特許拒絶査定不服審判
2020-011628
揚物の質感評価方法及び揚物の質感評価プログラム
- 審判番号
- 2020-011628
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-036493
- 請求日
- 2020年08月20日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】昭和産業株式会社
- 【請求人代理人】高橋 昌義
- 【請求人】国立大学法人千葉大学
- 【請求人代理人】高橋 昌義
- 審判長/審判官
- 審判長 五十嵐 努
- 審判官 千葉 輝久
- 審判官 川崎 優
- 分類
- P18 .121-WY (G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016- 36493「揚物の質感評価方法及び揚物の質感評価プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-151938、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月28日の出願であって、令和1年12月5日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年2月6日付けで意見書の提出とともに手続補正がされ、令和2年5月19日付けで拒絶査定がされたものである。これに対し、令和2年8月20日に本件審判の請求がされ、同時に手続補正がされた。
第2 拒絶査定の概要
令和2年5月19日付け拒絶査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1 特開2010-063420号公報
引用文献2 特開平11-101618号公報
第3 審判請求時の補正について
1.補正の内容
令和2年8月20日の審判請求時の補正前後の請求項1、2の記載は次のとおりである。
[補正前]
【請求項1】
天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行い、
前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、
前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価方法。
【請求項2】
コンピュータに、
天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行わせ、
前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、
前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価プログラム。
[補正後]
【請求項1】
座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行い、
前記座標データ及び前記輝度データに基づき前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、
前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価方法。
【請求項2】
コンピュータに、
座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行わせ、
前記座標データ及び前記輝度データに基づき空間周波数解析によりパワー値データを求め、
前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価プログラム。
2.補正の適否
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は特許請求の範囲を補正するものであって、当該補正により、補正前の請求項1、2は、それぞれ、補正後に請求項1、2に補正された。
請求項1、2に係る補正は、補正前の「天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行い、前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、」、「天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行わせ、前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、」を、それぞれ、補正後に「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行い、前記座標データ及び前記輝度データに基づき前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、」、「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行わせ、前記座標データ及び前記輝度データに基づき空間周波数解析によりパワー値データを求め、」とするものであり、これらの補正は、当初明細書の段落【0022】の記載である「また本方法における空間周波数解析は、具体的には、揚物画像データに含まれる座標データ(x座標データ、y座標データ)及びその座標データに対応した輝度データに基づき解析を行い、空間周波数値データとその空間周波数値データに対応したパワー値データを求める。」に基づいて、補正前の請求項の発明特定事項である「天ぷらの揚物画像データ」、「空間周波数解析」を限定するものである。
したがって、審判請求時の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、シフト補正をするものでもない。
そして、後述の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1、2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和2年8月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。なお、請求項1の記号(A)~(C)は、当審により付与したものである。
「【請求項1】
(A)座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行い、
(B)前記座標データ及び前記輝度データに基づき前記空間周波数解析によりパワー値データを求め、
(C)前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価方法。
【請求項2】
コンピュータに、
座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行わせ、
前記座標データ及び前記輝度データに基づき空間周波数解析によりパワー値データを求め、
前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価プログラム。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
拒絶査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【0038】
〔衣の花咲性の評価〕
各油脂組成物500gを鉄製の揚げ物用の鍋(直径15cm、高さ8cm)に入れ、180℃まで加熱した。予め調製した天ぷら用生地5gを油脂組成物中に投じ、1分後に取り出し、天ぷらの衣を揚げた。形成された衣の写真を画像解析し、その円周に対する面積比から衣の花咲性を評価した。すなわち、次式で示すように、円形状になった場合には、1に近づき、花咲が進むほど数値が大きくなる。「変形度」を次に示す式(2)のように設定し、以下の基準にて評価した。結果を表3に示す。
変形度=(円周長)2/4π×面積 (2)
5:花咲が非常に良好なもの(変形度5以上)
4:花咲が良好なもの(変形度4以上5未満)
3:花咲が良好とは言えないが、実用上問題ない程度のもの(変形度3以上4未満)
2:花咲が一部に認められるもの(変形度2以上3未満)
1:花咲がほとんど認められないもの(変形度1以上2未満)」
以上の記載事項によれば、引用文献1には、衣の花咲性を評価する方法である、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
各油脂組成物500gを鉄製の揚げ物用の鍋(直径15cm、高さ8cm)に入れ、180℃まで加熱し、予め調製した天ぷら用生地5gを油脂組成物中に投じ、1分後に取り出し、天ぷらの衣を揚げ、形成された衣の写真を画像解析し、その円周に対する面積比から衣の花咲性を評価する方法であって、円形状になった場合には、1に近づき、花咲が進むほど数値が大きくなる「変形度」を次に示す式(2)のように設定し、以下の基準にて評価する、衣の花咲性を評価する方法。
変形度=(円周長)2/4π×面積 (2)
5:花咲が非常に良好なもの(変形度5以上)
4:花咲が良好なもの(変形度4以上5未満)
3:花咲が良好とは言えないが、実用上問題ない程度のもの(変形度3以上4未満)
2:花咲が一部に認められるもの(変形度2以上3未満)
1:花咲がほとんど認められないもの(変形度1以上2未満)
2.引用文献2について
拒絶査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0026】更に説明を加えると、重心位置Gから輪郭L上に位置する点までの距離についての、前記輪郭Lに沿う方向での変化状態として、図12に示すように、前記距離rと、重心位置から輪郭を結ぶ線と基準線とのなす角度θとの関数として表すことができる。このとき、被検査物の表面が滑らかな円弧状であれば図12(イ)に示すように、前記関数も滑らかな曲線になり、そのフーリエ変換を求めると、空間周波数の低周波数成分のみとなるが、被検査物の表面が凹凸が存在していれば、図12(ロ)に示すように、前記関数が変化の激しい曲線となり、フーリエ変換は空間周波数fの高周波数成分を多く含むようになる。従って、このような高周波数成分の状態を判別することで、被検査物の外形形状の歪みを判別できるのである。」
「
[図:0001380417000001.jpg]
」
以上の記載事項によれば、引用文献2には、被検査物の外形形状の歪みを判別する方法として、次の技術事項が記載されていると認められる。
「被検査物の外形形状の歪みを判別する方法であって、
重心位置Gから輪郭L上に位置する点までの距離についての、前記輪郭Lに沿う方向での変化状態として、図12に示すように、前記距離rと、重心位置から輪郭を結ぶ線と基準線とのなす角度θとの関数として表し、
このとき、被検査物の表面が滑らかな円弧状であれば図12(イ)に示すように、前記関数も滑らかな曲線になり、そのフーリエ変換を求めると、空間周波数の低周波数成分のみとなるが、
被検査物の表面が凹凸が存在していれば、図12(ロ)に示すように、前記関数が変化の激しい曲線となり、フーリエ変換は空間周波数fの高周波数成分を多く含むようになり、
従って、このような高周波数成分の状態を判別することで、被検査物の外形形状の歪みを判別する方法。」
第6 対比
1.本願発明1について
(1)(A)について
引用発明は、「天ぷらの衣を揚げ、形成された衣の写真を画像解析」するものであり、この「天ぷらの衣を揚げ、形成された衣の写真」は、本願発明1の「天ぷらの揚物画像データ」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「(A’)天ぷらの揚物画像データに対し解析処理を行」う点では共通する。
しかしながら、上記「解析処理」が、本願発明1は、「空間周波数解析処理」であるのに対し、引用発明は、「空間周波数解析処理」ではない点で両者は相違する(相違点1)。
また、上記「天ぷらの揚物画像データ」が、本願発明1は、「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む」のに対し、引用発明は、「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む」か否か明らかではない点で両者は相違する(相違点2)。
(2)(B)について
本願発明1は、「前記座標データ及び前記輝度データに基づき前記空間周波数解析によりパワー値データを求め」るのに対し、引用発明は、そのような処理は行わない点で両者は相違する(相違点3)。
(3)(C)について
引用発明は、「天ぷらの衣を揚げ、形成された衣の写真を画像解析し、その円周に対する面積比から衣の花咲性を評価する方法」であり、ここで衣の花咲性の評価とは、「円形状になった場合には、1に近づき、花咲が進むほど数値が大きくなる「変形度」(=(円周長)2/4π×面積)」を用いて、「5:花咲が非常に良好なもの(変形度5以上)4:花咲が良好なもの(変形度4以上5未満)3:花咲が良好とは言えないが、実用上問題ない程度のもの(変形度3以上4未満)2:花咲が一部に認められるもの(変形度2以上3未満)1:花咲がほとんど認められないもの(変形度1以上2未満)」と評価するものであるから、衣の花咲という見た目の良好さを5段階の数値で評価するものである。
したがって、引用発明の衣の花咲性の評価は、本願発明1の「見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明は、「(C’)見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価方法」である点で共通する。
しかしながら、本願発明1は、「前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める」のに対し、引用発明はそうではない点で両者は相違する(相違点4)。
以上をまとめると、本願発明1と引用発明との間には次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
(A’)天ぷらの揚物画像データに対し解析処理を行い、
(C’)見た目の質感評価値データを定める天ぷらの見た目の質感評価方法。
[相違点]
相違点1
「解析処理」が、本願発明1は、「空間周波数解析処理」であるのに対し、引用発明は、「空間周波数解析処理」ではない点。
相違点2
「天ぷらの揚物画像データ」が、本願発明1は、「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む」のに対し、引用発明は、「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む」か否か明らかではない点。
相違点3
本願発明1は、「前記座標データ及び前記輝度データに基づき前記空間周波数解析によりパワー値データを求め」るのに対し、引用発明は、そのような処理は行わない点。
相違点4
本願発明1は、「前記パワー値データと、予め記録してあるパワー値データベースを参照して見た目の質感評価値データを定める」のに対し、引用発明はそうではない点。
第7 判断
1.本願発明1について
引用発明は、「形成された衣の写真を画像解析し、その円周に対する面積比から衣の花咲性を評価する方法であって、円形状になった場合には、1に近づき、花咲が進むほど数値が大きくなる「変形度」を次に示す式(2)のように設定し、以下の基準にて評価する、衣の花咲性を評価する方法。
変形度=(円周長)2/4π×面積 (2)
5:花咲が非常に良好なもの(変形度5以上)
4:花咲が良好なもの(変形度4以上5未満)
3:花咲が良好とは言えないが、実用上問題ない程度のもの(変形度3以上4未満)
2:花咲が一部に認められるもの(変形度2以上3未満)
1:花咲がほとんど認められないもの(変形度1以上2未満)」である。
この「変形度」は、「円形状になった場合には、1に近づき、花咲が進むほど数値が大きくなる」ものであるから、衣の形状の円形状からの変形度を示すものである。
一方、引用文献2には、上記した被検査物の外形形状の歪みを判別する方法が記載されており、この方法は、図12に示す角度θに対する距離rの関数をフーリエ変換した空間周波数の周波数成分が、図12(イ)に示すように、低周波数成分のみであるか、図12(ロ)に示すように、高周波数成分を多く含むかにより、被検査物の表面が滑らかな円弧状であるか、または凹凸が存在しているかを判別するものである。
以上によれば、引用発明の、衣の形状の円形状からの変形度として、引用発明の式(2)に代えて、引用文献2に記載された、被検査物の表面が滑らかな円弧状であるか、または凹凸が存在しているかを判別するためのものである、図12に示す角度θに対する距離rの関数をフーリエ変換した空間周波数の周波数成分を用いることは当業者が考え得ることかもしれない。
このようにして得られる構成は、天ぷらの衣を揚げ、形成された衣の写真を用いて、衣の重心位置Gから輪郭L上に位置する点までの距離rについての、前記輪郭Lに沿う方向での変化状態として、図12に示すように、前記距離rと、重心位置Gから輪郭Lを結ぶ線と基準線とのなす角度θとの関数として表し、そのフーリエ変換を求め、空間周波数の高周波成分の状態を判別することで、衣の形状の円形状からの変形度を設定する、というものである。
しかしながら、この構成は、天ぷらの衣の写真のフーリエ変換を求めるものではない。天ぷらの衣の写真を用いて、図12に示す角度θに対する距離rの関数を表し、この関数のフーリエ変換を行うものである。この関数は、天ぷらの衣の写真とは異なる空間周波数特性を持つものであるから、この関数のフーリエ変換は、天ぷらの衣の写真(本願発明1でいう「天ぷらの揚物画像データ」)のフーリエ変換(本願発明1でいう「空間周波数解析処理」)とは異なるものである。
したがって、上記構成は、本願発明1の「(A)座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行」うことに相当するものではない。
よって、引用発明に引用文献2記載の技術を適用したとしても、相違点1、2に係る本願発明1の(A)の発明特定事項は得られない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1と同様の「座標データ及び当該座標データに対応した輝度データを含む天ぷらの揚物画像データに対し空間周波数解析処理を行わせ、」との発明特定事項を備えるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、拒絶査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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