2020-015004
高度な認証技術及びその応用
- 審判番号
- 2020-015004
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-209608外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月28日
- 審決日
- 2022年03月25日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .537-WZ (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第44条、特許法第164条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 4項目
第1.手続の経緯
本願は,2014年3月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月22日,2013年10月29日,2013年12月31日,2014年3月18日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2016-505506号の一部を,特許法44条1項の規定により,平成30年11月7日に新たな特許出願としたものであって,
平成30年11月7日付けで審査請求がなされ,令和1年9月25日付けで審査官により拒絶理由が通知され,令和2年6月25日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;令和2年6月29日),これに対して令和2年10月28日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,令和3年1月15日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,令和3年7月9日付けで当審により拒絶理由が通知され,令和4年1月12日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたものである。
第2.本願発明について
本願の請求項1~本願の請求項24に係る発明は,令和4年1月12日付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1~請求項24に記載された事項により特定されるものであり,そのうち請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,次のとおりのものである。
「ユーザのモバイル装置の現在位置を判定することを含む,ユーザ認証のための位置認識方法であって,前記モバイル装置の装置近接検出モジュールによって,1つ以上のピア又はネットワークインフラストラクチャ装置の存在を検出することと,前記モバイル装置の前記装置近接検出モジュールによって,前記ピア又はネットワークインフラストラクチャ装置に対する履歴存在データとの相関をとることであって,比較的高い相関が,前記モバイル装置が既知の位置に存在することを示し,比較的低い相関が,前記モバイル装置が既知の位置にないことを示す,ことと,前記モバイル装置の位置クラス決定モジュールによって,前記現在の位置に対応する位置クラスを識別することと,前記モバイル装置の認証ポリシーエンジンによって,指定した信頼できる当事者に関連付けられた認証ポリシーであって,識別された前記位置クラスに基づいて前記指定した信頼できる当事者との現在のトランザクションのための十分なレベルのユーザ認証を提供するために,1つ以上の認証技術のセットを定義する,前記認証ポリシーを,前記信頼できる当事者のサーバーから受信することと,前記モバイル装置の前記認証ポリシーエンジンによって,前記識別された位置クラスに基づいて,前記現在のトランザクションのユーザを認証するために,前記1つ以上の認証技術のセットから第1の認証技術を選択して前記第1の認証技術を使用することと,を含む,方法。」(なお,下線は,請求人が付加したものである。)
第3.当審の拒絶理由について
当審による令和2年7月9日付け拒絶理由通知の理由(以下,これを「当審拒絶理由」という)は,概略,次のとおりのものである。
「1.36条6項2号について(1)本願の請求項1に,「前記モバイル装置の装置近接検出モジュールによって,1つ以上のピア又はネットワークインフラストラクラャ装置の存在を検出することと,前記モバイル装置の前記装置近接検出モジュールによって,前記ピア又はネットワークインフラストラクラャ装置に対する履歴存在データとの相関をとることであって,比較的高い相関が,前記モバイル装置が既知の位置に存在することを示し,比較的低い相関が,前記モバイル装置が既知の位置にないことを示す,ことと,続きを表示(全18行)前記モバイル装置の位置クラス決定モジュールによって,前記現在の位置に対応する位置クラスを識別することと」,と記載されているが,ア.「装置近接検出モジュール」は,「履歴存在データ」と“何”の「相関」をとっているのか,本願の請求項1に記載の内容,及び,本願の他の請求項に記載の内容を検討しても,不明である。イ.上記引用記載において,「装置近接検出モジュール」によって,「モバイル装置」が,「既知の位置に存在することを示」す,或いは,「既知の位置にないことを示す」ことと,「モバイル装置の位置クラス決定モジュール」によって,「現在の位置クラスを識別する」こととの関係が,本願の請求項1に記載の内容,及び,本願の他の請求項に記載の内容を検討しても,不明である。(どちらも,「モバイル装置」の位置に関する情報であると解されるものの,"既存の位置に存在するか否か"を示す情報が,本願の請求項1に記載の「位置クラス決定モジュール」以降の処理に使われていない。本願明細書の段落【0149】,段落【0150】に,「相関」と,「認証ポリシー」に関する言及が存在するが,本願の請求項1の記載からは,そのような関係が読み取れず,本願の請求項1に係る発明の構成が,明確にならない。)(2)本願の請求項1に,「識別された前記位置クラスに基づいて前記指定した信頼できる当事者との現在のトランザクションのための十分なレベルのユーザ認証を提供するために,1つ以上の認証技術のセットを定義する認証ポリシーを,前記信頼できる当事者のサーバーから受信する」,と記載されているが,“識別された位置クラスに基づいて指定した信頼できる当事者との現在のトランザクションのための十分なレベルのユーザ認証を提供する”のか,“識別された位置クラスに基づいて,1つ以上の認証技術のセットを定義する認証ポリシーを,信頼できる当事者のサーバーから受信する”のか,「識別された位置クラスに基づいて」が,「ユーザ認証を提供する」に係るのか,「サーバーから受信する」に係るのか,本願の請求項1に記載の内容からは,不明である。加えて,「位置クラス」の“何”に“どのように”基づいて,実現しているのか,不明である。(「位置クラス」に関しては,特に,本願明細書の段落【0126】~段落【0134】に開示されていて,「位置クラス」の定義は,必須であると解される。)」
第4.当審の判断
1.当審拒絶理由における「1.36条6項2号について」の(1)について
(1)ア.について
当審拒絶理由における「1.36条6項2号について」の(1)ア.において指摘した事項(以下,これを「指摘事項1」という)は,
“本願の請求項1に記載の「装置近接検出モジュール」は,「履歴存在データ」と,“何”の「相関」をとっているか”を問うものである。
これに対して,請求人による令和4年1月12日付けの手続補正(以下,これを「本件補正」という)においては,何ら補正が行われておらず,本願の請求項1の記載内容においては,指摘事項1は,依然として,不明のままである。
指摘事項1について,請求人は,手続補正と同日付け意見書(以下,単に「意見書」という)において,
『(1)アについて
本件出願人は,アにおいてご指摘いただきました,
「前記モバイル装置の装置近接検出モジュールによって,1つ以上のピア又はネットワークインフラストラクラャ装置の存在を検出することと,前記モバイル装置の前記装置近接検出モジュールによって,前記ピア又はネットワークインフラストラクラャ装置に対する履歴存在データとの相関をとることであって,比較的高い相関が,前記モバイル装置が既知の位置に存在することを示し,比較的低い相関が,前記モバイル装置が既知の位置にないことを示す,ことと,前記モバイル装置の位置クラス決定モジュールによって,前記現在の位置に対応する位置クラスを識別することと」の技術的特徴につきましては,
本件当初出願明細書の図17ないし図20及びその関連段落の記載に明瞭に説明されているものと思料いたします。
例えば,本件当初明細書の段落番号[0128]には,「ネットワークデータは,クライアント装置1700(例えば,既知のピアコンピューター,アクセスポイント,セルタワーなど)の局所近傍内のネットワーク/コンピューティング装置を識別して収集することができる。」との開示があります。
さらに,本件当初明細書の段落番号[0149]には,
「図示されたように,クライアント装置1700における装置近接検出ロジック2001は,視認可能な装置に関連するデータをキャプチャし,過去の装置近接データ2004に対して結果を比較することができる。過去の装置近接データ2004は,経時的及び/又はトレーニング処理によって生成することができる。例えば,1つの実施形態において,ユーザは,彼/彼女が仕事中であるとき,自宅で又は他の位置で指定することができる(手動で又はクライアント1700によってそうするように要求したとき)。それに応じて,装置近接検出ロジック2001は,近傍の装置を検出し,持続的に過去の装置近接データ2004として結果を記憶することができる。ユーザがその後に位置に戻ると,装置近接検出ロジック2001は,両者の相関を生成するために過去の近接データ2004として記憶された装置に対して現在「みる」ように装置を比較することができる。一般に,相関が強いと,クライアントが指定した位置にある可能性が高い。時間の経過とともに,定期的にみられている装置は,(例えば,これらの装置は,ユーザの作動位置とより正確な相関を提供する傾向があるため)過去の装置近接データ2004において他の装置上に優先順位付けすることができる。」との開示があります。
このように装置近接検出ロジック(例えば,ブルーツース,NFC,その他のネットワークプロトコル等)は,特定の位置においての一定のネットワーク装置の存在を検出することができ,検出された装置(すなわち過去の装置近接データ)に基づいて位置の署名を生成いたします。その後,この位置の署名は,該ネットワーク装置が現在みている位置が,以前に検出され,上記過去の装置近接データに記憶されている位置と同じ位置に戻っているかどうかということを判定するのに使用することができます。
もちろん,ネットワーク装置が,多くなればクライアント装置が同じ位置を訪れたより多くの機会で一致いたします。
「装置近接検出モジュール」は,「履歴存在データ」と“何”の「相関」をとっているのかとのご質問に対しましては,本件当初出願明細書の図17ないし図20及びその関連説明,及び上記段落番号[0149]の開示,とりわけ,
「装置近接検出ロジック2001は,近傍の装置を検出し,持続的に過去の装置近接データ2004として結果を記憶することができる。ユーザがその後に位置に戻ると,装置近接検出ロジック2001は,両者の相関を生成するために過去の近接データ2004として記憶された装置に対して現在「みる」ように装置を比較することができる。一般に,相関が強いと,クライアントが指定した位置にある可能性が高い。」
の開示を参照することにより明確になるものと思料いたします。』(下線は,当審が付加したものである。)
と主張しているが,そのうち,指摘事項1に特に関連する箇所は,上記下線を付した箇所である。
そこで,上記主張について検討するに,本願明細書中には,本願の請求項1に記載の「履歴存在データ」なるものが,記載されていない。
ここで,本願明細書中において,「履歴」とは,本願明細書の段落【0047】に,
「ユーザ/位置データ記憶装置245に記憶された履歴又はユーザ固有の位置データ」,及び,
「例えば,(履歴又はユーザ固有の位置データ245に応じて)装置が現在「自宅」や「職場」の位置にある場合」,
という記載から,“ユーザの装置が存在した位置の履歴”を意味するものとも解される。
一方,本願の請求項1の,
「モバイル装置の装置近接検出モジュールによって,1つ以上のピア又はネットワークインフラストラクチャ装置の存在を検出することと,前記モバイル装置の前記装置近接検出モジュールによって,前記ピア又はネットワークインフラストラクチャ装置に対する履歴存在データとの相関をとる」,
という記載から,本願の請求項1の上記引用箇所と,段落【0149】の上記引用箇所とが,関連していることは読み取れるが,
本願の請求項1の「ピア又はネットワークインフラストラクチャ装置に対する履歴存在データ」という記載から,「履歴存在データ」とは,「ピア又はネットワークインフラストラクチャ装置」に対して,“何か”が「存在」した「履歴」の「データ」とも読めるのに対して,段落【0149】の「過去の装置近接データ2004」は,“ユーザの装置”に対して,“何が”「近接」していたかを示す「データ」であると解されるので,本願明細書のその他の記載内容を加味しても,「履歴存在データ」が,「過去の装置近接データ2004」であると言い切ることはできない。
また,段落【0150】には,
「ユーザの現在位置と過去の装置近接データ2004との間に低い相関がある場合」,
という記載が存在しているが,
上記において指摘したとおり,「装置近接データ2004」とは,“ユーザの装置”に対して,“何が”「近接」していたかを示す「データ」であるから,
“位置の情報(「ユーザの現在位置」)”と,“どのようなものが近傍に存在したかという情報(「装置近接データ2004」)”との間で「相関」を取るという処理が,どのようなものであるか,本願明細書に記載の内容,及び,図面に開示された事項を検討しても不明である。
以上に検討したとおり,上記引用の段落【0150】の記載を含む,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容を検討しても,上記指摘事項1は,明瞭にならない。
よって,請求人の意見書における主張は,採用できず,本願発明は,上記指摘事項1に関して,依然として不明である。
(2)イ.について
当審拒絶理由における「1.36条6項2号について」の(1)イ.において指摘した事項(以下,これを「指摘事項2」という)は,
“相関をとって,モバイル装置の現在位置が,既知のものか否かを調べる”ことと,“モバイル装置の位置決定モジュールが,現在の位置に対する位置クラスを識別すること”との関係を問うものである。
そして,ア.と同様に,本件補正において,何ら補正がなされていないので,指摘事項2は,請求項の記載を読む限り,依然として不明のままである。
指摘事項2について,請求人は,意見書において,
『(1)イについて
請求項1に記載の「相関」は過去の近接データに基づくクライアント装置1700の位置に関係するものであり,一方,「位置クラス」は,図17,図18等,及びその関連説明にかかる本件当初明細書の段落番号[0124]ないし[0142]等に記載されておりますように認証技術の範囲等との関係で用いられているものであります。』
と主張するにとどまり,この説明からは,“相関を求め,モバイル装置の現在の位置が,既知であるか否か”を示す処理と,「位置クラスを識別する」処理との関係を読み取ることはできない。
しかしながら,請求項1の「モバイル装置の前記認証ポリシーエンジンによって,前記識別された位置クラスに基づいて,前記現在のトランザクションのユーザを認証する」という記載から,「位置クラス」は,「認証」に用いられるものであることが読み取れ,
一方,「相関」の結果についても,当審拒絶理由において指摘した,本願明細書の段落【0150】に,
「認証ポリシーエンジン1710は,各信頼できる当事者1750についてユーザによって必要とされる認証のレベルを判定するために,装置近接検出ロジック2001によって提供される相関結果を使用することができる。例えば,高い相関が存在する場合(すなわち,指定された閾値以上),認証ポリシーエンジンは,エンドユーザによる明示的な認証を必要としない」,
という記載が存在していて,上記引用の段落【0150】の記載に従えば,“相関処理の結果”が,「認証」処理に関与していることは明らかであるから,これらの事項から,前記“相関処理の結果”と,「位置クラス」との間に,何らかの関係が存在することが類推されるものの,本願明細書の記載内容を加味して検討してみても,上記指摘事項2は,明瞭にはならない。
よって,請求人の意見書における主張は,採用できず,本願発明は,上記指摘事項2に関して,依然として不明である。
2.当審拒絶理由における「1.36条6項2号について」の(2)について
当審拒絶理由の(2)において指摘した,
“「ユーザの認証を提供する」ことが,「位置クラス」の“何”に“どのように”基づいて,実現しているか不明である”点(以下,これを「指摘事項3」という)に関して,
本件補正においては,何ら補正がなされていないので,指摘事項3は,請求項の記載を読む限り,依然として不明のままである。
指摘事項3について,請求人は,意見書において,
『(2)について
ご指摘の部分について申し上げます。
「認証ポリシーは,識別された位置クラスに基づいて,指定した信頼できる当事者との現在のトランザクションのための十分なレベルのユーザ認証を提供する」ものであります。
位置クラスの例はご指摘の本件明細書の段落番号[0124]ないし[0134]等に記載されております。請求項における位置クラスの定義は技術限定の懸念があります。
本件出願人は,ご指摘の不都合を解消するための補正をいたしました。補正後の請求項1の記載におきましては,ご指摘の誤解は生じないものと思料いたします。』
と主張するにとどまり,上記意見書の主張は,当審拒絶理由の(2)において,上記指摘事項3とは別に,
『“識別された位置クラスに基づいて指定した信頼できる当事者との現在のトランザクションのための十分なレベルのユーザ認証を提供する”のか,
“識別された位置クラスに基づいて,1つ以上の認証技術のセットを定義する認証ポリシーを,信頼できる当事者のサーバーから受信する”のか,
「識別された位置クラスに基づいて」が,「ユーザ認証を提供する」に係るのか,「サーバーから受信する」に係るのか,本願の請求項1に記載の内容からは,不明である』,
と指摘した事項の解消に関するものであり,
上記本件補正における補正内容は,上記指摘事項3と関連しておらず,上記意見書の説明が,前記補正内容に関連するものである以上,上記意見書の内容を検討しても,上記指摘事項3が解消しないことは,明らかである。
そして,「位置クラス」なる用語は,本願の原出願の第1国出願前の時点で,本願発明の属する技術分野において,周知の技術用語とは認められず,その意味を明確にする上で,当審拒絶理由において指摘したとおり,本願明細書の段落【0126】~段落【0134】において開示されている事項が必須であると認められるところ,請求項1に記載された内容からは,当該明細書の開示の事項のみに限定解釈すべき根拠は見いだせず,上記指摘事項3は,解消しない。
よって,請求人の意見書における主張は,採用できず,本願発明は,上記指摘事項3に関して,依然として不明である。
3.以上,1.及び2.において検討したとおり,本願発明は,本件補正,及び,意見書の内容を検討しても,依然として明確でない。
第5.むすび
以上に検討したとおりであるから,この出願は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-015004