特許拒絶査定不服審判
2021-002317
有機化合物におけるまたは関連する改良
- 審判番号
- 2021-002317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-548912
- 請求日
- 2021年02月22日
- 審決日
- 2025年10月29日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジボダン エス エー
- 【請求人代理人】弁理士法人葛和国際特許事務所
- 【請求人代理人】矢後 知美
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P18 .537-WZ (C11B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-548912「有機化合物におけるまたは関連する改良」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月22日国際公開、WO2016/146673、平成30年 4月19日国内公表、特表2018-510941〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年3月16日 英国(GB))を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は次のとおりである。
平成31年 3月 8日 上申書、手続補正書の提出
令和 元年12月24日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 7月 3日 意見書、手続補正書の提出
同年10月19日付け 拒絶査定
令和 3年 2月22日 審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月 4日 上申書の提出
令和 4年 2月 2日付け 拒絶理由通知書
同年 8月 1日 意見書、手続補正書の提出
同年 8月24日付け 拒絶理由通知書
令和 5年 2月24日 意見書、手続補正書の提出
同年 8月16日付け 審尋
同年11月14日 回答書の提出
令和 6年11月 5日付け 拒絶理由通知書
令和 7年 5月 7日 意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、令和7年5月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載されたとおりのものであって、それらのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。
「 睡眠の質に対処することに適した香料組成物を調製する方法であって、当該方法が、
- 標準の10-20電極法を使用して脳波検査(EEG)によって当該香料組成物を吸引した後で、ヒト対象の脳波活動を測定する;
- 以下の式:
SC=((а1ce+Θce)/δtem)+(Θ/а2)
式中:
а1ceは、中心部電極C3、C4、Czにわたる8~12ヘルツの間の振動数を有するアルファ1脳波活動の振幅値を表し;
Θceは、中心部電極C3、C4、Czにわたる4~7ヘルツの間の振動数を有するシータ脳波活動の振幅値を表し;
δtemは、側頭部電極T7およびT8にわたる0.1~3ヘルツの間の振動数を有するデルタ脳波活動の振幅値を表し;および
Θ/а2は、全電極にわたる4~7ヘルツの間の振動数を有するシータ脳波活動の振幅の12~15ヘルツの間の振動数を有するアルファ2脳波活動の振幅値に対する比を表す;
によるSandman Classifier(SC)値を規定する;
および
- 組み合わせが1.35より大きなSandman Classifier値を有するような方法において機能的な香料成分を組み合わせる、
ステップを含み、
ここで、香料組成物は、少なくとも重量で0.01%の、以下の群から選び出される香料材料:
A)香料組成物中で使用される香水成分の総量を基にして1重量%~30重量%の、少なくとも1種の以下からなる群から選択される柑橘調の成分:ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;CITRAL LEMAROME N;CITRAL TECH;CITRATHAL R;CITRONELLYL NITRILE;CLONAL;CYMENE PARA;DIHYDRO MYRCENOL;DIMETHYL OCTENONE;DIMETOL;FLOROPAL;グレープフルーツ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;レモン油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;LEMONILE;LINALOOL OXIDE;LINALYL ACETATE SYNTHETIC;アオモジ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;マンダリン油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;METHYL PAMPLEMOUSSE;MYRCENE 90;オレンジ油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;プチグレン油、エッセンス、エキス、ベース、代替物または代用物;PRECYCLEMONE B;PRENYL ACETATE;RHUBAFURAN;タマリンド油、エッセンス、エキス、ベース、代替物または代用物;タンジェリン油、エッセンス、エキス、エッセンス、ベース、代替物または代用物;TERPINENE GAMMA;TERPINOLENE;およびTERPINYL ACETATE;
B7)香料組成物中で使用される香水成分を基にして30重量%~約80重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のフローラル調の成分:ACETAL CD;AMYL CINNAMIC ALDEHYDE;AMYL SALICYLATE;AURANTIOL PURE BENZYL ACETATE;BENZYL SALICYLATE;BOURGEONAL;CITRONELLOL;CITRONELLYL ACETATE;CRESYL METHYL ETHER PARA;CYCLAMEN ALDEHYDE EXTRA;CYCLOHEXAL;CYCLOHEXYL SALICYLATE;DIMETHYL ANTHRANILATE;DIMETHYL PHENYL THYL CARBINOL;DUPICAL;ETHYL LINALOOL;FLOROSA;FLOROSA HC;GERANIOL;ゼラニウム油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;GERANODYLE;GERANYL ACETATE;GERANYL BUTYRATE;HEDIONE;HEDIONE HC;HEXENYL-3-CIS SALICYLATE;HEXYL CINNAMIC ALDEHYDE;HEXYL CINNAMIC ALDEHYDE DQ AC XI 41505TT;HEXYL SALICYLATE;HYDROXYCITRONELLAL;ISOBUTYL PHENYL ACETATE;ISOBUTYL SALICYLATE;JASMATONE;ジャスミン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;JASMONE CIS;JASMONYL;JASMOPYRANE FORTE;LILIALおよびリリアール代用物;LINALOOL;MEFROSOL;METHYL ANTHRANILATE;METHYL ANTHRANILATE EXTRA;METHYL BENZOATE;METHYL PHENYL ACETATE;ネロリ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;NEROLINE CRYSTALS;NEROLIONE;ORANGER CRYSTALS;ORANGER FLEUR CREME 1103/20;PELARGOL;PEONILE;PETALIA;PHENYL ETHYL ACETATE;PHENYL ETHYL ALCOHOL;PHENYL ETHYL ISOVALERATE;PHENYL ETHYL SALICYLATE CRYSTALS;ROSACETOL;ROSALVA;バラ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;SUPER MUGUET;TERPINEOL PURE;TETRAHYDRO LINALOOL;VERDANTIOL;YARA YARA;イランイラン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;
および、以下に表示する量の、群B1~B4、B6、B8、B10、B11およびB13~B20から選択される少なくとも4つの群のぞれぞれ(当審注:「それぞれ」の誤記と認める。)からの少なくとも1種の成分:
B1)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~1.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアルデヒド調の成分:ALDEHYDE C 10 DECYLIC;ALDEHYDE C 11 UNDECYLENIC;ALDEHYDE C 110 UNDECYLIC;ALDEHYDE C 12 LAURIC;ALDEHYDE C 12 MNA PURE;ALDEHYDE C 8 OCTYLIC FOOD GRADE;ALDEHYDE C 9 ISONONYLIC;ALDEHYDE C 9 NONYLIC FOOD GRADE;ALDEHYDE C 90 NONENYLIC 1%/TEC;ALDEHYDE C12 (DODECANAL);ALDEHYDE ISO C 11;マンダリンアルデヒド;トランス-4-デセナール;DIHYDROFARNESAL;ドデカナール;MYRALDENE;およびTANGERINOL;
B2)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~25重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアンバー調の成分:アンバーケタール;アンバーマックス;アンブロセニド;AMBROFIX;AMBROFIX FLAKES;ベランブレ;BOISAMBRENE FORTE;CEDRYL ACETATE LIQUID;CEDRYL METHYL ETHER;CETALOX;ISO E SUPER;KARANAL;KEPHALIS;TIMBEROL;TRIMOFIX O;
B3)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~1.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアニマリック/レザー調の成分:ANIMALIS 1745 SUBST. PMF 2;ケード油、エッセンス、エキス、代替物、代用物;GUAIACOL;INDOFLOR;インドール;インドレン;スエーデラル成分;
B4)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~0.2重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアニス調の成分:ANETHOLE;ANISE STAR OIL;ANISIC ALDEHYDE;ANISYL ACETATE;DIHYDRO ANETHOLE;ESTRAGOLE;ウイキョウ油、エッセンス、エキス、ベース、代替物または代用物;
B6)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のカンファー/アロマ調の成分:アルモワーズ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;樟脳および樟脳油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ユーカリプトールおよびユーカリプトール油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ラバンジン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ラベンダー油、エキス、エッセンス、代替物または代用物;ローズマリー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ニオイヒバ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;
B8)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~22重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のフルーツ調の成分:ACETATE C 6 HEXYLIC;AGRUMEX;ALLYL AMYL GLYCOLATE;ALLYL CAPROATE;ALLYL CYCLOHEXYL PROPIONATE;ALLYL OENANTHATE;AMYL BUTYRATE;APHERMATE;リンゴ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;バナナ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;BENZYL BUTYRATE;BENZYL ISOBUTYRATE;BENZYL PROPIONATE;BUTYL ACETATE;BUTYRIC ACID;カシス油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;COGNAC WHITE OIL EXTRA DQ (AC) 41547TT;CYCLOGALBANATE;DAMASCENONE;DAMASCONE ALPHA;DAMASCONE BETA;DAMASCONE DELTA;DECALACTONE DELTA;DECALACTONE GAMMA;デューフルーツ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;DIETHYL MALONATE;DIMETHYL BENZYL CARBINYL ACETATE;DIMETHYL BENZYL CARBINYL BUTYRATE;DODECALACTONE DELTA;DODECALACTONE GAMMA;ETHYL ACETOACETATE;ETHYL BUTYRATE;ETHYL CAPROATE;ETHYL CAPRYLATE;ETHYL ISOAMYL KETONE;ETHYL ISOBUTYRATE;ETHYL METHYL-2-BUTYRATE;ETHYL OENANTHATE;ETHYL PELARGONATE;ETHYL PROPIONATE;ETHYL SAFRANATE;FLOROCYCLENE;FRAISTONE;FRUCTONE;FRUITATE;GARDOCYCLENE;GIVESCONE;グアバ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;HEXENYL-3-CIS BUTYRATE;HEXENYL-3-CIS ISOBUTYRATE;HEXYL BUTYRATE;HEXYL ISOBUTYRATE;ISOAMYL ACETATE EXTRA;ISOAMYL BUTYRATE FR;JASMACYCLENE;MANZANATE;メロン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;METHOXY PHENYL BUTANONE;METHYL HEPTENONE PURE;METHYL HEXYL KETONE;METHYL-2-PENTENOIC ACID;2-NECTARYL;OCTALACTONE GAMMA;PEACH PURE;PHENOXY ETHYL ISOBUTYRATE;PHENYL ETHYL ISOBUTYRATE;PRUNOLIDE;RASPBERRY KETONE (N112);STRAWBERRY PURE;
B10)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~1重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のグルマン調の成分:ACETOIN;アセチルピラジン;BUTYL BUTYRO LACTATE;チョコレート油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CORYLONE DRIED;CYCLOTENE;エチルマルトール;ホモフロノール;ヒドロキシエチルメチルチアゾール;ISOBUTAVAN;MALTYL ISOBUTYRATE;
B11)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のグリーン調の成分:ACETAL E;ALCOHOL C 6 HEXYLIC;ALDEHYDE C 6 HEXYLIC FOOD GRADE;BUTYL QUINOLINE SECONDARY;CYCLAL C;DIPHENYL OXIDE;ELINTAAL;ETHYL DECADIENOATE;エチルジメチルピラジン;ガルバノン;GARDENOL;ヘキサナール-2-トランス;HEXENOL-2-TRANS;HEXENOL-3-CIS;HEXENYL-3-CIS ACETATE;HEXENYL-3-CIS BENZOATE;HEXENYL-3-CIS PROPIONATE;ISOCYCLOCITRAL;イソヘキシルメトキシピラジン;LIFFAROME;LIGANTRAAL;MACEAL;METHYL OCTYNE CARBONATE;NEOFOLIONE;ノナジエナール;NONADIENOL-2,6;ノネナール-6-シス;NONENOL-6-CIS;フェノキシアセトアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;PYRALONE;RESEDAL;ROSE OXIDE;ROSYRANE SUPER;STEMONE;TRICYCLAL;TRIFERNAL;UNDECATRIENE;UNDECAVERTOL;バイオレットニトリル;VIRIDINE;
B13)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のマリン/ウォータリー調の成分:ADOXAL;アズロン;CALONE 1951;FENNALDEHYDE;FLORALOZONE;FLORHYDRAL;MELONAL;SCENTENAL;TROPIONAL;VERNALDEHYDE;
B14)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~0.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のミント調の成分:ブチュ葉油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CARVONE LAEVO;ハッカ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;FRESKOMENTHE;ISOMENTHONE DL;MENTHOL LAEVO;MENTHOL-DL;MENTHONE;MENTHYL ACETATE;ペパーミント油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;スペアミント油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;
B15)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~50重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のムスク調の成分:AMBRETTOLIDE;CASHMERAN;COSMONE;シクロペンタデカノリド;ETHYLENE BRASSYLATE;GALAXOLIDE;GALAXOLIDE S;HABANOLIDE;MUSCENONE;MUSK C14;SERENOLIDE;SILVANONE SUPRA;SYLKOLIDE;VELVIONE;
B16)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のオリス調の成分:CETONE V;DIHYDRO IONONE BETA;IONONE BETA;IRISONE ALPHA;IRISONE PURE;ISORALDEINE 70;ISORALDEINE 95;ORIVONE;
B17)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~1重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のスパイス調の成分:カルダモン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CARYOPHYLLENE;CINNAMIC ALCOHOL;CINNAMIC ALDEHYDE;シナモンリーフ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;クローブ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;コリアンダー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;エレミ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ETHYL CINNAMATE;EUGENOL;ジンジャー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ISOEUGENOL;METHYL CINNAMATE;METHYL ISOEUGENOL;MYSTIKAL;ナツメグ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;胡椒油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;SZECHUAN PEPPER (ASH BARK) DQ AF 24070TT;
B18)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~0.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄調の成分:アンジェルク(Anjeruk);コールカシス;コールパンプルムース;ジメチルスルフィド;GARDAMIDE;ラビエノキシム;メルカプタン;METHYL ISOPROPYL THIAZOLE;ナルドゼステ(Nardozeste)油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;NEOCASPIRENE EXTRA;NONIVAMIDE 1% TRIACETIN;オキサン;PARADISAMIDE;パラメントン;
B19)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のスウィート/パウダリー調の成分:ACETOPHENONE;AUBEPINE PARA CRESOL;BICYCLO NONALACTONE;COUMARIN;エチルライトン;ETHYL VANILLIN;HELIOTROPIN;バニラ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;バノリア(Vanolia)油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;VERATRIC ALDEHYDE;
B20)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~15重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のウッディ/パイン調の成分:BORNEOL;BORNYL ACETATE LIQUID;BUTYL CYCLOHEXANOL PARA;BUTYL CYCLOHEXYL ACETATE PARA;シダーウッド油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CONIFERAN;EBANOL;EVERNYL;FENCHYL ACETATE;ガイアックウッド油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ISONONANYL ACETATE;JAVANOL;KOHINOOL;MENTHANYL ACETATE;METHYL CEDRYL KETONE;NOPYL ACETATE;OSYROL;OXYOCTALINE FORMATE;パチュリー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;PINENE ALPHA;PINENE BETA;RADJANOL;RADJANOL SUPER;テレピン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;VERTOFIX COEUR;ベチバー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;
および、任意に
B5)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~0.2重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のバルサム調の成分:ベンゾイン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;BENZYL ALCOHOL;BENZYL CINNAMATE;オリバナム油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;PHENYL ETHYL PHENYL ACETATE;
B9)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.001重量%~0.01重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のキノコ調の成分:AMYL VINYL CARBINOL;OCIMENE;
B12)香料組成物中で使用される香水成分を基にして0.01重量%~0.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のハーブ調の成分:バジル油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;カモミール油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CITRONELLAL;クラリセージ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CYPRISATE;ユーカリ油、エキス、エッセンス、代替物または代用物;HERBOXANE;PINOACETALDEHYDE;TANAISONE;タイム油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;THYMOL CRYSTALS;
を含む、前記方法。」
第3 当審の拒絶理由の概要
令和6年11月5日付けで通知した拒絶理由通知の理由3(サポート要件)は、概略、次のとおりのものである。
理由3:(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
「SC値が少なくとも1.35」を充足すれば本願発明の課題を解決できると当業者が認識できるとはいえず、また、請求項1~6、8~11は非常に多種多様な香料材料の組み合わせを包含するものであるところ、本願出願時の技術常識に照らしても、それらの全ての組み合わせが本願発明の課題を解決できると当業者が認識できるものでもなく、さらに、「SC値が少なくとも1.35である」との要件の基礎となる「香り44」、「香り41」及び「香り47」が具体的にいかなる組成を有するものか本願明細書の発明の詳細な説明の記載から不明である以上、両者を組み合わせて、SC値と香料材料の両者を充足する請求項1~6、8~11に係る発明についても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から、その全体にわたり、本願発明の課題を解決できるということはできない。
第4 本願明細書の記載、請求人による本願の説明等
1 本願明細書の記載
本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、睡眠の質に対処することに適した香料組成物、および該香料組成物を含有する消費者用製品に関する。
・・・
【0004】
先行技術が、ある匂いがヒトの対象の気分および情緒に影響を与え得、睡眠パターンにも影響し得ることを示唆する一方で、また、EEGが、匂いへの曝露に応答した脳活動を測定することができる技術であることが知られている一方で、本出願人の知る限りでは、先行技術は、快楽性能が高くかつ精巧な、睡眠の質の改善と関連する香料成分の組み合わせを選択するための信頼性のある客観的な方法を教示していない。
【0005】
本出願人は、この先行技術における不足に対処したところ、睡眠の質を向上させ、かつ同時に快楽性能が高く精巧である、機能的な香料アコードを生み出すことを、香料製造者に可能にさせる手段を提供する。」
「【0112】
例
表1に説明された香り組成物を調製し、種々の試験プロトコルに供した。香り41(=例示の香り4)および香り47(=例示の香り6)とラベル付けされた香りは、本発明による香り組成物である一方、香り44(例示の香り1)および香り37は、強調された固有の匂い属性についてのガイドライン値を破らない本発明の条件に合致しない比較例である。
【0113】
【表1】
[図:0001433363000001.jpg]
表1
「Sleep Good」の香りの範囲値と比較した、試験した香りの範囲値(最小および最大)。太字のイタリック体の数字のセルは、推奨範囲を破っていることを表示する。最終行は、推奨できるか否かの結果(YESまたはNO)、すなわち、試験した香りが睡眠向上特性を有するとみなされるか否かを説明する。
【0114】
例示の香り1を、例示の香り2、例示の香り3、例示の香り4、例示の香り5、例示の香り6および例示の香り7の香りと比較する。
香りを、前に概説した枠組みにおけるEEG、および検証試験を通じて測定したところ、以下の結果が得られた:
【0115】
【表2】
[図:0001433363000002.jpg]
表2
試験した香りのSandman classifierおよび検証尺度の値
検証尺度=睡眠%+(睡眠の質)2
【0116】
睡眠%は、アクティグラフィーにおけるアルゴリズムから取られた測定尺度であって、睡眠の質の全般的な測定尺度であり、一方、睡眠の質は、1~5の値を取る主観的な測定尺度である。
【0117】
例示の香り1のSandman classifier値を、例示の香り2、例示の香り3、例示の香り4、例示の香り5、例示の香り6または例示の香り7のいずれかの同等の値と直接比較することによって、例示の香り1が他のいずれの香りよりも低いSandman classifier値を有することがわかる。これに加えて、例示の香り1のSandman classifier値は、指定した1.35の閾値を下回る。したがって、例示の香り1が他のいずれの香りよりも大幅に睡眠の向上性が低いことを予測することができる。実際に、我々の検証尺度は、正にこれを示している。」
2 審判請求書の記載
令和3年4月1日提出の手続補正書により補正された同年2月22日提出の審判請求書には、前記1の【0115】の【表2】の例示の香り1~7の組成について、次の記載がある。
「上述の通り、具体的な成分が重要ではないことは明らかであるものと思料しますが、本願発明の効果においては、特定量の各郡(当審注:「群」の誤記と認める。)の組み合わせが重要な構成であることをより理解していただくべく、参考資料2(例示の香り1~7の組成)を提出いたします。
審査官殿が言及された「香り41(例示の香り4)」、「香り47(例示の香り6)」だけではなく、本明細書の表2に記載された例示の香り2~7は、すべて上記構成を満たすものであり、1.35より大きなSCを示すものであることが理解されます。
この結果からも、本願発明は、各郡(同上)を組み合わせることを特徴とするものであり、補正後の請求項に記載の発明が、本願の発明の詳細な説明に、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、発明の詳細な説明に記載されたものであることが理解されるものと思料します。」(2頁下2行~3頁8行)
「(添付資料)
(1)参考資料2:例示の香り1~7の組成
[図:0001433363000003.jpg]
」(3頁中段)
3 令和4年8月1日提出の意見書の記載
同意見書には、次の記載がある。
「また、審判官殿は、「同一の香料組成物に対して、一義的に『Sandman Classifier(SC)値を規定する』ことはできない」と認定されましたが、異なるヒト対象においても、同様のSC値が規定されることを理解して頂くべく、本請求人は、添付の参考資料Aを提出いたします。
同資料においては、ランダムに選択された7名のパネルによる、特定の香料成分を吸引後のSandman Classifier(SC)値が示されております。この結果から、7名の異なるヒト対象において規定されたSC値のバラツキは非常に小さいことが理解できます。」(2頁10行~16行)
「フレグランス成分は、一般的に、「フレグランスファミリー」にグループ化されます。各グループ内で、個別の成分は、わずかに異なるにおいを有しており、例えば、シトラスで言えば、オレンジ、レモン、ライム、ミカンなどを有しており、細かな印象が異なることは審判官殿ご指摘の通りであります。しかしながら、同じ属性の香料が同様の主な印象をあたえるものであることは上述の通りであります。また、審判官殿の認定が誤りであり、同じ属性の異なる成分が、同様のSC値を示すことを示すことを理解して頂くべく、参考資料Aを提出いたします。
参考資料Aにおいては、柑橘調(A群)の成分であるオレンジテルペンおよびレモンオイルが、7名のパネルにおいて、SC値のMean±SDが、3.38±0.19と3.44±0.26と同等の値が示されたこと、およびフローラル調(B7群)の成分である、FlorosaおよびHEDIONEが、7名のパネルにおいても、SC値のMean±SDが、3.31±0.12と3.32±0.12と同等の値が示されたことが理解できます。
なお、オレンジテルペンおよびレモンオイルは、審判官殿が言及されるような狭義の印象で言えば、オレンジとレモンという異なる詳細な印象を与えるものでありますが、広義にはいずれもシトラスであり同様の印象を与えるものであります。そして、そのSC値は同等であることが理解できます。
同様に、Florosaはクリーミーなフローラルミュゲノートが特徴であり、HEDIONEは、透明感のあるフローラルノート、ジャスミン、シトラスが特徴であり、審判官殿が言及されるような狭義の印象で言えば異なる印象を与えるものですが、いずれもフローラルな印象を与えるものであります。そして、そのSC値は同等であることが理解できます。
以上のことから、審判官殿の認定に反し、細かな印象が異なる香料であっても同じ「属性」に属する香料であれば、同程度の「Sandman Classifier(SC)値を示すものであります。」(3頁3行~21行)
「(添付資料)
(1)参考資料:7名のパネルによる、特定の香料成分のSC値
[図:0001433363000004.jpg]
」
4 審尋に対する回答書の記載
令和5年11月14日提出の回答書7頁の(5)には、次の記載がある。
「 審判官殿ご指摘の「香り37」のSC値は、2.35であり、請求項1、7および8に記載の「Sandman Classifier(SC)値が少なくとも1.35である」の要件を満たすものでありました。」。
5 精油に関する本願出願前の技術常識の一端を示す文献
精油に関する「佐々木薫監修、「ハーブ&アロマ事典」、株式会社大泉書店、2004年10月11日 初版発行、70~71頁」(以下、「文献1」という。)には、次の記載がある。
「
[図:0001433363000005.jpg]
[図:0001433363000006.jpg]
」
「
[図:0001433363000007.jpg]
」
第5 当審による判断(サポート要件)
1 判断手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「サポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
2 本願発明の課題
本願明細書の【0005】等の記載から、本願発明の課題は、「睡眠の質を向上させ、かつ同時に快楽性能が高く精巧である、機能的な香料アコードを生み出すことを、香料製造者に可能にさせる手段を提供する」ことと認められる。
3 検討
(1)本願明細書の実施例の記載
ア 本願明細書の【0112】には「香り41(=例示の香り4)および香り47(=例示の香り6)とラベル付けされた香りは、本発明による香り組成物である」と記載され、【0113】の【表1】には、「「Sleep Good」の香りの範囲値」を満たす「試験した香り」として、「香り41」と「香り47」の2つが記載され、【表1】の「最終行」の「推奨できるか否かの結果(YESまたはNO)、すなわち、試験した香りが睡眠向上特性を有するとみなされるか否か」が「YES」であったことが記載され、同【0115】の【表2】には、「香り41(=例示の香り4)」のSC値が「2.484」、検証尺度が「109.121」であり、「香り47(=例示の香り6)」のSC値が「2.456」、検証尺度が「108.093」であることが記載されている。このように、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記第2のとおりA)~B12)の群に列挙される多様な香料材料の組み合わせを含む香料組成物を調整する方法に係る本願発明1の実施例として、具体的に記載されているのは、この「香り41(=例示の香り4)」と「香り47(=例示の香り6)」の2つのみである。
イ そして、前記【表1】の「属性」欄の「柑橘調」や「フローラル調」との香調の区分は、それらの香調の区分に含まれる香料の種類や具体的な化合物名が不明であるから、前記たった2つの「香り41(=例示の香り4)」と「香り47(=例示の香り6)」は、いずれも、具体的にいかなる化合物を含む香料組成物の香りで検証がなされたものであるのかすら不明なものである。
ウ ここで、香料分野において、例えば「柑橘調」のような○○調との呼称が広く行われていたとしても、睡眠の質の向上特性との関係で、〇〇調とのグループに属する香調であれば、全て同様の作用を奏することが本願出願時の技術常識であったとはいえない。現に、例えば前記第4の5の文献1には、本願発明1の柑橘調に例示される「レモン」の精油は「気持ちをリフレッシュさせ、集中力や記憶力を高める」と記載される一方、「グレープフルーツ」の精油は「ストレスや不安をやわらげる/心地よい眠りに導く」と記載され、フローラル調に例示される「ジャスミン」の精油は「気分を高揚させる効果が最も高い精油のひとつといわれています」と記載される一方、「ゼラニウム」や「ネロリ」の精油は「精神的なストレスや不安をやわらげる/心地よい眠りに導く」と記載されていることからも、本願出願時、本願発明の「〇〇調」との同じグループに属する香料化合物であれば、個々の香りの特性によらず、睡眠の質に対して、全て同様の作用を奏するものとは認識されていなかったものと認められる。
エ また、本願明細書の【表1】には「「Sleep Good」の香りの範囲値」が記載されるが、この範囲値についても本願出願時の技術常識とはいえず、当該範囲値が各〇〇調のような香調に属するどのような香りを利用して設定された値かも明らかでないし、各香調に属する香料のうち、用いた香料の成分によっては、睡眠の質に対する作用が全て同じとは認識されていなかったことは、前記ウのとおりである。加えて、例えば、本願発明では「ラベンダー」が「(B6)カンファー・アロマ調」に区分されているが、文献1では「フローラル系の香り(本願発明1の「(B7)フローラル調」に相当)に区分されているように、各香調の定義があいまいであること等をも考慮すればなおさら、香料組成物の組成が、この「「Sleep Good」の香りの範囲値」を満たせば睡眠の質の向上特性がよいことを、当業者が本願明細書の記載及び技術常識から理解することもできない。
オ そうすると、出願時の技術常識を考慮しても、具体的にどのような化合物を含むのかが不明な「香り41(=例示の香り4)」と「香り47(=例示の香り6)」の「推奨できるか否かの結果(YESまたはNO)、すなわち、試験した香りが睡眠向上特性を有するとみなされるか否か」が「YES」であり、かつ、SC値がそれぞれ「2.456」及び「2.484」、検証尺度が「108.093」及び「109.121」であったとの本願の【表1】及び【表2】の記載をもって、本願発明の、SC値が1.35以上であり、A)~B12)の群に列挙される多様な香料材料の組み合わせを含む香料組成物を調整する方法が、前記2の課題を解決できることが、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかとはいえない。
したがって、本願発明1は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に加え本願出願時の技術常識を考慮しても、前記2の課題を解決できるものとはいえない。
(2)SC値について
ア SC値は、「SC=((а1ce+Θce)/δtem)+(Θ/а2)」で示される数式から算出される値であるが、本願明細書には、SC値が技術的に信頼に足る値であるか否かの前提となるような情報、例えば、健康なヒトの定常状態(香りを嗅がせない状態)のSC値が、ヒトの個性によらず同じ値であること等について記載されていない。
SC値は、その数式の作りからみて、おおむね、「Θ」成分やα波のうちの低周波側の「a1」成分の値が大きくなると値が増加し、「δ」成分やα波のうちの高周波側の「a2」成分の値が大きくなると値が減少するような傾向を持つ値であることは理解できるが、その数式自体は一般に知られたものではなく、その値の技術的意義も、一見して理解できるような類いのものではない。
本願明細書の【0115】の【表2】及び【0117】には、「例示の香り1」は、SC値が1.080と低く、「検証尺度=睡眠%+(睡眠の質)2」で示される検証尺度の値が106.350であるのに対し、「例示の香り2」~「例示の香り7」はSC値も検証尺度の値も例示の香り1を超えており、例示の香り2~7の中でSC値の最小値が例示の香り5の1.361であることから、SC値が1.35を下回る例示の香り1について「例示の香り1が他のいずれの香りよりも大幅に睡眠の向上性が低いことを予測することができる」と記載されている。
しかしながら、例示の香り2、3、5及び7については、具体的な化合物はおろか、そもそもそれらの香りが〇〇調に区分される化合物をそれぞれどの程度含むものかすら記載されておらず、例示の香り1、4及び6についても、前記(1)のとおり、それぞれが○○調の香りとして具体的にいかなる化合物を含むものかは不明であり、〇〇調に区分される化合物であれば、同程度のSC値であることが、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、明らかということもできない。
請求人は令和4年8月1日提出の意見書(前記第3の3参照。)と共に「参考資料A」を提出し、オレンジテルペン、レモンオイル、FlorosaおよびHEDIONEについて、7人のパネルにおけるSC値なるものを示し、同じ属性の異なる成分が、同様のSC値を示すことが理解できると主張するが、この「参考資料A」は、そもそも、本願明細書に開示されたものでないから採用できないものであるし、このような4種の値の提示をもって、本願明細書の発明の詳細な説明及び本願出願時の技術常識から、本願発明1において〇〇調として区分される非常に多様な化合物またはそれらの組み合わせ同士が、いずれも同様のSC値を示すことを当業者が理解したとはいえない。そもそも、
(ア)定常状態(香りを嗅がせる前の状態)の脳波は、ヒトそれぞれで異なった挙動を示すものであって、健康なヒトであれば脳波の各成分の値が全て等しく、SC値が人類共通の1つの値に収束する、という技術常識は知られていない、
(イ)同じ香りを嗅がせたときのSC値が、あらゆる健康なヒト全てについて、人類共通の1つの値に収束する、という技術常識も知られていない、
(ウ)本願発明1のSC値は、同一のヒトに対して、香りを嗅がせる前と嗅がせた後の数値の差分から算出される値ではなく、嗅がせた後の絶対値から算出される値であるから、ヒトそれぞれの特性を排除していない値である、
という事情を考慮すれば、健康な人であっても、ヒトそれぞれの個性によって、ある程度ばらつきを持った値になってしかるべきものである。しかしながら、本願明細書には、SC値が技術的に信頼に足る値であるか否かの前提となるような情報、例えば、健康なヒトの定常状態(香りを嗅がせない状態)のSC値が、ヒトの個性によらず同じ値であることや、ヒトに同一の香りを嗅がせたときのSC値が、ヒトの個性や香りの種類によらず同じ値になることについて何ら記載されていないし、また、健康なヒトの定常状態のSC値が、ヒトの個性によらず同じ値となるという技術常識や、ヒトに同一の香りを嗅がせたときのSC値が、ヒトの個性や香りの種類によらず同じ値になるという技術常識は知られていない。この点について、請求人は前記した令和4年8月1日提出の意見書において、4種類の香料成分について、「ランダムに選択された7人のパネル」で試験したところ、SC値が3.31~3.44程度で、標準偏差も0.12~0.26程度であった」と主張しているが、性別や育った環境も不明な7名のパネルで試験した結果をもって、同じ香りを嗅がせたときのSC値が、健康なヒトであれば全て同程度の値に収束するとも認められない。
イ 加えて、SC値が測定方法やソフトウエアの処理によって変化しうる値であることはこれまでの拒絶理由で指摘したとおりであって、請求人も令和7年5月7日提出の意見書で「・・・審判官殿がご指摘するように、SC値は、測定時間240秒のうち、香料を嗅ぎ始めた数十秒間と、測定終了間際の数十秒間とでは、PSDデータが大きく異なります。しかしながら、SC値を得るためには240秒全体のデータを用いており、審判官殿のご指摘は当たらないものと思料します。・・・」と認めるとおり、少なくとも、香料を嗅ぎ始めた数十秒間と、測定終了間際の数十秒間とでは、PSDデータが大きく異なるものである。また、測定時間について、本願明細書の【0088】には「興味の対象とする時間枠(香り/ソルボロッドの提示の各5分間)からのデータを・・・解析した。・・・」と記載され、明細書に記載された実施例の測定時間が240秒なのか5分間(300秒)であるのかも定かでない。
そうすると、SPDデータが大きく変化する間の何秒間のデータを用いたのかの明示的な特定がなく、実際の実験において、具体的に何秒間のデータを用いたのかも定かでない本願発明1におけるSC値は、「SC値が1.35以上なら睡眠向上特性を有する」と認定するに足るような正確さを備えた指標ではない。
ウ さらに、令和5年11月14日提出の回答書(前記第3の4参照。)の1.(5)によれば、「香り37」のSC値は2.35であるから、「Sandman Classifier(SC)値が少なくとも1.35である」との要件を満たすものである。本願の明細書や前記回答書には「香り37」の検証尺度の値が明示されていないが、本願の明細書の【0113】において、「香り37」は、推奨できるか否かの結果が「NO」と記載されていることから、試験した香りが睡眠向上特性を有するとはみなされないものとされている。
そして、推奨できるか否かの結果が「NO」であるということは、検証尺度が良好であるはずがないから、「香り37」の検証尺度は、「香り44」と同様に低いものであると考えられる。
そうすると、例えば「香り37」のように、「SC値が少なくとも1.35である」との要件を満たすものであっても、睡眠向上特性を有さないものが存在するということになるから、「SC値が少なくとも1.35である」との要件を満たす香料組成物であれば睡眠向上特性を有するというような指標とは認められない。
(3)「Sleep Good」の香りの範囲値について
前記(1)でも検討したとおり、本願明細書の【0113】の【表1】に示された「「Sleep Good」の香りの範囲値」は、その「属性」欄の「柑橘調」や「フローラル調」との香調の区分が、多種多様な化合物の種類及び量の組合せを含むものであり、当該範囲値が、それぞれの香調の区分に属するどのような香り成分を利用して設定された値かも明らかでないものである。
この点について、請求人は、審判請求書(前記第4の2参照。)において、「参考資料2」として「例示の香り1~7の組成」を示している。
この「参考資料2」は、そもそも、本願明細書に開示されたものでないから採用できないものであるし、それぞれの香調の区分に含まれる化合物の種類と量を明らかにするものではないが、「参考資料2」に示された各香調の区分の範囲は、本願明細書の【0113】の【表1】に示された「「Sleep Good」の香りの範囲値」と異なる範囲となっている。例えば、柑橘調についてみれば、本願明細書の【表1】では1.200~28.873であるのに対し、「参考資料2」では、1~30wt%となっており、その結果、「参考資料2」では、30wt%の「#2:例示の香り2」や、1wt%の「#3:例示の香り3」が範囲内で実施例となっているが、いずれも本願明細書の【表1】の範囲を満たさないもの、すなわち、比較例相当とされるべきものである。
そして、「例示の香り2」はSC値が2.456であり、「例示の香り3」はSC値が2.691であり、いずれも検証尺度が高いもの、すなわち、睡眠の質の向上特性を有する香料組成物であるから、「「Sleep Good」の香りの範囲値」を満たさない香料組成物であっても、睡眠の質の向上特性を有するものが存在するということになる。
また、逆に、「「Sleep Good」の香りの範囲値」を満たす香料組成物であれば睡眠の質の向上特性を有する、ということは、本願明細書の実施例において確認されておらず、本願出願時の技術常識から明らかともいえない。
(4)「SC値」及び「本願発明のA)~B12)の多様な香料成分の組み合わせを含む香料組成物」の双方の条件を満たす香料組成物について
ア 睡眠の質の向上特性についてみれば、前記(2)のとおり、SC値は技術的に信頼に足る値とはいえないものであって、1.35以上という条件を満たすものであれば、睡眠の質の向上特性を有することが、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていたとはいえず、またそのような事項が本願出願時の技術常識から明らかともいえない。
また、前記(3)のとおり、「「Sleep Good」の香りの範囲値」の条件を満たす香料組成物が、睡眠の質の向上特性を有することが確認されているものでもなく、そのような事項が本願出願時の技術常識から明らかともいえない。
そうすると、「SC値」及び「「Sleep Good」の香りの範囲値」の双方の条件を満たす香料組成物が、必然的に、睡眠の質の向上特性を有するということにはならないから、「SC値」及び「「Sleep Good」の香りの範囲値」の双方の条件を満たす香料組成物が睡眠の質の向上特性を有するというためには、本願明細書の発明の詳細な説明にその裏付けとなる実験結果等の具体的な記載を示す必要がある。
イ しかしながら、前記(1)で検討したとおり、本願明細書において、SC値の条件とガイドラインの条件の双方を満たすことにより、検証尺度の値が高いことが確認できた実施例は、「香り41(=例示の香り4)」と「香り47(=例示の香り6)」の2つのみであり、しかも、それらの香りは、「柑橘調」や「フローラル調」といった香調の区分で定義されたものであって、具体的にいかなる化合物を含む香料組成物の香りで検証がなされたものであるのかすら不明なものである。
そして、SC値の条件とガイドラインの条件の双方を満たせば睡眠の質向上特性が得られるとの技術常識はなく、SC値が従来知られていなかったパラメータであることや、ガイドラインを満たす香料組成物に含まれる化合物の種類や量の組合せが無数に存在することも考慮すれば、含まれる具体的な化合物名や量すら不明な、たった2つの実施例に基づいて、ガイドラインとSC値の双方を満たす香料組成物が睡眠の質向上特性を有することが本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていたということはできない。
そうすると、本願出願時の技術常識に照らし合わせても、本願発明で特定される、SC値が1.35以上で、A)~B12)の群に列挙される多様な香料材料の組み合わせを含む香料組成物を調整する方法が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、前記2の課題を解決することが、当該発明の詳細な説明の記載から明らかとはいえないし、本願発明で特定される範囲まで、当該発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるともいえない。
ウ したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
4 請求人の主張について
請求人は、令和7年5月7日の意見書の5頁17~26行において、(1)「まず、悪臭となるような香料組成物は、小さなSC値をもたらします。そして、柑橘調 の成分については、一般的に眠気を抑制する作用があると考えられているため、フローラル調の成分と組み合わせることで睡眠の質の向上をサポートするというのは、実際には、 発明者および出願人にとって意外なことであり、この観察結果は、本願発明の進歩性を裏付けるものであります。」、
(2)「睡眠の質に対処することに適した香料組成物を調製する方法に係る請求項1に記載の匂い属性についてのガイドライン値は、望ましい匂いの印象を付与する組成物を調製するためのガイドラインであり、まずこのガイドラインを満たすもの中から、さらにSC値のガイドラインを満たすものが、睡眠の質に対処することに適した香料組成物に適していると判断でき、このことは本願明細書の記載から当業者であれば理解することであります。」
と主張している。
しかしながら、前記(1)について、柑橘調の成分とフローラル調の成分とを組み合わせることで睡眠の質の向上をサポートすることが当業者にとって意外なことであるならなおさら、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明を裏付ける実施例等の具体的な記載が必要とされるにもかかわらず、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記3(1)のとおり、睡眠の質の向上特性を有する香料組成物として、具体的にどのような化合物を含むのか不明な2例が記載されるにすぎない。
また、(2)について、本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、組成が不明なものが2つ記載されるのみであり、前記3(3)のとおり、匂い属性についてのガイドライン値を満たすものが睡眠の質の向上特性を有することが開示されていたとはいえず、前記3(2)のとおり、SC値のガイドラインを満たすものが睡眠の質の向上特性を有することが開示されていたともいえず、さらに、前記3(4)のとおり、匂い属性についてのガイドライン値とSC値のガイドラインの双方を満たすものであれば、睡眠の質の向上特性を有することが開示されていたともいえない。
したがって、これらの請求人の主張をもって、本願がサポート要件を満たすとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-002317