2021-003537
二次電池用複合固体電解質およびその製造方法
- 審判番号
- 2021-003537
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-536797外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月17日
- 審決日
- 2022年02月24日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】セブン キング エナージー カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人IPX
- 【請求人】キム、ジェグワン
- 【請求人代理人】特許業務法人IPX
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)10月6日(パリ条約による優先権主張2016年9月21日,韓国(KR))を国際出願日とする出願であって,令和2年3月25日付けで拒絶理由通知がされ,同年6月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年11月12日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の理由の概要
原査定(令和2年11月12日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
本願の請求項1,3~7に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであり,また,本願の請求項2に係る発明は,以下の引用文献1~2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2014-212103号公報
2.特開2008-277170号公報
第3 本願発明
本願請求項1~7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明7」という。)は,令和3年3月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部とを含む複合フィルム,およびリチウムイオンまたはナトリウムイオンと非水系有機溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質を含み,前記複合フィルムと前記液体電解質は60~100:1~40の重量比で含まれ,前記液体電解質は,前記複合フィルムに含浸されることを特徴とする複合固体電解質(但し,高分子ゲルを含むものを除く)。」
なお,本願発明2~4は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明5は,請求項1~4のいずれかの複合固体電解質を含む発明であり,本願発明6は,本願発明1に対応する方法の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明7は,本願発明6を減縮した発明である。
第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-212103号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【請求項1】リチウムイオン二次電池に用いられる電解質-正極構造体であって,集電体上に正極活物質層を形成してなる正極と,リチウムイオン伝導性を有する無機粒子,該無機粒子を結着し高分子ゲルを含浸可能な有機高分子,及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質とを備え,該正極活物質層と該固体電解質とが該有機高分子を媒体として一体化していることを特徴とする電解質-正極構造体。」
「【課題を解決するための手段】【0009】かかる目的を達成するために,本発明は,リチウムイオン二次電池に用いられる電解質-正極構造体であって,集電体上に正極活物質層を形成してなる正極と,リチウムイオン伝導性を有する無機粒子,該無機粒子を結着し高分子ゲルを含浸可能な有機高分子,及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質とを備え,該正極活物質層と該固体電解質とが該有機高分子を媒体として一体化していることを特徴とする。」
「【0034】固体電解質6を構成する前記高分子ゲルは,支持塩としてのリチウム塩及び該リチウム塩を溶解する有機溶媒からなる電解液と,該電解液を保持する高分子とからなる。前記高分子ゲルは,リチウムイオン伝導性と高分子ゲルとしての機械的強度とを両立するために,30~95質量%の範囲の前記電解液を保持することが好ましく,50~95質量%の範囲の該電解液を保持することが特に好ましい。」
「【0040】固体電解質6において,前記無機粒子と前記有機高分子とを99:1~95:5の質量比とし,前記無機粒子と前記高分子ゲルと前記有機高分子とを77:8:15~38:32:30の範囲の体積比とすることが好ましい。このようにすると,固体電解質6中に前記無機粒子及び前記高分子ゲルが均一に分散して該固体電解質6全体に亘ってリチウムイオンの伝導経路を形成することができ,優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。また,前記有機高分子が前記無機粒子を結着して,固体電解質6としての構造を確実に形成することができる。」
「【0061】〔(5)電解質-正極構造体及びリチウムイオン二次電池の作製〕次に,ドクターブレードを用いるキャスティング法により,得られた正極4の正極活物質層3上に,前記無機粒子及び有機高分子を含むペーストからなる薄膜を形成し,大気圧下,80℃の温度で5時間加熱することにより乾燥させて,正極4と該ペーストの乾燥体6aとからなる積層体を形成した。次に,得られた積層体を直径18mmの円形に切断した後,15MPaの圧力で加圧することにより,正極4と乾燥体6aとを接合して一体化させて接合体7aを作製した。得られた接合体7aの乾燥体6aは,前記無機粒子と前記CMCとの体積比が81.8:18.2であった。」
以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「リチウムイオン伝導性を有する無機粒子,該無機粒子を結着し高分子ゲルを含浸可能な有機高分子,及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質であって,前記電解液は,支持塩としてのリチウム塩及び該リチウム塩を溶解する有機溶媒からなり,前記無機粒子と前記有機高分子とを99:1~95:5の質量比とし,前記無機粒子と前記高分子ゲルと前記有機高分子とを77:8:15~38:32:30の範囲の体積比とする固体電解質。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「リチウムイオン伝導性を有する無機粒子」,「該無機粒子を結着し高分子ゲルを含浸可能な有機高分子」は,それぞれ,本願発明1の「イオン伝導性セラミック」,「高分子」に相当する。
イ 引用発明の「リチウムイオン伝導性を有する電解液」は,「支持塩としてのリチウム塩及び該リチウム塩を溶解する有機溶媒からな」るものであるから,本願発明1の「リチウムイオンまたはナトリウムイオンと非水系有機溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質」に相当する。
ウ 引用文献1の【0061】(前記第4 1参照。)の記載によれば,正極4の正極活物質層3上に,前記無機粒子及び有機高分子を含むペーストからなる薄膜を形成し,加熱乾燥させて,正極4と該ペーストの乾燥体6aとからなる積層体を形成するものであるから,引用発明の「無機粒子」及び「有機高分子」は,複合フィルムであるといえる。
エ 引用発明の「固体電解質」は,「リチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む」のに対し,本願発明1の「複合固体電解質」は,「高分子ゲルを含むものを除く」ものである。
以上から,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「イオン伝導性セラミックと高分子とを含む複合フィルム,およびリチウムイオンまたはナトリウムイオンと非水系有機溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質を含む,複合固体電解質。」
<相違点>
相違点2:本願発明1は,「前記複合フィルムと前記液体電解質は60~100:1~40の重量比で含まれ」ているのに対し,引用発明は,「前記無機粒子と前記高分子ゲルと前記有機高分子とを77:8:15~38:32:30の範囲の体積比と」しているものの,「無機粒子」及び「有機高分子」を含む複合フィルムと「リチウムイオン伝導性を有する電解液」の重量比は不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み相違点4から検討する。
引用発明の「高分子ゲル」は,「リチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される」ものであるところ,当該「高分子ゲル」は,引用文献1の【0009】(前記第4 1参照。)の記載によれば,課題を解決するための手段を構成するものであり,引用発明において,当該「高分子ゲル」を含まないようにすると,「リチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸さ」せることができなくなるため,「高分子ゲル」の課題を解決するための手段としての技術的意義が失われてしまう。
そうすると,引用発明において,「リチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲル」を含まないようにすることには阻害要因がある。そして,このことは,引用文献2の記載に左右されるものではない。
したがって,引用発明において,相違点4に係る本願発明1の構成とすること,又は,引用発明に引用文献2に記載された発明を適用し,相違点4に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
イ 小括
よって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用文献1に記載された発明又は引用文献1~2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
2 本願発明2~7について
本願発明2~4は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明5は,請求項1~4のいずれかの複合固体電解質を含む発明であり,本願発明6は,本願発明1に対応する方法の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明7は,本願発明6を減縮した発明であり,いずれも相違点4に係る本願発明1の構成を有しているから,本願発明1と同様の理由により,本願発明2~7は,引用文献1に記載された発明又は引用文献1~2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により,本願発明1~7は,いずれも相違点4に係る本願発明1の構成を有するものとなっており,前記第5で検討したとおり,本願発明1~7は,引用文献1に記載された発明又は引用文献1~2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではないから,原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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