特許拒絶査定不服審判
2021-001747
駆動制御回路及びその駆動方法、表示装置
- 審判番号
- 2021-001747
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-512737外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月08日
- 審決日
- 2021年09月24日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クンシャン ゴー-ビジオノックス オプト-エレクトロニクスカンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】武田 幸子
- 分類
- P18 .562-Z (G09G) / P18 .57 -Z (G09G) / P18 .536-Z (G09G) / P18 .537-Z (G09G) / P18 .121-Z (G09G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-512737号「駆動制御回路及びその駆動方法、表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月7日国際公開、WO2018/099267、令和1年11月7日国内公表、特表2019-532330号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月15日を国際出願日とする外国語特許出願(パリ条約による優先権主張、2016年11月29日、中華人民共和国)であって、平成31年3月5日に翻訳文が提出され、同月8日に手続補正書が提出され、令和2年3月18日付けの拒絶理由通知に対し、同年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月26日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:同年11月4日)、これに対して、令和3年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲及び明細書についての補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
(1)特許請求の範囲についての補正
本件補正は、次のアに示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のイに示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
ア 本件補正前
「【請求項1】
駆動集積回路、送信制御回路、走査駆動回路及び画素回路を含み、
前記駆動集積回路は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号を生成し、前記第1の駆動信号を前記送信制御回路に送信し、且つ、前記駆動集積回路は、出力待ちのデータ信号の振幅値を低くして、第1のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号を前記走査駆動回路に送信し、
前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し、
前記送信制御回路は、前記駆動集積回路と前記画素回路との間に接続され、前記第1の駆動信号を受信し、受信された前記第1の駆動信号を、前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換し、前記第2の駆動信号を前記画素回路に送信し、
前記画素回路は、前記第2の駆動信号を受信し、受信された前記第2の駆動信号及び前記走査駆動回路から送信された第1のデータ信号と走査信号とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御することを特徴とする、駆動制御回路。」
イ 本件補正後
「【請求項1】
駆動集積回路、送信制御回路、データ駆動回路及び画素回路を含み、
前記駆動集積回路は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号を生成し、前記第1の駆動信号を前記送信制御回路に送信し、且つ、前記駆動集積回路は、出力待ちのデータ信号の振幅値を低くして、第1のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号を前記データ駆動回路に送信し、
前記データ駆動回路は、前記第1のデータ信号を受信し、データ線により前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し、
前記送信制御回路は、前記駆動集積回路と前記画素回路との間に接続され、前記第1の駆動信号を受信し、受信された前記第1の駆動信号を、前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換し、前記第2の駆動信号を前記画素回路に送信し、
前記画素回路は、前記第2の駆動信号を受信し、受信された前記第2の駆動信号及び前記データ駆動回路から送信された第1のデータ信号に基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御し、
前記送信制御回路は、第1のP型電界効果トランジスタと、第2のP型電界効果トランジスタと、第3のP型電界効果トランジスタと、第1のコンデンサと、を備え、
前記第1のP型電界効果トランジスタは、ソースが第1のノードに接続され、ゲートが第2のP型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインがローレベルに接続され、
前記第2のP型電界効果トランジスタは、ソースが第2のノードに接続され、ゲートが第1のノードに接続され、ドレインが第1のP型電界効果トランジスタのゲートに接続され、
前記第3のP型電界効果トランジスタは、ソースがハイレベルに接続され、ゲートが信号入力ポートに接続され、ドレインが第2のノードに接続され、
前記第1のコンデンサは、一端が第1のノードに接続され、他端が第2のノードに接続され、前記第2のノードが信号出力ポートに接続されることを特徴とする、駆動制御回路。」
(2)明細書についての補正
本件補正は、次のアに示される本件補正前の明細書の段落【0017】及び【0042】の記載を、それぞれ以下のイに示される本件補正後の明細書の段落【0017】及び【0042】の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
ア 本件補正前
「【0017】
図1には、本発明の実施例1に係る駆動制御回路の概略構成図が示されており、該駆動制御回路は、主に、駆動集積回路11、送信制御回路12、走査駆動回路13、及び画素回路14を含み、
駆動集積回路11は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号S1を生成し、第1の駆動信号S1を送信制御回路12に送信し、出力待ちのデータ信号の振幅値を低くして、第1のデータ信号D1を生成し、第1のデータ信号D1を走査駆動回路13に送信し、
送信制御回路12は、駆動集積回路11と画素回路14との間に接続され、受信した第1の駆動信号S1を、出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号S2に変換して、画素回路14に送信し、
画素回路14は、受信した第2の駆動信号S2と走査駆動回路13から送信された第1のデータ信号D1とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御する。」
「【0042】
具体的には、具体的なタイミング制御は、図3bに示すように、第2の駆動信号S2は、走査駆動回路が送信した走査信号S1及びデータ信号S2と協力してディスプレイにおける画素点を順次走査して、データを書き込む。行同期信号VSの作用は、信号送信端と受信端とを同期させることであり、走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信されたデータ信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行い、同じ行でのディスプレイ画素点を駆動してデータを書き込む過程において、データ信号S2が走査信号S1より遅れる。走査駆動してデータを書き込んだ後、第2の駆動信号S2が低電圧になる場合にディスプレイの画素がオンになり、高電圧になる場合にディスプレイの画素がオフになり、60%のデューティ比を有する第2の駆動信号S2によって、ディスプレイに表示される横方向ムラの表示時間が表示時間全体の40%になり、信号周波数が比較的高く、且つデータ信号の振幅値を調整することによってディスプレイの単位時間あたりの表示輝度を高めるため、横方向ムラ現象が人の視覚に捉えられにくく、ディスプレイに現れる横方向ムラ現象を改善し、表示品質を向上させる。」
イ 本件補正後
「【0017】
図1には、本発明の実施例1に係る駆動制御回路の概略構成図が示されており、該駆動制御回路は、主に、駆動集積回路11、送信制御回路12、データ駆動回路13、及び画素回路14を含み、
駆動集積回路11は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号S1を生成し、第1の駆動信号S1を送信制御回路12に送信し、出力待ちのデータ信号の振幅値を低くして、第1のデータ信号D1を生成し、第1のデータ信号D1をデータ駆動回路13に送信し、
送信制御回路12は、駆動集積回路11と画素回路14との間に接続され、受信した第1の駆動信号S1を、出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号S2に変換して、画素回路14に送信し、
画素回路14は、受信した第2の駆動信号S2とデータ駆動回路13から送信された第1のデータ信号D1とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御する。」
「【0042】
具体的には、具体的なタイミング制御は、図3bに示すように、第2の駆動信号S2は、走査駆動回路が送信した走査信号S1及び走査信号S2と協力してディスプレイにおける画素点を順次走査して、データを書き込む。行同期信号VSの作用は、信号送信端と受信端とを同期させることであり、走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信された走査信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行い、同じ行でのディスプレイ画素点を駆動してデータを書き込む過程において、走査信号S2が走査信号S1より遅れる。走査駆動してデータを書き込んだ後、第2の駆動信号S2が低電圧になる場合にディスプレイの画素がオンになり、高電圧になる場合にディスプレイの画素がオフになり、60%のデューティ比を有する第2の駆動信号S2によって、ディスプレイに表示される横方向ムラの表示時間が表示時間全体の40%になり、信号周波数が比較的高く、且つデータ信号の振幅値を調整することによってディスプレイの単位時間あたりの表示輝度を高めるため、横方向ムラ現象が人の視覚に捉えられにくく、ディスプレイに現れる横方向ムラ現象を改善し、表示品質を向上させる。」
2 本件補正についての当審の判断
(1)翻訳文新規事項の追加
ア 上記1(1)に示した請求項1についての補正は、本件補正前の「走査駆動回路」という記載を「データ駆動回路」に補正することを含むところ、本願の翻訳文等には「データ駆動回路」は記載も示唆もされていないから、本件補正は、本願の翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
イ この点に関し、請求人は審判請求書において、次の主張をしている。下線は当審が付した。
「(3-1-2)補正の根拠の明示
(中略)
図1、5、6、及び明細書段落[0017]の記載から、D1が第1のデータ信号であることが明らかです。D1が入力され、また出力される「走査駆動回路13」は、データ信号を扱う構成要件であることが明らかです。すなわち、「走査駆動回路13」が「データ駆動回路13」の誤記であることが自然で合理的であることがわかります。以上のことから、明細書におけるすべての「走査駆動回路」を「データ駆動回路」に補正し、明細書段落[0037]、[0039]における「走査駆動回路」に相当する「走査回路S」と「走査駆動回路S」とを「データ駆動回路S」に補正いたしました。
上記補正した明細書の内容、特に段落[0017]、[0032]-[0035]、図1、3、5の記載に基づいて、請求項1に対して、「走査駆動回路」を「データ駆動回路」に補正し、その補正に伴い、走査信号に関する記載を適宜に削除し、また元の請求項4の技術的特徴を請求項1に取り入れる補正を行いました。
(中略)
これらの補正は、いずれも出願当初の明細書等の範囲内においてしたものです。」
ウ しかしながら、以下に詳述するとおり、請求人の上記主張を採用することはできず、本願の翻訳文等の記載をみても「走査駆動回路13」が「データ駆動回路13」の誤記であることが明らかであるとはいえない。
(ア)請求人は、「図1、5、6、及び明細書段落[0017]の記載から、D1が第1のデータ信号であることが明らかです。D1が入力され、また出力される「走査駆動回路13」は、データ信号を扱う構成要件であることが明らかです。」と主張する。
ここで、本件補正前の段落【0017】の記載は、前記1(2)アにおいて示したとおりであり、【図1】の記載は次に示すとおりである。
なお、【図5】及び【図6】の図示内容は、【図1】の図示内容と全く同じである。
「【図1】
[図:0001382178000001.jpg]
」
(イ)これらの記載から、第1のデータ信号D1は、駆動集積回路11において生成され、走査駆動回路13に送信され、さらに走査駆動回路13から画素回路14に送信されることが読み取れるものの、このことから直ちに「走査駆動回路13」が「データ駆動回路」の誤りであると結論づけることはできない。
(ウ)すなわち、原査定において引用した引用文献1(米国特許出願公開第2012/0062613号明細書)、引用文献2(特開2012-220565号公報)、引用文献3(特開2007-127918号公報)に開示されているように、AMOLED表示装置におけるOLED素子の発光期間と非発光期間の比である発光デューティを制御するための構成として、走査線駆動回路及びデータ線駆動回路の他に、発光デューティを制御するための回路を駆動制御部に設けた構成が一般的なものとして知られている。
(引用文献1のFig.1の「Emission Driver140」、引用文献2の【図1】の「発光停止制御回路23」、引用文献3の【図1】の「発光制御線駆動回路30」が、発光デューティを制御するための回路にあたる。)
「引用文献1のFig.1
[図:0001382178000002.jpg]
」
「引用文献2の【図1】
[図:0001382178000003.jpg]
」
「引用文献3の【図1】
[図:0001382178000004.jpg]
」
(エ)上述の一般的な構成を考慮しつつ、本願の明細書及び図面に開示された駆動制御回路について検討してみると、上記【0017】には、「駆動集積回路11は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号S1を生成し、第1の駆動信号S1を送信制御回路12に送信し」、「送信制御回路12は、駆動集積回路11と画素回路14との間に接続され、受信した第1の駆動信号S1を、出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号S2に変換して、画素回路14に送信し」と記載されているから、上記「送信制御回路12」は、発光デューティを制御するための回路であって、走査線駆動回路やデータ線駆動回路ではないことは明らかである。
(オ)そうすると、「走査駆動回路13」については次の3つの可能性が考えられる。
a 「走査駆動回路13」は走査線駆動回路である。
b 「走査駆動回路13」はデータ線駆動回路である。
c 「走査駆動回路13」は走査線駆動回路及びデータ線駆動回路の両方を兼用する回路である。
(カ)ここで、本件補正前の段落【0042】の記載から上記3つの可能性について検討する。
本件補正前の段落【0042】及び【図3b】の記載は以下のとおりである。下線は当審が付した。
「【0042】
具体的には、具体的なタイミング制御は、図3bに示すように、第2の駆動信号S2は、走査駆動回路が送信した走査信号S1及びデータ信号S2と協力してディスプレイにおける画素点を順次走査して、データを書き込む。行同期信号VSの作用は、信号送信端と受信端とを同期させることであり、走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信されたデータ信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行い、同じ行でのディスプレイ画素点を駆動してデータを書き込む過程において、データ信号S2が走査信号S1より遅れる。(以下省略)」
「【図3b】
[図:0001382178000005.jpg]
」
(キ)上記記載によれば、「走査駆動回路」は「走査信号S1及びデータ信号S2」を送信し、「走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信されたデータ信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行」うことから、「走査駆動回路13」は、走査信号を画素回路に供給する走査線駆動回路であるとともに、データ信号を画素回路に供給するデータ線駆動回路でもあることが読み取れる。
すなわち、本件補正前の「走査駆動回路13」は、上記(オ)のcの場合(走査線駆動回路及びデータ線駆動回路の両方を兼用する回路)に該当するといえる。
(ク)これに対し、請求人は、「第1のデータ信号D1」を「走査駆動回路13」が「画素回路14」に送信していることを根拠として、「走査駆動回路」が「データ駆動回路」の誤記であるとしてこれを補正しているところ、このような補正は、上記(オ)のcの場合を排除して、bの場合に限定するものであり、本件補正前の【0042】の記載と整合しないものである。
なお、本件補正後の【0042】において、【0017】の「データ駆動回路13」とは異なる機能を有する走査駆動回路が別途定義されているから、本件補正後の【0042】の「走査駆動回路」と【0017】の「データ駆動回路13」という2つの回路の存在が整合するように解釈すると、本件補正後の「データ駆動回路」は、走査線駆動回路及びデータ線駆動回路の両方の機能を有する回路であると解する余地はないというべきである。
そうすると、本件補正後の「駆動制御回路」は、「駆動集積回路11」、「送信制御回路12」、「データ駆動回路13」及び「画素回路14」の他に、「走査駆動回路」を含むものであると解するのが相当であるから、本件補正後の「データ駆動回路」は、上記(オ)のcの場合に対応する走査線駆動回路及びデータ線駆動回路の両方の機能を有する回路ではなく、本件補正前の「駆動制御回路」に対して新たに追加された回路であると解するのが相当である。
エ 以上の検討内容を踏まえると、「走査駆動回路13」が「データ駆動回路13」の明らかな誤記であるとはいえず、「走査駆動回路」という記載を「データ駆動回路」に補正することは、駆動回路の属性、回路構成や機能を全く異なるものに変えてしまうことになるから、本願の翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
よって、本件補正は、いわゆる翻訳文新規事項を追加する補正である。
(2)補正の目的該当性違反
ア 本件補正は、請求項1において、補正前の「前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し、」を「前記データ駆動回路は、前記第1のデータ信号を受信し、データ線により前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し、」と補正することを含むものであるが、この補正により、「タイミング制御」すること及び「タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信」することが削除されている。
イ 請求人は、上記補正が特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである旨主張しているが、このような補正前の構成の一部を削除する補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
ウ また、タイミング制御に係る事項は、令和2年3月18日付けの拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項とは関係がないから、上記補正は、特許法17条の2第5項4号に規定する「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものにも該当しない。
エ さらに、上記補正が、「請求項の削除」(同項1号)又は「誤記の訂正」(同項3号)を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
オ したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。
(3)独立特許要件違反(実施可能要件違反)
ア 本件補正は、請求項1において、本件補正前の「送信制御回路」について、「前記送信制御回路は、第1のP型電界効果トランジスタと、第2のP型電界効果トランジスタと、第3のP型電界効果トランジスタと、第1のコンデンサと、を備え、
前記第1のP型電界効果トランジスタは、ソースが第1のノードに接続され、ゲートが第2のP型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインがローレベルに接続され、
前記第2のP型電界効果トランジスタは、ソースが第2のノードに接続され、ゲートが第1のノードに接続され、ドレインが第1のP型電界効果トランジスタのゲートに接続され、
前記第3のP型電界効果トランジスタは、ソースがハイレベルに接続され、ゲートが信号入力ポートに接続され、ドレインが第2のノードに接続され、
前記第1のコンデンサは、一端が第1のノードに接続され、他端が第2のノードに接続され、前記第2のノードが信号出力ポートに接続されること」という構成を限定することを含むものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記(2)において説示したことは措くとしても、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると考える余地がある。
しかしながら、以下に詳述するとおり、本件補正後の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしておらず、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しないものである。
イ 本件補正は、前記1(2)において示したとおり、本件補正前の「走査駆動回路13」を「データ駆動回路13」に補正することを含むものであるが、本件補正後の段落【0042】には、次に示すとおり、依然として「走査駆動回路」についての記載があるから、本願の発明の詳細な説明に開示された「駆動制御回路」は、「駆動集積回路11」、「送信制御回路12」、「データ駆動回路13」及び「画素回路14」の他に、「走査駆動回路」を含むものであると解するのが相当である。
「【0042】
具体的には、具体的なタイミング制御は、図3bに示すように、第2の駆動信号S2は、走査駆動回路が送信した走査信号S1及び走査信号S2と協力してディスプレイにおける画素点を順次走査して、データを書き込む。行同期信号VSの作用は、信号送信端と受信端とを同期させることであり、走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信された走査信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行い、同じ行でのディスプレイ画素点を駆動してデータを書き込む過程において、走査信号S2が走査信号S1より遅れる。走査駆動してデータを書き込んだ後、第2の駆動信号S2が低電圧になる場合にディスプレイの画素がオンになり、高電圧になる場合にディスプレイの画素がオフになり、60%のデューティ比を有する第2の駆動信号S2によって、ディスプレイに表示される横方向ムラの表示時間が表示時間全体の40%になり、信号周波数が比較的高く、且つデータ信号の振幅値を調整することによってディスプレイの単位時間あたりの表示輝度を高めるため、横方向ムラ現象が人の視覚に捉えられにくく、ディスプレイに現れる横方向ムラ現象を改善し、表示品質を向上させる。」
ウ しかしながら、上記【0042】の記載は、「走査駆動回路」が送信する「走査信号」のタイミングと役割を示したにすぎず、「走査駆動回路」の具体的な回路構成は不明であり、「駆動制御回路」においてどのように配置されており、「画素回路14」とどのように接続されているのかについても不明である。
この点に関し、請求人は審判請求書において、次の主張をしている。
「(3-1-2)補正の根拠の明示
本願明細書段落[0017]、[0042]の記載から、大文字のS1、S2がそれぞれ第1の駆動信号、第2の駆動信号を示すことが明らかです。また、本願明細書段落[0042]及び図3の記載から、小文字のS1で第1の走査信号を示すことから、小文字のS2で第2の走査信号を示すことは、自然で合理的であることがわかります。すなわち、大文字のSと数字と、小文字のSと数字と、のそれぞれで駆動信号と走査信号とを区別して記載されています。
以上のことから、本願明細書段落[0042]における誤記である「走査信号S1」と「データ信号S2」とを、それぞれ「走査信号S1」と「走査信号S2」に補正いたしました。」
エ 請求人の上記主張を考慮しても、「走査駆動回路」の具体的な回路構成は不明であり、「駆動制御回路」においてどのように配置されており、「画素回路14」とどのように接続されているのかについても不明である。
特に、「画素回路14」との接続については、走査信号には「走査信号S1」と「走査信号S2」の2種類のものがあり、「走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化」するためのものであり、「走査信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行」うためのものであるとしても、これらの走査信号は、「画素回路14」のどのような回路要素(トランジスタなど)に入力されるのか、【図3b】の図示内容を参照しても不明である。
オ すなわち、AMOLED表示装置における画素回路の具体的な回路構成は、引用文献1(米国特許出願公開第2012/0062613号明細書)のFig.2に示されたものが一般的なものであるところ、このような一般的な画素回路では、走査駆動回路(スキャンドライバ120)からの走査線(ゲートライン)GLnは、トランジスタM1のゲートに接続され、走査信号(ゲート電圧)がトランジスタM1のゲートに供給され、トランジスタM1のオン・オフを制御して、データラインDLmを介してコンデンサCにデータ出力電圧を書き込むものである(引用文献1の段落[0053]の記載も参照。)。
しかしながら、本件補正後の「走査信号S1」と「走査信号S2」を、このような典型的な画素回路における一つの走査用トランジスタのゲートに供給しても、「走査信号S1」により「ディスプレイ画素点を走査初期化」し、「走査信号S2」により「ディスプレイ画素点に対してデータ書き込み」を行うことはできないことは明らかであるから、本件補正後の段落【0042】の記載内容に即して「走査駆動回路」を検討すると、その回路構成は、上述した典型的な画素回路とは異なるものを想定する必要があると考えられるところ、その回路構成がどのようなものか不明である。
「引用文献1のFig.2
[図:0001382178000006.jpg]
」
カ 以上の検討内容を踏まえると、本件補正後の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
(3)小括
以上検討のとおり、本件補正は、いわゆる翻訳文新規事項を追加する補正であるから、特許法17条の2第3項の規定に違反する(同法184条の12第2項参照)。
また、本件補正は、同法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しないから、同項の規定に違反する。
さらに、本件補正後の発明の詳細な説明の記載は、同法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、いずれにしても不適法なものであって、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和2年5月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
駆動集積回路、送信制御回路、走査駆動回路及び画素回路を含み、
前記駆動集積回路は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号を生成し、前記第1の駆動信号を前記送信制御回路に送信し、且つ、前記駆動集積回路は、出力待ちのデータ信号の振幅値を低くして、第1のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号を前記走査駆動回路に送信し、
前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し、
前記送信制御回路は、前記駆動集積回路と前記画素回路との間に接続され、前記第1の駆動信号を受信し、受信された前記第1の駆動信号を、前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換し、前記第2の駆動信号を前記画素回路に送信し、
前記画素回路は、前記第2の駆動信号を受信し、受信された前記第2の駆動信号及び前記走査駆動回路から送信された第1のデータ信号と走査信号とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御することを特徴とする、駆動制御回路。」
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1についての理由1及び2の概要は、次のとおりである。
理由1(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1の「走査駆動回路」は、データ信号を画素回路に送信する構成であるが、当該「走査」の意味する駆動回路は、例えば走査線を介してデータ信号を送信する回路構成なのか否か明確ではない。
特に、「走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信」する「走査駆動回路」の構成(走査信号等)が明確ではない。
理由2(進歩性)
本願発明は、下記の引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献3:特開2007-127918号公報
第4 当審の判断
1 明確性要件違反について
本願発明の「走査駆動回路」の回路構成が、以下の(1)~(3)において詳述するように不明であるから、本願発明は明確ではない。
(1)本願発明の「前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し」という構成について、「走査信号を生成」し、かつ、「第1のデータ信号を受信して」「前記画素回路に送信」するための「走査駆動回路」の回路構成が、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
すなわち、走査駆動回路が走査信号S1を送信することは、例えば、段落【0042】等に記載されているものの、走査駆動回路が走査信号S1を「生成」することについての記載はなく、当該走査信号が走査駆動回路においてどのように生成されるのか、そのための具体的な回路構成は明らかではない。また、走査駆動回路がデータ信号(輝度信号)を受信して、画素回路に送信することも一般的ではなく、そのための具体的な構成が不明である。
(2)本願発明の「前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し」という構成について、「第1のデータ信号を前記画素回路に送信」する「タイミング制御」のための「走査駆動回路」の回路構成が、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
すなわち、「走査駆動回路」における「タイミング制御」について、「ステップ402において、送信制御回路は、受信された第1の駆動信号を、前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換して、画素回路に送信する。ステップ403において、走査駆動回路は、第1のデータ信号を画素回路に送信する。ステップ402とステップ403とは、優先順位が限定されず、一般的に特定のタイミングに応じて同時に実行すると考えられる。」(【0033】~【0035】)、「駆動ICは、元のデータ信号の振幅値を信号Y1までに低下させ、該振幅値の具体的な調整値は、該ディスプレイAの型番、ムラ程度等の条件に関連し、具体的な状況に応じてパラメータを調整でき、駆動ICによって、調整され後の信号Y1を走査駆動回路Sに送信し、走査駆動回路Sは、信号Y1をタイミング制御し、ディスプレイの画素回路Mに送信する。」(【0039】)、「具体的には、具体的なタイミング制御は、図3bに示すように、第2の駆動信号S2は、走査駆動回路が送信した走査信号S1及びデータ信号S2と協力してディスプレイにおける画素点を順次走査して、データを書き込む。行同期信号VSの作用は、信号送信端と受信端とを同期させることであり、走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信されたデータ信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行い、同じ行でのディスプレイ画素点を駆動してデータを書き込む過程において、データ信号S2が走査信号S1より遅れる。」(【0042】)等の記載はされているものの、「タイミング制御」のための具体的な回路構成についての記載はない。
(3)本願発明の「前記画素回路は、前記第2の駆動信号を受信し、受信された前記第2の駆動信号及び前記走査駆動回路から送信された第1のデータ信号と走査信号とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御すること」という構成について、「画素回路」に「第1のデータ信号と走査信号」を「送信」するための「走査駆動回路」の回路構成(特に、属性の異なる2つの信号を画素回路に送るための接続態様)が、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
2 進歩性欠如について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(特開2007-127918号公報)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0014】
<1.実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。同図に示されるように、この電気光学装置Dは、発光制御装置1と発光装置2を備える。発光装置2は、複数の画素回路Pを面状に配列してなる表示部10と、各画素回路Pを駆動して階調を制御する駆動回路20とを備える。発光制御装置1は、この駆動回路20の動作を制御する。なお、駆動回路20や発光制御装置1の一部又は全部は、各画素回路Pが配列される基板の表面やこの基板に接合された配線基板にICチップの形態で実装されてもよいし、この基板の表面に作り込まれたスイッチング素子(典型的にはTFT(Thin Film Transistor))によって構成されてもよい。
【0015】
表示部10には、X方向に延在する480本の走査線11と、X方向に直交するY方向に延在する640本のデータ線14とが形成される。また、表示部10には、複数の発光制御線12が形成される。
図3に発光制御線12と画素回路Pを示す。発光制御線12は第1発光制御線12aと第2発光制御線12bとを備える。より詳細には、第1発光制御線12aは、各走査線11と対をなしてX方向に延在する480本の第1発光制御線12a-0~12a-479から構成され、第2発光制御線12bは、240本の第2発光制御線12b-120~12b-359から構成される。第2発光制御線12b-120~12b-359は第1発光制御線12a-120~12a-359と対をなしている。各画素回路Pは、走査線11および発光制御線12の対とデータ線14との各交差に対応した位置に配置される。したがって、これらの画素回路Pは、縦480行×横640列のマトリクス状に配列する。
【0016】
画素回路Pは、後述するようにOLED素子17を含む。OLED素子17の光量は駆動電流によって定まる。また、OLED素子17は発光期間において点灯し、非発光期間において消灯する。発光期間と非発光期間は発光制御信号によって制御される。発光制御信号は、第1発光制御信号Ca-0~Ca-479と第2発光制御信号Cb-120~Cb-359とからなる。第1発光制御信号Ca-0~Ca-479は第1発光制御線12a-120~12a-359を介して画素回路Pに供給され、第2発光制御信号Cb-120~Cb-359は第2発光制御線12b-120~12b-359を介して画素回路Pに供給される。なお、第1発光制御信号と第2発光制御信号とを区別しないときは、単に発光制御信号Cと表記し、発光制御信号が供給される行を[]にて表記する。発光期間と非発光期間の比を発光デューティとしたとき、第1発光制御信号Caは第1発光デューティduty1を指定し、第2発光制御信号Cbは第2発光デューティduty2を指定する。本実施形態では、duty2<duty1となるように設定されている。」
「【0020】
次に、駆動回路20は、走査線駆動回路21とデータ線駆動回路23と発光制御線駆動回路30とを含む。発光制御装置1は、電気光学装置Dの動作のタイミングを規定する各種の信号を駆動回路20に供給することによってこれらの各回路を制御する。さらに、発光制御装置1は、各画素で表示すべき階調を示す表示データGinを補正して、画像データGoutを生成し、これをデータ線駆動回路23に出力する。詳細については後述するが、画像データGoutは、各OLED素子17の輝度(発光期間と非発光期間の平均)が、表示データGinの指示する階調となるように発光デューティに応じて決定される。
【0021】
走査線駆動回路21は、480本の走査線11の各々を順番に選択するための走査信号Y(Y[0]、Y[2]、・・・・・・、Y[479])を各走査線11に出力する回路である。すなわち、走査線駆動回路21は、図6に示されるように、水平同期信号によって規定される水平走査期間(1H)ごとに何れかの走査線11を選択し、この選択した走査線11に供給される走査信号Yをハイレベルに遷移させる一方、非選択の各走査線11に供給される走査信号Yをローレベルに維持する。本実施形態においては、第0行から第479行までの合計480本の走査線11の選択に要する期間を「フレーム期間F」と表記する。
【0022】
データ線駆動回路23は、走査線駆動回路21による選択行に属する各画素回路Pの画像データGoutに応じたデータ信号X(X[0]、X[1]、・・・・・・、X[639])を生成して各データ線14に出力する。データ信号Xは、画像データGoutによって画素回路Pごとに指定される光量に応じた電流信号(電流量Idata)である。一方、発光制御線駆動回路30は、各画素回路Pの発光期間を規定する第1発光制御信号Caおよび第2発光制御信号Cbを生成して第1発光制御線12aおよび第2発光制御線12bに各々出力する。
【0023】
図5に発光制御線駆動回路30の回路例を示す。発光制御線駆動回路30は、第1シフトレジスタ31および第2シフトレジスタ32を備える。第1シフトレジスタ31は、図6に示すように、第1基準信号Carefを水平走査信号HSの立下りエッジのタイミングで順次シフトして、第1発光制御信号Ca[0]~Ca[479]を生成する。この例において、第1発光制御信号Caの第1発光デューティduty1は、duty1=Ta1/(Ta1+Ta2)で与えられ、例えば、80%に設定されている。また、第2シフトレジスタ32は、第2基準信号Cbrefを水平走査信号HSの立下りエッジのタイミングで順次シフトして、第2発光制御信号Cb[120]~Cb[359]を生成する。第2発光制御信号Cbの第2発光デューティduty2は、duty2=Tb1/(Tb1+Tb2)で与えられ、例えば、50%に設定されている。第1発光制御信号Ca[0]~Ca[479]は第1発光制御線12a-0~12a-479に供給される一方、第2発光制御信号Cb[120]~Ca[359]は第2発光制御線12b-120~12a-359に供給される。」
「【0029】
次に、発光制御装置1について説明する。図1に示すように発光制御装置1は、入力インターフェース回路30、発光デューティ制御回路40、および発光輝度制御回路50を備える。入力インターフェース回路30には、外部機器から表示データGin、水平同期信号HS、垂直同期信号VSおよびドットクロック信号CLKが供給される。
【0030】
発光デューティ制御回路40は、第1および第2発光デューティ制御回路41および42を備える。第1発光デューティ制御回路41は、第1領域A1における第1発光デューティduty1を制御する。具体的には、垂直同期信号VSおよび水平同期信号HSに基づいて第1基準信号Carefを生成する。第2発光デューティ制御回路42は、第2領域A2における第2発光デューティduty2を制御する。具体的には、垂直同期信号VSおよび水平同期信号HSに基づいて第2基準信号Cbrefを生成する。
【0031】
発光輝度制御回路50は、第1画像データ変換回路51、第2画像データ変換回路52、および選択回路53を備える。第1画像データ変換回路51は、表示データGinに補正を施して、発光期間における光量を指定する第1画像データGh1を生成する。例えば、表示部10において発光デューティが100%である場合の輝度が600cd/m2であり、表示データGinが8ビットで0~255階調を指定可能である場合を想定する。
また、この場合において、表示データGinの階調と表示部10の輝度の関係は、図7に示すように線形の関係があり階調255のとき200cd/m2であるものとする。第1画像データGh1は、以下の式(1)によって与えられる。
Gh1=(Gin/600)*(200/0.8)・・・(1)
【0032】
また、第2画像データ変換回路52も第1画像データ変換回路51と同様に表示データGinに補正を施して、発光期間における光量を指定する第2画像データGh2を演算によって生成する。第2画像データGh2は、以下の式(2)によって与えられる。
Gh2=(Gin/600)*(200/0.5)・・・(2)
【0033】
つまり、第1および第2画像データGh1およびGh2は、表示データGinを発光デューティに応じて補正したものであり、表示データGinの値が同じであれば、発光期間と非発光期間を平均した輝度が、異なる発光デューティにおいて等しくなるように補正される。このように発光デューティで正規化するように補正したので、発光デューティと発光期間の光量の積が一定となり、所定の輝度を表示することが可能となる。
【0034】
図8に表示データGinと第1および第2画像データGh1およびGh2との関係を示す。この図に示すように第1発光デューティduty1(=0.8)に対応する第1画像データGh1の値は、第2発光デューティduty2(=0.5)に対応する第2画像データGh2の値より小さい。これは、発光期間が長いからである。より具体的には、表示データGinの値が同じとき、Gh2/Gh1=duty1/duty2=1.6となる。これにより、発光デューティが相違しても同じ輝度を表示することが可能となる。つまり、第1画像データGh1と第1発光デューティduty1の積は、第2画像データGh1と第2発光デューティduty1の積は等しくなる。また、この例に示すように周辺に位置する第1領域A1の第1発光デューティduty1は100%未満であることが好ましい。
【0035】
図1に示す選択回路53は、処理の対象となる表示データGinが第1領域A1に属するか第2領域A2に属するかを垂直同期信号VS、水平同期信号HSおよびドットクロック信号CLKに基づいて判別する。そして、選択回路53は、表示データGinが第1領域A1に属する場合は第1画像データGh1を選択し、表示データGinが第2領域A2に属する場合は第2画像データGh2を選択し、これを画像データGoutとしてデータ線駆動回路23に出力する。」
「【図1】
[図:0001382178000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001382178000008.jpg]
」
「【図5】
[図:0001382178000009.jpg]
」
「【図6】
[図:0001382178000010.jpg]
」
「【図8】
[図:0001382178000011.jpg]
」
上記記載内容を総合すれば、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「発光制御装置1と発光装置2を備える電気光学装置Dであって、
発光装置2は、複数の画素回路Pを面状に配列してなる表示部10と、各画素回路Pを駆動して階調を制御する駆動回路20とを備え、
発光制御装置1は、駆動回路20の動作を制御するものであり、
(【0014】、【図1】)
表示部10には、走査線11と、データ線14と、発光制御線12が形成されており、各画素回路Pは、走査線11、発光制御線12、データ線14の各交差に対応した位置に配置されており、(【0015】、【図3】)
画素回路Pは、OLED素子17を含み、
OLED素子17は発光期間において点灯し、非発光期間において消灯するものであって、発光期間と非発光期間は発光制御信号によって制御され、
発光制御信号は、発光制御線12を介して画素回路Pに供給され、発光期間と非発光期間の比を発光デューティとしたとき、発光制御信号は発光デューティを指定するものであり、(【0016】)
駆動回路20は、走査線駆動回路21とデータ線駆動回路23と発光制御線駆動回路30とを含み、
発光制御装置1は、電気光学装置Dの動作のタイミングを規定する各種の信号を駆動回路20に供給することによってこれらの各回路を制御するものであり、
発光制御装置1は、各画素で表示すべき階調を示す表示データGinを補正して、画像データGoutを生成し、これをデータ線駆動回路23に出力するものであり、画像データGoutは、各OLED素子17の輝度(発光期間と非発光期間の平均)が、表示データGinの指示する階調となるように発光デューティに応じて決定され、(【0020】)
走査線駆動回路21は、走査線11の各々を順番に選択するための走査信号Yを各走査線11に出力する回路であり、(【0021】)
データ線駆動回路23は、走査線駆動回路21による選択行に属する各画素回路Pの画像データGoutに応じたデータ信号Xを生成して各データ線14に出力し、データ信号Xは、画像データGoutによって画素回路Pごとに指定される光量に応じた電流信号(電流量Idata)であり、
発光制御線駆動回路30は、各画素回路Pの発光期間を規定する発光制御信号Ca、Cbを生成して発光制御線12a、12bに各々出力し、
(【0022】)
発光制御線駆動回路30は、シフトレジスタ31、32を備え、シフトレジスタ31、32は、基準信号Caref、Cbrefを水平走査信号HSの立下りエッジのタイミングで順次シフトして、発光制御信号Ca、Cbを生成し、発光制御信号Ca、Cbは、発光制御線12a、12bにそれぞれ供給され、(【0023】、【図5】)
発光制御装置1は、入力インターフェース回路30、発光デューティ制御回路40、および発光輝度制御回路50を備え、入力インターフェース回路30には、外部機器から表示データGin、水平同期信号HS、垂直同期信号VSおよびドットクロック信号CLKが供給され、(【0029】)
発光デューティ制御回路40は、発光デューティ制御回路41、42を備え、発光デューティ制御回路41、42は、それぞれ領域A1、A2における発光デューティを制御し、(【0030】)
発光輝度制御回路50は、画像データ変換回路51、52、選択回路53を備え、画像データ変換回路51、52は、表示データGinに補正を施して、発光期間における光量を指定する画像データGh1、Gh2をそれぞれ生成し、(【0031】~【0032】)
画像データGh1、Gh2は、表示データGinを発光デューティに応じて補正したものであり、表示データGinの値が同じであれば、発光期間と非発光期間を平均した輝度が、異なる発光デューティにおいて等しくなるように補正され、発光デューティと発光期間の光量の積が一定となり、所定の輝度を表示することが可能となり、(【0033】、【図8】)
第1発光デューティduty1(=0.8)に対応する第1画像データGh1の値は、第2発光デューティduty2(=0.5)に対応する第2画像データGh2の値より小さく、これは、発光期間が長いからであり(【0034】)、
選択回路53は、表示データGinが領域A1、A2のいずれに属するかを垂直同期信号VS、水平同期信号HSおよびドットクロック信号CLKに基づいて判別するものであり、表示データGinが領域A1に属する場合は画像データGh1を選択し、表示データGinが領域A2に属する場合は画像データGh2を選択し、これを画像データGoutとしてデータ線駆動回路23に出力する、(【0035】)
電気光学装置D。」
(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願の明細書の段落【0042】の記載を参酌すると、「走査駆動回路」は「走査信号S1及びデータ信号S2」を送信し、「走査駆動回路から送信された走査信号S1は、順次にディスプレイ画素点を走査初期化し、走査駆動回路から送信されたデータ信号S2は、順次にディスプレイ画素点に対してデータ書き込みを行」うことから、本願発明の「走査駆動回路」は、走査信号を画素回路に供給する走査線駆動回路であるとともに、データ信号を画素回路に供給するデータ線駆動回路でもあると認められる。
そうすると、引用発明の「走査線駆動回路21」及び「データ線駆動回路23」を組み合わせたものは、本願発明の「走査駆動回路」に相当するといえる。
また、引用発明の「発光制御装置1」、「発光制御線駆動回路30」、「画素回路P」は、それぞれ本願発明の「駆動集積回路」、「送信制御回路」、「画素回路」に相当する。
したがって、引用発明の「発光制御装置1と発光装置2を備える電気光学装置D」は、本願発明の「駆動集積回路、送信制御回路、走査駆動回路及び画素回路を含」む「駆動制御回路」に相当する構成を含んでいる。
イ 引用発明の「発光制御装置1」の「発光デューティ制御回路40」からの「基準信号Caref、Cbref」は、「発光制御線駆動回路30」の「シフトレジスタ31、32」に入力されており、このことは、本願発明の「前記駆動集積回路は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号を生成し、前記第1の駆動信号を前記送信制御回路に送信」することに相当する。
ウ 引用発明の「発光制御装置1」の「発光輝度制御回路50」では、「画像データ変換回路51、52」が「表示データGinに補正を施して、発光期間における光量を指定する画像データGh1、Gh2をそれぞれ生成し」、「選択回路53」が「画像データGh1、Gh2」のいずれかを選択し、「これを画像データGoutとしてデータ線駆動回路23に出力」している。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記駆動集積回路は、出力待ちのデータ信号の振幅値を調整して、第1のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号を前記走査駆動回路に送信」する点で一致する。
エ 引用発明の「走査線駆動回路21」は、「走査線11の各々を順番に選択するための走査信号Yを各走査線11に出力」し、「データ線駆動回路23」は、「走査線駆動回路21による選択行に属する各画素回路Pの画像データGoutに応じたデータ信号Xを生成して各データ線14に出力」しており、これらのことは、本願発明の「前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信」することに相当する。
オ 引用発明の「発光制御線駆動回路30は、各画素回路Pの発光期間を規定する発光制御信号Ca、Cbを生成して発光制御線12a、12bに各々出力し」、「発光制御信号は、発光制御線12を介して画素回路Pに供給され、発光期間と非発光期間の比を発光デューティとしたとき、発光制御信号は発光デューティを指定するもの」であって、この「発光制御線駆動回路30」は、「シフトレジスタ31、32を備え」、「シフトレジスタ31、32は、基準信号Caref、Cbrefを水平走査信号HSの立下りエッジのタイミングで順次シフトして、発光制御信号Ca、Cbを生成」するものであるから、本願発明と引用発明は、「前記送信制御回路は、前記駆動集積回路と前記画素回路との間に接続され、前記第1の駆動信号を受信し、受信された前記第1の駆動信号を、所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換し、前記第2の駆動信号を前記画素回路に送信」することで一致する。
カ 引用発明の「画素回路」の「OLED素子17」の「発光期間と非発光期間」は、「発光制御線12を介して画素回路Pに供給され」る「発光制御信号によって制御され」、「走査線駆動回路21とデータ線駆動回路23と発光制御線駆動回路30とを含」む「駆動回路20」は、「発光制御装置1」により「供給」される「電気光学装置Dの動作のタイミングを規定する各種の信号」によって、これらの各回路が制御される。
また、引用発明の「走査線駆動回路21は、走査線11の各々を順番に選択するための走査信号Yを各走査線11に出力」し、「データ線駆動回路23は、走査線駆動回路21による選択行に属する各画素回路Pの画像データGoutに応じたデータ信号Xを生成して各データ線14に出力し、データ信号Xは、画像データGoutによって画素回路Pごとに指定される光量に応じた電流信号(電流量Idata)」である。
そうすると、これらのことは、本願発明の「前記画素回路は、前記第2の駆動信号を受信し、受信された前記第2の駆動信号及び前記走査駆動回路から送信された第1のデータ信号と走査信号とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御すること」に相当する。
上記ア~カの検討内容をまとめると、本願発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。
[一致点]
「駆動集積回路、送信制御回路、走査駆動回路及び画素回路を含み、
前記駆動集積回路は、出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整して、第1の駆動信号を生成し、前記第1の駆動信号を前記送信制御回路に送信し、且つ、前記駆動集積回路は、出力待ちのデータ信号の振幅値を調整して、第1のデータ信号を生成し、前記第1のデータ信号を前記走査駆動回路に送信し、
前記走査駆動回路は、走査信号を生成し、前記第1のデータ信号を受信してタイミング制御し、タイミング制御後の前記第1のデータ信号を前記画素回路に送信し、
前記送信制御回路は、前記駆動集積回路と前記画素回路との間に接続され、前記第1の駆動信号を受信し、受信された前記第1の駆動信号を、所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換し、前記第2の駆動信号を前記画素回路に送信し、
前記画素回路は、前記第2の駆動信号を受信し、受信された前記第2の駆動信号及び前記走査駆動回路から送信された第1のデータ信号と走査信号とに基づいて、対応する画素ユニットを駆動制御する、駆動制御回路。」
[相違点1]
「駆動集積回路」が「生成」する「第1のデータ信号」について、本願発明では、「出力待ちのデータ信号の振幅値を低くして」生成しているのに対して、引用発明では、振幅値を低くするような調整を行っているのか不明である点。
[相違点2]
「第1の駆動信号」を「変換」した「第2の駆動信号」の「所定のデューティ比」について、本願発明では、「前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい」ものであるのに対して、引用発明では、そのようなものであるか不明である点。
(3)判断
ア 相違点1と相違点2は関連する内容を含むので、以下ではこれらを併せて検討する。
(ア)本願発明の「出力待ちのデータ信号の振幅値を低く」すること、及び、「第1の駆動信号を、前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換」することに関して、本願の明細書の段落【0019】には次の記載がある(下線は当審が付与したものである。)。
「本願では、駆動集積回路11において出力待ちの駆動信号のデューティ比を調整することにより、画素回路の各行にロードされた第2の駆動信号のデューティ比がいずれも高くなり、また、画素回路におけるOLEDが、駆動信号がローレベルになる場合に点灯されることを考慮すると、第2の駆動信号のデューティ比が高くなることは、ローレベルの持続時間が短くなり、即ち、各フレーム内のOLEDの点灯時間が短くなることを意味し、一方で、デューティ比を調整した後のディスプレイ全体の輝度が変化しないことを保証するために、駆動集積回路11は、データを書き込む場合にロードされたデータ信号の振幅値を低くし、単位時間あたりの各OLEDの輝度を向上させることにより、ディスプレイ全体の輝度が変化しないことを保証する。」
(イ)上記記載を参酌すると、本願発明において、「データ信号の振幅値を低く」することは、OLEDの発光輝度が高くなることを意味する。
また、「第1の駆動信号を、前記出力待ちの駆動信号のデューティ比より大きい所定のデューティ比を有する第2の駆動信号に変換」することは、OLEDの点灯時間が短くなることを意味する。
すなわち、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成は、OLEDの点灯時間が短くなることと、発光輝度が高くなることを両立させて、ディスプレイ全体の輝度が変化しないようにしたものである。
(ウ)他方、引用発明では、「画像データGh1、Gh2は、表示データGinを発光デューティに応じて補正したものであり、表示データGinの値が同じであれば、発光期間と非発光期間を平均した輝度が、異なる発光デューティにおいて等しくなるように補正され」るから、発光デューティの設定内容に応じて、発光期間と非発光期間を平均した輝度が変わらないように、画像データの振幅値を調整している。
(エ)具体的な調整方法について、引用文献3の段落【0031】には、
「例えば、表示部10において発光デューティが100%である場合の輝度が600cd/m2であり、表示データGinが8ビットで0~255階調を指定可能である場合を想定する。また、この場合において、表示データGinの階調と表示部10の輝度の関係は、図7に示すように線形の関係があり階調255のとき200cd/m2であるものとする。第1画像データGh1は、以下の式(1)によって与えられる。
Gh1=(Gin/600)*(200/0.8)・・・(1)」
と記載されており、上記式(1)は、発光デューティが80%(duty1=0.8)の場合の画像データが、発光デューティが100%とした場合の画像データ(式(1)の右辺の分母の0.8を1.0に置き換えた場合)よりも大きくなることを意味している。
同様に、段落【0032】の次の式(2)
「 Gh2=(Gin/600)*(200/0.5)・・・(2)」
についても、第2発光デューティが50%(duty2=0.5)の場合の画像データが、発光デューティが100%とした場合の画像データ(式(2)の右辺の分母の0.5を1.0に置き換えた場合)よりも大きくなることを意味している。
(オ)そうすると、本願発明と引用発明は、いずれも発光期間を短くすることと、発光輝度を高くすることを両立させて、ディスプレイ全体の輝度が変わらないようにしている点で共通する。
そして、発光期間を短くするためにデューティ比を大きくしたり、発光輝度を高くするためにデータ信号の振幅値を低くしたりすることは、使用する回路の特性(振幅値、デューティ比と輝度、発光時間との関係)に応じて決定されるべき設計事項である。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果は、引用発明から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上検討したとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-001747