特許拒絶査定不服審判
2020-012930
カット手法を分析する方法
- 審判番号
- 2020-012930
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-160189外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月15日
- 審決日
- 2021年02月25日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社トミーズ・スター
- 【請求人代理人】特許業務法人 英知国際特許事務所
- 分類
- P18 .14 -Z (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第2条、特許法第29条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-160189「カット手法を分析する方法」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月3日を出願日とする出願であって、同年12月10日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月31日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月5日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年9月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。
第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)令和2年1月31日提出の手続補正書により補正された(以下、「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1~5は、以下のとおりである。
「【請求項1】
分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、第1のステップ、
次いで、分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ、
次いで、第2のステップで選択したセクションに対して、第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき
A アウトラインの形状または表情分析
B カットライン分析
C ボリューム位置またはボリュームライン分析
D シルエット形状または表情分析
E パート(分け目)の位置または有無分析
F セクションの幅または形状分析
G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の中から、前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い、分析結果を得る第3のステップ、
次いで、前記分析結果から、カット手法に関する情報を導出する第4のステップによる、
前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法を分析する方法。
【請求項2】
前記カット手法に関する情報が、
(A)スライス
(B)ステム
(C)カットライン
(D)パート(分け目)
(E)セクションの分け方と幅
の少なくともいずれか1つ前記カット手法に関する情報である、請求項1記載のカット手法を分析する方法。
【請求項3】
請求項1記載のカット手法を分析する方法における、前記分析対象者の前記正面の写真、画像、イラストまたはデッサンを用いた予備分析方法であって、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記分析対象者の前記正面の写真、画像、イラストまたはデッサンに、前記推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの
ア 前シルエット線を描く
イ 正中線を描く
ウ サイドの下側アウトラインの傾きにより、(ア)または(イ)の場合に分けて、レングス補助線を描く
(ア)サイドの下側アウトラインが真っ直ぐまたは前上がりの場合は、目じりから前記正中線に平行にレングス補助線を描く
(イ)サイドの下側アウトラインが前下がりの場合は、頬骨外からレングス補助線を描く
エ 前記レングス補助線と前記前シルエット線の一番幅のある前記前シルエット線上の位置を前ボリューム位置とし、印を描く
オ 前記前ボリューム位置から髪が内側に入り出し方向が安定したら、その方向のまま前記前ボリューム位置と前記レングス補助線を交わるまで直線を引き、その交点をイヤートゥレングス点として印を描く、
ことの中から少なくともアを行うことを特徴とする、分析対象者正面の写真、画像、イラストまたはデッサン予備分析方法。
【請求項4】
請求項1記載のカット手法を分析する方法における、前記分析対象者の前記側面の写真、画像、イラストまたはデッサンの予備分析方法であって、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記分析対象者の前記側面の写真、画像、イラストまたはデッサンに、前記推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの
ア 横シルエット線を描く
イ イヤートゥ線を描く
ウ 後ボリューム位置を描く
ウ ボリュームラインを描く
ことの中から少なくともアを行うことを特徴とする、
分析対象者側面の写真、画像、イラストまたはデッサン予備分析方法。
【請求項5】
請求項1記載のカット手法を分析する方法における、前記分析対象者の前記背面の写真、画像、イラストまたはデッサンの予備分析方法であって、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記分析対象者の前記背面の写真、画像、イラストまたはデッサンに、前記推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの
ア 後シルエット線を描く
イ 後ボリューム位置を描く
ウ ボリュームラインを描く
ことの中から少なくともアを行うことを特徴とする、分析対象者背面の写真、画像、イラ
ストまたはデッサンの予備分析方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~5は、以下のとおりである。(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ、
次いで、分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ、
次いで、第2のステップで選択したセクションに対して、第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき
A アウトラインの形状または表情分析
B カットライン分析
C ボリューム位置またはボリュームライン分析
D シルエット形状または表情分析
E パート(分け目)の位置または有無分析
F セクションの幅または形状分析
G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の中から、前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い、分析結果を得る第3のステップ、
次いで、前記分析結果から、カット手法に関する情報を導出する第4のステップによる、
前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法を分析する方法。
【請求項2】
前記カット手法に関する情報が、
(A)スライス
(B)ステム
(C)カットライン
(D)パート(分け目)
(E)セクションの分け方と幅
の少なくともいずれか1つ前記カット手法に関する情報である、請求項1記載のカット手法を分析する方法。
【請求項3】
請求項1記載のカット手法を分析する方法における、前記分析対象者の前記正面の写真、画像、イラストまたはデッサンを用いた予備分析方法であって、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記分析対象者の前記正面の写真、画像、イラストまたはデッサンに、前記推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの
ア 前シルエット線を描く
イ 正中線を描く
ウ サイドの下側アウトラインの傾きにより、(ア)または(イ)の場合に分けて、レングス補助線を描く
(ア)サイドの下側アウトラインが真っ直ぐまたは前上がりの場合は、目じりから前記正中線に平行にレングス補助線を描く
(イ)サイドの下側アウトラインが前下がりの場合は、頬骨外からレングス補助線を描く
エ 前記レングス補助線と前記前シルエット線の一番幅のある前記前シルエット線上の位置を前ボリューム位置とし、印を描く
オ 前記前ボリューム位置から髪が内側に入り出し方向が安定したら、その方向のまま前記前ボリューム位置と前記レングス補助線を交わるまで直線を引き、その交点をイヤートゥレングス点として印を描く、
ことの中から少なくともアを行うことを特徴とする、分析対象者正面の写真、画像、イラストまたはデッサン予備分析方法。
【請求項4】
請求項1記載のカット手法を分析する方法における、前記分析対象者の前記側面の写真、画像、イラストまたはデッサンの予備分析方法であって、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記分析対象者の前記側面の写真、画像、イラストまたはデッサンに、前記推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの
ア 横シルエット線を描く
イ イヤートゥ線を描く
ウ 後ボリューム位置を描く
ウ ボリュームラインを描く
ことの中から少なくともアを行うことを特徴とする、
分析対象者側面の写真、画像、イラストまたはデッサン予備分析方法。
【請求項5】
請求項1記載のカット手法を分析する方法における、前記分析対象者の前記背面の写真、画像、イラストまたはデッサンの予備分析方法であって、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記分析対象者の前記背面の写真、画像、イラストまたはデッサンに、前記推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの
ア 後シルエット線を描く
イ 後ボリューム位置を描く
ウ ボリュームラインを描く
ことの中から少なくともアを行うことを特徴とする、分析対象者背面の写真、画像、イラストまたはデッサンの予備分析方法。」
2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、第1のステップ」について、「正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」を付加し、本件補正後の請求項1の記載を「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ」とするものである。
請求項2~5は、請求項1を引用して記載したものであり、本件補正による記載の変更はない。
ここで、本件補正前の請求項1の「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、第1のステップ」との記載は、「から、」と「第1のステップ」との間に、語句の脱落があるため意味の通じないものであり、拒絶査定においても、「日本語として不明確である」と指摘されている。
そこで、請求項1について、出願時から本件補正までの経緯をみると、出願時の請求項1には、「分析対象者の写真、画像、イラストまたはデッサンから、正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ」と記載されており、令和2年1月31日になされた手続補正(以下、「補正1」という。)により、「正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」が削除され、本件補正前の請求項1に記載の「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、第1のステップ」と補正され、本件補正により、再び、「正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」が付加され、本件補正後の請求項1に記載の「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ」と補正された。
そうすると、本件補正前の請求項1において、「から、」と「第1のステップ」との間の脱落している語句は、出願時の請求項1に記載された「正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」であることは明らかである。
したがって、本件補正は、補正1により生じた語句の脱落による誤記を、出願時の請求項1の記載に改めることによって訂正するものであり、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法17条の2第3項及び同第4項に規定する要件に違反するものではなく、同法同条第5項3号に掲げる誤記の訂正を目的とする補正である。
したがって、本件補正は、適法になされたものである。
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に記載された「カット手法を分析する方法」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないため、特許法2条で定義される「発明」に該当せず、したがって、同法29条1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しないから、特許を受けることができないというものである。
第4 当審の判断
1 本願明細書の記載事項等について
(1) 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記「第2 1(2)」のとおりである。
本願明細書には、次のとおりの記載がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象者のヘアスタイルで採用されているカット手法を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容学校では、学生に複数の代表的なヘアスタイルにするのに使われるカット手法を教えている。しかしながら、無数にあるヘアスタイルの一部を教えているにすぎない。卒業後は、美容室に勤めながら先輩美容師から、様々なヘアスタイルにするためのカット手法を学びながら応用ができるようにスキルアップを図っている。
【0003】
美容室では、顧客から「このようなヘアスタイルにして欲しい」と写真を渡されることがあるが、経験の浅い美容師にとってどのようなカット手法を施せばそのヘアスタイルにすることができるのかわからないことが多い。
【0004】
ヘアスタイルをバング、トップセクションなどのセクションに分け、各々のセクションに対してどのようなカット手法を用いるかにより、ヘアスタイルは2億通りを超え、経験の浅い美容師や学生が写真通りのヘアスタイルにすることは簡単なことではない。
また、ヘアスタイルデザインロジックに基づいた体系的な学習法や分析方法はこれまで存在せず、美容師育成に時間がかかっていた。
【0005】
特許文献1のように、展開図を用いて数値や符号でヘアデザインを設計する方法が提案されているが、顧客が持参する写真から展開図を作り上げる手法については何ら開示していない。また、カッティングについて特許文献1に記載はあるが、実際にどのようなヘアスタイルに対してどのようなカッティング手法を用いるのかについては全く記載がなく、作成された展開図どおりのヘアスタイルに仕上げることができるというだけのものであった。
【0006】
また、写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定して、分析を試みることも行われてこなかった。
【0007】
ベテランの美容師は、過去に学んだ様々なヘアスタイルから経験的にカット手法を導き出しているだけであり、経験の浅い美容師にとってカット手法を写真から導き出すことは容易なことではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-209284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、分析対象者のヘアスタイルの正面写真、側面写真および背面写真を分析し、当該分析対象者に使用されているカット手法分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ、
次いで、分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ、
次いで、第2のステップで選択したセクションに対して、第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき
A アウトラインの形状または表情分析
B カットライン分析
C ボリューム位置またはボリュームライン分析
D シルエット形状または表情分析
E パート(分け目)の位置または有無分析
F セクションの幅または形状分析
G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の中から、前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い、分析結果を得る第3のステップ、
次いで、前記分析結果から、カット手法に関する情報を導出する第4のステップによる、
前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法を分析する方法とすることで、課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、分析対象者の写真、イラストまたはデッサンから採用されているカット手法分析ができるようになった。
また、前記カット手法分析は体系化されているため、学生や経験の浅い美容師であっても容易にカット手法を分析できるようになった。
(2) 本願補正発明の概要
上記(1)の記載によれば、本願補正発明の概要は以下のようなものである。
ア 技術分野
分析対象者のヘアスタイルで採用されているカット手法を分析する方法に関する。(段落【0001】)
イ 背景技術
美容学校では、学生に複数の代表的なヘアスタイルにするのに使われるカット手法を教えているが、ヘアスタイルの一部を教えているにすぎず、卒業後は、美容室に勤めながら、スキルアップを図っている。
顧客から「このようなヘアスタイルにして欲しい」と写真を渡されることがあるが、ベテランの美容師は、過去に学んだ様々なヘアスタイルから経験的にカット手法を導き出しているだけであり、経験の浅い美容師にとってカット手法を写真から導き出すことは容易なことではなかった。
展開図を用いて数値や符号でヘアデザインを設計する方法が提案されているが、顧客が持参する写真から展開図を作り上げる手法については何ら開示しておらず、カッティングについて特開2004-209284号公報に記載はあるが、実際にどのようなヘアスタイルに対してどのようなカッティング手法を用いるのかについては全く記載がなく、作成された展開図どおりのヘアスタイルに仕上げることができるというだけのものであった。
写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定して、分析を試みることも行われてこなかった。(段落【0002】~【0007】)
ウ 解決しようとする課題
本願補正発明は、分析対象者のヘアスタイルの正面写真、側面写真および背面写真を分析し、当該分析対象者に使用されているカット手法分析方法を提供することを目的とする。(段落【0009】)
エ 課題を解決するための手段
本願補正発明のカット手法を分析する方法により、課題を解決した。
オ 効果
本願補正発明により、分析対象者の写真、イラストまたはデッサンから採用されているカット手法分析ができるようになった。
また、前記カット手法分析は体系化されているため、学生や経験の浅い美容師であっても容易にカット手法を分析できるようになった。(段落【0011】)
2 発明該当性(特許法29条1項柱書に規定する要件)について
特許法2条1項には、「この法律で『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定され、同法29条1項柱書には、「産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。
したがって、特許出願に係る発明が、自然法則を利用していないもの、例えば、単なる精神活動、純然たる学問上の法則、人為的な取決めなどであるときは、その発明は特許法2条1項に規定される「発明」に該当せず、特許法29条1項柱書に規定する要件を満たさないから、特許を受けることができない。
そこで、本願補正発明が、自然法則を利用したものであるかについて以下に検討する。
(1) 本願補正発明
本願補正発明は、上記「第2 1(2)」のとおり、「選択されたセクションに対して採用されているカット手法を分析する方法」であって、以下の第1のステップ~第4のステップの4つのステップからなる方法である。
「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサンから、正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ」
「分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ」
「第2のステップで選択したセクションに対して、第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき
A アウトラインの形状または表情分析
B カットライン分析
C ボリューム位置またはボリュームライン分析
D シルエット形状または表情分析
E パート(分け目)の位置または有無分析
F セクションの幅または形状分析
G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の中から、前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い、分析結果を得る第3のステップ」
「前記分析結果から、カット手法に関する情報を導出する第4のステップ」
上記の第1のステップ~第4のステップのそれぞれについて、自然法則を利用しているか否かについて検討する。
(2) 第1のステップについて
第1のステップは、「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサン」から、「正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」を推定することを特定したものである。
本願明細書及び図面には、第1のステップについて、以下のとおりの記載がある。
「【0026】
<実施例>
アウトライン、前シルエット、後シルエットおよび内側シルエットを分析対象とする分析(以下、「本分析」という。)を開始する前に、分析対象者の正面写真、側面写真および背面写真について、予備分析をする。
パーマネントがかかっている写真においては、撮影された髪型そのものを分析するのではなく、パーマネントが解けて自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを分析者が推定して、分析を開始する。
パーマネントがかかっている写真においては、撮影された髪型そのものを分析するのではなく、パーマネントが解けて自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを分析者が推定して、分析を開始する。
美容に携わる者であれば、パーマネントがかかっている写真からでも自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときのシルエット線のおおよその位置を容易に推定できる。
【0027】
(予備分析)
1 正面写真を用いた予備分析方法
図1を参照されたい。
分析対象者の正面写真を用意し、耳5が毛髪で隠れている場合は、耳5を描く。耳5を描くことは必須ではないが、耳5の位置は前シルエット線3等を描く際に目安となるため、耳5を描くことが好ましい。
分析対象者の正面写真から、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記正面写真に次のように処理を行う。
【0028】
ア 前シルエット線3を描く。前シルエット線3を描くに当たり、前シルエット線3が通過すると推定される耳5の横の位置に、耳横印bを描くと、前シルエット線3が正確に描ける。前シルエット線3は、耳の横を必ず通過するからである。顧客がカットの参考のために持ち込むモデル等の正面写真の中には、やや顔を傾けた正面写真であることがあり、前シルエット線3を正確に描くために、補助的に耳横印bを描いた方が正確に前シルエット線3を描ける。
なお、当然のことであるが、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの前シルエット線3の推定するに当たり、頭蓋骨の内側に前シルエット線3が来ることはない。頭蓋骨を基準として自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなった時の毛の厚みが加えられた位置が前シルエット線3の位置となる。
【0029】
イ 正中線1を描く。
正中線1は、顎の頂点、鼻の頂点、頭頂点aを通り後頭部に至る頭部を二分する顔の中心線である。頭頂点aは、正中線1上に存在するため、特に印をつける必要はないが、前述したように顧客がカットの参考のために持ち込む正面写真の中には、やや顔を傾けたものがある。頭頂点aに印を描いた方が、正中線1を正確に描け、分析が楽に進む。
【0030】
ウ サイドの下側アウトラインの傾きにより、(ア)または(イ)の場合に分けて、レングス補助線2を描く。サイドの下側アウトラインの傾きが正面写真から明瞭に分からない場合は、側面写真を参照して、サイドの下側アウトラインの傾きを調べてもよい。
【0031】
(ア) サイドの下側アウトラインが真っ直ぐまたは前上がりの場合は、目尻から正中線1と平行にレングス補助線2を描く。
図2に示す実施例1の分析対象者においては、サイドの下側アウトラインは、前上がりであり、レングス補助線2は、図1のようの目尻から描かれる。
【0032】
(イ) サイドの下側アウトラインが前下がりの場合、頬骨外から正中線1と平行にレングス補助線2を描く。
【0033】
エ 前記レングス補助線2と前記前シルエット線3の一番幅のある前記前シルエット線3上の位置を、前ボリューム位置Bとし、印を描く。
【0034】
オ 前記前ボリューム位置Bを超えて髪の流れが内側に入り出し方向が安定したら、その方向のまま前記レングス補助線2を交わるまで直線を引き、その交点をイヤートゥレングス点Aとして印を描く。
以上の点や線は、後述する本分析に使用される。」
[図:0001381349000001.jpg]
「【0035】
2 側面写真を用いた予備分析方法
分析対象者の側面写真から、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し、前記側面写真に次のような処理を行う。
ア 横シルエット線4を描く。
側面写真の顔が傾いており、正確な側面写真となっていないときには、補助的に頭頂点aに印をつけて、横シルエット線4を描く助けとしてもよい。
イ イヤートゥ線7を描く。
イヤートゥ線7は、上記定義でも述べたように、左右の耳5の先端と頭頂点aを通過する線をいう。耳5が毛に隠れているときは耳5を描く。また、頭頂点aを補助的に描くと、イヤートゥ線7を描くときの参考になる。
ウ 後ボリューム位置Cを描く
エ ボリュームライン9を描く。
当然のことながら、ボリュームライン9は、前ボリューム位置Bと後ボリューム位置Cを必ず通過する。ボリュームライン9の位置が分かりにくいときは、前シルエット予備分析方法で得た前ボリューム位置Bを参考にして、側面写真の相当位置に前ボリューム位置Bを付すとボリュームライン9を引きやすくなる。
なお、分析対象者のヘアスタイルによって、推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルにおけるボリューム位置(B、C)やボリュームライン9は大きく変わる。」
[図:0001381349000002.jpg]
「【0036】
3 背面写真を用いた後シルエット予備分析
分析対象者の背面写真から、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを想定し、前記背面写真に次のような処理を行う。
ア 後シルエット線8を描く。
正面写真や側面写真の予備分析方法と同様、背面写真の分析対象者が傾いて撮影されている等の場合には、頭頂点aを描くなどして、後シルエット線8を描く助けとしてもよい。
イ 後ボリューム位置Cを描く
後ろボリューム位置Cが分かりにくいときは、前記側面写真を用いた予備分析方法で得た後ボリューム位置Cを参考に描いてもよい。
ウ ボリュームライン9を描く
ボリュームライン9の位置が分かりにくいときは、前記正面写真を用いた予備分析方法で得た前ボリューム位置Bや前記側面写真を用いた予備分析方法で得た後ボリューム位置Cを参考に描いてもよい。」
[図:0001381349000003.jpg]
「【0037】
予備分析方法に使用する写真は、好ましくは分析対象者の正面写真、側面写真、背面写真のすべてがあるのが望ましいが、すべての方向の写真がない場合は、一部写真から分析を行うことも可能である。その場合、以下の本分析の一部の分析項目だけを分析する。
また、例えば正面写真しかない場合、正面写真から把握されるヘアスタイルに似合う、側面写真と背面写真に代わるイラストを描いて、以下の本分析のすべての分析項目を分析することも可能であり、これも本発明に含まれる。
さらに、写真を用いず、すべてイラストやデッサンであっても、本発明に含まれる。
写真、イラストまたはデッサンは紙媒体として存在する必要はなく、タブレット端末の
ようにディスプレイに表示された画像であってもよい。」
以上、本願明細書及び図面の記載によると、本願補正発明における「第1のステップ」は、本願明細書に記載された「予備分析」に対応し、分析者が、「分析対象者の正面の写真、画像、イラストまたはデッサン」から「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの前シルエット線」を推定し、また、「分析対象者の側面の写真、画像、イラストまたはデッサン」から「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの横シルエット線」を推定し、また、「分析対象者の背面の写真、画像、イラストまたはデッサン」から「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの後シルエット線」を推定するものであり、美容に携わる者であれば、パーマネントがかかっている写真からでも自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときのシルエット線のおおよその位置を容易に推定できるものである。
本願明細書には、各シルエット線を推定するにあたり、耳の位置、耳横印、頭頂点などを補助的に描くと、より正確に推定できることが記載されているが、必須のものではなく、美容に携わる者であれば、容易に推定できるものである。
したがって、本願補正発明の「第1のステップ」は、分析者が、「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサン」を自分の目で見て、「正面、側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」を自分の頭で推定することを特定したものであって、人間の視覚による認識及び認識結果からの推定であり、人間の精神活動そのものであるから、自然法則を利用したものではない。
審判請求人は、「ナチュラルストレートのヘアスタイル」とは、毛髪の物理的な状態をいい、「第1のステップ」における「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」とは、パーマネント、アイロン、くせ毛等によりかかった毛髪のウエーブを解き、伸ばすという物理的変換を行う操作をすることにより、「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」という毛髪の物理的な状態を再構成(推定)するから、自然法則を利用している旨主張する。
しかしながら、分析者は、「パーマネント、アイロン、くせ毛等によりかかった毛髪のウエーブを解いて伸ばして自然乾燥すると、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルが得られる」という毛髪の物理的な性質を知識として利用しているのであって、毛髪のウエーブを解いて伸ばして自然乾燥させるという物理的な操作を行うのではないから、第1のステップは、自然法則を利用したものではない。
また、審判請求人は、段落【0028】には、頭蓋骨を基準としてシルエット線の推定を行うことが記載され、段落【0029】には、頭頂点aに印をつけると、正中線を正確に描け、分析が楽にすすむことが記載され、ここで、頭頂点aは、技術常識として肌が露出しており、頭蓋骨の位置の特定ができることから、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの推定する手助けとなり、段落【0027】~【0037】の予備分析そのものは、物理的変換の結果の物理的な状態である「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」の推定手法にほかならない旨主張する。
しかしながら、頭蓋骨、頭頂点を参照しての「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」の推定は、「頭蓋骨の内側に前シルエット線がくることはなく、頭蓋骨を基準として自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなった時の厚みが加えられた位置が前シルエット線の位置となる。」、「正中線は顎の頂点、鼻の頂点、頭頂点を通り後頭部に至る頭部を二分する顔の中心線である」、「頭頂点は通常肌が露出している」という知識を利用して、「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」を推定しているにすぎず、写真、画像、イラスト又はデッサンから頭蓋骨の位置や形状の計測や、頭頂点の検出を技術的な手段により行うものではないから、第1のステップは、自然法則を利用したものではない。
(3) 第2のステップについて
第2のステップは、「分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する」というものである。
本願明細書には、「セクション」について、以下のとおりの記載がある。
【0018】
(セクション)毛髪の生えた頭部をカットするために一定の範囲に分けた領域をいう。二つのセクションに分けて切る場合はツーセクションカット、三つ以上はスリーセクションカット、さらに細かく分ける場合はマルチセクションカットなどと呼ばれる。美容用語では、各セクションには、サイドクション、トップセクション、オーバーセクションミドルセクション、アンダーセクションなどと命名がなされており、各セクションは所定のカット手法を行うための単位領域となる。
本明細書では、下記「(本分析)」の「2 分析対象を前シルエットとするカット手法分析」のように、2分割にする場合と3分割にする場合に分けて分析を行う例示もある。このように、セクションをどの程度分割するかは、推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルから適宜決めることができるものであって、以下の実施例のセクション分けは、一例を示すに過ぎない。
また、本願明細書には、第2のステップについて、以下の事項が記載されている。
「【0040】
1 分析対象をアウトラインとするカット手法分析
アウトラインの分析は、ヘアスタイルを次の(1)~(4)のセクションに分けて分析を行う。
分析対象者のヘアスタイルの複雑さにより、セクションをさらに細かく分けてもよいし、ヘアスタイルが単純であればより大雑把にセクション分けすることも可能である。」
(1) 耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクションに対するアウトライン分析(段落【0041】)、
(2) サイドのアウトラインのカット手法分析(耳上、モミアゲからコメカミにかけて)(段落【0044】)
(3) フェイスラインのカット手法分析その1(モミアゲからコメカミまでのフロントコーナーにかけて)(段落【0047】)
(4) フェイスラインのカット手法分析その2(イヤートゥ線からみつ襟にかけて)(段落【0049】)
「【0057】
2 分析対象を前シルエットとするカット手法分析
まず、(1)セクショニング分析を行い前から観た全体のシルエット線の形状から図10のように「2分割」としてパネルを取り出しカットすべきか、図9のように「3分割」としてパネルを取り出しカットすべきかを分析する。この分析項目は、本発明の「F セクションの幅または形状分析」に相当する分析項目である。
3分割としてカットすべきと分析された場合は、(2)サイドミドルセクションの分析を行い、サイドミドルセクションの幅を決定する。
その後(3)サイドアンダーセクションの分析、(4)トップセクションの分析を行う。」
「【0078】
3 分析対象を側面写真または背面写真とするカット手法分析
分析に使用する写真は側面写真または背面写真である。」
バックミドルセクションの分析(段落【0079】)
(2)バックオーバーセクションの分析(段落【0091】)
(3)バックアンダーセクションの分析(段落【0097】)
「【0105】
4 分析対象を内側シルエットとするカット手法分析
正面写真を用い、主に、バングセクションとフェイススラインを分析する。」
以上、本願明細書の記載によると、第2のステップは、分析者が、分析対象者の推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づいて、分析対象者のヘアスタイルの単純さ、複雑さ等によって、セクション分けを行い、カット手法を分析する対象となる頭部の領域を選択することであるから、分析者である人間の精神活動そのものであって、自然法則を利用したものではない。
(4) 第3のステップについて
第3のステップは、第2のステップで選択したセクションに対して、第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づいて、A~Gの分析項目のうち、選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い、分析結果を得るというものである。
本願明細書及び図面には、第3のステップについて、以下のとおりの記載がある。
「【0023】
(分析項目)本明細書でいう「分析項目」とは、分析する対象をいい、例えば、シルエット線の形状からカットラインが分析結果として得られる場合、分析項目は「シルエット形状または表情分析」となる。
A アウトラインの形状または表情分析
B カットライン分析
C ボリューム位置またはボリュームライン分析
D シルエット形状または表情分析
E パート(分け目)の位置または有無分析
F セクションの幅または形状分析
G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の7つの分析項目のいずれかである。」
ここで、第2のステップで、「耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクション」を選択した場合、当該セクションに適した分析項目は、上記の「A アウトラインの形状または表情分析」であり、当該セクションの当該分析項目の分析について、本願明細書及び図面には、以下のとおりの記載がある。
「【0041】
(1)耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクションに対するアウトライン分析
ア バックの下側アウトラインの形状、表情分析
図4(A)背面から観た下側アウトラインの形状の説明図である。
分析領域は、網掛で示した耳上以下のバックサイドおよびバックセンターであり、この領域から取り出したパネルに対してなされたカット手法を分析するものである。
分析対象は、背面写真から推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル下側アウトラインの外形である。この分析項目は、本発明の「A アウトラインの形状または表情分析」に相当する分析項目である。なお、図4(A)のシルエット線は、説明のために簡略化したものである。
図4(C)に示すように、下側アウトラインの表情を分類する。
a)下側アウトライン外形がきれいに出ている
b)下側アウトライン外形がぼやけてラフに出ている
c)下側アウトラインに重み(インレイヤー)がある
という3つに分類する。
【0042】
次いで、背面から観た下側アウトラインの形状を図4(A)の1)~4)で示したように
1)ラウンド
2)前上がり
3)真っ直ぐ
4)前下がり
の4つに分類する。」
[図:0001381349000004.jpg]
以上、本願明細書及び図面の記載によると、第3のステップは、分析者が、第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを、第2のステップで選択されたセクションについて、当該セクションに適した分析項目により、類型に分類することであり、分析者である人間の精神活動そのものであって、自然法則を利用したものではない。
審判請求人は、A~Gの分析方法は、物理的な分析に他ならないと主張するが、分析者が推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを、図4(A)、図4(C)に示されるような類型のどの類型に該当するかを、分析者が判断して分類しているのであって、類型の分類を行うにあたって何ら技術的な手段を用いるものではないから、第3のステップは、自然法則を利用したものではない。
(5) 第4のステップについて
第4のステップは、第3のステップの分析結果から、カット手法に関する情報を導出するというものである。
上記(4)の「耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクション」の分析結果に関する第4のステップについて、本願明細書には以下のとおりの記載がある。
「【0043】
この分析結果から、次のようなステムの角度に関するカット手法の情報を導出できる。
パネルを取るスライスは水平とし、
分析結果[1]:a)であって1)ラウンドまたは2)前上がりの場合、パネルを下に傾けて自然に落ちる位置でカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[2]:a)であって3)真っ直ぐまたは4)前下がりの場合、パネルを下に傾けて一面でカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[3]:b)であって3)真っ直ぐの場合、自然に落ちる位置から上にパネルを少し持ち上げてカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[4]:b)であって1)ラウンドまたは2)前上がりの場合、ステムを前に引いてカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[5]:b)であって4)前下がりの場合、ステムを後ろに引いてカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[6]:c)であって3)真っ直ぐの場合、ステムをはえ癖方向に引いてカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[7]:c)であって1)ラウンドまたは2)前上がりの場合、ステムをバックのセンターライン(図4参照)より後ろにオーバーダイレクションしてカットする手法が採用されていると分析される。
分析結果[8]:c)であって4)前下がりの場合、ステムをバックのセンターライン(図4参照)より前にオーバーダイレクションしてカットする手法が採用されていると分析される。」
また、「カット手法」について、本願明細書には、以下のとおりの記載がある。
「【0024】
(カット手法)一般的なカットは、頭皮から毛髪を特定のスライスでパネルにして取り出し、特定の角度(ステム)で引いて、特定のカットライン(レイヤー、グラデーション、コンケーブ等)でカットするという、一連の動作を含む。
また、パート(分け目)もヘアスタイルの印象に大きな影響を与え、分け目を考慮してカットが行われる。
さらに、頭を複数のセクション(トップセクション、バックアンダーセクションなどの領域)に分け、それぞれのセクションから取り出したパネルに対して異なるカット手法を採用することで、多様なヘアスタイルが生まれる。
本発明でカット手法として導き出される
(A)スライス
(B)ステム
(C)グラデーション、セイム、レイヤー、スクエア、コンケーブ等のカットライン
(D)パート(分け目)
(E)セクションの分け方と幅
は、ヘアスタイルの外形、表情に大きな影響を与える要素である。
この他にも、カット手法には毛先のカット手法(セニング、シャギーなど)などもあり、上記(A)~(E)のカット手法に加え、更なるカット手法と紐づけすることを妨げるものではない。」
以上、本願明細書の記載によると、第4のステップは、第3のステップで分類された類型の組合せに対して、カット手法が対応付けられており、第2のステップにおいて選択されたセクションについてどのようなカット手法でカットされたかを導出できるというものである。そうすると、第4のステップは、分析者が、第3のステップにおいて分類された類型にしたがって、どのようなカット手法が採用されていたのかを推定するという、分析者である人間の精神活動そのものであって、自然法則を利用したものではない。
審判請求人は、「カット手法」自体が自然法則を利用しているものであり、髪の毛をどのように切るかでヘアスタイルは決まり、再現できるものであり、例えば、レイヤーカットといえば、その切り方は理論的に説明され、パネルをどのように出し、どのように切るかという物理的な説明が可能であり、学生であっても再現でき、本願補正発明は、カット手法をリバースして解析しようとするものであり、A~Gの分析は、物理的な分析を行うものであるから、自然法則を利用している旨主張する。
しかしながら、特定の「カット手法」により実際に髪の毛をカットするのであれば、ハサミで髪の毛をカットするという自然法則を利用したものといえるが、本願補正発明は、「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサン」から、どのようなカット手法で髪の毛をカットすれば、同じようなヘアスタイルを得られるかという分析者の思考過程である人間の精神活動そのものであり、A~Gの分析においても、技術的な手段は用いられておらず、物理的な分析ではないから、本願補正発明は、自然法則を利用したものではない。
(6) 本願補正発明の発明該当性についてのまとめ
以上、(2)~(5)のとおり、第1ステップ~第4ステップの各ステップは、いずれも、人間の精神活動そのものであるから、第1ステップ~第4ステップからなる、本願補正発明の「カット手法を分析する方法」は、人間の精神活動そのものであり、自然法則を利用したものではない。
(7) 審判請求人の挙げる判決に関する主張について
ア 審判請求人は、「知財高裁平成20年8月28日判決 平成20年(行ケ)10001号」を挙げ、「発明特定事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断される場合は、その請求項に係る発明は、自然法則を利用したものとなる。」から、本願補正発明は、自然法則を利用したものである旨主張する。
上記判決は、特許法2条における「発明」の意義について、
「特許法2条1項は、発明について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定する。したがって、ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が、いかに、具体的であり有益かつ有用なものであったとしても、その課題解決に当たって、自然法則を利用した手段が何ら含まれていない場合には、そのような技術的思想の創作は、特許法2条1項所定の「発明」には該当しない。
ところで、人は、自由に行動し、自己決定することができる存在であり、通常は、人の行動に対して、反復類型性を予見したり、期待することは不可能である。したがって、人の特定の精神活動(社会活動、文化活動、仕事、余暇の利用等あらゆる活動を含む。)、意思決定、行動態様等に有益かつ有用な効果が認められる場合があったとしても、人の特定の精神活動、意思決定や行動態様等自体は、直ちには自然法則の利用とはいえないから、特許法2条1項所定の「発明」に該当しない。
他方、どのような課題解決を目的とした技術的思想の創作であっても、人の精神活動、意思決定又は行動態様と無関係ではなく、また、人の精神活動等に有益・有用であったり、これを助けたり、これに置き換える手段を提供したりすることが通例であるといえるから、人の精神活動等が含まれているからといって、そのことのみを理由として、自然法則を利用した課題解決手法ではないとして、特許法2条1項所定の「発明」でないということはできない。
以上のとおり、ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が、その構成中に、人の精神活動、意思決定又は行動態様を含んでいたり、人の精神活動等と密接な関連性があったりする場合において、そのことのみを理由として、特許法2条1項所定の「発明」であることを否定すべきではなく、特許請求の範囲の記載全体を考察し、かつ、明細書等の記載を参酌して、自然法則の利用されている技術的思想の創作が課題解決の主要な手段として示されていると解される場合には、同項所定の「発明」に該当するというべきである。」
と示し、
「出願に係る特許請求の範囲に記載された技術的思想の創作が自然法則を利用した発明であるといえるか否かを判断するに当たっては、出願に係る発明の構成ごとに個々別々に判断すべきではなく、特許請求の範囲の記載全体を考察すべきである(明細書及び図面が参酌される場合のあることはいうまでもない。)。そして、この場合、課題解決を目的とした技術的思想の創作の全体の構成中に、自然法則の利用が主要な手段として示されているか否かによって、特許法2条1項所定の「発明」に当たるかを判断すべきであって、課題解決を目的とした技術的思想の創作からなる全体の構成中に、人の精神活動、意思決定又は行動態様からなる構成が含まれていたり、人の精神活動等と密接な関連性を有する構成が含まれていたからといって、そのことのみを理由として、同項所定の「発明」であることを否定すべきではない。
・・・
本願発明においては、英語の非母語話者にとっては、母音よりも子音の方が認識しやすいという性質を前提として、これを利用していることは明らかである。そうすると、本願発明は、人間(本願発明に係る辞書の利用を想定した対象者を含む。)に自然に具えられた能力のうち、音声に対する認識能力、その中でも子音に対する識別能力が高いことに着目し、子音に対する高い識別能力という性質を利用して、正確な綴りを知らなくても英単語の意味を見いだせるという一定の効果を反復継続して実現する方法を提供するものであり、自然法則の利用されている技術的思想の創作が課題解決の主要な手段として示されており、特許法2条1項所定の「発明」に該当するものと認められる。」と判断したものである。
ここで、本願補正発明は、「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサン」を分析者が目で見て、視覚の認識結果から、推定、分析を行っているが、視覚の認識において、人間に自然に備えられた認識能力の性質を利用しているとはいえず、また、視覚による認識結果からの、自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの推定、カット手法の分析の過程においては、分析者が、知識を用いていて、分析、推定を行っているのみである。よって、本願補正発明は、人間の精神活動のみからなり、自然法則を利用した手段を何ら含まないから、上記判決においても「自然法則を利用した手段が何ら含まれていない場合には、そのような技術的思想の創作は、特許法2条1項所定の「発明」には該当しない」とされているとおり、本願補正発明は、自然法則を利用したものではない。
イ 審判請求人は、「知財高裁平成30年10月17日判決 平成29年(行ケ)10232号」を挙げ、本願発明の解決しようとする課題は段落【0009】「本発明は、分析対象者のヘアスタイルの正面写真、側面写真および背面写真を分析し、当該分析対象者に使用されているカット手法分析方法を提供することを目的とする。」の通りです。そして、効果は段落【0011】「本発明により、分析対象者の写真、イラストまたはデッサンから採用されているカット手法分析ができるようになった。また、前記カット手法分析は体系化されているため、学生や経験の浅い美容師であっても容易にカット手法を分析できるようになった。」というものであり、課題を解決するための分析工程で自然法則が利用されていることは明らかであるから、本願補正発明は、自然法則を利用したものである旨主張する。
上記判決は、「本件ステーキ提供方法は、『お客様を立食形式のテーブルに案内するステップ』、『お客様からステーキの量を伺うステップ』、『伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ』、『カットした肉を焼くステップ』及び『焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップ』を含むものである。本件明細書の記載には、これらのステップについて、・・と記載されており、人が行うことが想定されている。そして、本件明細書には、これらのステップが機械的処理によって実現されることを示唆する記載はなく、また、そのようにすることが技術常識であると認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件ステーキ提供方法は、ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでに人が実施する手順を特定したものであると認められる。よって、本件ステーキ提供方法の実施に係る構成は、『ステーキの提供システム』として実質的な技術的手段を提供するものであるということはできない。」と判断する一方で、
「本件特許発明1は、ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含むものの、これにとどまるものではなく、札、計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(装置)からなる本件計量機等に係る構成を採用し、他のお客様の肉との混同が生じることを防止することにより、本件ステーキ提供方法を実施する際に不可避的に生じる要請を満たして、「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という本件特許発明1の課題を解決するものであると理解することができる。・・本件特許発明1の技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、本件特許発明1は、札、計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機等)を、他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するための技術的手段とするものであり、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するということができる。したがって、本件特許発明1は、特許法2条1項所定の「発明」に該当するということができる。」と判断した。
ここで、本願補正発明は、「分析対象者の正面、側面および背面の写真、画像、イラストまたはデッサン」を分析者である人間が、目で見て、視覚の認識結果から、推定、分析を行うというものであり、第1ステップから第4ステップのすべてのステップが、人間の精神活動のみからなり、特定の物品又は機器を課題を解決するための技術的手段として含むものではない。よって、上記判決において、「ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでに人が実施する手順を特定したステーキ提供方法の実施に係る構成は、『ステーキの提供システム』として実質的な技術的手段を提供するものであるということはできない。」と判断されているとおり、本願補正発明は、自然法則を利用したものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法2条で定義される「発明」に該当せず、同法29条1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しないから、特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2~5について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-012930