2021-003213
正極活物質、リチウムイオン二次電池および正極活物質の製造方法
- 審判番号
- 2021-003213
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-088476外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月10日
- 審決日
- 2022年03月01日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【請求人】住友金属鉱山株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月27日の出願であって、令和2年5月27日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年7月28日に意見書が提出されたが、同年12月4日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、令和3年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年12月4日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2013-131415号公報
2.特開2011-175906号公報(周知文献を示す文献)
3.特開2013-16422号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2015-56363号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、続きを表示(全40行)前記一次粒子は、リチウム含有複合金属酸化物であり、前記二次粒子の内部において、前記一次粒子同士の粒界の少なくとも一部に、電子伝導性酸化物が配置されており、前記電子伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造を有し、かつ下記式(I):ACox1Mx2O3 …(I)[ただし式中、Aは、LaおよびSrの少なくとも一方であり、Mは、MnおよびNiの少なくとも一方であり、x1、x2は、0<x1≦1、0≦x2≦1、0.6≦x1+x2≦1を満たす。]によって表される、正極活物質。【請求項2】上記式(I)において、x2が0.2≦x2≦0.95を満たす、請求項1に記載の正極活物質。【請求項3】少なくとも正極、負極および電解液を含み、前記正極は、請求項1または請求項2に記載の前記正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池。【請求項4】共沈法により、前駆体を調製すること、前記前駆体とリチウム化合物とを混合することにより、混合物を調製すること、前記混合物を加熱することにより、焼結物を調製すること、および前記焼結物を解砕することにより、正極活物質を製造すること、を含み、前記前駆体は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、複合金属水酸化物であり、前記混合物が加熱されることにより、前記一次粒子がリチウム含有複合金属酸化物になり、かつ前記一次粒子同士の粒界の少なくとも一部に、電子伝導性酸化物が析出し、前記電子伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造を有し、かつ下記式(I):ACox1Mx2O3 …(I)[ただし式中、Aは、LaおよびSrの少なくとも一方であり、は、MnおよびNiの少なくとも一方であり、x1、x2は、0<x1≦1、0≦x2≦1、0.6≦x1+x2≦1を満たす。]によって表される、正極活物質の製造方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2013-131415号公報)には、「リチウムイオン二次電池用正極」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】正極活物質が次式xLi2MO3-(1-x)LiM′O2(但し、xは0<x<1であり、MはMn、Ti、Zrから選ばれる少なくとも1種であり、M′はNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vから選ばれる少なくとも1種)で表され、正極活物質が粒界のない一次粒子が複数個凝集結合して二次粒子を形成しているリチウムイオン二次電池用正極において、前記正極活物質の二次粒子の表面に位置する一次粒子だけでなく、二次粒子内部に位置する一次粒子も、正極活物質より導電率が高い導電性酸化物で被覆されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。【請求項2】請求項1記載のリチウムイオン二次電池用正極において、前記導電性酸化物が、Sn、In、Zn、Tiから選ばれる少なくとも1種の酸化物であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。」
(2)「【0024】これに対して、本発明は、図1に示すように、固溶体正極活物質(Li2MO3-LiM′O2固溶体)二次粒子3において、二次粒子表面に位置する一次粒子だけでなく、二次粒子内部に位置する一次粒子も表面を導電性酸化物で被覆することで導電性を付与し、正極の抵抗を低減している。なお、固溶体正極活物質Li2MO3-LiM′O2固溶体において、MはMn、Ti、Zrから選ばれる1種類以上の元素であり、M′はNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vから選ばれる1種類以上の元素である。【0025】固溶体正極活物質に対する導電性酸化物の割合が高くなることは、正極としての容量密度を低下させ、また、Liイオン拡散を阻害するので望ましくない。そのため、固溶体正極活物質に対する導電性酸化物の重量比は10%以下が望ましく、3%以下がさらにのぞましい。また、少ない重量で十分な導電性を付与するため、導電性酸化物は導電率が1S/cm以上であることが望ましい。その導電率を満たす材料として、ITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、SnO2、TiO2などが挙げられる。また、導電性酸化物は導電ネットワークが得られていれば、固溶体正極活物質の一次粒子表面を完全に覆う必要はない。」
(3)「【実施例1】【0026】以下に、本発明を詳細に説明するための一形態として、実施例1を示す。【0027】続きを表示(全21行)(固溶体正極活物質の作製)Li2MO3-LiM′O2のMおよびM′(MはMn、Ti、Zrから選ばれる1種類以上の元素であり、M′はNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vから選ばれる1種類以上の元素)が示す金属元素の塩で水溶性の高いもの(例えば硫酸塩や硝酸塩)を原料に使用できる。具体的な例としては硫酸ニッケル六水和物(NiSO4・6H2O)、硫酸コバルト七水和物(CoSO4・7H2O)、硫酸マンガン五水和物(MnSO4・5H2O)をNi:Co:Mn=1:1:4(モル比)となるように秤量して、純水に溶解させて混合溶液を調整した。【0028】この硫酸塩混合溶液の一部を50℃に加熱し、撹拌しながら、錯化剤としてアンモニア水をpH=7.0となるまで滴下した。さらに、硫酸塩混合溶液およびNa2CO3水溶液を滴下してNi、Co、Mnの複合炭酸塩を共沈させた。この際pH=7.0が維持されるようにアンモニア水を滴下した。沈殿した複合炭酸塩を吸引濾過し、水洗して、120℃で乾燥させた。得られた複合炭酸塩をアルミナ容器に入れ、500℃で焼成して複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、得られた複合酸化物に加えるリチウム塩としてはLiOH・H2OやLi2CO3が使用できる。具体的にはLiOH・H2OをLi/(Ni+Co+Mn)=1.5(モル比)となるように秤量して複合酸化物に加え、ボールミルで混合した。この後、アルミナ容器に入れ、500℃で仮焼成し、再度ボールミルで混合した。その後900℃で本焼成し、固溶体正極活物質の粉末を得た。得られた固溶体正極活物質は直径100nm程度一次粒子が凝集結合して直径5μmの球形の二次粒子を形成していた。【0029】(導電性酸化物の被覆)In:Sn=95:5のInおよびSnの2-エチルヘキサン酸塩を酢酸n-ブチル等で希釈した溶液中に固溶体正極活物質粉末を入れ、超音波振動により溶液を固溶体二次粒子の内部まで拡散させた。その後、吸引濾過により粉末を回収し、600℃で熱処理して固溶体正極活物質の表面にITO被膜を形成した。・・・・・(中 略)・・・・・【実施例2】【0039】実施例2は導電性酸化物の被覆の工程においてSnO2を正極活物質に被覆した他は実施例1と同様である。【実施例3】【0040】実施例3は導電性酸化物の被覆の工程においてZn:Al=98:2のAZOを正極活物質に被覆した他は実施例1と同様である。【実施例4】【0041】実施例4は導電性酸化物の被覆の工程においてTiO2被膜を正極活物質に被覆した他は実施例1と同様である。」
(4)「[図:0001382961000001.jpg]」
上記(1)ないし(4)から以下のことがいえる。
・上記引用文献1に記載の「リチウムイオン二次電池用正極」は、上記(1)の【請求項1】、(2)の段落【0024】の記載、及び(4)(図1)によれば、Li2MO3-LiM′O2固溶体(但し、MはMn、Ti、Zrから選ばれる少なくとも1種であり、M′はNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vから選ばれる少なくとも1種)からなる固溶体正極活物質一次粒子が複数個凝集結合して二次粒子を形成しているリチウムイオン二次電池用正極において、前記固溶体正極活物質の二次粒子の表面に位置する一次粒子だけでなく、二次粒子内部に位置する一次粒子の表面も、固溶体正極活物質より導電率が高い導電性酸化物で被覆してなるリチウムイオン二次電池用正極に関するものである。
・上記(1)の【請求項2】、(2)の段落【0025】、(3)の記載によれば、固溶体正極活物質より導電率が高い導電性酸化物は、例えばITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、SnO2、TiO2のうちのいずれかである。
以上のことから、リチウムイオン二次電池用正極が含む、導電性酸化物で被覆してなる固溶体正極活物質を「正極活物質」の発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「Li2MO3-LiM′O2固溶体(但し、MはMn、Ti、Zrから選ばれる少なくとも1種であり、M′はNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vから選ばれる少なくとも1種)からなる固溶体正極活物質一次粒子が複数個凝集結合して二次粒子を形成し、当該二次粒子の表面に位置する一次粒子だけでなく、二次粒子内部に位置する一次粒子の表面も、固溶体正極活物質より導電率が高い導電性酸化物で被覆してなる正極活物質であって、前記導電性酸化物は、ITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、SnO2、TiO2のうちのいずれかである、正極活物質。」
2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2011-175906号公報)には、「セルスタック」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【0019】ここで、セルスタック装置1を構成するセルスタック2は、一対の対向する平坦部と両端の弧状部とからなる楕円柱状の導電性支持体11(以下、支持体11と略す場合がある)の一方の平坦部と弧状部を覆うように多孔質な燃料極層8が設けられており、燃料極層8を覆うように、緻密質な固体電解質層9が積層されている。また、固体電解質層9の上には、燃料極層8と対向するように多孔質な空気極層10が設けられている。すなわち、支持体11の一方の平坦部上に、燃料極層8、固体電解質層9及び空気極層10がこの順に積層されている。また、燃料極層8および固体電解質層9が形成されていない支持体11の他方の平坦部上には、インターコネクタ13が積層されている。このような構成により柱状の燃料電池セル3が形成される。なお、図1(b)から明らかな通り、燃料極層8および固体電解質層9は、両端の弧状部を経由してインターコネクタ13の両サイドにまで延設されており、支持体11の表面が外部に露出しないように構成されている。【0020】そして、この燃料電池セル3の複数個を、隣接する燃料電池セル3間に集電部材4を介して電気的に直列に接続することにより、セルスタック2が構成されている。なお、隣接する燃料電池セル3間に配置される集電部材4は、空気極層10およびインターコネクタ13とそれぞれ導電性接合材14を介して接続しており、それにより各燃料電池セル3が電気的に直列に接続されている。」
(2)「【0038】空気極層10を形成するペロブスカイト型酸化物としては、セルスタック2の発電温度域での導電率が高いCoを含有するLaSrCoO3系ペロブスカイト型酸化物からなることが好ましい。LaSrCoO3系ペロブスカイト型酸化物としては、LaSrCoFeO3系ペロブスカイト型酸化物(例えばLaSrCoFeO3)、LaSrCoO3系ペロブスカイト型酸化物(例えばLaSrCoO3)のうち少なくとも1種が好ましい。」
上記(1)及び(2)の記載及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「支持体の一方の平坦部上に、燃料極層、固体電解質層及び空気極層がこの順に積層され、前記支持体の他方の平坦部上にインターコネクタが積層された構成の燃料電池セルの複数個を、隣接する前記燃料電池セル間に集電部材を介して電気的に直列に接続することにより構成されたセルスタックにおいて、前記燃料電池セルの前記空気極層を、セルスタックの発電温度域での導電率が高いCoを含有するLaSrCoO3系ペロブスカイト型酸化物で形成したこと。」
3.引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2013-16422号公報)には、「金属酸素電池」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持され非水系電解質溶液を含む電解質層とを備える金属酸素電池において、該正極は、YMnO3からなる酸素貯蔵材料と、非炭素質材料からなる導電助剤とを含むことを特徴とする金属酸素電池。」
(2)「【0032】図1に示すように、本実施形態の金属酸素電池1は、酸素を活物質とする正極2と、金属リチウムを活物質とする負極3と、正極2と負極3との間に配設され非水系電解質溶液を含む電解質層4とを備え、正極2、負極3及び電解質層4は、ケース5に密封して収容されている。」
(3)「【0034】金属酸素電池1において、正極2は酸素貯蔵材料と、導電助剤と、結着剤と、繊維状炭素質材料とからなる。【0035】前記酸素貯蔵材料はYMnO3からなり、酸素を吸蔵又は放出する機能を備えると共に、その表面に酸素を吸着又は脱着することができる。【0036】前記導電助剤は、非炭素質材料からなり、このような非炭素質材料として、例えば、金属酸化物、導電性ペロブスカイト酸化物、金属箔等を挙げることができる。前記導電助剤は、例えば、10-2Ωcm以下の範囲の抵抗率と、1~100m2/gの範囲の比表面積とを備えている。【0037】前記金属酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化タングステン、酸化チタン等を挙げることができる。また、前記導電性ペロブスカイト酸化物としては、LaNiO3、LaCoO3等を挙げることができる。また、前記金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔等を挙げることができる。」
上記(1)ないし(3)の記載及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の技術事項が記載されている。
「酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持され非水系電解質溶液を含む電解質層とを備える金属酸素電池において、前記正極は、酸素貯蔵材料と、非炭素質材料からなる導電助剤とを含み、当該導電助剤として例えばLaCoO3等の導電性ペロブスカイト酸化物を用いることができること。」
4.引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4(特開2015-56363号公報)には、「燃料電池単セル」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【0015】上記燃料電池単セルにおいて、カソード層は、Srを含有するSr含有材料を含んで構成されている。カソード層は、具体的には、Sr含有材料より構成されていてもよいし、Sr含有材料と後述の固体電解質等との混合物より構成することもできる。上記Sr含有材料としては、カソード層の触媒活性の向上、電子導電性の向上等の観点から、Srを含有するペロブスカイト型酸化物を好適に用いることができる。Srを含有するペロブスカイト型酸化物としては、具体的には、例えば、La1-xSrxCo1-yFeyO3系酸化物(x=0.4、y=0.8等)、La1-xSrxCoO3系酸化物(x=0.4等)、La1-xSrxFeO3系酸化物(x=0.4等)、La1-xSrxMnO3系酸化物(x=0.4等)、Sm1-xSrxSrCoO3系酸化物(x=0.5等)などを例示することができる。これらは、1種または2種以上併用することができる。上記Sr含有材料のうち、好ましくは、低温作動時(例えば、600~700℃程度)でも触媒活性が高い等の観点から、上記La1-xSrxCo1-yFeyO3系酸化物、La1-xSrxCoO3系酸化物、Sm1-xSrxSrCoO3系酸化物等が好適である。また、上記固体電解質としては、酸素イオン導電性等の観点から、後述の酸化セリウム系酸化物を好適に用いることができる。なお、上記ペロブスカイト型酸化物の組成式において、酸素の原子比は3と表示したが、これは当業者には明らかなように、例えば、原子比x(y)が0でない場合には酸素空孔を生じるので、実際には酸素の原子比は3より小さい値をとることが多い。しかしながら、酸素空孔の数は、添加される元素の種類や製造条件によっても変化するため、便宜上、酸素の原子比を3として表示したものである(以下、同様である。)。【0016】上記燃料電池単セルにおいて、カソード層側集電層は、Srを含有しないSr非含有材料、および/または、Sr含有材料よりもSrの含有割合が低い低Sr含有材料を含んで構成されている。カソード層側集電層は、具体的には、Sr非含有材料より構成されていてもよいし、低Sr含有材料より構成されていてもよいし、Sr非含有材料と低Sr含有材料との混合物より構成されていてもよい。カソード層側集電層は、好ましくは、Sr非含有材料を含んで構成されているとよく、より好ましくは、Sr非含有材料より構成されているとよい。これらの場合は、カソード層側集電層のCr被毒耐性を向上させやすくなるので、上記作用効果を確実なものとしやすくなる。・・・・・(中 略)・・・・・【0018】また、上記低Sr含有材料としては、カソード層側集電層のCr被毒耐性の向上等の観点から、Sr含有材料よりもSrの含有割合が低いペロブスカイト型酸化物等の酸化物を好適に用いることができる。上記Srの含有割合が低い酸化物としては、具体的には、例えば、La1-xSrxFeO3系酸化物(x=0.2等)、La1-xSrxCo1-yMnyO3系酸化物(x=0.2、y=0.9等)などを例示することができる。なお、低Sr含有材料に用いられる酸化物は、Sr含有材料に用いられるペロブスカイト型酸化物に応じて、組成比でSrの含有割合が低いものを選択すればよい。これらは、1種または2種以上併用することができる。上記低Sr含有材料のうち、好ましくは、電子導電性等の観点から、La1-xSrxCo1-yMnyO3系酸化物等が好適であり、より好ましくは、La0.8Sr0.2Co0.1Mn0.9O3等である。」
上記(1)の記載及び図面を総合勘案すると、引用文献4には、次の技術事項が記載されている。
「燃料電池セルにおいて、カソード層としてSrを含有するペロブスカイト型酸化物、例えばLa1-xSrxCoO3系酸化物(x=0.4等)で構成し、カソード層側集電層としてSrの含有割合が低い酸化物、例えばLa1-xSrxCo1-yMnyO3系酸化物(x=0.2、y=0.9等)で構成すること。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「正極活物質」にあっても、「固溶体正極活物質一次粒子が複数個凝集結合して二次粒子を形成」してなるものであるから、複数の一次粒子を含む二次粒子を含むものである。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含」むものである点で一致する。
イ.引用発明における「固溶体正極活物質一次粒子」は、「Li2MO3-LiM′O2固溶体(但し、MはMn、Ti、Zrから選ばれる少なくとも1種であり、M′はNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vから選ばれる少なくとも1種)」からなるものであり、当該「Li2MO3-LiM′O2固溶体」はリチウム含有複合金属酸化物である。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記一次粒子は、リチウム含有複合金属酸化物であ」る点で一致する。
ウ.引用発明における「正極活物質」は、「二次粒子の表面に位置する一次粒子だけでなく、二次粒子内部に位置する一次粒子の表面も、固溶体正極活物質より導電率が高い導電性酸化物で被覆」されており、当該一次粒子の表面を被覆する「導電性酸化物」は、本願発明1でいう「電子伝導性酸化物」に相当するものである。そして、引用発明の「導電性酸化物」にあっても、二次粒子内部に位置する一次粒子の表面も被覆しているのであるから、二次粒子内部において配置されていることは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記二次粒子の内部において、電子伝導性酸化物が配置されて」いる点で共通するといえる。
ただし、電子伝導性酸化物の配置が、本願発明1では「前記一次粒子同士の粒界の少なくとも一部」であることを特定するのに対し、引用発明では二次粒子内部に位置する一次粒子の表面も被覆しているが、「粒界の少なくとも一部」にも配置されているかどうかは明らかでない点で相違する。
エ.電子伝導性酸化物について、本願発明1では「ペロブスカイト構造を有し、かつ下記式(I):ACox1Mx2O3 …(I)[ただし式中、Aは、LaおよびSrの少なくとも一方であり、Mは、MnおよびNiの少なくとも一方であり、x1、x2は、0<x1≦1、0≦x2≦1、0.6≦x1+x2≦1を満たす。]によって表される」と特定するのに対し、引用発明では「ITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、SnO2、TiO2のうちのいずれか」である点で相違する。
上記ア.ないしエ.によれば、本願発明1と引用発明とは、
「二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、リチウム含有複合金属酸化物であり、前記二次粒子の内部において、電子伝導性酸化物が配置されている、正極活物質。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
電子伝導性酸化物の配置が、本願発明1では「前記一次粒子同士の粒界の少なくとも一部」であることを特定するのに対し、引用発明では二次粒子内部に位置する一次粒子の表面も被覆しているが、「粒界の少なくとも一部」にも配置されているかどうかは明らかでない点。
[相違点2]
電子伝導性酸化物について、本願発明1では「ペロブスカイト構造を有し、かつ下記式(I):ACox1Mx2O3 …(I)[ただし式中、Aは、LaおよびSrの少なくとも一方であり、Mは、MnおよびNiの少なくとも一方であり、x1、x2は、0<x1≦1、0≦x2≦1、0.6≦x1+x2≦1を満たす。]によって表される」と特定するのに対し、引用発明では「ITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、SnO2、TiO2のうちのいずれか」である点。
(2)相違点についての判断
まず、上記[相違点2]について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、支持体の一方の平坦部上に、燃料極層、固体電解質層及び空気極層がこの順に積層され、前記支持体の他方の平坦部上にインターコネクタが積層された構成の燃料電池セルの複数個を、隣接する前記燃料電池セル間に集電部材を介して電気的に直列に接続することにより構成されたセルスタックにおいて、前記燃料電池セルの前記空気極層を、セルスタックの発電温度域での導電率が高いCoを含有するLaSrCoO3系ペロブスカイト型酸化物で形成した技術事項が記載されているが(上記「第4 2.」を参照)、LaSrCoO3系ペロブスカイト型酸化物が用いられるのは燃料電池セルにおける空気極層である。
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持され非水系電解質溶液を含む電解質層とを備える金属酸素電池において、前記正極は、酸素貯蔵材料と、非炭素質材料からなる導電助剤とを含み、当該導電助剤として例えばLaCoO3等の導電性ペロブスカイト酸化物を用いることができる技術事項が記載されているが(上記「第4 3.」を参照)、LaCoO3等の導電性ペロブスカイト酸化物が用いられるのは金属酸素電池における正極である。
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、燃料電池セルにおいて、カソード層としてSrを含有するペロブスカイト型酸化物、例えばLa1-xSrxCoO3系酸化物(x=0.4等)で構成し、カソード層側集電層としてSrの含有割合が低い酸化物、例えばLa1-xSrxCo1-yMnyO3系酸化物(x=0.2、y=0.9等)で構成する技術事項が記載されているが(上記「第4 4.」を参照)、La1-xSrxCoO3系酸化物やLa1-xSrxCo1-yMnyO3系酸化物が用いられるのは燃料電池セルにおけるカソード層やカソード層側集電層である。
つまり、引用文献2ないし4のいずれにも、本願発明1でいう式(I)によって表されるペロブスカイト構造の酸化物について記載されてはいるものの、当該酸化物をリチウムイオン二次電池の正極活物質におけるリチウム含有複合金属酸化物とともに用いることの記載も示唆もない。してみると、引用発明における「導電性酸化物」として、ITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、SnO2、TiO2のうちのいずれかを用いること代えて、あえて引用文献2ないし4に記載されたペロブスカイト構造の酸化物を用いるべき動機を見出すことはできず、引用発明において上記相違点2に係る構成を導き出すことはできない。
なお、引用発明において上記相違点2に係る構成を導き出すことができるような他の証拠も発見しない。
(3)まとめ
したがって、上記[相違点1]について判断するまでもなく、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
2.本願発明2及び3について
請求項2及び3は、請求項1に従属する請求項であり、上記相違点3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2及び3は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3.本願発明4について
本願発明4は、そもそも原査定の対象外であるが、一応判断する。
本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点2に係る発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明4は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及ないし4に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-003213