特許拒絶査定不服審判
2021-007126
推進力発生装置及び推進力発生方法
- 審判番号
- 2021-007126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-532843
- 請求日
- 2021年06月01日
- 審決日
- 2023年02月07日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】石井 亮
- 【請求人代理人】木村 高明
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 山本 信平
- 分類
- P18 .536-WZ (F03G) / P18 .14 -WZ (F03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第2条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-532843「推進力発生装置及び推進力発生方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年12月16日国際公開、WO2021/250864〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月11日を国際出願日とする出願であって、令和2年8月7日(発送日:同年8月14日)に拒絶理由が通知され、令和2年12月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年2月26日(発送日:同年3月2日)に拒絶査定がされ、これに対して令和3年6月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和3年6月4日に手続補足書が提出され、令和3年9月16日(発送日:同年9月17日)に当審において拒絶理由が通知され、令和3年11月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年11月16日に手続補足書が提出され、令和4年10月27日に上申書が提出され、令和4年10月28日に手続補足書が提出され、令和4年12月8日に面接を行ったものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和3年11月15日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、以下のとおりものである。
「 【請求項1】
回転可能に配置された親回転体と、
前記親回転体を回転角速度ω0で回転駆動する手段と、
前記親回転体に配置され、前記親回転体の円周方向に回転軸を備えるn個(n≧1の整数)の子回転体と、
前記子回転体を回転角速度ω1で回転駆動する手段とを備えた推力発生装置において、
前記子回転体を回転駆動する手段は前記子回転体を滑り機構によって回転駆動し、前記回転角速度ω0と前記回転角速度ω1とは同符号を備え、
[図:0001396616000001.jpg]
を満足し、
前記親回転体の回転軸と前記子回転体の回転軸とは離間すると共に、交差することなく配置されていることを特徴とする推力発生装置。
【請求項2】
前記子回転体の慣性モーメントをI1、前記親回転体の中心から前記子回転体の重心までの距離をr、前記子回転体の質量をm、前記子回転体の半径aとしたとき、
前記親回転体の軸方向の推進力Fが、
[図:0001396616000002.jpg]
となることを特徴とする請求項1に記載の推進力発生装置。
【請求項3】
回転可能に配置された親回転体を回転角速度ω0で回転駆動し、
前記親回転体に配置され、前記親回転体の円周方向に回転軸を備えるn個(n≧1の整数)の子回転体を回転角速度ω1 で回転駆動して推力を発生させる推力発生方法において、
前記子回転体は、回転駆動する手段に滑り機構によって前記親回転体の前記回転角速度ω0と同符号の回転角速度ω1で回転駆動し、
前記回転角速度ω0と前記回転角速度ω1が同符号を備え、
[図:0001396616000003.jpg]
を満足し、
前記親回転体の回転軸と前記子回転体の回転軸とは離間すると共に、交差することなく配置されていることを特徴とする推力発生方法。
【請求項4】
前記子回転体の慣性モーメントをI1、前記親回転体の中心から前記子回転体の重心までの距離をr、前記子回転体の質量をm、前記子回転体の半径aとしたとき、
前記親回転体の軸方向の推進力Fが、
[図:0001396616000004.jpg]
であることを特徴とする請求項3に記載の推進力発生方法。」
第3 当審拒絶理由の内容
令和3年9月16日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の内容は、以下のとおりである。
「1.(実施可能要件)本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(発明該当性)本願の請求項1ないし4に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
3.(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
●理由1(実施可能要件)について
本願の請求項1及び2に記載の「推力発生装置」、請求項3及び4に記載の「推力発生方法」(以下、前者を「本件装置」、後者を「本件方法」といい、両者を総称して「本件装置・方法」という。)において、「推力」とは、請求項2及び4の記載、発明の詳細な説明の記載及び図面を参酌すると「親回転体の軸方向の推進力」(以下、単に「推進力」という。)を意味するものと解される。
しかしながら、本件装置・方法により、なぜ推進力が発生するのか、発明の詳細な説明の記載及び図面の記載からは、当業者が理解することができず、また、実際に推進力Fが発生するということを確認できない。具体的には以下のとおりである。
(1)本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0115】ないし【0132】には図11ないし13を参照して実験結果及び考察が記載されている。
そして、第8回実験及び第9回実験について、段落【0123】及び【0124】には「これは、ロードセル測定の零点がずれていたためと考察される。」と記載されている。
また、段落【0127】及び【0128】において
「【0127】親ロータ回転数を1000[rpm]近傍とした第4実験~第9実験では振動が激しかったため、結果にばらつきがでている。第4、第5実験、及び第7実験においては、ロードセルの出力がほぼ同じ数値となっている。これに対して、第6実験,第8実験,第9実験においては、関連性が薄い数値が出力されている。
【0128】これは、第6実験,第8実験,第9実験で振動が生じ、ロードセルが影響を受けたものと判断される。これに対して、第4実験,第5実験,第7実験においてロードセルがほぼ同じ数値を出力している。よって、これらを意味がある測定値と判断する。
と記載されている
しかしながら、第4実験~第9実験で振動が激しかったのに、なぜ、第6実験、第8実験及び第9実験だけロードセル測定の零点がずれていたと判断し、ロードセルがほぼ同じ数値を出力している第4実験、第5実験及び第7実験の結果を意味がある測定値と判断たのか、換言すれば、他の実験(第1ないし3実験を含む)においては、ロードセル測定の零点ずれがなかったといえるのか、その根拠が不明である
そのため、実験結果は客観的に信用できるものではなく、当業者が、本件装置・方法により、実際に推進力Fを発生するということを確認できない
(2)本願の請求項1及び3に記載の数式
[図:0001396616000005.jpg]
について、請求人は審判請求書において次のように述べている。
「独立項である請求項1及び請求項3に記載の本願発明の核心部分は、親回転体と子回転体の回転角速度の関係を特定する数式(以下単に「本件数式」と称します)、及び数式関連事項にあります。」(3ページ17ないし19行)
「本願発明の核心的な構成として本件数式により、「本発明に係る推進力発生装置及び推進力発生方法によれば、回転体の回転運動から推進力を効率的に得ることができる。」(当所明細書[0013][発明の効果]参照)、という効果を奏するものであります。」(4ページ13ないし16行)
ここで、実験装置においてはn=2(段落【0110】)であるから、本件数式に当てはめると、親回転体の回転角速度ω0と子回転体の回転角速度ω1の関係は、
2π2/2×ω0≦ω1
9.8596×ω0≦ω1
ω1/ω0≧9.8596
となる。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0115】ないし【0132】及び図11ないし13に記載された実験結果は、ω1/ω0が約23~24の場合(第1ないし3回実験)、約10~11の場合(第4ないし6回実験)、約13~14の場合(第7ないし9回実験)しか示されておらず、ω1/ω0=9.8596前後の実験結果が示されていないから、本件数式の臨界的意義が確認できておらず、本件数式を満たす場合、すなわち、ω1/ω0≧9.8596の場合に、回転体の回転運動から推進力を効率的に得ることができることを示すものではない。
(3)発明の詳細な説明の段落【0082】ないし【0086】において、敷居係数の算出について記載されているが、特に、段落【0085】の「今ここに、子ロータ20の描く変化量が、中心角速度の与える変化量を下回る場合、子ロータ20の角速度の変化になってしまう。」との記載の技術的な意味が不明であり、これに基づいて導かれた式(5.2)及び式(5.3)(本件数式)の技術的な意味も理解できない。
請求人は令和2年12月14日の意見書において、「[0082]に記載する「敷居係数」に関しましては、下記に模式的に図示するように、子ロータの回転数が、親ロータの回転数のある係数(敷居係数)倍でないと出力が発生しないという実験的事実に基づいて計算を行ったものであります。・・・」と述べているが、当該実験の具体的な方法や結果が示されていないため、式(5.2)及び式(5.3)の導出の根拠が不明であり、敷居係数の導出の根拠が理解できない。
(4)発明の詳細な説明の段落【0087】ないし【0099】において、出力の算出について記載されている。
ここで、段落【0091】の式(6.6)は、ω1=0のときEn=0という境界条件で式(6.5)を時間積分したものと思われるが、そうであるなら、式(6.6)はω1が0からある値まで変化した場合、その増加した回転エネルギーに等しいエネルギーがどこかから与えられるということしか意味しない。ω1が一定であればEnは0であるし、ω1が変化しているのであれば、通常それを回転駆動させる手段から与えられるエネルギーである。
よって、このEnに基づいて導かれた出力(推進力F)の式(段落【0099】の式(6.17))は、本件装置・方法の出力(推進力)を表すものとはいえないため、本件装置・方法がなぜ推進力を発生するのか、当業者が理解できない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
●理由2(発明該当性)について
特許法第2条第1項には、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定され、同法第29条第1項柱書には、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。
したがって、請求項に記載されたものが「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは、そのものは特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないことになるから、特許を受けることができない。例えば、請求項に記載されたものが、自然法則に反するものであるときには、そのものは、自然法則を利用したものとはいえないため、「発明」に該当しない(『特許・実用新案審査基準』の第III部 第1章2.1.3等を参照。)。
そこで、本願の請求項1及び2に記載された「推力発生装置」、請求項3及び4に記載された「推力発生方法」が、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否か、即ち特許法第2条第1項に定義された「発明」に該当するか否かについて、検討する。
ここで「推力」とは、上記「●理由1について」で述べたように、請求項2及び4の記載、発明の詳細な説明の記載及び図面を参酌すると「親回転体の軸方向の推進力」を意味するものと解される。
そして、推進力が発生するということは、本件装置自体が動くか、本件装置が他の物体を動かすということである。
仮に前者を想定した場合、本件装置が静止している状態から動き出すということは、加速度が生じ、速度をもつということである。ここで、本件装置の質量をm、本件装置の速度をv、本件装置の加速度をaとすると、慣性の法則から、本件装置は親回転体の軸方向にmaという力を受けなければならない。しかしながら、発明の詳細な説明の記載を参酌してもそのような力の源は存在しない。
作用反作用の法則によれば、本件装置が外部の物体等(例えば、床や空気等)にmaなる力を作用させれば、本件装置は動くが、装置は、親回転体及び子回転体を回転駆動するものであって、外部の物体等に力を作用させるものではない。
また、本件装置が速度vで動けば、mvという運動量を持つことになり、運動量保存の法則によれば、本件装置の移動方向とは逆方向にmvの運動量を生じさせる必要があるところ、本件装置は、親回転体及び子回転体を回転駆動するものであって、本件装置の移動方向とは逆方向にmvの運動量を生じさせるものでもない。
そうすると、本件装置・方法は、慣性の法則、作用反作用の法則及び運動量保存の法則に反するものである。
請求人は「本願発明に係る「推進力の発生」については、これは、新たな「発見」であり、既存の物理法則の見落としであると考えております。後述しますが、実験観測行為は正しい手段で行われているものであり、実験結果の正しい評価である観察及びデータが、既存の物理学の法則によって記述されないことを理由として評価されない点、及び「推進力を発生させることができるのか不明である」と評価されるのは不適当な認定であると思料されます。」(令和2年12月14日の意見書9ページ)と述べているが、実験結果は上記「●理由1について」で述べたように、信用性に乏しく、発明の詳細な説明及び図面の記載を見ても、慣性の法則、作用反作用の法則及び運動量保存の法則に反して、推進力を発生させることができると認めるに足る根拠は見出せない。
したがって、請求項1ないし4に記載されたものは、作用反作用の法則や運動量保存の法則等の物理法則、すなわち、自然法則に反するものである。
以上のとおりであるから、請求項1ないし4に記載されたものは、自然法則に反するものとなっているため、特許法第29条第1項柱書でいう発明に該当しない。
●理由3(明確性)について
(1)請求項1及び3に記載の「柔なる結合」とは、どのような結合を意味するのか明確でない。
発明の詳細な説明の段落【0100】には、「回転を逃がす柔なる結合、即ち滑り機構が必要となる。」との記載があるが、「柔なる結合」の記載では、「滑り機構」以外にも、回転変動を吸収するために駆動軸と被駆動体とを弾性部材で結合したようなものも含み得るが、請求項1及び3に記載の「柔なる結合」が、滑り機構以外の、回転変動を吸収するために駆動軸と被駆動体とを弾性部材で結合したようなものも含むのか明確でない。
(2)請求項1及び3に「前記回転角速度ω0と前記回転角速度ω1とは同符号を備え」との記載があるが、回転角速度の符号(正負)をどのように定義するのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明なため、「同符号」の意味も不明である。
(3)請求項1及び3に「前記子回転体は前記親回転体の回転駆動範囲内に配置され」との記載があるが、「親回転体の回転駆動範囲」とは、どのような範囲を意味するのか明確でない。
親回転体の回転によって駆動される範囲、といった意味であるならば、請求項1及び3では、「前記親回転体に配置され、・・・n個(n≧1の整数)の子回転体」と記載されているように、子回転体が親回転体に配置されることが特定されているのだから、子回転体が親回転体の回転によって駆動される範囲にあることは自明ではないか。
(4)請求項1及び3に「親回転体の回転面上において」との記載があるが、「親回転体の回転面」とは、どの面を意味するのか明確でない。一般的には、「回転面」とは「平面上の直線または曲線を、その平面上の一直線のまわりに回転させたときにできる曲面。」(デジタル大辞泉)を意味するが、本願発明の場合、何が「親回転体の回転面」に相当するのか不明である。
よって、請求項1及び3に係る発明並びに請求項1及び3に係る発明を引用する請求項2及び4に係る発明は明確でない。
なお、上記理由1及び2については、例えば、公的な試験機関など信頼し得る第3者の再現実験等により確認された実験成績証明書により、本件装置・方法が、推進力を発生することが確認できる場合には、この限りではない。
推進力の発生を証明するには、詳細な実験条件を示し、検出器の特性(例えば、ロードセルを用いるのであれば、零点にずれは無いか、正負の対称性等)を十分に確認するともに、外部からのノイズの誤認でないことの確認が必要であり、またその確認のために対照実験等も必要であることに留意されたい。
(実験成績証明書の作成に、この通知書に対する意見書の提出期間を超える期間が必要とされる場合には、意見書にその旨、並びに作成に要する期間の目処を記載し、その後に上申書によって実験成績証明書を提出されたい。)」
第4 請求人の対応
当審拒絶理由に対して、請求人は、令和3年11月15日に意見書(以下「意見書」という。)及び手続補正書(以下「補正書」という。)を提出し、意見書において次のように述べている。
「3.補正
(1)補正の内容
本件特許出願人は、同日付提出の手続補正書により、請求項1及び3を以下のように補正しております。
【請求項1】
(内容は省略)
【請求項3】
(内容は省略)
(2)補正の説明
上記補正は、「明確性」違反の拒絶理由(1)、(3)、(4)に対するものであります。
(1)「揉なる結合」に関しては「滑り機構」に限定しております。(3)「親回転体の回転駆動範囲」に関しては、「前記子回転体は前記親回転体の回転駆動範囲内に配置され、」の文言を削除しております。(4)「親回転体の回転面上において」に関しては、「前記親回転体の回転面上において」に関しては、この文言を削除しております。
これらの補正は、特許法第17条-2第5項第4号に規定する「明瞭でない記載の釈明」に該当するものであり適法な補正であると思料いたします。上記補正により「明確性」違反の拒絶理由(1)、(3)、(4)は解消しているものと判断します。」
「5.本件再現実験について
(1)本願発明の発明者は、本件拒絶理由通知の理由1及び2に対応すべき、拒絶理由通知において示唆いただいたように、「本願発明の第三者による再現実験」(以下、「本件再現実験」と称します)を行います。」
そして、令和4年10月28日に手続補足書により「本願発明の再現実験に係る実証実験報告書」(以下「実証実験報告書」という。)が提出され、令和4年12月8日の面接(以下「面接」という。)において、実証実験報告書の内容について説明を受けた。
第5 当審の判断
意見書の上記主張によれば、補正書による補正は、当審拒絶理由の理由3(明確性)を解消するためになされたものであり、当審拒絶理由の理由1(実施可能要件)及び理由2(発明該当性)は、実証実験報告書により解消しようとしているものと理解できるので、以下、実証実験報告書について検討する。
1 実証実験報告書の記載
(1)6枚目(以下「対照実験例1の実験結果」という。)
[図:0001396616000006.jpg]
イ 7枚目(以下「対照実験例2の実験結果」という。)
[図:0001396616000007.jpg]
ウ 8枚目(以下「推進力を観測できた実験例の実験結果」という。)
[図:0001396616000008.jpg]
2 面接において確認した事項
(1)上記対照実験例1の実験結果、対照実験例2の実験結果及び推進力を観測できた実験例の実験結果のグラフの縦軸及び横軸が示す技術的事項について、いずれも縦軸は推進力(単位N)、横軸はロードセルからのデータの取り込み回数との説明を受けた。
(2)推進力を観測できた実験例の実験結果における「矢印のところで、子ロータ、親ロータの回転数を上昇させた結果、推進力発生を示す子ロータの「滑り」が発生したことを確認した(音が変わったことにより確認)。」との記載について、「滑り」が発生したことを確認した時の子ロータ及び親ロータの回転数は記録していなかったのでわからない旨の回答を受けた。
また、推進力を観測できた実験例の実験結果のグラフにおいて、「音が変わった」ところを具体的に示すように求めたところ、明確に示すことはできなかった。
3 当審の判断
(1)上記2(2)のとおり、推進力を観測できた実験例の実験結果において、推進力発生を示す子ロータの「滑り」が発生したことを確認した時の子ロータ及び親ロータの回転数は不明である。
(2)推進力を観測できた実験例の実験結果において、「滑り」が発生したことを「音が変わったことにより確認」しているのみであって、音以外の客観的な手段により「滑り」が発生したことを確認していないから、「音が変わった」理由が「滑り」によるものとは直ちにいうことができない。
また、「滑り」が発生した(音が変わった)時を具体的に特定することができず、また、「滑り」が発生したことを確認した時の子ロータ及び親ロータの回転数が不明であるから、推進力を観測できた実験例の実験結果において、「滑り」が発生した時を特定することができない。それ故に、「滑り」が発生した時の前後における推進力の変化が確認できない。
(3)上記(2)から、たとえ、推進力を観測できた実験例の実験結果のグラフにおいて横軸13483付近より右側において、推進力の平均値が約2Nとなったことが読み取れるとしても、実証実験結果報告書及び面接における請求人の説明からは、このことが如何なる理由により生じたのか理解することができず、結論として、実際に「滑り」が発生したことにより「推進力」が発生したと理解することはできないといわざるを得ない。
(4)さらに、対照実験例1の実験結果及び対照実験例2の実験結果と、推進力を観測できた実験例の実験結果の間には推進力の変化に際があることは認められるものの、推進力を観測できた実験例の実験結果では、矢印のところで子ロータ及び親ロータの回転数を変化させているのに対して、対照実験例1の実験結果及び対照実験例2の実験結果においては、子ロータ及び親ロータの回転数を変化させていないなど実験条件は異なり、上記(3)のとおり、推進力を観測できた実験例の実験結果における推進力の変化の理由は明らかでないのであるから、対照実験例1の実験結果及び対照実験例2の実験結果との比較において推進力が発生していると理解することもできない。
また、推進力を観測できた実験例の実験結果以外に、実際に推進力が発生したことを示すための結果は存在しないのであるから、実証実験報告書から推進力が発生したことを確認することはできない。
なお、実証実験報告書に記載されたものについて、公的な試験機関等の第3者による確認等がなされているともいえない。
そうすると、実証実験報告書により十分な再現性及び正確性をもって推進力が発生したことが示されたとはいえないから、実証実験報告書を踏まえつつ改めて本願の発明の詳細な説明の記載をみても、当審拒絶理由で摘示した理由1に係る拒絶理由は解消されない。同様に、実証実験報告書を踏まえつつ改めて本願の発明の詳細な説明の記載をみても、当審拒絶理由で摘示した理由2に係る拒絶理由についても、これを解消するに足りる根拠は見出せない。
したがって、当審拒絶理由の理由1(実施可能要件)及び理由2(発明該当性)において指摘した事項は、意見書の主張及び実証実験報告書によっても解消されるものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶すべきものである。
また、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたものは、自然法則に反するものとなっているため、特許法第29条第1項柱書でいう発明に該当しないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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