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特許拒絶査定不服審判

2021-008567

液体送液方法および液体送液装置

審判番号
2021-008567
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-035564外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年06月29日
審決日
2022年03月28日
公報発行日
2022年04月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (G01N) / P18 .121-WY (G01N) / P18 .537-WY (G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017- 35564「液体送液方法および液体送液装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018-141689、請求項の数(50)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 23項目
理 由

第1 手続の経緯

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本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成29年2月27日の出願であって、令和3年1月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月12日付けで手続補正がされ、同年3月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年12月13日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和4年2月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(令和3年3月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-6、9、11-13、18-28、31、33-35、40-44、50に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願請求項1-50に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.国際公開第2009/069449号

2.特開2004-061320号公報

3.米国特許出願公開第2007/0116601号明細書

4.特表2010-506136号公報

第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-50に係る発明は、以下の引用文献4に記載された発明及び引用文献1-2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.国際公開第2009/069449号

2.特開2004-061320号公報

4.特表2010-506136号公報

2.本願請求項1-13、18-35、40-50に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明

本願請求項1-50に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明50」という。)は、令和4年2月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-50に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆うことによって、前記蓋の下面に設けられたコネクタを介して前記検体処理チップの収容部に接続される液体送液装置を用いた、前記検体処理チップへの液体送液方法であって、
前記検体処理チップ内の流路に導入する第1の液体とは異なる第2の液体であって、前記コネクタを介して前記収容部に送液される前記第2の液体の流れを計測し、
計測した流れに基づいて前記第2の液体の流れを一定の流量である第1流量に制御し、
前記第1流量に制御された前記第2の液体により、前記第2の液体に直接接触した状態の前記第1の液体を前記収容部から前記流路に押し出すことで、前記第1流量よりも多い第2流量に制御された第3の液体が流れる前記流路に前記第1の液体を一定の流量で導入して、前記第1の液体を分散質とし、前記第3の液体を連続相とするエマルジョンを形成する、液体送液方法。」

なお、本願発明2-50の概要は以下のとおりである。

本願発明2-22は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明23は、本願発明1に対応する装置の発明であり、また、本願発明24-50は、本願発明23を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献4について

(1)引用文献4の記載事項

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当審拒絶理由に引用された引用文献4には、次の記載及び図面がある(下線は当審が付した。以下同様。)。

ア 「【請求項1】
微小流体基材であって:
a)少なくとも1つの分散相流体を運ぶように適合されている少なくとも1つの入口チャネルを備えた少なくとも1つの入口モジュール;および
b)少なくとも1つの連続相流体を運ぶように適合されている少なくとも1つの主チャネルであって、該入口チャネルが連結部において該主チャネルと流体連通され、該連結部は、該分散相流体が該連続相流体と非混和性であり、かつ該連続相流体中で複数の高度に均一な単分散液滴を形成するように、フローフォーカシングのために設計された流体ノズルを備える、主チャネル;
を備える、微小流体基材。
【請求項2】
前記入口モジュールが、前記入口チャネルにサンプル流体を導入するための手段に、該入口チャネルを接続するための少なくとも1つの自己整合流体相互接続装置をさらに備え、該装置は、前記微小流体基材とサンプルを導入するための該手段の間に放射状シールを形成する、請求項1に記載の微小流体基材。」
イ 「【0037】
【図1】 図1は、本発明の微小流体基材の相互作用モジュールを図示する概略図である。」
ウ 「【0040】
基材
本発明の微小流体デバイスは1つ以上の分析ユニットを備える。「分析ユニット」は、微小基材、例えば、マイクロチップである。微小基材、基材、マイクロチップ、およびチップという用語は本明細書で交換可能に使用される。分析ユニットは、少なくとも1つの入口チャネル、少なくとも1つの主チャネル、少なくとも1つの入口モジュール、少なくとも1つの合流モジュール、および少なくとも1つの検出モジュールを備える。」
エ 「【0082】
微小流体基材上でサンプル液滴を形成するためのデバイスおよび方法
本発明は、微小流体基材上でサンプル液滴エマルジョンを形成するための組成物および方法を提供する。本発明は埋め込み微小流体ノズルもまた提供する。ライブラリーウェルから直接的に単分散エマルジョンを作製するために、本発明は、図2~6に示されるような、シリンジ先端(例えば、キャピラリーチューブ)に保存ウェル/リザーバ(例えば、シリンジ)を接続するために使用されるフィッティング内までのノズルを形成する。図2、パネルAおよびBは、ノズルセクションのための小さなフェルールを使用するノズルコンセプトの二重および単一オイルバージョンを示す。・・・形成した液滴は約45μm直径であり、PCRミックス(210μl/時間)およびSpectraSyn-10(600μl/時間)から形成された。他の試験は、SpectraSyn-2およびPCRミックスを用いて実証した。液滴は、300μm幅×260μm深さのチャネルの中を移動している。使用したノズルチューブは100μm直径であり、使用した流体はPCRミックスおよび界面活性剤を有するSpectasyn-10であった。」
オ 「【0095】
1つの実施形態において、第1の試薬(サンプル)は、保存容器(例えば、シリンジまたは他のリザーバ)中で、第2の非混和相と合わせられる。この第2の相は、顕著な損失を伴うことなく、第1の相の全体量をシステムに押し出すために使用される。より具体的には、2つの非混和流体がリザーバ中で合わせられるときに、これらの2つの流体は物質の密度が異なる限り、層に分離する傾向がある。目的の流体(例えば、サンプル流体)がリザーバの出口に最も近い場合、これは、リザーバが空である場合に、最初に離れなくてはならない(出口は、密度の違いに依存して、上端または底のいずれかに設けられ得る)。一旦試薬がリザーバから汲み出されると、第2の相が続く。次いで、この第2の相は、いかなるサンプル流体の損失も伴うことなく、第1の相をシステムから完全に汲み出す。これの一例として、オイルおよび水(試薬)がシリンジ中で合わせられる。オイルが水よりも高密度である場合、シリンジはその出口を上に向けて配向し、オイルがより低密度である場合、シリンジは下を向く。オイルは、試薬中の目的の物質が油相に溶解しないように選択される。図9はこのアプローチの一例であり、この場合、シリンジはリザーバとして使用され、第2の相は試薬相よりも高密度である。試薬がより高密度であるならば、シリンジの配向は逆転される(すなわち、出口は図の下側を向く)。」

カ 【図1】

[図:0001383129000001.jpg]

キ 【図2A】

[図:0001383129000002.jpg]

ク 【図9】

[図:0001383129000003.jpg]

(2)引用文献4に記載されているに等しい事項

ア 上記「(1)」「ア」及び上記「(1)」「エ」は後者は前者の実施形態という関係にあり、そして、後者の「PCRミックス」、「SpectraSyn-10」は、それぞれ、前者の「分散相流体」、「連続相流体」に対応すると認められる。

イ 上記「(1)」「ア」において、「分散相流体」及び「サンプル流体」はいずれも「入口チャネル」で運ばれる流体であることから同じ流体であると認められる。また、上記「(1)」「ア」及び上記「(1)」「オ」は後者は前者の実施形態という関係にあり、そして、後者の「第1の試薬(サンプル)」は、前者の「分散相流体」及び「サンプル流体」に対応していると認められる。

ウ 上記「(1)」「オ」には、「第1の試薬(サンプル)」と「第2の非混和相」とは密度の違いにより層に分離することが記載されていること、及び、当該「(1)」「オ」に対応する図面である上記「(1)」「ク」において、「試薬」と「第2の非混和性液体」とは、その間に空気等は介在しておらず、互いに直接接触することが図示されていることから、シリンジにおいて「第1の試薬(サンプル)」と「第2の非混和相」とは直接接触していると認められる。

(3)引用発明

上記「(1)」、「(2)」より、引用文献4には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

ここで、上記「(2)」のとおり、上記「(1)」「ア」の「分散相流体」及び「サンプル流体」、上記「(1)」「エ」の「PCRミックス」、上記「(1)」「オ」の「第1の試薬(サンプル)」は同じものを示していることから、これらは「PCRミックス」として整理した。また、上記「(1)」「ア」の「連続相流体」と上記「(1)」「エ」の「SpectraSyn-10」は同じものを示していることから、これらは「SpectraSyn-10」として整理した。

「シリンジ中でPCRミックスをオイルである第2の非混和相と合わせ、シリンジにおいてPCRミックスと第2の非混和相とは直接接触し、第2の非混和相を使用してPCRミックスを押し出し、微小流体基材の入口チャネルにPCRミックスを導入し、
微小流体基材は、PCRミックスを運ぶように適用されている入口チャネルを備えた入口モジュール、および、SpectraSyn-10を運ぶように適合されている主チャネルを備え、入口チャネルは連結部において主チャネルと流体連通され、連結部はSpectraSyn-10中で複数の単分散液滴を形成する流体ノズルを備え、
PCRミックス(210μl/時間)およびSpectraSyn-10(600μl/時間)から液滴を形成し、
微小流体基材はマイクロチップである、
微小流体基材上でサンプル液滴エマルジョンを形成するための方法。」

2.引用文献1について

(1)引用文献1の記載事項

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当審拒絶理由に引用された引用文献1には、次の記載及び図面がある(下線は当審が付した。以下同様。)。

ア 「[0023] 図1は、本発明の実施形態における検査装置82の外観図である。
[0024] 検査システム80は検査装置82とマイクロチップ1から構成される。検査装置82はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。検査装置82には挿入口83があり、マイクロチップ1を挿入口83に差し込んで検査装置82の内部にセットするようになっている。
[0025] なお、挿入口83はマイクロチップ1を挿入時に接触しないように、マイクロチップ1の厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子である。
[0026] 検査担当者は図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。検査装置82の内部では、制御手段の指令により図1には図示せぬマイクロポンプユニット5がマイクロチップ1に駆動液等の液体を注入し、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われる。」

イ 「[0048] 図4(a)、図4(b)はマイクロチップ1の外観図である。図4(a)において矢印は、後述する検査装置82にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図4(a)は挿入時にマイクロチップ1の上面となる面を図示している。図4(b)はマイクロチップ1の側面図である。」

ウ 「[0055] 図4(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
[0056] 微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部221、試薬類を収容する試薬収容部220などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部220には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図4(c)において、試薬収容部220、検体収容部221および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
・・・
[0060] 次に、駆動液注入部110aから駆動液50を注入すると、駆動液50は連通する微細流路を通って検体収容部221に収容されている検体を押し出し、増幅部222に検体を送り込む。」
エ 「[0068] 初期状態において、マイクロチップ1は図5の紙面左右方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
[0069] 温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1を所定の温度に調整するユニットである。
[0070] 図示せぬ制御部が、チップ検知部95がオンになった信号を受信すると、駆動部材によりマイクロチップ1を下降させて、マイクロチップ1の下面を温度調節ユニット152とパッキン92を介して中間流路部180に押しつけて密着させる。
[0071] マイクロチップ1の駆動液注入部110は、マイクロチップ1とパッキン92を密着させたときに、中間流路部180に設けられた対応する開口185とそれぞれ連通する位置に設けられている。中間流路部180は、中間流路182の溝を設けた透明な第1基板184と、第1基板184を覆う透明な第2基板183から構成され、中間流路182の両端には開口185と開口186が設けられている。開口186はパッキン90bを介してマイクロポンプユニット5の入出力口146と連通している。
[0072] マイクロポンプユニット5の吸込側には、パッキン90aを介して駆動液タンク91が接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液をパッキン90aを介して吸い込むようになっている。一方、マイクロポンプユニット5の吐出側の端面に設けられた入出力口146は中間流路182を介してマイクロチップ1の駆動液注入部110と連通しているので、マイクロポンプユニット5から送り出された駆動液は、マイクロチップ1の駆動液注入部110からマイクロチップ1内に形成された流路250に注入される。このようにして、マイクロポンプユニット5から駆動液注入部110に駆動液を注入する。」

オ [図1]

[図:0001383129000004.jpg]

カ [図4]

[図:0001383129000005.jpg]

キ [図5]

[図:0001383129000006.jpg]

(2)引用文献1記載の技術的事項

上記「(1)」より、引用文献1には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「検査装置82とマイクロチップ1から構成され、マイクロチップ1を検査装置82の挿入口83に差し込んで検査装置82の内部にセットする検査システム80において、マイクロチップ1を挿入すると、マイクロチップ1の下面はパッキン92を介して中間流路部180に密着して、マイクロポンプユニット5が中間流路部180の中間流路182を介してマイクロチップ1の駆動液注入部110と連通し、マイクロポンプユニット5はマイクロチップ1に駆動液を注入し、注入された駆動液はマイクロチップ1内部の検体収容部221に収容されている検体を押し出して増幅部222に検体を送り込む、技術。」

3.引用文献2について

(1)引用文献2の記載事項

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当審拒絶理由に引用された引用文献2には、次の記載及び図面がある(下線は当審が付した。以下同様。)。

ア 「【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例について添付図面により説明する。
図1及び図2は第一実施例によるマイクロ流体デバイスを示すもので、図1はその平面図、図2は図1のA-A線縦断面図である。
図に示すマイクロ流体デバイスDaは化学反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応を行う送液方法に用いるものである。」
イ 「【0016】
本実施例によるマイクロ流体デバイスDaは上述の構成を有しており、次にこのデバイスDaの送液方法について説明する。
先ず第一の送液方法として、マイクロ流体デバイスDaの注入口7にDNAを含むPCR用反応溶液を液体A(試料液体)としてマイクロシリンジを用いて注入する。このとき液体Aの注入量は任意である。液体Aの注入量が比較的多い場合には、液体Aは注入口7内に十分な量が残存し、接続配管管9を注入口7に接続する際に気泡の混入を避けることが出来る。一方、注入する液体Aが極微量の場合には、注入された液体Aは、流路の表面が親水性で有る場合には、毛細管現象で大部分又は全ての液体Aが流路4に入り込み、注入口7に残存する量がほとんど又は全く無くなる場合がある。このような場合には、後述のように液体Bを注入口7に適量注入した後、接続配管9を接続することで、気泡の混入を避けることが出来る。
尚、液体Aの注入完了状態で液体Aが流路4に入り込む量は任意である。液体Aの全量が流路4に入り込んでも良いし、液体Aの一部が流路4を充填し、残余が注入口7に残留していても良い。 次に図2に示すように他端にマイクロシリンジポンプ(図示せず)を装着した接続配管9の先端を注入口7内に嵌挿させ、マイクロシリンジポンプを駆動させて液体B(駆動液体)として液体Aと非相溶性のミネラルオイル等を注入口7から気泡を混入させないように充填する。前述のように、注入口7内の液体Aの残留量が少ない場合には、接続配管9の注入口7への嵌挿に先立って、マイクロシリンジを用いて、或いはマイクロシリンジポンプを一時的に作動させて接続配管9から注入口7内に液体Bを注入することによって、気泡の混入を防止できる。
これによって液体Aは液体Bで押されて流路4内を一定速度で送液され、三つの温調領域部α、β、γを順次通過することで温度履歴を受ける。そして液体Aは流出口8からDNAが増幅された反応溶液として採取される。」

ウ 【図1】

[図:0001383129000007.jpg]

エ 【図2】

[図:0001383129000008.jpg]

(2)引用文献2記載の技術的事項

上記「(1)」より、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「他端にマイクロシリンジポンプを装着した接続配管9の先端をマイクロ流体デバイスDaの液体A(試料液体)が注入された注入口7内に嵌挿し、マイクロシリンジポンプを駆動して液体B(駆動液体)を注入口7から充填することで、液体Aを液体Bで押して流路4内を一定速度で送液させる、技術。」

4.引用文献3について

原査定に引用された引用文献3には、次の記載及び図面がある。

なお、引用文献3は当審拒絶理由では引用されていない。

(1)「[0041] The invention is illustrated with reference to the embodiment shown in FIG. 1 which is a schematic diagram of an automated analytical device. There is provided an automated analytical apparatus 10 which includes a precision pump unit 20 comprising a stepper motor 22 connected to a piston or plunger on syringe 24. The syringe is in communication with analytical conduit 30 which is filled with a perfluorocarbon carrier fluid 32 (also sometimes referred to as “carrier liquid,” “system fluid” or the like). A sampling unit 34 is positioned along the analytical conduit as a discrete module or incorporated into the doser module as shown in FIG. 1. The sampling unit 34 is configured to provide discrete sample aliquots to the analytical conduit from a sample source.」

(当審訳:「[0041] 本発明は、自動分析装置の概略図である図1に示される実施形態を参照して説明される。シリンジ24のピストンまたはプランジャーに接続されたステップモーター22を含む高精度ポンプユニット20を含む自動化分析装置10が設けられている。シリンジは、ペルフルオロカーボン担体流体32(担体流体、システム流体などと呼ばれることもある。)で充填され、分析導管30と連絡している。サンプリング部34は、分析導管に沿って別個または図1に示すように分配モジュールに組み込まれるモジュールとして設けられる。サンプリング部34は、サンプル源から分析管に離散的なサンプルアリコートを提供するように構成されている。」)

(2)FIG.1

[図:0001383129000009.jpg]

第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明は、「微小流体基材の入口チャネルにPCRミックスを導入」し、「微小流体基材は」「主チャネルを備え、入口チャネルは連結部において主チャネルと流体連通され」、「微小流体基材はマイクロチップである」ものである。よって、引用発明の「入口チャネル」及び「主チャネル」、「微小流体基材」は、それぞれ、本願発明1の「流路」、「検体処理チップ」に相当し、引用発明は、本願発明1の「流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆うことによって、前記蓋の下面に設けられたコネクタを介して前記検体処理チップの収容部に接続される液体送液装置を用いた、前記検体処理チップへの液体送液方法」のうち、「流路が形成された検体処理チップ」「への液体送液方法」に相当する構成を具備する。

(イ)引用発明は、「シリンジ中でPCRミックスをオイルである第2の非混和相と合わせ」、「第2の非混和相を使用してPCRミックスを押し出し、微小流体基材の入口チャネルにPCRミックスを導入し」、「PCRミックス(210μl/時間)」「から液滴を形成」するものである。

ここで、「PCRミックス(210μl/時間)」とあることから、「PCRミックス」は「210μl/時間」の流量で「微小流体基材の入口チャネル」に導入されるのは明らかである。また、「第2の非混和相を使用してPCRミックスを押し出」すのだから、「第2の非混和相」の流量は「PCRミックス」の流量である「210μl/時間」と同じないしは略同じ流量に制御されることも明らかである。

そうすると、引用発明の「PCRミックス」、「オイルである第2の非混和相」、「『210μl/時間』と同じないしは略同じ流量」は、それぞれ、本願発明1の「前記検体処理チップ内の流路に導入する第1の液体」、「第1の液体とは異なる第2の液体」、「一定の流量である第1流量」に相当し、引用発明は、本願発明1の「前記検体処理チップ内の流路に導入する第1の液体とは異なる第2の液体であって、前記コネクタを介して前記収容部に送液される前記第2の液体の流れを計測し、計測した流れに基づいて前記第2の液体の流れを一定の流量である第1流量に制御し」のうち、「前記検体処理チップ内の流路に導入する第1の液体とは異なる第2の液体」「の流れを一定の流量である第1流量に制御し」に相当する構成を具備する。

(ウ)引用発明は、「シリンジにおいてPCRミックスと第2の非混和相とは直接接触し、第2の非混和相を使用してPCRミックスを押し出し、微小流体基材の入口チャネルにPCRミックスを導入し」、「微小流体基材は」、「SpectraSyn-10を運ぶように適合されている主チャネルを備え、入口チャネルは連結部において主チャネルと流体連通され、連結部はSpectraSyn-10中で複数の単分散液滴を形成する流体ノズルを備え」、「PCRミックス(210μl/時間)およびSpectraSyn-10(600μl/時間)から液滴を形成し」、「微小流体基材上でサンプル液滴エマルジョンを形成する」ものである。

ここで、「PCRミックス(210μl/時間)」、「SpectraSyn-10(600μl/時間)」とあることから、「PCRミックス」は「210μl/時間」の流量で「微小流体基材の入口チャネル」及びこれと「流体連通」する「主チャネル」に導入され、「SpectraSyn-10」は「600μl/時間」の流量で「主チャネル」を運ばれるのは明らかである。

そうすると、引用発明の「600μl/時間」、「SpectraSyn-10」、「210μl/時間」は、それぞれ、本願発明1の「前記第1流量よりも多い第2流量」、「第3の液体」、「一定の流量」に相当し、引用発明は、本願発明1の「前記第1流量に制御された前記第2の液体により、前記第2の液体に直接接触した状態の前記第1の液体を前記収容部から前記流路に押し出すことで、前記第1流量よりも多い第2流量に制御された第3の液体が流れる前記流路に前記第1の液体を一定の流量で導入して、前記第1の液体を分散質とし、前記第3の液体を連続相とするエマルジョンを形成する」のうち、「前記第1流量に制御された前記第2の液体により、前記第2の液体に直接接触した状態の前記第1の液体を」「前記流路に押し出すことで、前記第1流量よりも多い第2流量に制御された第3の液体が流れる前記流路に前記第1の液体を一定の流量で導入して、前記第1の液体を分散質とし、前記第3の液体を連続相とするエマルジョンを形成する」に相当する構成を具備する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

【一致点】

「流路が形成された検体処理チップへの液体送液方法であって、
前記検体処理チップ内の流路に導入する第1の液体とは異なる第2の液体の流れを一定の流量である第1流量に制御し、
前記第1流量に制御された前記第2の液体により、前記第2の液体に直接接触した状態の前記第1の液体を前記流路に押し出すことで、前記第1流量よりも多い第2流量に制御された第3の液体が流れる前記流路に前記第1の液体を一定の流量で導入して、前記第1の液体を分散質とし、前記第3の液体を連続相とするエマルジョンを形成する、液体送液方法。」

【相違点1】

「検体処理チップへの液体送液方法」に用いる装置について、

本願発明1は、「流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆うことによって、前記蓋の下面に設けられたコネクタを介して前記検体処理チップの収容部に接続される液体送液装置」を用いており、

「第2の液体」は「前記コネクタを介して前記収容部に送液され」、「第1の液体」を「前記収容部から前記流路に押し出す」のに対し、

引用発明は、

「シリンジ」を用いており、

「第2の非混和相」(「第2の液体」)は「シリンジ」中で「PCRミックス」(「第1の液体」)と合わせられ、「PCRミックス」(「第1の液体」)を「シリンジ」から「入口チャネル」(「流路」)に押し出す点。

【相違点2】

「第2の液体の流れを一定の流量である第1流量に制御」することについて、

本願発明1は、「前記コネクタを介して前記収容部に送液される前記第2の液体の流れを計測し、計測した流れに基づいて」制御を行うのに対し、

引用発明は、制御手法が不明である点。

(2)相違点についての判断

上記相違点1について検討する。

上記「第5」「2.」「(2)」のとおり、引用文献1には、検査装置82とマイクロチップ1から構成され、マイクロチップ1を検査装置82の挿入口83に差し込んで検査装置82の内部にセットする検査システム80において、マイクロチップ1を挿入すると、マイクロチップ1の下面はパッキン92を介して中間流路部180に密着して、マイクロポンプユニット5が中間流路部180の中間流路182を介してマイクロチップ1の駆動液注入部110と連通し、マイクロポンプユニット5はマイクロチップ1に駆動液を注入し、注入された駆動液はマイクロチップ1内部の検体収容部221に収容されている検体を押し出して増幅部222に検体を送り込む技術が記載されているところ、この引用文献1記載の技術的事項の「マイクロチップ1」、「パッキン92」、「検体収容部221」、「検査装置82」、「駆動液」、「検体」は、それぞれ、上記相違点1に係る本願発明1の「検体処理チップ」、「コネクタ」、「収容部」、「液体送液装置」、「第2の液体」、「第1の液体」に相当しているといい得るものの、引用文献1は、上記相違点1に係る本願発明1の「液体送液装置」は「蓋によって前記検体処理チップを上方から覆う」点や、「コネクタ」は「前記蓋の下面に設けられ」る点に相当する構成を開示するものではない。

また、上記「第5」「3.」「(2)」のとおり、引用文献2には、他端にマイクロシリンジポンプを装着した接続配管9の先端をマイクロ流体デバイスDaの液体A(試料液体)が注入された注入口7内に嵌挿し、マイクロシリンジポンプを駆動して液体B(駆動液体)を注入口7から充填することで、液体Aを液体Bで押して流路4内を一定速度で送液させる技術が記載されているところ、この引用文献2記載の技術的事項の「マイクロ流体デバイスDa」、「接続配管9の先端」、「注入口7」、「他端にマイクロシリンジポンプを装着した接続配管9」、「液体B(駆動液体)」、「液体A(試料液体)」は、それぞれ、上記相違点1に係る本願発明1の「検体処理チップ」、「コネクタ」、「収容部」、「液体送液装置」、「第2の液体」、「第1の液体」に相当しているといい得るものの、引用文献2は、上記相違点1に係る本願発明1の「液体送液装置」は「流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆う」点や、「コネクタ」は「前記蓋の下面に設けられ」る点に相当する構成を開示するものではない。

加えて、引用発明のシリンジを本願発明1の「流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆うことによって、前記蓋の下面に設けられたコネクタを介して前記検体処理チップの収容部に接続される液体送液装置」とする動機もない。

よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献1-2に記載された技術的事項から、上記相違点1に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。

したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-22について

本願発明2-22も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明23-50について

本願発明23は本願発明1に対応する装置の発明であり、また、本願発明24-50は本願発明23と同一の構成を備えるものであるから、本願発明23-50も、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 特許法第36条第6項第1号に関する当審拒絶理由について

当審では、エマルジョンを形成しない場合についてまで特許を請求している請求項1-13、18-35、40-50に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないとの拒絶の理由を通知しているが、令和4年2月14日付けの補正により、請求項1、23において「前記第1の液体を分散質とし、前記第3の液体を連続相とするエマルジョンを形成する」が特定されたことから、この拒絶の理由は解消した。

第8 原査定についての判断

令和4年2月14日付けの補正により、補正後の請求項1-22は「流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆うことによって、前記蓋の下面に設けられたコネクタを介して前記検体処理チップの収容部に接続される液体送液装置を用いた、前記検体処理チップへの液体送液方法」であり、「第2の液体」は「前記コネクタを介して前記収容部に送液され」、「第1の液体」を「前記収容部から前記流路に押し出す」という技術的事項を有するものとなり、また、補正後の請求項23-50は「流路が形成された検体処理チップを受け入れ、蓋によって前記検体処理チップを上方から覆うことによって、前記蓋の下面に設けられたコネクタを介して前記検体処理チップの収容部へ液体を送液するための液体送液装置」であり、「第2の液体」は「前記コネクタを介して前記収容部に送液され」、「第1の液体」を「前記収容部から前記流路に押し出す」という技術的事項を有するものとなった。これら技術的事項は、上記相違点1に対応する構成であって、原査定における引用文献1-4には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、引用文献1に記載された発明を主引用発明としても、本願発明1-50は、当業者であっても、原査定における引用文献1-4に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-008567

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