特許拒絶査定不服審判
2020-015048
樹脂付着長繊維ペレットの梱包体とその製造方法
- 審判番号
- 2020-015048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-074007外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月29日
- 審決日
- 2022年04月20日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ダイセルポリマー株式会社
- 【請求人代理人】古谷 聡
- 【請求人代理人】義経 和昌
- 分類
- P18 .121-WY (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016- 74007号「樹脂付着長繊維ペレットの梱包体とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-149480号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月1日(優先権主張 平成28年2月19日)の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和1年11月14日付け:拒絶理由通知書
令和2年 1月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 7月30日付け:拒絶査定
令和2年10月29日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
第2 原査定の概要
令和2年7月30日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
本願の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1-5、引用文献等1-2
・請求項6 、引用文献等1-3
<引用文献等一覧>
1.特開平11-29105号公報
2.特開2013-107979号公報
3.特開平4-57701号公報
第3 本件補正について
令和2年10月29日の審判請求と同時に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許法17条の2第3項から6項までの要件に違反しているものであるとはいえない。
本件補正前の請求項1に記載の「10~80質量%」を「20~80質量%」とする補正は、数値範囲をさらに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当初明細書の【0015】に「樹脂付着長繊維ペレット中の前記強化繊維濃度は10~80質量%であり、20~70質量%が好ましい。」と記載されており、本件補正後の数値範囲とともにその数値範囲を好ましいと記載されていることから、本件補正は新規事項を追加するものではない。
そして、以下の「第4」~「第6」までに示すように、本件補正後の請求項1~6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。
第4 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1~6に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明6」という。)は、その請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
樹脂付着長繊維ペレットが梱包材により梱包された梱包体であって、
前記樹脂付着長繊維ペレットが、強化用長繊維が長さ方向に揃えた状態で束ねられた強化用長繊維束に対して、溶融状態の熱可塑性樹脂が付着されて一体化されたものが6~50mmの長さに切断されたものであり、
前記樹脂付着長繊維ペレット中の前記強化繊維濃度が20~80質量%であり、
前記樹脂付着長繊維ペレットの密度が0.90~3.80g/cm3であり、
前記梱包材が、袋口面積が500cm2以上の内袋と蓋のある開口部を有する外装容器の組み合わせからなるものであり、
前記梱包体が、前記樹脂付着長繊維ペレットが前記内袋内に収納されたものが前記外装容器内に詰め込まれたものであり、
前記梱包体内に詰め込まれた前記樹脂付着長繊維ペレット全体のかさ密度が0.10~0.40g/cm3である、樹脂付着長繊維ペレット梱包体。
【請求項2】
前記樹脂付着長繊維ペレットが、前記強化用長繊維が長さ方向に揃えた状態で束ねられた強化用長繊維束に対して、溶融状態の熱可塑性樹脂により前記強化用長繊維束の表面が被覆され、かつ前記強化用長繊維束の内部に含浸されて一体化されたものが6~50mmの長さに切断されたものである、請求項1記載の樹脂付着長繊維ペレット梱包体。
【請求項3】
前記樹脂付着長繊維ペレットが、前記強化用長繊維が長さ方向に揃えた状態で束ねられた強化用長繊維束に対して、溶融状態の熱可塑性樹脂により前記強化用長繊維束の表面が被覆され、前記強化用長繊維束の内部に含浸されることなく一体化されたものが6~50mmの長さに切断されたものである、請求項1記載の樹脂付着長繊維ペレット梱包体。
【請求項4】
前記内袋が熱可塑性樹脂からなる袋であり、前記蓋のある外装容器が段ボール箱である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂付着長繊維ペレット梱包体。
【請求項5】
前記内袋の袋口の開口面積(A1)と前記外装容器の開口部の開口面積(A2)が、A2/A1=1.0~1.2の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂付着長繊維ペレット梱包体。
【請求項6】
請求項1記載の樹脂付着長繊維ペレット梱包体の製造方法であって、
前記外装容器の蓋を開けて開口させた状態にする手順1、
前記開口部から内袋を入れて、内袋の袋口を外装容器の開口部の蓋に沿って外側に拡げる手順2、
内袋の袋口から所要量の樹脂付着長繊維ペレットを詰め込む手順3、
内袋の袋口を閉じる手順4、
外装容器の蓋を閉じる手順5、
を有している、樹脂付着長繊維ペレット梱包体の製造方法。」
第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与したものである。以下同じ。)
(1)特許請求の範囲
「【請求項1】上面開放形態に形成した容器を充填位置に供給し、該容器内部に収納された袋体に対して充填物を充填する充填包装装置であって、上記シート状に扁平された袋体を充填位置に供給する供給手段を設け、上記供給手段により供給される袋体の口部を充填口と対応する大きさに開口する開口手段を設け、上記開口手段により開口された袋体の口部に充填口を挿入し、該充填口から吐出される充填物を袋体内部に充填する充填手段を設け、上記充填物が充填された袋体内部の余剰空気を脱気する脱気手段を設け、上記脱気機構により脱気された袋体の口部を閉塞する閉塞手段を設けた充填包装装置。
(省略)
【請求項3】上記充填位置に、上記袋体及び充填物に対して振動を付与する振動発生手段を設けた請求項1又は2記載の充填包装装置。」
(2)発明の詳細な説明
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、マーガリン、バター、ジャム、或いは、粒体、液体等の充填物を袋体内部に充填する作業に用いられる充填包装装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上述例のような物品を袋体内に充填する装置としては、例えば、図16に示すように、上面開放形態に製函された段ボール箱等の箱体AのフラップAa…に、箱体A内部に敷設された袋体Bの口部Baを外側に折り返して被覆して充填位置に搬送供給する。その箱体A内部に敷設された袋体Bの中央部に充填口53を挿入して、例えば、ホッパ等の充填物供給装置(図示省略)から供給される充填物Cを袋体B内に所定量充填する充填装置がある。」
イ 「【0013】請求項3記載の充填包装装置は、上記請求項1又は2記載の作用と併せて、充填時又は充填後に於いて、振動発生手段により発生される振動を袋体及び又は容器に付与するので、袋体と容器との間及び充填物内に含まれる空気が脱気され、容器の内壁面に対して袋体が密着した状態に収納されるため、容器内部の収納容積と対応して、同等量の充填物を袋体内部に充填することができ、包装効率及び運搬効率が向上する。」
ウ 「【0017】さらに、袋体及び又は容器に振動を付与して、容器の内壁面に対して袋体を密着させ、袋体と容器との間及び充填物内に含まれる空気を脱気するので、容器内部の収納容積と対応して、同等量の充填物を袋体内部に充填することができ、包装効率及び運搬効率が向上する。」
(3)上記(1)及び(2)を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「充填物Cが箱体A及び袋体Bにより包装された包装済みの物品であって、
箱体A及び袋体Bは、箱体A内部に敷設された袋体BとフラップAaを有し上面開放できる箱体Aからなるものであり、
包装済みの物品が、充填物Cが袋体Bに充填されたものが箱体A内にあるものである、充填物Cの包装済みの物品。」
2 引用文献2
引用文献2段落【0019】、【0020】、【0044】【0052】及び【0057】の記載を参酌すれば、引用文献2の段落【0058】の【表1】の実施例1の欄には、長さ9mmであり、ポリカーボネート(比重約1.2g/cm3)95重量部、ポリカプロラクタン5重量部、ガラス繊維(比重約2.5g/cm3)43重量部、その他0.7重量部(ガラス繊維の濃度が30重量%)からなる、樹脂付着繊維束のペレットが記載されているといえる。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「箱体A及び袋体B」は、その用語の意味からみて、本願発明1の「梱包材」に相当し、以下同様に、「包装され」ることは「梱包され」ることに、「包装済みの物品」は「梱包体」に、「箱体A内部に敷設された袋体B」は「内袋」に、「フラップAa」は「蓋」に、「上面開放できる」ことは「開口部を有する」ことに、「箱体A」は「外装容器」に、「袋体Bに充填され」ることは「内袋内に収納され」ることに、「箱体A内にある」ことは「外装容器内に詰め込まれ」ることに、それぞれ相当する。
また、本願発明1の「充填物C」と引用発明の「樹脂付着長繊維ペレット」とは、「充填物」の限りにおいて一致する。
(2)一致点及び相違点
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「充填物が梱包材により梱包された梱包体であって、
前記梱包材が、内袋と蓋のある開口部を有する外装容器の組み合わせからなるものであり、
前記梱包体が、充填物が前記内袋内に収納されたものが前記外装容器内に詰め込まれたものである、充填物梱包体。」
[相違点1]
本願発明1では、充填物が「樹脂付着長繊維ペレット」であって、「前記樹脂付着長繊維ペレットが、強化用長繊維が長さ方向に揃えた状態で束ねられた強化用長繊維束に対して、溶融状態の熱可塑性樹脂が付着されて一体化されたものが6~50mmの長さに切断されたものであり、
前記樹脂付着長繊維ペレット中の前記強化繊維濃度が20~80質量%であり、
前記樹脂付着長繊維ペレットの密度が0.90~3.80g/cm3」であるのに対して、引用発明では、このような特定がされていない点。
[相違点2]
本願発明1の「内袋」は、「袋口面積が500cm2以上」であるのに対し、引用発明の「袋体B」は、このような特定がされていない点。
[相違点3]
本願発明1は、「前記梱包体内に詰め込まれた前記樹脂付着長繊維ペレット全体のかさ密度が0.10~0.40g/cm3である」のに対し、引用発明は、このような特定がされていない点。
(3)相違点についての検討
以下、事案に鑑み相違点3について検討する。
ア 構成について
引用文献2に記載された、樹脂付着繊維束のペレットの「かさ密度」は不明であるから、引用発明の充填物Cを、引用文献2に記載された樹脂付着繊維束のペレットに限定したとしても、相違点3に係る本願発明1の構成に至らない。
イ 作用効果について
本願発明1は、梱包体内に詰め込まれた前記樹脂付着長繊維ペレット全体のかさ密度を、通常の粒体のかさ密度より小さい「0.10~0.40g/cm3」に特定することで「保管時および運搬時において樹脂付着長繊維ペレットが折れたり、破損したりすることが非常に少なくなる」(明細書の段落【0008】参照。)という作用効果を奏すると認められる。
これに対し、引用文献1には「袋体と容器との間及び充填物内に含まれる空気を脱気するので、容器内部の収納容積と対応して、同等量の充填物を袋体内部に充填することができ」(上記第5 1(2)ウの【0017】参照。)のように、かさ密度を大きくすることについての示唆はあるものの、引用文献1及び2のいずれにも、かさ密度を小さくすることについて記載も示唆もされていない。
そうすると「0.10~0.40g/cm3」というかさ密度の特定による、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものであるとはいえず、格別顕著なものである。
ウ 小括
したがって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2~6
本願発明2~6は、本願発明1の構成のすべてを備え、さらに請求項2~6に記載された事項によって限定を付加したものであるから、上記1のとおり、本願発明1について述べたのと同じ理由により、引用発明及び引用文献2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
第7 原査定について
本願発明1~6は、「前記梱包体内に詰め込まれた前記樹脂付着長繊維ペレット全体のかさ密度が0.10~0.40g/cm3である」という事項を有するものとなっており、上記第6で説示したとおり、拒絶査定において引用された引用文献1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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