特許拒絶査定不服審判
2021-005697
外国語学習装置
- 審判番号
- 2021-005697
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-003626外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年05月05日
- 審決日
- 2024年07月23日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エドテック
- 分類
- P18 .121-WZ (G09B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第49条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 3626「外国語学習装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月19日出願公開、特開2018-112681〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月12日の出願であって、令和2年9月4日付けで拒絶理由が通知され、同年11月4日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月27日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年5月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和4年9月13日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和6年3月8日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年11月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
コンテンツを再生する再生部と、
前記コンテンツの再生の進行に沿った第1言語に基づく字幕を,当該字幕の文節単位ごとの区切りを特定して保持し,前記字幕の文節についての又は前記文節単位ごとに含まれる語彙についての,第2言語に基づく訳語情報を保持する字幕記憶部と、
前記コンテンツの再生の進行に合わせて前記字幕を表示すると共に,表示される字幕の文節単位ごとの区切りを示す区切り情報及び前記訳語情報を表示する字幕表示部と、
を備える外国語学習装置であって、
当該外国語学習装置によって,前記訳語情報が得られるものであって,当該訳語情報は,前記字幕の文節についてのまたは前記文節単位ごとに含まれる語彙についての機械処理を行った後に,編集ソフトによる修正を施すことで得られるものである、
外国語学習装置。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2011-128362号公報
4.特開平7-6175号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平5-334344号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平5-197751号公報(周知技術を示す文献)
7.特開平4-130965号公報(周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
1 引用文献
本願の出願前の平成23年6月30日に頒布された特開2011-128362号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、学習システムに関し、特にウェブシステムなどの情報処理システムを用いた学習システムに関する。特に、外国語を学習するのに好適な学習システムに関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、外国語の単語を構成する各文字の色を発音に応じて色分けして画面上に表示するものであり、単語の意味を理解していない初学者や、構文や文法、表現等を習得したい学習者は、システムの利用を躊躇してしまう可能性がある。
【0006】
また、従来の外国語学習システムによると、学習者の母語と外国語との文法構造の違いや単語の持つ意味等を、言葉で説明することなく、感覚的に習得させることは難しい。
【0007】
本発明は、このような従来の外国語学習システムが有していた問題を解決しようとするものであり、利用者が、外国語の発音とともに単語や語句の意味のみならず、外国語の文法をも直感的に習得できる学習システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態として、サーバ装置と端末装置とを備える学習システムが提供される。サーバ装置は、文のチャンクの発音を再生するための音声情報と、そのチャンクの意味を表示するための画像情報とを関連付けたコンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積部と、端末装置に、コンテンツ蓄積部に蓄積されたコンテンツのリストを選択可能に表示するための画面の情報を送信する選択画面送信部と、選択画面送信部により送信された画面の情報を介して選択されたコンテンツを端末装置に送信するコンテンツ送信部を有する。端末装置は、コンテンツを取得するコンテンツ取得部と、取得されたコンテンツにより関連付けられている音声情報による再生と画像情報による表示とをチャンク毎に同期して行なう再生制御部を有する。なお、文のチャンクとは、文が複数の単語の列から構成されている場合、その文を一又は複数の単語の列のまとまりに区切ったものである。通常は、一つのチャンクが一つの意味のまとまりを有する。例えば、主語を表わす主語節、述語を表わす述語節、名詞を修飾する形容詞節、述語を修飾する副詞節などがチャンクとなる。また、重要な前置詞などの単語は、それ一つでチャンクを形成する場合がある。
【0009】
また、本発明の一実施形態として、文のチャンクそれぞれについて、そのチャンクの発音を再生するための音声情報と、そのチャンクの意味を表示するための画像情報と、を関連付けたコンテンツを取得するコンテンツ取得部と、取得されたコンテンツにより関連付けられている音声情報による再生と画像情報による表示とをチャンク毎に同期して行なう再生制御部とを有する端末装置が提供される。
【0010】
また、本発明の一実施形態として提供される端末装置は、チャンクを表わすチャンク画像をランダムな位置に表示し、文を構成する単語の順序に従ってチャンク画像に対するマウスのクリック操作などが行なわれたかどうかを判定する順序エクササイズ部を有していてもよい。
【0011】
また、本発明の一実施形態として提供される端末装置は、チャンクの意味を表示するための画像情報を表示し、利用者からの入力を取得する出力エクササイズ部を有していてもよい。
【0012】
また、本発明の一実施形態として提供される端末装置は、音声情報による再生、映像情報による表示、順序エクササイズ部により判定がされたチャンク画像のチャンク、出力エクササイズ部により利用者からの入力が取得されたときに表示された画像情報のチャンクにいずれか一以上に含まれる単語、成句、表現、構文の学習履歴を管理するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、利用者に、外国語の発音とともに単語や語句の意味のみならず、外国語の文法をも直感的に習得可能な学習システムを提供することができる。」
(3)「【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る学習システムの機能ブロック図である。学習システム100は、コンテンツサーバ装置101と、通信網102を介して接続される一又は複数の利用者端末1031、…、103nとを備える。コンテンツサーバ装置101は、言語情報管理部104と、コンテンツ管理部105と、利用者管理部106とを有する。なお、利用者端末を単に「端末装置」という場合がある。
【0017】
言語情報管理部104は、利用者端末1031、…、103nを利用する利用者が学習する言語に関する情報を管理する。一般的に言語は、下位レベルの構成要素として単語を有し、単語が一又は複数並び、成句を形成する。また、単語、成句が並ぶことで文が形成される。そこで、言語情報管理部104は、このような言語に関する情報を管理するために、例えば、単語管理部111、成句管理部112を備える。これにより、言語の構造を管理することができる。単語管理部111は、単語にID(識別情報)、品詞、種々の属性(例えば、どの学習レベルで習得するべきか、使用される状況など)を付与して管理する。また、同様に成句管理部112は、成句にID、種々の属性を付与して管理する。単語、成句などにIDを付与することにより、利用者が学習などした単語、成句を管理することができる。
【0018】
図2(a)は、単語管理部111が管理するデータベースのテーブルの一例を示す。また、図2(b)は、成句管理部112が管理するデータベースのテーブルの一例を示す。図2(a)には、単語管理部111が管理するテーブルとして、テーブル201、202、203が例示されている。テーブル201は、単語に単語IDを関連付けるためのテーブルである。例えば、「make」という単語には、単語IDとして「10775」を関連付けている。テーブル201により、単語IDにより単語を識別することができる。テーブル202は、単語IDを品詞に関連付けるためのテーブルであり、単語IDで識別される単語の品詞を示す。例えば、単語ID「11896」には、「名詞」を関連付けており、「scope」が名詞であることを示している。テーブル203は、単語IDをレベルに関連づけるテーブルであり、単語IDで識別される単語をどの学習レベルで習得するべきかなどを示す。例えば、単語ID「15009」には、レベルとして「2」を関連付けており、「heavy」がレベル2の学習レベルで習得するべきことを示す。単語をどの学習レベルで習得するべきかは、例えば、実際に言語が使用される場合において、その単語が使用される頻度に応じて決定される。また、単語が使用される頻度は、例えば、インターネットを用いて閲覧できるニュース記事やブログの記事などを取得して決定することができる。」
(4)「【0030】
本発明の第1実施形態に係る利用者端末1031aは、コンテンツ取得部601と、再生制御部602を含む。再生制御部602は、チャンク再生部603、全文再生部604、及び解説情報再生部605を含む。なお、ここで「チャンク」とは、上述したように、文(センテンス)をいくつかの意味のまとまり(chunk)に分けたものを示す。以下、学習対象である言語における文について、「センテンス」と称することとする。
【0031】
例えば、図5におけるステップS505で、所定の項目が選択されると、コンテンツのリストを端末装置に選択可能に表示するための画面の情報がコンテンツサーバ装置101の選択画面送信部(図示せず)から端末装置1031aに送信される。この画面の情報が端末装置1031aに表示されることにより、コンテンツ蓄積部113に蓄積されているコンテンツの一部又は全てのなかからコンテンツを選択することができる。その結果、以下に説明されるコンテンツ表示処理を開始することができるようになる。
【0032】
図7に示すコンテンツ表示処理のフローにおいて、コンテンツ表示処理が開始されると、利用者端末1031aは、コンテンツサーバ装置101にコンテンツのパラメータをリクエストし、コンテンツサーバ装置101からコンテンツのパラメータを取得し、コンテンツ取得部601に格納する(ステップS701)。なお、コンテンツ表示処理の開始は、利用者端末1031aの画面において、後述するコンテンツページ800への遷移の際に、自動的に開始されるものであってもよい。
【0033】
次に、利用者端末1031aは、コンテンツサーバ装置101にコンテンツをリクエストし、コンテンツ取得部601にコンテンツを格納する(ステップS702)。なお、コンテンツサーバ装置101の選択画面送信部から送信された画面の情報を介して選択されたコンテンツは、コンテンツサーバ装置101のコンテンツ送信部(図示せず)から端末装置1031aに送信されてもよい。また、パラメータの取得(ステップS701)とコンテンツの取得(ステップS702)の順序は逆であってもよい。コンテンツのパラメータやコンテンツそのものは、端末装置1031aに装着されたDVD(Digital Versatile Disk)やハードディスクなどの記憶装置から読み取られることにより、取得されるようになっていてもよい。
【0034】
利用者が利用者端末1031aの画面に表示された再生開始ボタンを押下すると、コンテンツ取得部601に格納されたコンテンツのパラメータが、コンテンツに適用され(ステップS703)、再生制御部602により、コンテンツが再生される(ステップS704)。なお、ステップS703は、利用者が再生開始ボタンを押下せずとも、自動的にコンテンツの再生が開始されるものであってもよい。」
(5)「【0044】
ステップS704のコンテンツの再生により、コンテンツプレイヤーエリアGに第1画像810及び複数のボタン801~807が表示され、チャンクごとに対応する画像が表示されるチャンクの再生処理が開始される(ステップS705)。チャンクとは、上述した通り、外国語のセンテンスをいくつかの意味のまとまりに分けたものである。」
(6)「【0047】
次に、図10の「2.スロースライドショー(音声付)」において例示したように、チャンクの再生処理が開始される(ステップS705、S706)。図10には、第1画像810を描写する英語のセンテンス「The woman is pouring wine into the man’s glass」を、5つのチャンク821~825に分け、チャンクごとに対応する画像810~814を音声等とともにスライドショーのように、最初のチャンクから順に表示するチャンクの再生方法が説明されている。
【0048】
図10の「2.スロースライドショー(音声付)」に示すように、第2画像811には、「The woman」という第1チャンク821が関連付けられ、第3画像812には、「is pouring」という第2チャンク822が関連付けられ、第4画像813には、「wine」という第3チャンク823が関連付けられ、第5画像814には、「into」という第4チャンク824が関連付けられ、センテンスの最後のチャンクである「the man’s glass」という第5チャンク825には、基本画像である第1画像810が関連付けられている。これにより、「2.スロースライドショー(音声付)」では、コンテンツプレイヤーエリアGにおいて、第1乃至第5チャンク821~825まで、各チャンクに対応する音声及び画像等が順に表示され、センテンスの最後のチャンクである第5チャンク825の再生時には、センテンス全体を表す第1画像810が表示される。
【0049】
端末装置が取得するコンテンツにおいては、第1乃至第5画像810~814の各々を表示するための画像情報と、画像に対応するチャンクの単語の発音を再生するための音声情報とが関連付けられている。これにより、チャンクを指定することにより、そのチャンクに対応する画像の表示と音声の再生とを同期して行なうことができる。これをチャンクの再生処理という。なお、チャンクには、画像情報および音声情報以外の情報を、画像情報および音声情報に関連付けることができる。例えば、日本人の利用者に対して、各チャンクの日本語の文字による訳を関連付けることができる。以下、チャンクの再生処理について、図11~図15を参照して、さらに詳細に説明する。
【0050】
図11~図15は、本発明の第1実施形態に係るチャンクの再生処理を説明するための説明図である。なお、図11~図15は、ステップS705、S706において、コンテンツプレイヤーエリアG内に表示される画像が順に遷移していく様子を表す図であり、図10に示した第1乃至第5画像810~814及び第1乃至第5チャンク821~825を同様に用いて説明する。なお、以下、図11~図15を参照して行なう説明において、第1乃至第5チャンク821~825の文字が示された画像を、それぞれ、第1乃至第5チャンクの画像821a~825aと称する。チャンクの画像は、アイコンなどとして構成されていてもよい。第1乃至第5チャンクの画像821a~825aを、押下することで、チャンクに対応する音声情報の再生と画像情報の表示とを行なう処理が開始されるようになっていてもよい。また、図10~図15に示すように、ここでは、日本語を母語とする英語の学習者を対象としたコンテンツを例示して説明する。しかし、これに限らず、二ヶ国語以上の言語に対応したコンテンツであってもよい。
【0051】
まず、ステップS705において、利用者端末1031aのコンテンツ取得部601に格納されたコンテンツ及びパラメータに基づき、再生制御部602のチャンク再生部603が、チャンクの再生処理を開始する。これにより、図11に示したコンテンツプレイヤーエリアGには、第2画像811とともに、第1チャンクの画像821aが表示される。このとき、第1チャンク821を読み上げる音声がともに再生されてもよい。第2画像811は、第1画像810を基に、第1チャンク821の表わす意味と関連する部分以外が黒くマスクされるなど、透明度が低くなっている画像であり、第1チャンク821の表わす意味と関連する部分のイメージが強調される。このように、第1画像810をマスクすることにより、画像表示に必要なデータ量を小さくすることが可能となる。
【0052】
第2画像811と、第1チャンクの画像821aと、第1チャンク821の音声とを同時に利用者に提示することにより、利用者は、第1チャンク821に対応するイメージと、発音とを結びつけて記憶することが可能となる。また、第1チャンクの画像に、チャンクの文字表示を行なうことにより、イメージ、発音、文字を結びつけて記憶することができる。
【0053】
なお、図11に示したように、第1チャンクの画像821aは、解説スライドエリア809内に表示されている。例えば、図11に示した解説スライドエリア809の右上の「×」ボタンを押下することにより、第1チャンクの画像821aを含む解説スライドエリア809を非表示としてもよい。その場合には、操作選択エリア808の「解説を見る」ボタン807を押下することにより、解説スライドエリア809を再び表示することができるようになっていてもよい。
【0054】
また、図11に示すように、解説スライドエリア809には、第1チャンクの画像821aの下に、第1母語チャンク831の文字が表示されてもよい。第1母語チャンク831は、第1チャンク821を母語に訳したものである。なお、ここでは、「母語チャンク」と称するが、母語に限らず、チャンクに用いた言語以外の言語であればよい。利用者は、第1チャンク821のみを表示するか、第1母語チャンク831のみを表示するか、その両方を表示するか、またはいずれも表示しないか等を、字幕選択エリア806内のボタンで選択することができるようになっていてもよい。これにより、利用者は、解説スライドエリア809において、学習対象の言語と、その他の言語とを比較しながら学習することや、文字表示の有無を各自のニーズに応じて調整することも可能となる。なお、例として、図11~図15では、字幕選択エリア806で、英語及び日本語の両方を表示する英日ボタン806aを利用者が選択した状態であるため、解説スライドエリア809には、チャンクごとに英語による表示と日本語による表示とが上下に並んで表示されている。
【0055】
ステップS705が完了すると、ステップS706において、再生されたチャンクの次に再生されていないチャンクがあるかを判断する。例えば、チャンクを表わす情報がコンテンツを表わす情報の中にリスト情報として、センテンスの中の順序に従って配列されていてもよい。再生されていないチャンクがある場合には、ステップS705に戻り、チャンク再生部603により次のチャンクが再生される。これにより、センテンスの中に複数のチャンクが存在する場合、センテンスの中にチャンクが現れる順序に従って、チャンクに対応する音声情報の再生と画像情報の表示とを行なうことができる。
【0056】
第1チャンク821に対応する音声情報の再生と画像情報の表示の後、図12に示したコンテンツプレイヤーエリアGには、第3画像812とともに、第1チャンクの画像821a及び第2チャンクの画像822aが表示される。このとき、第2チャンク822を読み上げる音声がともに再生されてもよい。また、解説スライドエリア809において、第1チャンクの画像821aの右隣に第2チャンクの画像822aが配置され、一つのセンテンスが形成されるように配置される。第3画像812は、第1チャンク821及び第2チャンク822を表す部分以外が黒くマスクされた画像であり、第2チャンク822に対応するイメージが強調されるように表示される。例えば、第2チャンク822の「is pouring」という動詞について、「注ぐ」という動作を際立たせるように、第3画像812には、液体を注ぐアニメーション及び動作の方向を表す矢印等の画像がさらに加えられたものであってもよい。これにより、第3画像812において第2チャンク822のイメージを強調して利用者に提示することができる。また、第3画像812のイメージと、第2チャンクの画像822aと、第2チャンク822の音声とを同時に利用者に提示することにより、利用者は、第2チャンク822に対応するイメージと、文字と、発音とを結びつけて記憶することが可能となる。なお、第1及び第2チャンクの画像821a、822aの下には、第1及び第2母語チャンク831、832が表示されてもよい。
【0057】
第2チャンク822の再生後、再び、ステップS706からステップS705に戻り、図13に示したコンテンツプレイヤーエリアGには、第4画像813とともに、第1乃至第3チャンクの画像821a~823aが表示される。このとき、第3チャンク823を読み上げる音声がともに再生されてもよい。また、解説スライドエリア809において、第1チャンクの画像821aの右隣に第2チャンクの画像822aが、第2チャンクの画像822aの右隣に第3チャンクの画像823aが配置され、一つのセンテンスが形成されるように配置される。第4画像813は、第1乃至第3チャンク821~823を表す部分以外が黒くマスクなどされた画像であり、第3チャンク823に対応するイメージが強調されるように表示される。また、第4画像813のイメージと、第3チャンクの画像823aと、第3チャンク823の音声とを同時に利用者に提示することにより、利用者は、第3チャンク823に対応するイメージと、文字と、発音とを結びつけて記憶することが可能となる。なお、第1乃至第3チャンクの画像821a~823aの下には、第1乃至第3母語チャンク831~833が表示されてもよい。
【0058】
第3チャンク823の再生後、再び、ステップS706からステップS705に戻り、図14に示したコンテンツプレイヤーエリアGには、第5画像814とともに、第1乃至第4チャンクの画像821a~824aが表示される。このとき、第4チャンク824を読み上げる音声がともに再生されてもよい。また、解説スライドエリア809において、第1チャンクの画像821aの右隣に第2チャンクの画像822aが、第2チャンクの画像822aの右隣に第3チャンクの画像823aが、第3チャンクの画像823aの右隣に第4チャンクの画像824aが配置され、一つのセンテンスが形成される順番で配置される。第5画像814は、第1乃至第4チャンク821~824を表す部分以外が黒くマスクされるなどした画像であり、第4チャンク824に対応するイメージが強調されるように表示される。例えば、第4チャンク824の「into」について、第4画像813で示したワインが何かの中に入っていく動作を矢印で、ワインが入っていく対象を点線で表示してもよい。これにより、第5画像814において第4チャンク824のイメージを強調して利用者に提示することができる。また、第5画像814のイメージと、第4チャンクの画像824aと、第4チャンク824の音声とを同時に利用者に提示することにより、利用者は、第4チャンク824に対応するイメージと、文字と、発音とを結びつけて記憶することが可能となる。なお、第1乃至第4チャンクの画像821a~824aの下には、第1乃至第4母語チャンク831~834が表示されてもよい。また、図14に示すように、第4チャンクの画像824aの一部に、後述するコア説明ボタン840が表示されてもよい。コア説明ボタン840は、チャンクに含まれる語句の解説を表示するために、チャンクの上に配置されるボタンであってもよい。
【0059】
第4チャンク824の再生後、再び、ステップS706からステップS705に戻り、図15に示したコンテンツプレイヤーエリアGには、第1画像810とともに、第1乃至第5チャンクの画像821a~825aが表示される。このとき、第5チャンク825を読み上げる音声がともに再生されてもよい。また、解説スライドエリア809において、第5チャンク825は、センテンスを構成する最後のチャンクであるため、第1チャンクの画像821aの右隣に第2チャンクの画像822aが、第2チャンクの画像822aの右隣に第3チャンクの画像823aが、第3チャンクの画像823aの右隣に第4チャンクの画像824aが、第4チャンクの画像824aの右隣に第5チャンクの画像825aが配置され、一つのセンテンスが完成する。このため、第5チャンクの画像825aは、一つのセンテンスが表すシチュエーションをイメージとして示した第1画像810とともに表示される。このとき、第5画像814において黒くマスクなどされていた部分が、第1画像810では第5チャンクの画像825aとともに表示されるため、第5チャンク825のイメージを強調して利用者に提示することができる。また、第1画像810のイメージと、第5チャンクの画像825aと、第5チャンク825の音声とを同時に利用者に提示することにより、利用者は、第5チャンク825に対応するイメージと、文字と、発音とを結びつけて記憶することが可能となる。なお、第1乃至第5チャンクの画像821a~825aの下には、第1乃至第5母語チャンク831~835が表示されてもよい。
【0060】
なお、図11~図15に示した第1乃至第5チャンクの画像821a~825aは、例えば、主語は赤、動詞は青、補語は黄色、目的格補語はオレンジ、直接目的語は緑、間接目的語は黄緑、必須副詞要素はピンク、補足情報は灰色など、当該言語の文法におけるカテゴリに従ってチャンクを色分けして表示してもよい。これにより、利用者は、色を頼りにして視覚的に文法構造を理解することが可能となる。また、色分けの代わりに、チャンクの画像の形状をカテゴリに従って異なるようにしてもよい。例えば、主節は矩形、動詞は楕円形状のチャンク画像として表示してもよい。
【0061】
また、第1乃至第5チャンク821~825に対応させて第1乃至第5母語チャンク831~835を表示することにより、さらに、利用者は母語と学習言語との文法構造の違いを直感的に理解することが可能となる。
【0062】
また、例えば、図11~図15に表示された「自然な和訳を見る」ボタン836を押下すると、第1乃至第5母語チャンク831~835が表示されている箇所に、英語のセンテンスを母語である日本語の文法に則って訳した和文を表示してもよい。また、「自然な和訳を見る」ボタン836は、「和訳」に限らず、所望の言語の語順に並び替えることのできるボタンであってもよい。なお、第1乃至第5母語チャンク831~835についても、第1乃至第5チャンクの画像821a~825aと同様に、チャンクごとに当該言語(母語)の文法に則って色分けされて表示されてもよい。これにより、利用者は、学習対象の言語と所望の言語との文法構造の違いを比較することが容易となる。」
(7)「【0075】
端末装置はコンテンツ(及びパラメータ)をコンテンツサーバ装置101より入出力インターフェース904を用いて受信し、メモリ902や二次記憶903に記憶する。また、二次記憶903などに記憶されたコンテンツの再生プログラムがメモリ902にロードされ、CPU901により実行される。再生プログラムが実行されると、コンテンツ(及びパラメータ)が読出され、チャンクにより関連付けられている音声情報の再生とそのチャンクにより関連付けられている画像情報の再生とを同期して行なわれる。
【0076】
本発明の第1実施形態に係る利用者端末1031aは、図17に示した利用者端末1031と同様の機能を有してもよい。」
(8)「【図15】
[図:0001416867000001.jpg]
」
(9)上記(4)及び(8)より、第1乃至第5チャンクの画像821a~825aが、各々間隔を空けて、利用者が利用者端末1031aの画面の解説スライドエリア809に表示されることが看取できる。
2 引用文献に記載された発明
上記(1)乃至(8)の記載事項及び(9)の認定事項から引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「コンテンツ取得部601と、再生制御部602とを含み、再生制御部602は、チャンク再生部603、全文再生部604、及び解説情報再生部605を含む、利用者端末1031aであって、
利用者端末1031aは、コンテンツサーバ装置101にコンテンツをリクエストし、コンテンツ取得部601にコンテンツを格納し、
文のチャンクとは、文が複数の単語の列から構成されている場合、その文を一又は複数の単語の列のまとまりに区切ったものであって、一つのチャンクが一つの意味のまとまりを有するものであり、
コンテンツ取得部は、文のチャンクそれぞれについて、そのチャンクの発音を再生するための音声情報と、そのチャンクの意味を表示するための画像情報と、を関連付けたコンテンツを取得し、
再生制御部は、取得されたコンテンツにより関連付けられている音声情報による再生と画像情報による表示とをチャンク毎に同期して行ない、
チャンクには、日本人の利用者に対して、各チャンクの日本語の文字による訳を、画像情報および音声情報に関連付けられ、
英語のセンテンスを、複数のチャンク821等に分け、各々間隔を空けて、チャンクごとに対応する画像810等を音声等とともにスライドショーのように、最初のチャンクから順に表示し、
第2画像811と、第1チャンクの画像821aと、第1チャンク821の音声とを同時に利用者に提示し、
第1チャンク821に対応する音声情報の再生と画像情報の表示の後、第3画像812のイメージと、第2チャンクの画像822aと、第2チャンク822の音声とを同時に利用者に提示し、
第2チャンク822の再生後、第4画像813のイメージと、第3チャンクの画像823aと、第3チャンク823の音声とを同時に利用者に提示し、
第3チャンク823の再生後、第5画像814のイメージと、第4チャンクの画像824aと、第4チャンク824の音声とを同時に利用者に提示し、
第4チャンク824の再生後、第1画像810のイメージと、第5チャンクの画像825aと、第5チャンク825の音声とを同時に利用者に提示し、
利用者端末1031aの画面の解説スライドエリア809には、チャンクごとに英語による表示と日本語による表示とが上下に並んで表示され、
利用者は母語と学習言語との文法構造の違いを直感的に理解することが可能な、外国語の発音とともに単語や語句の意味のみならず、外国語の文法をも直感的に習得できる利用者端末1031a。」
2 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「コンテンツ」、「再生制御部602」、「英語による表示」、「日本語の文字による訳」、「コンテンツ取得部601」、「利用者端末1031aの画面」及び「利用者は母語と学習言語との文法構造の違いを直感的に理解することが可能な、外国語の発音とともに単語や語句の意味のみならず、外国語の文法をも直感的に習得できる利用者端末1031a」は、それぞれ、前者の「コンテンツ」、「再生部」、「第1言語に基づく字幕」、「第2言語に基づく訳語情報」、「字幕記憶部」、「字幕表示部」及び「外国語学習装置」に相当する。
(2)後者の「再生制御部602」は、チャンク再生部603、全文再生部604、及び解説情報再生部605を含むものであるから、「コンテンツ」を「再生する」といえる。
(3)本願発明の「字幕の文節単位ごとの区切り」とは、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を参酌すると、「チャンクリーディング、フレーズリーディングとも呼ばれるスラッシュリーディングに用いられる区切りであって、文構造を明確化する区切り」と解することができる。
ここで、後者の「チャンク」は、「文が複数の単語の列から構成されている場合、その文を一又は複数の単語の列のまとまりに区切ったものであって、一つのチャンクが一つの意味のまとまりを有するもの」であって、利用者は、当該「チャンク」を用いて外国語の発音を習得するのであるから、チャンクリーディングを行っていることは明らかである。
してみると、後者の「チャンク」は、前者の「字幕の文節単位ごとの区切り」に相当する。
(4)後者の「コンテンツ」は、文のチャンクそれぞれについて、そのチャンクの発音を再生するための音声情報と、そのチャンクの意味を表示するための画像情報と、を関連付けたものであるところ、再生制御部が、取得されたコンテンツにより関連付けられている音声情報による再生と画像情報による表示とをチャンク毎に同期して行なうと、チャンクごとに英語による表示と日本語による表示とが上下に並んで表示されるのであるから、後者の「コンテンツ」には、「チャンクそれぞれ」について、「英語」及び「日本語」の音声情報と画像情報とが関連付けられていて、字幕の文節単位ごとの区切りが特定され保持されているといえる。
(5)後者の「複数のチャンク821等」の「英語による表示」は、英語のセンテンスが分けられたものであって、チャンクごとに、スライドショーのように、最初のチャンクから順に表示されるものであるから、前者の「第1言語に基づく字幕」と後者の「複数のチャンク821等」の「英語による表示」とは、コンテンツの再生の進行に沿ったものとの概念で一致する。
(6)後者の「コンテンツ取得部601」には、コンテンツ、すなわち、チャンクが格納されているから、前者の「字幕記憶部」と後者の「コンテンツ取得部601」とは、コンテンツの再生の進行に沿った第1言語に基づく字幕を,当該字幕の文節単位ごとの区切りを特定して保持し,前記字幕の文節についての,第2言語に基づく訳語情報を保持するものとの概念で一致する。
(7)後者の「複数のチャンク821等」は、各々間隔を空けて表示され、当該間隔により、個々のチャンクを識別することができるから、後者の「間隔」は、前者の「表示される字幕の文節単位ごとの区切りを示す区切り情報」に相当する。
(8)後者の「利用者端末1031aの画面」には、チャンクごとに対応する画像810等を音声等とともにスライドショーのように、最初のチャンクから順に、チャンクごとに英語による表示と日本語による表示とが上下に並んで表示され、上記(7)のとおり、複数のチャンクの「間隔」は「区切り情報」に相当するから、前者の「字幕表示部」と後者の「利用者端末1031aの画面」とは、コンテンツの再生の進行に合わせて字幕を表示すると共に,表示される字幕の文節単位ごとの区切りを示す区切り情報及び訳語情報を表示するものとの概念で一致する。
(9)後者の「利用者端末1031aの画面」には、日本語による表示がされるから、後者の「利用者端末1031a」によって訳語情報が得られるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点において相違する。
[一致点]
「 コンテンツを再生する再生部と、
前記コンテンツの再生の進行に沿った第1言語に基づく字幕を,当該字幕の文節単位ごとの区切りを特定して保持し,前記字幕の文節についての,第2言語に基づく訳語情報を保持する字幕記憶部と、
前記コンテンツの再生の進行に合わせて前記字幕を表示すると共に,表示される字幕の文節単位ごとの区切りを示す区切り情報及び前記訳語情報を表示する字幕表示部と、
を備える外国語学習装置であって、
当該外国語学習装置によって,前記訳語情報が得られるものである、
外国語学習装置。」
[相違点]
本願発明が、「訳語情報」は,「字幕の文節についてのまたは文節単位ごとに含まれる語彙についての機械処理を行った後に,編集ソフトによる修正を施すことで得られるもの」であるのに対し、引用発明の「日本語の文字による訳」が語彙についての機械処理を行った後に,編集ソフトによる修正を施すことで得られたものであるのか否か明らかでない点。
3 判断
適切な翻訳を効率的に得るために、機械翻訳を行った後で、編集ソフトによって修正を施すことは、翻訳を行う際に一般的に行われている周知技術(例えば、特開平7-6175号公報の【0002】、特開平5-334344号公報の図3及び【0015】~【0019】、特開平5-197751号公報の図3及び【0016】~【0019】、特開平4-130965号公報の第2図及び第3頁左下欄第1行~第4頁左上欄第17行を参照。以下「周知技術」という。)である。
引用発明においても、適切な翻訳を効率的に得ることは当然に求められるものであるから、引用発明において、チャンクに、日本語の文字による訳を、関連付けるに際し、上記周知技術を適用し、機械処理を行った後に、編集ソフトによる修正を施すことにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明、上記周知技術から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、当業者が容易に発明できた発明である。
第5 請求人の主張について
1 請求人は、審判請求書及び令和6年3月8日に提出した意見書にて、概略、以下の通り主張する(スペースは改行を意味する。)。
(1)「1)本願発明を一般的な「機械翻訳」とする根拠がないことについて 拒絶査定書において審査官は本願発明を一般的な「機械翻訳」として拒絶しています。しかしそれ以前の拒絶理由の通知には機械翻訳については一言も記載がなく,その後の電話やメールでやり取りでも全く言及がありませんでした。 その点について審査官は「補正前の請求項には機械翻訳との特定する記載がなかったため,拒絶理由の中で機械翻訳には触れておりません」と回答しています。 しかし補正前後の請求項を比較すれば,補正後にのみ機械翻訳と特定する記載があると判断することは難しいと考えられます。」
(2)「引用文献の装置との相違について (3-1)引用文献1: 特開2011-128362号公報(中略)本願の目的は読解トレーニングで,文節単位(主語と動詞を含む)での分割が基本のため,この程度の英文であれば1箇所も分割しません。」
(3)「1.拒絶理由通知後の審査官と出願人のやりとり 初回の拒絶理由通知後に,審査官と出願人は電話で2回・メールで3回やり取りをした。 審査官は請求範囲を限定するために,出願人に人為的な補正を行うシステム「蝙集ソフトウェア」を加えるように指示し,請求人は審査官の指示に沿った手続補正書を作成し,提出前に一字一旬審査官の指示通りに修正した。 2.1の後の拒絶審査 審査官は,人為的な補正が通常の翻訳ソフトにあることを理由として拒絶審査を行った。 通常の翻訳ソフトにおいて,人為的な補正が行われるのは周知の事実であるが,先の拒絶理由通知において,当該外国語学習装置を通常の翻訳ソフとして捉えられていない(類する記述は一切ない)。」
「拒絶理由通知後に,出願人は審査官と5回ほど電話やメールでやり取りをし(電話だけでも少なくとも2回はやり取りをした記憶があります),請求人は審査官と相談しながら手続補正書を作成しました。請求人は提出前に手続補正書案を審査官にメールで送付し,一字一句審査官の指示通りに修正しました。 しかし審査官は補正後の請求項の追加部分を否定できる事例が見付からなかったため,審査官の判断で基準を変更し案件全体が通常の「機械翻訳」であるとして拒絶査定をしたことを認めています。 (i)判断基準を大幅に変更(今回は大幅な後退)するのであれば,請求人に反論できる機会を与えるべきであり,審査官は拒絶査定ではなく、新たな拒絶理由が発見されたものとして、拒絶理由の通知で対応すべきであると考えます。すなわち、新たな拒絶理由通知書を発することなく、拒絶査定という行政処分は、行政手続上、重大な瑕疵があるものと思料いたします。 (ii)「機械翻訳」であると判断した理由について,審査官は請求項を挙げています。 しかし拒絶理由通知後のやり取りで,請求人は審査官に複数回にわたり請求項の分かりにくさを伝え請求範囲の厳密化など補正の必要性を伺いましたが,審査官からは「請求項は分かりやすく適切」とし拒否しています。 審査官は本願発明の趣旨を理解しているにも関わらず,本願発明を「機械翻訳」であるとして拒否しており,その理由として請求項を挙げていますが,上記のやりとりからもひじょうに悪質であると考えます。 なお,拒絶理由通知後の請求人と審査官と電話やメールでのやり取りにおいて,請求人は審査管に対し不信感や不自然さを感じておらず,審査官がこのような対応をした理由は不明です。」
2 しかし、下記のとおり、請求人の主張は採用できない。
(1)について
令和2年9月4日付け拒絶理由通知の審査対象である出願時の特許請求の範囲には、「機械翻訳」についての特定はされていない。
してみると、上記1(1)の請求人の主張は、根拠に基づかない主張であるから採用し得ない。
(2)について
上記第4 2(3)の通り、本件発明の「字幕の文節」とは、スラッシュリーディングに用いられる区切りであって、引用発明の間隔もスラッシュリーディングと何ら相違するものではない。
よって、上記1(2)の請求人の主張は採用し得ない。
(3)について
ア 令和2年11月4日の請求人と審査官との応対につき、応対記録には、「さらに、追加の先行技術調査の結果、補正により追加された事項が設計事項レベル又は周知技術等の心証を得た場合は拒絶査定になることもあり得る旨伝えた。」と記載されている。
イ 特許法第49条には、「審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。」と規定され、同法同条第2項には、「その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。」と規定され、同法第50条には、「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。」と規定されている。
ウ 「審査基準」「第III部 第2章 第3節 新規性・進歩性の審査の進め方 5.3 進歩性の判断に係る審査の進め方 (2)」には、「例:拒絶理由が維持されないと判断する例 審査官は、新たな証拠を追加的に引用しなければ論理付けができない場合は、拒絶理由通知で示した拒絶理由は維持されないと判断する。ただし、既に示した論理付けに不備はなかったが、その論理付けを補完するために、周知技術又は慣用技術を示す証拠を新たに引用する場合を除く。」と謳われている。
エ 令和3年1月27日付けの拒絶査定の前の令和2年9月4日に、請求項1に係る発明に対して特許法第29条第2項に規定する理由を通知している。そして、令和3年1月27日付けの拒絶査定において、周知技術を新たに引用しているものの、新たな引用は先行技術文献を追加しているものではない。
オ してみると、令和3年1月27日付けの拒絶査定に、手続違背があるとはいえない。
カ よって、上記1(3)の請求人の主張は採用し得ない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-005697