
「
[図:0001394462000001.jpg]
」
カ 表-3は次のものである。(2ページ左欄中段)
「
[図:0001394462000002.jpg]
」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)を総合すると引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
(引用発明1)
「母材として用いるベントナイト混合土は、含水比ω=13%、ベントナイト添加率α=14%とし、そのベントナイト混合土に対して土質改良材を添加していき、土質改良材として生石灰を用い、内径5cm、高さ11.96cmのモールドを使用し、重量1.175kg,落下高さ15.04cmのランマーを用いて、締固め層数3層、1層当りの締固め回数を35回で締固め、生石灰を混入することによって、無添加のものよりも高い一軸圧縮強度が得られる、方法。」
2 引用文献2
(1)引用文献2には、次の記載がある。
ア 「【0007】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の遮水壁工法は、ケーシングの圧入とケーシング内部の掘削によって前記ケーシングを所定の位置まで貫入し、掘削した孔内に所定の量のベントナイト混合土を投入し、ケーシングを所定の高さまで引き抜き、前記投入したベントナイト混合土を締め固め、ベントナイト混合土の投入、ケーシングの引き抜き及び締め固めを繰り返すことによって所定の長さのベントナイト混合土からなる杭体を構築し、前記杭体の構築を繰り返し、杭体を連続させることによって地中に壁体を構築する工法である。ベントナイト混合土は、杭体全長にわたって均質な物性及び周辺地盤との一体性を確保するために、充分に締め固めができる量ずつ投入し、締め固めをおこなう。」
イ 「【0011】
<イ>ベントナイト混合土
ベントナイト混合土1は、ベントナイトと砂礫材を混合した材料をいう。ここで、ベントナイトとは、モンモリロナイトを主成分とする乳白色・褐色の粘土をいう。ベントナイトは、凝灰岩などが変質して生じたもので、水を吸収すれば膨張し、懸濁液は中性からアルカリ性を示す。
また、砂礫材は、要求される遮水壁20の物性によって、砂のみの材料から砂と礫が混合した材料まで任意に選択できる。砂礫材として現地発生土を使用する場合は、均質性を確保するために、一旦、乾燥させて径が40mmを超える礫の除去及び粒度調整等を行う必要がある。
ベントナイト混合土1は、上記したベントナイトと砂礫材をスタビライザや混合用ミキサ等により強制撹拌混合して製造するのが好ましい。ベントナイト混合土1は、配合試験、物性試験をおこない、要求される遮水壁20の性能に合った配合を決定する。」
ウ 「【0015】
<ニ>初期の埋め戻し
所定の位置までケーシング3を貫入した後、ベントナイト混合土1で孔内を埋め戻す。ここで、ケーシング孔内に地下水などが貯留している場合は、ベントナイト混合土1を投入する前に排除しておく。
遮水壁20にとって、周辺地盤との継ぎ目の施工が重要であり、その施工の良否が止水性能に影響を及ぼしやすい。そこで、この継ぎ目に当たる初期の埋め戻しを慎重におこなうのが好ましい。
例えば、孔底地盤の緩んだ部位を人力で取り除いた後、タンピングランマによる孔底地盤の突き固めをおこなう。そして、孔底地盤の密度や透水性を確認した後に底面の浮石の除去などをおこなう。
その後、ベントナイト混合土1を10cm程度投入して、タンピングランマなどを使用して作業員による突き固めをおこなう。
【0016】
<ホ>埋め戻し(図1)
必要に応じて上述したような初期の埋め戻しをおこなった後、機械による埋め戻しをおこなう。
まず、一度に締め固めをおこなう分量のベントナイト混合土1をハンマグラブ5などで孔内に投入する。次に、一度に締め固めをおこなう高さ程度、ケーシング3を引き抜く。孔内に投入したベントナイト混合土1は、バイブロタンパ4などで締め固める。図1は、2回に分けて締め固めた締固め部21a、21bの上に、3回目のベントナイト混合土1を投入して締め固めをおこなっている状態を示した図である。ベントナイト混合土1は、締め固めをおこなうことによって、所望の値以上の乾燥密度及びせん断強度を確保することができ、孔壁の周辺地盤との一体性を向上させることもできる。」
エ 図1は次のものである。
「
[図:0001394462000003.jpg]
」
上記ウの記載を踏まえると、図1からは、以下の点を看取することができる。
(ア)ベントナイト混合土1を締め固めて層状に成形し、形成された層の上に重ねて、更にベントナイト混合土1により形成された次の層が形成されることにより、段階的に遮水壁20が形成される点。
(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)を総合すると引用文献2には次の技術事項(以下「引用技術事項2」という。)が記載されている。
(引用技術事項2)
「掘削した孔内に所定の量のベントナイト混合土を投入し、前記投入したベントナイト混合土を締め固め、ベントナイト混合土の投入、締め固めを繰り返す、地中に壁体を構築する工法において、
ベントナイト混合土1は、ベントナイトと砂礫材を混合した材料であり、砂礫材として現地発生土を使用し、
周辺地盤との継ぎ目の施工が重要であり、この継ぎ目に当たる初期の埋め戻しを慎重におこなうのが好ましく、例えば、孔底地盤の緩んだ部位を人力で取り除いた後、タンピングランマによる孔底地盤の突き固めをおこない、孔底地盤の密度や透水性を確認した後に底面の浮石の除去などをおこない、その後、ベントナイト混合土1を投入して、作業員による突き固めをおこない、
ベントナイト混合土1を締め固めて層状に成形し、形成された層の上に重ねて、更にベントナイト混合土1により形成された次の層が形成されることにより、段階的に遮水壁20が形成されること。」
3 引用文献3
(1)引用文献3には、次の記載がある。
ア 「【0020】
本発明の実施形態に係る盛土構造物Aは、図1に示すように、上下に積層された複数段(本実施形態では三段)の盛土層1,1,…と、各盛土層1の下側に敷設されたジオテキスタイル2,2,…と、最上段の盛土層1の上に設けられた頂部3と、盛土層1,1,…および頂部3を覆う被覆部4と、を備えている。盛土構造物Aは、防潮堤防や河川堤防として利用可能な構造・強度を具備している。
(中略)
【0022】
盛土層1は、芯部11と、芯部11を包む遮水シート12と、芯部11を挟んで両側に配置された側部13,13とを備えている。」
イ 「【0026】
本実施形態では、一般土として、ベントナイト混合土(例えば、砂とベントナイトの混合土)を使用している。ベントナイトは、水に触れると膨張する性質(自己修復機能)を有していることから、ベントナイト混合土を用いて側部13を形成すると、側部13だけでも遮水性能が発揮されるようになり、したがって、例えば被覆部4にひび割れ等が発生したとしても、耐侵食性を維持することが可能となり、さらには、盛土構造物Aの長期安定性を確保することが可能となる。」
(2)引用文献3に記載された技術事項
上記(1)を総合すると引用文献3には次の技術事項(以下「引用技術事項3」という。)が記載されている。
(引用技術事項3)
「盛土構造物Aにおいて、上下に積層された複数段の盛土層1,1を備え、盛土層1は側部13,13を備え、ベントナイト混合土を用いて側部13を形成すること。」
4 引用文献4
(1)引用文献4には、次の記載がある。
ア 「【0027】
(地盤改良)
次に、構造設計に応じて地盤改良を行う部分を消石灰等でマーキングし(図6参照)、構築する改良壁の底面となる深さまでバックホーなどの掘削重機で掘削する(図7参照)。この地盤改良を行う部分(改良壁)の幅や深さ(高さ)は、勿論、構造設計に応じて決定される訳であるが、木造2階建ての個人住宅では、一般的に、幅450mm、深さ600~1200mm程度となっている。そして、掘り出した土に後述の固化材を混ぜて撹拌し(図8参照)、固化材を混ぜ合わせた土を掘り出した部分に埋め戻し(図9参照)、その後、ランマなどの転圧機で転圧して締め固め(図10参照)、改良壁2を構築する。本実施例では、改良壁2が高さ方向全域に亘って締め固められるように、改良壁2の深さ300mm毎に複数層に分けて転圧する。本実施例では、深さ600mmの改良壁2を2回に分けて転圧する場合で説明する。
【0028】
(固化材)
また、本実施例で使用する固化材は、セメントを主成分として石膏やスラグなどの数種類の添加材が加えられたセメント系の固化材(例えば、登録商標:タフロック(住友大阪セメント株式会社製),登録商標:ユースタビラー(宇部三菱セメント株式会社製),登録商標:ジオセット(太平洋セメント株式会社製),登録商標:ハードキープ(株式会社トクヤマ)など)が採用されている。また、本固化材は、土壌中の水分と固化材中のセメントとが水和反応して軟弱地盤を固化して地耐力を向上させる機能を有しており、セメントの固化作用に加え、各種添加材の効果による土中の余剰水の固定、有機物の影響を受けない水和物の生成等により、従来固化が難しかった高含水泥土や腐植土等の高有機質土も固化することができるようになっている。なお、地盤改良を行う土壌の土質に応じて生石灰や消石灰を主成分とする石灰系の固化材を使用しても構わない。」
(2)引用文献4に記載された技術事項
上記(1)を総合すると引用文献4には次の技術事項(以下「引用技術事項4」という。)が記載されている。
(引用技術事項4)
「地盤改良を行う方法において、構造設計に応じて地盤改良を行う部分を構築する改良壁の底面となる深さまでバックホーなどの掘削重機で掘削し、固化材を混ぜ合わせた土を掘り出した部分に埋め戻し、その後、ランマなどの転圧機で転圧して締め固め、改良壁2を構築し、地盤改良を行う土壌の土質に応じて生石灰を主成分とする石灰系の固化材を使用すること。」
第5 対比及び判断
1 対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」等という。)と引用発明1とを対比する。
(1)ベントナイト混合土に混合するベントナイトとして、粉体のものを用いることは、本願出願時において例示するまでもない技術常識であり、当該技術常識を踏まえると、引用発明1の「ベントナイト混合土」においても、粉体のベントナイトが混合されていることは明らかである。
さらに、水に触れると、水を吸収して膨張することは、ベントナイトの自明な性質であるため、引用発明1の「母材として用いるベントナイト混合土は、含水比ω=13%、ベントナイト添加率α=14%とし、そのベントナイト混合土に対して土質改良材を添加していき、土質改良材としては生石灰を用い」ることは、本願発明1の「水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意すること」に相当する。
(2)引用発明1の「内径5cm、高さ11.96cmのモールドを使用し、重量1.175kg,落下高さ15.04cmのランマーを用いて、締固め層数3層、1層当りの締固め回数を35回で締固め」ることは、本願発明1の「用意された前記混合材料を締め固めて圧縮しながら成形すること」に相当する。
(3)引用発明1の「生石灰」が混入される「ベントナイト混合土」においても、本願発明1と同様に水と生石灰を含有しているし、引用文献1の表-3において、生石灰の添加率が5%で養生0日及び7日のものは、いずれも無添加で養生0日のものよりも含水比が低下することが示されていることから、水と生石灰による消化反応からみて、引用発明1においても、生石灰を添加してから、養生を開始するまでの間に、本願発明1と同様に、水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応が生じ、反応の熱による水の蒸発により水をさらに減らしていることは明らかである。
また、引用発明1において生石灰を混入することによって、「無添加のものよりも高い一軸圧縮強度が得られ」ることは、本願発明1の「粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くすること」に相当する。
以上のことから、引用発明1においても、本願発明1の「混合材料を固化すること」及び「前記混合材料を固化することが、前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くすることとを含む」ことに相当する構成を備えているといえる。
(4)引用発明1の「方法」と、本願発明1の「築造物形成方法」とは、「方法」である点で共通する。
(5)以上を総合すると、本願発明1と引用発明1とは、
「水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意することと、
用意された前記混合材料を締め固めて圧縮しながら成形することと、
前記混合材料を固化することと、
を含み、
前記混合材料を固化することが、前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くすることとを含む、方法。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「築造物形成方法」であるのに対し、引用発明1は、そのような事項が特定されていない点。
2 判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、ベントナイト混合土の用途として、廃棄物最終処分場が記載されており、実質的に、ベントナイト混合土を使用して、廃棄物最終処分場に関連した何らかの築造物を形成する方法が記載されているといえるため、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮に相違点であるとしても、引用技術事項2、3のように、築造物において、ベントナイト混合土を用いて、各種の築造物を形成することは、本願出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
また、引用技術事項4のように、築造物において、生石灰を固化材として使用した土を用いて、形成することは、本願出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
引用発明1と周知技術1は、いずれもベントナイト混合土に関するものであり、属する技術分野が共通している。
また、引用発明1と周知技術2は、いずれも生石灰を固化材として使用した土に関するものであり、属する技術分野が共通している。
そして、強度が高い材料を用いて築造物を形成し、築造物の強度を高めることは、自明な課題であるため、引用発明1において、上記記載に基づき、周知技術1または2を適用して、本願発明1の上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。
3 小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1と同一であるか または、引用発明1及び周知技術1または2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、令和4年7月15日提出の意見書において、引用文献1には「ベントナイト」が「粉体」であることは一切記載されておらず、引用発明1の「母材として用いるベントナイト混合土は、含水比ω=13%、ベントナイト添加率α=14%とし、そのベントナイト混合土に対して土質改良材を添加していき、土質改良材としては生石灰を用い」ることは、本願発明1の「水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意すること」に相当しない旨主張している。
しかしながら、上記1(1)で説示したとおり、ベントナイト混合土において、粉体のベントナイトを用いることは、本願出願時において技術常識であり、当該技術常識を踏まえると、引用発明1の「ベントナイト混合土」においても、粉体のベントナイトが混合されていることは明らかであるため、引用発明1の「母材として用いるベントナイト混合土は、含水比ω=13%、ベントナイト添加率α=14%とし、そのベントナイト混合土に対して土質改良材を添加していき、土質改良材としては生石灰を用い」ることは、本願発明1の「水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意すること」に相当する。
したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。
(2)請求人は、令和4年7月15日提出の意見書において、引用文献1の表3下の段落の5行目には「改良材の添加量を10%に増すと、逆に無添加の供試体よりも強度が低下するという結果が得られた。これは土中の水分が、改良材の消化反応によって多量にうばわれ、著しく含水比が低下したことにより、土の吸着力が失われたためと考える。」と記載されていることを理由として、引用文献1では改良材の消化反応によって水分がうばわれ含水比が低下するほど、強度が低下するという、本願発明1のように「前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くする」こととは逆の技術思想を開示しているとともに、「生石灰」の混入によっても必ずしも高い一軸圧縮強度が得られないということを開示している旨、及び、引用文献1の表-3では、生石灰を添加しない「無添加」の供試体に比べて「生石灰」を添加した供試体の方が含水比が低下しているが、5%・0日のときよりも5%・7日の方が、経過時間が長いにもかかわらず含水比が高くなっており、この実験結果によると、引用文献1は、本願発明1のように「前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くする」こととは逆の技術思想を開示するものである旨主張している。
しかしながら、引用文献1の「土中の水分が、改良材の消化反応によって多量にうばわれ」るとの記載から、引用発明1の生石灰が添加された「ベントナイト混合土」において、水と生石灰が反応して発熱し、消石灰となる消化反応が生じていることは明らかである。
また、上記1(3)で説示したとおり、引用文献1の表-3において、生石灰の添加率が5%で養生0日及び7日のものは、いずれも無添加で養生0日のものよりも含水比が低下することが示されており、さらに、引用文献1の表-3においては、生石灰の添加率が5%で養生0日及び7日のものは、いずれも無添加で養生0日のものよりも、高い一軸圧縮強度が得られることが示されているから、引用発明1の土質改良材として5%の生石灰が添加された「ベントナイト混合土」は、生石灰を添加してから、養生を開始するまでの間に、本願発明1と同様に、水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応が生じ、反応の熱による水の蒸発により水をさらに減らし、無添加で養生0日のものよりも高い一軸圧縮強度が得られていることは明らかであり、「前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くする」ものである。
したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。
(3)請求人は、令和4年7月15日提出の意見書において、引用文献2及び引用文献3を引用文献1と組み合わせる動機がない旨主張している。
しかしながら、上記2で説示したとおり、引用技術事項2、3のように、築造物において、ベントナイト混合土を用いて、各種の築造物を形成することは、本願出願前に周知の技術であり、引用発明1と周知技術1は、いずれもベントナイト混合土に関するものであり、属する技術分野が共通している。
さらに、強度が高い材料を用いて築造物を形成し、築造物の強度を高めることは、自明な課題であるため、引用発明1において、周知技術1を適用することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。
(4)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張について検討しても、上記2での判断を左右するものではなく、採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は引用発明1であるから、特許法29条1項3号に該当し、また、引用発明1及び周知技術1または2に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-009717