審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2020-016255

導電性フィルム、タッチパネル、および画像表示装置

審判番号
2020-016255
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-195232外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年11月26日
審決日
2021年11月24日
公報発行日
2022年01月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2016-195232「導電性フィルム、タッチパネル、および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月12日出願公開、特開2018- 60607、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成28年9月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 6月18日付け 拒絶理由通知書

令和2年 8月19日 意見書、手続補正書の提出

令和2年 8月26日付け 拒絶査定

令和2年11月26日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和2年8月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし7は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1 特開2016-107229号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正によって請求項1に「前記光透過性樹脂の膜厚が、50nm以上300nm未満であり」という事項を追加する補正が、新規事項を追加するものではないかについて検討すると、当初明細書の段落【0060】に「上記の観点から、光透過性樹脂14の膜厚は、10nm以上300nm未満とすることが好ましい。光透過性樹脂14の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1000~50万倍にて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。光透過性樹脂14の膜厚の下限は、50nm以上であることがより好ましく、上限は200nm以下であることがより好ましい。」と記載されているから、当該補正は、新規事項を追加するものではない。(下線は当審で付加した。以下同じ。)

また、当該補正は、補正前の請求項1に係る発明の「光透過性樹脂」について、膜厚を50nm以上300nm未満とする、限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

そして、以下の第4ないし第6までに示すように、補正後の請求項1ないし7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和2年11月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の面側に設けられた導電部とを備える光透過性の導電性フィルムであって、
前記導電部が、光透過性樹脂と、前記光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維とを含み、
前記光透過性樹脂の膜厚が、50nm以上300nm未満であり、
前記導電部の表面において、面内の任意の方向に対し前記任意の方向を含め30°毎に6方向における電気抵抗値をそれぞれ所定の大きさで測定し、最も低い電気抵抗値が得られる方向を第1の方向とし、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたとき、前記第1の方向の電気抵抗値に対する第2の方向の電気抵抗値の比が、2以上であり、
前記導電性繊維が、全体として、前記導電部中において前記導電部の膜厚の半分の位置より前記光透過性基材側に偏在している、導電性フィルム。」

なお、本願発明2ないし7の概要は以下のとおりである。

請求項2ないし5に係る発明は、請求項1に係る発明を減縮した発明である。

請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明を備える、タッチパネルである。

請求項7に係る発明は、請求項6に係るタッチパネルを備える、画像表示装置である。

第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2016-107229号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、金属繊維を含有する透明導電層を有する透明導電基材の製造方法等に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明基材上に金属ナノワイヤ含有の透明導電層を形成する方法としては、例えば、金属ナノワイヤおよびバインダ樹脂を溶媒に分散させたインク(以下、金属ナノワイヤインクと称する場合がある。)を用い、ダイコーター等で透明基材の表面の一方向に向けて塗布する溶液塗布法が用いられる。しかし、このような塗布方法を用いる場合、金属ナノワイヤの長軸(長さ方向)が塗布方向に沿って配向しやすいという傾向があり、透明導電層内において形成される導電パスの分布に粗密が生じるため、導電性に異方性が生じてしまうという問題がある。
【0006】
すなわち、図5で示すように、透明基材102を搬送させながらダイコーターDを用いて金属ナノワイヤインク111を塗布する場合、金属ナノワイヤ112は塗布方向Xに沿って配向し易い。つまり、塗布方向Xに相当する透明基材102の長手方向(図5中のMD方向)に沿って配向しやすく、短手方向(図5中のTD方向)へは配向しにくい。このため、図6で示すように、得られる透明導電基材100は、金属ナノワイヤ112の長軸が透明基材102の長手方向(図6中のMD方向)に沿って配向した透明導電層101を有することとなる。
透明導電層101は、金属ナノワイヤ112同士が接点Cを有して連結し、導電パスPが形成されることで導電性が向上する。ここで、金属ナノワイヤ112が上述の配向を有する場合、配向方向と同一の方向においては導電パスPが形成されやすいが、配向方向と直交する方向(図6中のTD方向)においては、金属ナノワイヤ112同士が連結できず、導電パスPが形成されにくい。このため、透明導電層101内において導電パスPの分布に粗密が生じ、導電性に異方性が生じてしまうのである。
なお、図5は、一般的な金属ナノワイヤインクの塗布工程を説明するための説明図であり、図6は従来の透明導電基材の一例を示す概略平面図である。 」
「【0019】
本発明の透明導電基材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の透明導電基材の製造方法の一例を示す工程図である。また、図2は、図1(e)の概略断面図、すなわち本発明の製造方法により得られる透明導電基材の一例を示す概略断面図である。
まず、別途、金属繊維、第1溶媒および第2溶媒を少なくとも含有する透明導電層形成用塗工液を準備する。透明導電層形成用塗工液は、沸点が50℃~95℃の範囲内にある第1溶媒および第1溶媒の沸点よりも高沸点の第2溶媒を、配合比率が20質量%:80質量%~70質量%:30質量%の範囲内となるように調製される。また、透明導電層形成用塗工液は、固形分濃度が0.1質量%~2.0質量%の範囲内となるように調製される。
次に、ダイコーターDを用いて透明基材2上に透明導電層形成用塗工液を塗布し透明導電層形成層11を形成する(図1(a))。このとき、透明導電層形成層11中の金属繊維12の長軸が、塗工方向Xに沿って配向する。
続いて、透明基材2上の透明導電層形成層11を40℃以下の乾燥温度T1で乾燥させて、透明導電層形成層11に含有される第1溶媒を除去する(図1(b)、(c))。このとき、乾燥温度T1が第1溶媒の沸点よりも低いことから、第1溶媒の自然揮発が起こる。ここで、透明導電層形成用塗工液は固形分濃度および粘度が低いため、透明導電層形成層11中の金属繊維12は、第1溶媒が揮発する過程で流動して層内に拡散される。これにより金属繊維12はランダムに配向することができる(図1(c))。
その後、第1乾燥工程後の透明基材2上の透明導電層形成層11’を乾燥温度T2で乾燥させて、透明導電層形成層11’に含有される第2溶媒を除去する(図1(d)、(e))。このとき、第2溶媒の蒸発過程で、金属繊維12のランダムな配向が固定されることで、ランダムな配向が保持された透明導電層1が形成され、透明導電基材10が得られる(図1(e)、図2)。
なお、図1(a)が塗布工程、図1(b)、(c)が第1乾燥工程、図1(d)、(e)が第2乾燥工程に相当する。」
「【0035】
金属繊維の平均直径としては、金属繊維の形態や透明導電基材の用途等に応じて適宜調整され、例えば0.1nm~1mmの範囲内、中でも0.1nm~100μmの範囲内であることが好ましい。金属ナノワイヤの場合、平均直径は1nm~100nmの範囲内であることが好ましく、中でも10nm~80nmの範囲内、特に20nm~60nmの範囲内、さらには40nm~60nmの範囲内であることが好ましい。
金属繊維の直径が上記範囲内であれば、導電性および透明性を確保することができる。
【0036】
また、金属繊維の平均長さとしては、金属繊維の平均直径よりも十分に大きければよく、金属繊維の形態や透明導電基材の用途等に応じて適宜調整される。金属ナノワイヤの場合、平均長さは50nm~1000μmの範囲内であることが好ましく、中でも50nm~500μmの範囲内であることが好ましい。金属繊維の長さが長ければ、1本の金属繊維で長い導電パスを形成することができる。」
「【0041】
(c)任意の材料
透明導電層形成用塗工液は、上述した材料の他に、必要に応じて任意の材料を含んでいてもよい。
以下、透明導電層形成用塗工液に含有される任意の材料について説明する。
続きを表示(全12行)
【0042】
(i)樹脂
透明導電層形成用塗工液は、樹脂を含んでいても良い。金属繊維同士を強固に固定することができるからである。
樹脂としては、絶縁性を有し、バインダとして機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル-メラミン樹脂、エポキシ-メラミン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0043】
上記樹脂は、安定剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
透明導電層形成用塗工液中の樹脂の含有量としては、金属繊維の含有量よりも少ないことが好ましい。具体的には、金属繊維100質量部に対して、樹脂の含有量が100質量部以下であることが好ましく、中でも50質量部以下、特に30質量部以下であることが好ましい。金属繊維に対する樹脂の含有量が上記範囲よりも大きいと、樹脂は絶縁性を示すことから電気抵抗が高くなり、得られる透明導電基材の導電性を低下させる場合があるからである。」
「【0076】
(1)透明導電層
透明導電層の厚さとしては、所望の導電性を発揮することが可能な大きさであればよく、例えば10nm~5.0μmの範囲内、中でも20nm~1.0μmの範囲内、特に30nm~300nmの範囲内であることが好ましい。透明導電層が上記範囲よりも薄いと導通が取り難く、製造も困難になる場合があり、一方、透明導電層が上記範囲よりも厚いと製造コストが高くなる場合がある。」
「【0079】
透明導電層は、透明基材の一方の表面の全域に形成されていてもよく、一方の表面上にパターン状に形成されていてもよい。
また、透明導電層は、図4(a)で例示するように、金属繊維12の表面が露出した状態で接点を形成して成る層であってもよく、図4(b)で例示するように、任意の材料である樹脂13からなる層内に金属繊維12同士が接点を形成して存在する層であってもよい。なお、図4は本発明における透明導電層の態様を説明する説明図であり、図4において説明しない符号については図1と同様とする。
さらに、透明導電層は、後述する保護層内に透明導電層を構成する金属繊維が包含されて成る態様であってもよい。
続きを表示(全15行)
【0080】
(2)その他
本発明の製造方法により得られる透明導電基材は、透明基材および透明導電層の他に、任意の部材を有していてもよい。
任意の部材としては、例えば、透明導電層を保護する保護層、透明導電層と透明基材との密着性を向上させるためのプライマー層、アンダーコート層等が挙げられる。
保護層としては、例えば特表2009-505358号公報で開示されるマトリクス材等が挙げられる。なお、透明導電層上に保護層が形成される場合、透明導電層の金属繊維が保護層内に包含されていてもよく、さらに金属繊維の一部が保護層の表面から突出していてもよい。
【0081】
本発明の製造方法により得られる透明導電基材は、高い光透過性を有することが好ましい。具体的には、本発明の製造方法により得られる透明導電基材の全光線透過率が85%以上であることが好ましい。なお、全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、HM-150)を用いてJIS K7361に準拠した方法により測定される値である。
【0082】
また、本発明の製造方法により得られる透明導電基材は、ヘイズ値が低いことが好ましい。透明導電基材のヘイズ値が大きい場合、透明導電層内において金属繊維が凝集傾向にあるところ、本発明の製造方法によれば、金属繊維の凝集の発生が抑制されるため、ヘイズ値が低くなるからである。具体的なヘイズ値については、本発明の製造方法により得られる透明導電基材が上述の全光線透過率を示すことが可能な範囲内であれば特に限定されない。
【0083】
本発明の製造方法により得られる透明導電基材の用途としては、例えばタッチパネルセンサ、液晶表示装置やEL表示装置等の表示装置、電子ペーパー、太陽電池等の各種デバイスを挙げることができる。」
「【0093】
[実施例1]
以下の方法で透明導電基材を得た。
【0094】
続きを表示(全20行)
(透明導電層形成用塗工液の調製)
下記組成の透明導電層形成用塗工液を調製した。
<透明導電層形成用塗工液>
・金属繊維:銀ナノワイヤ(平均直径35±15μm、平均長15μm、Bluenano社製 SLV-NW-35) … 0.3質量部
・樹脂:エチルセルロース … 0.06質量部
・第1溶媒:イソプロピルアルコール(沸点82℃) … 40質量部
・第2溶媒:n-ブタノール(沸点118℃) … 60質量部
【0095】
(塗布工程)
透明基材として、ポリカーボネート基材(帝人化成(株)社製、製品名:Panlite 厚さ:100μm)を用い、透明基材上に、透明導電層形成用塗工液をダイコーターを用いて塗布し、透明導電層形成層を形成した。なお、透明導電層形成用塗工液の塗布方向をMD方向、塗布方向に直交する方向をTD方向とした。
【0096】
(第1乾燥工程)
次に、透明導電層形成層が形成された透明基材を25℃下で2分間乾燥させ、透明導電層形成層中の第1溶媒を除去した。
【0097】
(第2乾燥工程)
次に、第1乾燥工程後の透明導電層形成層が形成された透明基材を130℃下で3分間乾燥させ、透明導電層形成層中の第2溶媒を除去して透明導電層を得た。これにより、透明導電基材を得た。」
「【0099】
[比較例2]
下記組成の透明導電層形成用塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして透明導電基材を得た。
<透明導電層形成用塗工液>
・金属繊維:銀ナノワイヤ(平均直径35±15μm、平均長15μm、Bluenano社製 SLV-NW-35) … 0.3質量部
・樹脂:エチルセルロース … 0.06質量部
・第1溶媒:イソプロピルアルコール(沸点82℃) … 10質量部
・第2溶媒:n-ブタノール(沸点118℃) … 90質量部」
「【0101】
[評価1]
(電気抵抗率比)
実施例1および比較例1~3により得られた透明導電基材から、試験片(150mm×150mmサイズ)を切り出し、透明導電層を配線幅1mm、配線長10mmとなるようにパターニングし、パターン配線間の所望の5箇所(pt1~pt5)におけるMD方向およびTD方向の電気抵抗率を測定し、下記式から電気抵抗率比を算出した。
電気抵抗率比=(MD方向の電気抵抗率/TD方向の電気抵抗率)
5箇所全てにおいて電気抵抗率比が規定範囲内(0.75~1.25の範囲内)にあるものを○、5箇所の電気抵抗率比が上記規定範囲内にないものを×とした。」
「【0103】
【表1】
[図:0001380587000001.jpg]
」

【図4】

[図:0001380587000002.jpg]

上記記載から、引用文献1(特に、「比較例2」)には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「金属繊維を含有する透明導電層1を有する透明導電基材10であって、
金属繊維、第1溶媒および第2溶媒を少なくとも含有する透明導電層形成用塗工液を準備し、
透明基材2上に透明導電層形成用塗工液を塗布し透明導電層形成層11を形成し、
透明基材2上の透明導電層形成層11を40℃以下の乾燥温度T1で乾燥させて、透明導電層形成層11に含有される第1溶媒を除去し、(第1乾燥工程)
続きを表示(全20行)
第1乾燥工程後の透明基材2上の透明導電層形成層11’を乾燥温度T2で乾燥させて、透明導電層形成層11’に含有される第2溶媒を除去することで東名導電層1が形成され、(第2乾燥工程)
透明導電層形成用塗工液は、
・金属繊維:銀ナノワイヤ(平均直径35±15μm、平均長15μm、Bluenano社製 SLV-NW-35) … 0.3質量部
・樹脂:エチルセルロース … 0.06質量部
・第1溶媒:イソプロピルアルコール(沸点82℃) … 10質量部
・第2溶媒:n-ブタノール(沸点118℃) … 90質量部
を含有し、
透明基材2として、ポリカーボネート基材(帝人化成(株)社製、製品名:Panlite 厚さ:100μm)を用い、透明基材2上に、透明導電層形成用塗工液をダイコーターを用いて塗布し、透明導電層形成層11を形成し、
次に、透明導電層形成層11が形成された透明基材2を25℃下で2分間乾燥させ、透明導電層形成層11中の第1溶媒を除去し、(第1乾燥工程)
第1乾燥工程後の透明導電層形成層11’が形成された透明基材2を130℃下で3分間乾燥させ、透明導電層形成層11’中の第2溶媒を除去した、(第2乾燥工程)
透明導電基材10であって、
塗布方向Xに相当する透明基材2の長手方向および端手方向を、それぞれMD方向およびTD方向とし、
透明導電基材10から、試験片(150mm×150mmサイズ)を切り出し、透明導電層1を配線幅1mm、配線長10mmとなるようにパターニングし、パターン配線間の所望の5箇所(pt1~pt5)におけるMD方向およびTD方向の電気抵抗率を測定し、下記式から電気抵抗率比を算出したときに、それぞれ、0.43、0.44、0.67、0.62、0.47であり、
透明導電層1の厚さは、30nm~300nmの範囲内である、
透明導電基材10。
(式)電気抵抗率比=(MD方向の電気抵抗率/TD方向の電気抵抗率)」

第6 引用発明との対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「透明基材2」及び「透明導電層1」は、それぞれ本願発明1の「光透過性基材」及び「前記光透過性基材の一方の面側に設けられた導電部」に対応する。

また、引用発明の「透明導電基材10」は、「透明基材2として、ポリカーボネート基材(帝人化成(株)社製、製品名:Panlite 厚さ:100μm)」と、厚さが「30nm~300nmの範囲内である」「透明導電層1」から成るのであるから、フィルム状であるといえる。そうすると、引用発明の「透明導電基材10」は、本願発明1の「光透過性の導電性フィルム」に相当する。

イ 引用発明の「透明導電層1」は、「エチルセルロース」と「銀ナノワイヤ」を含有し、この「エチルセルロース」及び「銀ナノワイヤ」は、本願発明1の「光透過性樹脂」及び「導電性繊維」に対応する。

しかしながら、引用発明は、「透明導電層形成用塗工液」に含まれる「銀ナノワイヤ」が0.3質量部であるのに対して、「エチルセルロース」は0.06質量部しか含まれていないから、この「透明導電層形成用塗工液」を塗布した層を乾燥させて「第1溶媒」及び「第2溶媒」を除去した「透明導電層1」において、「エチルセルロース」中に「銀ナノワイヤ」が配置されているとはいえない。

そうすると、引用発明の「透明導電層1」が「エチルセルロース」と「銀ナノワイヤ」を含有することと、本願発明1の「前記導電部が、光透過性樹脂と、前記光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維とを含」むことは、「前記導電部が、光透過性樹脂と、複数の導電性繊維とを含」む点で共通する。

ウ 引用文献1の段落【0006】の記載によれば、引用発明の「MD方向」と「TD方向」は、「透明基材2」の長手方向と端手方向であるから、直交する関係を有している。

そして、引用発明は、「MD方向」と「TD方向」の電気抵抗率比(MD/TD)が0.5以下の部分を含んでいるから、この部分の「TD方向」と「MD方向」の電気抵抗率比(TD/MD)は2以上となる。

そうすると、引用発明の「TD方向」と「MD方向」の電気抵抗率比が2以上となることと、本願発明1の「前記導電部の表面において、面内の任意の方向に対し前記任意の方向を含め30°毎に6方向における電気抵抗値をそれぞれ所定の大きさで測定し、最も低い電気抵抗値が得られる方向を第1の方向とし、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたとき、前記第1の方向の電気抵抗値に対する第2の方向の電気抵抗値の比が、2以上であ」ることとは、「前記導電部において、第1の方向と、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたとき、前記第1の方向の電気抵抗値に対する第2の方向の電気抵抗値の比が、2以上であ」る点で共通する。

エ そうすると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]

「光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の面側に設けられた導電部とを備える光透過性の導電性フィルムであって、
前記導電部が、光透過性樹脂と、複数の導電性繊維とを含み、
前記導電部において、第1の方向と、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたとき、前記第1の方向の電気抵抗値に対する第2の方向の電気抵抗値の比が、2以上である、
導電性フィルム。」

[相違点1]

本願発明1は、「導電部」が、「前記光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維とを含」んでいるのに対して、引用発明の「透明導電層1」は「銀ナノワイヤ」を含んでいるものの、「銀ナノワイヤ」が0.3質量部であるのに対して、「エチルセルロース」は0.06質量部しか含まれていないために、「銀ナノワイヤ」が「エチルセルロース」中に配置されているとはいえない点。

[相違点2]

本願発明1は、「前記光透過性樹脂の膜厚が、50nm以上300nm未満であ」るのに対して、引用発明の「透明導電層1」の厚さは、30nm~300nmの範囲内であるものの、「透明導電層1」に含まれる「エチルセルロース」の膜厚について特定されていない点。

[相違点3]

本願発明1は、「前記導電部の表面において、面内の任意の方向に対し前記任意の方向を含め30°毎に6方向における電気抵抗値をそれぞれ所定の大きさで測定し、最も低い電気抵抗値が得られる方向を第1の方向とし、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたとき、前記第1の方向の電気抵抗値に対する第2の方向の電気抵抗値の比が、2以上であ」るのに対して、引用発明は、「透明導電層1」について、第1の方向と、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向の電気抵抗値の比が2以上の部分を含むものの、「前記導電部の表面において、面内の任意の方向に対し前記任意の方向を含め30°毎に6方向における電気抵抗値をそれぞれ所定の大きさで測定」しておらず、そのため、「最も低い電気抵抗値が得られる方向を第1の方向とし、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向としたとき、前記第1の方向の電気抵抗値に対する第2の方向の電気抵抗値の比が、2以上であ」るとはいえない点。

[相違点4]

本願発明1は、「前記導電性繊維が、全体として、前記導電部中において前記導電部の膜厚の半分の位置より前記光透過性基材側に偏在してい」るのに対して、引用発明の「透明導電層1」中に含有される「銀ナノワイヤ」は、そのような特定がされていない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み、「光透過性樹脂」に関する上記相違点1及び2について、先に検討する。

引用発明は、「銀ナノワイヤ」が0.3質量部であるのに対して、「エチルセルロース」は0.06質量部であり、これらの質量部の割合を変更すること、即ち、「エチルセルロース」及び「銀ナノワイヤ」の質量部を、「透明導電層1」中の「銀ナノワイヤ」が「エチルセルロース」中に配置されるような質量部とすることは、引用文献1に記載されていない。また、引用文献1には、引用発明の「エチルセルロース」の膜厚を「50nm以上300nm未満」とすることも、引用文献1に記載されていない。

なお、引用文献1の段落【0079】に「図4(b)で例示するように、任意の材料である樹脂13からなる層内に金属繊維12同士が接点を形成して存在する層であってもよい。」と記載されているように、引用文献1に記載された「実施例」について、厚さが30nm~300nm(段落【0076】)の「透明導電層」について、「樹脂13」と「金属繊維12」からなる層とすることが示唆されているが、引用発明は「比較例2」として記載された発明であるから、この示唆に基づいて、当業者が比較例である引用発明に、相違点1及び2に係る構成を採用することは行わない。

そして、相違点1及び2に係る構成が、本願出願前に当該技術分野において周知の構成であるともいえない。

そうすると、引用発明において、技術常識を参酌しても、相違点1及び2に係る構成を採用することを想到することはできない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし5について

本願発明2ないし5も、本願発明1の相違点1及び2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6及び7について

本願発明6は、本願発明1の「導電性フィルム」を備える「タッチパネル」の発明であり、また、本願発明7は、本願発明6の「タッチパネル」を備える「画像表示装置」の発明であるから、本願発明1の相違点1及び2に係る構成を備えるものである。

そうすると、本願発明6及び7は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1は相違点1及び2に係る構成を備えるものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-016255

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1,215件(大日本印刷株式会社)
  • 2023-015794拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層基材、包装材料用積層体および包装材料
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-003481拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリエステル容器およびポリエステルプリフォーム
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-001600拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)バイオマス由来の樹脂層を有する積層体を備える包装製品
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2024-010051拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)チャック付き紙容器
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2024-015557拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)パウチ
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)477件(121・H01B)
  • 2025-013192拒絶査定不服審判 / 2026-06-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)超電導線材および超電導コイル
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-004792拒絶査定不服審判 / 2026-06-15 / 請求不成立透明導電性フィルム
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-008594拒絶査定不服審判 / 2026-05-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)透明導電性フィルム
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-005652拒絶査定不服審判 / 2026-02-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)通信用電線及びワイヤハーネス
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-003234拒絶査定不服審判 / 2025-12-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)固体ハイブリッド電解質、その作製方法、およびその使用
    共通の審決分類: 121・H01B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存