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特許拒絶査定不服審判

2021-001491

銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置

審判番号
2021-001491
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-554604外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年02月03日
審決日
2023年07月06日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-554604「銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日国際公開、WO2019/013163〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2018年(平成30年)7月9日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成29年7月10日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和元年12月 9日 :手続補正書の提出
令和2年 1月14日付け:拒絶理由通知書

同年 3月19日 :意見書及び手続補正書の提出

同年 6月22日付け:拒絶理由通知書

同年 8月19日 :意見書及び手続補正書の提出

同年10月22日付け:拒絶査定

(同年11月 4日 :拒絶査定の謄本の送達)

令和3年 2月 3日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年11月15日付け:審決

(同月30日 :審決の謄本の送達)

同年12月23日 :審決取消訴訟の提起(令和3年(行ケ)第10164号)
令和4年11月16日 :判決言渡(審決取消)
令和5年 1月 6日付け:拒絶理由通知書

同年 3月13日 :意見書、手続補正書の提出

なお、令和5年1月6日付けで当審において通知した拒絶理由を、以下「当審拒絶理由」といい、これに対して、令和5年3月13日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年3月13日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
銅に対する銀の添加量が0.2wt%~15wt%であり、0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である、銅と銀のみ溶解させてなる二元銅銀合金体からなるコンタクトピンであって、
グラフェン又はナノ銀で表面が塗膜処理されているコンタクトピン。」

第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由のうち、本件補正前の請求項1に係る発明に対する理由1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

なお、当審拒絶理由には次の三つの理由が含まれている。

理由1-1:引用文献5に記載された発明を主引用発明とした理由
理由1-2:引用文献9に記載された発明を主引用発明とした理由
理由1-3:引用文献8に記載された発明を主引用発明とした理由

(進歩性の欠如)本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献2 特開2016-142644号公報(周知技術を示す文献)

引用文献5 特開2004-61265号公報

引用文献7 特開2010-286252号公報(周知技術を示す文献)

引用文献8 特開2009-14480号公報

引用文献9 特開2002-71714号公報

引用文献10 国際公開第2016/107756号(周知技術を示す文献)

引用文献11 発表資料「高強度・高導電率銅合金の開発 低濃度のAg添加で世界一の強度・導電率バランスを実現」独立行政法人物質・材料研究機構,平成17年12月5日

第4 引用文献に記載された発明の認定等

1 引用文献5に記載された事項、引用発明5及び技術常識4の認定

(1) 引用文献5に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献5(特開2004-61265号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したもので、以下同様である。

ア 【請求項1】

「【請求項1】
比透磁率が1以上10以下であって、透磁率をμ、電気抵抗率をρ、周波数をfとしたときに、100kHz≦f≦10GHzの範囲でσs=(ρ/πfμ)1/2として表される表皮厚さσsが0.2μm以上1mm以下である合金材料からなる、電気接点用微細部品。」

イ 段落【0001】~【0008】

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気接点用微細部品およびその製造方法に関する。
続きを表示(全21行)
【0002】
【従来の技術】
電気接点用微細部品の一例として、コンタクトプローブがある。コンタクトプローブにおいては、導電性だけでなく、ばね部分の強度が求められるため、ニッケル、コバルト、またはこれらの金属のいずれかを主成分とする合金が用いられていた。たとえば、特開平11-44708号公報では、Ni-Mn合金の層と他の金属の層との組み合わせによってコンタクトプローブを形成することが開示されている。特開2001-116765では、Ni-W合金を母材としてプローブカードピンを形成することが開示されている。特開2001-343397では、コンタクトプローブの材料としてニッケルまたはNi-Co,Ni-W,Ni-Mnなどのニッケル系合金を用いることが開示されている。なお、ニッケル系合金とは、ニッケルを主成分とする合金のことである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、導電体からなる部材に高周波電流を流した場合、その部材の表面近傍にしか電流が流れなくなるという現象が知られており、この現象は「表皮効果」と呼ばれている。この場合、表面近傍の電流が流れる層の厚さを一般的に表皮厚さσsと表す。
【0004】
従来、コンタクトプローブをはじめとする電気接点用微細部品の材料として使用されているニッケルやコバルトは、強磁性体であり、比透磁率がきわめて高い。比透磁率が高いということは、高周波信号を流す際の表皮効果を考えた場合、σs=(ρ/πfμ)1/2として表される表皮厚さσsが小さな値となってしまう。ただし、ρは電気抵抗率、fは周波数、μは透磁率である。表皮厚さσsが小さな値になるということは、高周波信号を流す際の抵抗値が大きく上がってしまう。特にコンタクトプローブなどのように高周波信号を流して用いられる電気接点用微細部品においては、高周波信号入力時の抵抗値増大は発熱をもたらすため、問題となる。さらに、抵抗値の増大は、数GHzというオーダーの高速でパルス信号を連続して入力した場合に、各パルスの波形が鈍くなり、本来別個のパルスであった波形がつながってしまうなどして個々のパルスが区別できなくなるという問題をももたらす。
【0005】
また、ニッケル、コバルトが強磁性体であることから、これらの材料からなる電気接点用微細部品は磁場にさらされると磁化されやすい。近隣に同様の材料の複数の部品が配置されている場合、磁化されてしまうと近隣に存在するこれら複数の部品同士が凝集してしまう傾向がある。凝集すると、本来の性能を発揮できなくなったり、取扱いが困難になったりする。
【0006】
本明細書において「電気接点用微細部品」とは、μmオーダーすなわち1mm未満の構造物であって、電流を流すために他の何らかの部材に接触させるためのものをいうものとする。大きさだけに関していえば、たとえば、全長が1mm未満のものは当然、電気接点用微細部品に該当するし、仮に全体が数十mmと大きくとも一部分に1mm未満の大きさで設計製作された部分を備えていれば、電気接点用微細部品に該当するものとする。
【0007】
そこで、本発明は、高周波電流に対しても抵抗値が増大しない電気接点用微細部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に基づく電気接点用微細部品の一つの局面では、比透磁率が1以上10以下であって、透磁率をμ、電気抵抗率をρ、周波数をfとしたときに、100kHz≦f≦10GHzの範囲でσs=(ρ/πfμ)1/2として表される表皮厚さσsが0.2μm以上1mm以下となるような合金材料からなる。この構成を採用することにより、表皮効果によっても電流が流れる層の厚みが十分あるので、高周波信号を入力しても抵抗値が増大しない電気接点用微細部品とすることができる。」

ウ 段落【0017】~【0021】、【図7】

「【0017】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
(製造方法)
続きを表示(全13行)
図1~図7を参照して、本発明に基づく実施の形態1における電気接点用微細部品の製造方法について説明する。ここでは、電気接点用微細部品としてコンタクトプローブを製作する例を示す。
【0018】
まず、図1に示すように、導電性を有する基板21の上面にレジスト膜22を形成する。基板21としては、SUS,Cu,Alなどの金属基板、Si基板、ガラス基板などが使用可能である。ただし、Si基板、ガラス基板などの場合には、予め基板21の上面に、Ti,Al,Cuまたはこれらを組合せた金属をスパッタリングして表面に下地導電層を形成したものを用いる。
【0019】
ここで、図2に示すように、これから製作しようとするコンタクトプローブの形状を平面的に表現したパターンを有するマスクを用意する。このコンタクトプローブは、長さ1mmのばね部を有し、ばね部の太さは50μmである。このマスク30を用いて、図1に示すように、レジスト膜22の表面にX線23を照射する。ここでは、X線リソグラフィを用いた方法を採用しているが、X線の代りにUV(紫外線)を照射するUVリソグラフィを用いてもよい。いずれにせよ、現像後、露光部分24のレジストを除去する。その結果、図3に示すように、凹部25を有するパターン枠が形成される。
【0020】
図4に示すように、電鋳を行ない、凹部25をCu-Ni合金からなる金属層26で埋める。この電鋳は、硫酸銅、硫酸ニッケル、ピロリン酸、その他添加剤を適量混合しためっき液によって行なうことができる。その後、図5に示すように、上面を研削または研磨し、所望の厚みに揃える。
【0021】
アッシングまたは再照射後の現像によって基板21上に残っていたレジスト膜22を除去し、エッチングなどで基板21を除去する。基板21を除去するためのエッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチングの両方が使用可能である。その結果、図6に示すように、金属層26だけを取出すことによってコンタクトプローブ100の単体が得られる。コンタクトプローブ100は、図7に示すような立体形状をしている。」
「【図7】
[図:0001402016000001.jpg]
」

エ 段落【0038】~【0042】

「【0038】
(実施の形態5)
(構成)
本発明に基づく実施の形態5における電気接点用微細部品として、実施の形態1で説明したのと同じ形状のコンタクトプローブを作成した。形状は図7に示したコンタクトプローブ100と同じであるが、材質は異なり、本実施の形態におけるコンタクトプローブはCu-Ag合金からなる。
続きを表示(全13行)
【0039】
このような材質でコンタクトプローブを得るには、実施の形態1または2で説明した電気接点用微細部品の製造方法において、電鋳の工程の条件を適宜変更すればよい。具体的には、めっき液を実施の形態1または2で示したものに代えて、硫酸銅、メタンスルホン酸銀、ピロリン酸、その他添加剤を適量混合しためっき液とすればよい。また、電鋳の工程での電流の流し方としては、電流密度が10cm2当たり5Aで行なう1秒間の通電と、2秒間の無通電とを1サイクルとして、このサイクルを電鋳生成物が所望の厚さになるまで繰り返して行なう。こうすることによって、結晶の大きさが20nm程度になるように金属層を生成させることができる。
【0040】
こうして得たコンタクトプローブの材料となっている金属の重量構成比はCu:Ag=95:5であり、比透磁率はほぼ1であった。また、電気抵抗率ρは1.7×10-8Ω・mであった。
【0041】
このコンタクトプローブにおいて、周波数fが100kHz以上10GHz以下の範囲の高周波信号を付与して使用することを想定し、上述のμおよびρを代入してこの材料の表皮厚さσsを算出すると、f=100kHzのときσs=0.2mm、f=10GHzのときσs=0.66μmとなるので、表皮厚さσsは、0.66μm以上0.2mm以下となる。
【0042】
(作用・効果)
本実施の形態におけるコンタクトプローブにおいても、実施の形態1におけるコンタクトプローブと同様の効果を得ることができる。」

(2) 図7の記載から認定した事項

引用文献5の【図7】の符号「1」の部分はコンタクトプローブ100の先端部を示していると解されるところ、当該先端部は先細い形状をしているから、引用文献5に記載されたコンタクトプローブはピン状のコンタクトプローブであることが読み取れる。

(3) 引用発明5の認定

前記(1)に摘記した事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、引用文献5には次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明5>

「Cu-Ag合金からなるコンタクトプローブであって、(【0038】)
電鋳の工程において、硫酸銅、メタンスルホン酸銀、ピロリン酸、その他添加剤を適量混合したものをめっき液として、電流密度が10cm2当たり5Aで行なう1秒間の通電と、2秒間の無通電とを1サイクルとして、このサイクルを電鋳生成物が所望の厚さになるまで繰り返して行なうことによって、結晶の大きさが20nm程度になるように金属層を生成させて製造されるものであり、(【0039】)
該コンタクトプローブの材料となっている金属の重量構成比はCu:Ag=95:5であり、(【0040】)
かつ、該コンタクトプローブは、ばね部を有し、ピン状である、(【0019】、【0038】、前記(2)の認定事項)
コンタクトプローブ。」

(4) 技術常識4の認定

前記(1)イに摘記した引用文献5の記載(段落【0002】を参照)に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識4」という。)

[技術常識4]

「コンタクトプローブにおいては、導電性だけでなく、ばね部分の強度が求められること。」

2 引用文献8に記載された事項、引用発明8及び技術常識2の認定

(1) 引用文献8に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献8(特開2009-14480号公報)には、以下の事項が記載されている。

ア 【請求項1】

「【請求項1】
検査対象物の電気的特性を検査するための検査冶具において、
導電性およびバネ性を有する薄板で形成されるとともに上記検査対象物に接触する対象接触部を先端側に有する電気接触子と、上記電気接触子の後端部が接触する電極と、上記電気接触子が遊びのある状態で配置される配置孔が複数形成される配置部材とを備えることを特徴とする検査冶具。」

イ 段落【0001】~【0008】

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板や電子部品等の電気的特性を検査するための検査冶具に関する。
続きを表示(全23行)
【背景技術】
【0002】
一般に、回路基板の配線パターンあるいはIC等の集積回路の短絡や断線等の異常を発見するための電気的検査には、検査対象物に接触する電気接触子を備える検査冶具が使用されている。この種の検査冶具では、一般的に、線状に形成された接触ピンが電気接触子として使用されている。また、電気接触子として、板バネを用いた検査冶具も知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1および2に記載された電気接触子は、2枚の板体と板体間を繋ぐ帯状物とから構成されている。この電気接触子では、一方の板体の端部が検査対象物に接触し、この一方の板体が検査対象物に接触すると、帯状物が弾性変形する。
【0004】
【特許文献1】特開2004-170360号公報
【特許文献2】特開2004-144663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、検査対象物となる回路基板の配線パターンの複雑化や集積回路の高集積化等に伴って、電気接触子が接触する検査対象物側の検査用端子の配置ピッチが狭くなってきている。ここで、板バネを電気接触子として用いる検査冶具では、電気接触子である板バネの厚さを薄くすることで、板バネの厚さ方向での電気接触子の配置ピッチを狭くすることが可能になる。そのため、この検査冶具を用いれば、検査対象物の検査用端子の配置ピッチが狭くなっても、検査対象物の適切な電気的検査を行うことが可能になる。
【0006】
しかしながら、検査用端子の配置ピッチが狭い場合には、電気接触子を精度良く配置しないと、検査対象物の精度の高い電気的検査が困難になる。また、電気接触子の厚さが薄くなると、電気接触子を精度良く配置する組立作業が煩雑となる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、電気接触子の厚さが薄い場合であっても、簡易な組立作業で、電気接触子を精度良く配置することが可能な検査治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、検査対象物の電気的特性を検査するための検査冶具において、導電性およびバネ性を有する薄板で形成されるとともに検査対象物に接触する対象接触部を先端側に有する電気接触子と、電気接触子の後端部が接触する電極と、電気接触子が遊びのある状態で配置される配置孔が複数形成される配置部材とを備えることを特徴とする。」

ウ 段落【0018】~【0021】、【図3】

「【0018】
[実施の形態1]
(検査冶具の構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる検査冶具1を示す正面図である。図2は、図1のE-E方向から検査冶具1を示す図である。図3は、図1に示す検査冶具1の内部構造を説明するための拡大断面図である。図4は、図3のF-F方向から電気接触子2および配置部材4を示す拡大図である。図5は、図3のG方向から電気接触子2の先端側幅狭部2cを示す拡大図である。なお、図2では、一部の電気接触子2および配置孔4aにのみ符号を付している。
【0019】
本形態の検査治具1は、回路基板やIC等の検査対象物(図示省略)の電気的特性を検査して、検査対象物の短絡や断線等の異常を発見するための電気的検査に用いられる。特に、本形態の検査冶具1は、検査対象物に形成される検査用端子の配置ピッチが狭い検査対象物の検査に適している。
【0020】
この検査治具1は、図1~図3に示すように、検査対象物の検査用端子に接触する先端部2aを有する複数の電気接触子2(以下、「接触子2」とする。)と、接触子2の後端部2bのそれぞれが接触する複数の電極3と、複数の接触子2がそれぞれ1枚ずつ配置される配置孔4aが複数形成された配置部材4と、電極3を保持する電極保持部材5と、検査冶具1が搭載される検査装置(図示省略)の本体部と検査治具1とを電気的に接続するための配線部6とを備えている。配線部6は、複数の導線7(図3参照)によって構成されている。
【0021】
接触子2は、導電性およびバネ性を有する薄板で形成されている。たとえば、接触子2は、ニッケル系銅合金等の銅系金属の薄板で形成されている。この接触子2は、非常に薄くかつ非常に小さく形成されている。たとえば、接触子2の厚さ(図3の紙面垂直方向の厚さ)は20μm~50μm程度であり、接触子2の幅(図3の左右方向の幅)は100μm~150μm程度であり、接触子2の長さ(図3の上下方向の長さ)は1mm~1.5mm程度である。」
「【図3】
[図:0001402016000002.jpg]
」

エ 段落【0033】~【0035】

「【0033】
以上のように構成された検査冶具1は、以下のように製造される。
【0034】
まず、電鋳またはエッチング等によって接触子2を形成する。あるいは、レーザ加工またはワイヤー放電加工で接触子2を形成する。また、ダイシングソー等を用いた切削加工で配置部材4の外形を形成するとともに、ドリル等を用いて配置孔4aを配置部材4に形成する。同様に、ダイシングソー等を用いた切削加工で電極保持部材5の外形を形成するとともに、ドリル等を用いて導線7の先端側が挿通される貫通孔を電極保持部材5に形成する。また、電極保持部材5に導線7の先端側を接着固定し、電極3を形成する。
【0035】
その後、図3における上面側から複数の配置孔4aのそれぞれに接触子2を挿入する。その後、電極3が接触子2の後端部2bに接触するように、電極保持部材5を配置部材4に固定して、検査冶具1が完成する。」

オ 段落【0056】~【0060】、【図10】

「【0056】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態1では、先端側幅広部2dと後端側幅広部2fとは、先端側幅広部2dおよび後端側幅広部2fよりも幅の狭い帯状部分がその幅方向で直角状に折れ曲がるとともに略ジグザグ状に配置されて形成された連結部2jによって連結されている。この他にもたとえば、図10(A)、(B)に示す接触子22、32のように、先端側幅広部22d、32dと後端側幅広部22f、32fとは、先端側幅広部22d、32dおよび後端側幅広部22f、32fよりも幅の狭い帯状部分がその幅方向で曲線状に折れ曲がるとともに略ジグザグ状に配置されて形成された連結部22j、32jによって連結されても良い。この場合には、図10(A)に示すように、連結部22jの幅が、先端側幅広部22dおよび後端側幅広部22fの幅と同じであっても良いし、図10(B)に示すように、連結部32jの幅が、先端側幅広部32dおよび後端側幅広部32fの幅より狭くても良い。
【0057】
続きを表示(全11行)
また、図10(C)に示す接触子42のように、先端側幅広部42dと後端側幅広部42fとは、先端側幅広部42dおよび後端側幅広部42fよりも幅の狭い帯状部分が略U形状に形成された連結部42jによって連結されても良い。
【0058】
さらに、図10(D)、(E)に示す接触子52、62のように、先端側幅広部52d、62dと後端側幅広部52f、62fとは、先端側幅広部52d、62dおよび後端側幅広部52f、62fよりも幅の狭い2本の帯状部分で構成される連結部52j、62jによって連結されても良い。この場合には、図10(D)に示すように、2本の帯状部分は、接触子52の幅方向外側に向かって膨らむ曲線状に形成されても良いし、図10(E)に示すように、2本の帯状部分は、接触子62の幅方向内側に向かって窪む曲線状に形成されても良い。
【0059】
さらにまた、図10(F)に示す接触子72のように、先端側幅広部72dと後端側幅広部72fとは、先端側幅広部72dおよび後端側幅広部72fよりも幅の狭い直線状の帯状部分で構成される連結部72jによって連結されても良い。
【0060】
上述した実施の形態1では、後端側幅狭部2eは、後端側幅広部2fの幅方向の略中心位置から後端側に突出するように形成されている。この他にもたとえば、図10(G)に示す接触子82のように、後端側幅狭部82eが、後端側幅広部82fの幅方向端から後端側に突出するように形成されても良い。また、実施の形態1にかかる検査冶具1において、実施の形態2で説明した接触子12を用いても良いし、実施の形態2にかかる検査冶具において、図10(G)に示す接触子82を用いても良い。」
「【図10】
[図:0001402016000003.jpg]
」

(2) 引用発明8の認定

前記(1)に摘記した事項を総合すると、引用文献8には次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明8>

「検査対象物の電気的特性を検査するための検査治具に備えられる、導電性及びバネ性を有する薄板で形成されるとともに上記検査対象物に接触する対象接触部を先端側に有する電気接触子であって、(【請求項1】)
検査治具は、回路基板や電子部品等の電気的特性を検査するためのものであり、(【0001】)
電気接触子は、導電性及びバネ性を有する薄板で形成されており、(【0021】)
かつ、たとえば、ニッケル系銅合金等の銅系金属の薄板で形成されており、(【0021】)
電鋳又はエッチング等によって形成された、(【0034】)
電気接触子。」

(3) 技術常識2の認定

前記(1)ウ、オに摘記した事項によれば、電気接触子の厚さ、幅、長さ、形状が、電気接触子がバネ性を有するように構成されている電気接触子が記載されていることが読み取れる。

したがって、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)

[技術常識2]

「導電性を有する電気接触子について、バネ性を有するような厚さ、幅、長さ、形状とすること。」

3 引用文献9に記載された事項及び引用発明9の認定

(1) 引用文献9に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献9(特開2002-71714号公報)には、以下の事項が記載されている。

ア 【請求項1】~【請求項3】

「【請求項1】 銀原子%が1~25である銅-銀合金を主材料としたプローブカード用プローブピン。
【請求項2】 引張り強さが1000~1500MPaの範囲にあり、かつ、導電率が60~90%IACSの範囲にある請求項1に記載のプローブカード用プローブピン。
【請求項3】 ピン表面の一部または全部に、耐食性を向上させるためのメッキ処理を施したことを特徴とする請求項1または2に記載のプローブカード用プローブピン。」

イ 段落【0001】~【0011】、【図1】

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、集積回路のウエハーテストの導通テストに用いられるプローブカードのプローブのように、比較的低い電圧電流で用いるプローブカード用プローブピン(以下「プローブピン」または「ピン」という)の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】集積回路のウエハーテストにおけるプローブピンは、主としてアルミバンプ用と金バンプ用に大別できる。アルミバンプ用のプローブピンは、比較的硬いタングステン、レニウムタングステンなどの材料を使用する。また、柔かい金バンプ用に使用するプローブピンには、専らベリリウム銅が多用され、他にパラジウム合金のような柔かい材料が使用されている。
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【0003】
【発明が解決しようとする課題】プローブピンの一般形状は、例えば図1(a)に示すように、ストレート部2とテーパ部3とから成るものを、図1(b)のようにテーパ部3の先端部を折り曲げて屈曲部4としたプローブピン1である。ピンの標準的な寸法は、ストレート部の直径が0.05~0.20mm程度で、ピンの全長は20~100mm程度である。上述のように、金バンプ等にはベリリウム銅製のプローブピンが一般に使用されている。しかし、ベリリウム銅は屈曲強度が低いため、ピン先端の曲げ加工時に図1の屈曲部4において割れや折れが発生する事が多く、歩留りが低くなり製造コストに悪影響を与えてきた。
【0004】また、ベリリウム銅は25%IACSと導電率が低く抵抗値が比較的大きいため、プローブカードのように低い電圧電流で用いられる場合でも、ジュール熱による発熱が大きい。従って、高温悪条件下での導通テストになってしまうという問題があり、導通テストの信頼性が低下する問題がある。さらに、熱影響による疲労進行度が速いため、ピンの長寿命化が期待できない。
【0005】本発明は、上述した従来のプローブピンの問題点を解決し、屈曲強度が大きく、導電率が高いプローブピンを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のプローブピンは、銀の比率が1~25原子%である銅-銀合金を使用したものである。これにより、銅-銀合金の性質を有効に生かしたプローブピンとすることができる。すなわち、高い導電率を有すると共に、屈曲強度も十分にある。従って、ジュール熱による発熱を可及的に抑えることができ、また、ピン先端曲げ加工に対しても割れや折れの発生がなく、歩留りを大幅に向上する事が可能となる。また、従来に比べて高電流での導通検査が可能となるため、導通テストの信頼性が大幅に向上する。
【0007】本発明のプローブピンの材料である銅-銀合金において、銀の含有率が少なすぎると強度が不足し、逆に多すぎると加工性が悪くなる。従って、銀の含有率は1~25原子%が好適である。
【0008】また、銅-銀合金の導電率を60~90%IACSとし、かつ、引張り強さを1000~1500MPaに制御するのが好ましい。銅-銀合金においては、一般に銅の比率が高いほど導電率が高くなり、逆に引張り強さは低下する。すなわち、導電率を90%IACSより高くすることは可能であるが、反面引張り強さが低下し強度不足となる。反対に、引張り強さを1500MPa以上にすることは不可能ではないが、反面導電率が低下し加工性も悪くなる。プローブピン用としてバランスの良い導電性と引張り強さの数値関係は請求項2に記載したとおりである。
【0009】また、プローブピン表面の一部又は全部に、耐触性向上のためのメッキ処理を施すのが好ましい。これにより、プローブピンの寿命を可及的に延長することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】連続鋳造-細径加工-熱処理を施した銅-銀合金線を使用し、さらに冷間伸線加工により所望の線径に仕上げた後、真直矯正加工-切断-ピン先端の尖頭加工(機械加工)-メッキを行う事により、高強度、高導電率を併せ持つプローブカードピンを製造することができる。
【0011】ピン表面に施すメッキは、溶融メッキでも電気メッキでもかまわないが、電気メッキの方が好ましい。また、メッキ材質は、例えばニッケル、金などが好適である。また、メッキ厚みは1~5μm程度に制御すればよい。」
「【図1】
[図:0001402016000004.jpg]
」

(2) 引用発明9の認定

前記(1)に摘記した事項を総合すると、引用文献9には次の発明(以下「引用発明9」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明9>

「銀の比率が1~25原子%である銅-銀合金を使用したプローブピンであって、(【0006】)
引張り強さが1000~1500MPaの範囲にあり、かつ、導電率が60~90%IACSの範囲にあり、プローブピン用としてバランスの良い導電性と引張り強さを有し、(【0008】、【請求項2】)
連続鋳造-細径加工-熱処理を施した銅-銀合金線を使用し、さらに冷間伸線加工により所望の線径に仕上げた後、真直矯正加工-切断-ピン先端の尖頭加工(機械加工)を行うことにより製造することができる、(【0010】)
プローブピン。」

4 引用文献2、引用文献7に記載された事項及び技術常識1の認定

(1) 引用文献2に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献2(特開2016-142644号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、平板状被検査体の電気的試験を安定的に実現できる電気的接続装置およびポゴピンに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハに形成された集積回路は、出荷前に、所定の電気的特性を有するか否かの電気的試験(すなわち、集積回路の良否の判定)が実施される。このような試験は、集積回路の電極と試験装置の電気回路とを電気的に接続する電気的接続装置を用いて、1つのウェハの全ての集積回路を、同時に一回で又は複数回に分けて行われる。」
「【0055】
図5は、本発明の実施形態1である電気的接続装置1のオーバードライブ値に対するポゴピンの弾性力を示している。ここで、オーバードライブ値とは、図4(a)に示した弾性圧縮を受けない自由状態から、ポゴピン100をX1方向に押圧した距離のことをいう。」
「【0064】
そのため、例えば、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)を半導体ウェハ28上のICに、4(gf)の弾性力で当接させたい場合には、図5に示すように、ポゴピン100のオーバードライブ値が“170”(μm)になるように、ステージ機構22を上方(電気的接続部16側)へ移動すればよい。」

(2) 引用文献7に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献7(特開2010-286252号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、コンタクトプローブの製造方法およびコンタクトプローブに関するものであり、より特定的には、積層構造を有し、層間の密着性の高いコンタクトプローブの製造方法および当該コンタクトプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICおよびLSIが高密度で実装された電子部品の電気的な検査をするために、多数のコンタクトプローブを配置したプローブカードが使用される。コンタクトプローブは、先端部を電子部品の電極などに接続することにより当該電子部品と電気的に導通する。そして当該コンタクトプローブから電気特性などの各種データを収集する。コンタクトプローブの先端部は尖っており、電極の表面に形成された酸化被膜を破り、電気的な導通を得る。また、検査対象である電子部品の反りおよび電極の高さのばらつきを吸収し、電極との確実な接触を得るため、バネ構造を有する。」
「【0080】
(測定方法・測定結果について)
まずプローブAの一方の針部11(図12参照)に荷重を加えたところ、4gfの荷重により200μm変形した。このときの最大応力は、計算上1200MPaであった。このような加重を2000回繰り返した後において、当該プローブAに破断や剥離などの損傷は認められなった。しかし、当該プローブAの一方の針部11に6gfの荷重を加えると破断した。破断が起こったときに加わっていた最大応力は1800MPaであった。しかし破断の際に第1の金属層と第2の金属層との間に剥離は生じていなかった。」

(3) 技術常識1の認定

前記(1)に摘記した引用文献2の記載及び前記(2)に摘記した引用文献7の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。

[技術常識1]

「集積回路の試験装置において、当接させるコンタクトプローブの変位量を0.2mm程度、コンタクトプローブの荷重を4gf程度とすること。」

5 引用文献10、12に記載された事項及び周知技術1の認定

(1) 引用文献10に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献10(国際公開第2016/107756号)には、以下の事項が記載されている。なお、日本語訳は日本語ファミリー文献である特表2018-508753号公報の対応する記載をそのまま採用した。

ア 14頁18行~15頁16行、FIG.6A~6C

「Suitably, the substrate 11 is made of a conductive material adapted to realize contact probes for a testing head for electronic devices.
More particularly, as shown in the figures 6A-6C, the substrate 11 can be made of a monolayer or multilayer conductive material adapted to realize contact probes for a testing head for electronic devices.
For example, the substrate 11 can be a monolayer made of a metal or a metal alloy selected from nickel or an alloy thereof, such as nickel- manganese, nickel-cobalt, nickel-iron, nickel-beryllium alloys or tungsten or an alloy thereof, such as tungsten-copper, tungsten-rhenium, or copper or an alloy thereof, such as copper-beryllium, copper-silver, copper- niobium, or rhodium or an alloy thereof, such as rhodium-ruthenium, or iridium or an alloy thereof or yet made of a semiconductor material, such as silicon.
In particular, that conductive material is selected so as to have electrical resistivity values less than 20 μΩ/cm.
Alternatively, the substrate 11 can be a conductive multilayer and in particular can include at least one central layer or core 11A covered by one or more coating layers, for example a first coating layer 1 1B and a second coating layer 11C, which are adapted to improve the electro- mechanical performances and/ or the hardness performances of the contact probes realized starting from that multilayer substrate 11, as shown in the figures 6B and 6C.
In particular, the core 11A can be made of a metal or a metal alloy selected from the above mentioned ones for a monolayer substrate 11 and can be covered by one or more coating layers made of a conductive material, having high conductivity values, selected from copper, silver, palladium or alloys thereof or made of graphene and/ or of a conductive material, having high hardness values, selected from rhodium, ruthenium nickel-phosphor, nickel-palladium, palladium and alloys thereof, or made of graphene, or yet made of doped or non-doped DLC ("Diamond Like Carbon").」

<日本語訳>

「【0072】
好適には、基材11は、電子装置用のテストヘッド用のコンタクトプローブを実現するのに適した導電性材料で製造される。
【0073】
より詳細には、図6(A)~図6(C)に示すように、基材11は、電子装置用のテストヘッド用のコンタクトプローブを実現するのに適した単層または多層の導電性材料で作ることができる。
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【0074】
例えば、基材11は、ニッケル-マンガン、ニッケル-コバルト、ニッケル-鉄、ニッケル-ベリリウム合金などのニッケルまたはその合金、タングステン-銅、タングステン-レニウムなどのタングステンまたはその合金、銅-ベリリウム、銅-銀、銅-ニオブなどの銅またはその合金、ロジウム-ルテニウムなどのロジウムまたはその合金、イリジウムまたはその合金から選択される金属または金属合金で製造される、あるいはシリコンのような半導体材料で製造される、単層であり得る。
【0075】
特に、その導電性材料は、20μΩ/cm未満の電気抵抗値を有するように選択される。
【0076】
あるいは、基材11は、導電性多層であってもよく、特に、例えば、図6(B)および図6(C)に示すように、多層基材11から始まって実現されるコンタクトプローブの電気-機械的性能および/または硬度性能を改善するように構成された第1の被膜層11Bおよび第2の被膜層11Cの、1つ以上の被膜層で覆われた少なくとも1つの中央層すなわちコア11Aを含むことができる。
【0077】
特に、コア11Aは、単層基材11用に上記のものから選択された金属または金属合金で作ることができ、さらに、銅、銀、パラジウムまたはこれらの合金から選択される、あるいは、グラフェンで製造される、高導電率値を有する導電性材料で製造される、および/またはロジウム、ルテニウムニッケル-リン、ニッケル-パラジウム、パラジウムおよびこれらの合金から選択される、あるいはグラフェンで製造される、あるいはドープされたまたはドープされていないDLC(ダイヤモンドライクカーボン)で製造される、高硬度値を有する導電性材料で製造される、1つ以上の被膜層によって被覆することができる。」
「図6A~6C
[図:0001402016000005.jpg]
」

イ 17頁23行~18頁5行

「In a preferred embodiment of the invention, schematically shown in Figures 8A-8D, the processing step includes a coating step of the semi- finished product 15 and therefore of all the contact probes 10 included therein.
In particular, the coating step can provide the realization of a coating film made of a coating material selected from a conductive material and a dielectric material.
In case of a conductive coating material, it is possible to use a material having high electrical conductivity values, in particular a metal or a metal alloy selected from palladium or alloys thereof, such as nickel-palladium, copper and alloys thereof, such as copper-niobium or copper-silver, rhodium and alloys thereof, silver or gold or alloys thereof or made of graphene, or even made of doped DLC ("Diamond Like Carbon"). Preferably, the conductive coating material is selected from the noble metals group, more preferably gold.」

<日本語訳>

「【0093】
図8(A)~図8(D)に概略的に示されている本発明の好ましい実施形態では、処理工程は、半製品15、したがって、そこに含まれる全てのコンタクトプローブ10を被膜する工程を含む。
【0094】
特に、被膜工程は、導電性材料および誘電性材料から選択される被膜材料で作られた被膜を実現することができる。
【0095】
導電性被膜材料の場合には、高導電率値を有する材料、特にパラジウムおよびニッケル-パラジウムなどのパラジウム合金、銅および銅-ニオブまたは銅-銀などの銅合金、ロジウムおよびその合金、並びに銀、金およびそれらの合金から選択される金属または金属合金、グラフェン、またはドープされたDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を使用することができる。好ましくは、導電性被膜材料は、貴金属群、より好ましくは金から選択される。」

(2) 引用文献12に記載された事項

本審決において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2015-102553号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。

「【0004】
本発明は、優れた導電性および機械強度を有する被覆プローブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の被覆プローブは、プローブ本体と、クラッド層とを含む。プローブ本体は端部を有する。クラッド層はプローブ本体の端部の表面を覆い、クラッド層はカーボンナノ材料(carbon nano-material)層を含む。」
「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明において、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の具体的詳細を示す。しかしながら、これら具体的詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施され得ることは明らかである。別の場合では、図面を簡潔にするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0015】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る被覆されていないプローブの概略的側面図である。図2は、本発明の1つの実施形態に係る被覆されていないプローブの端部の概略的上面図である。図1および図2を参照すると、被覆されていないプローブは、プローブ本体110を含み、図2に示すように、プローブ本体110は、端部110aを有する。プローブ本体110の端部110aは、4つの凸部(protrusion)112、114、116、および118を含み、端部110aは、蓮の形状(lotus-shaped)である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、プローブ本体110の端部110aによりプローブと試験サンプルが接触していればよい。プローブ本体110の材料は、例えば、金属、合金、またはこれらの組み合わせである。さらに詳しく説明すると、金属は、Cu、Pd、Ag、Au、Re、およびWからなる群より選ばれる。しかしながら、本発明は、プローブ本体110の材料を限定せず、プローブが導電性であればよい。
【0016】
図3は、本発明の第1実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。図4は、図3の点線で示した領域Rの部分的拡大図である。図3および図4を参照すると、本発明の第1実施形態の被覆プローブ10は、プローブ本体110と、クラッド層120とを含む。プローブ本体110は、端部110aを有する。クラッド120は、プローブ本体110の端部110aの表面を覆う。本実施形態において、図4に示すように、クラッド層120は、カーボンナノ材料層122と、疎水層124とを含む。クラッド層120の厚さは、例えば、50nm~1μmまたは50nm~0.5μmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。カーボンナノ材料層122は、カーボンナノ材料122aと、結合基(linking group)122bとを含む。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ10について詳しく説明する。
【0017】
本実施形態において、カーボンナノ材料層122のカーボンナノ材料122aは、例えば、カーボンナノカプセル(carbon nano-capsule)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube, CNT)、グラフェン(graphene)、ダイヤモンドライクカーボン(diamond likecarbon, DLC)、または類似する材料を含む。カーボンナノカプセルの構造は安定的であり、カーボンナノカプセルは溶媒に分散しやすいため、プローブの導電性を上げ、プローブの摩耗度を減らす観点から見ると、カーボンナノカプセルは、カーボンナノ材料122aに適した選択である。カーボンナノカプセルの粒子サイズは、例えば、100nm~10nmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本実施形態において、カーボンナノ材料層122は、さらに、結合基122bを含む。結合基122bは、アミド結合(amide bond)と、メルカプト基(mercapto group)とを含み、カーボンナノ材料122aは、結合基122bのメルカプト基を介して、プローブ本体110の端部110aに結合される。言及すべきこととして、図4において、結合基122bの‐(CH2)nにおけるnは整数であり、1≦n≦4である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
別の実施形態において、カーボンナノ材料122aは、結合基122bを介さずに、端部110aの表面に直接被覆してもよい。本実施形態の被覆プローブ10の端部110aの表面は、カーボンナノ材料層122を有するため、プローブ本体110の端部110aの耐摩耗性を上げ、プローブの導電性を上げることもできる。」
「【図3】
[図:0001402016000006.jpg]
」

(3) 周知技術1の認定

前記(1)に摘記した引用文献10の記載及び前記(2)に摘記した引用文献12の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。

[周知技術1]

「コンタクトプローブの表面にグラフェンの被膜層を設けることにより、導電性を向上させること。」

6 引用文献11、13に記載された事項、引用文献11技術事項、技術常識3及び周知技術2の認定

(1) 引用文献11に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献11(発表資料「高強度・高導電率銅合金の開発 低濃度のAg添加で世界一の強度・導電率バランスを実現」独立行政法人物質・材料研究機構,平成17年12月5日)には、以下の事項が記載されている。

ア 2頁1~21行

「研究の背景
銅や銅合金は電気を通す機器の素材として電線・ケーブル、ロボット駆動用ケーブル、整流子片、モーターコイル、マグネットコイル、リードワイヤー、リードフレーム、導電性バネ材(リレー、コネクター)、超電導線の補強材料など多種多様に利用されており、今日では、さらにそれらの電気、電子機器、機械の軽量化、小型化、薄型化が要求されている。これらの要求を実現するためには高強度・高導電率銅合金の開発が不可欠であった。
図1は一般に使用されている銅合金の強度と導電率を示したものである。図から分かるように、強度(引張強さ)と導電率はトレードオフの関係で、高導電率銅合金では強度が低く、高強度銅合金では導電率が低くなる。(開発が望まれている領域は黄色で示した部分)
当機構は12年前に従来の銅合金よりはるかに強度―導電率バランスが優れた高強度・高導電率Cu-Ag合金を開発した。その特性を従来材と比較して図2(Cu-24wt%Ag合金の例)に示す。この合金はCuに7wt%~45wt%Agを添加することにより初晶CuとCu及びAgの共晶相とを均一且つ微細に晶出させた後、冷間で伸線加工、或いは圧延加工を行うことで初晶及び共晶相をフィラメント状に引き伸ばして強度を向上させ、さらに、加工途中において真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気中で350℃~450℃、1~2hの多段熱処理を施すことにより初晶及び共晶相に固溶しているAg及びCuを析出させて、高強度とともに高導電率を実現している。しかしながら、この場合には7wt%以下のAg添加では強度向上には効果がないとされており、この点で、より少量のAg添加では特性向上が図れないという限界がある。また7wt%以上の多量のAg添加を必須としていることは加工性やコストパフォーマンスの観点から一般汎用分野での利用が制限されるという問題があった。」

イ 2頁32行~3頁6行

「研究成果の内容
本研究は上記の問題点を解決するべくなされたもので、1~6wt%のAgを含有し、残部がCuからなる合金組成の鋳塊を溶製し、800℃、2hの溶体化処理後水焼入れを行い、表面を研削した後、冷間加工を行いその途中で、真空雰囲気又は不活性ガス中で400℃以上550℃未満の温度で再結晶化熱処理を施し、さらに冷間加工をすることにより2wt%Ag の低濃度においても1200MPa、80%IACS以上の従来実現できなかった高強度で高導電率特性を有する銅合金の製造を可能にする。本研究は冷間加工途中で十分再結晶が生じる温度で比較的長時間保持するという、強度を意図した材料を得んとする場合に常識外である熱処理を加えることを特徴の一つとするもので、冷間加工工程中ただ1回の熱処理によって強度はその後の冷間加工度の上昇に伴い急激に向上するとともに、加工度η(但し、η=lnAO/A AO:加工前断面積、A:加工後断面積)が11以上の超強加工域まで中間焼鈍処理なしで加工できるという、従来全く予想出来なかった知見とその確認に基づくものである。」

(2) 引用文献13に記載された事項

本審決において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2007/046378号(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。

「[0001] 本発明は高強度、高導電率を併せ持つCu-Ag合金細線とその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、電子機器の電線・ケーブル、ロボット駆動用ケーブル、小型モーターコイル、小型マグネットコイル、等の導体材料として、さらにはリードワイヤー、導電性バネ材、超電導線の補強材料等として有用な、高強度であって、しかも高い導電率特性を有している新しいCu-Ag合金の細線とその製造方法に関するものである。」

「[0017] 本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
[0018] まず、Cu-Ag合金細線の組成の点では、本発明においてAg添加量は1wt%-10wt%の範囲、より好ましくは、2wt%-6wt%である。1wt%Ag未満では高強度が得られない。10wt%を超える場合、Ag添加量に対する強度の上昇率に対してのコストパフォーマンスが悪い。合金鋳塊のための溶製は各種の手段で行ってよく、たとえば高周波真空溶解炉や、アルゴンあるいは窒素ガス等の不活性ガスを流しながら、大気圧下での溶解等が可能とされる。そして、本発明の製造方法における冷間加工途中での熱処理は再結晶化を可能とする温度において行われる。特に限定的ではなく、Ag組成や加工度によっても相違するが、一般的には、たとえば、400℃以上550℃未満の温度条件が好適に考慮される。400℃未満では再結晶が十分に進まず、Agの析出が生じにくく、その後の冷間加工による強度上昇が低い。550℃以上では、Agの析出量が少なくなり、強度、導電率ともに低下する傾向にある。
[0019] この熱処理のための時間については、一般的には0.5~50時間程度が考慮されるが、処理効率、強度ならびに導電率のバランスからは、6時間以上とすることが好ましい。
そして熱処理は、材料表面の酸化を防ぐために、真空もしくは不活性ガス雰囲気下において行う。銅および銀は比較的酸化しにくいので真空度はロータリポンプのみで引ける、1Pa程度でもよい。不活性ガスとしては、たとえばアルゴン(Ar)や、水素ガス50%+窒素ガス50%のような混合ガスで、10cc/min程度の流量があればよい。
[0020] 本発明の製造方法では、このような熱処理を、冷間加工の途中において行う。この熱処理は1回のみでよい。」
「[0027] 以下の例においては、タンマン炉を用い、グラファイト製るつぼ短冊状(10×10×30)の電気銅を溶解(1080℃)し、粒状の銀を添加して1250℃まで昇温後、グラファイト製鋳型に鋳込むことで合金を溶製して鋳塊としている。
[0028] また伸線のための冷間加工では、鋳塊の表面を1~2mm研削した後、スエージャー加工、その後のドローベンチでのダイス伸線加工を行っている。
[0029] 図1は従来の製造法(特許文献3)と本発明の製造法で加工したCu-3wt%Ag合金の強度と加工度ηの関係を示したものである。従来法では、溶製した鋳塊を、まず加工度η=0.63(50%)まで冷間加工を行い、その後800℃、3hの熱処理を施す(熱処理1:大気中、マッフル炉での溶体化処理)。それに伴い強度は450MPaから250MPaまで低下する。熱処理後、冷間加工をη=1.19(70%)まで行い、再結晶が生じない350℃の低温度で3hの熱処理を施す(熱処理2:真空熱処理炉(1Pa)での時効、析出処理)。熱処理後の強度は441MPaで、熱処理前(428MPa)よりも若干高くなる。2回目の熱処理後加工度η=3.88(97.9%)まで冷間加工を行うことで強度は640MPa程度まで上昇するがその後加工度が増しても、強度は変化しないか或いは低下する。
[0030] 一方、本発明法では、溶製した鋳塊を、加工度η=0.37(30%)まで冷間加工を行い、十分再結晶が生じる温度で比較的長時間保持、すなわち450℃の温度で15hの真空熱処理炉(1Pa)での再結晶化熱処理を施す。この熱処理後の強度は450MPaから250MPaまで低下する。強度は再結晶化熱処理後の冷間加工によって緩やかに上昇するが、加工度η=4.45(98.8%)までは従来法よりも低い。加工度η=4.45(98.8%)以上では、従来法では強度上昇は期待できないが、本発明法では強度が加工度の増加に伴って著しく上昇することがわかる。」

(3) 引用文献11技術事項の認定

前記(1)イに摘記した事項から、引用文献11には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献11技術事項」という。)。

[引用文献11技術事項]

「導電性バネ材などに利用される、高強度で高導電率特性を有するCu-Ag二元合金であって、1~6wt%のAgを含有するもの。」

(4) 技術常識3の認定

前記(1)アに摘記した引用文献11の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識3」という。)。

[技術常識3]

「銅-銀合金において、多量の銀を添加するとコストパフォーマンスの観点から一般汎用分野での利用が制限されること。」

(5) 周知技術2の認定

前記(1)イに摘記した引用文献11の記載及び前記(2)に摘記した引用文献13の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術2」という。)。

[周知技術2]

「銅と銀からなる合金を溶製して製造すること。」

第5 対比・判断

1 引用発明5を主引用発明とした場合について

(1) 対比

ア 対比分析

本願発明と引用発明5を対比する。

(ア) 引用発明5の「コンタクトプローブ」はピン状であるから、本願発明の「コンタクトピン」に相当する。

(イ) 引用発明5のコンタクトプローブの材料となっている金属の重量構成比はCu:Ag=95:5であるから、Cuに対するAgの添加量は、(5/95)×100=約5.3wt%となり、本願発明の「銅に対する銀の添加量が0.2wt%~15wt%であ[る]」範囲に含まれる。

(ウ) そして、引用発明5のコンタクトプローブの材料は「Cu-Ag合金からなる」、すなわち、CuとAgのみからなっており、本願発明と引用発明5は、コンタクトピン(コンタクトプローブ)の材料が、「銅と銀のみからなる二元銅銀合金体からなる」点で共通する。

(エ) 前記(ア)から(ウ)を踏まえると、本願発明と引用発明5は、「銅に対する銀の添加量が0.2wt%~15wt%であり、銅と銀のみからなる二元銅銀合金体からなるコンタクトピンであ[る]」点で共通する。

イ 一致点及び相違点の認定

前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明5は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。

(ア) 一致点

「銅に対する銀の添加量が0.2wt%~15wt%であり、銅と銀のみからなる二元銅銀合金体からなるコンタクトピン」である点。

(イ) 相違点

a 相違点1-1

本願発明においては、コンタクトピンが、「0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である」という変位量と荷重の関係を満たしているのに対し、

引用発明5においては、コンタクトプローブがばね部を有するものの、変位量と荷重の関係が具体的には不明である点。

b 相違点1-2

本願発明においては、「銅と銀のみからなる二元銅銀合金体」が銅と銀のみ「溶解させてなる」ものであるのに対し、

引用発明5においては、「銅と銀のみからなる二元銅銀合金体」が、一実施形態においては「電鋳の工程」によって製造されているため、「銅と銀のみ溶解させてなる」ものであるとはいえない点。

c 相違点1-3

本願発明においては、コンタクトピンが「グラフェン又はナノ銀で表面が塗膜処理されている」のに対し、

引用発明5においては、グラフェン又はナノ銀でコンタクトプローブの表面が塗膜処理されているとの構成を有していない点。

(2) 判断

ア 相違点1-1について

(ア) コンタクトピン(コンタクトプローブ)において、どの程度の荷重をかけたときに、どの程度変位するようにするかは、試験装置のサイズや試験対象の特性などから生じる制約に応じて適宜設定されるべき事項にすぎない。

(イ) そして、「集積回路の試験装置において、当接させるコンタクトプローブの変位量を0.2mm程度、コンタクトプローブの荷重を4gf程度とすること」は、技術常識である(「技術常識1」を参照)。

さらに、導電性を有する電気接触子(コンタクトプローブ)について、バネ性を有するような厚さ、幅、長さ、形状とすることも技術常識である(「技術常識2」を参照)。

(ウ) そうすると、引用発明5において、コンタクトプローブの厚さ、幅、長さ、形状を、荷重が4[gf]のときの変位量を0.2mm程度となるようにすることは当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。

(エ) したがって、「0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である」という相違点1-1に係る事項は、格別なものではない。

イ 相違点1-2について

(ア) 「銅と銀からなる合金を溶製して製造すること」は、本願の優先日前において周知技術である(「周知技術2」参照)。

ここで、「溶製工程」は、「溶解させ[る]」工程を有することは明らかである(この点、前記第4の6(2)において摘記した引用文献13の[0018]の「高周波真空溶解炉」、「大気圧下での溶解」及び[0027]の「電気銅を溶解」を参照。以下同様。)。

(イ)a ここで、電気鋳造法(電鋳)により製造された合金(合金めっき)であっても、通常の鋳造法により製造された合金(鋳造合金)であっても、「合金」であることに違いはない。

b そして、引用発明5で「電鋳」を採用しているのは、マスクのパターンにより所定形状のコンタクトプローブを得るためであると解されるところ、所定形状のコンタクトプローブを得る方法としては、型を使う電鋳に限らず、エッチングやレーザ加工などもよく知られており(必要であれば、前記第4の2(1)エで摘記した引用文献8の段落【0034】参照)、引用発明5において合金の製造方法として型を使う電鋳に限らず、合金の製法として一般的な溶製とエッチングやレーザ加工を組み合わせて用いる手法を採用し得ることは当業者には明らかなことである。

c よって、引用発明5において、「電鋳の工程」により製造する代わりに前記周知技術2を採用し、引用発明5のコンタクトプローブを溶製して製造された銅と銀からなる合金体とすること、すなわち、銅と銀のみ溶解させてなる二元合金体からなるコンタクトプローブとすることは、当業者であれば適宜なし得た設計事項にすぎない。

ウ 相違点1-3について

(ア) 引用文献5の段落【0002】において、「コンタクトプローブにおいては、導電性だけでなく、ばね部分の強度が求められる」と記載されるように、引用発明5が高導電性のコンタクトプローブを得ることを自明の設計指針としていることは、明白である。

(イ) ここで、グラフェンは、機械的、電気的、光学的などさまざまな側面で優れた性質を有し、特に電気的には非常に伝導特性が良い物質であることは電気電子材料を扱う技術分野で広く知られた技術常識であるところ(必要であれば、「日比野,“グラフェン研究への取り組み”,NTT技術ジャーナル,一般社団法人電気通信協会,2013年6月,vol.25 No.6,p.6-8」を参照)、コンタクトプローブの技術分野においても「コンタクトプローブの表面にグラフェンの被膜層を設けることにより、導電性を向上させること」は、本願の優先日前において周知技術である(「周知技術1」参照)。

(ウ) してみれば、引用発明5において、高導電性のコンタクトプローブを得るという自明の設計指針に従って、前記周知技術1を採用し、コンタクトプローブの表面にグラフェンの被膜層を設けること、すなわち、グラフェンで表面が塗膜処理されているように構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

エ 総合評価

前記アからウにおいて検討したとおり、引用発明5において前記相違点1-1から相違点1-3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、前記相違点1-1から相違点1-3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明5、周知技術1、2及び技術常識1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 請求人の主張について

ア 請求人の主張内容

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請求人の主張は、意見書の「1.拒絶理由1-1について」を参照すると、概略次のとおりである。

(ア) 引用発明5は、銅(Cu)と銀(Ag)との構成比が95wt%:5wt%であるにも拘らず、その電気抵抗率ρが1.7×10-8Ω・mであって、本願明細書の[表1]に開示した最大導電率である86%IACSに比して非常に高い。

そうすると、銅銀合金体は導電率と強度とがトレードオフの関係にあるから、引用文献5の銅銀合金体の硬度は、本願発明に係る硬度に比して非常に低く、相対的な視点でいうと、引用文献5に記載されたコンタクトプローブは「超高導電率・超低強度」のもののように評価し得るものであり、引用文献5にはこれを導電率・強度のいずれもバランスよく「高」にしようとする記載も示唆もない。

(イ) 引用発明5は、上記のとおり、98.526%IACSという高さの導電率を有しているから、本願発明のように、更に導電率を高めることを目的としてグラフェンやナノ銀(ナノサイズの銀)で塗膜しようという動機はない。

イ 請求人の主張についての検討

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(ア) 主張(ア)について

引用文献5の段落【0002】において、「コンタクトプローブにおいては、導電性だけでなく、ばね部分の強度が求められる」、段落【0009】において、「この構成を採用することにより、十分な引張強さと硬度を有する電気接点用微細部品とすることができる。」と記載されるように、引用発明5は、高強度、高導電性のコンタクトプローブを得ることを自明の設計指針としていることは明白であり、請求人の「引用文献5にはこれを導電率・強度のいずれもバランスよく「高」にしようとする記載も示唆もない」との主張(ア)は失当である。

(イ) 主張(イ)について

より性能の高いコンタクトプローブを得ることは当業者であれば当然考慮すべきことであって、引用発明5のコンタクトプローブがすでに高い導電率を有するものであるとしても、そのことが更に導電率を高めることの妨げになるとは認められない。

そして、グラフェンが銅や銀よりも高い導電性を有することは技術常識であり、前記のとおり導電性を更に高める観点からグラフェンによる塗膜処理を施す動機付けは存在し、請求人の主張(イ)は採用できない。

2 引用発明8を主引用発明とした場合について

(1) 対比

ア 対比分析

本願発明と引用発明8を対比する。

(ア) 引用発明8の「電気接触子」は、回路基板や電子部品等の電気的特性を検査するための検査治具に備えられ、検査対象物に接触する対象接触部を先端側に有するものであるから、本願発明の「コンタクトピン」に相当する。

(イ) 引用発明8の「電気接触子」は、ニッケル系銅合金等の銅系金属の薄板で形成されているから、前記(ア)を踏まえると、本願発明と引用発明8は、「銅系金属からなるコンタクトピン」である点で共通する。

イ 一致点及び相違点の認定

前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明8は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。

(ア) 一致点

「銅系金属からなるコンタクトピン」である点。

(イ) 相違点

a 相違点2-1

本願発明においては、コンタクトピンが、「0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である」という変位量と荷重の関係を満たしているのに対し、

引用発明8においては、電気接触子は、導電性及びバネ性を有する薄板で形成されているが、変位量と荷重の関係が具体的には不明である点。

b 相違点2-2

本願発明においては、コンタクトピンが、「銅に対する銀の添加量が0.2wt%~15wt%であり」、かつ「銅と銀のみ溶解させてなる二元銅銀合金体からな」るのに対し、

引用発明8においては、電気接触子が、ニッケル系銅合金等の銅系金属から形成されているが、銅と銀のみを所定の割合で溶解させて二元銅銀合金体とするとの構成を有していない点。

c 相違点2-3

本願発明においては、コンタクトピンが、「グラフェン又はナノ銀で表面が塗膜処理されている」のに対し、

引用発明8においては、電気接触子が、グラフェン又はナノ銀でその表面が塗膜処理されているとの構成を有していない点。

(2) 判断

ア 相違点2-1について

(ア) コンタクトピン(電気接触子)において、どの程度の荷重をかけたときに、どの程度変位するようにするかは、試験装置のサイズや試験対象の特性などから生じる制約に応じて適宜設定されるべき事項にすぎない。

(イ) そして、「集積回路の試験装置において、当接させるコンタクトプローブの変位量を0.2mm程度、コンタクトプローブの荷重を4gf程度とすること」は、技術常識である(「技術常識1」を参照)。

さらに、「導電性を有する電気接触子について、バネ性を有するような厚さ、幅、長さ、形状とすること」も技術常識である(「技術常識2」を参照)。

(ウ) そうすると、引用発明8において、電気接触子の厚さ、幅、長さ、形状を、荷重が4[gf]のときの変位量を0.2mm程度となるようにすることは当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。

(エ) したがって、「0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である」という相違点2-1に係る事項は、格別なものではない。

イ 相違点2-2について

(ア) 銅に対する銀の添加量について

a 二元銅銀合金体及び銅に対する銀の添加量の数値範囲の意義

本願の明細書の段落【0020】に「銅に対する銀の添加量は0.2wt%-15wt%の範囲、好ましくは、0.3wt%-10wt%の範囲、より好ましくは0.5wt%-6wt%の範囲としている。これは、銅銀合金板の製造コストの低廉化を考慮すると、銀の添加量は相対的に少ない方が好ましいといえるが、0.5wt%銀未満という少なさでは、コンタクトピン1000に要求される強度が得ることができないことによる。」と記載されているように、本願発明の銅に対する銀の添加量の上限値は製造コストの低廉化を目的に定めたものであり、その下限値は要求される強度を得ることを目的に定めたものである。

また、明細書の段落【0026】には、銅に対する銀の添加量が増加するにつれて、引張強度は増加し、導電率は減少する傾向にあることが、段落【0027】には銅銀合金を用いた導電性部材の用途に応じて、適宜、銅に対する銀の添加量を決定することが記載されている。

b ここで、「コンタクトプローブにおいては、導電性だけでなく、ばね部分の強度が求められること」は、技術常識である(「技術常識4」を参照)。

そして、当該技術常識4を考慮すると、引用発明8においても、高強度、高導電性の電気接触子を得ることを自明の設計指針としていることは明白である。

c 一方、引用文献11には、導電性バネ材などに利用される、高強度で高導電率特性を有するCu-Ag二元合金であって、1~6wt%のAgを含有するものが記載されている(引用文献11技術事項を参照)。

なお、「Cu-Ag二元合金」において「1~6wt%のAg」が含まれているから、Cuに対するAgの添加量は1.01~6.383wt%となる。

d よって、引用発明8において、前記bにおいて説示した自明の設計指針に従って、導電性及びばね部分の強度に優れた電気接触子を得るために、銅系金属として、引用文献11技術事項である高強度で高導電率特性を有する公知の材料を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、前記aのように、銅に対する銀の添加量の数値範囲を定めることにより得られる効果は、引用文献11の開示に照らして格別なものとは認められない。

(イ) 「溶解させてなる」点について

a 「銅と銀からなる合金を溶製して製造すること」は、本願の優先日前において周知技術である(「周知技術2」参照)。

b そして、引用発明8の「電気接触子」は「電鋳またはエッチング等によって形成された」ものであるところ、「エッチング」による形成の場合は、合金の製法として一般的な溶製と組み合わせて用いる手法を採用し得ることは明らかである。よって、引用発明8において、前記周知技術2を踏まえ、製造工程において溶製を採用することは、当業者であれば適宜なし得た設計事項にすぎない。

(ウ) 小括

以上、前記(ア)及び(イ)を踏まえると、相違点2-2に係る構成は、引用発明8、引用文献11技術事項、周知技術2及び技術常識4に基づいて、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。

ウ 相違点2-3について

(ア) 前記イ(ア)bにおいて説示したとおり、引用発明8は、高導電性の電気接触子を得ることを自明の設計指針としている。

(イ) ここで、グラフェンは、機械的、電気的、光学的などさまざまな側面で優れた性質を有し、特に電気的には非常に伝導特性が良い物質であることは電気電子材料を扱う技術分野で広く知られた技術常識であるところ(前記1(2)ウ(イ)参照)、電気接触子の技術分野においても「コンタクトプローブの表面にグラフェンの被膜層を設けることにより、導電性を向上させること」は、本願の優先日前において周知技術である(「周知技術1」参照)。

(ウ) してみれば、引用発明8において、高導電性の電気接触子を得るという自明の設計指針に従って、前記周知技術1を採用し、電気接触子の表面にグラフェンの被膜層を設けること、すなわち、グラフェンで表面が塗膜処理されているように構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

エ 総合評価

前記アからウにおいて検討したとおり、引用発明8において前記相違点2-1から相違点2-3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、前記相違点2-1から相違点2-3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明8、引用文献11技術事項、周知技術1、2及び技術常識1、2、4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 請求人の主張について

ア 請求人の主張内容

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請求人の主張は、意見書の「1.拒絶理由1-3について」を参照すると、概略次のとおりである。

「ニッケル系銅合金」という具体例が示されている引用文献8に接した当業者は、電気接触子が「導電性及びばね性を有する」といっても、二元銅銀合金との対比でいえば、その電気接触子は「超低導電率・超高硬度」のものであると評価する筈であって、そのような合金に対して導電性被膜材料を用いて電気メッキ等により被膜したところで導電率の向上といった観点からすると焼け石に水状態であるから、普通は、この種の電気接触子に対して導電率を向上させる目的で被膜処理をしようと考える筈がない。

つまるところ、引用文献8には「電気接触子」が「グラフェン又はナノ銀で表面が塗膜処理される」ことやその作用等について明示的に述べた記載はなく、引用文献8の記載事項全体を見ても、更に導電性を高めるという観点から改良すべき課題があることを示唆する記載はない。

となれば、引用文献8に接した当業者は、同文献に記載された発明を出発点とするならば、相違点4に係る引用文献11に記載されるような公知の材料を採用しない限り、引用文献10に記載された銀やグラフェンを用いて電気メッキ等により被膜するという発想に至らないというべきであって、引用文献8に記載された発明に基づいて、2つの段階を経て相違点に係る補正後の本願請求項1に係る発明の構成に想到することは格別な努力が必要であるから、当業者にとって容易であるということはできない。

イ 請求人の主張についての検討

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(ア) 引用発明8は、「電気接触子は、導電性およびバネ性を有する薄板で形成されており、かつ、たとえば、ニッケル系銅合金等の銅系金属の薄板で形成されており」と特定されているから、「ニッケル系銅合金」であることは、「たとえば」という語句が示すとおり、あくまで例示にすぎず、「導電性およびバネ性を有する薄板」を形成可能な材料であれば、ニッケルを含有していることは必須ではないと解すべきである。

請求人の主張は、「ニッケル」の含有が必須であることを前提としたものであるから、前提において誤りであって採用できない。

(イ) 引用発明8は、高導電性の電気接触子を得ることを自明の設計指針としているから、電気接触子の導電率が低いことは、むしろ「コンタクトプローブの表面にグラフェンの被膜層を設けることにより、導電性を向上させること」との周知技術1を適用する強い動機付けになるものと認められる。

請求人の主張は、ニッケル系銅合金のような「超低導電率」と評価される合金にグラフェンの被膜層を設けても導電率の向上には寄与しないことを前提とした主張と解されるが、例えば、絶縁体であってもグラフェンの被膜層を設けることで導電率が向上することは自明であることを勘案すれば、当該前提において誤りがあり、採用できない。

3 引用発明9を主引用発明とした場合について

(1) 対比

ア 対比分析

本願発明と引用発明9を対比する。

(ア) 引用発明9の「プローブピン」は、本願発明の「コンタクトピン」に相当する。

(イ) 引用発明9の「プローブピン」は、「銀の比率が1~25原子%である銅-銀合金を使用した」ものであるから、前記aを踏まえると、本願発明と引用発明9は、「銅と銀のみからなる二元銅銀合金体からなるコンタクトピン」である点で共通する。

イ 一致点及び相違点の認定

前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明9は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。

(ア) 一致点

「銅と銀のみからなる二元銅銀合金体からなるコンタクトピン。」

(イ) 相違点

a 相違点3-1

本願発明においては、コンタクトピンが、「0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である」という変位量と荷重の関係を満たしているのに対し、

引用発明9においては、プローブピンの変位量と荷重の関係が具体的には不明である点。

b 相違点3-2

本願発明においては、コンタクトピンが、「銅に対する銀の添加量が0.2wt%~15wt%であり」、「銅と銀のみ溶解させてなる二元銅銀合金体からな」るのに対し、

引用発明9においては、プローブピンが、銀の比率が1~25原子%である銅-銀合金を使用したもの、すなわち、銅に対する銀の添加量が、1.715wt%~56.583wt%である銅銀合金体であり、その下限値は「0.2wt%~15wt%」の範囲内にあるものの、その上限値は上記範囲外にあり、

また、銅と銀のみからなる二元銅銀合金体が、銅と銀のみ溶解させてなるものかどうか明らかではない点。

c 相違点3-3

本願発明においては、コンタクトピンが、「グラフェン又はナノ銀で表面が塗膜処理されている」のに対し、

引用発明9においては、プローブピンの表面がグラフェン又はナノ銀で塗膜処理されているとの構成を有していない点。

(2) 判断

ア 相違点3-1について

(ア) 引用文献9に記載された発明は、集積回路のウエハーテストの導通テストに用いられるプローブピンであり(【0001】参照。)、バネ性が必要であることは自明の課題であるところ、プローブピンにおいて、どの程度の荷重をかけたときに、どの程度変位するようにするかは、試験装置のサイズや試験対象の特性などから生じる制約に応じて適宜設定されるべき事項にすぎない。

(イ) そして、「集積回路の試験装置において、当接させるコンタクトプローブの変位量を0.2mm程度、コンタクトプローブの荷重を4gf程度とすること」は、技術常識である(「技術常識1」を参照)。

さらに、「導電性を有する電気接触子について、バネ性を有するような厚さ、幅、長さ、形状とすること」も技術常識である(「技術常識2」を参照)。

(ウ) そうすると、引用発明9においては、電気接触子の厚さ、幅、長さ、形状を、荷重が4[gf]のときの変位量を0.2mm程度となるようにすることは当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。

(エ) したがって、「0.1[mm]~0.3[mm]の変位量の場合に荷重が4[gf]以下である」という相違点3-1に係る事項は、格別なものではない。

イ 相違点3-2について

(ア) 銅に対する銀の添加量の上限値について

a 本願発明の銅に対する銀の添加量の上限値は、明細書の段落【0020】に「銅に対する銀の添加量は0.2wt%-15wt%の範囲、好ましくは、0.3wt%-10wt%の範囲、より好ましくは0.5wt%-6wt%の範囲としている。これは、銅銀合金板の製造コストの低廉化を考慮すると、銀の添加量は相対的に少ない方が好ましいといえるが、0.5wt%銀未満という少なさでは、コンタクトピン1000に要求される強度が得ることができないことによる。」と記載されているように、製造コストの低廉化を目的に定めたものである。

また、明細書の段落【0026】には、銅に対する銀の添加量が増加するにつれて、引張強度は増加し、導電率は減少する傾向にあることが記載されており、段落【0027】には銅銀合金体を用いた導電性部材の用途に応じて、適宜、銅に対する銀の添加量を決定すればよいことが記載されている。

b ここで、「銅-銀合金において、多量の銀を添加するとコストパフォーマンスの観点から一般汎用分野での利用が制限されること」は技術常識である(「技術常識3」を参照)。

c そして、引用文献9の段落【0008】には、銅-銀合金において、銅の比率が高いほど導電率が高くなり、逆に引張り強さは低下することが記載されている。当該記載及び前記技術常識3を踏まえると、引用発明9において、コスト及び導電率を考慮に入れた上で、銀の添加量について所定の上限値を定めること、また、具体的な上限値として銅に対する銀の添加量を15wt%と定めることは当業者が適宜なすべき設計事項にすぎない。

(イ) 「溶解させてなる」点について

a 引用発明9の「プローブピン」は、「連続鋳造-細径加工-熱処理を施した銅-銀合金線を使用」しているところ、「連続鋳造」は、溶解工程を含む通常の鋳造法による製造を前提としていることは明らかである。

そうすると、引用発明9の「プローブピン」も、「銅と銀のみ溶解させてなる二元合金体からなる」ものであるといえるから、銅と銀のみを「溶解させて」二元銅銀合金体とすることは、実質的な相違点ではない。

b 仮に引用発明9が溶解工程を含む通常の鋳造法による製造を前提としていないとして検討しても、以下の(a)及び(b)に説示するとおり、銅と銀のみ溶解させてなる二元合金体からなるコンタクトプローブとして形成することは、当業者であれば適宜なし得た設計事項にすぎないというべきである。

(a) 「銅と銀からなる合金を溶製して製造すること」は、本願の優先日前において周知技術である(「周知技術2」参照)。

(b) よって、引用発明9において、前記周知技術2を踏まえ、引用発明9のプローブピンの製造工程において溶製工程を採用すること、すなわち、銅と銀のみ溶解させてなる二元合金体からなるコンタクトプローブとして形成することは、当業者であれば適宜なし得た設計事項にすぎない。

(ウ) 小括

以上、前記(ア)及び(イ)を踏まえると、相違点3-2に係る構成は、引用発明9、周知技術2、技術常識3に基づいて、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。

ウ 相違点3-3について

(ア) 引用発明9は、「引張り強さが1000~1500MPaの範囲にあり、かつ、導電率が60~90%IACSの範囲にあり、プローブピン用としてバランスの良い導電性と引張り強さを有し」と特定されており、さらに、引用文献9の段落【0005】に「屈曲強度が大きく、導電率が高いプローブピンを提供することを課題とする」と記載されていることを踏まえると、引用発明9が高導電性のプローブピンを得ることを自明の設計指針としていることは、明白である。

(イ) ここで、グラフェンは、機械的、電気的、光学的などさまざまな側面で優れた性質を有し、特に電気的には非常に伝導特性が良い物質であることは電気電子材料を扱う技術分野で広く知られた技術常識であるところ(前記1(2)ウ(イ)参照)、プローブピンの技術分野においても「コンタクトプローブの表面にグラフェンの被膜層を設けることにより、導電性を向上させること」は、本願の優先日前において周知技術である(「周知技術1」参照)。

(ウ) してみれば、引用発明9において、高導電性のプローブピンを得るという自明の設計指針に従って、前記周知技術1を採用し、プローブピンの表面にグラフェンの被膜層を設けること、すなわち、グラフェンで表面が塗膜処理されているように構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

エ 総合評価

前記アからウにおいて検討したとおり、引用発明9において前記相違点3-1から相違点3-3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、前記相違点3-1から相違点3-3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明9、周知技術1、2及び技術常識1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 請求人の主張について

ア 請求人の主張内容

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請求人の主張は、意見書の「1.拒絶理由1-2について」を参照すると、概略次のとおりである。

本願発明において、グラフェン又はナノ銀を用いる技術的意義は、本願明細書の段落【0045】に記載のとおり、コンタクトピンの導電性を更に高めることにある。

引用文献9には、耐食性を向上させるための「ニッケル、金など」をメッキ材質としてメッキ処理を施すという記載はあるものの、更に導電性を高めるために「グラフェン又はナノ銀」を材料として用いて塗膜処理をするということについての記載も示唆もない。

したがって、本願発明は、引用発明9を出発点として容易に想到し得たものではない。

イ 請求人の主張についての検討

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引用文献9の段落【0005】に「屈曲強度が大きく、導電率が高いプローブピンを提供することを課題とする」と記載されていることを踏まえると、引用発明9が、高導電性のプローブピンを得ることを自明の設計指針としていることは明白であって、引用発明9において、導電性の向上のために周知技術1を採用して、プローブピンの表面をグラフェンを用いて塗膜処理することは当業者であれば適宜なし得たことであることは、前記(2)ウにおいて説示したとおりである。

したがって、請求人の主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明5、引用発明8又は引用発明9のいずれを主たる引用発明としても、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-001491

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