特許判定
2020-600002
スライドファスナー
- 審判番号
- 2020-600002
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 判定
- 出願番号
- 特願2013-534532
- 登録番号
- 特許第5813122号(P5813122)
- 請求日
- 2020年01月08日
- 審決日
- 2020年11月27日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 判定(属する)
- 当事者
- 【請求人】YKK 株式会社
- 【請求人代理人】大野 浩之
- 【被請求人】大興拉▲錬▼廠有限公司
- 【被請求人代理人】長谷部 陽平
- 【被請求人代理人】鷲見 健人
- 【被請求人代理人】和田 祐以子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 石井 孝明
- 審判官 森藤 淳志
- 分類
- P12 .1 -YA (A44B)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5813122号の判定請求事件について、次のとおり判定する。
結論
【結 論】
イ号図面及びその説明書に示す「スライドファスナー」は、特許第5813122号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。
理由
【理 由】
第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示すスライドファスナーは、特許第5813122号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
なお、判定請求書の請求の趣旨の欄には、「イ号説明書に示すスライドファスナーは、特許第5813122号発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」と記載されているところ、「特許第5813122号発明」は、「(3)本件特許の説明」に記載された「本件特許の請求項1(以下「本件発明1」という。)」という記載、「(4)結語」に記載された「イ号は本件発明1の技術的範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。」という記載等からみて、「特許第5813122号の請求項1に係る発明」であると判断した。
第2 手続の経緯
1 特許第5813122号(以下「本件特許」という。)の発明に係る出願は、2011年(平成23年)9月21日を国際出願日とする出願であって、平成27年10月2日に、特許権の設定登録がされたものである。
その後、令和2年1月8日に、本件判定が請求され、これに対し、同年2月13日付けで、当審が被請求人へ判定請求書副本を送達したところ、同年5月18日に、被請求人から答弁書(以下「答弁書」という。)が提出された。
そして、令和2年7月14日付けで、当審が請求人に対してイ号に関する審尋をしたところ、同年8月19日に、請求人から回答書(以下「回答書」という。)が提出された。
2 被請求人は、答弁書において次のように主張をしている。
「被請求人は、被請求人がイ号と同様のスライドファスナーを日本国内の展示会に出展し、販売の申出を行っていることを争う。また、請求人は、イ号自体と「同様のスライドファスナー」との関係及びイ号自体と被請求人との関係については何ら主張をしていない。それどころか、請求人は、審判便覧を無視して、イ号自体について製品番号等による特定をしておらず、その出所すら明らかにしていない(審判便覧(第18版)58-01・3(5)イ参照)。そのため、被請求人は、イ号自体について十分な検討及び反論が行えない状況にある。なお、念のため指摘するに、イ号は、写真撮影報告書(乙1)掲載の被請求人が(日本国外において)製造販売するスライドファスナー(以下「被請求人製品」という。)とは構成が異なる。」(2ページ下から6行~3ページ4行)
しかし、請求人が提出した回答書(5ページ6~12行)及び甲第3号証(7~9ページ)によれば、被請求人は「ファッション ワールド 東京 2019【春】」において、サンプル品としてイ号を提供しており、請求人は、被請求人からイ号の提供を受けたとしている。そして、現に、請求人はイ号説明書を提出しているのである。
付言すると、サンプル品として提供されたものに特段の表示がなされていない限り、第三者にサンプル品の製造番号等は特定できないし、展示会で頒布されるサンプル品に製造番号等の特段の表示がなされていないことが特別なことともいえない。
以上のことから、被請求人の上記主張を直ちには採用することはできず、請求の趣旨のとおり、以下、イ号説明書に示すスライドファスナーが、本件特許の請求項1に係る発明の技術的範囲に属するか否かについて検討する。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、構成要件ごとに分説し、アルファベットの大文字の符号を付すと、次のとおりである。以下、それぞれの構成要件を、「構成要件A」等という。
「【請求項1】
A 一対のファスナーテープ(20)と、
B 前記一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部(20a)に縫い糸(33)によりそれぞれ縫い付けられ、複数のファスナーエレメント(31)を有する一対のファスナーエレメント列(30)と、
C 前記一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダー(40)と、を備えるスライドファスナーであって、
D 前記一対のファスナーテープ及び前記一対のファスナーエレメント列は、互いに異なる色に着色され、
E 前記スライドファスナーは、前記ファスナーエレメント列が裏側となるように使用され、
F 前記一対のファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aが、前記一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに対して10~25%に設定され、
G 前記スライドファスナーの表側から前記隙間を介して前記ファスナーエレメント列の色を視認可能であることを特徴とするスライドファスナー。」
第4 イ号
1 判定請求書別紙のイ号説明書には、次の記載がある。
「イ号は下記写真1のとおり、「TH」のロゴが入ったスライダーを備えている。
【写真1】
おもて面側(上側)と裏面側(下側)を撮影した結果を写真2として示す。
写真2のおもて面側の写真と裏面側の写真とでは、ファスナーと一緒に撮影した定規の1cmの長さが同一になるように画像の大きさを調整している。
写真3及び写真4は写真2と実質的に同じであるが、緑色の直線の長さを測定している点で異なっている。
写真3ではファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aに対応する上側の緑色の直線をパワーポイント上でクリックし、その長さを測定したものである。測定結果は0.37cmとして示されている。
写真4ではファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに対応する下側の緑色の直線をパワーポイント上でクリックし、その長さを測定したものである。測定結果は2.38cmとして示されている。
【写真2】
【写真3】
【写真4】
上記写真2乃至写真4で示すとおり、ファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに相当する長さとファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aに相当する長さとの比率は0.37/2.38となり、A/Bは15.5%になっている。
仮に測定の際に多少の誤差があったとしても、上記のとおり測定した結果のA/Bが15.5%であることからして、イ号におけるA/Bが本件発明1で規定されている「10~25%」の範囲内にあることは確認できる。
また、下記写真5及び6で示す通り、ファスナーエレメント列の長手方向に沿ってオレンジ色の糸が存在し、当該オレンジ色の糸を貫通した黒色の縫い糸が存在している。おもて面では下記写真7のとおり、縫い痕を確認することができる。
【写真5】
【写真6】
【写真7】
なお、ファスナーテープにファスナーエレメントが固定されていなければ、ファスナーテープを開閉する動作を行うことができず、ファスナーとして機能しないという技術常識が存在している。また、写真8で示すようにファスナーテープだけを把持してもファスナーエレメントが落下していないことからも、ファスナーテープにファスナーエレメントが固定されていることを確認できる。ファスナーテープにファスナーエレメントを固定するに際して縫い糸を用いることは技術常識であり、実際にイ号でも縫い糸が用いられている。
【写真8】
」
2 上記1から、イ号について、次のように理解できる。
(1)【写真1】及び【写真8】から、写真の上下方向に延びるオレンジ色・直線状の部分、当該オレンジ色・直線状の部分を挟んで、写真の上下方向に延びる一対の黒色・帯状の生地、アルファベットTHが印された部材及びこれが取り付けられた部材が看取される。
(2)【写真6】から、オレンジ色の部材が直線状に列をなしており、【写真5】から、直線状に列をなしているオレンジ色の部材同士が噛合していることが看取される。
(3)上記(1)及び(2)から、イ号の、一対の黒色・帯状の生地は、黒色に着色された一対のファスナーテープであり、一対の直線状に列をなしているオレンジ色の部材は、複数のファスナーエレメントを有するオレンジ色に着色された一対のファスナーエレメント列であり、アルファベットTHが印された部材及びこれが取り付けられた部材は、引き手を備えた一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダーであることが理解できるから、これらを備えるイ号は、スライドファスナーであるといえる。
(4)【写真6】及び【写真7】から、ファスナーエレメント列が、黒色の縫い糸によって一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部にそれぞれ縫い付けられていることが看取される。
また,スライダーの引き手は、人の指によってつままれる部分であり、スライドファスナーの引き手が取り付けられている側は、人が引き手を持って操作するスライドファスナーの表側にあたるから、【写真1】は、表側から撮った写真であるといえる。そして、【写真1】から、表側の一対のファスナーテープの間には、ファスナーエレメント列の一部が看取されるから、ファスナーエレメント列は、スライドファスナーの裏側に縫い付けられており、スライドファスナーは、ファスナーエレメント列が裏側となるように使用されているといえる。
(5)【写真2】~【写真4】から、噛合状態の一対のファスナーテープ間の隙間を表側から見たときの幅寸法が、約0.37cm、噛合状態の一対のファスナーエレメント列を裏側から見たときの幅寸法が、約2.38cmであるから、その比率は約0.37:約2.38である。そうすると、一対のファスナーテープ間の隙間の幅寸法は、一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法の約15.5%である。
(6)【写真1】及び【写真8】から、写真の上下方向に延びるオレンジ色のファスナーエレメントが視認可能である。
3 上記2を総合すると、イ号は、各構成に本件特許発明の構成要件の分説と対応するようにアルファベットの小文字の符号を付すと、次のとおりのものである。
「a 一対のファスナーテープと、
b 一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部に黒色の縫い糸によりそれぞれ縫い付けられ、複数のファスナーエレメントを有する一対のファスナーエレメント列と、
c 一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダーと、を備えるスライドファスナーであって、
d 一対のファスナーテープは黒色に着色され、一対のファスナーエレメント列はオレンジ色に着色され、
e スライドファスナーは、ファスナーエレメント列が裏側となるように使用され、
f 一対のファスナーテープ間の隙間の幅寸法が、一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法の約15.5%であり、
g スライドファスナーの表側の一対のファスナーテープ間の隙間からオレンジ色のファスナーエレメントが視認可能であるスライドファスナー。」
第4 判断
1 構成要件A~E、Gについて
イ号の構成a~e、gは、本件特許発明の構成要件A~E、Gにそれぞれ相当することが明らかであるから、イ号は、本件特許発明の構成要件A~E、Gを充足する。
2 構成要件Fについて
イ号の構成fは、本件特許発明の構成要件Fの範囲内にあるから、本件特許発明の構成要件Fに相当するので、イ号は、本件特許発明の構成要件Fを充足する。
3 被請求人は、答弁書において次のように主張している。
「被請求人製品をイ号説明書に記載の測定方法と同様の方法により測定したところ、被請求人製品では、一対のファスナーテープ間の隙間の幅寸法は、一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法に対して約6.1%であった(乙1)。したがって、被請求人製品は、少なくとも、本件発明1の「前記一対のファスナーテープ間の隙間(S)の幅寸法Aが、前記一対のファスナーエレメント列の噛合状態の幅寸法Bに対して10~25%に設定され、」なる構成要件(構成要件1F)を充足しない。以上より、その他の構成要件の充足性について検討するまでもなく、被請求人製品は本件発明1の技術的範囲に属しない。」(7-2(1)の2~10行)
しかし、イ号は、判定請求書別紙のイ号説明書に記載された事項によって特定されるものであって、判定請求書別紙のイ号説明書に記載された事項自体や判定請求書別紙のイ号説明書に記載された事項によって特定されるものについての検討及び反論は可能であるところ、被請求人の主張は、判定請求書別紙のイ号説明書に記載された事項自体や判定請求書別紙のイ号説明書に記載された事項によって特定されるものに対するものではなく、「被請求人製品」に関するものである。
よって、被請求人の上記主張を採用することはできない。
4 まとめ
上記1及び2のとおり、イ号は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するといえる。
第5 むすび
以上のとおり、イ号は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するから、イ号は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
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