審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-004798

長尺円偏光板の製造方法及び長尺円偏光板

審判番号
2021-004798
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-109356外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月14日
審決日
2022年02月25日
公報発行日
2022年05月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G02B) / P18 .536-WZ (G02B) / P18 .537-WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-109356「長尺円偏光板の製造方法及び長尺円偏光板」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月 3日出願公開、特開2019-168714〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特願2019-109356号(以下「本件出願」という。)は、平成26年8月7日(先の出願に基づく優先権主張 平成25年8月9日)に出願した特願2014-161222号の一部を令和元年6月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 2年 8月11日付け:拒絶理由通知書
令和 2年10月15日提出:意見書
令和 2年10月15日提出:手続補正書
令和 2年11月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月15日提出:意見書
令和 3年 1月15日提出:手続補正書
令和 3年 1月28日付け:拒絶査定
令和 3年 4月14日提出:審判請求書
令和 3年 4月14日提出:手続補正書
令和 3年 9月15日付け:拒絶理由通知書
令和 3年11月22日提出:意見書
令和 3年11月22日提出:手続補正書

第2 本願発明

本願の請求項1~3に係る発明は、令和3年11月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 長尺偏光板、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、
前記長尺偏光板と前記長尺光配向膜とが直接積層されており、
色相が、-2.6≦a≦-1.5及び4.1≦b≦6.3の範囲内であり、
長尺偏光板は、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールを延伸したフィルムの両面に基材を有する長尺偏光板であって、
続きを表示(全11行)
長尺位相差膜は、式(1)及び式(2)を満たす逆波長分散特性を有し、重合性液晶化合物(A)を含む液晶硬化膜形成用組成物(但し、メルカプト基-SHを有する化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を除く)の硬化物を含む長尺位相差膜であり、
長尺光配向膜は、光二量化反応に関与する光反応性基を有するポリマーの硬化物であって、一様の配向パターンを有し、光二量化反応に関与する光反応性基を有するポリマーを含む光配向膜形成用組成物から形成された膜であり、
前記長尺位相差膜の光軸の方向は、前記長尺偏光板の長尺方向に対して、30°~60°である、
長尺円偏光板。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。) 」

第3 拒絶の理由

令和3年9月15日付けで当合議体が通知した拒絶理由のうちの理由2~4は、概略、次のとおりである。

(理由2・進歩性)本件出願の請求項1~4に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2013-71956号公報

(理由3・委任省令要件)本件出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

(理由4・サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

第4 委任省令要件についての判断

1 本願発明において、「色相が、-2.6≦a≦-1.5及び4.1≦b≦6.3の範囲内であり」と記載されている。

しかしながら、本件明細書の【0005】において発明が解決しようとする課題について「円偏光板の厚み、及び、製造工程の簡便さが十分ではなかった。」と記載されていて、課題と色相の数値による特定との実質的な関係が不明である。

ここで、製造工程の簡便さは、長尺偏光板と長尺光配向膜とを直接積層すること、偏光板、光配向膜及び位相差膜を長尺にすること、光配向膜として二量化反応に関与する光反応性基を有するポリマーを使用することに依るものであって、色相と関係するものではない。

また、着色が少ないことが課題として周知であるとしても、a及びbが0に近い色相の領域が好ましいにもかかわらず、a及びbが0から外れた色相の領域を特定している技術上の意義が不明である。一方で、本件明細書の【0133】において、実施例1、2、参考例1として、「長尺円偏光板(1)及び(2)の方が、長尺円偏光板(3)よりも着色が少なく色相が優れていた。」と記載されている。ここで、実施例2、参考例1は、実施例1から「第1乾燥被膜および第2乾燥被膜作製時の乾燥温度条件のみを変更し」て得たものとされている。そこで、本願発明が特定する色相の領域の技術上の意義について、当該乾燥温度条件との対応関係も考慮して理解しようとしても、やはり不明であると言わざるを得ない。すなわち、実施例1~2、参考例1の第1乾燥皮膜の乾燥温度は、それぞれ、80℃、80℃、120℃、第2乾燥皮膜の乾燥温度は、それぞれ、90℃、110℃、130℃である(【0131】)。そして、上記【0133】の色相について、実施例1~2、参考例1のaは、-1.5、-2.6、-4.5であり、bは、4.1、6.3、9.0となる。これらの3つの例からは、その乾燥温度の範囲の内外でa、bがどの程度の値となるか予測できず、本願発明が特定する色相の領域について、乾燥温度条件がどのような対応関係にあるかは不明であると言わざるを得ない。したがって、本件明細書で具体的に示された実施例を考慮してもなお、本願発明が特定する色相の領域はその技術上の意義が不明である。

そうしてみると、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が発明の詳細な説明に記載されているとはいえない(委任省令要件を満たしているとはいえない。)。

2 審判請求人は、令和3年11月22日提出の意見書において、「本願の課題は、薄い円偏光板であっても、簡便な製造工程で製造することであり(段落[0005])」として、「長尺偏光板と前記長尺光配向膜とが直接積層された構成とすることで、薄い円偏光板を製造することができます。」、「これらが直接積層された構成とすると共に、長尺位相差膜の光軸の方向が長尺偏光板の長尺方向に対して30°~60°であるという構成とすることで、切り出した後の位相差膜と偏光板とを別途貼り合わせることが不要となる」、「光配向に必要な偏光照射量が比較的少ない光二量化反応に関与する光反応性基を有するポリマーを使用することで、偏光照射量も少なくすることができ、製造が簡便となります。」、「逆波長分散の特性(=円偏光板の反射防止機能)の調整と色相の調整との兼ね合い(=逆波長分散特性と色相を両立するため)から円偏光板の設計をしたところ、本願発明で規定する範囲(0から外れたところ)が好ましい領域となりました。」と主張している。

しかしながら、上記1のとおりであり、「逆波長分散の特性の調整と色相の調整との兼ね合い」についても本件明細書に記載はなく、特定された色相の領域の内外で逆波長分散の特性が変化するのか否か、同特性の良否が異なるのか否かさえ、本件明細書で具体的に示された実施例を考慮してもなお把握することができないのであるから、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

3 よって、本件出願の発明の詳細な説明は、本願発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。

第5 サポート要件についての判断

1 本件明細書に記載された、実施例1、2、参考例1は、上記第4のとおりであり、乾燥温度条件を異ならせることによって、どのように色相が変化するのかについて機序が不明である。例えば、乾燥温度を実施例よりも下げた場合に色相がどのように変化するのかが不明であり、さらに、乾燥時間や、光配向膜形成用組成物の組成が異なる場合にも、本願発明が特定する色相の領域が達成できるのか(どのように達成するのか)が不明である。また、長尺光配向膜を二量化反応に関与する光反応性基を有しないものとした場合、例えば、異性化反応に関与する光反応基を有するものの色相も不明である。さらに、光配向膜と色相の関係について技術常識であるともいえない。

そうしてみると、本件明細書に記載された実施例及び参考例は少なすぎるものであって、機序も不明であるから、本件明細書に記載された少数の実施例及び参考例から、本件請求項1に記載された色相の範囲にまで一般化することが十分に開示されているとはいえない。

したがって、本願発明の範囲にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

2 審判請求人は、令和3年11月22日提出の意見書において、「当該色相は、加熱温度が高いことによる樹脂の黄変、ヨウ素の昇華及び変質が抑制されていることを表しており、品質の良い円偏光板を製造するための特性値として記載されているものであることが理解されます。そして、本願発明に具体的に記載される製造方法によれば、色相を上記の範囲内とすることができることも理解されます。」と主張している。

しかしながら、上記1のとおりであるから、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

3 よって、本願発明は、本件出願の発明の詳細な説明に記載されたものであるということができない。

第6 進歩性についての判断

1 引用文献1及び引用発明

(1)引用文献1の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

当合議体の拒絶の理由で引用文献1として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2013-71956号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
続きを表示(全46行)
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板及び位相差板等の光学フィルムを含む部材が用いられている。このような光学フィルムとして、重合性液晶化合物、光重合開始剤及び溶剤を含む組成物を基材上に塗布することにより製造されたものが知られている。例えば、特許文献1には、式(ix-1)で表される重合性液晶化合物、光重合開始剤及び溶剤を含む組成物から形成された光学フィルムが記載されている。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の組成物では、基材上に塗布する際に、その塗布条件によっては、塗布膜中で部分的に重合性液晶化合物の結晶化が生じる場合があった。そのため、該組成物は成膜性の点では改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
〔1〕以下の(A)、(B)及び(C)を含む組成物。
(A)式(A)で表される化合物
[図:0001383802000001.jpg]
[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は-NR1-を表す。R1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR2R3又は-SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、-O-CR4R5-、-CR4R5-O-CR6R7-、-CO-O-CR4R5-、-O-CO-CR4R5-、-CR4R5-O-CO-CR6R7-、-CR4R5-CO-O-CR6R7-又は-NR4-CR5R6-又は-CO-NR4-を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は-NH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]
(B)メルカプト基を有する化合物
(C)光重合開始剤
〔2〕前記(B)が、2個以上のメルカプト基を分子内に有する化合物である前記〔1〕記載の組成物。
〔3〕前記(A)は、
前記式(A)のL1が式(A1)で表される基であり、かつL2が式(A2)で表される基の化合物である前記〔1〕又は〔2〕記載の組成物。
P1-F1-(B1-A1)k-E1- (A1)
P2-F2-(B2-A2)l-E2- (A2)
[式(A1)及び式(A2)中、
B1、B2、E1及びE2は、それぞれ独立に、-CR4R5-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-O-、-CS-O-、-O-CS-O-、-CO-NR1-、-O-CH2-、-S-CH2-又は単結合を表す。
A1及びA2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は-NH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のB1は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のA1は互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のB2は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のA2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
F1及びF2は、炭素数1~12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
P1は、重合性基を表す。
P2は、水素原子又は重合性基を表す。
R4及びR5は、前記と同じ意味を表す。]
〔4〕前記〔1〕~〔3〕のいずれか記載の組成物に含まれる重合性成分を重合して形成される光学フィルム。
〔5〕位相差性を有する前記〔4〕記載の光学フィルム。
〔6〕前記〔4〕又は〔5〕記載の光学フィルムを含む偏光板。
〔7〕前記〔4〕又は〔5〕記載の光学フィルムを備えたフラットパネル表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成膜性に優れた光学フィルム製造用の組成物及び該組成物から形成される光学フィルムが提供できる。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0008】
1.組成物(以下、本発明の組成物を場合により、「本組成物」という)
本組成物は、式(A)で表される化合物(以下、場合により「化合物(A)」という)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む。本発明は、本組成物、本組成物を用いて形成される光学フィルム等を提供するものであり、以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。なお、図面中の寸法等は見易さのために任意になっている。
続きを表示(全133行)
【0009】
1-1.化合物
本発明の組成物は、式(A)で表される化合物(A)を含む。繰り返しになるが、式(A)を以下に示す。
[図:0001383802000002.jpg]
[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は-NR1-を表す。R1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR2R3又は-SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、-O-CR4R5-、-CR4R5-O-CR6R7-、-CO-O-CR4R5-、-O-CO-CR4R5-、-CR4R5-O-CO-CR6R7-、-CR4R5-CO-O-CR6R7-又は-NR4-CR5R6-又は-CO-NR4-を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は-NH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]
・・・省略・・・
【0081】
B1及びB2は、化合物(A)の製造が容易となる傾向にあることから同種類の基であることが好ましい。また、k、lが2以上の整数である場合、2つのA1の間にあるB1、2つのA2の間にあるB2は、-CH2-CH2-、-C(=O)-O-、-CO-NH-、-O-CH2-又は単結合であると、化合物(A)の製造がより容易になる傾向があり好ましい。高い液晶性を示す光学フィルムを形成し易いという点から、2つのA1の間にあるB1、2つのA2の間にあるB2はともに、-C(=O)-O-であることが好ましい。
F1と結合しているB1、及びF2と結合しているB2は、それぞれ独立に、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CO-NH-、-NH-CO-又は単結合であることがより好ましい。
【0082】
k及びlは、それぞれ独立に、0~3の整数を表すことが好ましく、k及びlは0~2であることがより好ましい。k及びlの合計は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。k及びlが上記の範囲であると、化合物(A)がより液晶性を示しやすくなる傾向がある。
・・・省略・・・
【0200】
1-2.メルカプト基を有する化合物(B)
本組成物に含まれる(B)メルカプト基(-SH)を有する化合物(以下、場合により、「化合物(B)」という)としては、2個以上のメルカプト基を分子内に有する化合物であることが好ましい。2個以上のメルカプト基を含む化合物を用いることにより、本組成物から光学フィルムを形成する際、例えば基板上に本組成物を塗布とき、結晶化による成膜異常を抑制し、成膜性が向上することを、本発明者は新たに見出した。
【0201】
化合物(B)としては、脂肪族基にメルカプト基を複数有する脂肪族多官能チオール化合物が、液晶の配向を乱しにくいことなどの点から望ましい。
例えば、脂肪族多官能チオール化合物である化合物(B)としては、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1、4-ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトーグリコネートトリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート等が挙げられる。また、これらの化合物の他に、多価ヒドロキシ化合物のチオグリコレート、チオプロピオネート等を用いることもできる。
【0202】
市場から入手できる化合物(B)としては、例えば、カレンズMTBD1、カレンズMTPE1(昭和電工製、登録商標)、TMMP、PEMP、EGMP-4、DPMP(堺化学製)を挙げることができる。
・・・省略・・・
【0219】
1-4.液晶化合物(A’)
本発明の組成物は、化合物(A)とは異なる液晶化合物(以下、場合により「液晶化合物(A’)」という)を含んでいてもよい。前記液晶化合物(A’)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物、特開2010-31223号公報に記載された化合物等が挙げられる。なかでも、重合性基を有していてかつ液晶性を示す化合物が好ましい。前記液晶化合物(A’)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0220】
前記液晶化合物(A’)としては、例えば、式(3)で表される化合物(以下、場合により「化合物(3)」という)等が挙げられる。
【0221】
P11-E11-(B11-A11)t-B12-G (3)
[式(3)中、
A11は、置換基を有していてもよい芳香族複素環、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を表す。
B11及びB12は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-CS-、-O-CO-O-、-CR13R14-、-CR13R14-CR15R16-、-O-CR13R14-、-CR13R14-O-CR15R16-、-CO-O-CR13R14-、-O-CO-CR13R14-、-CR13R14-O-CO-CR15R16-、-CR13R14-CO-O-CR15R16-、-NR13-CR14R15-、-CH=N-、-N=N-、-CO-NR16-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-CO-O-又は単結合を表す。R13~R16は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、炭素数1~13のフルオロアルキル基、炭素数1~13のN-アルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基又は-E12-P12を表す。
E11及びE12は、炭素数1~18のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイルきに含まれるメチレン基は、酸素原子又は-CO-に置き換わっていてもよい。
P11及びP12は、重合性基を表す。
tは、1~5の整数を表す。tが2以上の整数である場合、複数のB11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のA11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
・・・省略・・・
【0232】
本組成物により形成される光学フィルムの波長分散特性は、本組成物が化合物(A)とともに液晶化合物(A’)を含むことにより制御できる。具体的には、光学フィルムに含まれる重合体(化合物(A)の重合体、又は化合物(A)と液晶化合物(A’)との(共)重合体)において、化合物(A)に由来する構造単位の含有量及び液晶化合物(A’)に由来する構造単位の含有量により所望の波長分散特性を有する光学フィルムを形成できる。光学フィルム中にある前記重合体の化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より逆波長分散特性を示す傾向がある。所望の波長分散特性を有する光学フィルムを形成するためには、化合物(A)に由来する構造単位の含有量が異なる本組成物を2~5種類程度調製し、それぞれの本組成物について、同じ膜厚の光学フィルムを製造してその位相差値を求める。そして、結果から、化合物(A)に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
・・・省略・・・
【0244】
2-1.位相差フィルム
光学フィルムの一種である位相差フィルムは本光学フィルムの好適な実施態様の一つである。該位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる。
【0245】
前記位相差フィルムとしては、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、以下のように分類できることが知られている。すなわち、
nx>ny≒nzのポジティブAプレート、
nx≒ny>nzのネガティブCプレート、
nx≒ny<nzのポジティブCプレート、
nx≠ny≠nzのポジティブOプレート及びネガティブOプレート
が挙げられる。
【0246】
前記位相差フィルムの位相差値は、用いられる表示装置により、30~300nmの範囲から適宜選択すればよい。
前記位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いる場合は、Re(549)は113~163nm、好ましくは130~150nmに調整すればよい。広帯域λ/2板として用いる場合は、Re(549)は250~300nm、好ましくは265~285nmに調整すればよい。位相差値が前記の値であると、広範の波長の光に対し、一様に偏光変換できる傾向があり、好ましい。ここで、広帯域λ/4板とは、各波長の光に対し、その1/4の位相差値を発現する位相差フィルムであり、広帯域λ/2板とは、各波長の光に対し、その1/2の位相差値を発現する位相差フィルムである。ここでいうReについては後述する。
【0247】
なお、本組成物中の化合物(A)及び液晶化合物(A’)の含有量を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。得られる位相差フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(4)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを適宜調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (4)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0248】
2-2.本光学フィルムの製造方法
本光学フィルムは、適当な基材を準備し、該基材上に本組成物を塗布し、乾燥し、本組成物に含まれる化合物(A)を、又は化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合することにより製造することができる。以下、本光学フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0249】
2-2-0.基材の準備
本光学フィルムの製造に用いることができる基材としては例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルムが好ましい。前記透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0250】
なお、かかる基材の本組成物を塗布する面には、配向膜が形成されていてもよい。
【0251】
2-2-1.未重合フィルムの作製
基材の上に、本組成物を塗布することにより、該基材上に未重合フィルムが得られる。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。
【0252】
基材上への塗布方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAP(キャップ)コーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法及びバーコーターによる塗布等が挙げられる。中でも、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法及びバーコーターによる塗布が好ましい。本組成物によれば、上記いずれの塗布方法によって未重合フィルムを形成しても、該未重合フィルム中で、本組成物の構成成分(化合物(A)等の重合性液晶化合物等)が結晶化することを良好に防止できる。
【0253】
本光学フィルムは、前記基材と積層した状態で使用してもよい。本光学フィルムに前記基材を積層しておくことで、フィルムの運搬、保管等を行う際に、本光学フィルムが破損することが抑制され、容易に取り扱うことができる。
【0254】
上述のように、本光学フィルムを製造する際、基材をそのまま、或いは基材上に配向膜を形成してから、本組成物を塗布することについて述べたが、前記基材上には予め配向膜を形成させておいてから、該配向膜の上に本組成物を塗布することが好ましい。このように配向膜を形成した基材を用いれば、本光学フィルムに対して延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。そのため、フラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きな本光学フィルムを製造できる。
【0255】
配向膜を形成する方法としては、ラビングによって配向規制力が付与される配向性ポリマーを用いる方法(以下、場合により「ラビング法」という)、偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いる方法(以下、場合により「光配向法」という)、基板表面に酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、及びラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法等が挙げられる。中でも、本組成物に含まれる化合物(A)の配向均一性、本光学フィルム製造の処理時間及び処理コストの観点から、ラビング法及び光配向法が好ましく、光配向法がより好ましい。配向膜としては、その上に本組成物を塗布しても、本組成物に含まれる成分、例えば、本組成物に含まれる溶剤に溶解しない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。また、該配向膜には、前記未乾燥フィルムからの溶剤の除去や、化合物(A)や液晶化合物(A’)の液晶配向時の熱処理に対する耐熱性、下地である基材に対しての密着性を有することも求められる。
【0256】
配向膜がラビング法によって形成される場合、ラビング法に用いられる配向性ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。配向膜形成用材料として、サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)又はオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)等の市販品を用いてもよい。
【0257】
配向膜が光配向法によって形成される場合、光配向法に用いられる光配向性ポリマーとしては、感光性構造を有するポリマーが挙げられる。感光性構造を有するポリマーに偏光を照射すると、照射された部分の感光性構造が異性化又は架橋することで光配向性ポリマーが配向し、光配向性ポリマーからなる膜に配向規制力が付与される。上記感光性構造としては、例えば、アゾベンゼン構造、マレイミド構造、カルコン構造、桂皮酸構造、1,2-ビニレン構造、1,2-アセチレン構造、スピロピラン構造、スピロベンゾピラン構造及びフルギド構造等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。これらのポリマーは、感光性構造を有する単量体を用いて、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等により得ることができる。また、異なる感光性構造を有する単量体を複数種用い、それらの共重合体であってもよい。このような光配向性ポリマーとしては、特許第4450261号、特許第4011652号、特開2010-49230号公報、特許第4404090号、特開2007-156439号公報、特開2007-232934号公報等に記載される光配向性ポリマーが挙げられる。
【0258】
基材上に配向膜を形成するためには、上記配向性ポリマー及び光配向性ポリマーは、溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)とし、該配向膜形成用組成物を該基材上に塗布する方法が簡便で好ましい。配向膜形成用組成物に用いる溶剤は、該溶剤に溶解させる配向性ポリマー及び光配向性ポリマーの種類等により適宜選択できるが、具体的には、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン又はメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム又はクロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0259】
配向膜形成用組成物から配向膜を形成するためには、上述のように、まず、前記基材上に、該配向膜形成用組成物を塗布する。塗布方法としては、すでに説明した本組成物を基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が採用できる。この場合も、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる方法が商業的生産の点では好ましい。
【0260】
続いて、配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去する。
【0261】
乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥又は減圧乾燥等、或いはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。具体的な乾燥温度としては、10~250℃であることが好ましく、25~200℃であることがさらに好ましい。また乾燥時間としては、用いた配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類にもよるが、5秒間~60分間であることが好ましく、10秒間~30分間であることがより好ましい。乾燥温度及び乾燥時間が上記範囲内であれば、前記の基材のいずれかを用いた場合、該基材に対する損傷を抑制することができる。
【0262】
かくして基材上に形成された配向膜形成用塗布膜に、すでに説明した方法により配向規制力を付与して配向膜を形成する。ここでは、配向規制力を付与する好ましい方法として例示したラビング法及び光配向法について詳述する。
・・・省略・・・
【0267】
次に、配向膜形成用塗布膜に対し、光配向法により配向規制力を付与する光配向法について説明する。
光配向法により配向規制力を付与するには、配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を行う。偏光照射は、例えば、特開2006-323060号公報に記載される装置を用いて行うことができる。例えば、配向膜形成用塗布膜上で、例えば所望の複数領域に対応したフォトマスクを準備し、当該領域毎にフォトマスクを介しての偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を繰り返し行うことにより、パターン化配向膜を形成することができる。上記フォトマスクとしては、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラスまたはポリエステルなどのフィルム上に、遮光パターンを設けたものが挙げられる。遮光パターンで覆われている部分は露光される光が遮断され、覆われていない部分は露光される光が透過される。熱膨張の影響が小さいため、フォトマスクに用いられる基材としては石英ガラスが好ましい。
【0268】
光配向法によってもパターン化配向膜を形成することができる。ここではその一例を挙げる。まず、配向膜形成用塗布膜(光配向性ポリマーを含む)に、第1のパターン領域に対応した空隙部を有する第1のフォトマスク(残りの領域は遮光パターンになっている)を介して、第1の偏光方向を有する第1の偏光を照射する(第1の偏光照射)。この第1の偏光照射によって、上記第1のパターン領域の配向規制力の方向を上記第1の偏光方向に対応させる。次いで、第2のパターン領域に対応した空隙部を有する第2のフォトマスク(残りの領域は遮光パターンになっている)を介して、上記第1の偏光方向とは異なる第2の偏光方向(例えば、第1の偏光方向に対して垂直な方向)を有する第2の偏光を照射する(第2の偏光照射)。この第2の偏光照射によって、上記第2のパターン領域12の配向規制力の方向を上記第2の偏光方向に対応させる。これにより、互いに配向規制力の方向が異なる複数のパターン領域を有する配向膜が得られる。さらに、3種類以上のフォトマスクを介して偏光照射を繰り返し行うことにより、互いに配向規制力の方向が異なる3つ以上のパターン領域を有するパターン化配向膜を作成することもできる。光配向性ポリマーの反応性の点で、各偏光照射とも、照射する光は紫外線であることが好ましい。
【0269】
かくして基材上に形成される配向膜又はパターン化配向膜の膜厚は、例えば10nm~10000nmであり、好ましくは10nm~1000nmである。このような範囲とすれば、本組成物に含まれる液晶性成分(化合物(A)、液晶化合物(A’))を所望の角度に配向させることができる。
【0270】
2-2-2.未重合フィルムの重合
基材上又は配向膜上に形成された前記未重合フィルムに含まれる化合物(A)を、又は、未重合フィルムに含まれる化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合し、硬化させることにより、光学フィルムが得られる。光学フィルムは、化合物(A)の配向性が固定化されており、熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
【0271】
化合物(A)を、又は、化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合させる方法としては、光重合法が好ましい。光重合法によれば、低温で重合を実施できるため、用いる基材の耐熱性の選択幅が広がる。光重合反応は、未重合フィルムに、可視光、紫外光またはレーザー光を照射することにより行われる。取り扱いの点で、紫外光が特に好ましい。
【0272】
基材上又は配向膜上に、本組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し、そのまま光照射を行って、該未重合フィルムを硬化することもできるが、該未重合フィルムを乾燥して、該未重合フィルムから溶剤を除去しておくことが好ましい。このようにして、未重合フィルムを乾燥した場合であっても、該未重合フィルム中で、本組成物の構成成分(化合物(A)等の重合性液晶化合物等)が結晶化することを良好に防止できる。
なお、溶剤の除去は、重合反応と並行して行ってもよいが、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておくことが好ましい。その除去方法としては、配向膜の形成方法において乾燥方法として例示したものと同じ方法が採用される。中でも、自然乾燥又は加熱乾燥が好ましく、自然乾燥又は加熱乾燥を行う際の温度は、0℃~250℃の範囲が好ましく、50℃~220℃の範囲がより好ましく、80℃~170℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は、10秒間~60分間が好ましく、より好ましくは30秒間~30分間である。加熱温度および加熱時間が上記範囲内であれば、基材として、耐熱性が必ずしも十分ではないものを用いることができる。
【0273】
化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本光学フィルムとが積層されたフィルム(積層フィルム)が得られる。さらに、配向膜を剥離して、単層の本光学フィルムを得ることができる。また、他の基材(フィルム又は板)を、該積層フィルムに貼合しておいてから、本光学フィルムに積層されていた基材や配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる。
【0274】
3.偏光板
本光学フィルムは、例えば偏光板製造に用いることができる。当該偏光板は、上述した本光学フィルム(本光学フィルムが位相差フィルムである場合を含む)を少なくとも一つ有するものである。
この偏光板としては、図1(a)~図1(e)に示すように、(1)本光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板4a(図1(a));(2)本光学フィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3を介して貼り合わされた偏光板4b(図1(b));(3)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを積層させ、さらに、本発明の本光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを積層させた偏光板4c(図1(c));(4)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本光学フィルム1’上に偏光フィルム層2を積層させた偏光板4d(図1(d));及び、(5)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板4e(図1(e))等が挙げられる。ここで接着剤とは、接着剤及び/又は粘着剤のことを総称するものである。なお、図1の説明では、光学フィルムとしては、本光学フィルムのみであってもよいし、本光学フィルムに配向膜が積層しているものであってもよいし、本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであってもよい。
【0275】
前記偏光フィルム層2は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
【0276】
また、偏光フィルム層2は、必要に応じて、保護フィルムとなるフィルムを備えていてもよい。前記保護フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0277】
接着剤層3及び接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤あるいはウレタン系接着剤等が用いられる。
また、偏光板においては、図1(c)~図1(e)に示すように、2以上の本発明の光学フィルムを直接または接着剤層を介して貼り合わせてもよい。
・・・省略・・・
【産業上の利用可能性】
【0302】
本発明は、液晶表示装置及び有機EL表示装置等に用いられる光学フィルムの製造に極めて有用であり、産業上の価値が高いものである。」

ウ 図1

[図:0001383802000003.jpg]

(2)引用発明

上記1より、引用文献1には、「本光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板4a」(【0274】)であって、「本光学フィルム」は、「直線偏光を円偏光」「に変換」する「位相差フィルム」(【0244】)であり、「本光学フィルム」は、「基材上には予め配向膜を形成させておいてから、該配向膜の上に本組成物を塗布する」(【0254】)ものであり、「配向膜を形成する方法として」は、「偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いる方法」(【0255】)であり、「配向膜上に、本組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し」、「硬化する」(【0272】)ものであり、「本組成物」は、「式(A)で表される化合物(A)、チオール基を有する化合物及び光重合開始剤を含む」(【0008】)(当合議体注:式(A)は、引用文献1の【0009】に記載されており、記載を省略した。)。

引用文献1には、基材と配向膜を剥離した「単層の本光学フィルム」(【0273】)との記載、及び「図1の説明では、光学フィルムとしては」、「本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであってもよい」(【0274】)との記載があることから、以下では表現を統一するため、基材と配向膜を含まないものを「単層の本光学フィルム」といい、単層の本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものを「光学フィルム」ということとする。

そうしてみると、引用文献1には、偏光板として次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 光学フィルムと、偏光フィルム層とが、直接積層された偏光板であって、 光学フィルムは、単層の本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであって、直線偏光を円偏光に変換する位相差フィルムであり、
偏光フィルム層は、偏光機能を有し、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルムであり、
単層の光学フィルムは、基材上には予め配向膜を形成させておいてから、該配向膜の上に組成物を塗布するものであり、配向膜を形成する方法としては、偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いるものであり、配向膜上に、組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し、硬化するものであり、
組成物は、式(A)で表される化合物(A)、チオール基を有する化合物及び光重合開始剤を含む、
続きを表示(全15行)
偏光板。
式(A)は
[図:0001383802000004.jpg]
[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は-NR1-を表す。R1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3~12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR2R3又は-SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、-O-CR4R5-、-CR4R5-O-CR6R7-、-CO-O-CR4R5-、-O-CO-CR4R5-、-CR4R5-O-CO-CR6R7-、-CR4R5-CO-O-CR6R7-又は-NR4-CR5R6-又は-CO-NR4-を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は-NH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]」

2 本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)長尺偏光板について

引用発明は、「光学フィルムと、偏光フィルム層とが、直接積層された偏光板であって、光学フィルムは、単層の本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであって、直線偏光を円偏光に変換する位相差フィルムであり、偏光フィルム層は、偏光機能を有し、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルムであり、単層の光学フィルムは、基材上には予め配向膜を形成させておいてから、該配向膜の上に組成物を塗布するものであり、配向膜を形成する方法としては、偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いるものであり、配向膜上に、組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し、硬化するものであ」る。

技術常識から、引用発明の「偏光フィルム層」が板状であることは明らかであり、また、「偏光機能」を有するから、「偏光板」を構成するものといえる。

さらに、引用発明の「偏光フィルム層」は、「ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム」であり、本願発明の「ヨウ素で染色したポリビニルアルコールを延伸したフィルム」に相当する。

そうしてみると、引用発明の「偏光フィルム層」は、本願発明の「長尺偏光板」と、「偏光板」の点で共通する。

(2)長尺配向膜及び長尺位相差膜について

上記(1)の構成からみて、引用発明の「配向膜」は、光配向膜として機能する。また、引用発明の「単層の本光学フィルム」は「配向膜上に、組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し、硬化するもの」であって、光学フィルムを位相差フィルムとして機能させる膜であるから、位相差膜として機能する。また、引用発明の化合物(A)を含む組成物が、重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物であることは明らかである(引用文献1の【0002】、【0081】、【0082】参照。)。

そうしてみると、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「長尺光配向膜及び長尺位相差膜」と、「光配向膜及び位相差膜」を有する点で共通する。

(3)長尺円偏光板について

上記(1)及び(2)を総合すると、引用発明の「偏光板」は、本願発明の「長尺円偏光板」と、「円偏光板」の点で共通する。

また、上記アの構成からみて、引用発明は、「偏光フィルム層」、「配向膜」及び「単層の本光学フィルム」を有し、「偏光フィルム層」と「配向膜」とが積層されているといえる。

そうしてみると、引用発明の「偏光板」は、本願発明の「長尺円偏光板」と、「偏光板、光配向膜及び位相差膜を」「有し、前記偏光板と前記光配向膜とが」「積層されて」いる点で共通する。

3 一致点及び相違点

(1)一致点

以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「 偏光板、光配向膜及び位相差膜を有し、前記偏光板と前記光配向膜とが積層されており、
偏光板は、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールを延伸したフィルムを有する偏光板であって、
位相差膜は、重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物の硬化物を含む位相差膜である、
円偏光板。」

(2)相違点

本願発明と引用発明は、以下の点で相違するか、一応相違する。

(相違点1)

「偏光板」、「光配向膜」、「位相差膜」及び「円偏光板」が、本願発明は、「長尺」であるのに対して、引用発明の「偏光フィルム層」、「配向膜」、「単層の本光学フィルム」及び「偏光板」は、長尺であるかどうかが明らかでない点。

(相違点2)

「偏光板」、「光配向膜」及び「位相差膜」が、本願発明は、「偏光板」、「光配向膜」及び「位相差膜」が、「この順に有」するとともに、「偏光板」と「光配向膜とが直接積層されて」いるのに対して、引用発明の「偏光フィルム層」、「配向膜」及び「単層の本光学フィルム」が、この順であるかどうかが明らかでなく、また、「偏光フィルム層」と「配向膜」とは、直接積層されているかどうかも明らかでない点。

(相違点3)

本願発明は、「色相が、-2.6≦a≦-1.5及び4.1≦b≦6.3の範囲内であ」るのに対して、引用発明は、色相は明らかでない点。

(相違点4)

「ヨウ素で染色したポリビニルアルコールを延伸したフィルム」を有する「偏光板」が当該フィルムの両面に、本願発明では、「基材を有する」のに対して、引用発明では、「基材を有する」か否かが明らかでない点。

(相違点5)

「位相差膜」が、本願発明は、「式(1)及び式(2)を満たす逆波長分散特性を有し」、液晶硬化膜形成用組成物として「メルカプト基-SHを有する化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物」を除く

「Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)」のに対して、引用発明の「単層の本光学フィルム」は、「チオール基を有する化合物」を含み、逆波長分散特性を有するかどうかは明らかでない点。

(相違点6)

「光配向膜」が、本願発明は、「光二量化反応に関与する光反応性基を有するポリマーの硬化物であって、一様の配向パターンを有し、光二量化反応に関与する光反応性基を有するポリマーを含む光配向膜形成用組成物から形成された膜であ」るのに対して、引用発明の「配向膜」は、このような構成でない点。

(相違点7)

「位相差膜」が、本願発明は、「前記長尺位相差膜の光軸の方向は、前記長尺偏光板の長尺方向に対して、30°~60°である」のに対して、引用発明の「単層の本光学フィルム」は、このように特定されていない点。

4 判断

上記相違点について検討する。

(1)相違点1について

引用文献1の【0259】には、「配向膜形成用組成物から配向膜を形成するためには、上述のように、まず、前記基材上に、該配向膜形成用組成物を塗布する。塗布方法としては、すでに説明した本組成物を基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が採用できる。この場合も、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる方法が商業的生産の点では好ましい」と記載されている。上記記載からは、光学フィルム(すなわち、基材、配向膜、及び単層の本光学フィルム)も長尺であることが示唆されているといえる。

また、長尺偏光板と長尺位相差膜とが直接積層されている長尺円偏光板は周知技術であるから、引用文献1において、長尺の光学フィルム(基材、配向膜及び単層の光学フィルム)が示唆されている以上、長尺の偏光板(偏光フィルム層)及び長尺の円偏光板も示唆されているといえる。

そうしてみると、上記相違点1は、実質的な差異ではない。

仮に、相違するとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

(2)相違点2及び4について

相違点2と相違点4はいずれも、円偏光板における層の構成に係るものであるから、併せて検討する。

引用発明の「光学フィルム」は、単層の本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものである。また、引用文献1の【0276】には、偏光フィルム層には「必要に応じて、保護フィルムとなるフィルムを備えていてもよい」と記載されており、当該保護フィルムは、本願発明の偏光板が有する「基材」に相当するといえる。

引用文献1に基づいて、その偏光フィルム層に光学フィルムを積層するにあたって、偏光フィルム層の側に、光学フィルムの基材を配置することは、当業者にとって適宜選択し得た設計事項にすぎない。例えば、特開2012-42530号公報には、長尺状支持体、該長尺状支持体上に光配向機能が付与された光配向膜(「長尺光配向膜」に相当)、該光配向膜上に光学異方性層(「長尺位相差膜」に相当)が形成された、光学フィルムが記載され(請求項11、実施例5等参照)、さらに、当該光学フィルムに長尺状偏光膜を貼り合わせ、かつ、偏光膜の他方側面に保護フィルムを有することにより、光学異方性層、光配向膜、長尺状支持体(一方面側の「基材」に相当)、偏光膜、保護フィルム(他方面側の「基材」に相当)をこの順で有する円偏光板とすることが記載されている(請求項15、【0251】、【0320】、図3等参照)。

また、特開2007-155970号公報にも、同様の層構成が記載されており「楕円偏光板10は、ロール状の偏光子の片面にロール状の透明保護層がロール・トゥ・ロール貼合されてロール状の直線偏光板11を形成するとともに、その透明保護層が貼合されていない面に、ロール状の光学補償フィルム13がロール・トゥ・ロール貼合されたもの」との記載もある(【0069】~【0071】)。これらの例のとおり、偏光フィルム層に備える保護フィルムは、光学フィルムの基材が配置される側には不要であり、配置されていない側にのみ適用して円偏光板の保護をすることは、当業者にとって設計事項である。

以上のとおり構成した円偏光板全体の層構成は、保護フィルム、偏光フィルム層、基材、配向膜、単層の本光学フィルムの順であり、本願発明の層構成と一致する。すなわち、保護フィルム、偏光フィルム層(偏光膜)、基材(長尺状支持体)という層の構成部分は、本願発明でいうところの「両側に基材」を有する「偏光板」と一致し、さらに、そのような構成部分の上に「光配向膜」及び「位相差膜」が「この順に」ある点は、本願発明において「偏光板」と「光配向膜とが直接積層されて」いる点と一致する。

仮に、上記の層構成において「基材」を、光学フィルムと偏光板の何れの一部とみるかで、円偏光板の物としての構成に違いを生じ、且つ本願発明において後者であることが特定されているとして、さらに検討しておく。

偏光フィルム層の両面に保護フィルムを備えることは慣用技術であって、上述のとおり引用文献1は、そのような構成も示唆している(【0276】)。

また、引用文献1の【0274】には、「光学フィルムとしては、本光学フィルムのみであってもよいし、本光学フィルムに配向膜が積層しているものであってもよい」とも記載されており基材が積層していない光学フィルムも示唆されている。そして、両面に保護フィルムを備えた偏光フィルム層に、基材がない光学フィルム(単層の本光学フィルムと配向膜)を積層するにあたって、偏光フィルム層(その保護フィルム)に配向膜を直接積層するか、偏光フィルム層に単層の本光学フィルムを介して配向膜を積層するかは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

あるいは、特開2007-155970号公報の【0056】に「ここまでの説明では、透光性基材に光学補償機能を発現する塗剤を塗布することにより光学補償フィルムを形成していたが、この透光性基材を、先に説明したロール状の直線偏光板に置き換えれば、この形態を実現することができる」と記載されているように、偏光板上に直接、塗剤(「光配向膜」について同文献【0069】参照)を塗布して形成することは、ロールtoロール形式の製法を前提としても、当業者が設計的に選択し得たことである。すると、引用発明の光学フィルムについて、基材上に配向膜を形成する代わりに、両面に保護フィルムを有する偏光フィルム層上に配向膜を直接形成することによって、円偏光板として同様の形態を実現することは、当業者における設計事項であって、その場合に、その層構成が本願発明の層構成と一致することは、上述したことから明らかである。

そうしてみると、引用発明において、上記相違点2及び上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3、5及び6について

相違点5は位相差膜について、相違点6は光配向膜についてであるところ、相違点3は、位相差膜及び光配向膜の特性に依るものであることから、これらをまとめて検討する。

ア まず、引用文献1の【0257】には、「感光性構造を有するポリマー」の例として「桂皮酸構造」(シンナモイル基を有する構造である)が例示されている。なお、ロールtoロール形式で連続的に光学素子を製造する際の光配向膜として、シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を用いること、それにより光配向に必要な偏光照射量を比較的少なくでき、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいことは周知である(例えば、特開2013-33249号公報の【0020】、特開2013-101328号公報の【0075】、特開2013-33248号公報の【0040】等)。また、シンナモイル基が光二量化反応に関与する光反応基であることは、周知の事項である。

そうしてみると、引用発明の「配向膜」として、上記相違点6に係る本願発明の構成とすることに何ら格別の困難性はない。

イ 次に、引用文献1の【0232】には、「光学フィルム中にある前記重合体の化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より逆波長分散特性を示す傾向がある。」と記載されている。上記記載から、化合物(A)を含む引用発明の光学フィルムが逆波長分散特性を有することは、明らかである。念のため付言すると、引用発明の化合物(A)を含む組成物が液晶硬化膜形成用組成物であることも、明らかである(引用文献1の【0002】、【0081】、【0082】参照。)。

また、引用文献1の【0200】には、「本組成物に含まれる(B)メルカプト基(-SH)を有する化合物(以下、場合により、「化合物(B)」という)としては、2個以上のメルカプト基を分子内に有する化合物であることが好ましい。2個以上のメルカプト基を含む化合物を用いることにより、本組成物から光学フィルムを形成する際、例えば基板上に本組成物を塗布とき、結晶化による成膜異常を抑制し、成膜性が向上することを、本発明者は新たに見出した。」と記載されている。上記記載から理解されるように、当業者は、メルカプト基を有しない液晶硬化膜形成用組成物も心得たものである。

そうしてみると、引用発明の「単層の光学フィルム」として、上記相違点5に係る本願発明の構成とすることに何ら格別の困難性はない。

ウ さらに進んで検討する。

上記第4で述べたように、本願発明において、色相を上記相違点3に係る範囲とすることに、色相を小さくするという以上の格別の技術的意義は見いだせないところ、色相を小さくするという課題は周知のものである。そして、色相を小さくするために、単層の光学フィルムの成分や製法を調整することは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

そうしてみると、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることに何ら格別の困難性はない。

エ 以上勘案すると、引用発明において、上記相違点3、5及び6に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点7について

引用発明の「光学フィルム」は、「直線偏光を円偏光に変換する位相差フィルムであ」るから、引用発明の「単層の光学フィルム」の光軸の方向は、偏光板の透過軸方向に対して、45°程度のものである。そして、上記アで述べたとおり、引用発明の「偏光フィルム層」、「配向膜」、「硬化膜A」及び「円偏光板」は、長尺であるか、又は、長尺とすることは設計事項にすぎないものである。ここで、通常、偏光フィルム層の透過軸の方向は、長尺の方向とするか、長尺の方向に直交する方向にするものである。(特開2012-42530号公報の【0320】、特開2007-155970号公報の【0069】~【0071】参照。)

そうしてみると、引用発明において、上記相違点7に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

5 効果について

本件明細書の【0007】には、「本発明によれば、薄型の円偏光板を高い生産性で製造することができる。」と記載されている。また、本願発明に関して、本件明細書の【0133】には、「120℃未満で乾燥した長尺円偏光板(1)及び(2)の方が、長尺円偏光板(3)よりも着色が少なく色相が優れていた。」と記載されている。

しかしながら、前者については、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内である。また、後者については、上記第4で述べたように、実施例が2つ、参考例が1つしかなく、格別の効果とは認められない。

6 審判請求人の主張について

審判請求人は、令和3年11月22日提出の意見書において、「引用文献1に記載の光学フィルムは、メルカプト基を有する化合物を必須の成分として含有する光学フィルムである点で、液晶硬化膜形成用組成物が、メルカプト基-SHを有する化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物ではないことを特定する本願発明の長尺フィルムを引用文献1に基づいて容易になし得たとは到底言えません。さらに、引用文献1の比較例に記載の光学フィルムは、メルカプト基を有する化合物を含んでいませんが、1.00≦Re(650)/Re(550) (2)を満たすか否かについても、特定の範囲の色相を満たすか否かについても不明であるし、長尺位相差膜の光軸の方向が前記長尺偏光板の長尺方向に対して30°~60°であるようなものでもありません。また、1.00≦Re(650)/Re(550) (2)を満たすべきことについても、特定の範囲の色相を満たすべきことについても、長尺位相差膜の光軸の方向が前記長尺偏光板の長尺方向に対して30°~60°とすべきことについても、引用文献1からは何らの示唆も得られません。したがって、このような引用文献1に基づいて、本願発明の構成を導き出すことが容易と言える合理的な理由は何ら存在しません。」と主張している。

しかしながら、上記4のとおりであるから、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

7 小括

よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本件出願は、特許法36条4項1号及び6項1号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-004798

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決480件(住友化学株式会社)
  • 2025-013284拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)光学積層体および画像表示装置
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2025-001215拒絶査定不服審判 / 2026-08-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)着色樹脂組成物
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2024-019148拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)プロピレン系重合体組成物、二軸延伸フィルム、および包装袋
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2024-016376拒絶査定不服審判 / 2026-07-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)塩、酸発生剤、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法
    同じ当事者: 住友化学株式会社
  • 2025-004957拒絶査定不服審判 / 2026-06-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)偏光フィルムおよび楕円偏光板
    同じ当事者: 住友化学株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,894件(121・G02B、536・G02B、537・G02B)
  • 2025-011564拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)反射防止フィルム
    共通の審決分類: 121・G02B、536・G02B、537・G02B
  • 2024-006919拒絶査定不服審判 / 2026-03-26 / 請求不成立ばね部材用金属箔、ばね部材用金属箔の製造方法、および、電子機器用ばね部材の製造方…
    共通の審決分類: 121・G02B、536・G02B、537・G02B
  • 2024-006934拒絶査定不服審判 / 2026-03-26 / 請求不成立ばね部材用金属箔、ばね部材用金属箔の製造方法、および、電子機器用ばね部材の製造方…
    共通の審決分類: 121・G02B、536・G02B、537・G02B
  • 2024-020062拒絶査定不服審判 / 2026-03-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)真空回折格子および製造方法
    共通の審決分類: 121・G02B、536・G02B、537・G02B
  • 2024-012394拒絶査定不服審判 / 2025-11-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)成形された光学フィルム
    共通の審決分類: 121・G02B、536・G02B、537・G02B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存