特許異議申立
2020-700121
ワーリング工具
- 審判番号
- 2020-700121
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-512905
- 登録番号
- 特許第6568307号(P6568307)
- 請求日
- 2020年02月27日
- 審決日
- 2021年03月30日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ハルトメタル-ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【権利者代理人】特許業務法人 有古特許事務所
- 【異議申立人】橋本 清
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 河端 賢
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.537-YAA(B23G) / P1651.121-YAA(B23G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6568307号発明「ワーリング工具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6568307号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第6568307号の請求項1-11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6568307号の請求項1-11に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)9月10日、ドイツ連邦共和国)に国際出願され、令和元年8月9日にその特許権の設定登録がされ、令和元年8月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年2月27日に特許異議申立人橋本清により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年6月4日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年8月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、意見書を提出しなかった。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア-カ(訂正事項1-6)のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は、全体的な幾何学的形状、及び刃先(42a、42b)の形状によって、前記第2の種類の切削プレート(14b)とは異なる、」とあるのを
「前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は全体的な幾何学的形状及び寸法が同じであり、前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は、刃先(42a、42b)の形状及び寸法によって、前記第2の種類の切削プレー ト(14b)とは異なり、刃先(42a、42b)の形状及び寸法が異なることにより、第1の種類の2つの切削プレー ト(14a)と第2の種類の切削プレー ト(14b)は、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2-11も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
願書に添付した明細書の【0009】に
「切削プレートは、少なくとも2種類の異なる切削プレートを含み、第1の種類の少なくとも1つの切削プレートと、第2の種類の1つの切削プレートとが、切削プレートホルダ上で互いに隣接して配置される3つの切削プレートからなる各グループに設けられ、第1の種類の切削プレートは、全体的な幾何学的形状、少なくとも1つの刃先の寸法、および/または少なくとも1つの刃先の形状によって、第2の種類の切削プレートとは異なる、ワーリング工具によって達成される。」とあるのを
「切削プレートは、少なくとも2種類の異なる切削プレートを含み、前記切削プレートホルダ上で互いに隣接して配置される3つの切削プレートの各グループは、第1の種類の2つの切削プレートと、第2の種類の1つの切削プレートとを含み、第1の種類の2つの切削プレートの一方は、切削プレートホルダ上にて、第1の種類の2つの切削プレートの他方と、第2の種類の切削プレートとの間に配置され、
前記第1の種類の2つの切削プレートは全体的な幾何学的形状及び寸法が同じであり、前記第1の種類の2つの切削プレートは、刃先の形状及び寸法によって、前記第2の種類の切削プレートとは異なり、刃先の形状及び寸法が異なることにより、第1の種類の2つの切削プレートと第2の種類の切削プレートは、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる、ワーリング工具によって達成される。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
願書に添付した明細書の【0010】に
「本発明によるワーリング工具の特に特徴的な特徴は、その全体的な幾何学的形状(寸法および/または形状)ならびに/または刃先の寸法および/もしくは形状のいずれかが異なる少なくとも2種類の異なる切削プレートを使用することである。」とあるのを
「本発明によるワーリング工具の特に特徴的な特徴は、その刃先の形状及び寸法が異なり、それにより全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる少なくとも2種類の異なる切削プレートを使用することである。」に訂正する。
エ 訂正事項4
願書に添付した明細書の【0012】に
「刃先の異なる全体的な幾何学的形状または刃先の異なる形状によって、それぞれワークピースの加工における第1の種類の切削プレートは、第2の種類の切削プレートとは別の機能を担う。」とあるのを
「刃先の異なる形状及び寸法によって、それぞれワークピースの加工における第1の種類の切削プレートは、第2の種類の切削プレートとは別の機能を担う。」に訂正する。
オ 訂正事項5
願書に添付した明細書の【0017】に
「この実施形態による第3の種類の切削プレートは、第1の種類の切削プレートおよび第2の種類の切削プレートと、ここでもその全体的な幾何学的形状、少なくとも1つの刃先の寸法、および/または切削プレートの少なくとも1つの刃先の形状が異なる。」とあるのを
「この実施形態による第3の種類の切削プレートは、第1の種類の切削プレートおよび第2の種類の切削プレートと、ここでも切削プレートの少なくとも1つの刃先の形状及び寸法が異なり、それにより切削プレートの全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる。」に訂正する。
カ 訂正事項6
願書に添付した明細書の【0038】に
「本発明によれば、異なる2種類の切削プレート14a、14bは、それらの全体的な幾何学的形状(寸法および/または形状)ならびにその刃先の寸法および/または形状によって互いに異なる。」とあるのを
「本発明によれば、異なる2種類の切削プレート14a、14bは、その刃先の形状及び寸法によって互いに異なり、それにより異なる2種類の切削プレート14a、14bは全体的な幾何学的形状及び寸法が互いに異なる。」に訂正する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-11〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-11〕に係る訂正に伴って請求されたものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の可否
訂正事項1は、第1の種類の2つの切削プレートは、全体的な幾何学的形状及び寸法が同じであることを特定することで、第1の種類の2つの切削プレートが同じであることを明瞭にし、また、第1の種類の2つの切削プレートは、刃先の形状及び寸法によって、第2の種類の切削プレートとは異なり、刃先の形状及び寸法が異なることにより、第1の種類の2つの切削プレートと第2の種類の切削プレートは、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なることを特定することで、第1の種類の2つの切削プレートと第2の種類の切削プレートが違うことの内容を明瞭にするものであり、特許法第120条の5第2項のただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
第1の種類の2つの切削プレートが同じであることは、願書に添付した明細書の【0019】の「第1の種類の切削プレートの2つの切削体は、好ましくは同一である。」との記載や、図1及び図2において、形状及び寸法が同じである2つの切削プレート14aが図示されていることにより示されている。
また、第1の種類の切削プレートと第2の種類の切削プレートが違うことは、【0039】の「第1の種類の切削プレート14aの本体38aは、第2の種類の切削プレート14bの本体38bとまったく異ならず、または、(切削体に向かう移行部において)わずかだけ異なる。2つの切削プレートタイプ14a、14bの間の実質的な差異は、切削体40a、40bの異なる実施形態にある。」との記載、及び図6,7の「第1の種類の切削プレート14aが第2の種類の切削プレート14bとは刃先42a,42bの形状及び寸法が異なる」ことの図示内容に示されているから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。
したがって、訂正事項1は特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記(ア)のとおり、第1の種類の2つの切削プレートが同じであることを明瞭にし、第1の種類の2つの切削プレートと第2の種類の切削プレートが違うことの内容を明瞭にするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、あるいは変更するものでないことは、明らかである。
したがって、訂正事項1は特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項2-6について
(ア)訂正の目的の可否
訂正事項2-6は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、それぞれ、願書に添付した明細書の【0009】、【0010】、【0012】、【0017】、【0038】の内容を訂正するものであって、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
上記アの(イ)で説示したとおり、訂正事項1に係る訂正は、明細書の【0019】、【0039】、及び図1-2,6-7記載の事項の範囲内においてしたものであり、訂正事項2-6は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、訂正事項1と同様に、訂正事項2-6に係る訂正は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。したがって、訂正事項2-6は特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2-6は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、いずれの訂正事項も、実質上特許請求の範囲を拡張し、あるいは変更するものでないことは、明らかである。
したがって、訂正事項2-6は特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1-6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」-「本件発明11」という。)のうち、本件発明1は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「3つまたは3の倍数個の切削プレート(14a、14b)であって、前記切削プレート(14a、14b)の各々は少なくとも1つの刃先(42a、42b)を含む、切削プレート(14a、14b)と、
複数の切削プレート受け(26)を有する切削プレートホルダ(12)であって、前記切削プレート受け(26)の各々は、前記切削プレート(14a、14b)の1つを受け入れるように構成され、前記切削プレート受け(26)は、前記切削プレートホルダ(12)にわたって周方向(20)に分布するように配置される、切削プレートホルダ(12)と、
前記切削プレートホルダ(12)の前記切削プレート受け(26)に前記切削プレート(14a、14b)を解放可能に締結するための複数の締結要素(16) と
を有する、ワークピースを加工するためのワーリング工具(10)であって、
前記切削プレート(14a、14b)は、2種類の異なる切削プレート(14a、14b)を含み、
前記切削プレートホルダ(12) 上で互いに隣接して配置される3つの切削プレート(14a、14b)の各グループは、第1の種類の2つの切削プレート(14a)と、第2の種類の1つの切削プレート(14b)とを含み、
第1の種類の2つの切削プレート(14a)の一方は、切削プレートホルダ(12)上にて、第1の種類の2つの切削プレート(14a)の他方と、第2の種類の切削プレート(14b)との間に配置され、
前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は全体的な幾何学的形状及び寸法が同じであり、前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は、刃先(42a、42b)の形状及び寸法によって、前記第2の種類の切削プレート(14b)とは異なり、刃先(42a、42b)の形状及び寸法が異なることにより、第1の種類の2つの切削プレート(14a)と第2の種類の切削プレート(14b)は、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる、ワーリング工具(10)。」
そして、本件発明2-11は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明である。
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
当審が、令和2年6月4日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
訂正前の請求項1-11に係る特許は、その特許請求の範囲の「前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は、全体的な幾何学的形状、及び刃先(42a、42b)の形状によって、前記第2の種類の切削プレート(14b)とは異なる」という記載が、以下のア及びイの点で不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
ア 上記発明特定事項の「全体的な幾何学的形状」,及び「刃先の形状」に関し,「形状」という用語に「寸法」の意味が含まれるか否か不明瞭であって,発明が明確に特定できない。
イ 上記発明特定事項において,第1の種類の2つの切削プレートが第2の種類の切削プレートとは異なる原因として,「全体的な幾何学的形状,及び刃先の形状」の一方が異なることが条件となるのか,双方が条件となるのかが不明である。
(2)取消理由に対する当審の判断
ア 上記(1)アの取消理由について
特許権者は、請求項1記載の当該発明特定事項に関する説示に対して、令和2年8月28日提出の意見書において、「形状」には「寸法」の意味が含まれ、取消理由で示した「ケース1」(切削プレート即ち切削体が相似の場合)、及び「ケース3」(切削プレート即ち切削体の厚みだけが異なる場合)の切削体(及び刃先)の寸法が互いに異なる2つの切削プレートは、互いに異なる形状である旨の説明をした。(「ケース1」及び「ケース3」については、下図も参照のこと。)
さらに、本件訂正請求により、本件発明1は「第1の種類の2つの切削プレート(14a)と第2の種類の切削プレート(14b)は、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる」と特定することで、「寸法が異なる」ことが明確となった。
したがって、特許権者の意見書の説明により、「形状」には「寸法」の意味が含まれ、第1の種類の切削プレートと第2の種類の切削プレートは、全体的な幾何学的形状及び寸法において異なることが明確になったものと認められる。
イ 上記(1)イの取消理由について
特許権者は、請求項1記載の当該発明特定事項に関する説示に対して、上記訂正事項1で、該当箇所を、「前記第1の種類の2つの切削プレート(14a)は、刃先(42a、42b)の形状及び寸法によって、前記第2の種類の切削プレート(14b)とは異なり、刃先(42a、42b)の形状及び寸法が異なることにより、第1の種類の2つの切削プレー ト(14a)と第2の種類の切削プレート(14b)は、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる」と訂正し、それにより、第1の種類の切削プレートと第2の種類の切削プレートとは、「刃先(42a、42b)の形状及び寸法」が異なることを要件とし、「刃先(42a、42b)の形状及び寸法」が異なることをもって「全体的な幾何学的形状及び寸法」が異なると判断することを説明した。
また、取消理由で示した「ケース2」(切削プレートの一部に面取りがある場合)のような「刃先の形状」は同じであるが「全体的な幾何学的形状」が異なる2つの切削プレートは、別種類の切削プレートであることを説明した。(「ケース2」については、下図も参照のこと。)
したがって、令和2年8月27日提出の訂正請求書による訂正で、上記取消理由における説示に対し、第1の種類の切削プレートと第2の種類の切削プレートとは、「刃先(42a、42b)の形状及び寸法」が異なり、それにより「全体的な幾何学的形状及び寸法」が異なると判断することが明確となった。
ウ 以上より、訂正後の請求項1-11に係る発明は明確であり、当審が通知した取消理由により、請求項1-11に係る特許を取り消すことはできない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、訂正前の請求項1-11は、甲第1号証記載の発明(以下、「引用発明」という。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項1-11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものである旨の特許異議申立理由を主張するので、以下検討する。
甲第1号証:NTK CUTTING TOOLS GENERAL CATALOG, 米国,2014年9月30日,K145-K146ページ
K145ページについては、ページ下部の「NTK’s Unique Attachment System」(NTK独自の取り付けシステム)の欄の内容を参照。
K146ページについては、ページ中上部の「NTK Experiences and Solutions Example」(NTKの実績と解決事例)の欄右側の「For tiny thread」(狭ピッチ化)の部分を参照。
なお、甲第1号証のK145ページの左下の図に参照符号を付したもの(異議申立書の第14ページ掲載の【K145】図)を付記する。
甲第1号証に記載された事項を整理すると、以下の引用発明が記載されているといえる
「9個のインサート14であって、前記インサート14の各々は少なくとも一つの刃先42を含む、インサート14と、
複数のインサート収容部26を有するインサートホルダ12であって、前記インサート収容部26の各々は、前記インサート14の1つを受け入れるように構成され、前記インサート収容部26は、前記インサートホルダ12にわたって周方向に分布するように配置される、インサートホルダ12と、
前記インサートホルダ12の前記インサート収容部26に前記インサート14を解放可能に締結するための複数の取付ねじ16と
を有する、ワークピースを加工するためのワーリング工具10であって、
前記インサート14は、3種類の異なるインサート14を含み、
前記インサートホルダ12上で互いに隣接して配置される3つのインサート14の各グループは、第1の種類の1つのインサート14と、第2の種類の1つのインサート14と、第3の種類の1つのインサート14を含む、
ワーリング工具。」
本件発明1と引用発明を対比すると、
引用発明の「インサート14」は本件発明1の「切削プレート」に、同様に「インサート収容部26」は「切削プレート受け」に、「インサートホルダ12」は「切削プレートホルダ」に、「取付ねじ16」は「締結要素」に、それぞれ相当する。
また、引用発明において「インサート14」が「9個」あることは、本件発明1において「切削プレート」が「3つまたは3の倍数個」あることに相当する。
また、引用発明の「3種類の異なるインサート14」と、本件発明1の「2種類の異なる切削プレート」は、「少なくとも2種類の異なる切削プレート」という点で一致する。
したがって、本件発明1と引用発明は、以下の点で一致し、相違する。
ア 一致点
「3つまたは3の倍数個の切削プレートであって、前記切削プレートの各々は少なくとも1つの刃先を含む、切削プレートと、
複数の切削プレート受けを有する切削プレートホルダであって、前記切削プレート受けの各々は、前記切削プレートの1つを受け入れるように構成され、前記切削プレート受けは、前記切削プレートホルダにわたって周方向に分布するように配置される、切削プレートホルダと、
前記切削プレートホルダの前記切削プレート受けに前記切削プレートを解放可能に締結するための複数の締結要素と
を有する、ワークピースを加工するためのワーリング工具であって、
前記切削プレートは、少なくとも2種類の異なる切削プレートを含み、
前記切削プレートホルダ上で互いに隣接して配置される3つの切削プレートの各グループは、第1の種類の切削プレートと、第2の種類の1つの切削プレートとを含む、ワーリング工具。」
イ 相違点
そして、本件発明1が、「切削プレートの各グループは、第1の種類の2つの切削プレートと、第2の種類の1つの切削プレートとを含み、第1の種類の2つの切削プレートの一方は、切削プレートホルダ上にて、第1の種類の2つの切削プレートの他方と、第2の種類の切削プレートとの間に配置され、第1の種類の2つの切削プレートは全体的な幾何学的形状及び寸法が同じであり、前記第1の種類の2つの切削プレートは、刃先の形状及び寸法によって、前記第2の種類の切削プレートとは異なり、刃先の形状及び寸法が異なることにより、第1の種類の2つの切削プレートと第2の種類の切削プレートは、全体的な幾何学的形状及び寸法が異なる」ものであるのに対して、引用発明は、「インサート14の各グループは、第1の種類の1つのインサート14と、第2の種類の1つのインサート14と、第3の種類の1つのインサート14を含む」ものである点で相違する。
ウ 判断
本件発明1の切削プレートのグループは、第2の種類の1つの切削プレートにより、荒削りやねじプロファイルの予備切削を行い、第1の種類の2つの切削プレートにより、【0015】記載のとおり、ねじプロファイルを生成するものである。そして、第1の種類の2つの切削プレートは、全体的な幾何学形状が同じであり、ワークピースを機械加工する際に同じ場所(同じねじ溝)を切削することから、第1の種類の一方の切削プレートが先行してねじプロファイルを生成し、同じねじ溝に沿って後行する第1の種類の他方の切削プレートは、比較的小さい程度の応力を受けるものである。
これに対して、引用発明のK146ページの「For tiny thread」(狭ピッチ化)の部分に掲載のワーリングシステムのインサート14のグループは、Double-lead(2条ねじ)の切削に用いられるものであり、図示された3つのカッターのうち、右側のインサート14(K146図中では14b)により、2条ねじの隣接する2つのねじ溝の予備切削を同時に行い、中央のインサート14(K146図中では14a)は、2条ねじの隣接する2つのねじ溝の一方のねじプロファイルを生成し、左側のインサート14(K146図中では14a)は、2条ねじの隣接する2つのねじ溝の他方のねじプロファイルを生成するものと推認される。
以上の点を考慮すると、引用発明において、2条ねじのプロファイルを生成する中央のインサート14と左側のインサート14を、本件発明1のように、全体的な幾何学形状が同じものとなるように構成を変更すれば、本件発明1と同様に、2つのインサート14で同じねじ溝を切削することになるから、2条ねじのプロファイルを生成することができないことになり、当業者がそのような変更をする動機があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明2-11も、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様である。
よって、特許異議申立人の主張する特許異議申立理由により、請求項1-11に係る特許を取り消すことはできない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700121