2020-600001
超音波振動付与装置
- 審判番号
- 2020-600001
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 判定
- 出願番号
- 特願2019-513086外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月06日
- 審決日
- 2020年06月30日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 判定(属しない)
- 当事者
- 【請求人】凸版印刷 株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人第一国際特許事務所
- 【被請求人】株式会社 タカラトミーアーツ
- 【被請求人代理人】特許業務法人光陽国際特許事務所
- 分類
- P12 .1 -ZB (B67D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 10項目
1.請求の趣旨
令和2年1月6日付の本件判定請求の趣旨は、判定請求書の「6 請求の理由 (4)イ号の説明」及びイ号写真に示すビールアワー極泡スマート(以下、「イ号物件」という)は、特許第6536987号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
2.本件特許発明
本件特許第6536987号に係る出願は、平成30年7月19日(優先権主張平成29年7月21日)に出願され、令和元年6月14日に特許権の設定登録がなされたものであって、本件特許の請求項1-11に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1-11に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、符号を付して構成要件に分説すると、以下のとおりである。
「【請求項1】A 飲料を収容する容器であって注ぎ口を上部に有する前記容器に取り付けられるように構成された超音波振動付与装置であって、B 前記容器の上部に嵌められるように構成された環状の嵌合部と、C 前記容器と前記嵌合部との嵌合によって、前記注ぎ口の下方にて前記容器の側面に接する位置に配置されるように構成された超音波発生部と、を備えるD 超音波振動付与装置。」
3.イ号物件
(1)イ号物件について
イ号物件は、判定請求書の「6 請求の理由 (4) イ号の説明」に記載されるように、飲料を収容する缶である容器800に取り付けて用いる超音波振動付与装置であり、イ号写真に示されるように、開環状の嵌合部200を容器800の上部に嵌めることによって取り付ける(イ号写真の2参照)。また、嵌合部200の一端に超音波発生部300を備えており、容器800に超音波振動付与装置を取り付けた際、超音波発生部300は容器800の側面に接する(イ号写真の2ないし4参照)。また、飲み口830aを開けて容器800を傾け、超音波発生部300を動作させると、泡立てた飲料を注ぐことができる(判定請求書の「6 請求の理由 (4) イ号の説明」参照。)。更に、イ号写真によれば、缶の飲み口が9時の方向にあるとき、持ち手を3時の方向に配置すると、超音波発生部300は10時の方向にある(イ号写真の4及び5参照。)。
(2)甲第3号証の記載
甲第3号証は、イ号物件販売時の外箱を走査し印刷した物であって、甲第3号証の1には、上面、左側面、正面、下面が示され、甲第3号証の2には、右側面と背面が示されており、それぞれ次のような記載を含んでいる。
甲第3号証の1
正面に「洗浄不要でお手入れ簡単!!」、左側面に「超音波だからクリーミー」、「超音波振動」と記載され、下面に「<使用上の注意>」として、「ビール・発泡酒・新ジャンルの缶タイプ専用です。」、「本商品は防水ではありませんので、丸洗いはしないでください。」と記載されている。
甲第3号証の2
右側面に、使い方として「缶の飲み口が図のような位置にくるようにセットしてください。」とあり、同図において、缶の飲み口が9時の方向に開いており、超音波発生部300は10時の方向に、持ち手は3時の方向にある。背面に、使い方として「持ち手の下に、スペーサーを右図のように取り付けて、倒れないようにしてから、500ml缶に、取り付けます。」とあり、更に「缶の飲み口付近で、超音波振動を起こすことによって、極上の旨クリーミーな泡をつくり出します。」、「また、缶に直接超音波を当て、缶の注ぎ口から泡を出すしくみなので、サーバー本体が汚れません。お手入れのストレスがなく、お手軽に楽しむことができます。」と記載されている。
右側面の図
背面の図
(3)イ号物件の構成
(1)、(2)に基づけば、イ号物件は、本件特許発明に即して記載すると、以下のとおりである。
「a 飲料を収容する容器(800)であって注ぎ口(830a)を上部に有する前記容器(800)に取り付けられるように構成されたビールアワー極泡スマートであって、b 前記容器(800)の上部に嵌められるように構成された開環状の嵌合部(200)と、c 前記容器(800)と前記嵌合部(200)との嵌合によって、前記容器(800)の缶の注ぎ口(830a)が9時の方向にあるときに、持ち手を3時の方向に配置すると、10時の方向の側面に接する位置に配置されるように構成された超音波発生部(300)と、を備えるd ビールアワー極泡スマート。」
なお、被請求人は、答弁書で、請求人が主張するイ号物件の構成a、b、dについて認め(答弁書7.(3)イ)、イ号物件の構成a、b、dがそれぞれ本件特許発明のA、B、Dの要件を充足することについて認めている(答弁書7.(5)ア)。
4.対比・判断
4-1 充足関係
そこで、イ号物件の各構成a~dがそれぞれ本件特許発明の各構成要件A~Dを充足するものであるか否かについて検討する。
構成要件A
イ号物件の構成aと本件特許発明の構成要件Aとを比較すると、ビールアワー極泡スマートは超音波振動付与装置であるから、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足している。
構成要件B
イ号物件の構成bと本件特許発明の構成要件Bとを比較すると、本件明細書【0120】に「また、嵌合部20は、環の一部が途切れた開環状を有していてもよい。」とあるから、イ号物件の構成bの「開環状」が、本件特許発明のBの「環状」に相当する。
したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足している。
構成要件C
イ号物件の構成cと本件特許発明の構成要件Cを比較すると、イ号物件の「容器(800)の缶の注ぎ口(830a)が9時の方向にあるときに、持ち手を3時の方向に配置すると、10時の方向の側面に接する位置」が、構成要件Cの「前記注ぎ口の下方にて前記容器の側面に接する位置」に該当するか否か明確ではないため、この点について検討する。
本件明細書には図面と共に以下の記載がある。
「上記構成によれば、注ぎ口の下方に位置する部分である超音波発生部が容器の上端から離れているため、超音波発生部が容器の上端と接している構成と比較して、注ぎ口から流れ出た飲料が超音波振動付与装置に付着し難い。したがって、超音波振動付与装置の管理に要する負担をより軽減することができる。」(【0012】)
「(第1実施形態)図1~図10を参照して、超音波振動付与装置の一例である発泡飲料泡立て装置の第1実施形態を説明する。なお、以下の説明における上下方向は、発泡飲料泡立て装置が取り付けられる容器を水平面上に静置した場合における上下方向である。」(【0026】)
「超音波発生部30は、容器80の側面のなかで、注ぎ口83aの下方に位置する部分と接するように配置される。換言すれば、嵌合部20が構成する環の軸方向に沿った方向、すなわち、容器80における上蓋部83と対向する方向から見て、本体部81の側面のなかで注ぎ口83aに最も近い部分と超音波発生部30とが接し、注ぎ口83aと超音波発生部30とは向かい合う。」(【0038】)
「図7が示すように、駆動部41と電力供給部42とを収容する収容部40は、嵌合部20が構成する環の中心である中心線に対して超音波発生部30とは反対側で嵌合部20に接続されている。すなわち、収容部40は、容器80に対して超音波発生部30とは反対側に配置される。」(【0047】)
「なお、電力供給部42は電力源として電池を収容するため、泡立て装置10のなかで電力供給部42が位置する部分は、他の部分よりも重くなりやすい。電力供給部42が容器80に対して超音波発生部30と反対側に配置される第1実施形態の構成においては、例えば、超音波発生部30のなかで超音波発生装置31を覆う部分を上端嵌合部21よりも厚く形成することや、超音波発生部30に重量を付加するための部材を包含させること等によって、泡立て装置10における重量のバランスが電力供給部42の位置する部分に偏りすぎないように調整してもよい。」(【0051】)
「このとき、ユーザーは、超音波発生部30が容器80の注ぎ口83aの下方で容器80の側面と接するように、嵌合部20を容器に嵌める。例えば、泡立て装置10には、超音波発生部30を注ぎ口83aの下方に配置することをユーザーに促す表示が付されていてもよいし、泡立て装置10に付属する説明書等に、超音波発生部30を注ぎ口83aの下方に配置することの指示が記載されていてもよい。」(【0052】)
「図9が示すように、泡立て装置10を容器80に取り付けた後、ユーザーは、泡立て装置10と容器80とを持ち上げて、注ぎ口83aが下側に位置するように泡立て装置10および容器80を傾け、容器80内の発泡飲料を注ぎ口83aから流出させてグラス等の杯90に注ぐ。このとき、泡立て装置10はオフにされている。ユーザーは、容器80に対して収容部40の位置する側から泡立て装置10とともに容器80を掴むことが好ましい。これにより、杯90に主として液状の発泡飲料Lqが注がれる。」(【0053】)
「この時点で容器80内に残されている発泡飲料は、容器80に最初に充填されていた発泡飲料の一部である。この容器80内に残されている発泡飲料は、容器80が傾けられていることにより、容器80内の注ぎ口83a付近に溜まっている。容器80が静置されているときに超音波発生部30が注ぎ口83aの下方で容器80の側面に接する構成であれば、発泡飲料が注ぎ口83aから注がれるように容器80が傾けられているとき、超音波発生装置31は注ぎ口83aの下側に位置し、すなわち、容器80内にて発泡飲料が溜まっている部分の付近に位置する。それゆえ、超音波発生装置31から発せられた超音波は、容器80内の発泡飲料に的確に伝わる。」(【0056】)
「ユーザーは、容器80から発泡飲料を杯90に注ぐとき、通常、容器80の中心軸に対して注ぎ口83aと反対側から容器80を掴む。」(【0068】)
更に、図1~図10の記載及び特に【0038】を参照すれば、第1実施形態では、嵌合部20が構成する環の軸方向に沿った方向から見て、本体部81の側面のなかで注ぎ口83aに最も近い部分と超音波発生部30とが接し、注ぎ口83aと超音波発生部30とは向かい合うように配置されている。
そして、本件明細書には,第1実施形態以外の実施形態又は変形例について、図面とともに以下の記載がある。
「例えば、図16が示す泡立て装置14のように、収容部49は、操作部50の周囲に窪み51を有していてもよい。操作部50は、窪み51の底部に位置する。この場合、図17が示すように、ユーザーは、窪み51に人差し指を沿わせて操作部50を操作するように、泡立て装置14および容器80を掴む。すなわち、指の裏が収容部49に当たるように泡立て装置14および容器80の持ち方が誘導される。こうした持ち方は、掌が収容部に当たる持ち方と比較して、手が小さいユーザーであっても泡立て装置14および容器80を掴みやすい。また、操作部50の操作に際して、人差し指を大きく動かさなくてもよいため、泡立て装置14と容器80とを掴みながら操作部50を操作することが容易である。また、発泡飲料を注いでいるときに、ユーザーは、親指で容器80の下側を支えながら泡立て装置14および容器80を傾けることができるため、泡立て装置14および容器80の角度を安定させやすい。」(【0096】)
「上記変形例を総括すると、要は、容器80と嵌合部20との嵌合によって、超音波発生部30が注ぎ口83aの下方にて容器80の側面に接するように配置される構成であれば、泡立て装置が有する他の構成や、泡立て装置が有する各部の形状および配置は上記各実施形態と異なっていてもよい。」(【0125】)
更に図11~25の記載を参照すれば,第1実施形態に限らず、第2実施形態、第3実施形態及び変形例のいずれにおいても、嵌合部20が構成する環の軸方向に沿った方向から見て、本体部81の側面のなかで注ぎ口83aに最も近い部分と超音波発生部30とが接し、その結果注ぎ口83aと超音波発生部30とは向かい合うように配置されている。
これらのことから、本件明細書における「注ぎ口の下方に配置」に関し以下のことがいえる。
・ユーザーが容器80を傾けて発泡飲料を杯90に注ぐとき、容器80の上蓋部83の注ぎ口83aは上蓋部83の下方に位置することを前提としている。
・容器80内に一部残る発泡飲料は、容器80が傾けられることにより、容器80内の注ぎ口83a付近に溜まり、又、超音波発生装置31は注ぎ口83aの下側に位置するので容器80内にて発泡飲料が溜まっている部分の付近に位置することとなるから、超音波は容器80内の発泡飲料に的確に伝わる。
・超音波発生装置31が上述の位置にあることが前提であるから、超音波発生部が容器の上端と接している構成と比較して、注ぎ口から流れ出た飲料が超音波振動付与装置に付着し難い。
・超音波発生部30が注ぎ口83aの下方にて容器80の側面に接するように配置される構成であれば、超音波振動付与装置の他の構成は変形可能であり、実施形態にかかわらず、この構成は採用されている。
・「超音波発生部30は、容器80の側面のなかで、注ぎ口83aの下方に位置する部分と接するように配置される。」(【0038】)を換言すると、嵌合部20が構成する環の軸方向に沿った方向から見て、本体部81の側面のなかで注ぎ口83aに最も近い部分と超音波発生部30とが接し、注ぎ口83aと超音波発生部30とは向かい合うように配置されることである。
・駆動部41と電力供給部42とを収容する収容部40は、嵌合部20が構成する環の中心である中心線に対して超音波発生部30とは反対側で嵌合部20に接続され、電力供給部42は電力源として電池を収容するため他の部分よりも重くなりやすいので、超音波発生部30に重量を付加するための部材を包含させること等によって、泡立て装置10における重量のバランスが電力供給部42の位置する部分に偏りすぎないように調整することができる。
・泡立て装置10に超音波発生部30を注ぎ口83aの下方に配置することをユーザーに促す表示が付されていてもよいし、泡立て装置10に付属する説明書等に超音波発生部30を注ぎ口83aの下方に配置することの指示を記載してもよい。
そうすると、本件特許発明の「注ぎ口の下方に配置」とは、缶内に発泡飲料が残っても的確に振動が伝えられるように超音波発生装置が配置されなければならず、又、ユーザーが容器を傾けて発泡飲料を杯に注ぐとき、注ぎ口が容器の上蓋部の下方に位置することを前提としているから、本体部81の側面のなかで注ぎ口83aに最も近い部分に超音波発生装置の少なくとも一部が接するように配置されることを意味すると解される。
【0026】に記載の上下方向は、超音波振動付与装置を飲料缶に取り付けた際の説明を理解し易くするために方向を規定したものであって、容器を水平面上に静置した場合における上下方向を意味し、例えば図1の収容部40が容器80の側面と接する箇所は注ぎ口の下方とは呼べないから、請求人主張の様に構成要件Cの「前記注ぎ口の下方」が容器の側面であれば任意であることを意味するものではない。
一方、甲第3号証の記載からイ号物件は以下のように判断できる。
・甲第3号証の2右側面図から、イ号物件は、缶の飲み口、すなわち「注ぎ口に最も近い位置」が9時の方向にあるときに、超音波発生部300は10時の方向に、持ち手は3時の方向になるようにセットすることを使い方として想定している。当該想定に基づいて使用すれば、環状の嵌合部200の開部が缶の飲み口の方向になるから、飲み口から発泡飲料が垂れたとしても、超音波振動付与装置に発泡飲料は付着せず、防水を施さなくても洗浄不要で使用でき、水洗いができない構成であっても問題は無い。一方、超音波振動付与装置をイ号写真の5のように配置すれば、飲み口から発泡飲料が垂れた場合、非防水である超音波振動付与装置を濡らすこととなるから、防水ではないイ号物件の使い方として、この様な配置を行うこと、すなわち缶の側面のなかで飲み口に最も近い部分に超音波発生部の少なくとも一部が接するように配置することを想定し得ない。これらは、甲第3号証において、イ号物件が缶の側面のなかで飲み口に最も近い部分に超音波発生部の一部も接するように配置されていないこととも整合する。
そうすると、イ号物件cの「容器(800)の缶の注ぎ口(830a)が9時の方向にあるときに、持ち手を3時の方向に配置すると、10時の方向の側面に接する位置」は、9時の方向である「注ぎ口に最も近い位置」にはあたらず、缶の側面のなかで該「注ぎ口に最も近い位置」に超音波発生部の少なくとも一部が接するような位置であるともいえないから、構成要件Cの「前記注ぎ口の下方にて前記容器の側面に接する位置」には相当しない。
なお、請求人は「注ぎ口自体は本件特許発明の構成要件ではない上に、請求項1の発明は、「注ぎ口(83a)の下方にて前記容器(80)の側面に接する位置に配置されるように構成された超音波発生部(30)」、つまり、換言すると「超音波発生部が注ぎ口の下方にて前記容器の側面に接する位置に配置することが可能なように構成された超音波発生部」を構成要件としているのであり」(請求書6(5)ウ(ウ))と主張するが、「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」(特許法第36条第5項)から、請求項1に記載された事項は全て発明を特定するために必要な事項となり、請求項1に「注ぎ口」が明記されているので「注ぎ口」は構成要件であり、又、請求項1に「側面に接する位置に配置されるように構成された超音波発生部」とあって当該箇所に配置されることを特定し、且つ「可能なように」との記載は無いから、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は「イ号写真の5に示すように、本体を缶に取り付ける際に、平面視において、缶の側面のなかで飲み口に最も近い部分と超音波振動の発生源とが接し、飲み口と超音波振動の発生源とは向かい合う状態にすることが可能なのである」(請求書6(5)ウ(ウ))と主張するが、嵌合部を容器に嵌合する当該方法は甲第3号証に示されるイ号物件が想定される状態とは相違するものであり、又、注ぎ口から杯に飲料を注ぐ際注ぎ口が上蓋部の下方にすることが一般的であり、請求人主張の注ぎ方を行えば水洗いできないイ号物件の超音波発生部を飲料が濡らすこととなり、更に、飲料で濡れることを防ぐために、注ぎ口から杯に飲料を注ぐ際嵌合部の開環部から注ぐとしても甲第3号証右側面図の注ぎ方ではこの様な注ぎ方を想定していないから、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。
構成要件D
イ号物件の構成dと本件特許発明の構成要件Dとを比較すると、ビールアワー極泡スマートは超音波振動付与装置であるから、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足している。
以上によれば、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。
よって、イ号物件の構成は、少なくとも文言上、本件特許発明の構成要件を充足しない。
4-2 均等の判断
判定請求人は、本件特許発明とイ号物件との間に「『注ぎ口の下方にて超音波発生部が配置されているか否か』の相違点が存在するとしても、これは本件特許請求の範囲の構成と…少なくとも均等である」(判定請求書13頁10行ないし同頁13行)と主張する。
そして、本件特許発明と、イ号物件との間に異なる部分が存する場合であっても、(1)当該部分が本件特許発明の本質的部分ではなく(第1要件)、(2)当該部分をイ号物件におけるものと置き換えても、本件特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって(第2要件)、(3)そのように置き換えることに、当業者が、イ号物件等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件)、(4)イ号物件等の構成が、本件特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が当該出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件)、かつ、(5)イ号物件等が本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は、当該対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解される(最高裁平成6年(オ)第1083号 平成10年2月24日第三小法廷判決、最高裁平成28年(受)第1242号 平成29年3月24日第二小法廷判決)。
そこで、以下、各要件について検討する。なお、これら第1要件ないし第3要件が成立することは、本件特許の権利者、すなわち判定請求人側が立証責任を負うと解される(平成27年(ネ)第10014号平成28年3月25日知的財産高等裁判所判決)。
(1)本質的部分(第1要件)
イ号物件の構成が充足しない本件特許発明の構成要件Cが本質的部分であるか否かについて検討する。なお、請求人は「注ぎ口の下方に超音波発生部が配置されているか否か」の点について均等論を主張している。
本件特許発明の解決しようとする課題は、本件特許公報の段落【0004】(以下、段落番号のみ示す。)に「ところで、特許文献1に記載の泡立て装置の使用の際には、上述のように、装置内の流路に発泡飲料が流れる。したがって、泡立て装置の管理のためには、使用の度に装置を洗浄する必要があり、それゆえに、泡立て装置の管理に要する負担が大きい。なお、上記課題は、発泡飲料を泡立てる装置に限らず、種々の目的で飲料に超音波振動を与える装置において共通する。本発明は、管理に要する負担を軽減できる超音波振動付与装置を提供することを目的とする。」(改行は省略した。以下同様。)とあり、装置の洗浄の負担を軽減するものである。
本件特許発明は、本件特許発明の当該構成を採用することにより、【0056】に「この時点で容器80内に残されている発泡飲料は、容器80に最初に充填されていた発泡飲料の一部である。この容器80内に残されている発泡飲料は、容器80が傾けられていることにより、容器80内の注ぎ口83a付近に溜まっている。容器80が静置されているときに超音波発生部30が注ぎ口83aの下方で容器80の側面に接する構成であれば、発泡飲料が注ぎ口83aから注がれるように容器80が傾けられているとき、超音波発生装置31は注ぎ口83aの下側に位置し、すなわち、容器80内にて発泡飲料が溜まっている部分の付近に位置する。それゆえ、超音波発生装置31から発せられた超音波は、容器80内の発泡飲料に的確に伝わる。」と、【0125】に「上記変形例を総括すると、要は、容器80と嵌合部20との嵌合によって、超音波発生部30が注ぎ口83aの下方にて容器80の側面に接するように配置される構成であれば、泡立て装置が有する他の構成や、泡立て装置が有する各部の形状および配置は上記各実施形態と異なっていてもよい。」とあるように、缶を傾けて飲料を注ぐ際、超音波発生装置により注ぎ口から注がれる飲料に最後まで超音波振動を的確に与えることができるという作用効果を奏する。
そうすると、少なくとも本件特許発明の構成要件C、特に「注ぎ口の下方に超音波発生部が配置されているか否か」の点は、本件特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の作用効果を生じるための部分(特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分)、換言すれば、他の構成に置き換えられるならば、全体としての当該発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分である、本件特許発明の本質的部分に関するものといえる。
なお、請求人は「したがって、泡立て装置10を容器80に取り付ける際に、平面視において、本体部81の側面のなかで注ぎ口83 aに最も近い部分と超音波発生部30とが接するか否か、注ぎ口83aと超音波発生部30とは向かい合うか否かは、上記の本発明の効果に直接関係する部分ではないのであるから、上記の相違点は、本件特許発明の本質的部分ではない。」(請求書6(6)ア)と主張するが、本件特許発明は超音波振動付与装置を洗浄する必要を無くしたことに加え、容器側面のなかで注ぎ口に最も近い部分と超音波発生部が接することで発泡飲料に最後まで超音波振動を加えることができるものであるから、構成要件Cは本質的な部分に関するものといえる。
したがって、本件特許発明とイ号物件とは発明の本質的な部分において相違する。
そうすると、他の要件を検討するまでもなく、イ号物件の構成が、本件特許発明の構成要件と均等なものであるということはできない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明と発明の本質的な部分において構成が異なる(第1要件)ものであるから、他の要件を検討するまでもなく、イ号物件の構成が、本件特許発明の構成要件と均等なものであるということはできない。
4-3 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
5.むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
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2020-600001