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特許無効審判

2020-800045

立毛シートの製造方法

審判番号
2020-800045
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2016-252762
登録番号
6304634
請求日
2020年05月11日
審決日
2025年08月29日
公報発行日
2025年11月28日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】白崎ベルベツト工業 有限会社
  • 【請求人代理人】増田 建
  • 【請求人代理人】増田 恵美
  • 【請求人代理人】川崎 仁
  • 【被請求人】有限会社 ブイテック
  • 【被請求人代理人】弁理士法人フェニックス特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 神山 茂樹
  • 審判官 岩谷 一臣
分類
P1113.111-Z (D06C) / P1113.121-Z (D06C) / P1113.152-Z (D06C) / P1113.537-Z (D06C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法123条1項2号特許法123条1項6号特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第38条、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第123条第1項第6号、特許法第24条、特許法第29条第1項第1号、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の特許第6304634号「立毛シートの製造方法」の特許無効審判事件についてされた令和5年2月28日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和05年(行ケ)第10034号、令和6年4月12日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第6304634号の請求項1~4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許6304634号発明の特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項3、請求項4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件特許の出願から設定登録までの経緯 本件無効審判の請求に係る特許第6304634号に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。 平成28年12月27日 :出願 平成30年 2月 5日付け:特許査定 平成30年 3月16日 :設定登録 平成30年10月 3日 :特許異議申立人白崎ベルベツト工業有限会社による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て 平成31年 1月28日付け:「特許第6304634号の請求項1~4に係る特許を維持する。」と結論する異議の決定 2 本件無効審判の手続の経緯 白崎ベルベツト工業有限会社(以下「請求人1」という。)及び土橋誠治(以下「請求人2」という。請求人1及び請求人2を総称して「請求人」ともいうことがある。)から、特許権者である有限会社ブイテックを被請求人とする、本件特許の請求項1~4に係る発明の特許についての本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和2年 5月11日(差出日):審判請求書(以下「請求書」という 。)の提出 令和2年 7月 1日付け :請求人に対する審尋 令和2年 7月17日 :回答書(以下「請求人回答書(1)」という。)の提出(請求人) 令和2年10月14日 :答弁書(以下「答弁書」という。)の提出(被請求人) 令和3年 3月30日付け :請求人及び被請求人に対する審尋 令和3年 5月28日 :回答書(以下「被請求人回答書」という。)の提出(被請求人) 令和3年 5月31日 :回答書(以下「請求人回答書(2)」という。)の提出(請求人) 令和3年 9月14日 :第1回口頭審尋 令和4年 2月16日 :証人尋問申出書の提出(請求人) 令和4年 2月22日 :尋問事項書の提出(請求人) 令和4年 2月24日(差出日):証人尋問申出書及び尋問事項書の提出(被請求人) 令和4年 3月 4日 :上申書(以下「請求人上申書(1)」という。)の提出(請求人1) 令和4年 3月23日付け :審理事項通知 令和4年 3月29日 :口頭審理陳述要領書(1)(以下「請求人要領書(1)」という。)の提出(請求人) 令和4年 4月 1日 :上申書(以下「請求人上申書(2)」という。)の提出(請求人) 令和4年 4月 1日(差出日):口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書」という。)の提出(被請求人) 令和4年 4月 4日(差出日):口頭審理陳述要領書(2)(以下「請求人要領書(2)」という。)の提出(請求人) 令和4年 4月 7日 :上申書(以下「請求人上申書(3)」という。)及び修正した口頭審理陳述要領書(2)の提出(請求人) 令和4年 4月22日 :第1回口頭審理及び証拠調べ(証人尋問) 令和4年 6月 6日 :上申書(以下「請求人上申書(4)」という。)の提出(請求人) 令和4年 6月30日 :上申書(以下「請求人上申書(5)」という。)の提出(請求人) 令和4年 7月 5日 :上申書(以下「請求人上申書(6)」という。)の提出(請求人) 令和4年 9月28日 :上申書(以下「請求人上申書(7)」という。)の提出(請求人) 令和5年 1月13日付け :補正許否の決定 令和5年 2月28日付け :審決(以下「1次審決」という。) 令和6年 3月27日 :1次審決に対する取消判決の言渡(令和5年(行ケ)第10034号) 令和6年 5月26日 :上申書(以下「請求人上申書(8)」という。)の提出(請求人) 令和6年10月25日付け :審理再開通知 令和7年 3月28日付け :審決の予告 なお、審決の予告に対し、被請求人から意見書・訂正請求書の提出はなかった。 第3 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~4の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程と、 前記パイル糸をカットして2枚の立毛シートを形成する切断工程と、 この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程と、 前記立毛シートをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程と、 前記立毛シートを洗浄する精練工程と、 前記立毛シートを染料により着色する染色工程と、 脱水機により前記染料を脱水する脱水工程と、 前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程とを含んで構成されることを特徴とする立毛シートの製造方法。 【請求項2】 蒸し工程において、スチーマー内で立毛シートを垂下させた状態で配置して蒸すことを特徴とする請求項1記載の立毛シートの製造方法。 【請求項3】 乾燥工程において、タンブラーにより回転させながら立毛シートを熱風で乾燥させることを特徴とする請求項1または2記載の立毛シートの製造方法。 【請求項4】 切断工程後のパイル糸の長さを、織物基布から3~10mmの範囲で突出させることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の立毛シートの製造方法。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求書に添付して、甲第1-1号証~甲第15号証を提出し、請求人回答書(1)に添付して甲第16号証を提出し、請求人回答書(2)に添付して甲第17-1号証~甲第28-2号証を提出し、請求人要領書(1)に添付して甲第29-1号証~甲第39号証を提出し、請求人要領書(2)に添付して甲第40号証~甲第48号証を提出し、請求人上申書(5)に添付して甲第49号証~甲第55号証を提出し、請求人上申書(6)に添付して参考 資料1-1~参考資料3を提出し、請求人上申書(8)に添付して甲第56号証~甲第140号証を提出し、大要、以下の無効理由を主張している(第1回口頭審理調書請求人欄「3」)。 なお、甲第1-1号証等を「甲1-1」等と略記する。 (1)無効理由1(甲11に記載された発明及び甲12に記載された事項に基づく進歩性欠如) 本件発明1~4は、甲11に記載された発明及び甲12に記載された事項に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)無効理由2(サポート要件違反) 本件発明1には、「パイル糸」について繊維の素材の限定がなく、木綿等の熱収縮を起こさない繊維までもが含まれているため、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)無効理由3(公知公用発明に基づく新規性、進歩性欠如) 本件発明1~4は、甲2から、平成26年7月頃には公知公用となったものであり、本件発明1~4は、公知公用発明である又は公知公用発明から当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。 (4)無効理由4(冒認出願ないし共同出願要件違反) 本件発明1~4は、請求人2である土橋誠治が発明したもので、当該発明について特許を受ける権利の一部を請求人1である白崎ベルベツト工業有限会社に譲渡したものであり、本件発明1~4に係る特許は、被請求人が請求人に無断でした出願に係るものであるから、特許法第123条第1項第6号に該当し、あるいは、特許法第38条の規定に違反してされたものである。 (5)令和5年1月13日付け補正許否の決定について 請求人は、請求人上申書(5)及び請求人上申書(6)において、甲54-1、甲54-2及び甲55を提出し、本件発明1は、昌和染織において公然と実施され又は知られた染色工程、及び周知技術に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の無効理由を追加した。 当該無効理由の追加は、請求の理由の要旨を変更する補正に該当し、請求書に記載した請求の理由に加えて、新たな無効理由を審理することは、追加的に新たな審理が必要となり、審理を遅延させるおそれがないことが明らかであるとはいえないため、当該無効理由を追加する請求の理由の補正は許可しない決定をした。 2 証拠方法 請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。 また、請求人の申出により、本件特許に係る発明者である長谷川俊明を証人とする証人尋問を行った。 (1)文書等 甲1-1:土橋誠治、「陳述書」、令和元年12月23日 甲1-2:“新栄染色 福井で操業開始 複合からベルベットまで”の見出しの新聞記事、繊研新聞、2006年(平成18年)8月3日号、繊研新聞社 甲2:玉村和夫(白崎ベルベツト工業有限会社)、「生産工程説明書」、平成26年6月17日 甲3-1:西野志郎、平井邦夫、陳述書「蒸気室の件」、令和元年10月7日 甲3-1a:蒸し箱の設置の写真、平成27年5月26日、平成29年1月5日及び令和元年11月、撮影者:西野志郎、撮影場所:白崎ベルベツト工業有限会社 甲3-1b:玉村和夫(有限会社ブイテック)、「請求書」、平成27年1月27日 甲3-1c:IWAKI(いわき)、「請求書」、平成27年6月20日、「領収証」、平成27年7月10日、「請求書」、平成27年8月20日、「領収証」、平成27年10月30日、タマムラカズオ(ユウゲンガイシャブイテック)、「振込受付書」、平成27年9月15日 甲3-1d:西野指物、「請求書」、平成27年5月30日、「領収証」、平成27年5月25日、「領収証」、平成27年6月12日、平井工業所、「請求書」、平成27年6月20日 甲3-2:丸平染色株式会社、「減価償却内訳表」、平成26~29年度 甲4-1:白崎ベルベツト工業有限会社、「納品書(控)」、平成28年1月21日、平成28年1月22日、平成28年3月15日 甲4-2:丸平染色株式会社、「入・出・返荷案内書(控)」、平成28年12月9日、平成28年12月2日 甲5-1:有限会社ブイテック、「通知書」、平成30年7月27日 甲5-2:有限会社ブイテック、「通知書」、平成30年7月27日 甲6Aa-1~甲6Aa-3:カッター付き織機の写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト工業有限会社 甲6Ab-1~甲6Ab-2:カッター付き織機の写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト工業有限会社 甲6Ac-1~甲6Ac-6:蒸し箱の写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲6Bd-1~甲6Bd-3:ピン方式ヒートセッターの写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲6Be-1~甲6Be-3:ウインス機の写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲6Bf-1:ウインス機の写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲6Bg-1~甲6Bg-2:脱水機の写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲6Bh-1~甲6Bh-2:タンブラーの写真、令和元年8月26日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲7:有限会社コター繊工、「請求書」、平成29年1月20日 甲8:公証人齊木敏文、「事実実験公正証書」、令和元年10月15日 甲9:玉村和夫(白崎ベルベツト工業有限会社)、「陳述書」、令和元年12月23日 甲10:樋勝美(丸平染色株式会社)、「陳述書」、令和元年12月23日 甲11:特開昭64-40637号公報 甲12:特開昭62-191566号公報 甲13:特開昭59-20123号公報 甲14:武部猛、「改訂新版 捺染技術のすべて」、繊維社、昭和54年8月10日改訂新版発行、40ページ 甲15:星野慶司・阿部格、「増補改訂版 合繊の染色設備」、繊維社、昭和46年1月16日発行、77~83ページ 甲16:土橋誠治、白崎ベルベツト工業有限会社、「宣誓書」、令和2年7月10日 甲17-1:星野慶司・阿部格、「増補改訂版 合繊の染色設備」、繊維社、昭和46年1月16日発行、416ページ 甲17-2:井上重由編、「実用染色講座」、株式会社色染社、昭和55年1月10日、287ページ 甲18:玉村和夫(白崎ベルベツト工業有限会社)、「確認書」、令和3年5月17日 甲18-1:玉村和夫、「甲第11号証 実施例1」図面、令和3年5月17日 甲18-2:玉村和夫、「本件特許 請求項4」、令和3年5月17日 甲19:ウィキペディア、「ベルベット」、令和3年5月21日、<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルベット> 甲20:化学繊維の用語集、「精練」、日本化学繊維協会、令和3年5月20日 甲21:特許第2973042号公報 甲22:長谷川諭、「ビロードについて」、1、23~30ページ 甲23:「織物組織 改訂版」、実教出版株式会社、昭和47年2月25日、102~115ページ 甲24:福井県ビロード織物協同組合、「VELVET Select88 SAMPLE Vol.1」、1988年(昭和63年)、14ページ 甲25:高橋徳之(日繊開発センター)、「ベルベット2重織物について」、令和3年5月25日 甲26-1:玉村和夫(有限会社ブイテック)、書面、平成25年12月3日 甲26-2:(有)ブイテック、ファクシミリ、2013年(平成25年)12月3日 甲26-3:橋本徹(株式会社タイキ)、佐々木講一(株式会社タイキ)の名刺 甲27-1:武縄広二(ダイエー株式会社)、「化粧パフ用ベルベットについて(ご報告)」、2021年(令和3年)5月27日 甲27-2a:有限会社ブイテック、「出荷明細書」、平成27年10月2日 甲27-2b:ダイエー株式会社、「売上伝票」、2015年(平成27年)10月2日 甲27-3a:有限会社ブイテック、「出荷明細書」、平成27年12月7日 甲27-3b:ダイエー株式会社、「売上伝票」、2015年(平成27年)12月7日 甲27-4a:有限会社白崎ベルベツト工業、「出荷明細書」、平成29年3月7日 甲27-4b:ダイエー株式会社、「売上伝票」、2017年(平成29年)3月7日 甲27-5a:有限会社白崎ベルベツト工業、「出荷明細書」、平成29年3月27日 甲27-5b:ダイエー株式会社、「売上伝票」、2017年(平成29年)3月27日 甲28-1:代理人増田健、「回答書」、平成30年8月29日 甲28-2:代理人増田健、「回答書」、平成30年8月29日 甲29-1:文化出版局、「服飾辞典」、文化出版局、昭和54年3月5日第1刷発行、712ページ 甲29-2:文化出版局、「服飾辞典」、文化出版局、昭和54年3月5日第1刷発行、801ページ 甲30:特開平8-134754号公報 甲31:新村出、「広辞苑」、岩波書店、1993年(平成5年)9月10日第四版第三刷発行、2495ページ 甲32-1:松尾達樹、「合成繊維のヒート セット性」、繊維工学、Vol.20、No.10、昭和42年10月20日、763~770ページ 甲32-2:小崎輝郎、「合成繊維のヒート セットに要する物理的条件」、繊維工学、Vol.20、No.10、昭和42年10月20日、787~792ページ 甲33:特公昭62-1032号公報 甲34:特開2015-214772号公報 甲35:特開2013-87401号公報 甲36:特開平11-269777号公報 甲37:特開平7-292568号公報 甲38:特開昭61-252341号公報 甲39:特開平6-184928号公報 甲40:有限会社ブイテック、パンフレット「V TEX’S CO.,LTD」、平成21年 甲41:有限会社ブイテック、ダイエー株式会社代表取締役社長小辻寛明宛ての書面、平成30年10月24日 甲42:丸平染色株式会社、帳簿、平成28年8月~平成29年2月 甲43-1:有限会社ブイテック、丸平染色(株)宛ての加工指図書(加工指図No.VH-0218)、平成29年2月2日 甲43-2:有限会社白崎ベルベツト工業、丸平染色(株)宛ての加工指図書(加工指図No.VH-0219)、平成29年2月7日 甲43-3:有限会社白崎ベルベツト工業、丸平染色(株)宛ての加工指図書(加工指図No.VH-0220)、平成29年2月7日 甲44:丸平染色株式会社、有限会社ブイテック宛ての請求書(控え用)、平成28年12月28日 甲45-1:丸平染色株式会社、(有)ブイテック宛て入・出・返荷案内書(控)、平成28年12月2日 甲45-2:丸平染色株式会社、(有)ブイテック宛て入・出・返荷案内書(控)、平成28年12月7日 甲46-1:白崎ベルベツト工業有限会社、(有)ブイテック宛て請求書、平成28年10月31日 甲46-2:白崎ベルベツト工業有限会社、(有)ブイテック宛て請求書(控)、平成28年12月28日 甲46-3:白崎ベルベツト工業有限会社、(有)ブイテック宛て請求書、平成28年2月28日 甲47:長谷川、玉村社長宛て<丸平染色出荷の件>、平成28年12月6日 甲48:白崎ベルベツト工業有限会社、(有)ブイテック宛て請求書、平成28年11月30日、平成28年11月30日 甲49:宇野株式会社、(株)新栄染色宛て加工指図書、平成18年8月19日 甲50:(株)ウノテキスタイル 長谷川、玉村社長宛てパフの蒸気ムシ依頼、平成18年9月7日 甲51:有限会社ブイテック、新栄染色宛て加工指図書、平成19年1月6日 甲52-1:(株)ウノテキスタイル 長谷川、那覇宛て指示書、平成22年12月1日 甲52-2:長谷川、玉村社長宛てメモ 甲53-1:(株)新栄染色、株式会社タイキ宛て「加工工程と条件の再確認」、2011年(平成23年)10月19日 甲53-2:株式会社タイキ、有限会社ブイテック宛て送付状、2011年(平成23年)10月20日 甲54-1:山田啓介、織物設計表、平成22年4月 甲54-2:山田啓介、甲54-1の由来説明書、令和4年6月30日 甲55:高橋徳之(ニッセン開発センター)、陳述書、平成30年8月30日 甲56-1:本件審判請求書の写し 甲56-2:令和2年5月8日(令和2年5月11日差出)の甲1-1~甲15の証拠説明書の写し 甲57:令和2年7月1日付け審尋の写し 甲58-1:令和2年7月17日の請求人回答書の写し 甲58-2:令和2年7月17日の甲16の証拠説明書の写し 甲59:令和2年10月14日の被請求人審判事件答弁書の写し 甲60:令和3年3月30日付け審尋の写し 甲61:令和3年5月28日の被請求人回答書 甲62-1:令和3年5月31日の請求人回答書 甲62-2:令和3年5月31日の甲17-1~甲28-2の証拠説明書の写し 甲63:令和3年9月14日の第1回口頭審尋調書の写し 甲64:令和4年2月16日の請求人の証人尋問申出書の写し 甲65:令和4年2月22日の請求人の尋問事項書の写し 甲66-1:令和4年2月16日(令和4年2月24日差出)の被請求人の証人尋問申出書の写し 甲66-2:令和4年2月22日(令和4年2月24日差出)の被請求人の尋問事項書の写し 甲67:令和4年3月4日の請求人上申書の写し 甲68:令和4年3月23日付け審理事項通知書の写し 甲69-1:令和4年3月29日の請求人口頭審理陳述要領書(1)の写し 甲69-2:令和4年3月29日の甲29-1~甲39の証拠説明書の写し 甲70:令和4年4月1日の請求人上申書の写し 甲71:令和4年3月31日(令和4年4月1日差出)の被請求人口頭審理陳述要領書の写し 甲72-1:令和4年4月3日(令和4年4月4日差出)の請求人口頭審理陳述要領書(2)の写し 甲72-2:令和4年4月3日(令和4年4月4日差出)の甲40~甲48の証拠説明書の写し 甲73:令和4年4月7日の請求人上申書の写し 甲74-1:令和4年4月22日の第1回口頭審理及び証拠調べ調書の写し 甲74-2:令和4年4月22日の第1回口頭審理及び証拠調べにおける証人等の陳述の録音 甲74-3:令和4年2月22日の第1回口頭審理及び証拠調べにおける証人等の陳述を記録した書面の写し 甲75:令和4年6月6日の請求人上申書の写し 甲76-1:令和4年6月30日の請求人上申書の写し 甲76-2:代理人増田建、「主張・証言一覧」 甲76-3:令和4年6月30日の甲49~甲55の証拠説明書の写し 甲77-1:令和4年7月5日の請求人上申書の写し 甲77-2:請求人参考資料1-1の写し 甲77-3:請求人参考資料1-2の写し 甲77-4:請求人参考資料2の写し 甲77-5:請求人参考資料3の写し 甲77-6:令和4年7月5日の参考資料1-1~参考資料3の請求人参考資料説明書の写し 甲78:令和4年9月28日の請求人上申書の写し 甲79:令和5年1月13日付け補正許否の決定の写し 甲80:新村出編「広辞苑第」、株式会社岩波書店、2022年(令和4年)2月10日第七版第七刷、1087、1656ページ 甲81:松村明編「大辞林」、株式会社三省堂、1988年(昭和63年)11月3日第一刷、901、1356ページ 甲82:金田一春彦、池田弥三郎編「学研国語大辞典」、株式会社学習研究社、昭和56年2月1日第11刷、703、1086ページ 甲83:林大監修「国語大辞典言泉」、株式会社小学館、昭和62年1月1日、第一版第二刷、857、1320ページ 甲84:阿部格、「リラクサーの現状とその問題点」、繊維工学、Vol.23、1970/5、371~380ページ、昭和45年5月20日、社団法人日本繊維機械学会 甲85:特開2003-105653号公報 甲86:特開2003-336142号公報 甲87:「NICCA 準備工程|日華化学/繊維用界面活性剤」、[online]、日華株式会社、インターネット<https://nctexchem.com/jp/product/process/preparation/>、令和3年12月9日(当審注:ウエイバックマシンにより確認された日付) 甲88:今田邦彦、「ポリエステル繊維製造の最新技術 新合繊織物の染色加工」、繊維機械学会誌せんい、Vol.51、1998年(平成10年)6月25日、344~349ページ、社団法人日本繊維機械学会 甲89:代理人増田建、「主張・証言一覧」 甲90-1:株式会社タイキ宇津原亨、陳述書、令和5年5月22日 甲90-2:株式会社タイキ、仕入伝票、2011年頃 甲90-3:株式会社ブイテックから株式会社タイキに宛てた請求書、平成28年10月11日、及び平成28年10月13日 甲91:福田善治、陳述書、令和5年5月11日 甲92-1:代理人増田健、「「パフ用生地の乾燥後の質量変化」を調べる実験」、令和5年5月22日 甲92-2:代理人増田健、実験試料(立毛シート)の説明、令和5年5月22日 甲92-3:一般財団法人日本繊維製品品質技術センター福井試験センター、「試験結果報告書」、2023年(令和5年)5月19日 甲92-4:代理人増田健、「「パフ用生地の乾燥後の質量変化」を調べる実験経過」、令和5年5月16日 甲92-5:パフ用立毛シートの実験の様子を撮影したSDカード、令和5年5月16日、撮影者:池田博、撮影場所:丸平染色株式会社及び一般社団法人日本繊維製品品質技術センター福井試験センター 甲93:代理人増田健、C工程(蒸し工程)→D工程(ヒートセット)における立毛シートの状態遷移図、令和5年5月22日 甲94:特許第6304634号公報 甲95:旭化成工業繊維基礎研究所上出健二ほか2名、「講座「繊維学」(2)収縮特性について」、繊維機械学会誌、1989VOL.42NO.4、188~192ページ 甲96:玉村和夫、社内会議用資料、平成26年10月25日 甲97:野辺龍一、陳述書、令和5年7月5日 甲98:代理人増田健、「写真撮影報告書」、令和5年7月12日 甲99-1:株式会社タイキ開発本部渡辺詳子から有限会社ブイテックに宛てた送付状、2011年(平成23年)10月12日 甲99-2:株式タイキ購買部宇津原亨の2011年(令和23年)10月12日付けFAXを長谷川に宛てた書類 甲99-3:株式会社新栄染色から株式会社タイキ渡辺詳子に宛てたFAX、2011年(平成23年)10月25日 甲99-4:株式会社タイキ渡辺から有限会社ブイテック那覇に宛てたFAX、2011年(平成23年)10月31日 甲99-5:株式会社新栄染色及び有限会社ブイテックから株式会社タイキに宛てた書類、2011年(平成23年)12月6日 甲100-1:株式会社ウノテキスタイルにおける社員宛て書類、平成23年11月16日 甲100-2:株式会社新栄染色、株式会社ウノテキスタイル長谷川から株式会社タイキ後藤に宛てた書類「<ZQ糸パフの件>」、平成23年12月 甲100-3:株式会社ウノテキスタイル長谷川からVテック那覇に宛てた書類「<H24年度 パフ価格>」、平成24年1月10日 甲101-1:株式会社新栄染色から株式会社タイキ渡辺詳子に宛てた2011年(平成23年)10月19日の資料(手書きあり)を有限会社ブイテックが発したFAX、2011年(平成23年)10月20日 甲101-2:株式会社新栄染色から株式会社タイキ渡辺詳子に宛てた2011年(平成23年)10月19日の資料(手書きなし)を有限会社ブイテックが発したFAX、2011年(平成23年)10月20日 甲102-1:株式会社新栄染色山田から有限会社ブイテック那覇に宛てた書類、2013年(平成25年)12月16日 甲102-2:有限会社ブイテック那覇から株式会社タイキ開発部に宛てた書類「6 ナイロン(NY-40 140D/48f)洗濯性向上の件」、平成25年12月18日 甲103:吉藤幸朔著、熊谷健一補訂、「特許法概説(第12版)」、株式会社有斐閣、1997年(平成9年)12月20日第1刷、72~77ページ 甲104:代理人増田健、「甲第2号証についての説明」、令和5年7月12日 甲105:代理人増田健、「甲第53-1号証についての説明」、令和5年7月12日 甲106:有限会社ブイテックから発せられたFAX、2009年(平成21年)8月20日 甲107:甲2の原本、白崎ベルベツト工業有限会社顧問玉村和夫、平成26年6月17日 甲108:吉田広志(審決注:「吉」の「士」は「土」)、「61 発明の要旨認定とクレームの記載 -リパーゼ事件」、別冊Jurist No. 209 April 2012 特許判例百選(第4版)、株式会社有斐閣、2012年(平成24年)4月5日、124~125ページ 甲109:小崎輝郎、「合成繊維のヒート セットに要する物理的条件」、繊維工学、Vol.20、No.10、1967年(昭和42年)10月20日、787~792ページ 甲110-1:弁護士松田和也、土橋誠治の相続関係図、令和5年9月10日 甲110-2:土橋誠治の戸籍全部事項証明書、令和5年7月4日 甲111-1:「相続放棄及び相続限定承認の申述の有無について(8月1日付け照会に対する回答)」、京都家庭裁判所裁判所書記官下平友梨恵、令和5年8月8日 甲111-2:「「相続放棄及び相続限定承認の申述の有無について(9月12日付け照会に対する回答)」、京都家庭裁判所裁判所書記官下平友梨恵、令和5年9月13日 甲112-1:原告(請求人)製織機の正面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-2:原告(請求人)製織機の背面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-3:原告(請求人)製織機の左側面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-4:原告(請求人)製織機の右側面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-5:原告(請求人)製織機の左側面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-6:原告(請求人)製織機の右背面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-7:原告(請求人)製織機の右側面、開口部及び製織部の拡大写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-8:原告(請求人)製織機の右側面、開口部の拡大写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-9:原告(請求人)製織機の左背面写真、令和5年10月22日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト有限会社 甲112-10:代理人増田健、甲112-1~112-9の説明、令和5年11月5日 甲113-1:代理人増田健、「[構成図1]構成概要図」、令和5年11月5日 甲113-2:代理人増田健、「[構成図2]左側面構成図」、令和5年11月5日 甲113-3:代理人増田健、「[構成図3]開口部20製織部30(拡大図)」、令和5年11月5日 甲113-4:代理人増田健、「原告工場における「二重ビロード織」の織機の構成」、令和5年11月5日 甲114:松村明編、「大辞林」、株式会社三省堂、2019年(令和元年)9月20日、第四版第1刷、413及び670ページ 甲115:甲斐秀、「準備工程(3)長繊維織物」、実用染色講座、昭和55年1月10日初版第1刷発行、43~46ページ、株式会社色染社 甲116:文化出版局、「服飾辞典」、昭和54年3月5日、801ページ 甲117:昭和59年度福井県繊維工学研修所高等課程、「前処理」 甲118-1:代理人増田健、製織機の動作を撮影した動画、令和5年11月3日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:白崎ベルベツト工業有限会社 甲118-2:玉村和夫、「編集したDVD(甲118-1)の目次と説明」、令和5年11月5日 甲119-1:福田善治、陳述書、令和5年11月 甲119-2:福田善治、平成20年ごろの株式会社新栄染色における仕上工場の見取り図、令和5年11月 甲119-3:福田善治、平成30年ごろの株式会社新栄染色における仕上工場の見取り図、令和5年11月 甲120-1:辻太久美、陳述書、2023年(令和5年)12月4日 甲120-2:辻太久美、平成19~20年ごろの株式会社新栄染色の見取図、2023年(令和5年)12月4日 甲120-3:辻太久美、平成22~23年ごろの株式会社新栄染色の見取図、2023年(令和5年)12月4日 甲121-1:玉村和夫、陳述書、令和5年12月15日 甲121-2:玉村和夫から長谷川俊明に向けた「タイキ・カンボジア工場への技術指導及び蒸し箱について問い合わせに対する回答」、2015年(平成27年)5月6日 甲121-3:「長谷川俊明殿」と題名のつけられたファイルが格納されているフォルダ名が「白崎ベルベツトデータ2015」と記載された画面のスクリーンショット、2023年(令和5年)12月17日 甲121-4:タンブラーの写真、令和5年12月5日、撮影者:玉村和夫、撮影場所:丸平染色株式会社 甲122:辻太久美、陳述書、2023年(令和5年)12月8日 甲123-1:代理人増田健、「新栄染色見取り図(H20年当時)」、令和5年12月4日 甲123-2:代理人増田健、「新栄染色 通路拡大図(H20年当時)」、令和5年12月4日 甲123-3:代理人増田健、「新栄染色 通路拡大図(H22、23年から29年2月)」、令和5年12月4日 甲124:吉藤幸朔著、熊谷健一補訂、「特許法概説(第12版)」、50~53ページ、1997年(平成9年)12月20日、株式会社有斐閣 甲125:代理人増田健、「年表(蒸し箱・タンブラー設置状況(新栄染色))」、令和5年12月13日 甲126:代理人増田健、「(事実C)の成立に関する証拠の整理」、令和5年12月15日 甲127-1:那覇明勇、陳述書、令和5年12月15日 甲127-2:株式会社新栄染色からブイテックに宛てた2014年(平成26)年3月のFAXのコピーを玉村に送付した資料 甲127-3:株式会社ウノテキスタイルから玉村に宛てた「<緊急連絡>2件」と題された書類、平成26年6月5日 甲128-1:ダイエー株式会社大阪営業所武縄から有限会社ブイテック那覇に宛てた2009年(平成21年)6月29日の「化粧用パフ ベルベット品質安定・品質向上依頼の件」と題された書類を、那覇から株式会社新栄染色長谷川、玉柿、山田に送付した書類 甲128-2:株式会社新栄染色長谷川、山田からダイエー株式会社大阪営業所武縄に宛てた書類、平成21年7月1日 甲128-3:株式会社新栄染色長谷川、山田からダイエー株式会社大阪営業所武縄に宛てた書類の写しを有限会社ブイテック大阪一部に宛てた書類、平成21年7月1日 甲129:減価償却に関する資料、麻生英右、令和5年2月17日 甲130:株式会社新栄染色破産管財人麻生英右及び株式会社三維を売主、株式会社エフケイを買主とする売買契約書、麻生英右、令和5年 甲131:破産管財人麻生英右、「破産者 株式会社新栄染色 財産目録」、令和5年7月4日 甲132-1:玉村に宛てた書類、令和元年、土橋誠治 甲132-2:「パフ加工の流れ」と題された書類、昭和59年~平成元年頃、土橋誠治又はその実父 甲132-3:手書きのメモが記された特許第6304634号公報、令和元年、土橋誠治 甲132-4:代理人増田健、「(d)「明細書」欄の整理」、令和6年1月15日 甲133-1:株式会社新栄染色のパンフレット「PROFILE」、平成19年末頃から平成20年初頭頃 甲133-2:昌和染織株式会社山田繁雄、「UP-50パフの加工条件」、平成21年1月5日 甲134-1:ASAHIと記されたタンブラーの写真、令和5年12月29日、撮影者:代理人増田健、撮影場所:丸平染色株式会社 甲134-2:「形式NT-20S」、「製造年月56.10」、「株式会社アサヒ製作所」と記載されたプレートの写真、令和5年12月29日、撮影者:代理人増田健、撮影場所:丸平染色株式会社 甲134-3:NT-20タンブラーの横幅を示す写真、令和5年12月29日、撮影者:代理人増田健、撮影場所:丸平染色株式会社 甲134-4:NT-20タンブラーの高さを示す写真、令和5年12月29日、撮影者:代理人増田健、撮影場所:丸平染色株式会社 甲135:「めがねのまちさばえ 福井県鯖江市 Easy relocation to Sabae」における「株式会社新栄染色」の紹介ページ、2017年(平成29年)、福井県鯖江市 甲136:株式会社タイキ開発本部渡辺詳子から有限会社ブイテック那覇に宛てた「送付状」、2011年(平成23年)12月9日 甲137-1:クラレトレーディング株式会社泰昭南から株式会社新栄染色土橋、有限会社ブイテック那覇に送付された2006年(平成18年)10月16日のFAXを土橋に再FAXしたもの、平成18年10月23日 甲137-2:クラレトレーディング株式会社足立雅志から有限会社ブイテック那覇に送付された2006年(平成18年)12月11日のFAXを土橋に送付したFAX、2006年(平成18年)12月13日 甲137-3:「NP45」、「<PP30テスト生地>」と題された書類、平成18年10月23日~平成21年3月6日、土橋誠治 甲138-1:玉村に宛てた「(有)ブイテック社 量産パフ生地 進行計画」と題された書類、2011年(平成23年)8月24日 甲138-2:株式会社タイキ購買部宇津原亨から有限会社ブイテック那覇に宛てた2011年(平成23年)3月24日のFAXを那覇から長谷川に送付した資料、平成23年4月5日 甲138-3:有限会社ブイテックにおける「業務連絡書」、平成23年5月頃 甲139:有限会社ウノテキスタイルから宮下、玉村に送付した1997年(平成9年)2月12日の新聞記事「洗えるベルベット」のコピー 甲140-1:株式会社タイキ管理本部からお取引先各位として発せられた「新規お取引の御案内」と題する資料、平成21年1月19日 甲140-2:株式会社タイキと有限会社ブイテックとの「購買基本契約書」、平成22年11月25日 参考資料1-1:株式会社ハセガワベルベット、織物設計表、平成2年11月17日 参考資料1-2:株式会社ハセガワベルベット、織物設計表、平成3年2月3日 参考資料2:信用情報、平成4年9月3日 参考資料3:増田建、令和4年4月22日証人尋問録音テープの書き写し、平成4年7月4日 (2)証人 証人:長谷川俊明(本件特許に係る出願の願書に記載された発明者) 第5 被請求人の主張 被請求人は、請求人の主張する無効理由1~4はいずれも理由がない旨主張している。 なお、被請求人は請求人2を証人とする証人尋問を証拠方法として申し出ていたところ、請求人2は令和3年12月13日に死亡した。 第6 当審の判断 1次審決は、請求人として土橋誠治(請求人2)も表示しているところ、請求人2は、1次審決の審理途中である令和3年12月13日に死亡している。 もっとも、1次審決の審理において請求人2の代理人が選任されていることから、請求人2の死亡によっても手続は中断せず(特許法24条、民事訴訟法124条2項)、その後、死者である請求人2を請求人として表示した1次審決についても、その効力は請求人2の承継人に及ぶ。 その後、1次審決に対して白崎ベルベツト工業(請求人1)のみが審決取消訴訟を提起し、請求人2の承継人については出訴せず、同人との関係では1次審決が確定していることから、もはや請求人2の承継人は当審における当事者ではない(東京高裁平成13年(行ケ)第79号等参照)。 したがって、当審では、請求人1のみを請求人として審理・判断する。 1 提出された文書の記載内容等 (1)文書 ア 甲1-1 甲1-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000001.jpg] [図:0001428396000002.jpg] [図:0001428396000003.jpg] ・・・ [図:0001428396000004.jpg] ・・・ [図:0001428396000005.jpg] [図:0001428396000006.jpg] ・・・ [図:0001428396000007.jpg] ・・・ [図:0001428396000008.jpg] 」 イ 甲1-2 甲1-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000009.jpg] 」 ウ 甲2 甲2は、被請求人である有限会社ブイテックの社長であった玉村和夫(現在、請求人1の顧問)が、平成26年6月17日に作成し、平成26年7月頃、丸平染色株式会社専務の樋勝美氏に提示されたとされる工程説明書の写しである。 (ア)甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000010.jpg] 」 (イ)甲2作成の経緯等 a 平成18年頃から平成23年10月頃まで (a)甲1-1(上述ア参照)によると、新栄染色は、平成18年ごろから被請求人が製織したポリエステル等の合成繊維製のベルベット織物に染色加工を行い、パフ用の立毛シートを製造していたとされているところ、これは、新栄染色が化学合成繊維のパイルやベルベットの加工を行う染色工場として操業を開始したという平成18年8月3日付けの新聞記事(甲1-2、上述イ参照)、ブイテックから新栄染色に「品名」、「ポリエステルパフ」として、「加工法」、「ムシセット・染色・仕上」とする平成19年1月6日の加工指図(甲51、後述ナ参照)、甲119-1(後述ホ参照)における「その工程は、〇1(審決注:数字の1を○囲みしたものの代用表記。以下同様)ブイテックから入ってきた生機を蒸し箱で吊り蒸し、・・・。この吊った生地を山田部長や取に来たブイテックの辻さんがブイテックに運び、ブイテックのテンターブラシで、ブイテックの作業員が最終仕上げをしていたと思います。」という福田の陳述、甲121-1(後述ミ参照)の「(1,3)新栄との関係」で「・ブイテックはウノテキスタイルの仲介で原材料を買い、ベルベット織物を生産し、新栄染色に加工を依頼」していたという玉村の陳述、甲127-1(後述ム参照)の「・そのころ新栄染色で染色をしていたので、営業担当としてタイキから受注後の指図を新栄染色に出し、苦情処理等を含めて営業活動をした。」というブイテックの那覇の陳述とも整合する。 (b)被請求人は、平成22年11月25日、タイキとの間で「購買基本契約書」を締結し(甲140-2、後述ヨ参照)、2011年(平成23年)1月4日には被請求人からパフ用立毛シートをタイキに対し納品していた(甲90-1、90-2、それぞれ後述ネ、ノ参照)。その後、新栄染色からタイキに対し、平成23年10月19日付けの文書(甲101-2(後述フ参照)で、甲53-1(後述ニ参照)の手書き文字部分を除いたもの。以下、「甲53-1文書」という。)により「「加工工程と条件の再確認」について」として、同月20日にFAXで被請求人から送信している。その際、タイキとの間における上述「購買基本契約書」の第28条には、「(秘密保持)」として、「秘密事項は書面で特定されるものとする。」とされているところ、当該甲101-2には、記載内容を秘密事項とする旨の表示はなく、送付にあたってこれを秘密事項と特定した証拠もない。 (c)当該甲53-1、甲101-2によると、新栄染色からタイキに対し、「ご依頼いただきました「加工工程と条件の再確認」について、下記のとおり空欄部分を記入いたしました。ご確認下さいます様宜しくお願い申し上げます。」と記載されているほか、タイキから被請求人に対し染色温度、時間、遠心脱水、ドライセットに関し、確認や条件の提案を行っている(甲53-2、後述ヌ参照)ことからみて、当該甲53-1文書に記載の工程は、タイキの社員においても確認、検討がなされたものと理解される。 (d)当該甲53-2によると、タイキから被請求人に対し、「・染色温度、時間」として「PTTはポリエステル系の糸ですが、常温・常圧(90℃以下)で十分染まります。」としていることからみても、甲53-1文書に記載されている内容は、被請求人が製織したポリエステル系の糸を用いて製織されたベルベット織物を新栄染色が染色加工を行ったパフ用の立毛シートに関する工程であると認められる。 (e)これらのことを踏まえると、該甲53-1文書に記載の工程は、ポリエステル系の糸を用いたベルベット繊維をパフ用の立毛シートにするための染色工程に関するものであり、平成23年10月頃には公知となっていたものと認められる。 b 平成25年頃以降 (a)玉村は、甲9(後述オ)の「(3)平成26年~平成29年」において、「甲第2号証は、私が、平成26年6月17日に作成し、同年7月ころ丸平染色株式会社専務の樋勝美氏に提示した立毛シート製造のための工程説明書である。」としており、また、甲121-1(後述ミ参照)では、「(3)(3,1)甲2を作成した経緯と時期」として、「・甲2は、平成25、6年ごろから新栄の加工に問題が多発したため過去にレーヨンベルベットで若干取引があった丸平染色に、玉村の知りえている範囲の工程表を提示し、合繊ロングパイルを加工できないか打診したものです。」としている。これは、甲90-1(後述ネ参照)において、「この新栄染色の蒸し小屋は、平成25年から26年頃にかけて不調になり、パフ用立毛シートの不良品が多くなって、当時問題になった。」、「将来的なことも考えてベトナムやカンボジアなどで海外生産しようという計画も浮上して、ブイテック社長だった玉村氏とは何度もこれらの件について相談した。」というタイキの宇津原による内容、及び甲10(後述カ参照)の「(2)平成26年~平成28年9月(本件特許出願前)」において「平成26年7月頃、当時被請求人の社長であった玉村和夫氏に、下記(a)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(x)の工程が記載された工程説明書(甲2号証、甲8号証別添2(後述エ(ウ)参照)の本件資料目録〇1「生産工程説明書(平成26年6月17日付け)」)を提示され、パフ用の立毛シート(ベルベット織物)の製造協力を打診された。・・・玉村和夫氏は、この工程説明書を見せながら、ポリエステルなど合成繊維のベルベットの織物(立毛シート)の製造工程を説明し、上記(c)~(h)ないしは(d)~(h)の染色工程が丸平染色株式会社に可能かどうか打診してきたものである。この時、もちろん玉村和夫氏との間で、この製造工程についての守秘義務に関する約束はなかった。」という丸平染色株式会社専務取締役の樋勝美による陳述書の内容と整合する。 (b)加えて、甲96(後述ハ参照)の「<< 蒸し箱 設置について >>」とし、「A案 ブイテックで独自に設置」、「B案 新栄染色」、「C案 ウエマツ」、「D案 丸平染色」とした平成26年10月頃の社内検討用と思われる資料、甲127-2(後述メ参照)の実験成績証明書において新栄染色の試料において不良品が発生していることを示す資料などからみても、当時、新栄染色の蒸し小屋が不調を生じ、それにより不良品が発生していたこと、及びこれを解消すべく、玉村が甲2を作成し、丸平染色に渡していたことが推認される。また、甲10のとおり、玉村が丸平染色に甲2を渡す際に、守秘義務は課しておらず、その他これを覆す証拠は見られない。 (c)これらのことを総合すると、平成25年頃から新栄染色の蒸し箱が不調となり、タイキに納品していたパフ用立毛シートの不良品が増えたこと、そのため、新栄染色で行っていた染色加工を丸平染色に依頼できないか打診すべく、タイキ向けに新栄染色が行っていた工程、すなわち甲53-1文書の内容を甲2(ただし、(「目録〇1生産工程説明書(平成26年6月17日付)」と記載された部分を除く。以下、「甲2文書」という。)として作成し、これを丸平染色に提示したものであると認められる。 (d)実際、甲2文書における「撚糸」→「織り」は甲114(後述へ参照)に照らせば生機であり、また、技術常識からみて「PS」はプレセットを意味すると解されること、「精錬」は糊抜きであること、「精錬」の後に脱水工程が不可欠であることを考慮すると、表現の違いはあるものの、その工程は甲53-1文書と同じものである。 (e)してみれば、甲2文書は甲53-1文書と同じ工程を記したものであると解され、その内容は、上述a(e)のとおり、平成23年10月頃に公知となったものである。 (ウ)甲2文書により公知となった発明 上述(イ)に立脚すれば、甲2文書により公知となった発明(以下、「甲2発明」という。)は、以下のとおりであると認められる。 「ポリエステル系の糸を用いたベルベット織物を撚糸、織り、蒸しセット、プレセット、精練、染色、脱水、乾燥、テンターブラシの各工程を有するパフ用の立毛シートの製造方法」 エ 甲8 (ア)甲8について 甲8は、東京法務局所属の公証人齊木敏文が、タケダアンドパートナーズ特許事務所に勤務する弁理士川崎仁の嘱託により、令和元年10月15日にタケダアンドパートナーズ特許事務所において行われた証拠保全の現場に立ち会った際の事実実験公正証書(以下「甲8公正証書」という。)、当該証拠保全によって確認された、公証人日俣修による平成29年6月5日付の確定日付印が押印された封書(以下「甲8別添1封書」という。)、甲8別添1封書の内容物である目録〇1の生産工程説明書(平成26年6月17日付け。以下「甲8別添2生産工程説明書」という。)、目録〇3の請求書の写し(平成28年11月分14枚。以下「甲8別添2請求書」という。)、目録〇4の検査報告書の受信FAX(平成28年9月14日付け。以下「甲8別添2検査報告書FAX」という。)、目録〇5の初出荷完了の連絡、お礼、今後の契約についての受信FAX(平成28年9月12日付け。以下「甲8別添2初出荷完了FAX」という。)及び目録〇6のSDカード録画内容明細書(以下「甲8別添2SDカード明細書」という。)のコピー、甲8別添1封書の内容物である目録〇2のSDカードの内容のファイルの全容がわかる画面のスクリーンショットをプリントアウトしたもの(以下「甲8別添3スクリーンショット」という。)、並びに甲8別添1封書の内容物である目録〇2のSDカード(以下「甲8別添4SDカード」という。)である。 (イ)甲8別添2生産工程説明書に記載された事項 甲8別添2生産工程説明書には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000011.jpg] 」 (ウ)甲8別添2SDカード明細書に記載された事項 甲8別添2SDカード明細書には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000012.jpg] 」 (エ)甲8別添3スクリーンショットに記載された事項 a 甲8別添3スクリーンショットには、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000013.jpg] 」 b 上記aの記載事項から、甲8別添4SDカードの内容の更新日時は、2017年(平成29年)5月18日10時34分~同月29日2時51分となっており、SDカードの内容である録画データは遅くとも平成29年5月29日2時51分までに録画されたものであることが理解できる。 オ 甲9 甲9には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000014.jpg] [図:0001428396000015.jpg] ・・・ [図:0001428396000016.jpg] ・・・ [図:0001428396000017.jpg] [図:0001428396000018.jpg] ・・・ [図:0001428396000019.jpg] 」 カ 甲10 甲10には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000020.jpg] [図:0001428396000021.jpg] ・・・ [図:0001428396000022.jpg] 」 キ 甲11 (ア)甲11に記載された事項 甲11には、以下の事項が記載されている。 a 「[産業上の利用分野] 本発明は、二重織組織による両面パイル織物の製造方法とこれに用いる織機におけるパイル糸の張力調整装置に関するものである。」(2ページ右上欄15~18行) b 「そこで本発明では、二重織組織によるパイル織物、特にパイル糸を起毛して毛布などに使用する両面パイル織物として、上記ようなパイル糸の抜けや横割れのおそれがなく、充分な密度充実感を有するものを容易かつ確実に製造、提供せんとしてなしたものである。」(3ページ左下欄3~8行) c 「特に綿糸を用いる場合、製織後の後加工において、裏面のパイル引出し用抜緯糸を引き抜く前に蒸し箱にて蒸熱処理(100℃、20分)を行なえば、綿糸の立毛状態が均一性を保ち凹凸になり難い。このパイル織物を反染め後あるいは生機のままで仕上げる場合は両面毛布の寸法安定性と選択後のパイルの収束性をなくすためタンブラ加工(95~100℃、20~30分)が有効であり、・・・」(4ページ左上欄7~15行) d 「・・・前記したごとくパイル引出し用の抜緯糸を引き抜くために、打込みを高密度にしても地組織の密度が低くなるので、この点を配慮して、前記地経糸および地緯糸の一方もしくは双方に、収縮性の紡績糸、例えばアクリル繊維、ポリエステル繊維からなる収縮率17~30%の糸を用い、製織後の蒸気加熱により、あるいは反染め、タンブラ乾燥によって、経緯1方向もしくは両方向に収縮せしめことにより、高密度の両面パイル織物とするのが望ましい。」(4ページ右上欄3~12行) e 「実施例6 両面綿パイル織物の製織において、機上幅を157mmとなるように地糸、パイル糸の本数を設定し、地経糸としてアクリル繊維100%の52番手双糸を、地緯糸およびパイル引出し用抜緯糸としてとして沸水収縮率30%のポリエステル繊維バルキー紡績糸の30番手双糸を、またパイル糸として綿100%の20綿番手双糸で撚係数α=3.2、上下比55%の綿糸を用い、パイル長を表面4.5mm、裏面5.0mmとし、打込密度58本/インチに設定して、地経糸はドロッパーを通して給糸し、パイル糸は駆動ローラと補助ローラを経て分離杆、ドロッパー及びヘルドを通して二重織部分に給糸し、第1図に示す組織により製織し、上下の織物地に掛け渡されたパイル糸をその中央部でカットし、二枚のパイル織物を製造した。こうして得られた生機の目付は980g/mであった。この生機の裏面側の抜緯糸を蒸熱後に引き抜くことによりパイルを引を引き出して(審決注:「パイルを引き出して」の誤記である。)両面綿パイル織物とした。 この織物をウインスで淡いベージュに染色し、柔軟加工後にタンブラ乾燥し、毛割加工、剪毛加工を行なった。 仕上った両面パイル織物は、仕上り幅140mmとなり、高密度でパイル面の横割れせが生じず(審決注:「高密度でパイル面の横割れが生じず」の誤記である。)、綿特有のパフ状の風合を示した。」(9ページ右上欄5行~左下欄10行) (イ)甲11に記載された発明 甲11の上記記載事項から、特に実施例6に着目して記載を総合すると、甲11には、次の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲11発明] 「両面綿パイル織物の製織において、地経糸としてアクリル繊維100%の52番手双糸を、地緯糸およびパイル引出し用抜緯糸としてとしてポリエステル繊維バルキー紡績糸の30番手双糸を、またパイル糸として綿100%の20綿番手双糸で撚係数α=3.2、上下比55%の綿糸を用い、パイル長を表面4.5mm、裏面5.0mmに設定して製織し、上下の織物地に掛け渡されたパイル糸をその中央部でカットし、 二枚のパイル織物を製造して得られた生機の裏面側の抜緯糸を引き抜く前 に蒸し箱にて蒸熱処理(100℃、20分)を行い、蒸熱後に引き抜くことによりパイルを引き出して両面綿パイル織物とし、 この織物をウインスで淡いベージュに染色し、 柔軟加工後にタンブラ乾燥し、毛割加工、剪毛加工を行う 両面パイル織物の製造方法。」 ク 甲12 甲12には、以下の事項が記載されている。 (ア)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、優れたソフトな感触・外観・ふくらみ感と高級な光沢をもつパイル織編物に仕上げ加工する方法に関するものである。」(1ページ左下欄10~13行) (イ)「上述の構成から成るパイル織編物を、通常布帛の加工と同じく精練・熱セットおよび、更にはパイルの繊度を細くするための処理などを施し、染色を行なう。」(2ページ右下欄11~14行) (ウ)「即ち、染色加工をした後、回転揉み乾燥機(例えばタンブラー乾燥機)で加工反を揉み回転させながら乾燥する。 乾燥機に投入するに際しては適度に脱水するのが好ましい。」(3ページ左上欄17行~右上欄1行) (エ)「実施例1 2種類の海島形複合繊維を同時に紡糸しうる3成分紡糸機を用いて、次の2種の海島形複合繊維を紡糸(1200m/分)延伸(3.1倍、90℃ホットロールで350m/分)して73デニール18フィラメントの混合複合糸を得た。 島成分1=ポリエチレンテレフタレート (16島) 島成分2=イソフタル酸10モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート (16島) 海成分 =ポリスチレン 島成分1の複合繊維(島80%、海20%)は36.5デニール、9フィラメントであり、島成分2の複合繊維(島80%、海20%)は36.5デニール、9フィラメントで合計73デニール18フィラメントの混合糸であった。 この混合複合糸をパイル糸として、ポリエチレンテレフタレートの50デニール24フィラメントの加工糸をグランドのタテ糸およびヨコ糸にして2重ビロード織機にて、パイル長10mmのパイル織物を作った。 織り密度は、パイル糸が47本/in、グランドのタテ糸が94本/in、ヨコ糸が146本/inであった。 この布帛を180℃で熱セットを施した後、トリクロールエチレンで処理をして、パイルに用いた混合複合糸の海成分を除去し極細立毛織物を得た。 この布帛の裏面に、ポリウレタン25%DMF溶液をナイフでコーティングし100℃で乾燥ポリウレタンをバッキングした。ポリウレタンの付着量は10g/m2であった。 こうして単糸繊度が0.2デニールのパイル布帛の生機を得た。 このものを加圧型液流染色機(サーキュラーH/c)にかけ120℃で60分間、薄茶色に分散染料を用いて染め上げた。更にハイドロサルファイドと苛性ソーダを用いて還元洗浄し、湯通し洗いした。 この湯洗い液に静電防止剤(三洋化成株式会社製“シルスタット#1173”)1g/lと柔軟剤(三洋化成株式会社製“ベビナS783”)3g/lを加えて染色仕上げ品を得た。 この後、遠心脱水機で含水率100%としてからタンブラー乾燥機で揉み乾燥した。100℃の熱風を送りながら、30rpmの回転で30秒毎に反転させるようにして40分間乾燥した。乾燥後加熱を止め回転・反転しながら50℃まで冷却して布帛を取り出した。 このものは、パイルが薄茶色の極めて滑らかなタッチであり、かつチンチラやミンクの毛皮を触っていると間違えんばかりの外観とタッチを有していた。パイルはゆるやかな捲縮がかかり、小さな束集団(織りの1単位、即ち18×16=288フィラメントの束)となり、よく立っており、へたりやもつれも見られず、高級な毛皮調のふっくらとしたふくらみ感を有していた。更に、立毛はいずれの方向へも倒すことができ、それがほぼ可逆的であった。このため、モトリング、ライティング効果が得られた。」(3ページ左下欄13行~4ページ右上欄13行) ケ 甲14 (ア)甲14には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000023.jpg] 」 (イ)蒸し工程に関する周知技術 上述(ア)の記載からみて、織物の蒸し工程として、蒸すにあたって、蒸し箱内で垂下させた状態で配置して蒸すことは、周知技術であると認める。 コ 甲16 甲16には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000024.jpg] 」 サ 甲21 甲21には、以下の事項が記載されている。 「【0004】これらの弾性布帛の染色加工は、通常以下のようにして行われる。即ち、編機、織機等から降りたばかりのいわゆる生機を、必要に応じて洗浄剤を溶かした水または適当な温度の温水で洗浄すると同時に、編み、織りで出来た歪みを除去する「プレウェット」工程を通す。ついで、その後の染色工程でのモミ、摩擦等での表面の荒れ、シワ発生を防止する意味と、 最終製品の洗濯収縮等を小さくする意味から、比較的高温の乾熱または湿熱での処理が施される。これらの工程には、通常、乾熱セットにはいわゆるセッターが、湿熱セットにはビーム方式でのセット機が使用される。この工程は通常プレセットと呼ばれる。」 シ 甲32-2 (ア)甲32-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000025.jpg] 」 (イ)ヒートセットに関する技術常識 上述(ア)に記載されているとおり、ヒートセットとは合成繊維に高温熱処理を施し、形態や特性値の固定化を図ることを意味することが技術常識として知られている。 ス 甲33 甲33には、以下の事項が記載されている。 「この織物を100℃の熱水中で30分間リラツクス処理したのちNaoH30g/lを含むアルカリ水溶液中で、98℃にて120分間処理し、次いで120℃で3分間乾燥した。 乾燥布に鉱物油を主成分とする油剤を付与し、次いで33番針布を有する針布起毛機により、30m/分のランニングスピードで15回起毛処理を施した。次いで、この起毛織物にピンテンター型のヒートセツターで170℃にて30秒間のプレセツトを施した。その後、デユラノールブルーG(C.1.No.63305.I.C.I社製分散染料の商品名)を4%(織物重量を基準として)酢酸を0.2ml/lおよびナフタレンスルフオン酸をホルムアミドの縮合生成物を主成分とする分散剤1g/lを含む水性染色浴中で130℃60分間の染色を行つた。染色后は常法に従つて還元洗浄を施こした。」(5欄1行~6欄3行) セ 甲34 甲34には、以下の事項が記載されている。 「【0028】 [実施例1] 28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、・・・トリコット編地を得た。 【0029】 得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、液流染色機で分散染料としてDIANIX BLACK HLA(ダイスタージャパン株式会社製)を用い、染色濃度4.3%owf(染着量1.16質量%)にて、130℃で30分間染色した。染色後のトリコット編地をヒートセッターにて130℃で1分間熱処理して乾燥して、本発明の編物を得た。 得られた編物のL*値は11.4、耐摩擦性は乾布4-5級、蒸留水浸漬布4-5級、人工アルカリ性汗液浸漬布3-4級であった。」 ソ 甲35 甲35には、以下の事項が記載されている。 「【0067】 得られた立体経編地の生機を、ヒートセッターにより190℃で1分間熱処理してプレセットした後、液流染色機により分散染料にて130℃で30分間染色し、ヒートセッターにより150℃で1.5分間熱処理して乾燥した。」 タ 甲36 甲36には、以下の事項が記載されている。 「【0016】本発明における織物の染色仕上げ法については、生機セットを施したあとは、特に限定されるものではなく、従来のポリエチレンテレフタレート繊維の織物の染色加工方法と何ら変わるものではない。一般的な染色仕上げ加工工程は、精練糊抜き-プレセット-染色-仕上げ加工という工程になる。必要に応じて染色前に減量加工を施してもよい。また、プレセット工程は必要に応じて省いてもよい。また、染色加工するに当たり、通常染色前に実施される精練、漂白あるいは例えばセルロース系繊維交織の場合にセルロース系繊維の染色性改善のためのアルカリ処理、ポリエステル系繊維で実施されるアルカリ減量などの前処理は何ら構わない。」 チ 甲37 甲37には、以下の事項が記載されている。 「【0040】得られた延伸糸Aを用いて経糸密度118本/吋,緯糸密度89本/吋の平組織の織物を製織し,本発明で用いる布帛を得た。 【0041】得られた布帛に常法にてリラックス精練,乾燥を行った後,ヒートセッターを用いて,190℃で1分間の熱処理を行い,その形状を記憶させた。 【0042】次に,花柄の金属ロールとコットンロールの組合せで構成されたエンボスカレンダー加工機を用い,金属ロールの凹凸の深度が0.5mm(水準1とする)のものと,2.0mm(水準2とする)のものをそれぞれ用いて,加工温度120℃,プレス圧60kg/cm,加工速度17m/minの条件で低温カレンダー処理を行った。このとき,本発明との比較のために,金属ロールの凹凸の深度が0.03mm(水準3とする)のもの,および深度が2.5mm(水準4とする)のものをそれぞれ用いて,同様にエンボスカレンダー処理を行ったところ,深度が2.5mmの金属ロールを用いて加工した布帛については,凸部と凹部の境界線で布帛の破断が発生したため,この水準の以降の試験を取り止めた。 【0043】続いて,直径200mmのロール6本の表面に各々粒度240番のサンドペーパー(理研ノートン社製)を捲きつけたエメリー起毛機を用いて,ロール回転数が1000rpm,布帛との接触圧力8.7g/cm2,加工速度20m/minの条件にて起毛加工を行った。 【0044】この起毛加工を施した布帛を Kayalon Polyester Blue 2R-SE(日本化薬株式会社製,分散染料)1%owfで染色し,乾燥した後,ネットコンベアー型乾燥機にて170℃で5分間の熱処理を行い,本発明方法による加工布帛,及び水準3にてエンボスカレンダー処理した比較用の加工布帛(比較例1とする)を得た。」 ツ 甲38 甲38には、以下の事項が記載されている。 「実施例 ・・・経密度 210本/inch、緯密度 140本/inchの5枚朱子の織物を織製した。 この織物をリラックス精練機SOFCER(日本染色機械(株)製)にて、95℃の温度で40秒連続的に処理し乾燥したところ、経7%、緯18%収縮した。 しかる後、ヒートセッター(東レ、エンジニアリング(株)製)にて、180℃の温度で30秒の有幅プレセット後、名南製作所(株)製バフ起毛機で320メッシュのサンドペーパーを用い緯糸が多く見られる裏面を4回起毛処理した。その後、サーキュラー染色機(日阪製作所(株)製)にて、130℃×30分間染色した。」(4ページ右下欄下から6行~5ページ左上欄下から4行) テ 甲39 甲39には、以下の事項が記載されている。 「【0024】以上のようにして得られた編成生地(編地)に、リラックス処理及び精練処理を施すと共に分割処理を施した。即ち、この編地を、苛性ソーダ20g/l及び界面活性剤1g/lの水溶液(温度95℃)に浸漬し、浴比1:50で時間30分の条件で、リラックス処理及び精練処理を兼ねて、分割型ポリエステル系繊維に分割処理を施した。分割処理を経た後、この編地を水洗及び乾燥した。その後、市金工業株式会社製のヒートセッターにて、編地の経,緯共に低張力で、170℃で30秒間プレセットを行なった。 【0025】プレセット後、下記の条件で染色仕上を行ない、編地に収縮処理及び染色加工を施して、高密度布帛を得た。」 ト 甲40 (ア)甲40には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000026.jpg] 」 (イ)ベルベット織に関する技術常識 上述(ア)のとおり、ベルベット織りとは、平織りした2枚の布をパイルで1枚2層の状態に織り合わせ、カッターによって2層の間のパイルを切り 開いて製織するものであることが技術常識として知られている。 ナ 甲51 甲51には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000027.jpg] 」 ニ 甲53-1 甲53-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000028.jpg] 」 ヌ 甲53-2 甲53-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000029.jpg] 」 ネ 甲90-1 甲90-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000030.jpg] [図:0001428396000031.jpg] 」 ノ 甲90-2 甲90-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000032.jpg] 」 ハ 甲96 甲96には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000033.jpg] 」 ヒ 甲100-3 甲100-3には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000034.jpg] 」 フ 甲101-2 甲101-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000035.jpg] 」 へ 甲114 甲114には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000036.jpg] 」 ホ 甲119-1 甲119-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000037.jpg] [図:0001428396000038.jpg] 」 マ 甲120-1 甲120-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000039.jpg] 」 ミ 甲121-1 甲121-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000040.jpg] ・・・ [図:0001428396000041.jpg] [図:0001428396000042.jpg] ・・・ [図:0001428396000043.jpg] ・・・ [図:0001428396000044.jpg] [図:0001428396000045.jpg] ・・・ [図:0001428396000046.jpg] 」 ム 甲127-1 甲127-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000047.jpg] ・・・ [図:0001428396000048.jpg] [図:0001428396000049.jpg] [図:0001428396000050.jpg] 」 メ 甲127-2 甲127-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000051.jpg] 」 モ 甲128-3 甲128-3には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000052.jpg] 」 ヤ 甲129 甲129には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000053.jpg] 」 ユ 甲133-1 甲133-1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000054.jpg] ・・・ [図:0001428396000055.jpg] 」 ヨ 甲140-2 甲140-2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001428396000056.jpg] ・・・ [図:0001428396000057.jpg] ・・・ 」 ラ 口頭審理陳述調書 (ア)口頭審理陳述要領書 令和4年4月1日(差出日)の被請求人が提出した口頭審理陳述要領書には、以下の記載がある。 「5.陳述の要領 ・・・ (2-2)1(2)について 従来技術の問題点を把握した時点は、出願日の1年ほど前の平成27年~28年初めごろである。 解決の着想を得た時点も同じころではあるが、実証試験を行わずには効果の確信を得られなかった。そこで、実証試験を重ねて、再現性の高い実施条件を特定していき、発明が完成したのは、平成28年12月に入ってからである。 発明を完成するに至った試験等は、「蒸し工程」~「乾燥工程」については(株)新栄染色の工場内、その他の工程については(有)ブイテックの工場内で行っていた。外部に公開する予定もなかったため、特に証拠は残していない。」 (イ)証人 証人長谷川俊明は、令和4年4月22日、特許庁審判廷において宣誓のうえ、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。 a 「請求人代理人弁理士 川崎 仁 ・・・ 020 分かりました。それで次に(b)に移ります。この発明に至った経緯を示す日誌とか、あるいは日誌に似たようなものはありますか。普通はラボ日誌とかそういうものがあると思うんですけど、走り書きでもいいんで何か残っていたらと思うんですが。 日々の改良をたくさんしておりましたので、それも2年、3年の間に改良を重ねてきましたから、そういうものは残っておりません。 021 何にも残っていないということですか。 はい、残っておりません。 022 (c)に行きます。この発明を特許出願する際に、弁理士さんに提出した書類は何かありますか。 ほとんどが私自身が現場で改良を重ねてきたということもありまして、それを弁理士さんに口頭でお伝えして、まとめていただいた経過です。 023 そうすると、一切何も残っていないと。 残っておりません。」 b 「請求人代理人弁理士 川崎 仁 053 今のところで蒸しと、それからヒートセットの関係を述べていらっしゃるんですけども、本件特許明細書の段落15ではしたがってと……。 やっぱり資料見ながらの答えでないとどうなんすか。 審判長 054 段落15お見せしてよろしいですか。 請求人代理人弁理士 川崎 仁 055 結構です。 本件特許公報の段落15を示す 審判長 056 どういったものをご覧になっているか確認させてください。 審判官 藤原 直欣 057 請求人側もお立ちになって、何の資料を見ているか確認されたほうがこういう場合いいんですけれども、どうされますか。 請求人代理人弁理士 川崎 仁 058 結構です。これは段落の15というのは、発明の効果の最後というか結論的な効果を述べるところで、したがってと入ってます。ちょっと読みますと、本件発明の立毛シートの製造方法によれば、蒸し工程による湿潤下における加熱処理と、乾燥工程による湿潤下における加熱処理とが相まってとなっているんですね。これは蒸し工程と乾燥工程は単独の話で、プレセットとは一切関係のない話なんですね。今回の先ほどのところによりますと、関係性を述べているんですが、それは新しいことではないですか。これとは関係ないんじゃないですか。 審判長 059 それは証人が経験された話じゃないですよね。証人の意見を聞いていらっしゃるんですね。 請求人代理人弁理士 川崎 仁 060 そうです。でも、証人がこういうふうにおっしゃったのを明細書で作ったわけですから、その当時は、証人はこういう認識だったわけですよね。 審判長 061 ということを確認したいということですか。 請求人代理人弁理士 川崎 仁 062 そうです。 審判長 063 いかがですか、証人。 よく理解できませんけど……。 審判長 064 理解できないというのは質問が理解できないと。 ええ。蒸し工程が要は今回の技術特許のキーポイントなんですね。なぜか言いますと、ここには書いてませんが、私は大学出ましたときに、やはりこの専門の繊維機械技術を習得しておりまして、そのときから長年、私、約60年、失礼、50年近くこれを専門に取り組んでいまして、各東レとか帝人というメーカーとも随分技術交流やってきました。その中でいつどこでということは申し上げられませんが、湿熱を与えること によって、合成繊維の分子配列を整えるという大きなメリットがあるんですね。分子配列を整えることによって繊維が、あとヒートセットしようと、ヒートセットなくしても、非常に安定して、性質が全体のバランスが良くなりまして、そして繊維の弾力性というんですか、こしが強くなるというデータはたしか各メーカーさん教えてくれていたと思います。それにヒートセットを加えることによって、より効果が高くなったというために、蒸し工程の後にヒートセットを加えるということに到達しましたので、そのことはここでは詳しく書いてませんけど……。」 c 「請求人代理人弁理士 増田 健 ・・・ 089 それから、(d-1)ですけども、発見、取得の場所ということなんですけども、陳述書でしたかね、28年12月27日の出願のところ、12月に入って発明なさったと書いてありますけども、発見、取得の場所はどこなんでしょうか。先ほど立毛性が悪いので改良したということで、それが動機になって発明なさったんですよね。 パフを染めるために新栄染色を持ったという状況もありますから、工場の中です。 090 そのときどんなメンバーだったか。 染色する担当者2名と関連の長と3名ですね。と私です。 091 一緒に発明なさったんですか。 そうですね。改良をしてまとめ上げて、先生にお願いしたということですから。 092 その2人も発明者なんですか。 蒸す人、染色する人、ヒートセットする人、みんなばらばらですからね。」 d 「審判長 118 それでは、特許庁側から質問させてください。これは長谷川さんのプライバシーに属することなんで答えたくありませんでも結構ですから、質問させてください。長谷川さん、大学卒業されたっていうことでよろしいんですか。 そうです。 119 もし差し支えなければ、どこの大学の学部学科教えていただければ幸いですけど。 関西大学の機械繊維工業。 120 機械繊維工業学科。 はい。 121 分かりました。さらに突っ込んでいいですか。 はい。 122 その学校で研究室に配属されたというご経験はありますか。 ええ、もちろんゼミで。 123 私も理解できるかどうか分からないですけれども、そのゼミで研究されたテーマかなんかあったんですか。 ありました。 124 そのテーマをもし覚えていらっしゃったなら教えていただけますか。 たしか、スチームの威力についての研究。」 e 「審判官 藤井 眞吾 130 今蒸しによって繊維のこしが強くなるというふうに。それで今回の発明にたどり着いたというお話だと理解したんですけども、要するに平成28年12月に出願する前まで、蒸しのないような状態で立毛シートを製造されていたということでよろしかったでしょうか。 いえ、それは全てじゃありませんので、蒸し工程をどの工程の前後に入れるか、後に入れるか、先に入れるか、ヒートセットの後ろに入れるか、染色の後に入れるのか、工程が3つか4つありますから、それを組み合わせするのに4工程ありましたら4の4乗ぐらいですから、何百という組み合わせができるわけですね。その組み合わせの中で初めてヒートセットの前に蒸しをしたほうがいいということに気が付きまして、ようやくたどり着きました。 131 その前の質問に戻るんですけども、本件の発明をされる前まではどういった工程で立毛シートを製造されていたのかをお伺いしたいんですけども、具体的にはどういった工程だったんでしょうか。 蒸しの工程を入れるというのは、さっきも申し上げましたように各メーカーさんの文献にも載っておりますんで、分子構造の配列を整えることが蒸しをすることによって整いやすいということが私の頭の中にインプットされてましたが、それに気が付くのが非常に遅れまして、蒸し工程を入れないでやっていた時期が随分長かったんです。 それはやっぱりその日その日によって乾燥の温度、スピード、環境の湿度、これによって非常に左右されまして、ある日はいいものが上がる、あるいは全滅に駄目になってしまう、あるいは半分だけいいというような品質、不安定な期間というのが非常に長かったんですけども、蒸し工程をプレセットの前に入れることによって、安定性が格段に良くなった。100%完全かというと、どうしても作業者の仕事のばらつきもありますので、あるときは不安定な商品も出ることもありますけど、確率的に非常に良くなったということははっきり申し上げられる。」 f 「審判長 135 1つお伺いしたいんです。久保が質問します。今長谷川さんがご経験したご苦労を聞かせていただきました。すごく多くの試行錯誤を繰り返されたというふうに受け止めてます。なのに、発明ノートとかそういったことを記録したものがないというのは、私にとってはにわかには信じられない。なぜならば、何回も何回もテストされてますよね。そうするといろいろなテスト条件や何かがそのたびにノートにとっていって、この方向で行くとどうもあまり良くないから、じゃこの方法を変えるかというんで、またテスト条件を変えて記録をとり続けて、それを今度フィードバックして、あしたはこういうようなテストにしていこうかというふうな、そういうのが私の理解する一般の研究開発活動じゃないかなというふうに私自身は思っているんですけども、長谷川さんはノートや何かを作らないと今日御証言されたんですけども、そういったことをやらなくて、発明とかそういった開発活動がうまくいったのかなと不思議な気持ちになるんですけども、そこのところのご苦心を教えていただければうれしいですけども。 確かに私、ブイテックのオーナーでもあり、要は織り、染め、販売を一貫してやっていくのが私の夢でして、それを着々とやってはきて、ここ20年ほどそのときでやってきまして、寝る時間がないほど現場の中にも入り込み、考えることも考え、販売までも足を伸ばしておりまして、非常に多忙だった。各現場での資料は随分あります。だけど、残念ながら新栄染色も会社がありませんので、現場のいろんな資料はたくさんありますが、管財人のほうへ全部渡されておりまして、そんなややこしい話をするわけにいきませんのでありませんでしたけど、私自身の資料はありませんが、各工程ごとには責任者がいましたので、その責任者たちはたくさんの資料を作っていたのは見ております。 136 資料は作られていると、会社の中で。それぞれはそれぞれの持ち場はもちろん資料を作っていたはずなんだけど、しかし、不幸なことに経営的にある種の事情があって、それは管財人に渡さざるを得なかったと。それきりになっているんで、ただ長谷川さんのお手元に今はないということをお答えいただいたということですね。 はい。ありません、今は。」 g 「請求人代理人弁理士 増田 建 143 弁理士の増田です。ということは、21年ごろ出たと思われるカタログを甲40号証として出していますが、経過のところに21年に立毛シートを発売しているように書いてあるんですが。 甲第40号証を示す 審判長 144 甲40号証のどこのページ。 請求人代理人弁理士 増田 建 145 甲40号証の沿革ですね。 審判長 146 2ページ目ですね。括弧付きの沿革でいいんですよね。 請求人代理人弁理士 増田 建 147 はい。平成20年にパフ素材のロングパイル生産に着手。これは立毛シートとは違う。 ロングパイルでしょう。立てではありません。さっき申し上げたように。 148 ダイエーとかタイキにパフ用の立毛シートを納品なさったのはいつごろからなんですか。発明される28年の12月からですか。 28年以前もやっておりました。ただ安定していなかったということです。 149 安定していなかったということは、(A)(B)(C)(D)の順にはやってなかった、(C)の蒸し工程はやらなかったから、どこか他のところの工程でやった。 やってなかったんでしょうね。安定していなかったんですから。 150 安定しない理由というのは、(c-1)だけの話なんですか。いろんな条件があると思うんですが、温度とか回転の速さとか秒数とかいろんな条件があると思うんですけども、大ざっぱな(A)(B)(C)(D)(E)(F)(G)という順番も決まっていなかったわけですか。28年11月までは。 確かに100%というんですか、9割とか9割5分のA品ができていなかったということだけは間違いありません。他のメーカーさんがいいものができていなかったことがありまして、渋々お客さんには納めてまして、お客さんも仕方なし、他にないわけですから、使ってもらってましたけど、採算が合わなかったですね。」 h 「請求人代理人弁理士 川崎 仁 183 先ほどから伺ってますと、この発明をなさったときにいろいろ実験はなさっていたと。それで、そのときに新栄染色さんでおやりになったと。それでそのときに長谷川さんほか3~4名の方が一緒におやりになっていて、それでそういう方からの助言というか意見を聞いておやりになったということだと思うんですが、今お聞きしているのを見ると、長谷川さんが主に指揮監督なさったように聞こえたんですが、それはいかがなんでしょうかということが1つ。 審判長 184 じゃ、1つずつお願いします。証人、ご質問は分かりましたかね。 はい。 185 じゃ、ご回答いただいていいですか。 指揮監督という意味ですか。 請求人代理人弁理士 川崎 仁 186 他の人はどうしたんですか。何をやったんですか。 さっき申し上げたように、各工程ごとに皆さん分かれてますから、それを総まとめにするのは私しかおりませんでした。以上です。」 i 「審判官 藤原 直欣 234 ええ、証人尋問の枠内。今の請求人側からも何人か担当者がいて、発明が造られたんじゃないかというような話がございましたけれども、通常ですと弁理士の先生と打ち合わせするときにメモなど残るんですけど、その打ち合わせのときには何名いらっしゃったんですか。 あくまでも私が総括して、まとめて渡しておいて先生に。 235 先生と1人、2人で話されてこの明細書を作られたということですか。 はい。 236 特許明細書というのは、ご存じのとおり、発明のポイントだけではなく、その後のプレセットもしくは乾燥工程までいろいろなものがあって、なおかつ課題の話とか従来技術の話もあるんですけれども、その専門家の方たちの話というのは、どうやって先生に伝えるわけですか。 私はあくまでも技術的な特許を申請したいということでしたから、技術的な部分については、各担当者は部分的にしか知らないですね。それをまとめているのは私ですから、私が先生のところに行ってやりました。 237 その方々がいない中で先生に専門的な末尾の乾燥工程まで伝えるというのは、何か書類なしじゃないと普通はしゃべられないと思うんですけれども、それはどうされたんですか。 私は、もともと何遍も言いますけど技術屋ですから、その辺は全部頭の中に入ってました。 238 分かりました。こちらの明細書を見ると、もともと最後にブラシをかけるとかいう話が本件発明ではブラシをかけなくてもよくなったという感じなんですけど、最終的に特許になったクレームはどういうクレームであるかというのはご存じですか。ブラシ工程について。 ブラシ工程が入っていたかどうかということですか。 239 ええ。 たしか入っていなかったと思います。 240 入っていないという認識でクレームになっているという認識でしょうか。 はい。 241 あと乾燥工程というのがあるんですけれども、乾燥工程というのはどういった感じの工程を先生に説明されたんでしょうか。 乾燥工程は、さっきも申したみたいに振動を与えながら熱を加えることによって立毛性が出てくるわけですね。 242 明細書を先生が作るに当たって、どういった乾燥工程を先生に情報を伝達されましたか。 それはタンブラー方式、回転しながら熱風を送る方式で申し上げたと。 243 せっかく立ち上がったプレセットで形態安定させているものをタンブラー工程で乾燥させたらどうなっちゃうとお考えですか。タンブラー乾燥はどういった状態で乾燥されるんですか。その製品は。 ですからヒートセットした後に精練工程もあるし、染色工程もありますので、完全にぬれてしまうんですね。ぬらしちゃうんですね。それをヒートセットで通さなくてタンブラーでやったというのは、ぬれた状態で立毛性が全くなくなっているものをヒートセッターでやりますと、それがそのまま固定化されちゃいます。立毛しません。ですからそれを立毛するためには、タンブラーで振動を与えないと駄目だということで、その試験をどっかりやりまして、条件を見つけてようやく完成したということです。 244 タンブラーですと、方向性を与える感じで乾燥させるわけではないんですけど、それはなぜ寝っ転がったものが立つという感じになるんでしょうか。 あらゆる角度から振動を与えていきますから、立毛になりやすいと。 245 むしろ折れちゃうんじゃないのかなという感じがしますけど。 逆ですね。結果は逆でした。 246 それはどういったメカニズムというふうな感じで推測されていたんでしょうか。 やっぱり織物自身を織物がたたく。上に上がって下にどんと落ちる。それを回数重ねながら、熱風を送りながらやることによって、繊維がセットした状態で戻っていくということです。 247 明細書の記載の中に、特にお示ししなくても結構なんですけ れども、工程の最後に衝突を繰り返すことによって、たたき作用による立毛性を向上させるとあるんですけども、衝突を繰り返したらむしろ折れちゃうんじゃないかという明細書になっているんですけど、そこら辺はどういった感じで情報を伝達されたんですか。 ですから合成繊維という織物は熱可塑性……。 248 合成繊維ですよね。 繊維です。 審判長 249 だからいわゆるプラスチックや何かの合成繊維。もともとプラスチックと同じはずですから。ポリエステル繊維の場合は、振動を与えることによって元の形に戻っていくということです。 審判官 藤原 直欣 250 そういったものを全部先生のほうに口述で伝えたみたいな感じのことが1~2カ月間、先生さっきおっしゃいましたが、その間に行われたという理解でよろしいですか。 そうです。」 j 「被請求人代理人弁理士 愛宕 淳一 269 被請求人代理人の愛宕です。先ほど発明が完成するに至ったとき、新栄染色の現場を見て、織り工程の担当者、染色工程の担当者、現場はいたんだけど、その方が発明に実質的にどうか関わったのかということをお聞きしたいんですが、その方が単に社長さんが指示するだけで、その指示どおりに動いてやったのか、積極的に試験結果を発明者である社長さんとやりとりして、みんなで共同で発明したのか、どちらかということをもう一度確認したいんですが。 はっきり申しまして、各担当者のレベルがそんなに高くなかったもんですから、提案もなければ、ただ言われたとおりにやったという程度の方々が非常に多かったので、私が全ての指示を、一方的にデータを見た上で次の指示を出す、改善しては出すという形を取ってました。」 2 無効理由2(サポート要件)について 事案に鑑み、まず無効理由2(サポート要件)について検討する。 (1)本件特許の明細書及び図面の記載事項 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、繊維製品の製造技術の改良、更に詳しくは、簡素な工程で、長めの立毛パイルであっても立毛性を確実に付与することができ、特に、化粧用具の材料に適した立毛シートの製造方法に関するものである。」 イ 「【背景技術】 【0002】 周知のとおり、ファンデーションやフェイスパウダーなどの化粧料を顔に塗布するために、「パフ」と呼ばれる盤状の肌触りの良い柔軟素材の化粧用具が使用されている。 【0003】 従来、このようなパフの材料としては、柔軟性の良好なスポンジ製のものや立毛構造のものなどが採用されており、油分や水分の多いファンデーションなどにはスポンジ製のものが適している一方、油分や水分の少ないパウダータイプのものには立毛織物のもの(例えば、特許文献1参照)が適している。 【0004】 ところで、かかる立毛構造のパフにあっては、顔というデリケートな皮膚における使用であることから、肌のトラブルの原因とならないために、立毛部分に十分な柔軟性が必要であり、そのためには立毛部分を長くするという手段が考えられる。 【0005】 しかしながら、このような立毛部分の長い立毛シートを製造するにあっては、加工工程において立毛同士が静電気等で絡み合い易く、うまく整毛できないという問題があり、また、使用を重ねる毎に立毛部分が倒れてしまうことから、柔軟性を確保しつつも立毛性を保たなければならないという二律背反的な課題がある。 【0006】 また、従来、立毛部分に立毛性を付与するためには、仕上げ工程として立毛部分をブラッシングすることが行われているが、別途ブラッシング装置が必要となって製造コストが嵩み、しかも、生地の表面にブラシ針を押圧して摺動させるために生地への負担が大きく、立毛部分を損傷してしまい柔軟性を損なうおそれがあった。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、従来の繊維製品の製造技術に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、簡素な工程で、長めの立毛パイルであっても立毛性を確実に付与することができ、特に、化粧用具の材料に適した立毛シートの製造方法を提供することにある。」 エ 「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。 【0010】 即ち、本発明は、熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程と、 前記パイル糸をカットして2枚の立毛シートを形成する切断工程と、 この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程と、 前記立毛シートをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程と、 前記立毛シートを洗浄する精練工程と、 前記立毛シートを染料により着色する染色工程と、 脱水機により前記染料を脱水する脱水工程と、 前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程とを含んで構成するという技術的手段を採用したことによって、立毛シートの製造方法を完成させた。 【0011】 また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蒸し工程において、スチーマー内で立毛シートを垂下させた状態で配置して蒸すという技術的手段を採用することができる。 【0012】 更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、乾燥工程において、タンブラーにより回転させながら立毛シートを熱風で乾燥させるという技術的手段を採用することができる。 【0013】 更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、切断工程後のパイル糸の長さを、織物基布から3~10mmの範囲で突出させるという技術的手段を採用することができる。」 オ 「【発明の効果】 【0014】 本発明は、熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程と、前記パイル糸をカットして2枚の立毛シートを形成する切断工程と、この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程と、前記立毛シートをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程と、前記立毛シートを洗浄する精練工程と、前記立毛シートを染料により着色する染色工程と、脱水機により前記染料を脱水する脱水工程と、前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程とを含んで構成したことによって、簡素な工程で、長めの立毛パイルであっても確実に立毛性を付与することができ、特に、化粧用具の材料に適した立毛シートの製造することができる。 【0015】 したがって、本発明の立毛シートの製造方法によれば、蒸し工程による湿潤下における加熱処理と、乾燥工程による湿潤下における加熱処理とが相俟って、熱可塑性繊維糸が収縮して熱履歴によって織物基布の地組織を確実に締め付けるとともに、立毛部分も収縮して熱履歴によって高い立毛性を得ることができる。 【0016】 また、必要に応じて、乾燥工程にタンブラーを使用することによって、蒸し工程のスチームセットとタンブラー乾燥とを組み合わせることにより、「乾燥」と「立毛」をタンブラー1工程で処理することが可能となり、化粧用具に適した柔らかいパフ素材を提供することができる。 【0017】 このようにして、従来のような大きなブラッシング付き乾燥機で処理する ことなく、それ以上の風合いの良い生地を低コストで簡単に実現できることから、産業上の利用価値は頗る大きい。」 カ 「【発明を実施するための形態】 【0019】 本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。本発明は、特に、化粧用パフ等の化粧用具に適した生地を形成するための立毛シートを製造する方法であって、まず、公知の織機(パイル織物用織機)を使用して、熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する(ステップ〔1〕:製織工程)。 【0020】 本実施形態では、織物基布の使用材料として、熱可塑性繊維糸(好ましくはポリエステル糸:30~100デニール(33.33~111.1デシテックス))を採用するとともに、パイル糸の使用材料として、同じく熱可塑性繊維糸(好ましくはポリエステル糸:50~150デニール(55.55~166.65デシテックス))を採用する。 【0021】 次に、前記パイル糸をカットして2枚の立毛シートを形成する(ステップ〔2〕:切断工程)。本実施形態では、前記製織工程後に同一織機内において直ちに切断を行う。切断工程後のパイル糸(立毛部分)の長さは、織物基布から3~10mmの範囲で突出しているのが好ましい。 【0022】 こうして形成された立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す(ステップ〔3〕:蒸し工程)。本実施形態では、95~110℃で2~3時間蒸す。こうすることによって、熱可塑性繊維糸が収縮して熱履歴によって織物基布の地組織を締め付けるとともに、立毛部分(のフィラメント)が収縮して熱履歴によって立毛性を高めることができる。この際、スチーマー内で立毛シートを垂下させた状態で配置して蒸すことができ、生地全体に均等な熱処理を行うことができる。 【0023】 そして、蒸し上がった前記立毛シートをヒートセッターにより形態安定化せしめる(ステップ〔4〕:プレセット工程)。本実施形態では、立毛シートを広げた状態で両端を固定してヒートセッターに載置し、160~180℃で2分間行う。こうすることにより、布帛としての寸法(ディメンション)を整えることができる。 【0024】 次いで、前記立毛シートを洗浄する(ステップ〔5〕:精練工程)。本実施形態では、ウインス機を使用して、回転するロールによって立毛シートを処理液(例えば、アルカリ剤、非イオン活性剤など)中に順次送り込んで洗浄する(60~70℃で60分間)。こうすることによって、立毛シートに付着している糊剤や汚れを除去することができる。 【0025】 そして、前記立毛シートを染料により着色する(ステップ〔6〕:染色工程)。本実施形態では、染料として、分散染料や酸性染料などを採用し、60~130℃で30~60分間で行い(浸染法)、目的の色を定着させることができる。なお、この染色工程は、前記精練工程において使用したウインス機を使用してそのまま行うことができる。 【0026】 その後、脱水機により前記染料を脱水する(ステップ〔7〕:脱水工程)。本実施形態では、遠心脱水機や真空脱水機、マングル脱水機などを使用することができるが、立毛部分の損傷を防止するために遠心脱水機を使用することが好ましい。 【0027】 然る後、脱水した前記立毛シートを熱風で乾燥させる(ステップ〔8〕:乾燥工程)。乾燥機には種々の装置が採用できるが、本実施形態では、立毛シートを回転式のタンブラーに投入し、回転させながら80~110℃で30~120分間行う。タンブラー内において生地同士が衝突を繰り返すことによって、叩き作用により立毛性を向上させることができ、かつ、この乾燥工程の再加熱によって、更なる熱履歴を与えて、立毛性が良好なソフトな触感に仕上げることができる。 【0028】 こうして製造された立毛シートは、適宜、盤状等の形状に打ち抜かれ、縫い合わせや貼り合わせなどにより、パフなどの化粧用具を作製することができ、長いパイル糸が立毛性良く起立しているため、柔軟性の良いソフトな使用感を得ることができる。 【0029】 本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、熱可塑性繊維糸にはポリエステルに限らず、半合成繊維(アセテート、ジアセテート等)を採用することができる。 【0030】 また、精練工程および染色工程においてはウインス機以外を採用することもでき、更にまた、脱水機および乾燥装置においても他の装置を使用しても良く、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。」 (2)本件発明の課題 本件発明は、「簡素な工程で、長めの立毛パイルであっても立毛性を確実に付与することができ、特に、化粧用具の材料に適した立毛シートの製造方法を提供すること」(上記(1)ウ(【0008】))を課題としている。 (3)課題を解決するための手段 上記(2)の課題を解決するために、本件特許明細書の記載によれば、「長めの立毛パイルであっても立毛性を確実に付与」するための手段として、「蒸し工程による湿潤下における加熱処理と、乾燥工程による湿潤下における加熱処理とが相俟って、熱可塑性繊維糸が収縮して熱履歴によって織物基布の地組織を確実に締め付け・・・熱履歴によって高い立毛性を得る」(上記(1)オ(【0014】~【0016】))ことである。 (4)判断 本件発明1は、「熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程」と、「この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程」と、「前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程」を含むものであって、これらの構成を包含することで、本件発明1が上記本件発明の課題を解決することが理解できる。 (5)無効理由2のまとめ よって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~4についての特許は、請求人が主張する無効理由2によって無効とすることはできない。 3 無効理由1(甲11発明及び甲12に記載された事項に基づく進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲11発明とを対比する。 甲11発明の「両面綿パイル織物」及び「パイル織物」は本件発明1の「立毛シート」に相当する。 甲11発明の「地経糸としてアクリル繊維100%の52番手双糸を、地緯糸およびパイル引出し用抜緯糸としてとしてポリエステル繊維バルキー紡績糸の30番手双糸を、またパイル糸として綿100%の20綿番手双糸で撚係数α=3.2、上下比55%の綿糸を用い、パイル長を表面4.5mm、裏面5.0mmに設定して製織し」たことは、本件発明1の「熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程」に相当する。 甲11発明の「上下の織物地に掛け渡されたパイル糸をその中央部でカットし」た「二枚のパイル織物」は、本件発明1の「前記パイル糸をカットして」形成した「2枚の立毛シート」に相当する。 甲11発明の「二枚のパイル織物を製造して得られた生機の裏面側の抜緯糸を引き抜く前に蒸し箱にて蒸熱処理(100℃、20分)を行」う構成について検討すると、本件特許明細書に「こうして形成された立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す・・・本実施形態では、95~110℃で2~3時間蒸す」(段落【0022】)という記載があるところ、甲11発明の「100℃」の蒸気は「高温」水蒸気であるといえるから、上記構成は、本件発明1の「この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程」に相当する。 甲11発明の「この織物をウインスで淡いベージュに染色」することは、本件発明1の「前記立毛シートを染料により着色する染色工程」に相当する。 甲11発明の「この織物」を「タンブラ乾燥」することは、本件発明1の「前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲11発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点1] 「熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程と、 前記パイル糸をカットして2枚の立毛シートを形成する切断工程と、 この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程と、 前記立毛シートを染料により着色する染色工程と、 前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程とを含んで構成される立毛シートの製造方法。」 [相違点1] 本件発明1は、「この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程」の後であって、「前記立毛シートを洗浄する精練工程」、「前記立毛シートを染料により着色する染色工程」、「脱水機により前記染料を脱水する脱水工程」及び「前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程」の前に、「前記立毛シートをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程」を行うのに対して、甲11発明は、そのようなプレセット工程を行うことが特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1は、「前記立毛シートを染料により着色する染色工程」の前に、「前記立毛シートを洗浄する精練工程」を行うのに対して、甲11発明は、「この織物をウインスで淡いベージュに染色」する前に、そのような精錬工程を行うことが特定されていない点。 [相違点3] 本件発明1は、「前記立毛シートを染料により着色する染色工程」の後であって、「前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程」の前に、「脱水機により前記染料を脱水する脱水工程」を行うのに対して、甲11発明は、「この織物をウインスで淡いベージュに染色」した後で、「柔軟加工後にタンブラ乾燥」する前に、そのような脱水工程を行うことが特定されていない点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲11には、「蒸熱」、「染色」、「タンブラ乾燥」に加えて、「蒸熱」を経た「両面面パイル織物」であって、「染色」、「タンブラ乾燥」といった工程を経る前のものをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程を備えるべきことの記載はないし、示唆する記載もない。そして、当該事項は甲12に記載された事項ではないし、甲12に示唆する記載もない。 また、ヒートセット又はプレセットに係る証拠である甲12、21、33~39にも、「蒸熱」、「染色」、「タンブラ乾燥」に加えて、「蒸熱」を経た「パイル織物」であって、「染色」、「タンブラ乾燥」といった工程を経る前のものをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程を備えることの記載はないし、示唆する記載もない。 すなわち、甲12には、「・・・パイル織編物を、通常布帛の加工と同じく精練・熱セット・・・などを施し、染色を行なう」(上記1(1)ク(イ))との記載があり、甲21には、「・・・生機を、必要に応じて洗浄剤を溶かした水または適当な温度の温水で洗浄すると同時に、編み、織りで出来た歪みを除去する「プレウェット」工程を通す。ついで、その後の染色工程でのモミ、摩擦等での表面の荒れ、シワ発生を防止する意味と、最終製品の洗濯収縮等を小さくする意味から、比較的高温の乾熱または湿熱での処理が施される。これらの工程には、通常、乾熱セットにはいわゆるセッターが、・・・使用される。この工程は通常プレセットと呼ばれる。」(上記1(1)サ)との記載があり、甲33には、「・・・織物を・・・リラツクス処理したのち・・・アルカリ水溶液中で・・・処理し、次いで120℃で3分間乾燥した。乾燥布に鉱物油を主成分とする油剤を付与し、次いで・・・起毛処理を施した。次いで、この起毛織物にピンテンター型のヒートセツターで170℃にて30秒間のプレセツトを施した。その後、・・・染色を行つた。」、(上記1(1)ス)との記載があり、甲34には、「トリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、・・・染色した。染色後のトリコット編地をヒートセッターにて130℃で1分間熱処理して乾燥して、本発明の編物を得た」(上記1(1)セ)との記載があり、甲35には、「得られた立体経編地の生機を、ヒートセッターにより190℃で1分間熱処理してプレセットした後、・・・染色し、ヒートセッターにより150℃で1.5分間熱処理して乾燥した」(上記1(1)ソ )との記載があり、甲36には、「一般的な染色仕上げ加工工程は、精練糊抜き-プレセット-染色-仕上げ加工という工程になる」(上記1(1)タ)との記載があり、甲37には、「得られた布帛に常法にてリラックス精練,乾燥を行った後,ヒートセッターを用いて,190℃で1分間の熱処理を行い,その形状を記憶させた。・・・次に,・・・低温カレンダー処理を行った。・・・続いて,・・・起毛加工を行った。・・・この起毛加工を施した布帛を ・・・染色し,乾燥した後,ネットコンベアー型乾燥機にて170℃で5分間の熱処理を行い,本発明方法による加工布帛・・・を得た。」(上記1(1)チ)との記載があり、甲38には、「この織物をリラックス精練機・・・にて、・・・処理し乾燥したところ、経7%、緯18%収縮した。しかる後、ヒートセッター・・・にて、180℃の温度で30秒の有幅プレセット後、・・・バフ起毛機で・・・起毛処理した。その後、サーキュラー染色機・・・にて、130℃×30分間染色した。」(上記1(1)ツ)との記載があり、甲39には、「編成生地(編地)に、リラックス処理及び精練処理を施すと共に分割処理を施した。・・・分割処理を経た後、この編地を水洗及び乾燥した。その後、・・・ヒートセッターにて、編地の経,緯共に低張力で、170℃で30秒間プレセットを行なった。プレセット後、下記の条件で染色仕上を行ない、編地に収縮処理及び染色加工を施して、高密度布帛を得た。」(上記1(1)テ)との記載があるものの、これらの証拠には、「蒸熱」を経た「パイル織物」であって、「染色」、「タンブラ乾燥」といった工程を経る前のものをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程を備えることは記載されていないし、これを示唆する記載もない。 したがって、甲11発明において、「蒸熱」、「染色」、「タンブラ乾燥」に加えて、「蒸熱」を経た「パイル織物」であって、「染色」、「タンブラ乾燥」といった工程を経る前のものをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程を備えるようにすることは、甲11、12、21、33~39に接した当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (イ)効果について 本件発明1は、「簡素な工程で、長めの立毛パイルであっても確実に立毛性を付与することができ、特に、化粧用具の材料に適した立毛シートの製造することができる。」(【0014】)及び「蒸し工程による湿潤下における加熱処理と、乾燥工程による湿潤下における加熱処理とが相俟って、熱可塑性繊維糸が収縮して熱履歴によって織物基布の地組織を確実に締め付けるとともに、立毛部分も収縮して熱履歴によって高い立毛性を得ることができる。」(【0015】)という格別な効果を奏するものである。 ウ 小括 よって、他の相違点を判断するまでもなく、本件発明1は、甲11に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記(1)の本件発明1についての判断と同様の理由により、甲11発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (3)無効理由1のまとめ よって、本件発明1~4についての特許は、請求人が主張する無効理由1によって無効とすることはできない。 4 無効理由3(公知公用発明に基づく新規性、進歩性欠如)について (1)本件発明1 ア 本件発明1と甲2発明とを対比する。 ・甲2発明の「ポリエステル系の糸」は、熱可塑性繊維糸である。また、甲40(上述1(1)ト(イ)参照)のとおり、ベルベット織りとは、平織りした2枚の布をパイルで1枚2層の状態に織り合わせ、カッターによって2層の間のパイルを切り開いて製織するものであることが技術常識として知られている。そうすると、甲2発明の「ポリエステル系の糸を用いたベルベット織物を撚糸、織り」を行う工程は、本件発明1の「熱可塑性繊維糸からなる一対の織物基布の間にパイル糸を織り込んで、ベルベット織組織の基材生地を製織する製織工程と、前記パイル糸をカットして2枚の立毛シートを形 成する切断工程」に相当する。 ・甲2発明における「蒸しセット」は、高温の蒸気で蒸す工程であることは明らかであるから、本件発明1の「この立毛シートをスチーマーにより高温水蒸気で蒸す蒸し工程」に相当する。 ・合成繊維の織物に関し、ヒートセットにより熱を加えて寸法の安定化や風合いを向上させることは、ヒートセットとして甲32-2(上述1(1)シ(イ)参照)のとおり技術常識であるから、甲2発明における「プレセット」は、本件発明1の「前記立毛シートをヒートセッターにより形態安定化せしめるプレセット工程」に相当する。 ・甲2発明における「精錬」、「染色」、「脱水」、「乾燥」は、それぞれ本件発明1の「前記立毛シートを洗浄する精練工程」、「前記立毛シートを染料により着色する染色工程」、「脱水機により前記染料を脱水する脱水工程」、「前記立毛シートを熱風で乾燥させる乾燥工程」に相当する。 ・甲2発明の「パフ用の立毛シートの製造方法」は、本件発明1の「立毛シートの製造方法」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲2発明との間に相違点はなく、してみれば、本件発明1は甲2発明である。 (2)本件発明2 本件発明2と甲2発明を対比すると、両発明は、以下の点で相違する。 [相違点2-1] 本件発明2では、「蒸し工程において、スチーマー内で立毛シートを垂下させた状態で配置して蒸す」ものであるのに対して、甲2発明の「蒸しセット」では、スチーマー内で立毛シートを垂下させた状態で配置しているか不明である点。 当該相違点について検討するに、織物を蒸すにあたって、蒸し箱、すなわちスチーマー内で垂下させた状態で配置して蒸すことは、甲14(上述1(1)ケ(イ)参照)のとおり蒸し工程に関する周知技術である。 そうすると、甲2発明における当該蒸し工程において当該周知技術を採用し、当該相違点2-1に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者であれば容易に想到する。 (3)本件発明3 本件発明3と甲2発明を対比すると、両発明はさらに以下の点で相違する。 [相違点2-2] 本件発明3では、「乾燥工程において、タンブラーにより回転させながら 立毛シートを熱風で乾燥させる」ものであるのに対して、甲2発明では、単に「乾燥」としており、タンブラーにより回転させながら乾燥させているか不明である点。 当該相違点について検討するに、織物を乾燥させる際、タンブラーにより回転させながら乾燥させることは、例えば、甲12(上述1(1)ク(ウ)参照)にもあるとおり周知技術である。 そうすると、甲2発明の乾燥工程において、当該周知技術をさらに採用し、当該相違点2-2に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者であれば容易に想到する。 (4)本件発明4 本件発明4と甲2発明を対比すると、両発明はさらに以下の点で相違する。 [相違点2-3] 本件発明4では、「切断工程後のパイル糸の長さを、織物基布から3~10mmの範囲で突出させる」ものであるのに対し、甲2発明ではこの点が不明である点。 当該相違点について検討するに、パイル糸の長さは、当該ベルベット織物をどのような用途で用いるか等に応じて当業者が適宜設定すべき事項であるし、例えば、甲12の第4ページ左下欄第16、17行において「二重ビロード織機にて、パイル長10mmの布帛を作った」と記載されるように、10mm程度のものは周知である。 そうすると、甲2発明において、パイル糸の長さを織物基布から3~10mmの範囲で突出させるものとすることは、当業者であれば容易に想到する。 (5)被請求人の主張について 被請求人は、答弁書において、当該甲53-1文書(すなわち甲2文書)に関する内容は断片的な工程を示したに過ぎない未完成なものである旨主張する。しかし、上述1(1)ウ(イ)aのとおり、甲53-1文書による製造工程は、タイキに納入する商品であるパフ用立毛シートの製造方法として、平成23年10月頃に新栄染色で実施していたものであり、この頃までには発明として完成していたものであることは明らかである。 また、甲53-1文書では、糊抜きと染色の間に脱水があるが、本件発明1~4は各工程を「含んで構成」としており、追加の工程について排除していない。さらに、タンブラーによる乾燥についての判断は、上述本件発明3で述べたとおりである。 (6)無効理由3のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1は特許法第29条第1項第1号に該当し特許を受けることができないものである。また、本件発明2~4は同条第2項の規定に違反してなされたものであり、同様に特許を受けることができないものである。 5 無効理由4(冒認出願)について (1)はじめに 冒認出願を理由とする特許無効審判の請求は、特許を受ける権利を有する者に限られるから、請求人は、自らが特許を受ける権利を有する者であることを証明する必要がある。そして、本件においては、請求人2が発明者として有していた本件発明に係る特許を受ける権利に由来するものであるから、請求人2が本件発明の発明者であると認められる必要がある。 ここで、発明者とは、発明の技術的思想の創作行為に現実に加担した者であって、課題解決手段に係る発明の特徴的部分の完成に現実に関与した者をいうところ、本件発明における課題及び解決手段について確認する。 (2)本件発明について 本件明細書における上述2(1)の記載事項に照らすと、本件発明は、特に化粧用具の材料に適した立毛シートの製造方法において、立毛シートの柔軟性を確保しつつ立毛性を保たせるのが困難であったこと、また、立毛部分に立毛性を付与するため、仕上げ工程として立毛部分をブラッシングすることが行われているが、製造コストや生地への負担が大きかったため、これらを解決すべく、簡素な工程で、長めの立毛パイルであっても立毛性を確実に付与することができ、特に、化粧用具の材料に適した立毛シートの製造方法を提供することを課題としている。 そして、本件発明では、蒸し工程と乾燥工程の双方を用いることによる相乗効果により、高い立毛性を得ること、また、本件発明3に関しは、乾燥工程にタンブラーを使用することでブラッシング付き乾燥機の使用を不要とすることが当該課題解決手段に係る発明の特徴的部分であると認められる。 (3)発明者について ア 蒸し工程と乾燥工程に関して 蒸し工程と乾燥工程に関して、甲1-1(上述1(1)ア参照)によると、以下の点が認められる。 (ア)請求人2は、昭和30年頃から染色工場(日本化工有限会社)に勤め、ベルベット織物に対して染色加工を行っていた。 (イ)昭和40年ごろには、合成繊維製のベルベットが製造されるようにな り、株式会社杣長からその染色工程の委託を受け、プレセット、すなわち乾燥工程の前に蒸し工程を行うとパイルが立毛になること、また、蒸しの温度や時間を設定するなど行っていた。 (ウ)平成18年頃には新栄染色の代表者に就任し、白崎ベルベツト工業有限会社や被請求人が製織した合成繊維のベルベット繊維に染色加工を行い、パフ用の立毛シートを製造していたが、新栄染色は蒸し箱を有していなかったため、他の事業者に委託して蒸し工程を行っていた。 (エ)その後、立毛シートを本格的に新栄染色で製造するため、90℃~110℃の蒸工程を行える低価格の蒸し箱を設置した。 (オ)また、被請求人の当時の代表取締役であった玉村氏には、平成18年以前から蒸し工程を含む染色工程を教えており、平成18年頃には工程の具体的な指導を行っていた。 (カ)平成26年頃には、玉村氏の依頼により、丸平染色株式会社の専務取締役である樋勝美氏に対し、合成繊維のベルベット織物の製織からプレセット及び蒸し工程を含む染色工程の指導を行っていた。 これに関し、甲119-1(上述1(1)ホ参照)、甲120-1(同マ参照)によると、平成20年ごろには新栄染色に蒸し箱が設置されていたとされ、甲133-1(同ユ参照)にも、新栄染色のパンフレットに蒸し箱が記載されていることからみて、この頃には新栄染色に蒸し箱を設置していたとする甲1-1と整合的である。 さらに、甲119-1では、福田が新栄染色に入社した平成20年頃において、「その当時は土橋社長がおられ、指示や指導を受けながらパフ生地の染色加工のテストや中量生産に従事していました」とされ、甲120-1では、平成17年から平成29年頃にブイテックに就職していた辻が「土橋社長は、温厚な人柄で無知な私に繊維、染色を一から教えて頂き手法、アイデアなどを持ち備え仕事一筋の職人肌であったと記憶しています。」としており、甲10(同カ参照)では丸平染色株式会社の樋が「そして、京都在住の関係者という土橋誠治氏が平成27年夏頃に丸平染色株式会社に来社して、上記(a)~(h)の工程を含む立毛シートの製造方法について詳細な説明を受けた」としており、請求人2において当該工程の指導を行っていたとする甲1-1は、この点からも整合する。 加えて、長谷川が平成21年7月1日付けで作成した文書である甲128-3(同モ参照)によれば、「現況の土橋流を60点とすると80点迄は持っていける」としており、この当時、新栄染色では請求人2が指導した工程により染色加工がおこなわれていたものと推認される。 さらに、上述(イ)に関し、甲1-1で「すなわち、ポリエステルなど合成繊維のパフ用ベルベット織物(立毛シートの半製品)を、ピン方式ヒートセッター(ピンテンター)に直接ピン止めして吊るして(d)のプレセット工程を行うと、基布であるポリエステルのピン付近とそれ以外の部分が不均質になるという問題があった。そのため、(d)のプレセット工程の前に(c)の蒸し工程を行って、パフ用ベルベット織物(立毛シートの半製品)の基布であるポリエステルを高温水蒸気で蒸して収縮させてからピン方式ヒートセッターにセットするようになった。その結果、半分にカットされたパイルが立毛になるという効果が得られたのである。・・・蒸しの条件は、高温水蒸気の温度が90~110℃で、染料を定着させるために行う古来の「蒸し」と同様であった。また、蒸しの時間は、試行錯誤の結果、2時間程度が立毛させるのに最適であることを発見した。」、「なお、上記製造方法((a)~(h)工程)により製造された立毛シートのパイル糸の長さは、2~3mmであった。」など、開発の経緯及び内容を具体的に示している。 これらのことからみて、請求人2は、合成繊維製のベルベット織物を使った立毛シートの染色加工に関する知見を有し、創意工夫を凝らして発明を行い、さらに実際に当該工程にて染色加工を行い、それをタイキに商品としてパフ用立毛シートを納品していたことを踏まえれば、上述1(1)ウ(イ)bのとおり、平成23年10月頃までには発明を完成させていたものと認められる。 これに対し、長谷川は、令和4年4月1日(差出日)の口頭審理陳述要領書(上述1(1)ラ(ア)参照)において、「従来技術の問題点を把握した時点は、出願日の1年ほど前の平成27~28年初めごろである。」、「そこで、実証実験を重ねて、再現性の高い実施条件を特定していき、発明が完成したのは、平成28年12月に入ってからである。」としている。また、令和4年4月22日に特許庁審判廷で行われた尋問において、本件発明のキーポイントは蒸し工程である(上述1(1)ラ(イ)で記載した段落「064」。以下同様)としつつ、蒸し工程をどの工程の前後に入れるか試行錯誤していたこと(「130」)、蒸し工程を入れないでやっていた時期が長かったこと(「131」)、平成28年以前の品質は安定していなかったこと(「148」)などを述べている。しかし、ドライセットの前に蒸し工程を行う甲53-1文書に記載の発明は、上述のとおり平成23年10月頃には完成していたものであり、平成27~28年初めごろに問題点を把握し、実証実験を行っていたとする内容と整合しない。 また、実証実験を繰り返すにあたって、通常は作成されるラボ日誌やメモすら作成していないと述べる(「020」)とともに、「私自身の資料はありませんが、各工程ごとには責任者がいましたので、その責任者たちはたくさんの資料を作っているのは見ております」(「135」)とし、被請求人が発明の創作行為に関与していたとは認めがたい。 そして、被請求人において、これらの認定を覆すに足る主張立証はない。 イ タンブラーによる乾燥について 甲119-1(上述1(1)ホ参照)によると、平成20年の終わりごろ以降に新栄染色においてタンブラー乾燥機1台が設置され、「〇1ブイテックから入ってきた生機を蒸し箱で吊り蒸し、〇2仕上げ場奥のテンターでプレセット、〇3ウインス機で精練・染色、〇4仕上げ場奥の遠心脱水機で脱水し、〇5また戻してタンブラーで乾燥し、吊り台車に吊るす。」という工程を行っていたとされ、甲120-1(同マ)においても「平成20年ごろから本格的にパフ生地を生産する事になり、染工場と仕上げ工場との広い通路間にウインス染色機1台と京都より移設したタンブラー(乾燥機)。」が当時新栄染色に設置されていたとされている。また、甲121-1(同ミ参照)にも、「(5)タンブラーについて」の中で、「(5-1)タンブラーの導入の経緯、前述(3-2)のとおり、最初の中型タンブラーは、平成18年春に京都の新栄テキスタイルから運んで設置した第1号で、玉村がブイテックをやめる平成29年1月まで使用していたもの・・・。」とし、また、「(5-2)タンブラーの型、台数」として、「・第1号と同じくらいの大きさのタンブラーを2台追加で購入したが、パフ生地の量産が始まったころの平成22、3年ごろだったと思う。」としている。さらに、甲129(同ヤ参照)によると「00008」として「タンブラー乾燥機(トヨタプラス)」が平成19年10月1日に供用されていたことが記載されている。 加えて、平成24年1月10日付けで長谷川の押印がある甲100-3(同ヒ参照)によると、「〇4新栄染色」として、「タンブラー方式はCOST高くつく為→テンター方式へ」、「平成24年度中旬に変更予定」としている。 これらのことからすると、遅くとも平成24年頃までには、ベルベット織物の製造分野において、乾燥工程にタンブラー乾燥機を利用することは普通に行われていたものと認められる。 さらに、上述アのとおり、長谷川は、「従来技術の問題点を把握した時点は、出願日の1年ほど前の平成27~28年初めごろである。」としている一方で、甲100-3のとおり新栄染色で遅くとも平成24年1月頃にはタンブラー方式で乾燥を行なっていたことを知っていた上で、これをテンター方式に改めさせようとしていたことは矛盾がある。 してみれば、ベルベット織物による立毛シートの製造方法において、乾燥工程をタンブラーにより行うことは、長谷川が発明を行ったものとは言い難く、その他、被請求人において、当該認定を覆すに足る主張立証もない。また、その特許に係る特許権の移転の登録があったという事情は見られないし、特許法第38条に関し、そもそも特許を受ける権利が共有に係るものであるとも認められない。 (4)無効理由4のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明についての特許は、その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してなされたものである。また、請求人1は、請求人2から特許を受ける権利の一部について譲渡を受け(甲16)、残部は請求人2の相続人の全員が相続放棄をしたことにより請求人1に帰属したから、本件発明に係る特許を受ける権利を有する。 第7 むすび 以上のとおり、無効理由3、4には理由があり、本件発明1~4についての特許は、特許法第123条第1項第2号及び第6号に該当するから無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-800045

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