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特許拒絶査定不服審判

2021-004426

状態を監視するための能動的なマイクロカプセルを有する機械システム

審判番号
2021-004426
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-093989外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月06日
審決日
2022年01月05日
公報発行日
2022年02月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (F16C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2015- 93989「状態を監視するための能動的なマイクロカプセルを有する機械システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 3日出願公開、特開2015-215092、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件に係る出願は、平成27年5月1日(パリ条約による優先権主張 2014年5月6日 (FR)フランス共和国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成31年 3月20日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 6月19日 :意見書、手続補正書の提出 令和 元年11月22日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 3月 2日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 4月22日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 7月16日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年11月30日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和 3年 4月 6日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定の概要は以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1~8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2009-155443号公報 引用文献2:国際公開第2013/035307号 引用文献3:特開2006-9837号公報 第3 本願発明 本願の請求項1~8に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、令和2年7月16日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 少なくとも1つの可動部品(2;3;4)と、潤滑剤(8)と、外殻(91)で構成されたマイクロカプセル(9)とを備える機械システム(1)であって、 前記マイクロカプセル(9)は、前記機械システム(1)の所与の特徴的な物理パラメータの変動の作用を受けて粒子(92)を放出することが可能であり、前記粒子(92)の放出が前記機械システム(1)の外部にある手段によって特定可能であり、 前記機械システム(1)は複数の種類のマイクロカプセル(9)を有し、各種類のマイクロカプセル(9)が、前記機械システム(1)に固有の異なる物理パラメータの変動に対して感応性を有しており、そのため前記異なるパラメータの変動に対して前記粒子(92)を放出可能であり、前記機械システムは、前記粒子(92)の放出を検出するための少なくとも1つのセンサをさらに備え、 前記マイクロカプセル(9)の前記粒子(92)が、潤滑剤の成分の1つ、前記機械システム(1)の構成要素の材料の1つ、または放出された粒子との化学反応から生じ得る新たな化学種と反応することが可能な化学試薬であることを特徴とする機械システム。 【請求項2】 互いに対して回転可能に可動である第1の輪(2)および第2の輪(3)と、少なくとも1列の転動体(4)と、前記2つの輪(2、3)の間に画定される軸受チャンバ(8)内の潤滑剤と、を備える軸受(1)から成ることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記マイクロカプセル(9)が、前記機械システム(1)の前記潤滑剤(8)と混合されることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。 【請求項4】 前記マイクロカプセル(9)が、機械システム(1)の内部構成要素の少なくとも一部の表面にある層として堆積されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項5】 前記機械システム(1)が、前記機械システム(1)の単一の物理的パラメータの変動に対して感応性を有する種類のマイクロカプセル(9)を有するが、当該マイクロカプセル(9)は、前記パラメータの異なる閾値に対してそれぞれ感応性を有しており、これにより異なる値において前記粒子(92)を放出することが可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項6】 異なる種類の前記マイクロカプセル(9)、すなわちその外殻(91)が異なるパラメータおよび/または異なる閾値に対して感応性を有するマイクロカプセルが、各々異なる種類の粒子(92)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項7】 前記マイクロカプセル(9)の前記粒子(92)が帯電していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項8】 前記マイクロカプセル(9)の前記粒子(92)が着色剤であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。」 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明 1.引用文献1に記載された事項及び引用発明について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様。)。 (1)「【0001】 本発明は、軸受等機械装置の摺動部分や、油圧式装置等の油を巡回させるような部分に用いられる潤滑剤及び潤滑剤の劣化を判断する方法に関する。」 (2)「【0013】 以下、本発明の実施の形態について、本発明に係る潤滑剤及び潤滑剤の劣化の判断方法をグリース潤滑される円すいころ軸受に用いた形態を例として説明する。 【0014】 本実施形態で用いたベースグリースは、基油がエーテル油(40℃における基油動粘度100mm2/s)、増ちょう剤がジウレア化合物であるものを用いた(混和ちょう度260)。このベースグリースに、以下に詳述する、香料を内包した無機膜のマイクロカプセルを含有させて本実施形態に係るグリースを作成した。」 (3)「【0017】 本実施形態においては、膜材として無機系素材である炭酸カルシウム、内包物として香料を選択してスフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセルを合成した。香料は市販のお香(乳香)を乳鉢で入念にすり潰して使用した。スフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセルは、界面重合法により合成した。なお、炭酸カルシウムのカプセルは、低pH条件とすることでカプセルが壊れ、内包物が放出されるという性質を持つ。」 (4)「【0019】 本実施形態におけるスフィア型マイクロカプセルは、上述したように膜材の素材に炭酸カルシウムを用いているため、膜材は外力によって破壊されることはなく、潤滑剤の劣化に伴い生成される酸化生成物と反応することで周りから少しずつ溶出する。このため、内包物の香料は、潤滑剤の劣化と共にカプセルの外に放出されることとなる。」 (5)「【0021】 なお、臭いの強度の測定は臭いセンサを用い、試験室の所定箇所に固定して使用した。臭いの強度値は、比較例における最大値を1として相対的に示している。また、試験前と試験後に、実施形態に係るグリースと比較例に係るグリースからそれぞれ単離したカプセルの形状と一次平均粒径を測定し、表1にまとめた。」 摘記事項(1)~(5)から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「グリースと、膜材として無機系素材である炭酸カルシウム、内包物として市販のお香(乳香)を乳鉢で入念にすり潰した香料を選択したスフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセルを含有したグリースで潤滑される円すいころ軸受であって、 スフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセルは、グリースの劣化に伴い生成される酸化生成物と反応することで、周りから少しずつ溶出して、内包物の香料は、グリースの劣化と共にカプセルの外に放出され、臭いの強度の測定は、臭いセンサを用いる円すいころ軸受。」 2.引用文献2に記載された事項について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「[0001] 本発明は、イオン移動度センサーで検出可能なマーカー物質を利用した監視装置に関するものである。」 (2)「[0011] 図1に、イオン移動度センサー用の信号を発生する微粒子を用いた監視システムの概要を示している。この監視システム10は、閉鎖または半閉鎖された空間1に配置、設置あるいは組み立てられている監視対象物11のダメージの有無を監視するものである。この例では、監視対象物11は配管であり、配管の壁12に微粒子を含む監視層13が形成されている。また、監視システム10は、異常時に監視対象の配管11から放出される化学物質(分子、化合物、組成物などを含む)を検出する監視ユニット50を有する。 [0012] 監視ユニット(監視装置、モニター)50は、空間1の内部の空気をサンプリングするサンプリングポンプ51と、サンプリングされたガスに含まれる化学物質を測定または検出するイオン移動度センサー55と、検出結果を無線LANなどの手段を通じて出力する通信ユニット57とを含む。監視ユニット50は、異常事態の情報80を、たとえば、基地局61を介してインターネット62に接続されたホスト、たとえば、パーソナルコンピュータ63に送信する。」 (3)「[0014] 図2に監視対象の配管11の断面を示している。図3に、微粒子30を含む監視層13を拡大して示している。信号発生用の微粒子30は、大きさが0.1μm~5mm程度のマイクロカプセル35と、マイクロカプセル35に封入されたマーカー物質(化学物質)31とを含む。マイクロカプセル35に内包されたマーカー物質31は、イオン移動度センサー55に検出される多数の化学物質のいずれかであり、マーカー物質31がイオン移動度センサー55により検出されたときのスペクトルがデータベース58などに登録されているものである。」 (4)「[0016] マイクロカプセル35は、破壊温度・圧力領域が重複しないよう設計された材質および/または壁膜を有する複数種類のマイクロカプセルのいずれかである。マイクロカプセル35の製造方法はいくつかあるが、たとえば、界面重合法、in situ法マイクロカプセルがあり、それらにより製造されるマイクロカプセルの代表的なものとして、多価イソシアネートを用いたポリウレタンカプセルと、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂カプセルがある。ポリウレタンからなるカプセルの場合、多価イソシアネートとポリヒドロキシ化合物の両者を同時に油相中に溶解しておき、これを保護コロイド水溶液中に乳化分散し、さらに昇温して反応を起こさせてカプセル壁を形成させる。メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなるカプセルの場合、水に可溶性のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマーを用いる。染料前駆体を溶解したオイルを保護コロイド水溶液中に乳化分散したO/Wエマルジョンに、このプレポリマー水溶液を加えて弱酸性領域(pH3~6)で加熱攪拌すると、O/W界面に高分子が沈着してマイクロカプセルが得られる。保護コロイドとしては、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の重縮合反応を促進する酸触媒としての機能を有するもの(例えば、スチレンスルホン酸系ポリマー、スチレンと無水マレイン酸の共重合体、エチレンと無水マレイン酸の共重合体、アラビアゴム、ポリアクリル酸等)を用いることができる。 [0017] マイクロカプセルの材料および製造方法は上記に限定されない。使用前の保管もしくは輸送中に生じる加圧あるいは加熱条件下では破壊されず内容物を十分に保持できるマイクロカプセルであって、所定条件での加熱・加圧に供されると破壊され、内包している化学物質31を放出し得るマイクロカプセルであれば、特に限定されることはなく、公知の様々な材料および製造方法により製造されたカプセルを用いることができる。 [0018] 信号発生用の微粒子30は、マイクロカプセル35が所定の条件で破壊、損傷、溶解、消滅すると、マイクロカプセル35に内包されていた所定の化学物質31を放出する。したがって、破壊される要因により化学物質31の種類を変え、監視ユニット50が、大気に放出された化学物質31を検出することにより、マイクロカプセル35が破壊された要因を識別できる。 [0019] さらに、破壊される要因が同一のマイクロカプセル35であって、異なる種類の化学物質31を含む微粒子30を用意し、種類の異なる化学物質31を含む微粒子30を異なる部材、機器あるいは異なる場所にセットすることも可能である。この場合は、監視ユニット50が、大気に放出された化学物質31を検出することにより、破壊された部材、機器あるいは場所、および破壊された要因を識別(特定)することが可能となる。 [0020] 監視対象の配管11の監視層13は、微粒子30を含む樹脂を含むものであってもよく、微粒子30を含む部材であってもよい。配管11に過大な圧力が加えられたり、衝撃が加えられて配管11の壁12にクラック19が発生すると、監視層13の微粒子30に過大な圧力が加わる。マイクロカプセル35の耐圧以上の圧力が微粒子30に加わると、マイクロカプセル35が破壊または損傷し、内包(埋包、包含)されていた化学物質31が放出される。監視ユニット50は、放出された化学物質31を検出すると、検出対象の配管11が損傷したことを識別し、異常事態の発生を含む情報80をコンピュータ63に送信する。 [0021] 監視対象の配管11の異なる場所、あるいは厚さ方向の場所が異なる第2の監視層に、異なる化学物質31が内包された微粒子30が含まれていると、監視ユニット50は、微粒子30から放出された化学物質31を検出することにより、クラック19の発生した場所、および/またはクラック19の深さに関する情報を得ることができる。したがって、監視ユニット50は、異常事態の要因だけではなく、異常事態の発生場所、異常事態による損傷の程度も含めた情報80をコンピュータ63に提供できる。」 (5)「[0026] 信号発生用のマイクロカプセル35は、所定の耐圧性、耐熱性を備えたものに限定されない。耐候性、耐光性、耐薬品性などを備えたマクロカプセル35を提供することが可能であり、さまざまな条件の発生を微粒子30と、イオン移動度センサー55を備えた監視ユニット50との組み合わせにより検出できる。」 3.引用文献3に記載された事項について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0005】 上記課題を解決するために、本発明は、互いに対向配置される軌道を備えた第1部材および第2部材と、両部材の軌道間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を少なくとも備え、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、熱変色物質を内包するマイクロカプセルが添加された潤滑剤で潤滑されていることを特徴とする転がり支持装置を提供する。 【0006】 本発明はまた、構成部品として、互いに対向配置される軌道を備えた第1部材および第2部材と、両部材の軌道間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を少なくとも備え、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、構成部品の表面に、熱変色物質を内包するマイクロカプセルが固定されていることを特徴とする転がり支持装置を提供する。 【0007】 転がり支持装置の構成部品が前記第1部材、第2部材、転動体のみからなる場合には、これらの少なくともいずれかの表面に、熱変色物質を内包するマイクロカプセルを固定する。転がり支持装置の構成部品には、これら以外に、保持器、シール、シールド板等があるが、熱変色物質を内包するマイクロカプセルは、これらを含めていずれの構成部品に固定されていてもよい。」 (2)「【0009】 また、熱変色性物質は単独で使用されても良いし、複数の物質が混合されて使用されても良い。 前記熱変色物質が、2以上の成分が反応することで熱変色する組成物である場合には、一つのマイクロカプセルに、前記成分の全てでなく少なくとも1成分が内包されているものを使用すると、発色させる温度に応じた溶融温度のカプセル壁を使用することにより、発色させる温度を適宜設定することができる。 熱変色物質をマイクロカプセルに内包する方法としては、界面重合法、in-situ法、コアセルベーション法等、従来より公知の方法が採用できる。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「グリース」は、「円すいころ軸受」を潤滑するものであるから、本願発明1の「潤滑剤(8)」に相当する。また、引用発明の「無機系素材である炭酸カルシウム」からなる「膜材」は、本願発明1の「外殻(91)」に相当し、引用発明の「スフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセル」は、本願発明1の「マイクロカプセル(9)」に相当する。そして、引用発明の「円すいころ軸受」は、技術常識に照らせば、少なくとも一つの可動部品を備えていることが明らかであるから、引用発明の「グリースと、膜材として無機系素材である炭酸カルシウム、内包物として市販のお香(乳香)を乳鉢で入念にすり潰した香料を選択したスフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセルを含有したグリースで潤滑される円すいころ軸受」は、本願発明1の「少なくとも1つの可動部品(2;3;4)と、潤滑剤(8)と、外殻(91)で構成されたマイクロカプセル(9)とを備える機械システム(1)」に相当する。 引用発明の「潤滑剤の劣化に伴い」「酸化生成物」が「生成される」ことは、「円すいころ軸受」を潤滑する「グリース」の組成が変化することを意味するから、本願発明1の「前記機械システム(1)の所与の特徴的な物理パラメータの変動」に相当し、引用発明の「内包物の香料」は、「市販のお香(乳香)を乳鉢で入念にすり潰した香料」であるから、本願発明1の「粒子(92)」に相当する。したがって、引用発明の「スフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセルは、グリースの劣化に伴い生成される酸化生成物と反応することで、周りから少しずつ溶出して、内包物の香料は、グリースの劣化と共にカプセルの外に放出され」ることは、本願発明1の「前記マイクロカプセル(9)は、前記機械システム(1)の所与の特徴的な物理パラメータの変動の作用を受けて粒子(92)を放出することが可能であ」ることに相当する。 引用発明の「臭いセンサ」は、「臭いの強度の測定」に用いられるものであり、「臭い」は、「スフィア型炭酸カルシウム膜マイクロカプセル」から「内包物の香料」が「放出」されることにより発生するものであるから、本願発明1の「前記粒子(92)の放出を検出するための少なくとも1つのセンサ」に相当する。 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「少なくとも1つの可動部品と、潤滑剤と、外殻で構成されたマイクロカプセルとを備える機械システムであって、 前記マイクロカプセルは、前記機械システムの所与の特徴的な物理パラメータの変動の作用を受けて粒子を放出することが可能であり、 前記機械システムは、前記粒子の放出を検出するための少なくとも1つのセンサをさらに備える機械システム。」 【相違点1】 本願発明1では、「前記粒子(92)の放出が前記機械システム(1)の外部にある手段によって特定可能であ」るのに対し、引用発明では、係る構成を有していない点。 【相違点2】 本願発明1では、「前記機械システム(1)は複数の種類のマイクロカプセル(9)を有し、各種類のマイクロカプセル(9)が、前記機械システム(1)に固有の異なる物理パラメータの変動に対して感応性を有しており、そのため前記異なるパラメータの変動に対して前記粒子(92)を放出可能であ」るのに対し、引用発明では、係る構成を有していない点。 【相違点3】 本願発明1では、「前記マイクロカプセル(9)の前記粒子(92)が、潤滑剤の成分の1つ、前記機械システム(1)の構成要素の材料の1つ、または放出された粒子との化学反応から生じ得る新たな化学種と反応することが可能な化学試薬である」のに対し、引用発明では、係る構成を有していない点。 (2)判断 事案に鑑み、上記相違点3について検討する。 上記「第4 2.」に示すとおり、引用文献2には、イオン移動度センサーで検出可能なマーカー物質を利用した監視装置において、所定条件での加熱・加圧に供されると破壊され、内包している化学物質31を放出し得るマイクロカプセルが、破壊温度・圧力領域が重複しないよう設計された材質および/または壁膜を有する複数種類のマイクロカプセルであり、マイクロカプセル35に内包されたマーカー物質31は、イオン移動度センサー55に検出される多数の化学物質のいずれかであることが記載されている(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)。 また、上記「第4 3.」に示すとおり、引用文献3には、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、潤滑剤に、熱変色物質を内包するマイクロカプセルが添加されているか、構成部品の表面に、熱変色物質を内包するマイクロカプセルが固定されており、熱変色物質は、2以上の成分が反応することで熱変色する組成物であることが記載されている(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)。 しかしながら、引用文献2に記載された事項のマーカー物質31は、イオン移動度センサー55に検出される多数の化学物質のいずれかであって、他の材料と反応することが可能な化学試薬ではない。 また、引用文献3に記載された事項の熱変色物質は、2以上の成分が反応することで熱変色する組成物であるが、転動体、第1部材および第2部材、潤滑剤と反応するものではなく、2以上の成分が化学反応して新たな成分を生じ、当該新たな成分とさらに反応するものでもない。 すなわち、引用文献2及び3に記載された事項は、上記相違点3に係る本願発明1の構成を有するマイクロカプセルの粒子ではない。 そして、引用文献1ないし3には、マイクロカプセルの粒子として、「潤滑剤の成分の1つ、機械システムの構成要素の材料の1つ、または放出された粒子との化学反応から生じ得る新たな化学種と反応することが可能な化学試薬」に適宜変更し得ることを示唆する記載は無いし、マイクロカプセルの粒子として、「潤滑剤の成分の1つ、機械システムの構成要素の材料の1つ、または放出された粒子との化学反応から生じ得る新たな化学種と反応することが可能な化学試薬」が、当業者にとって従来周知の技術であるとも認められない。 してみれば、引用発明に対し、引用文献2及び3に記載された事項を採用したとしても、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2~8について 本願発明2~8は、本願発明1を減縮したものであって、本願発明1の「前記マイクロカプセル(9)の前記粒子(92)が、潤滑剤の成分の1つ、前記機械システム(1)の構成要素の材料の1つ、または放出された粒子との化学反応から生じ得る新たな化学種と反応することが可能な化学試薬である」点と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1~8は、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-004426

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