審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-005759

回路基板

審判番号
2021-005759
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-025351外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年05月06日
審決日
2022年01月20日
公報発行日
2022年02月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017- 25351「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日出願公開、特開2018-133416、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は平成29年2月14日の出願であって、令和2年6月17日付で拒絶理由が通知され、令和2年8月20日に手続補正がされたが、令和3年2月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和3年5月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年2月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 「本願請求項1ないし16に係る発明は、以下の引用文献1ないし2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1ないし11,14ないし16 ・引用文献1 ・請求項 12、13 ・引用文献1、2 <引用文献等一覧> 1.特開2005-244150号公報 2.特開2013-147541号公報(周知技術を示す文献)」 第3 審判請求時の補正について 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「樹脂組成物」について「不揮発成分を100質量%とした場合に成分(B)硬化剤の含有量が5質量%以上である」と限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、当該補正は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし16に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、令和3年5月6日付けの手続補正(本件補正)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 内層基板と、 前記内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層と を備える高周波回路基板であって、 前記内層基板の誘電率をDk(A)とし、前記高周波回路形成用絶縁層の誘電率をDk(B)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が下記式: Dk(B)≦Dk(A)-0.8 を満たし、かつ、前記内層基板に対する前記高周波回路形成用絶縁層のピール強度が0.5kgf/cm以上であり、 前記高周波回路形成用絶縁層が、成分(A)エポキシ樹脂、および成分(B)硬化剤を含み、不揮発成分を100質量%とした場合に成分(B)硬化剤の含有量が5質量%以上である樹脂組成物(ただし、シアネートエステル系硬化剤を含有する場合を除く。)を熱硬化した硬化体である、高周波回路基板。 【請求項2】 前記高周波回路形成用絶縁層が1層のみ設けられているか、又は前記高周波回路形成用絶縁層が前記内層基板の一方の主表面側に2層以上設けられている、請求項1に記載の高周波回路基板。 【請求項3】 前記高周波回路形成用絶縁層の厚さが、20~200μmである、請求項1又は2に記載の高周波回路基板。 【請求項4】 前記内層基板の厚さが、50~4000μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波回路基板。 【請求項5】 前記内層基板がガラスエポキシ基板を含み、前記高周波回路形成用絶縁層が、該ガラスエポキシ基板に接合している、請求項1~4のいずれか1項に記載の高周波回路基板。 【請求項6】 前記内層基板がエポキシ樹脂を含む材料を硬化した1層以上の絶縁層を含み、該絶縁層に前記高周波回路形成用絶縁層が接合している、請求項1~5のいずれか1項に記載の高周波回路基板。 【請求項7】 前記樹脂組成物が、成分(C)無機充填材をさらに含む、請求項5又は6に記載の高周波回路基板。 【請求項8】 前記樹脂組成物が、成分(D)有機充填材をさらに含む、請求項7に記載の高周波回路基板。 【請求項9】 前記成分(D)有機充填材が、シクロオレフィンポリマー粒子、ポリフェニレンエーテル粒子、ポリスチレン粒子、及びフッ素系ポリマー粒子からなる群から選択される1種以上の有機充填材である、請求項8に記載の高周波回路基板。 【請求項10】 前記成分(D)有機充填材が、フッ素系ポリマー粒子である、請求項9に記載の高周波回路基板。 【請求項11】 前記樹脂組成物が、成分(E)ビニル基を有する樹脂をさらに含む、請求項9又は10に記載の高周波回路基板。 【請求項12】 前記樹脂組成物が、成分(F)インデンクマロン樹脂をさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の高周波回路基板。 【請求項13】 前記樹脂組成物が、成分(H)シラン化合物をさらに含む、請求項12に記載の高周波回路基板。 【請求項14】 前記Dk(A)が4.0以上である、請求項1~13のいずれか1項に記載の高周波回路基板。 【請求項15】 前記Dk(B)が3.5以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の高周波回路基板。 【請求項16】 前記Dk(B)が3.0以下である、請求項15に記載の高周波回路基板。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、プリント配線板の製造方法に関し、更に該製造方法に使用するのに好適な樹脂組成物及び接着フィルムに関する。」 「【0003】 一方、熱硬化性のシアナト基を有するシアネート化合物が誘電特性に優れた硬化物を与えることは古くから知られており、シアネート化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物を回路基板の絶縁層に適用した例も知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、シアネート化合物を含む熱硬化性樹脂組成物で回路基板上に絶縁層を形成した場合、回路パターンの凹凸に由来する絶縁層表面の凹凸差が大きくなり、微細な回路形成が困難となっていた(図1参照)。従って、回路基板上に絶縁層を形成した際の絶縁層表面の平滑性に優れるシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂組成物が求められていた。」 【図1】 [図:0001381565000001.jpg] 「【0009】 本発明によれば、誘電特性に優れ、表面平滑性に優れた絶縁層をプリント配線板に導入することができる。」 「【0007】 そこで本発明者らは、硬化速度を速める手段によらずに上記課題を解決する手段を鋭意検討した結果、シアネート化合物を含む樹脂組成物中にラジカル重合性樹脂を配合し、回路基板に被膜した樹脂組成物を光硬化した後、更に熱硬化することで表面平滑性に優れる絶縁層が得られること見出し本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の内容を含むものである。 【0008】 [1] 1分子中に2以上のシアナト基を有する芳香族系シアネート化合物及びラジカル重合性樹脂を含有する樹脂組成物を回路基板に被膜する工程、該樹脂組成物を光硬化する工程及び光硬化された樹脂組成物を熱硬化する工程を経て絶縁層を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。」 「【0011】 本発明における樹脂組成物(100重量%)中の、「1分子中に2以上のシアナト基を有する芳香族系シアネート化合物」の配合割合は、10重量%以上が好ましく、30~80重量%の範囲が更に好ましい。 【0012】 本発明において用いられる成分(b)「ラジカル重合性樹脂」としては、分子中に1個以上の炭素-炭素二重結合を有し、光によりラジカル重合が可能なものであれば特に限定されない。好ましいラジカル重合性樹脂としては、ビニルベンジル化合物、ビニルベンジルエーテル化合物、ビスマレイミド化合物、アクリレート化合物、メタアクリレート化合物等が挙げられる。シアネート化合物は異なる種類のものを2種以上組み合わせて使用してもよい。」 「【0019】 ラジカル重合性樹脂としては、誘電特性に優れる(低誘電率、低誘電正接)ビニルベンジル化合物及びビニルベンジルエーテル化合物が特に好ましい。」 「【0034】 市場で入手可能なものとしては昭和高分子(株)製ポリビニルベンジル樹脂、V-5000X(硬化物のTg154℃、比誘電率2.63、誘電正接0.0016)、V-6000X(硬化物のTg136℃、比誘電率2.59、誘電正接0.0013)などが挙げられる。」 「【0040】 本発明における光重合開始剤は、樹脂組成物中のラジカル重合性樹脂と光重合開始剤の配合割合が、重量比で100:0.5~100:15となる範囲で好ましく用いられ、更に好ましくは100:1~100:10の範囲で用いられる。 【0041】 本発明における樹脂組成物は、芳香族系シアネート化合物以外の熱硬化性樹脂を含有していてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド化合物とジアミン化合物の重合物、ビスアリルナジド樹脂、ベンゾオキサジン化合物、ベンゾシクロブテン化合物等を挙げることができる。熱硬化性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。 【0042】 なお、シアネート化合物は高温で比較的長時間の硬化を必要とするため、硬化温度を下げるためエポキシ樹脂(本発明における成分(d))と併用するのが好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ基はシアネート化合物のシアナト基と反応しオキサゾリン環を形成する反応が主反応となるため、熱硬化後に誘電正接を損ねるヒドロキシル基の発生や、同じく誘電正接を損ねるシアナト基の残存も抑制される。エポキシ樹脂としては、1分子中に2以上のエポキシ基を有する芳香族系エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。」 「【0045】 本発明における樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含有していてもよい。なおシアネート化合物とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物において、更にフェノキシ樹脂を配合することにより、硬化が促進され樹脂組成物の熱硬化性が向上する。フェノキシ樹脂は2官能エポキシ樹脂とビスフェノール化合物の反応生成物からなるポリマーであり、分子中に存在するヒドロキシル基がエポキシ基とシアナト基の硬化促進作用を示すため、比較的低い硬化温度で十分な硬化物性(耐熱性、低誘電正接等)を発揮することが可能になると考えられる。またフェノキシ樹脂の配合により、エポキシ樹脂硬化物の酸化剤による粗化性が向上し、メッキにより形成された導体層の密着性も向上する。」 「【0047】 フェノキシ樹脂の好ましい例としては、例えばビスフェノールAタイプのフェノトートYP50(東都化成(株)製)、E-1256(ジャパンエポキシレジン(株)製)の他、臭素化されたフェノキシ樹脂であるフェノトートYPB40(東都化成(株)製)などが挙げられる。特にビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が、耐熱性、耐湿性および硬化促進作用の点で好ましい。このようなフェノキシ樹脂の具体例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製YX4000)と各種ビスフェノール化合物との反応生成物からなるフェノキシ樹脂である、YL6742BH30、YL6835BH40、YL6953BH30、YL6954BH30、YL6974BH30、YX8100BH30を挙げることができる。 これらのフェノキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。」 「【0049】 フェノキシ樹脂の配合量については、その種類によっても異なるが、好ましくはシアネート化合物またはシアネート化合物とエポキシ樹脂との合計量100重量部に対し3~40重量部の範囲で配合される。特に5~25重量部の範囲で配合するのが好ましい。」 「【0051】 無機充填材としては、シリカ、シリコン粒子、・・・(省略)・・・などが挙げられる。特にシリカが好ましい。」 「【0054】 本発明における樹脂組成物は、必要により更に硬化時間を短縮する目的で、硬化触媒として用いられている有機金属化合物を添加してもよい。このような有機金属化合物としては、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅化合物、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛化合物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト化合物などが挙げられる。有機金属化合物を添加する場合の添加量は通常シアネート化合物に対して金属換算で10~500ppm、好ましくは25~200ppmの範囲である。」 「【実施例1】 【0075】 ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)プリマセットBA230S75、シアネート当量約232、不揮発分75%のメチルエチルケトン(MEK)ワニス)40重量部、ビニルベンジル樹脂(昭和高分子(株)製 V-5000X、不揮発分65%のトルエンワニス)40重量部、ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス(ジャパンエポキシレジン(株)製 YL6954BH30、重量平均分子量38000、不揮発分30%のMEK/シクロヘキサノンワニス)15重量部、コバルト(II)アセチルアセトナートの1%N,N-ジメチルホルムアミド溶液2重量部、さらに球型シリカ(平均粒径1.1μm)を40重量部添加し樹脂組成物ワニスを作製した。そのワニスを厚さ38μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80~120℃で10分乾燥させ、接着フィルムを得た。 【実施例2】 【0076】 ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)プリマセットBA230S75、シアネート当量約232、不揮発分75%のMEKワニス)40重量部、ビニルベンジル樹脂(昭和高分子(株)製 V-5000X、不揮発分65%のトルエンワニス)20重量部、ビフェニル型エポキシ樹脂のアクリレート化物(日本化薬(株)製ZCA-251H、不揮発分70%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートワニス)10重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、ジャパンエポキシレジン(株)製 エピコート828EL)10重量部、ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス(ジャパンエポキシレジン(株)製 YL6954BH30、重量平均分子量38000、不揮発分30%のMEK/シクロヘキサノンワニス)20重量部、コバルト(II)アセチルアセトナートの1%N,N-ジメチルホルムアミド溶液3重量部、光重合開始剤0.7部(日本シイベルヘグナー(株)Speedcure3060)さらに球型シリカ(平均粒径1.1μm)を40重量部添加し樹脂組成物ワニスを作製した。そのワニスを厚さ38μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80~120℃で10分乾燥させ、接着フィルムを得た。」 「【0080】 <樹脂組成物の表面平坦性評価> ・・・中略・・・ またIPC-TM650 2.5.5.9に準じて比誘電率、誘電正接を測定した(23℃、測定周波数1GHz)。なお比誘電率、誘電正接の測定サンプルは、実施例1及び2の接着フィルムを、それぞれ真空ラミネーターにより複数回積層して厚さを1mmとし、アイグラフィックス(株)製コンベア式UV照射装置(EYE GRANDAGE)を用いて2000mJ/cm2の照光量で紫外線を照射し、その後180℃で90分間加熱硬化したものを使用した。 【0081】 【表2】 [図:0001381565000002.jpg] 【0082】 表2から、本発明の接着フィルム、製造法を用いて回路基板上に形成された絶縁層は表面平滑性に非常に優れ、かつ誘電特性にも優れることが分かる。 【0083】 <実施例4> 銅箔35μm、板厚0.2mmのFR4両面銅張積層板から回路基板を作製し、実施例1で得られた接着フィルムを熱プレス付き真空ラミネーターにより、温度110℃、圧力5kgf/cm2(49×104N/m2)、気圧5mmHg(6.7hPa)以下、加圧時間が30秒の条件で真空ラミネートし、次いで温度110℃、圧力5kgf/cm2(49×104N/m2)で60秒間熱プレスを行い回路基板両面にラミネートした。その後、PETフィルムを剥離し、アイグラフィックス(株)製コンベア式UV照射装置(EYE GRANDAGE)を用いて2000mJ/cm2の照光量で紫外線照射し、170℃で30分加熱硬化させ絶縁層を形成した。該絶縁層にレーザーにより穴開けし、ビアホールを形成させた。次いで過マンガン酸塩のアルカリ性酸化剤で絶縁層表面を粗化処理し、無電解メッキ及び電解メッキにより導体層を形成した後、サブトラクティブ法に従って回路形成し4層プリント配線板を得た。その後、更に180℃で90分アニール(anneal)処理を行った。得られた4層プリント配線板の導体層のピール強度は0.7kgf/cmであった。なお、ピール強度測定は日本工業規格(JIS) C6481に準じて評価し、約30μmの導体メッキ厚で測定した。また得られた多層プリント配線板を260℃で60秒間はんだ浸漬し、はんだ耐熱性を観察したところ樹脂のデラミネーション、導体の剥がれ等の異常は観察されなかった。」 「【0084】 本発明の製造方法で得られるプリント配線板は芳香族系シアネート化合物を含有する樹脂組成物を使用するため絶縁層の誘電特性に優れるとともに、該樹脂組成物がラジカル重合性樹脂を含み、光硬化工程及び熱硬化工程を経ることで、形成される絶縁層の平滑性にも優れ、ファインパターンの回路形成が要求されるプリント配線板、特に多層プリント配線板の製造方法として好適に使用することができる。また該製造方法に用いられる本発明の樹脂組成物及び接着フィルムはこれらプリント配線板用の絶縁材料として好適に使用される。」 (2)上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。 ア 段落【0012】、【0019】及び【0034】より「ラジカル重合性樹脂」としては、「誘電特性に優れる(低誘電率、低誘電正接)ビニルベンジル化合物」、「が特に好まし」く、「市場で入手可能なものとしては昭和高分子(株)製ポリビニルベンジル樹脂」、「V-6000X」、「が挙げられる。」との技術事項を読み取ることができる。 イ 段落【0045】、【0047】より「樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含有していてもよ」く、「シアネート化合物とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物において、更にフェノキシ樹脂を配合することにより、硬化が促進され樹脂組成物の熱硬化性が向上」し、「特にビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が、耐熱性、耐湿性および硬化促進作用の点で好まし」く、「このようなフェノキシ樹脂の具体例としては」、「ジャパンエポキシレジン(株)製」「YL6954BH30」、「を挙げることができる。」との技術事項を読み取ることができる。 ウ 段落【0051】より、「無機充填材としては、シリカ」、「が好ましい。」との技術事項を読み取ることができる。 エ 段落【0054】より、「硬化触媒として用いられている有機金属化合物」「としては、」「コバルト(II)アセチルアセトナート」「が挙げられる。」との技術事項を読み取ることができる。 オ 【実施例1】に係る段落【0075】には、「ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(」、「不揮発分75%」、「)40重量部」、「ビニルベンジル樹脂(昭和高分子(株)製 V-5000X、不揮発分65%」、「)40重量部」、「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス(ジャパンエポキシレジン(株)製 YL6954BH30、」「不揮発分30%」「)15重量部」、「コバルト(II)アセチルアセトナートの1%N,N-ジメチルホルムアミド溶液2重量部」、「球型シリカ」「40重量部添加し樹脂組成物ワニスを作製し」、「そのワニスを」、「PETフィルム上に」、「塗布し、」「乾燥させ、接着フィルムを得た。」との技術事項を読み取ることができる。 カ <実施例4>に係る段落【0083】より、「FR4両面銅張積層板から回路基板を作製し、実施例1で得られた接着フィルムを」「回路基板両面にラミネートし」、「その後、PETフィルムを剥離し、」「紫外線照射し、」「加熱硬化させ絶縁層を形成し」、「サブトラクティブ法に従って回路形成し」て「得た」「4層プリント配線板」との技術事項を読み取ることができる。 キ <実施例4>に係る段落【0083】より、「得られた4層プリント配線板の導体層のピール強度は0.7kgf/cmであ」るとの技術事項を読み取ることができる。 ク 段落【0080】、【0081】【表2】には、実施例1に係る接着フィルムの測定周波数1GHzでの比誘電率が2.9であることが記載されている。 (3)したがって、上記オ、カないしクより、引用文献1には<実施例4>として次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(なお、各成分については、上記ア、ウ及びエに基づいて用途を併記した。)。 「ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(不揮発分75%)40重量部、ラジカル重合性樹脂としてビニルベンジル樹脂(不揮発分65%)40重量部、ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス(不揮発分30%)15重量部、硬化触媒としてコバルト(II)アセチルアセトナートの1%N,N-ジメチルホルムアミド溶液2重量部、無機充填材として球型シリカ40重量部を添加し樹脂組成物ワニスを作製し、そのワニスを、PETフィルム上に、塗布し、乾燥させ、測定周波数1GHzでの比誘電率が2.9である接着フィルムを得、FR4両面銅張積層板から回路基板を作製し、得られた接着フィルムを回路基板両面にラミネートし、その後、PETフィルムを剥離し、紫外線照射し、加熱硬化させ絶縁層を形成し、サブトラクティブ法に従って回路形成して得た4層プリント配線板であって、得られた4層プリント配線板の導体層のピール強度は0.7kgf/cmである、4層プリント配線板。」 2.引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0011】 通常の熱剥離シートの粘着剤には、アクリル系共重合ポリマーをベースに樹脂などの粘着付与剤、可塑剤、顔料、充填剤、導電剤、帯電防止剤などの添加剤と熱膨張性微小球(発泡剤)、多官能性エポキシ化合物、または、イソシアネート化合物などの架橋剤からなっている。 本発明は、(メタ)アクリル系共重合ポリマーに環構造を持ち、かつ、その環構造が極性の強い元素、例えば窒素元素を有するものであるモノマーを導入することで、被粘着物、金属や樹脂、セラミック(グリーンシート)に対する高温雰囲気下での粘着力を高くすることができる。」 「【0020】 (架橋剤) 架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などの架橋剤を使用することができる。」 「【0022】 (粘着付与剤) 粘着付与剤を添加しても良く、使用できる粘着付与剤は公知の粘着付与剤でよい。そのような粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、ロジンエステル類、テルペン系樹脂(例えば、テルペン-芳香族系液状樹脂、ポリテルペン樹脂など)、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂(例えば、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂など)、フェノール樹脂などが挙げられる。」 (2)よって、上記(1)より、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。 「アクリル系共重合ポリマーをベースに、クマロンインデン樹脂の粘着付与剤、可塑剤、顔料、充填剤、導電剤、帯電防止剤などの添加剤と熱膨張性微小球(発泡剤)、多官能性エポキシ化合物の架橋剤、からなる熱剥離シートの粘着剤であって、(メタ)アクリル系共重合ポリマーに環構造を持ち、かつ、その環構造が極性の強い元素、であるモノマーを導入することで、被粘着物、金属や樹脂、セラミック(グリーンシート)に対する高温雰囲気下での粘着力を高くすることができる」技術。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1における「FR4両面銅張積層板」から「作製」された「回路基板」が、本願発明1における「内層基板」に相当する。 イ 引用発明1における「接着フィルムを回路基板両面にラミネートし、その後、PETフィルムを剥離し、紫外線照射し、加熱硬化させ絶縁層」が、本願発明1における「前記内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層」に相当する。 ウ 引用発明1における「接着フィルム」は、測定周波数1GHzでの比誘電率が2.9であることから、その「接着フィルム」を両面にラミネートして「絶縁層」とした「4層プリント配線板」が、1GHz程度の高周波用回路用のものであることは明らかである。 よって、上記ア、イより、引用発明1における「FR4両面銅張積層板から」「作製した」「回路基板両面に」「絶縁層を形成し」「回路形成して得た4層プリント配線板」が、本願発明1における「前記内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層とを備える高周波回路基板」に相当する。 エ 本願発明1では「前記内層基板の誘電率をDk(A)とし、前記高周波回路形成用絶縁層の誘電率をDk(B)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が下記式:Dk(B)≦Dk(A)-0.8を満た」すのに対し、引用発明1では、「接着フィルム」の比誘電率は2.9であるものの、「FR4両面銅張積層板」の誘電率が特定されていないため、本願発明1における式(:Dk(B)≦Dk(A)-0.8)を満たしているか明らかでない点で相違する。 オ 引用発明1における「4層プリント配線板の」「ピール強度」が「0.7kgf/cmである」ことは、本願発明1における「前記内層基板に対する」「ピール強度が0.5kgf/cm以上であ」るとの条件を満たしている。 しかしながら、ピール強度が、本願発明1では「高周波回路形成用絶縁層」のピール強度であるのに対し、引用発明1では「導体層」のピール強度である点で相違する。 カ 上記ウを踏まえれば、引用発明1の「接着フィルム」における「PETフィルム上に、塗布し、乾燥させ」た「ワニス」が、本願発明1における「高周波回路形成用絶縁層」に相当する。 しかしながら、「高周波回路形成用絶縁層」の成分について、 (ア)本願発明1では(「成分(A)」として)「エポキシ樹脂」を含んでいるのに対して、引用発明1では、「エポキシ樹脂」を含有することは示されていない点で相違する。 (イ)本願発明1では(「成分(B)」として)「硬化剤を含み、不揮発成分を100質量%とした場合に」、(成分(B))「硬化剤の含有量が5質量%以上であ」るのに対して、引用発明1では、「硬化触媒としてコバルト(II)アセチルアセトナートの1%N,N-ジメチルホルムアミド溶液2重量部」、及び「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」を含んでいるものの、「硬化剤」を含むことは示されていない点で相違する。 キ 引用発明1における「ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー」は、ビスフェノールAとシアン酸との(広義の)エステル化合物であって、本願発明1における「シアネートエステル」に相当する。 しかしながら、引用発明1における「ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー」は、「樹脂組成物ワニス」における樹脂成分であって、樹脂を硬化させるための「硬化剤」ではないから、本願発明1における「シアネートエステル系硬化剤」に該当しない。 よって、引用発明1は、本願発明1における「(ただし、シアネートエステル系硬化剤を含有する場合を除く。)」との要件を満たしている。 すると、引用発明1では、「得られた接着フィルムを回路基板両面にラミネートし、その後、PETフィルムを剥離し、紫外線照射し、加熱硬化させ絶縁層を形成し」ているから、該「加熱硬化させ」た「絶縁層」が、本願発明1における「樹脂組成物(ただし、シアネートエステル系硬化剤を含有する場合を除く。)を熱硬化した硬化体」である「高周波回路形成用絶縁層」に相当する。 ク 上記ウを踏まえれば、引用発明1における「4層プリント配線板」が、本願発明1における「高周波回路基板」に相当する。 したがって、上記アないしクより、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「内層基板と、 前記内層基板に接合している高周波回路形成用絶縁層と を備える高周波回路基板であって、 前記高周波回路形成用絶縁層が、樹脂組成物(ただし、シアネートエステル系硬化剤を含有する場合を除く。)を熱硬化した硬化体である、高周波回路基板。」 (相違点1) 本願発明1では「前記内層基板の誘電率をDk(A)とし、前記高周波回路形成用絶縁層の誘電率をDk(B)としたときに、Dk(A)及びDk(B)が下記式:Dk(B)≦Dk(A)-0.8を満た」すのに対し。引用発明1では、「接着フィルム」の比誘電率は2.9であるものの、「FR4両面銅張積層板」の誘電率が特定されていないため、本願発明1における式(:Dk(B)≦Dk(A)-0.8)を満たしているか明らかでない点。 (相違点2) ピール強度について、本願発明1では「高周波回路形成用絶縁層」のピール強度であるのに対し、引用発明1では「導体層」のピール強度である点。 (相違点3) 高周波回路形成用絶縁層について、本願発明1では「エポキシ樹脂、および硬化剤を含み、不揮発成分を100質量%とした場合に、硬化剤の含有量が5質量%以上であ」るのに対して、引用発明1では、「エポキシ樹脂」を含むことも「硬化剤」を含むことも示されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、先ず、相違点3について検討する。 ア 引用文献1の段落【0045】には「本発明における樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含有していてもよい。なおシアネート化合物とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物において、更にフェノキシ樹脂を配合することにより、硬化が促進され樹脂組成物の熱硬化性が向上する。フェノキシ樹脂は2官能エポキシ樹脂とビスフェノール化合物の反応生成物からなるポリマーであり、分子中に存在するヒドロキシル基がエポキシ基とシアナト基の硬化促進作用を示すため、比較的低い硬化温度で十分な硬化物性(耐熱性、低誘電正接等)を発揮することが可能になると考えられる。」と記載されている。 イ すると、引用発明1における「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」は、「ビスフェノールAジシアネート」に加えてさらに「エポキシ樹脂」が含まれる場合に「硬化促進作用」を示す「樹脂」であるから、「エポキシ樹脂」が含まれていない引用発明1において、「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」を「硬化剤」として用いることは引用文献1から導くことができない構成である。 ウ また、仮に「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」を「硬化剤」として用いることを当業者が容易に想到し得たとしても、引用発明1における「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」の含有量は、不揮発成分を100質量%とした場合に4.5重量%しかなく、本願発明1における「硬化剤の含有量が5質量%以上であ」るとの条件を満足しない。 さらに、上記イで述べたとおり、引用発明1には「エポキシ樹脂」が含まれていないのであるから、「硬化剤」としての「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」の含有量を増加させる技術的理由も見いだせない。 エ さらに、引用文献1の実施例2には、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」を含有させた「接着フィルム」が記載されているが、「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」は「硬化促進作用」を示す「樹脂」にすぎず、上記ア、イと同様の理由により、「ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂ワニス」を本願発明1における「硬化剤」として用いることは引用文献1から導くことができない構成である。 オ また、引用文献2に記載された技術には、「架橋剤として」「エポキシ系架橋剤」を使用することが示されているものの、「エポキシ系架橋剤」は添加剤であって、本願発明1における(「樹脂組成物」としての)「エポキシ樹脂」にあたらない。 (3)まとめ したがって、上記相違点1、2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。、 2.本願発明2ないし16について 本願発明2ないし16に係る請求項2ないし16は、いずれも請求項1を引用している。 よって、本願発明2ないし16も上記相違点3に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について (特許法第29条第2項)について 審判請求時の補正により、本願発明1ないし16は上記相違点3に係る構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-005759

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決189件(味の素株式会社)
  • 2025-005991拒絶査定不服審判 / 2026-08-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)改質したえんどう豆たん白質の製造方法
    同じ当事者: 味の素株式会社
  • 2025-003536拒絶査定不服審判 / 2026-08-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)異味抑制剤
    同じ当事者: 味の素株式会社
  • 2025-005696拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)封止用シートの製造方法
    同じ当事者: 味の素株式会社
  • 2025-002599拒絶査定不服審判 / 2026-06-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)樹脂組成物および樹脂シート
    同じ当事者: 味の素株式会社
  • 2025-011254拒絶査定不服審判 / 2026-06-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)磁性ペースト
    同じ当事者: 味の素株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)784件(121・H05K)
  • 2025-007651拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)基板、積層基板の製造方法及び製品
    共通の審決分類: 121・H05K
  • 2026-007725拒絶査定不服審判 / 2026-07-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)配線構造体
    共通の審決分類: 121・H05K
  • 2025-001871拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)電磁波吸収体
    共通の審決分類: 121・H05K
  • 2025-003005拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 請求不成立接合シート
    共通の審決分類: 121・H05K
  • 2025-013822拒絶査定不服審判 / 2026-06-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)配線基板用積層体
    共通の審決分類: 121・H05K

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存