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特許拒絶査定不服審判

2021-000996

端末、基地局及び通信方法

審判番号
2021-000996
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-506558外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年01月25日
審決日
2023年06月12日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .55 -WZ (H04B) / P18 .57 -WZ (H04B) / P18 .113-WZ (H04B) / P18 .121-WZ (H04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-506558「端末、基地局及び通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月22日国際公開、WO2016/148127〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2016年(平成28年)3月15日(優先権主張 平成27年3月16日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 2年 3月30日付け 拒絶理由通知書

5月28日 意見書・手続補正書

10月20日付け 拒絶査定

令和 3年 1月25日 審判請求書・手続補正書

6月 7日 上申書

10月14日付け 拒絶理由通知書

12月14日 意見書・手続補正書

令和 4年 3月 3日付け 拒絶理由通知書(最後)

4月28日 意見書・手続補正書

6月22日付け 拒絶理由通知書

8月25日 意見書・手続補正書

令和 5年 1月25日付け 拒絶理由通知書(最後)

3月28日 意見書・手続補正書

以下では、令和2年10月20日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和5年1月25日付け拒絶理由通知書(最後)で通知された拒絶理由を「当審拒絶理由」といい、令和4年8月25日の手続補正書による補正を「前回補正」といい、令和5年3月28日の手続補正書による補正を「本件補正」という。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正は、以下の(1)に示す本件補正前の請求項1を、以下の(2)に示す本件補正後の請求項1とする補正、すなわち、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「同期信号」を、「参照信号」に変更する補正を含む。

(1)本件補正前の請求項1の記載

前回補正で補正された、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は前回補正での補正箇所を示す。

「【請求項1】
受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報を受信する受信部と、
前記フォーマット情報に基づいて、同期信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する送信部と、
を備え、
前記送信部は、前記受信電力の測定結果の報告において、前記同期信号に関する識別子を含める、
端末。」

(2)本件補正後の請求項1の記載

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。なお、下線は本件補正での補正箇所を示す。

「【請求項1】
受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報を受信する受信部と、
前記フォーマット情報に基づいて、参照信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する送信部と、
を備え、
前記送信部は、前記受信電力の測定結果の報告において、前記参照信号に関する識別子を含める、
端末。」

2 本件補正の目的についての判断

本件補正の目的についての判断は、以下の(1)~(6)のとおりである。

(1)「同期信号」及び「参照信号」の解釈

本願の明細書には、「スモール基地局11、12の各ビームで送信される参照信号(これを発見信号:Discovery Signalという)」(【0021】)との記載がある。該記載によれば、「参照信号」と「発見信号」とは同義と認められる。

また、本願の明細書には、「広ビームに含まれる発見信号を「同期信号」と呼ぶこともできる。」(【0040】)との記載がある。該記載によれば、「同期信号」とは、「発見信号」のうち、「広ビームに含まれる」ものをいうのであって、「発見信号」の全てを指すとは解釈できない。

以上によれば、本件補正前の「同期信号」は、「参照信号」のうち「広ビームに含まれる」ものを指すと解釈され、本件補正後の「参照信号」は、それがどのビームに含まれるかを限定しないものと解釈される。

(2)特許請求の範囲の減縮について

前記(1)の解釈によれば、本件補正は、「広ビームに含まれる」ことが限定された参照信号である「同期信号」を、該限定を削除した「参照信号」に補正するものであるから、本件補正の目的は、特許法17条の2第5項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。

(3)明りょうでない記載の釈明について

本件補正前の「同期信号」の解釈は前記(1)のとおりであり、この解釈は本件の明細書【0040】の記載から明りょうであるから、明りょうな「同期信号」なる記載を補正する本件補正の目的は、同項4号に規定する「明りようでない記載の釈明」にも該当しない。

(4)誤記の訂正について

本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1においては「参照信号」との文言が使用されていたところ、該文言は、審査手続及び審判手続を経て、前回補正で「同期信号」という文言に補正されており、それに続く本件補正は、当該文言を再び「参照信号」という出願当初の文言に補正するのである。

前回補正と同日に提出された意見書では、前回補正の根拠として、「同期信号」と明記された明細書【0040】を挙げていることから、前回補正は文言を「同期信号」に補正することを明確に意図しており、「参照信号」と誤って「同期信号」と補正したものとは認められない。よって、本件補正前の「同期信号」は誤記とは認められない。

したがって、本件補正は誤記を訂正する目的で「参照信号」と補正するものとは認められず、「同期信号」との文言を「参照信号」という文言に戻すことを明確に意図したものであると認められる。よって、本件補正の目的は、同項3号に規定する「誤記の訂正」にも該当しない。

(5)請求項の削除について

本件補正の目的が同項1号に規定する「請求項の削除」に該当しないことは明らかである。

(6)本件補正の目的についての小括

前記(1)~(5)のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反する。

3 独立特許要件についての判断(予備的判断)

前記2のとおり、本件補正は特許法17条の2第5項の規定に違反するが、仮に、本件補正の目的が同項2号(特許請求の範囲の減縮)に該当するとしても、以下の(1)~(5)のとおり、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、前記1(2)に示したとおりであるが、後の参照の便宜のため、以下のように1A~1Dに分説する。

【請求項1】

1A 受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報を受信する受信部と、

1B 前記フォーマット情報に基づいて、参照信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する送信部と、

を備え、

1C 前記送信部は、前記受信電力の測定結果の報告において、前記参照信号に関する識別子を含める、

1D 端末。

(2)引用文献の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定で引用された米国特許出願公開第2014/0192917号明細書(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

以下に示す当審訳は、引用文献の日本語ファミリである特表2016-507961号公報を参照して当審で作成した。

なお、下線は強調のために当審で付した。

ア [0011]

「In another exemplary embodiment, a method for providing feedback by a UE in a wireless communication system is provided. The method includes measuring signals received on a plurality of channel state information reference signal (CSI-RS) ports; selecting a plurality of combinations of the CSI-RS ports; applying a plurality of precoding matrixes to each of the selected combinations of CSI-RS ports; calculating channel quality indicator (CQI) values for each of the applications of precoding matrixes to each of the selected combinations of CSI-RS ports; selecting a selected port number (SPN), a selected port index (SPI), a precoding matrix indicator (PMI) corresponding to one of the plurality of precoding matrixes, and a rank indicator (RI) that yields a highest CQI from among the calculated CQI values, wherein the SPN is a number of selected CSI-RS ports and is equal to the RI, and wherein the SPI includes indices of the selected CSI-RS ports; sending feedback indicating the SPI, the highest CQI value, the PMI, and at least one of the SPN or the RI.」

(当審訳:

さらに別の望ましい実施形態において、無線通信システムにおけるUEがフィードバックを提供する方法が提供される。上記方法は、複数のチャンネル状態情報参照信号(channel state information reference signal:CSI-RS)ポートで受信される信号を測定するステップと、上記CSI-RSポートの複数の組合せを選択するステップと、上記選択されたCSI-RSポートの組合せの各々に複数のプリコーディング行列を適用するステップと、上記CSI-RSポートの選択された組合せの各々に対するプリコーディング行列のアプリケーション各々に対するチャンネル品質指示子(channel quality indicator:CQI)値を計算するステップと、選択されたポート個数(selected port number:SPN)、選択されたポートインデックス(selected port index:SPI)、上記複数のプリコーディング行列のうち一つに対応するプリコーディング行列指示子(precoding matrix indicator:PMI)、及び上記計算されたCQI値のうち最高のCQIを算出するランク指示子(rank indicator:RI)を選択するステップであって、上記SPNは、選択されたCSI-RSポートの個数であり、上記RIと同一であり、上記SPIは、上記選択されたCSI-RSポートのインデックスを含む、ステップと、上記SPI、上記最高のCQI値、上記PMI、及び上記SPN又はRIのうち少なくとも一つを指示するフィードバックを送信するステップとを含む。)

イ [0063]

「FIG. 6 illustrates a design for CSI-RS transmissions in accordance with an embodiment of the present disclosure. In this illustrative embodiment, the base station configures a serving UE with two CSI-RS configurations or two types of configured CSI-RS (e.g., E-CSI-RS and A-CSI-RS wherein “E” and “A” stand for elevation and azimuth respectively) for CSI estimation of an FD-MIMO system or elevation beamforming system. In this example, the E-CSI-RS and the A-CSI-RS are quasi-co-located.」

(当審訳:

図6は、本開示の一実施形態によるCSI-RS送信に対する設計を示している。この例示的な実施形態で、上記基地局は、FD-MIMOシステム又は高度ビームフォーミングシステムのCSI推定のための2つのCSI-RS設定又は2種類の設定したCSI-RS(例えば、E-CSI-RS及びA-CSI-RS、ここで“E”及び“A”の各々は、高度及び方位を示す)を使用してサービングUEを設定する。この例で、上記E-CSI-RS及びA-CSI-RSは、擬似コロケーションしている。)

ウ [0070]

「In another method, the UE may be configured to feedback n indices of the n strongest E-CSI-RS, along with the received signal powers for the n strongest E-CSI-RS. Each received signal power can be quantized as a CQI index. In one example, n=2. This alternative helps the eNB to select an alternative vertical beam to reduce MU interference in MU-MIMO transmissions. In one example, CSI feedback contents may be configured according to Table 2.」

(当審訳:

別の方法で、UEは、n個の最も強いE-CSI-RSのn個のインデックスを、n個の最も強いE-CSI-RSに対する受信信号電力と共にフィードバックするように構成されてもよい。各受信信号電力は、CQIインデックスで量子化され得る。例えば、n=2である。このような代案は、上記eNBが他の水平ビームを選択してMU-MIMO送信でMUインターフェースを減少させることに助けを与える。例えば、上記E-CSI-RSと関連するCSIフィードバックコンテンツは、表2によって構成され得る。)

エ TABLE 2(表2)

[図:0001400868000001.jpg]

(当審訳:

表中1段目:E-CSI-RSに関連する典型的なCSIフィードバック内容
表中2段目左欄:フィードバック情報
表中2段目中欄:ビット数
表中2段目右欄:内容
表中3段目上段左欄:望ましいE-CSI-RSインデックス
表中3段目上段右欄:1番目及び2番目に望ましいE-CSI-RSのポートインデックス…(後略)
表中3段目中段左欄:1番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力
表中3段目下段左欄:2番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力)

表2によれば、「E-CSI-RSに関連する典型的なCSIフィードバック内容」(表中1段目)は、「1番目及び2番目に望ましいE-CSI-RSのポートインデックス」(表中3段目上段右欄)である「望ましいE-CSI-RSインデックス」(表中3段目上段左欄)、「1番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力」(表中3段目中段左欄)及び「2番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力」(表中3段目下段左欄)である。

オ [0106]

「For higher-layer (e.g., RRC) configuration by eNB, the eNB configures SPN for the UE. Based on this configuration (e.g., constraint), the UE may apply any one of the embodiments discussed above with regard to FIGS. 14-18 to derive SPI/CQI/PMI/RI. SPN is signaled by eNB via RRC signaling or is set by a value in the CSI request field in a DCI format triggering an aperiodic CSI report. Table 5 below provides an example CSI request table.」

(当審訳:

eNBによる上位階層(例えば、RRC)設定に対して、上記eNBは、上記UEに対してSPNを設定する。このような設定(例えば、制約)に基づいて、上記UEは、図14~18を参照して上述したような実施形態のうちいずれでも適用してSPI/CQI/PMI/RIを導出することができる。SPNは、RRCシグナリングを通してeNBによりシグナルされるか又は非周期的CSI報告をトリガーするDCIフォーマットに含まれているCSI要求フィールドに含まれる値により設定される。下記の表5は、例示的なCSI要求フィールドを提供する。)

カ [0107]

「In this example, if the CSI request field is set to be ‘01’, then the UE may apply any one of the embodiments discussed above with regard to FIGS. 14-18 to determine SPN/SPI. If the CSI request field is set to be ‘10’, the UE uses the first value of configured SPN, e.g., SPN=1 to determine SPI/CQI/PMI/RI. If the CSI request field is set to be ‘11’, the UE uses the second value of configured SPN, e.g., SPN=2.」

(当審訳:

この例で、上記CSI要求フィールドが‘01’に設定されている場合、上記UEは、図14乃至図18を参照して上述したような実施形態のうちいずれでも適用してSPN/SPIを決定することができる。上記CSI要求フィールドが‘10’に設定されている場合、上記UEは、上記設定されたSPNの第1の値、一例でSPN=1を使用してSPI/CQI/PMI/RIを決定する。上記CSI要求フィールドが‘11’に設定されている場合、上記UEは、上記設定されたSPNの第2の値、一例でSPN=2を使用する。)

(3)引用発明の認定

前記(2)の記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「無線通信システムにおけるUEがフィードバックを提供する方法であって、
上記方法は、複数のチャンネル状態情報参照信号(CSI-RS)ポートで受信される信号を測定するステップと、
SPN、SPIを選択するステップであって、上記SPNは、選択されたCSI-RSポートの個数であり、上記SPIは、上記選択されたCSI-RSポートのインデックスを含む、ステップと、
上記SPI及び上記SPNを指示するフィードバックを送信するステップとを含み、([0011])
基地局は、2種類の設定したCSI-RS(例えば、E-CSI-RS及びA-CSI-RS)を使用してサービングUEを設定し、([0063])
UEは、n個の最も強いE-CSI-RSのn個のインデックスを、n個の最も強いE-CSI-RSに対する受信信号電力と共にフィードバックするように構成されてもよく、([0070])
E-CSI-RSに関連する典型的なCSIフィードバック内容は、1番目及び2番目に望ましいE-CSI-RSのポートインデックスである望ましいE-CSI-RSインデックス、1番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力、及び、2番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力であり、(TABLE 2)
SPNは、DCIフォーマットに含まれているCSI要求フィールドに含まれる値により設定され、([0106])
上記CSI要求フィールドが‘10’に設定されている場合、上記UEは、SPN=1を使用してSPIを決定する。上記CSI要求フィールドが‘11’に設定されている場合、上記UEは、SPN=2を使用する([0107])
方法。」

(4)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 発明特定事項1Aについて

(ア)引用発明における「E-CSI-RSに関連する典型的なCSIフィードバック内容」は、「1番目及び2番目に望ましいE-CSI-RSのポートインデックスである望ましいE-CSI-RSインデックス、1番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力、及び、2番目に望ましいE-CSI-RSの受信信号電力」(TABLE 2)であるから、2個のE-CSI-RSに関連するCSIフィードバック内容であると認められる。

他方、引用発明のUEは、「n個の最も強いE-CSI-RSのn個のインデックスを、n個の最も強いE-CSI-RSに対する受信信号電力と共にフィードバックするように構成されてもよ」い([0070])とされており、フィードバックに係るE-CSI-RSの数は必ずしも2個である必要はないと認められる。

そして、「上記CSI要求フィールドが‘10’に設定されている場合、上記UEは、SPN=1を使用してSPIを決定する。上記CSI要求フィールドが‘11’に設定されている場合、上記UEは、SPN=2を使用する」([0107])とされ、「SPNは、選択されたCSI-RSポートの個数であ」る([0011])から、引用発明のUEは、CSI要求フィールドの値に応じて1個又は2個のE-CSI-RSについてのフィードバックを行うと認められる。

そうすると、引用発明のUEが行う前記「フィードバック」すなわち「CSIフィードバック」は、本件補正発明の「受信電力の測定結果を報告する」ことに相当し、引用発明の「CSI要求フィールド」の値は、引用発明における「CSIフィードバック」の設定を示すもの、すなわち、「CSIフィードバック」のフォーマットを設定する情報であると認められるから、引用発明の「CSI要求フィールド」の値は、本件補正発明の「受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報」に相当する。

(イ)引用発明の「CSI要求フィールド」は、「DCIフォーマットに含まれて」おり([0106])、技術常識によれば、DCIはダウンリンクコントロールインフォメーションのことであって、DCIは基地局からUEへ伝送される情報であると認められる。

したがって、引用発明のUEは、「CSI要求フィールド」が含まれるDCIを受信するための受信部を当然に備えていると認められる。

(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報を受信する受信部」を備える点で一致する。

イ 発明特定事項1Bについて

(ア)引用発明では「基地局は、2種類の設定したCSI-RS(例えば、E-CSI-RS及びA-CSI-RS)を使用してサービングUEを設定」する([0063])から、引用発明のE-CSI-RSはCSI-RSの一種であると解釈される。

よって、引用発明の「CSIフィードバック」に含まれる「E-CSI-RSに対する受信信号電力」は、CSI-RSすなわち参照信号に対する受信信号電力である。

(イ)引用発明は、CSI-RSポートで受信される信号を測定する([0011])から、前記(ア)の「E-CSI-RSに対する受信信号電力」は、CSI-RSポートで受信されたE-CSI-RSを用いて測定した受信電力の測定結果であると認められる。

よって、引用発明の「E-CSI-RSに対する受信信号電力」は、本件補正発明の「参照信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果」に相当し、引用発明の「CSIフィードバック」の内容は、本件補正発明の「参照信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告」に相当する。

(ウ)前記ア(ア)によれば、引用発明の「CSIフィードバック」の内容は、「CSI要求フィールド」の値に基づいて変化するから、引用発明は「CSI要求フィールド」の値に基づいて「CSIフィードバック」の内容を送信すると認められる。

(エ)引用発明のUEは、「CSIフィードバック」の内容をフィードバックするための送信部を当然に備えると認められる。

(オ)前記(ア)~(エ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「前記フォーマット情報に基づいて、参照信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する送信部と、を備え」る点で一致する。

ウ 構成要件1Cについて

引用発明は、「CSIフィードバック内容」には「1番目及び2番目に望ましいE-CSI-RSのポートインデックスである望ましいE-CSI-RSインデックス」が含まれており(TABLE 2)、加えて、引用発明は、「SPI及び上記SPNを指示するフィードバックを送信する」ものであって、「SPIは、上記選択されたCSI-RSポートのインデックスを含む」ものである([0011])。

引用発明の「E-CSI-RSのポートインデックス」、「E-CSI-RSインデックス」及び「CSI-RSポートのインデックス」は、いずれも同一の情報を指すものと解され、これらは、本件補正発明の「CSI-RSに関する識別子」に相当する。

したがって、前記イも踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、「前記送信部は、前記受信電力の測定結果の報告において、前記参照信号に関する識別子を含める」点で一致する。

エ 構成要件1Dについて

引用発明のUEは、明らかに端末であるから、本件補正発明の「端末」に相当する。

(5)独立特許要件についての判断

前記(4)によれば、本件補正発明は、特許法29条1項3号に規定する発明である引用発明と同一であると認められるため、特許法29条1項の規定に違反する。

加えて、引用発明が本件補正発明と同一である以上、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたと認められるため、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

以上によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反する。

4 本件補正についてのむすび

前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反する。

仮に、本件補正の目的が同項2号の規定に適合するとしても、前記3のとおり、同条6項で準用する同法126条7項の規定に違反する。

したがって、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明

本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示したとおりである。

第4 原査定及び当審拒絶理由の概要

1 原査定の概要

原査定の概要は、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に外国において頒布された引用文献(米国特許出願公開第2014/0192917号明細書)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

(新規事項)前回補正(令和4年8月25日付け手続補正書でした補正)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第5 前回補正における新規事項追加についての判断

1 前回補正の内容

前回補正は、請求項1、4及び5並びに【0011】に記載されていた「信号」を「同期信号」に補正するものである。

なお、前回補正後の請求項1の記載は前記第2[理由]1(1)に示すとおりであり、前回補正前の請求項1(令和4年4月28日の手続補正書により補正されたもの)の記載は次に示すとおりである。

【請求項1】

受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報を受信する受信部と、

前記フォーマット情報に基づいて、信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する送信部と、

を備え、

前記送信部は、前記受信電力の測定結果の報告において、前記信号に関する識別子を含める、

端末。

2 当審の判断

以下、前回補正が、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしているかについて、判断する。

(1)請求項1の分説

後の参照の便宜のため、前回補正後の請求項1を以下のように分説する。

A 受信電力の測定結果を報告する設定を示すフォーマット情報を受信する受信部と、

B 前記フォーマット情報に基づいて、同期信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する送信部と、

を備え、

C 前記送信部は、前記受信電力の測定結果の報告において、前記同期信号に関する識別子を含める、

D 端末。

(2)当初明細書等の記載

当初明細書等には、以下の記載がある。

ア 本願の特許請求の範囲の請求項1の記載

本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。

「【請求項1】
基地局とユーザ装置とを備える無線通信システムにおいて前記基地局と通信を行うユーザ装置であって、
前記基地局から送信される複数の第一の参照信号を受信する第一の受信手段と、
前記複数の第一の参照信号が受信される特定のアンテナポート、又は、複数のアンテナポートにより生成される複数の指向性パターンのうち、前記複数の第一の参照信号が受信される特定の指向性パターンを検出する検出手段と、
前記複数の第一の参照信号の各々の受信電力を測定する測定手段と、
前記複数の第一の参照信号の各々の受信電力を、前記複数の第一の参照信号が受信される前記特定のアンテナポート又は前記特定の指向性パターンごとのグループに分けて前記基地局に送信する送信手段と、
を有するユーザ装置。」

イ 本願の出願当初の明細書の記載

本願の出願当初の明細書には、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ装置、基地局及び通信方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は、massive MIMOを適用した多数のスモールセルが存在する通信環境の例を示す図である。図1に示すように、各スモールセルの基地局から多数のビームが送信されている。このような環境においてユーザ装置(UE)が移動しながら通信を行う場合、ユーザ装置は、現在位置に適合した特定のビームを選択するとともに、移動に応じてビームを順次切り替えながら通信を行う。また、massive MIMOにより形成される複数のビームを同時に利用することで、MIMOによる通信を行うことが可能である。
【0007】
続きを表示(全18行)
このような動作を実現するために、ユーザ装置及び基地局は、MIMOによる通信の候補となる複数のビームを決定する必要がある。
【0008】
図2は、課題を説明するための図である。図2(a)の例では、ユーザ装置は、多数のアンテナ素子を有する基地局から送信された2本のビームを同一の方向から受信している。一方、図2(b)の例では、ユーザ装置は、基地局から送信された2本のビームをそれぞれ異なる方向から受信している。
【0009】
ここで、MIMOによる通信の通信品質を向上させるためには、MIMOを構成するチャネル間の相関が低くなるようにするのが望ましい。すなわち、ユーザ装置が複数のビームを同時に利用してMIMO伝送を行う場合、図2(a)のように、同一方向から受信される複数のビームを用いてMIMO伝送を行うよりも、図2(b)のように、異なる方向から受信される複数のビームを用いてMIMO伝送を行うようにするのが望ましい。
【0010】
開示の技術は上記の点に鑑みてなされたものであり、ビームフォーミングを行う基地局とユーザ装置とを有する無線通信システムにおいて、基地局により形成される複数のビームのうち、通信に使用される複数のビームが適切に選択されることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の技術のユーザ装置は、基地局とユーザ装置とを備える無線通信システムにおいて前記基地局と通信を行うユーザ装置であって、前記基地局から送信される複数の第一の参照信号を受信する第一の受信手段と、前記複数の第一の参照信号が受信される特定のアンテナポート、又は、複数のアンテナポートにより生成される複数の指向性パターンのうち、前記複数の第一の参照信号が受信される特定の指向性パターンを検出する検出手段と、
前記複数の第一の参照信号の各々の受信電力を測定する測定手段と、前記複数の第一の参照信号の各々の受信電力を、前記複数の第一の参照信号が受信される前記特定のアンテナポート又は前記特定の指向性パターンごとのグループに分けて前記基地局に送信する送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、ビームフォーミングを行う基地局とユーザ装置とを有する無線通信システムにおいて、基地局により形成される複数のビームのうち、通信に使用される複数のビームが適切に選択されることを可能とする技術を提供することができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。例えば、本実施の形態に係る無線通信システムはLTEに準拠した方式のシステムを想定しているが、本発明はLTEに限定されるわけではなく、他の方式にも適用可能である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「LTE」は、3GPPのリリース8、又は9に対応する通信方式のみならず、3GPPのリリース10、11、12、13、又はリリース14以降に対応する通信方式も含む広い意味で使用する。
【0015】
また、本実施の形態では、基本的に3階層の参照信号の構成を例として示しているが、階層数はこれに限られるわけではなく、階層数が2であってもよいし、階層数が4以上であってもよい。」
「 【0027】
図4に示すように、本実施の形態における参照信号は階層構造になっており、ユーザ装置20は、上位の階層の参照信号から順次下位の階層の参照信号を参照することで、スモール基地局11、12から送信される複数のビームのうちの最適なビームを検知して、当該ビームで所望のデータ信号の受信を行うことができる。このような階層構造を採用することで、効率良くビームの候補を絞ることができ、非常に多くのビームの参照信号をサーチすることなく、迅速に最適なビームの検知や切り替えを行うことが可能である。
【0028】
より具体的には、図4に示す例において、第1階層(First Layer)として、マクロ補助情報がある。前述したとおり、マクロ補助情報は、マクロ基地局10からマクロカバレッジ内のユーザ装置20に送信され、ユーザ装置20は当該マクロ補助情報を用いて、発見信号の受信を行う。」
「 【0032】
第2階層(Second Layer)として、発見信号がある。発見信号は、プリコードされており、広い幅のビーム(以下、「広ビーム」という)と、広ビームより狭い幅で送信されるビーム(以下、「狭ビーム」という)との両方でスモール基地局11、12から送信される信号である。広ビームとは、例えば、図5の左側に示されるように、比較的広範囲に送信される複数のビームである。狭ビームとは、例えば図5の中央及び右側に示すように、広ビームより狭い幅で送信される複数のビームである。
【0033】
各スモール基地局11、12から、複数の広ビーム及び複数の狭ビームの各々で発見信号が送信されており、ユーザ装置20は、マクロ補助情報に基づいて、広ビームに含まれる発見信号を監視及び受信(検知)する。ユーザ装置20は、広ビームに含まれる発見信号を検知すると、更に狭ビームに対応する発見信号をサーチする。狭ビームに対応する発見信号を受信(検知)すると、ユーザ装置20は、検出した1以上の狭ビームに対応する発見信号の受信品質(受信電力等)の測定を行い、測定結果を基地局に送信する。なお、本実施の形態では、特に断らない限り、「受信品質」の用語を、受信電力を含む広い意味で使用する。」
「 【0035】
なお、発見信号に関する情報(系列等)は、各広ビーム及び各狭ビームに対応付けられている。当該情報を「識別子」と称してもよい。すなわち、ユーザ装置20は、基地局から送信される複数の異なる識別子に対応付けられた発見信号の受信品質(受信電力等)を測定することになる。以下の説明において、広ビームに対応付けられる識別子を、「ビームグル―プID」といい、狭ビームに対応付けられる識別子を、「ビームID」という。ビームグループIDにより、広ビームを一意に特定することができ、ビームIDにより、狭ビームを一意に特定することができる。
【0036】
第3階層(Third Layer)として、測定用参照信号がある。測定用参照信号は、狭ビームでスモール基地局11、12から送信される信号である。スモール基地局11、12は、ユーザ装置20から報告された1以上の狭ビームに対応する発見信号の受信品質(受信電力等)に基づいて、測定用参照信号を送信する狭ビームを決定する。スモール基地局11、12は、例えば、最も受信電力が大きい順に複数の狭ビームを、測定用参照信号を送信する狭ビームとすることができる。
【0037】
続いて、スモール基地局11、12は、決定された狭ビーム毎に測定用参照信号を送信する。ユーザ装置20は、各測定用参照信号を受信し、受信品質(受信電力等)の測定を行って、フィードバック情報(例:最も受信電力の高い測定用参照信号の識別情報等)をスモール基地局11、12に返す動作を行う。フィードバック情報を受信したスモール基地局11、12は、フィードバック情報に基づいて、下りデータ信号についてのリンクアダプテーション、ランクアダプテーション、スケジューリング等を行う。」
「【0040】
(各信号の構成例)
本実施の形態では、広ビームに含まれる発見信号は、ユーザ装置20がスモール基地局11、12との同期をとるためにも使用されるようにしてもよい。従って、本実施の形態では、広ビームに含まれる発見信号を「同期信号」と呼ぶこともできる。広ビームに含まれる発見信号には、例えば、同期信号であるPSS(Primary Synchronization signal)/SSS(Secondary Synchronization signal)を用いるようにしてもよい。」
「 【0049】
信号受信部101は、無線で受信する下位レイヤの信号から上位レイヤの情報を取得する。また、信号受信部101は、マクロ基地局10から受信する制御信号等からマクロ補助情報を取得し、当該マクロ補助情報を記憶するとともに、記憶しているマクロ補助情報に基づいて、スモール基地局11から送信される広ビームに含まれる発見信号を受信(検出)する。また、信号受信部101は、例えば、広ビームに含まれる発見信号を用いてシンボルタイミング同期及び無線フレーム同期を行うと同時に信号系列を特定し、特定された信号系列に従って狭ビームに対応する発見信号を受信(検出)する。また、信号受信部101は、スモール基地局11から送信される測定用参照信号を受信する。」
「 【0075】
図11及び図12を用いて具体例を説明する。図12の横軸は、狭ビームを一意に識別するビームIDを示しており、縦軸はRSRP(Reference Signal Received Power)の大きさを表している。Tは所定の範囲を表している。例えば、図12は、図11の受信方向Aから受信される複数の狭ビームに対応する発見信号の受信電力(RSRP)を、ユーザ装置20が測定した結果を表していると仮定する。ユーザ装置20は、例えば、最も受信電力が大きい狭ビーム(図12のA)を選択し、選択した狭ビーム(A)の受信電力から、所定の範囲(T)以内の受信電力である狭ビーム(図12のB~E)を更に選択する。続いて、ユーザ装置20は、選択されたA~Eの狭ビームに関する受信電力と各狭ビームのビームIDとを、ビームセット#1のグループを識別する情報と共にスモール基地局11に送信する。」

(3)当初明細書等の記載事項

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前記(2)の記載によれば、以下の事項が認められる。

ア 「参照信号の階層」について

実施の形態における参照信号の階層は3階層であり(【0015】)、「第1階層」として「マクロ補助情報」があり(【0028】)、「第2階層」として「発見信号」があり(【0032】)、「第3階層」として「測定用参照信号」がある(【0036】)と認められる。

イ 「発見信号」について

当初明細書等の【0032】には、発見信号が、広ビームと、狭ビームとの両方で送信される信号である旨、記載されている。

また、当初明細書等には「ユーザ装置20は、広ビームに含まれる発見信号を検知すると、更に狭ビームに対応する発見信号をサーチする。」(【0033】)と記載されているから、広ビームに含まれる発見信号の検知の後に、狭ビームに含まれる発見信号のサーチが行われると理解される。

そうすると、第2階層の「発見信号」としては、「広ビームに含まれる発見信号」と「狭ビームに含まれる発見信号」との2つがあり、この2つは明確に異なる信号であると認められる。

ウ 「発見信号の受信品質の測定」について

当初明細書等には、狭ビームに含まれる発見信号の受信電力の測定を行い、測定結果の受信電力を、狭ビームのビームIDと、ビームセットのグループを識別する情報とともに、スモール基地局に送信する旨が記載されている(【0033】、【0075】)。

他方、当初明細書等には、広ビームに含まれる発見信号の受信電力を測定することは記載されていない。

エ 「発見信号」の「識別子」について

実施の形態において、「広ビーム」に対応付けられる識別子は「ビームグループID」と称され、「狭ビーム」に対応付けられる識別子は「ビームID」と称される(【0035】)。

オ 「同期信号」について

当初明細書等には、「広ビームに含まれる発見信号を「同期信号」と呼ぶこともできる。」(【0040】)と記載されている。

そして、当初明細書等の「信号受信部101は、例えば、広ビームに含まれる発見信号を用いてシンボルタイミング同期及び無線フレーム同期を行うと同時に信号系列を特定し、」(【0049】)との記載によれば、「広ビームに含まれる発見信号」によってシンボルタイミング同期及び無線フレーム同期を行われるから、これを「同期信号」と呼ぶのだと理解される。

他方、「狭ビームに含まれる発見信号」を用いてシンボルタイミング同期等の同期を行うことは、当初明細書等に記載されていない。

したがって、「同期信号」とは、「広ビームに含まれる発見信号」を意味することはあっても、「狭ビームに含まれる発見信号」を意味することはないと解釈される。

(4)前回補正の請求項1に係る新規事項追加の有無

以下では、前記(2)及び(3)を踏まえて、前回補正の請求項1に係る新規事項追加の有無を検討する。

ア 分説Bについて

前回補正後の請求項1では、分説Bで「同期信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告を送信する」ことが特定されている。

前記(3)オによれば、「同期信号」とは「広ビームに含まれる発見信号」を意味するが、「狭ビームに含まれる発見信号」は意味しない。

そして、当初明細書等の記載は、狭ビームに含まれる発見信号の受信電力の測定を行い、その結果を報告するものを開示するが、前回補正後の請求項1のように、広ビームに含まれる発見信号の受信電力の測定を行い、その結果を報告するものは開示しない。

また、当初明細書等の請求項1及び【0011】を参照すると、「第一の参照信号の各々の受信電力を測定」すること、及び、「第一の参照信号の各々の受信電力を」「送信する」ことについて記載があるが、当初明細書等に具体的に開示された3階層からなる参照信号の形態(前記(3)を参照)を考慮すると、「第一の参照信号」は、第2階層の発見信号のうち「広ビームに含まれる発見信号」のことを指し、「狭ビームに含まれる発見信号」のことを指し得ないと理解される。

そうすると、前回補正のうち請求項1の分説Bに係るものは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

イ 分説Cについて

前回補正後の請求項1では、分説Cで「前記受信電力の測定結果の報告において、前記同期信号に関する識別子を含める」ことが特定されている。

前記(3)オによれば、「同期信号」とは「広ビームに含まれる発見信号」を意味するが、「狭ビームに含まれる発見信号」は意味しない。

そして、当初明細書等の記載は、受信電力の測定結果の報告に、狭ビームに対応する「ビームID」を含めるものを開示するが、前回補正後の請求項1のように、受信電力の測定結果の報告に、広ビームに対応する識別子(ビームグループID)を含めるものは開示しない。

そうすると、前回補正のうち請求項1の分説Cに係るものは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

(5)請求人の主張についての判断

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、以下のアのとおり主張するが、以下のイ~エのとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

ア 請求人は、令和4年8月25日の意見書にて、次のように主張する。

明細書の段落[0015]の「本実施の形態では、基本的に3階層の参照信号の構成を例として示しているが、階層数はこれに限られるわけではなく、階層数が2であってもよい」に基づいて、2階層の参照信号の構成を想定した場合、例えば、「同期信号を用いて測定した前記受信電力の測定結果を含む報告」に基づいて、受信電力の高い順に2以上のビームを選択することで、「異なる方向から受信される複数のビームが、通信に使用される複数のビームとして選択されること」が可能となります。

イ 前記アの請求人の主張を検討するに、当初明細書等には「階層数が2であってもよい」(【0015】)との記載はあるが、その詳細は説明されていない。

当初明細書等に具体的に開示された形態は、参照信号の階層が第1階層から第3階層の3階層であるところ(前記(3)ア)、階層数を2とする場合、3つの階層のうちいずれを削除するのか明らかにされておらず、加えて、いずれかの階層を削除した場合に、どのように測定を行い、どのように測定結果を報告するのかの詳細も説明されていない。

ウ 仮に、「同期信号」すなわち「広ビームに含まれる発見信号」(前記(3)オ)が含まれる第2階層を残して第1階層又は第3階層を削除するのだとしても、第2階層には「狭ビームに含まれる発見信号」という「同期信号」ではない信号が含まれている。

したがって、仮に、第2階層を残して第1階層又は第3階層を削除したとしても、当初明細書等に開示される形態は、依然として、「狭ビームに含まれる発見信号」の受信電力を測定し、その測定結果を送信するもの(前記(3)ウ)にとどまり、「広ビームに含まれる発見信号」の受信電力を測定するものにはなり得ない。

エ 前記イ及びウによれば、前記アの請求人の主張は採用できない。

3 前回補正についての小括

前記2のとおり、前回補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない。

第6 むすび

前記第5のとおり、前回補正は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさないので、本願は拒絶すべきものである。

なお、仮に本件補正が適法であり、本件補正が却下されなかったとしても、前記第2[理由]3に示したとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、原査定のとおり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-000996

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