2020-017539
導電性ペースト、および該導電性ペーストを用いた導電材料ならびに導電部材
- 審判番号
- 2020-017539
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-069491外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月23日
- 審決日
- 2022年01月04日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】第一工業製薬株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月31日の出願であって、令和2年5月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月15日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年9月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年9月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1 本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 特開平8-3486号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
1 審判請求時の補正において請求項1に「上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し、」という事項を追加する補正は、補正前の「ポリイソシアネート」を限定するものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、補正後の請求項1に記載された「上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し、」という構成は、本願の出願当初の明細書の段落【0011】、【0051】、【0053】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。
2 審判請求時の補正によって、明細書の段落【0006】に記載された「上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し、」という構成は、本願の出願当初の明細書の段落【0011】、【0051】、【0053】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。
3 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和2年12月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】ポリウレタン水分散体および導電粒子を含有する導電性ペーストであって、上記ポリウレタン水分散体が、ポリイソシアネート、ポリオール、親水性基を有するポリオール、および鎖伸張剤を反応させて得られるポリウレタンを水に分散させたものであり、上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し、上記ポリオールが、分子量1000のポリカーボネートジオールを除くポリカーボネートポリオールを含有することを特徴とする導電性ペースト。【請求項2】上記ポリカーボネートポリオールの含有量が、上記ポリオール100質量部に対し25質量部以上100質量部以下であることを特徴とする請求項1 に記載の導電性ペースト。【請求項3】上記ポリオールに数平均分子量が400以下のポリオールを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性ペースト。【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1項に記載の導電性ペーストを含有することを特徴とする導電材料。【請求項5】請求項4に記載の導電材料と基板を備えることを特徴とする導電部材。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【請求項1】 有機ポリイソシアネート化合物とカルボキシル基を有するポリオール化合物とを必須成分とする水系ポリウレタン樹脂に、BET法による比表面積値が2000cm2 /g ~10000cm2/g で、44μm の篩に90重量%以上通過し、酸素量が0.2 重量%以下である電解銅粉又は該電解銅粉を解砕した銅粉を混合分散させてなる水性導電塗料。」
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、電解銅粉を混合分散してなる水性導電塗料に関するものである。」
「【0004】【発明が解決しようとする課題】前記従来の導電塗料はいずれも有機溶剤を用いた油性塗料であるため、塗装中に引火,爆発の危険性があり、作業環境改善のためにも水性導電塗料の開発が望まれている。【0005】しかし、水性塗料は有機溶剤の代わりに水を溶媒とするため、銅粉を混合分散すると、非常に短時間に銅粉表面が酸化し導電性が得られなくなること、また、環境信頼性試験においても塗膜導電性の劣化が速くて使用に耐えられるものではないこと、さらに、塗料の貯蔵安定性も悪く、塗料化後すぐに塗装しなければ目的とする導電性塗膜が得られず、塗料が増粘してゲル化に至る場合があること等の問題点があった。」
「【0010】本発明の構成を詳しく説明すれば次の通りである。本発明において使用する水系ポリウレタン樹脂(以下、「PUD」ともいう。)は、有機ポリイソシアネート化合物とカルボキシル基を有するポリオール化合物とを必須成分とするポリウレタン樹脂を水に分散したエマルジョンである。即ち、上記エマルジョンは、有機溶剤の存在下又は不存在下に、有機ポリイソシアネート化合物とカルボキシル基を有するポリオール化合物とポリオール類から得られるカルボキシル基含有のウレタンプレポリマーとを、水の存在下において、塩基性有機化合物及び伸長剤と反応させることにより得られる水中に分散したウレタン樹脂である。なお、水系ポリウレタン樹脂以外のポリウレタン樹脂や、その他のアクリル、酢酸ビニル、スチレンブタジエン共重合、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合等のエマルジョンを使用しても銅粉と樹脂が反応するため、良い導電性塗膜を得ることはできない。【0011】上記有機ポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香脂肪族及び芳香族ポリイソシアネート等があり、その具体例を以下に示す。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアネートオクタン、1,6,11-トリイソシアネートウンデカン、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネート・メチルオクタン、1,3,6-トリイソシアネートヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン等を挙げることができる。【0012】脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-又は1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,6-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等を挙げることができる。【0013】芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3,5-トリイソシアネートメチルベンゼン、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート、若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、若しくはその混合物等を挙げることができる。【0014】芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等を挙げることができる。【0015】また、カルボキシル基含有のポリオール化合物としては、線状のプレポリマー分子中に分岐状にカルボキシル基を付与するものであれば何れも使用できるが、カルボキシル基含有量の調整が容易な低分子量のものが好ましく、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸を挙げることができる。【0016】また、ポリオール類としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に使用される公知のポリオール類、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7~22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン-1,2-ジオール(C17~20),水素化ビスフェノールA,1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールAグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノール及びその他の脂肪族トリオール(C8~24)テトラメチロールメタン、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、D-マンニット等の低分子量ポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリブタジエンポリオール等のマクロポリオール類を挙げることができる。これらのポリオール類を、硬質・軟質等の必要な物性に応じて適時選択することにより樹脂設計することができる。」
「【0026】また、吹き付け塗装におけるスプレーノズルの詰まり防止及び塗膜面からの銅粉剥離防止のために、電解銅粉又は電解銅粉を解砕した銅粉の粒度は44μm の篩を90重量%以上通過するものであることが必要である。」
「【0032】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。実施例1.温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた1000mlの四つ口フラスコに、分子量1000のポリカプロラクトンジオール250g、ネオペンチルグリコール26g 、トリメチロールプロパン4.5g、ジメチロールプロピオン酸 26.8g、アセトン227g、3-イソシアネ-トメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート222.2gを仕込み、窒素気流下、内温を55~60℃に保ち、10時間反応を行った後、NCO基含有量 2.7%のウレタンプレポリマーを得た。次に、トリエチルアミン20.2g 、エチレンジアミン15g を含有する脱イオン水1000g を40℃に保ち、ラボミキサーにて撹拌混合しながら上記のプレポリマー756.5gを滴下し、反応させることにより水系ポリウレタン樹脂を得た。この水系樹脂溶液を、さらに、50℃で減圧脱アセトンを行い、最終的に不揮発分35.5%、pH 8.0、粘度120cps/25℃の水系ポリウレタン樹脂溶液を得た。【0033】このようにして得たポリウレタン樹脂のガラス転移点は65℃、エマルジョンの平均粒子径は50nm、有機溶剤含有量は1%以下であった。」
「【0036】実施例2.温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた1000mlの四つ口フラスコに、分子量1000のポリカーボネートジオール250g、ネオペンチルグリコール 20.8g、トリメチロールプロパン4.5g、ジメチロールプロピオン酸 33.5g、アセトン216g、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン194.2gを仕込み、窒素気流下、内温を55~60℃に保ち、7時間反応を行った後、NCO基含有量 2.9%のウレタンプレポリマーを得た。次に、トリエチルアミン 25.2g、エチレンジアミン7.5g、ヒドラジン・1水和物6.2gを含有する脱イオン水1200g を40℃に保ち、ラボミキサーにて撹拌混合しながら上記のプレポリマー718gを滴下し、反応させることにより水系ポリウレタン樹脂を得た。この水系樹脂溶液を、さらに、50℃で減圧脱アセトンを行い、最終的に不揮発分36.1%、pH 8.2、粘度210cps/25℃の水系ポリウレタン樹脂溶液を得た。」
「【0040】実施例3.温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた1000mlの四つ口フラスコに、タケラックU-5610(武田薬品工業(株)製のポリエステルポリオール、分子量1000)200g、ネオペンチルグリコール26g 、トリメチロールプロパン2.2g、ジメチロールプロピオン酸 36.8g、アセトン197g、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン194.2gを仕込み、窒素気流下、内温を55~60℃に保ち、7時間反応を行った後、NCO基含有量 3.2%のウレタンプレポリマーを得た。次に、ジメチルエタノールアミン 24.1g、ヒドラジン・1水和物 12.5gを含有する脱イオン水1000g を40℃に保ち、ラボミキサーで撹拌混合しながら上記のプレポリマー 656.2g を滴下し、反応させることにより水系ポリウレタン樹脂を得た。この水系樹脂溶液を、さらに、50℃で減圧脱アセトンを行い、最終的に不揮発分37.1%、pH 8.0、粘度470cps/25℃の水系ポリウレタン樹脂溶液を得た。」
「【0044】実施例4.温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた1000mlの四つ口フラスコに、タケラックU-2610(武田薬品工業(株)製のポリエステルポリオール、分子量1000)300g、ネオペンチルグリコール 20.8g,トリメチロールプロパン4.5g、ジメチロールプロピオン酸 26.8g、アセトン256g、テトラメチルキシリレンジイソシアネート244.4g、ジブチルチンジラウレート 0.05gを仕込み、窒素気流下、内温を55~60℃に保ち、6時間反応を行った後、NCO基含有量 2.4%のウレタンプレポリマーを得た。次に、トリエチルアミン 20.2g、2-ヒドロキシエチルヒドラジン 19.0gを含有する脱イオン水1200g を40℃に保ち、ラボミキサーにて混合撹拌しながら上記のプレポリマー852.5gを滴下し、反応させることにより水系ポリウレタン樹脂を得た。この水系樹脂溶液を、さらに50℃で減圧脱アセトンを行い、最終的に不揮発分35.0%、pH 7.7、粘度 90cps/25℃の水系ポリウレタン樹脂溶液を得た。」
「【0048】実施例5.温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた1000mlの四つ口フラスコに、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール150g、ネオペンチルグリコール 36.4g、ジメチロールプロピオン酸 33.5g、N-メチル-2-ピロリドン 42g、アセトン127gを仕込み、窒素気流下、内温を30℃とした後、トリレンジイソシアネート174.2gを内温が60℃以下となるように分割添加し、さらに、8時間反応を行った後、NCO基含有量 3.7%のウレタンプレポリマーを得た。次に、トリエチルアミン 25.2g、ヒドラジン・1水和物 12.5gを含有する脱イオン水850gを40℃に保ち、ラボミキサーにて撹拌混合しながら上記のプレポリマー563.1gを滴下し、反応させることにより水系ポリウレタン樹脂を得た。この水系樹脂溶液を、さらに、50℃で減圧脱アセトンを行い、最終的に不揮発分36.3%、pH 8.0、粘度330cps/25℃の水系ポリウレタン樹脂溶液を得た。」
「【0072】【発明の効果】本発明においては、特定の水系ポリウレタン樹脂に、特定の銅粉を混合分散することによって、それらの相乗効果で優れた導電性塗膜が得られ、環境信頼性試験にも耐え、塗料化後の貯蔵安定性も著しく改善して実用に耐える銅系水性塗料を得ることができる。本発明に係る水性導電塗料は、導電性の劣化が少なく、貯蔵安定性に優れているので、スプレー塗装、はけ塗り、ロールコータやスクリーン印刷法によって優れた導電性塗膜を容易に得ることができる。また、水性であるため、水で希釈でき、塗装装置の洗浄も容易であると共に有機溶剤による環境汚染や中毒、火災の危険性もなく安全性に優れている。したがって、電子機器の電磁シールド対策用としてはもちろんのこと、シールドルーム等の建築材料用導電塗料や静電防止塗料等、広い範囲内に使用することができ、本発明の産業上の利用性は非常に大きいといえる。」
(2)したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機ポリイソシアネート化合物とカルボキシル基を有するポリオール化合物とを必須成分とする水系ポリウレタン樹脂に、BET法による比表面積値が2000cm2 /g ~10000cm2/g で、44μm の篩に90重量%以上通過し、酸素量が0.2 重量%以下である電解銅粉又は該電解銅粉を解砕した銅粉を混合分散させてなる水性導電塗料であって、カルボキシル基を有するポリオール化合物は、2,2-ジメチロールプロピオン酸であり、上記水系ポリウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネート化合物とカルボキシル基を有するポリオール化合物とポリオール類から得られるカルボキシル基含有のウレタンプレポリマーとを、水の存在下において、塩基性有機化合物及び伸長剤と反応させることにより得られる水中に分散したウレタン樹脂である、水性導電塗料。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「水系ポリウレタン樹脂」、「有機ポリイソシアネート化合物」、「『2,2-ジメチロールプロピオン酸である』『カルボキシル基を有するポリオール化合物』」、「銅粉」、「ポリオール類」、「伸張剤」は、それぞれ、本願発明1における「ポリウレタン水分散体」、「ポリイソシアネート」、「親水基を有するポリオール」、「導電粒子」、「ポリオール」、「鎖伸張剤」に相当する。
以上から、引用発明における「水性導電塗料」は、本願発明1における「導電性ペースト」に相当する。
イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「ポリウレタン水分散体および導電粒子を含有する導電性ペーストであって、上記ポリウレタン水分散体が、ポリイソシアネート、ポリオール、親水性基を有するポリオール、および鎖伸張剤を反応させて得られるポリウレタンを水に分散させたものである導電性ペースト。」
<相違点>
<相違点1>
本願発明1は、「上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えることは特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、「上記ポリオールが、分子量1000のポリカーボネートジオールを除くポリカーボネートポリオールを含有する」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えることは特定されていない点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記第5の1(1)に摘記のとおり、引用文献1の段落【0012】には、脂環族ポリイソシアネートとして、「4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)」が挙げられているものの、当該化合物は、有機ポリイソシアネートの具体例として、段落【0011】-【0014】に示された多数の化合物のうちの一例にすぎず、また、水系ポリウレタン樹脂を得るための実施例1-実施例5において、有機ポリイソシアネートとして、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)は使用されていない。
引用文献1の段落【0001】には、産業上の利用分野として、「電解銅粉を混合分散してなる水性導電塗料」と記載されており、段落【0005】には、「塗料が増粘してゲル化に至る場合があること等の問題点があった。」と、段落【0026】には、「吹き付け塗装におけるスプレーノズルの詰まり防止・・・のために」と、段落【0072】には、「本発明に係る水性導電塗料は、・・・スプレー塗装・・・によって優れた導電性塗膜を容易に得ることができる。」と記載されている。
本願発明1の技術分野は、「伸張したときにすぐれた導電性を有する導電部材を供することのできる、導電ペースト」であり、引用発明の技術分野は、「電解銅粉を混合分散してなる水性導電塗料」であるから、両者の技術分野は同じであるとはいえない。
すると「水性導電性塗料」である引用発明において、「伸長したときに優れた導電性を有する導電性部材を供する」有機ポリイソシアネートとして、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を選択することは、当業者が容易になし得たとは認められない。
そして、本願の明細書に、「【発明の効果】【0007】本発明は、伸張したときにすぐれた導電性を有する導電部材を供することのできる、導電ペースト、および該ペーストを用いた導電材料ならびに導電部材を提供することが出来る。」と記載のとおり、本願発明1は、「伸張したときにすぐれた導電性を有する導電部材を供することのできる、導電ペーストを提供することが出来る」との効果を奏するものであり、この効果は、引用発明から予測し得ない効果である。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととは認められない。
イ まとめ
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の「上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-5は、「上記ポリイソシアネートが4 ,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含有し」という構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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