2021-003877
歯磨剤
- 審判番号
- 2021-003877
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-518065外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月25日
- 審決日
- 2022年09月27日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本ゼトック株式会社
- 【請求人代理人】増田 達哉
- 分類
- P18 .121-WY (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月7日(優先権主張 平成28年5月18日)を国際出願日とする出願であって、令和元年9月30日に手続補正書及び上申書が提出され、令和2年5月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月18日付けで拒絶査定され、これに対し、令和3年3月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
2.本願請求項1~5に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献等一覧
1.韓国公開特許第10-2012-0005150号公報
第3 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、令和3年3月25日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】オウゴン、ジオウおよびキキョウを含有する歯磨剤であって、前記歯磨剤中における前記オウゴンの含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記キキョウの含有率が0.05質量%以上2質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率が0.4質量%以上2質量%以下であり、かつ、ケイシを含まないことを特徴とする歯磨剤。【請求項2】前記歯磨剤中における前記オウゴンの含有率をXA[質量%]、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率をXC[質量%]としたとき、4≦XC/XA≦120の関係を満足する請求項1に記載の歯磨剤。【請求項3】前記歯磨剤中における前記キキョウの含有率をXB[質量%]、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率をXC[質量%]としたとき、0.0005≦XC/XB≦20000の関係を満足する請求項1または2に記載の歯磨剤。【請求項4】前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率は、前記歯磨剤中における前記オウゴンの含有率よりも大きい請求項1ないし3のいずれか1項に記載の歯磨剤。」
第4 引用文献1の記載及び引用文献1に記載された発明
1 引用文献1の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
なお、引用文献1は韓国語で記載されているところ、当合議体による訳文にて摘記する。
(1ア)
「請求項1ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ及びこれらの混合物の抽出物を有効成分として含むことを特徴とする口腔用組成物。」
(1イ)
「請求項5第1項の口腔用組成物を有効成分として含む歯磨。」
(1ウ)
「[0001] 本発明は、歯肉炎及び歯周疾患を予防するための口腔用組成物に関し、より詳細には、ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ及びこれらの混合物の抽出物を有効成分として含み、歯肉炎及び歯周疾患に関連する炎症誘発因子の生成及びコラーゲン分解酵素の活性を抑制する口腔用組成物に関するものである。」
(1エ)
「[0016] 本発明の組成物の具体例において、ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ及びこれらの混合物の抽出物は、組成物全体の重量部に対して、それぞれ0.01~10重量%、望ましくは0.1~1重量%の量で混合することが望ましく、上記重量範囲を外れると効果がないか、過多使用による皮膚刺激や美感の低下が現われる。」
(1オ)
「[0017] 本発明の一つの望ましい具体例では、別名で桂枝五物湯とも呼ばれるケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン及びジオウの混合物の抽出物を有効成分として含むことができる。ここで、各成分はケイシ4、キキョウ3、ブクリョウ8、オウゴン4、ジオウ4の割合で構成されるのが望ましい。」
(1カ)
「[0028] 実施例1の製造方法[0029] ケイシ4、キキョウ3、ブクリョウ8、オウゴン4、ジオウ4の割合で構成される天然物材料の混合物薬剤230gを1Lの70%エタノールで3日間冷浸して抽出し、これを濾過、濃縮の過程を経て抽出物を得て実験に使用した。」
(1キ)
「[0040] 本発明の効能を確認するために、以下のように実施例1の抽出物を含む通常の歯磨組成物(以下、実施例2)を製造し、歯周疾患予防効果を比較した。[0041] 表3比較実施例1 実施例2ポリエチレングリコール 4.0 4.0続きを表示(全12行)ソルビトール 45.0 45.0二酸化ケイ素 20.0 20.0ラウリル硫酸ナトリウム 2.0 2.0グリセリンパラオキシ 4.0 4.0キサンタンガム 0.5 0.5実施例1の抽出物 1.0精製水 to100 to100」
2 引用文献1に記載された発明
(1)請求項に記載された発明の認定
引用文献1は、歯肉炎及び歯周疾患を予防するための口腔用組成物に関する文献であって(摘記(1ウ))、請求項1を引用する請求項5に記載された発明(摘記(1ア)(1イ))については、明細書に同請求項に対応する具体例も製造方法を伴って記載されていることから(摘記(1カ)、(1キ))、請求項5に記載された発明として、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。
(2)実施例に基づく発明の認定
また、請求項5に対応する実施例2において、請求項1に対応する実施例1の抽出物(摘記(1カ))を1%含む歯磨組成物を製造したことが記載されているから(摘記(1キ))、実施例2に記載された発明として、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1B」という。)が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1Aとの対比・判断
ア 対比
引用発明1Aにおける「歯磨」は、引用文献1の実施例2における「歯磨組成物(・・・)を製造し、歯周疾患予防効果を比較した」との記載(摘記(1キ))からみて、「歯磨」組成物の製造後に最終的に製剤として用いることが意図されており、歯磨に用いる「剤」を意味していることは明らかであるから、本願発明1における「歯磨剤」に相当する。
また、引用発明1Aにおける「ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ及びこれらの混合物の抽出物」の「これらの」とは、その前に記載された5つの選択肢を指すと考えられ、「これらの混合物」とは、「ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ」の5つの選択肢から任意に2種以上を混合した「混合物」を意味するといえる。
そうすると、引用発明1Aにおける「ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ及びこれらの混合物の抽出物を有効成分として含む」とは、「ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ」のそれぞれ単独成分の「抽出物を有効成分として含む」場合と、5つの選択肢から任意に2種以上を混合した「混合物」の「抽出物を有効成分として含む」場合とを含んでいるので、本願発明1における「オウゴン、ジオウおよびキキョウを含有する」ことと、「ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウ及びこれらの混合物」を「含む」選択肢中に「オウゴン、ジオウおよびキキョウを含有する」選択肢が存在する限りにおいて、共通する。
したがって、本願発明1と引用発明1Aとを対比すると、両者は、
「オウゴン、ジオウおよびキキョウを含有する選択肢が存在する歯磨剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2A:本願発明1は「歯磨剤中における前記オウゴンの含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記キキョウの含有率が0.05質量%以上2質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率が0.4質量%以上2質量%以下」と各成分の含有率が特定されているのに対し、引用発明1Aはそのような特定がない点。
イ 相違点の判断
(ア)相違点1Aについて
引用文献1には、引用発明1Aに規定されるケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウの5成分をどのように組み合わせることができるかについて一般的な説明は記載されておらず、望ましい具体例として、上記5成分の全てを特定の割合で含む場合が記載されるのみである(摘記(1エ))。
そうすると、引用文献1の記載に接した当業者が敢えて特定成分に着目する動機付けはなく、引用発明1Aに規定される計5つの成分のうち、オウゴン、ジオウ及びキキョウを含有し、かつ、ケイシを含まない組み合わせとすることの記載ないし示唆があるとはいえないので、引用発明1Aにおいて、本願発明1の相違点1Aの構成とすることは、当業者が容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。
(イ)相違点2Aについて
上記のとおり、引用文献1には、当業者が容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない相違点1Aに係る成分の組み合わせを選択したうえで、さらにオウゴン、ジオウ及びキキョウの含有率を相違点2Aに該当する範囲から選択することの記載ないし示唆もなく、範囲自体を設定する動機付けも存在しないので、引用発明1Aにおいて、本願発明1の相違点2Aの構成とすることは、当業者が容易に想到し得る技術的事項ではない。
ウ 本願発明1の効果について
上記のとおり、上記相違点1A及び相違点2Aの構成は、当業者が容易に採用し得る技術的事項ではないが、本願発明1の効果についても、検討しておくこととする。
本願発明1については、実施例において、相違点1A及び相違点2Aに係るオウゴン、ジオウ及びキキョウを特定の含有率で含有することで、単独の生薬を用いるよりも低薬量で効果が得られ、歯周病菌のプラークの形成抑制効果を有するという効果(段落【0015】)が確認されている。
一方、引用文献1には、歯周病菌のプラークの形成抑制効果を奏することも、低薬量で効果が得られることについての記載もなく、オウゴン、ジオウ及びキキョウを特定の含有率で含有することにより、そのような効果が得られるという技術常識が本願優先日時点に存在したとも認められないので、本願発明1は、上記相違点1A及び相違点2Aに係る構成を備えることにより、引用発明1A及び本願優先日時点の技術常識から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものといえる。
エ 本願発明1と引用発明1Aとの対比・判断のまとめ
したがって、本願発明1は、引用発明1Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本願発明1と引用発明1Bとの対比・判断
ア 対比
引用発明1Bにおける「歯磨組成物」は、引用文献1の「歯磨組成物(・・・)を製造し、歯周疾患予防効果を比較した」との記載(摘記(1キ))からみて、「歯磨組成物」との用語が、組成物の製造後に最終的に製剤として用いることが意図されており、抽出物を1%含むものも歯磨剤に該当するのであるから、本願発明1における「歯磨剤」に相当する。
また、引用発明1Bにおける「ケイシ4、キキョウ3、ブクリョウ8、オウゴン4、ジオウ4の割合で構成される天然物材料の混合物の抽出物を1%含む」とは、本願発明1と「オウゴン、ジオウおよびキキョウ」「を」「含む」限りにおいて、共通する。
したがって、本願発明1と引用発明1Bとを対比すると、両者は、
「オウゴン、ジオウおよびキキョウを含有する歯磨剤。」である点で一致し、
以下の点で相違する。
相違点2B:本願発明1は「歯磨剤中における前記オウゴンの含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記キキョウの含有率が0.05質量%以上2質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率が0.4質量%以上2質量%以下」と各成分の含有率が特定されているのに対し、引用発明1Bでは「ケイシ4、キキョウ3、ブクリョウ8、オウゴン4、ジオウ4の割合で構成される天然物材料の混合物の抽出物を1%含む」と特定される点。
イ 相違点の判断
(ア)相違点1Bについて
上記相違点1Bについて検討すると、引用文献1には、特許請求の範囲の請求項1の記載としては、ケイシ、キキョウ、ブクリョウ、オウゴン、ジオウの5成分を2成分以上混合するものを選択肢として含むことを示唆する記載があるものの(摘記(1ア))、一般的記載としては、5成分全てを含むことを示唆する記載があり(摘記(1エ)(1オ))、引用発明1Bの認定の根拠となった実施例2においても、5成分全てを特定の割合で含むことが記載されている。(摘記(1カ)(1キ))。
そうすると、引用文献1には、当業者が、特定の3成分(オウゴン、ジオウ及びキキョウ)に着目してこれらを選択する動機付けも、ケイシに着目してこれのみを除外する動機付けもないので、引用発明1Bにおいて、ケイシを含まないものとすることの記載ないし示唆があるとはいえず、引用発明1Bにおいて、本願発明1の相違点1Bの構成とすることは、当業者が容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。
(イ)相違点2Bについて
上記のとおり、引用文献1には、当業者が容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない相違点1Bの構成を採用したうえで、さらにオウゴン、ジオウ及びキキョウの含有率を相違点2Bに該当する範囲から選択することの記載ないし示唆もなく、範囲自体を設定する動機付けも存在しないので、引用発明1Bにおいて、本願発明1の相違点2Bの構成とすることは、当業者が容易に想到できる技術的事項ではない。
ウ 本願発明の効果について
上記のとおり、上記相違点1B及び相違点2Bの構成は、当業者が容易に採用し得る技術的事項ではないが、本願発明1の効果についても、検討しておくこととする。
本願発明1は、実施例において、オウゴン、ジオウ及びキキョウを特定の含有率で含有することで、単独の生薬を用いるよりも低薬量で効果が得られ、歯周病菌のプラークの形成抑制効果を有するという本願発明1の効果(段落【0015】)が確認されている。
一方、引用文献1には歯周病菌のプラークの形成抑制効果を奏することも、低薬量で効果が得られることについての記載もなく、そのような本願優先日時点の技術常識もないので、本願発明1は上記相違点1B及び相違点2Bに係る構成を有することで引用発明1B及び本願優先日時点の技術常識から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものといえる。
エ 本願発明1と引用発明1Bとの対比・判断のまとめ
したがって、本願発明1は、引用発明1Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2~4について
(1)本願発明2~4と引用発明1Aとの対比・判断
ア 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1において、オウゴンの含有率とジオウの含有率との関係をさらに特定したものであるから、本願発明2と引用発明1Aの間には、本願発明1と引用発明1Aとの相違点1A、2Aに加えて、さらに次の相違点3Aがある。
上記相違点3Aについて検討すると、引用文献1には、オウゴン及びジオウを含むそれぞれの成分は0.01~10重量%の量で混合できる旨の一般的記載が存在するものの(摘記(1エ))、相違点3Aに該当する比で含有させることの記載ないし示唆もなく、範囲自体を相違点3Aの範囲で設定する動機付けも存在しないので、引用発明1Aにおいて、相違点3Aの構成をなすことも当業者が容易に想到できる技術的事項ではない。
したがって、本願発明2は、本願発明1と引用発明1Aとの対比において検討したように、引用発明1Aにおいて、相違点1A及び2Aの構成とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項でなく、相違点3Aの構成も当業者が容易に想到できる技術的事項ではないので、本願発明2も、引用発明1Aに基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
イ 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1(又は本願発明2)において、キキョウの含有率とジオウの含有率との関係をさらに特定したものであるから、本願発明3と引用発明1Aの間には、本願発明1と引用発明1Aとの相違点1A、2A(又は本願発明2を引用する場合は、さらに相違点3A)に加えて、さらに次の相違点4Aがある。
上記相違点4Aについて検討すると、引用文献1には、キキョウ及びジオウを含むそれぞれの成分は0.01~10重量%の量で混合できる旨の一般的記載が存在するから(摘記(1エ))、計算上、相違点4Aに該当する比も許容されているとはいえる。
しかしながら、本願発明3は本願発明1についてのものと同様の相違点1A、2A(又は本願発明2を引用する場合は、さらに相違点3A)を備えるものであるから、本願発明3は、本願発明1と引用発明1Aとの対比において、検討したように、引用発明1Aにおいて、相違点1A及び2Aの構成とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項でなく、本願発明2と引用発明1Aとの対比において、検討したように、相違点3Aの構成も当業者が容易に想到できる技術的事項ではないので、相違点4Aに関する容易想到性の判断にかかわらず、引用発明1Aに基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
ウ 本願発明4について
本願発明4は、本願発明1(本願発明2、又は本願発明3)において、オウゴンの含有率とジオウの含有率についての関係をさらに特定したものであるから、本願発明4と引用発明1Aの間には、本願発明1と引用発明1Aとの相違点1A、2A(本願発明2を引用する場合は、さらに相違点3A、又は本願発明3を引用する場合は、さらに相違点3A及び相違点4A)に加えて、さらに次の相違点5Aがある。
上記相違点5Aについて検討すると、引用文献1には、オウゴン及びジオウを含むそれぞれの成分は0.01~10重量%の量で混合できる旨の一般的記載が存在するので(摘記(1エ))、歯磨剤中ジオウの含有率をオウゴンの含有率よりも大きいもののとすることは可能であるにしても、敢えてジオウの含有率をオウゴンの含有率よりも大きくすることについての記載ないし示唆はないので、当業者が容易に想到できる技術的事項ではない。
したがって、本願発明4は、本願発明1~3と引用発明1Aとの相違点の判断で検討した内容を考慮すれば、相違点1A、2A及び3Aの構成とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項でなく、相違点5Aの構成も当業者が容易に想到できる技術的事項ではないので、引用発明1Aに基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2)本願発明2~4と引用発明1Bとの対比・判断
ア 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1において、オウゴンの含有率とジオウの含有率との関係をさらに特定したものであるから、本願発明2と引用発明1Bの間には、本願発明1と引用発明1Bとの相違点1B、2Bに加えて、さらに次の相違点3Bがある。
相違点3B:本願発明2は「歯磨剤中における前記オウゴンの含有率をXA[質量%]、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率をXC[質量%]としたとき、4≦XC/XA≦120の関係を満足する」と特定されるのに対し、引用発明1Bでは「ケイシ4、キキョウ3、ブクリョウ8、オウゴン4、ジオウ4の割合で構成される天産物材料の混合物の抽出物を1%含む」と特定される点。
上記相違点3Bについて検討すると、引用文献1には、オウゴン及びジオウを含むそれぞれの成分は0.01~10重量%の量で混合できる旨の一般的記載が存在するものの(摘記(1エ))、引用発明1Bは、実施例として成分組成が完成されたものとして記載されており、ジオウ4/オウゴン4=1である引用発明1BからXC/XAを相違点3Bに該当する比で含有させるように変更することの記載も示唆もなく、範囲自体を敢えて設定する動機付けも存在しないので、当業者が容易に想到できる技術的事項ではない。
また、本願発明2は本願発明1と引用発明1Bとの対比において、検討したように、引用発明1Bにおいて、相違点1B及び2Bの構成とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項でなく、相違点3Bの構成も当業者が容易に想到できる技術的事項ではないので、本願発明2も、引用発明1Bに基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
イ 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1(又は本願発明2)において、キキョウの含有率とジオウの含有率との関係をさらに特定したものであるから、本願発明3と引用発明1Bの間には、本願発明1と引用発明1Bとの相違点1B、2B(又は本願発明2を引用する場合は、さらに相違点3B)に加えて、さらに次の相違点4Bがある。
相違点4B:本願発明3は「歯磨剤中における前記キキョウの含有率をXB[質量%]、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率をXC[質量%]としたとき、0.0005≦XC/XB≦20000の関係を満足する」と特定されるのに対し、引用発明1Bでは「ケイシ4、キキョウ3、ブクリョウ8、オウゴン4、ジオウ4の割合で構成される天産物材料の混合物の抽出物を1%含む」と特定される点。
上記相違点4Bについて検討すると、引用発明1Bは、キキョウ3とジオウ4の割合で含有するからジオウXC/キキョウXBは1.33であり、引用文献1には、キキョウ及びジオウを含むそれぞれの成分は0.01~10重量%の量で混合できる旨の一般的記載が存在するから(摘記(1エ))、計算上、相違点4Bに該当する比も許容されているとはいえる。
しかしながら、本願発明3は、本願発明1と引用発明1Bとの対比において、検討したように、引用発明1Bにおいて、相違点1B及び2Bの構成とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項でなく、本願発明2と引用発明1Bとの対比において、検討したように、相違点3Bの構成も当業者が容易に想到できる技術的事項ではないので、相違点4Bに関する容易想到性の判断にかかわらず、引用発明1Bに基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
ウ 本願発明4について
本願発明4は、本願発明1(本願発明2、又は本願発明3)において、オウゴンの含有率とジオウの含有率についての関係をさらに特定したものであるから、本願発明4と引用発明1Bの間には、本願発明1と引用発明1Bとの相違点1B、2B(本願発明2を引用する場合は、さらに相違点3B、又は本願発明3を引用する場合は、さらに相違点3B及び相違点4B)に加えて、さらに次の相違点5Bがある。
上記相違点5Bについて検討すると、引用文献1には、オウゴン及びジオウを含むそれぞれの成分は0.01~10重量%の量で混合できる旨の一般的記載が存在するので(摘記(1エ))、歯磨剤中ジオウの含有率をオウゴンの含有率よりも大きいもののとすることは可能であるにしても、引用発明1Bは、実施例として成分組成が完成されたものとして記載されており、ジオウ4とオウゴン4の歯磨剤中での含有量の等しい引用発明1Bから敢えてジオウの含有率をオウゴンの含有率よりも大きくするように変更することについての記載ないし示唆はないので、当業者が容易に想到できる技術的事項ではない。
また、本願発明4は、本願発明1~3と引用発明1Bとの相違点の判断で検討した内容を考慮すれば、相違点1B、2B及び3Bの構成とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項でなく、相違点5Bの構成も当業者が容易に想到できる技術的事項ではないので、引用発明1Bに基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本願発明2~4は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定について
理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、補正前の請求項4が削除され、補正前の請求項1、2、3、5に係る発明に、補正前の請求項4の数値範囲をさらに限定した発明特定事項が追加され、結果として、補正後の本願発明1~4は「歯磨剤中における前記オウゴンの含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記キキョウの含有率が0.05質量%以上2質量%以下であり、前記歯磨剤中における前記ジオウの含有率が0.4質量%以上2質量%以下」という発明特定事項を有するものとなった。
そして、前記第5で検討したとおり、本願発明1~4は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。
また、原査定においては、「引用文献1にはケイシを含まないことは記載がないが、各成分の組み合わせや各成分の配合量によってどの程度の歯肉炎、歯周病予防効果が得られるのかを確認することは当業者が適宜行うことであるといえる。」との判断がなされているが、前記第5で検討のとおり、引用文献1に記載された発明において、敢えて特定成分に着目する動機付けはないし、計5つの成分のうち、オウゴン、ジオウ及びキキョウを含有し、かつ、ケイシを含まない構成とすることの記載ないし示唆があるとはいえないので、該構成が当業者が適宜行うことのできる事項であるともいえない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、ほかに本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-003877