特許拒絶査定不服審判
2021-006925
回路基板
- 審判番号
- 2021-006925
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-541797
- 請求日
- 2021年05月28日
- 審決日
- 2022年09月29日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クンシャン ゴー-ビシオノクス オプト-エレクトロニクス カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人YKI国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P18 .113-WZ (G09F) / P18 .121-WZ (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-541797「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月 3日国際公開、WO2019/001122、令和 2年 2月27日国内公表、特表2020-506431〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)4月25日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 2017年6月29日、中国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである(以下、2017年6月29日を「優先日」という。)。
令和元年 8月 1日 :翻訳文及び手続補正書の提出
令和2年 8月27日付け:拒絶理由通知書
同年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 1月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 2月 2日 :査定の謄本の送達)
同年 5月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月23日付け:前置報告書
令和4年 2月24日付け:補正の却下の決定、拒絶理由通知書
同年 5月11日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本件発明
本願の請求項1~10に係る発明は、令和4年5月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。
「【請求項1】
表示領域と、非表示領域とを含み、
前記非表示領域は、第一電極層と、前記第一電極層上に設けられている第二電極層とを含み、
前記第二電極層は前記表示領域におけるカソードと一体的に形成され、あるいは前記第一電極層は前記表示領域におけるアノードと一体的に形成され、
前記第一電極層と前記第二電極層とを接触する面積が、前記表示領域の両側の外において同一であることを特徴とする回路基板。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項1についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
1 理由1(新規性)
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 理由2(進歩性)
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2005-258395号公報
第4 当審の判断
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は、当審が付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。
ア 【特許請求の範囲】、【符号の説明】
「【請求項1】
基板の一面上に形成され、一つ以上の層を有する第1電極層及び第2電極層、並びにこれらの間に形成された発光層を具備する電界発光部からなるディスプレイ領域と、
前記ディスプレイ領域に電極用電力を供給する電極用電力供給ラインと、を含む電界発光ディスプレイ装置において、
前記電極用電力供給ラインは、前記ディスプレイ領域外側の少なくとも一部に沿って配置され、前記第1電極層と同じ材料で形成される一つ以上の層を具備し、かつ、少なくとも一部は前記第2電極層と直接接触し、
前記電極用電力供給ラインの下部には、前記ディスプレイ領域の導電層と同じ材料で形成される一つ以上の導電層を有する電気要素が配置されていることを特徴とする電界発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記電極用電力供給ラインは、前記ディスプレイ領域の外側に沿って閉曲線を形成することを特徴とする請求項1に記載の電界発光ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第2電極層と前記電極用電力供給ラインとの間には、前記ディスプレイ領域の画素定義層が延長介在され、前記電極用電力供給ライン上部の前記画素定義層の少なくとも一部に形成された開口領域を通じて前記第2電極層と前記電極用電力供給ラインとが相互直接接触することを特徴とする請求項1に記載の電界発光ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記開口領域は、前記ディスプレイ領域の外側に沿って閉曲線を形成することを特徴とする請求項3に記載の電界発光ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記第2電極層と前記電極用電力供給ラインとは、相互面接触することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電界発光ディスプレイ装置。
(後略)」
「【符号の説明】
【0081】
110…基板、
120…バッファー層、
130…半導体活性層、
140…ゲート絶縁層、
150…ゲート電極、
160…中間層、
170…ソース及びドレーン電極、
180…保護層、
200…ディスプレイ領域、
210…第1電極層、
230…有機電界発光部、
300…駆動用電力供給ライン、
400…第2電極層、
410…電極用電力供給ライン、
500…垂直駆動回路部、
600…水平駆動回路部、
800…密封部。」
イ 【0044】~【0065】、【図2A】、【図2B】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図2Aには、本発明の一実施例による有機電界発光ディスプレイ装置が概略的に図示されている。
【0045】
図2Aに図示されたように、基板110の一面上には、有機電界発光ディスプレイ素子のような発光素子が配置されたディスプレイ領域200の外側に沿って塗布されて基板110とカプセル化基板900(図2B参照)とを密封させる密封部800、各種端子が配置された端子領域を具備する。
【0046】
ディスプレイ領域200を構成する有機電界発光ディスプレイ素子の構成は図2Bを参照して説明する。なお、図2Bは図2AのII-II線による有機電界発光ディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【0047】
基板、例えばガラス材の基板110上にSiO2等でバッファー層120が形成される。バッファー層120の一面上には半導体活性層130が形成される。半導体活性層130は非晶質シリコン層または多結晶質シリコン層で形成されうる。図面では詳細に図示されていないが、半導体活性層130は、N+型またはP+型のドーパントでドーピングされるソース及びドレーン領域と、チャンネル領域とで構成される。半導体活性層130は、有機半導体からなりうる等、前記事項に限定されるものではない。
【0048】
半導体活性層130の一面上部のチャンネル領域に対応される位置には、ゲート電極150が形成され、ゲート電極150に印加される信号のいかんによってチャンネル領域の通電のいかんが決定され、これを通じてソース及びドレーン領域が連結される。ゲート電極150は、隣接層との密着性、積層される層の表面平坦性そして加工性などを考慮して、例えばMoW、Al/Cuなどのような物質で形成されることが望ましいが、これらに限定されるものではない。また、半導体活性層130とゲート電極150との絶縁性を確保するために、例えば、プラズマ強化化学気相蒸着(PECVD)を通じてSiO2で構成されるゲート絶縁層140が半導体活性層130とゲート電極150との間に介在される。
【0049】
ゲート電極150の上部には、中間層160が形成される。中間層はSiO2、SiNXなどの物質で断層形成されたり、または二重層の形態で構成されうる。
【0050】
中間層160の上部には、ソース/ドレーン電極170が形成される。ソース/ドレーン電極170は、中間層160やゲート絶縁層140に形成されるコンタクト孔を通じて半導体活性層のソース領域及びドレーン領域と各々電気的に連結される。
【0051】
ソース/ドレーン電極170の上部には、保護層(パッシベーション層及び/または平坦化層)180が形成され、下部のTFTを保護して平坦化させる。
【0052】
本発明の一実施例による保護層180は、多様な形態に構成することができ、無機物または有機物で形成でき、また単層で形成されたり、下部にSiNX層を具備して上部に、例えばBCB(benzocyclo butene)またはアクリルなどのような有機物層を具備する二重層または複数層でも構成されうる。
【0053】
保護層180の一面上には、第1電極層210が配設される。第1電極層210の一端は保護層180に形成された貫通孔211を通じて下部のドレーン電極170と接触する。第1電極層210は、下記のように、背面発光型の場合、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明電極で構成でき、前面発光型の場合、Mg:Ag/ITO等の複数層で形成されうる。もちろん、第1電極層210はそのほかの多様な変形例を具備できる。
【0054】
有機電界発光部230は、低分子または高分子有機膜で構成されうる。低分子有機膜を使用する場合、HIL、HTL、EML、ETL、EILなどが単一あるいは複合の構造で積層形成でき、使用可能な有機材料も銅フタルロシアニン(CuPc:Copper Phthalocyanine)、N,N-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジディン(NPB)、トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとする多様な材料を適用できる。この低分子有機膜は真空蒸着方法で形成される。
【0055】
高分子有機膜の場合には、大体HTL及びEMLで備わった構造を有しうる。この時、前記HTLにPEDOTを使用し、発光層にPPV(Poly-Phenylenevinylene)系及びポリフルオレン系等高分子有機物質を使用し、これをスクリーン印刷やインクジェット印刷方法等で形成しうる。
【0056】
有機電界発光部230の一面上部には、陰極電極400が全面蒸着される。陰極電極400は、このような全面蒸着形態に限定されるものではない。さらに、発光類型によってAl/Ca、ITO、Mg-Agなどのような材料でも形成でき、単一層でない複数の層でも形成でき、LiFなどのようなアルカリまたはアルカリ土類金属フッ化層がさらに備わえる等、多様な類型で構成しうる。
【0057】
さらに、図2Aで示したように、ディスプレイ領域200と密封部800との間には、ディスプレイ領域200に駆動用電力を供給するための駆動用電力供給ライン300が配置される。
【0058】
図2Aは、本発明の一例であり、駆動用電力供給ラインの配置がこれに限定されるものではないが、ディスプレイ領域全体に均一な駆動用電力を供給することによって輝度不均一を改善させうるという点より、駆動用電力供給ライン300はディスプレイ領域をめぐるように形成されることが望ましい。駆動用電力供給ライン300は駆動ライン310と連結される。駆動ライン310はディスプレイ領域200と交差して配置され、保護層180下部に配置されたソース電極170(図2B参照)と電気的に連結される。
【0059】
さらに、ディスプレイ領域200外側には、垂直/水平駆動回路部500、600が配
置される。垂直駆動回路部500は、ディスプレイ領域200にスキャン信号を印加するスキャン駆動回路部になり、水平駆動回路部600はディスプレイ領域200にデータ信号を印加するデータ駆動回路部になりうる。これらは場合によって外装ICやチップオングラス(COG)で具現されうる。本発明によるデッドスペース減少によって原価削減及び装置の簡素性などを考慮して、ディスプレイ領域と一体に形成されることが望ましい。
【0060】
一方、ディスプレイ領域200の外側に沿って少なくとも一部には、ディスプレイ領域200に電極用電力を供給する電極用電力供給ライン410が配置される。
【0061】
電極用電力供給ライン410は、ディスプレイ領域200の第1電極層210と同じ材料で形成される。すなわち、電極用電力供給ライン410は、第1電極層210の形成と同時に形成される。さらに、電極用電力供給ライン410は、後に形成される第2電極層400と直接接する構造を有することで、従来技術での接触配線による接触不良や電圧降下による問題点を解消させうる。
【0062】
さらに、電極用電力供給ライン410の下部には、一つ以上の導電層で構成される電気要素、例えば垂直駆動回路部500が配置され、電極用電力供給ラインが他の構成要素とは重畳されないように独立に配置された従来技術とは異なる。本発明の一実施例による電極用電力供給ライン410は、垂直駆動回路部500のような電気要素上部に配置されることにより、従来技術で電極用電力供給ライン400を配置するために割り当てられた領域除去が可能で基板サイズに対するディスプレイ領域の面積比率を増大させうる。すなわち、同一サイズのディスプレイ領域に対して基板サイズを小さくしたり、または同一基板サイズに対しディスプレイ領域のサイズを大きくさせうる。
【0063】
電極用電力供給ライン410と第2電極層400とを電気的に連結させるためには、多様な方法が使われる。電極用電力供給ライン410と第2電極層400との接触時に発生する抵抗による電圧降下を防止するため、このような電気的連結は電極用電力供給ライン410と第2電極層400との面接触を通じて行われることが望ましい。すなわち、電極用電力供給ライン幅の相当部分が、第2電極層400と電極用電力供給ライン410との接触領域になることが望ましい。
【0064】
第2電極層400としては、例えば、Ag/TCO(ITO,IZO)を用いることができる。
【0065】
さらに、図2Bに図示されたように、第2電極層400と電極用電力供給ライン410との間にディスプレイ領域200の画素領域を定義する画素定義層220が延長されて介在され、第2電極層400もディスプレイ領域200の外側に電極用電力供給ライン410の上部に延長形成されうる。この場合、電極用電力供給ライン410の上部に画素定義層220の少なくとも一部に開口領域430が形成されうるが、この開口領域430で第2電極層400と電極用電力供給ライン410とは相互直接接触し、望ましくは面接触しうる。」
「【図2A】
[図:0001394407000001.jpg]
」
「【図2B】
[図:0001394407000002.jpg]
」
ウ 【0067】~【0071】、【図4A】、【図4B】
「【0067】
さらに、図4A及び図4Bに図示されたように、上部に電極用電力供給ライン410が配置される電気要素として駆動用電力供給ライン300が選択されうる。すなわち、ディスプレイ領域200の外側に垂直駆動回路部500が配置され、垂直駆動回路部500と密封部800との間に駆動用電力供給ライン300が配置され、ディスプレイ領域200の第1電極層210の形成と共に駆動用電力供給ライン300上部の少なくとも一部に電極用電力供給ライン410が形成されうる。その後、第1電極層210の上に画素定義層220が形成される。この画素定義層220は電極用電力供給ライン410の少なくとも一部を覆うように形成され、後で形成される第2電極層400と電極用電力供給ライン410との間に介在されうる。この場合、ディスプレイ領域200の画素領域が形成されると共に駆動用電力供給ライン300の上部の少なくとも一部には開口領域430が形成されるが、後で形成される第2電極層400は開口領域430で電極用電力供給ライン410と直接接触、望ましくは面接触することで、第2電極層400と電極用電力供給ラインとの接触が駆動用電力供給ライン上部で生じうる。
【0068】
前記の実施例において、相互重畳される構成要素の間に干渉が起きないように、電極用電力供給ライン410と下部の電気要素、すなわち垂直/水平駆動回路部500、600及び駆動用電力供給ライン410と各種配線との間には充分な厚さを有する保護層180が介在されることが望ましい。
【0069】
一方、電極用電力供給ラインは、ディスプレイ領域200外側の少なくとも一部に形成されるが、前記のように電極用電力供給ラインの配置形態は図2A及び図3の形態に限定されない。電極用電力供給が第2電極層400のある一側でのみ行われる場合、第2電極層400の位置によって異なる電圧降下が発生して輝度不均一を招きうることもあるため、これを補完するように電極用電力供給ライン410と第2電極層400との接触は第2電極層400の両側で対称的に行われるようにも配置されうるので、図4Aに図示されたようにこれらは閉曲線を形成するように配置することが望ましい。
【0070】
さらに、電極用電力供給ライン410と第2電極層400との間に画素定義層220が延長介在される場合、電極用電力供給ライン410と第2電極層400との間に直接接触、望ましくは面接触される開口領域430に閉曲線を形成させることで、電極用電力供給時に発生する電圧降下を減少させ、究極的にディスプレイ領域の輝度不均一現象を改善させうる。
【0071】
前面発光型の場合、第2電極層400に主に透明電極、例えば、伝導性が低いITOを使用するために、このような構成は前面発光型で特に有利である。しかし、本発明による電界発光ディスプレイ装置が前面発光型に限定されるものではない。」
「【図4A】
[図:0001394407000003.jpg]
」
「【図4B】
[図:0001394407000004.jpg]
」
(2) 【図4B】から読み取れる事項の認定
【0067】から【0069】及び【0056】の記載を参照しつつ【図4B】を見ると、【図4B】から次の事項が読み取れる。
「ディスプレイ領域200にある有機電界発光部230の一面上部に形成された陰極電極400と、電極用電力供給ライン410と相互直接面接触する第2電極層400は、つながっており一体的に形成されていること。」
(3) 引用発明の認定
引用文献1の前記(1)の記載事項及び(2)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「基板110の一面上に形成され、第1電極層210及び第2電極層400、並びにこれらの間に形成された発光層(有機電界発光部230)を具備する電界発光部からなるディスプレイ領域200と、
前記ディスプレイ領域200に電極用電力を供給する電極用電力供給ライン410と、を含む電界発光ディスプレイ装置の基板110であって(【請求項1】、【符号の説明】)、
前記電極用電力供給ライン410は、前記ディスプレイ領域200外側の少なくとも一部に沿って配置され、前記第1電極層210と同じ材料で形成される一つ以上の層を具備し、かつ、少なくとも一部は前記第2電極層400と直接接触し(【請求項1】、【符号の説明】)、
前記電極用電力供給ライン410は、前記ディスプレイ領域200の外側に沿って閉曲線を形成するものであり(【請求項2】、【符号の説明】)、
前記第2電極層400と前記電極用電力供給ライン410の間には、前記ディスプレイ領域200の画素定義層220が延長介在され、前記電極用電力供給ライン410上部の前記画素定義層220の少なくとも一部に形成された開口領域430を通じて前記第2電極層400と前記電極用電力供給ライン410が相互直接接触するものであり(【請求項3】、【0067】)、
有機電界発光部230の一面上部には、陰極電極400(第2電極層400)が全面蒸着されるものであり(【0056】)、
第2電極層400は開口領域430で電極用電力供給ライン410と直接面接触することで、第2電極層400と電極用電力供給ラインの接触が駆動用電力供給ライン上部で生じるものであり(【0067】)、
電極用電力供給ライン410と第2電極層400の接触は第2電極層400の両側で対称的に行われるように配置されたものであり(【0069】)、
ディスプレイ領域200にある有機電界発光部230の一面上部に形成された陰極電極400と、電極用電力供給ライン410と相互直接面接触する第2電極層400は、つながっており一体的に形成されているものである(前記(2) 【図4B】から読み取れる事項の認定)、
電界発光ディスプレイ装置の基板110」
2 本件発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
以下、請求項1の記載に沿って、本件発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「基板110」には、「その一面上に形成され[た]」「第1電極層210及び第2電極層400、並びにこれらの間に形成された発光層(有機電界発光部230)を具備する電界発光部」を有するから、「回路基板」であるということができる。したがって、本件発明と引用発明は「回路基板」の発明である点で一致する。
イ 引用発明における「ディスプレイ領域200」は、本件発明における「表示領域」に相当する。引用発明の「基板110」のうちの「ディスプレイ領域200」以外の領域は、本件発明における「非表示領域」に相当する。したがって、本件発明と引用発明は、「表示領域と、非表示領域とを含[む]」点で一致する。
ウ(ア) 引用発明における「前記ディスプレイ領域200外側の少なくとも一部に沿って配置され[た]」「電極用電力供給ライン410」は、本件発明における、「非表示領域」に含まれる「第一電極層」に相当する。
(イ) 引用発明における「電極用電力供給ライン410」と「直接接触」する「第2電極層400」は、「前記第2電極層400と前記電極用電力供給ライン410の間には、前記ディスプレイ領域200の画素定義層220が延長介在され、前記電極用電力供給ライン410上部の前記画素定義層220の少なくとも一部に形成された開口領域430を通じて前記第2電極層400と前記電極用電力供給ライン410が相互直接接触するものであ[る]」から、本件発明における「前記第一電極層上に設けられている第二電極層」に相当する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)の検討結果をまとめると、本件発明と引用発明は、「前記非表示領域は、第一電極層と、前記第一電極層上に設けられている第二電極層とを含[む]」点で一致する。
エ(ア) 引用発明における「ディスプレイ領域200」の「有機電界発光部230」の「一面上部」に「全面蒸着され[た]」「陰極電極400」は、本件発明における「表示領域における」「カソード」に相当する。
(イ) 引用発明においては、「ディスプレイ領域200にある有機電界発光部230の一面上部に形成された陰極電極400と、電極用電力供給ライン410と相互直接面接触する第2電極層400は、つながっており一体的に形成されている」ことは、前記ウ(イ)も踏まえると、本件発明における、「前記第二電極層は前記表示領域におけるカソードと一体的に形成され[ている]」ことに相当する。
(ウ) したって、本件発明と引用発明は、「前記第二電極層は前記表示領域におけるカソードと一体的に形成され、あるいは前記第一電極層は前記表示領域におけるアノードと一体的に形成され[ている]」点で一致する。
(2) 本件発明と引用発明の一致点及び相違点
上記(1)の検討結果を総合すると、本件発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
ア 一致点
「表示領域と、非表示領域とを含み、
前記非表示領域は、第一電極層と、前記第一電極層上に設けられている第二電極層とを含み、
前記第二電極層は前記表示領域におけるカソードと一体的に形成され、あるいは前記第一電極層は前記表示領域におけるアノードと一体的に形成された、
回路基板」である点。
イ 相違点
本件発明においては、
「前記第一電極層と前記第二電極層とを接触する面積が、前記表示領域の両側の外において同一である」のに対して、
引用発明においては、
「電極用電力供給ライン410(「第一電極層」に相当する。)と第2電極層400(「第二電極層」に相当する。)の接触は第2電極層400の両側で対称的に行われるように配置されたものであ[る]」点。
3 相違点についての判断
(1) 相違点についての判断
ア 引用発明において、「電極用電力供給ライン410(「第一電極層」に相当する。)と第2電極層400(「第二電極層」に相当する。)の接触は第2電極層400の両側で対称的に行われるように配置されたものであ[る]」ようにしていることの目的を検討すると、引用文献1の段落【0069】には「電極用電力供給が第2電極層400のある一側でのみ行われる場合、第2電極層400の位置によって異なる電圧降下が発生して輝度不均一を招きうることもある」との認識が記載されている。
イ したがって、前記構成の目的は、「両側での電圧降下を均等にして輝度を均一にすることにあるのであるから、「電極用電力供給ライン410(「第一電極層」に相当する。)と第2電極層400(「第二電極層」に相当する。)の接触面積が、第2電極層400の両側で対称的に行われるように配置されたものである」ことを当然に含むものであるといえる。
ウ してみれば、前記相違点は、表現の差にすぎないというべきであり、実質的相違点ではなく、少なくとも、引用発明に基づいて当業者が自明に想到し得るものである。
エ したがって、本件発明は、引用文献1に記載された発明であり、少なくとも、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
請求人は、令和4年5月11日に提出した意見書において、次の点を主張している。
(ア) 請求人の主張1の内容
引用文献1において、第2電極層400が陰極として機能する(0056段落を参照)。電極用電力供給ライン410が本願発明の第1電極層に相当するものであるとすると、引用文献1の0042段落、0063段落及び図4Bに示すように、電極用電力供給ラインの少なくとも一部は第2電極層と直接接触しており、電極用電力供給ライン幅に相当する部分が第2電極層400と電極用電力供給ライン410との接触領域になる。さらに、図2B、図4B、及び図5B等に示されるように、アノードとしての第1電極層210、画素定義層220によって電極用電力供給ライン410から分離される(0065段落も参照)。すなわち、引用文献1の電極用電力供給ラインは、カソード電極又はアノード電極と一体に形成されておらず、表示領域の外周にあるアノードとカソードのオーバーラップ領域が等しいとはいえない。そうすると、アノードとカソードとの抵抗を等しくすることはできず、本願が解決しようとする技術的な問題を解決することはできない。
(イ) 請求人の主張2の内容
引用文献1の0063段落及び図2(第1領域Iの3つの側のみを囲む電極を示している)では、「電極用電力供給ライン410と第2電極層400との接触が第2電極層400の両側に対称になっている」構成が開示されている。さらに、図1及び0052段落を参照すると、表示領域の下側は、電極層ではなくICチップが設けられた第4領域IVとなっている。したがって、引用文献1には、本願の請求項1の特徴である「前記第一電極層と前記第二電極層とを接触する面積が、前記表示領域の両側の外に同一である」という構成は開示されておらず、示唆もない。
イ 請求人の主張についての判断
(ア) 請求人の主張1についての判断
本件発明における「前記第二電極層は前記表示領域におけるカソードと一体的に形成され、あるいは前記第一電極層は前記表示領域におけるアノードと一体的に形成され」という構成のうち、引用発明が「前記第二電極層は前記表示領域におけるカソードと一体的に形成され[ている]」という構成を備えることは、前記2(1)エの対比分析で示したとおりである。したがって、請求人の主張1は採用できない。
(イ) 請求人の主張2についての判断
また、「前記第一電極層と前記第二電極層とを接触する面積が、前記表示領域の両側の外に同一である」という構成については、本件発明と引用発明の間の表現の差にすぎず、実質的相違点ではなく、少なくとも、引用発明に基づいて当業者が自明に想到し得るものであることは、前記(1)において検討したとおりである。したがって、請求人の主張2は採用できない。
(ウ) 請求人の主張についての判断のまとめ
以上のとおりであるから、前記(1)エの結論に変わりはない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-006925