特許判定
2020-600005
スライドファスナー
- 審判番号
- 2020-600005
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 判定
- 出願番号
- 特願2013-534532
- 登録番号
- 特許第5813122号(P5813122)
- 請求日
- 2020年02月19日
- 審決日
- 2020年11月27日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 判定(属する)
- 当事者
- 【請求人】YKK 株式会社
- 【請求人代理人】大野 浩之
- 【被請求人】江▲蘇▼利▲錫▼拉▲鎖▼股▲ふん▼有限公司
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 横溝 顕範
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P12 .1 -YA (A44B)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5813122号の判定請求事件について、次のとおり判定する。
結論
【結 論】
イ号図面及びその説明書に示す「スライドファスナー」は、特許第5813122号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。
理由
【理 由】
第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示すスライドファスナーは、特許第5813122号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
なお、判定請求書の請求の趣旨の欄には、「イ号説明書に示すスライドファスナーは、特許第5813122号発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」と記載されているところ、「特許第5813122号発明」は、「(3)本件特許の説明」に記載された「本件特許の請求項1(以下「本件発明1」という。)」という記載、「(4)結語」に記載された「イ号は本件発明1の技術的範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。」という記載等からみて、「特許第5813122号の請求項1に係る発明」であると判断した。
第2 手続の経緯
特許第5813122号(以下「本件特許」という。)の発明に係る出願は、2011年(平成23年)9月21日を国際出願日とする出願であって、平成27年10月2日に、特許権の設定登録がされたものである。
その後、令和2年2月19日に、本件判定が請求され、これに対し、同年3月6日付けで、当審が被請求人へ判定請求書副本を送達したところ、被請求人から答弁書は提出されなかった。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、構成要件ごとに分説し、アルファベットの大文字の符号を付すと、次のとおりである。以下、それぞれの構成要件を、「構成要件A」等という。
「【請求項1】
A 一対のファスナーテープ(20)と、
B 前記一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部(20a)に縫い糸(33)によりそれぞれ縫い付けられ、複数のファスナーエレメント(31)を有する一対のファスナーエレメント列(30)と、
C 前記一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダー(40)と、を備えるスライドファスナーであって、
D 前記一対のファスナーテープ及び前記一対のファスナーエレメント列は、互いに異なる色に着色され、
E 前記スライドファスナーは、前記ファスナーエレメント列が裏側となるように使用され、
F 前記一対のファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aが、前記一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに対して10~25%に設定され、
G 前記スライドファスナーの表側から前記隙間を介して前記ファスナーエレメント列の色を視認可能であることを特徴とするスライドファスナー。」
第4 イ号
1.判定請求書別紙のイ号説明書には、次の記載がある。
「・・・イ号は下記写真1のとおり、「THC」のロゴが入ったスライダーを備えている。・・・
【写真1】
【写真2】(省略)
イ号の裏面側(上側)とおもて面側(下側)を撮影した結果を写真3として示す。
写真3の裏面側の写真とおもて面側の写真とでは、ファスナーと一緒に撮影した定規の1cmの長さが同一になるように画像の大きさを調整している。
写真4及び写真5は写真3と実質的に同じであるが、紺色の直線の長さを測定している点で異なっている。
写真4ではファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに対応する上側の紺色の直線をパワーポイント上でクリックし、その長さを測定したものである。測定結果は1.93cmとして示されている。
写真5ではファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aに対応する下側の紺色の直線をパワーポイント上でクリックし、その長さを測定したものである。測定結果は0.34cmとして示されている。
【写真3】
【写真4】
【写真5】
上記写真3乃至写真5で示すとおり、ファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに相当する長さとファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aに相当する長さとの比率は0.34/1.93となり、A/Bは17.6%になっている。
仮に測定の際に多少の誤差があったとしても、上記のとおり測定した結果のA/Bが17.6%であることからして、イ号におけるA/Bが本件発明1で規定されている「10~25%」の範囲内にあることは確認できる。
また、下記写真6乃至写真9で示すとおり、ファスナーエレメント列の長手方向に沿って黄緑色の糸が存在し、写真6乃至写真8で示すとおり、当該黄緑色の糸を貫通した黒色の縫い糸が存在している。ファスナーテープのおもて面では下記写真10及び写真11で示すとおり、縫い痕を確認することができる。
【写真6】
【写真7】
【写真8】
【写真9】
【写真10】
【写真11】
なお、ファスナーテープにファスナーエレメントが固定されていなければ、ファスナーテープを開閉する動作を行うことができず、ファスナーとして機能しないという技術常識が存在している。」
2.上記1.から、イ号について、次のように理解できる。
(1)【写真1】及び【写真11】から、写真の上下方向に延びる黄緑色・直線状の部分、当該黄緑色・直線状の部分を挟んで、写真の上下方向に延びる一対の黒色・帯状の生地、アルファベットTHCが印された部材及びこれが取り付けられた部材が看取される。
(2)【写真1】から、一対の黒色・帯状の生地と黄緑色・直線状の部分は、一方の黒色・帯状の生地と一方の黄緑色・直線状の部分が一体であり、他方の黒色・帯状の生地と他方の黄緑色・直線状の部分が一体であることが看取される。
(3)【写真1】、【写真6】、【写真10】から、黄緑色の部材は直線状に列をなしており、直線状に列をなしている黄緑色の部材同士は、アルファベットTHCが印された部材及びこれが取り付けられた部材の上側においては互いに分離しており、下側においては互いに噛合していることが看取される。
(4)上記(1)~(3)から、一対の直線状に列をなしている黄緑色の部材は、複数のファスナーエレメントを有する一対のファスナーエレメント列であり、アルファベットTHCが印された部材及びこれが取り付けられた部材は、引き手を備えた一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダーであり、一対の黒色・帯状の生地は一対のファスナーテープであることが理解でき、これらを備えるイ号は、スライドファスナーであるといえる。また、ファスナーテープは黒色に着色され、ファスナーエレメントは黄緑色に着色されている。
(5)【写真6】~【写真11】から、ファスナーエレメント列が、黒色の縫い糸によって一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部にそれぞれ縫い付けられていることが看取されるから、イ号は、一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部に黒色の縫い糸によりそれぞれ縫い付けられている。
また、スライダーの引き手は、人の指によってつままれる部分であり、イ号の引き手が取り付けられている側は、人が引き手を持って操作するスライドファスナーの表側にあたるから、【写真1】は、表側から撮った写真であるといえる。そして,【写真1】から、表側の一対のファスナーテープの間には、ファスナーエレメント列の一部が看取されるから、ファスナーエレメント列は、スライドファスナーの裏側に縫い付けられており、スライドファスナーは、ファスナーエレメント列が裏側となるように使用されているといえる。
(6)【写真3】~【写真5】から、噛合状態の一対のファスナーテープ間の隙間を表側から見たときの幅寸法が約0.34cm、噛合状態の一対のファスナーエレメント列を裏側から見たときの幅寸法が約1.93cmであるから、その比率は約0.34:約1.93である。そうすると、噛合状態の一対のファスナーテープ間の隙間を表側から見たときの幅寸法は、噛合状態の一対のファスナーエレメント列を裏側から見たときの幅寸法の約17.6%である。
(7)【写真1】及び【写真11】から、噛合状態のスライドファスナーを表側からみたときに、一対のファスナーテープ間の隙間から、写真の上下方向に延びる黄緑色のファスナーエレメント列が視認可能である。
3.上記2.を総合すると、イ号は、各構成に本件特許発明の構成要件の分説と対応するようにアルファベットの小文字の符号を付すと、次のとおりのものである。
「a 一対のファスナーテープと、
b 一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部に黒色の縫い糸によりそれぞれ縫い付けられ、複数のファスナーエレメントを有する一対のファスナーエレメント列と、
c 一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダーと、を備えるスライドファスナーであって、
d 一対のファスナーテープは黒色に着色され、一対のファスナーエレメント列は黄緑色に着色され、
e スライドファスナーは、ファスナーエレメント列が裏側となるように使用され、
f 一対のファスナーテープ間の隙間の幅寸法が、一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法の約17.6%であり、
g スライドファスナーの表側の一対のファスナーテープ間の隙間から黄緑色のファスナーエレメントが視認可能であるスライドファスナー。」
第5 判断
1.構成要件A~E、Gについて
イ号の構成a~e、gは、本件特許発明の構成要件A~E、Gにそれぞれ相当することが明らかであるから、イ号は、本件特許発明の構成要件A~E、Gを充足する。
2.構成要件Fについて
イ号の構成fは、本件特許発明の構成要件Fの範囲内にあるから、本件特許発明の構成要件Fに相当するので、イ号は、本件特許発明の構成要件Fを充足する。
3.まとめ
上記1.及び2.のとおり、イ号は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するといえる。
第6 むすび
以上のとおり、イ号は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するから、イ号は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
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