2020-007848
研磨パッド及びその製造方法、並びに、研磨加工品の製造方法
- 審判番号
- 2020-007848
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-011859外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月08日
- 審決日
- 2022年11月24日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】富士紡ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-WY (B24B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 21項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年1月25日に出願された特願2016-11859であり、その手続の概略は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献A-Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開昭57-132967号公報
B.特開2006-75914号公報
C.特開2004-42189号公報
D.特開2011-67946号公報
E.特開2011-104749号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2000-61817号公報
2.特開平11-170156号公報
3.特開2004-42189号公報
4.特開2007-245291号公報
5.特開2011-67946号公報
第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、本件補正により補正をした特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1、及び本願発明6は以下のとおりの発明である。
1 本願発明1
「基材と、該基材上に別体として配された凸部となる樹脂部(但し、繊維状物質と接着剤からなる構造物を含むものを除く)と、を備え、前記凸部の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面を有し、前記凸部は、前記表面の単位面積(1cm2)当たり、5~80個であり、前記研磨面における研磨有効面積が、前記表面の単位面積(1cm2)当たり、0.15~0.70cm2であり、前記研磨面が、固定砥粒を実質的に含まないものであり、前記樹脂部のショアD硬度が、60~95であり、前記基材が、ポリエステル系フィルムを含み、ドレスをして用いる研磨パッド。」
2 本願発明6
「基材の上に硬化性組成物(但し、繊維状物質と接着剤とを含むものを除く)を付着させる付着工程と、付着した前記硬化性組成物を硬化させて硬化層を得る硬化工程と、を有し、前記硬化層は、単独で又は前記基材と共に凹凸パターンを構成し、前記凹凸パターンの表面は、被研磨物を研磨するための研磨面を有し、前記研磨面における研磨有効面積が、前記表面の単位面積(1cm2)当たり、0.15~0.70cm2であり、前記研磨面が、固定砥粒を実質的に含まないものであり、前記硬化層により構成される樹脂部のショアD硬度が、60~95である、研磨パッドの製造方法。」
第5 当審拒絶理由の引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
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当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、例えばULSI等の半導体デバイスを製造するプロセスにおいて実施される半導体基板の平坦化研磨に用いるのに好適なCMP用研磨パッド及びその作製法に関するものである。・・・【0004】このようなデバイス表面を平坦化する方法としては、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing 又はChemical Mechanical Planarization 、これよりCMPと呼ぶ)技術が有望な方法と考えられている。CMPはシリコンウェハの鏡面研磨法を基に発展しており、図5に示すような装置を用いて行われている。図5(a)はCMP装置を横から見た図であり、(b)は上から見た図である。101は研磨パッド、100は研磨パッド101を保持するプラテン、102は被研摩部材(ウェハ)、103は被研摩部材102を保持する研磨ヘッド、104は研磨剤(スラリー)供給部、105は研磨剤(スラリー)である。研磨パッド101は、プラテン(定盤)100の上に研磨布を貼り付けたものである。研磨布即ち研磨パッド101としては、発泡ポリウレタンよりなるシート状のものが多く用いられている。続きを表示(全14行)【0005】被研摩部材であるウェハ102を研磨ヘッド103により保持し、研磨ヘッド103を回転させながら揺動して、研磨パッド101に所定の圧力Pで押し付ける。研磨パッド101も回転させ、ウェハ102との間で相対運動を行わせる。この状態で、研磨剤105を研磨剤供給部104から研磨パッド101上に供給する、研磨剤105は研磨パッド101上で拡散し、研磨パッド101と被研摩部材102との相対運動に伴って研磨パッド101と被研摩部材102との間に入り込み、被研摩部材102の表面を研磨する。即ち、研磨パッド101と被研摩部材102の相対運動による機械的研磨と、研磨剤105の化学的作用が相乗的に作用して良好な研磨が行われる。・・・【0010】本発明の目的は、以上のような問題を解決し、微細な凹凸構造でも容易に形成することが可能で、製造コストが低く、且つ製造期間が短い、高品質な無発泡タイプの研磨パッドを提供することである。・・・【0015】【発明の実施の形態】[第1の実施形態]図1に示すように研摩パッド20を多層構造とした。基材3の上に印刷法により所望の凹凸構造をその表面に有するインク層2を転写して形成し、仮硬化させた後本硬化させることによりパッド層22を形成し、研摩パッドを作製する。[第2の実施形態]図2に示すように研摩パッド20を多層構造とした。基材3の上に印刷法またはモールド法によりインク層2を転写して形成し、仮硬化させた後、所望の凹凸構造のネガとなる凹凸構造を有する金型で所望の凹凸構造をインク層2の表面に転写し、本硬化することによりシート状のパッド層22を形成し、研摩パッド20を作製する。【0016】第1、及び第2の実施形態に於いて、印刷法として、スクリーン印刷法、凹版(グラビヤ)印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法から選ばれた一つの方法が好ましく使用され、スクリーン印刷法が特に好ましく使用される。パッド層の材料として熱硬化性樹脂が好ましく使用され、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂から選ばれた何れか一つの材料がより好ましく使用される。【0017】凹凸構造としては図3(a)に示すような同心円状パターン、図3(b)に示すような格子状パターン、図3(c)に示すような同心円状と格子状を組み合わせたパターン、図3(d)に示すようなピラミッド構造のパターン、また図示しないが、螺旋状のパターンが好ましく形成されるが、これらの例に限定されるものでない。【0018】更に凹凸構造を形成するために、一定の間隔を置いて配置された線状または点状パターンのパッドを基材上に転写し、基材表面とこれらの線状または点状パッドとにより凹凸構造を形成しても良い。このタイプの研摩パッドの例を図7に断面図で示す。基材材料としては、耐溶剤性、耐熱性、等の耐久性を満足し、好ましい機械的性質を有するものならば特に限定されないが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリイミドフィルム、等の高分子材料群、または金属シートから選ばれた一つ以上の材料が好ましく使用される。基材は単層であっても多層であっても良い。【0019】さらに細かい凹凸構造を研摩パッド表面に形成するために、研磨パッドの表面が、更に固定または遊離の研磨砥粒で擦られる。こうすることにより研磨剤の流動性と保持性を更に高めることができ、研摩性能を更に高めることが出来る。」
イ 図面
「【図5】[図:0001391214000001.jpg]」
「【図7】[図:0001391214000002.jpg]」
(2)引用文献1の記載事項の整理
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上記(1)の引用文献1の記載事項(特に、段落【0005】、【0015】、【0018】、及び図5、7を参照。)からみて、上記引用文献1には次の研磨パッドの発明(以下、「引用発明1A」という。)、及び研磨パッドの製造方法の発明(「以下、「引用発明1B」という)が記載されていると認められる。
ア 引用発明1A
「基材3と、該基材3上に印刷法により転写した点状パターンのパッド層22となる熱硬化性樹脂部、を備え、前記点状パターンのパッド層22の表面は、被研磨部材であるウェハ102を研磨し、研磨剤105は研磨剤供給部104から研磨パッド101上に供給するものであり、前記基材3が、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを含む、研磨パッド。」
イ 引用発明1B
「基材3の上に熱硬化性樹脂を印刷法により転写し、転写した前記熱硬化性樹脂を硬化させてパッド層22を形成し、前記パッド層22は基材3の表面に凹凸構造を形成し、前記凹凸構造の表面は、被研磨部材であるウェハ102を研磨し、研磨剤105は研磨剤供給部104から研磨パッド101上に供給するものである、研磨パッドの製造方法。」
2 引用文献2-5について
(1)引用文献2
当審拒絶理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置の製造プロセスにおいて半導体基板の表面に形成された被研磨膜を研磨して平坦化する化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)に使用される半導体基板用の研磨パッド、及び該研磨パッドを用いて行なう半導体基板の研磨方法に関する。・・・【0018】前記に鑑み、本発明は、研磨パッドに対して活性化のためのドレッシングを行なわなくても、良好な平坦化性能及び研磨速度を有する化学的機械研磨を長時間に亘って行なえるようにすることを目的とする。続きを表示(全13行)【0019】【課題を解決するための手段】本発明に係る第1の半導体基板用の研磨パッドは、半導体基板の被研磨膜を研磨するための樹脂からなる半導体基板用の研磨パッドを対象とし、研磨パッド本体の表面に設けられ、平坦な頂面を有する多数の島状の凸状部を備えており、凸状部の頂面の辺又は径の長さの平均値L、凸状部の高さの平均値H及び凸状部同士の間隔の平均値Sは、0.1mm≦L≦5.0mm、0.1mm≦H≦0.5mm及びH≦L≦2Sを満たしている。【0020】第1の半導体基板用の研磨パッドによると、研磨パッド本体の表面に設けられ平坦な頂面を有する多数の島状の凸状部が半導体基板の被研磨膜と接触することにより研磨が行なわれるため、研磨パッドに対してドレッシングを行なう必要がない。【0021】凸状部の頂面の辺又は径の長さの平均値Lが、0.1mm≦L≦5.0mmを満たしているため、つまり、0.1mm≦Lであるため、研磨パッドの凸状部が半導体基板の凹部に入り込まないので、半導体基板に対する平坦化性能が向上し、L≦5.0mmであるため、半導体基板を研磨パッドに押し付けたときに、凸状部の頂面と半導体基板との間に存在する研磨液のうちの余分な研磨液が凸状部の頂面から凸状部同士の間の凹部に速やかに移動し、凸状部の頂面と半導体基板との間に適量の研磨液が介在するので、研磨液に含まれる研磨砥粒が半導体基板と接触するので、研磨レートが向上する。【0022】凸状部の高さの平均値Hが、0.1mm≦H≦0.5mmを満たしているため、つまり、0.1mm≦Hであるため、凸状部の頂面と半導体基板との間に存在する研磨液のうちの余分な研磨液は凹部に確実に収容されるので、半導体基板の研磨レートが向上し、また、H≦0.5mmであるため、凸状部同士の間の凹部に収容された研磨液が凸状部の頂面と半導体基板との間の研磨領域に引き込まれ易くなるので、研磨領域には常に新しい研磨液が供給されて、研磨レートが向上する。【0023】凸状部の頂面の辺又は径の長さの平均値L、凸状部の高さの平均値H及び凸状部同士の間隔の平均値Sの間に、H≦L≦2Sの関係が成り立っているため、つまり、H≦Lであるため、研磨パッドと半導体基板との間に相対速度が生じても、凸状部が変形し難く、凸状部の頂面が半導体基板と良好に接触するので、研磨レートが向上し、また、L≦2Sであるため、凸状部の頂面と半導体基板との間に存在する研磨液のうちの余分な研磨液は凸状部同士の間の凹部に確実に収容されるので、研磨レートが向上する。【0024】第1の半導体基板用の研磨パッドにおいて、凸状部の頂面の合計面積は、研磨パッド本体の表面の面積の2分の1以下であることが好ましい。・・・【0044】第1の実施形態に係る研磨パッド10は、非発泡性の樹脂、例えばポリウレタン樹脂又はアクリル樹脂等からなる研磨パッド本体11と、該研磨パッド本体11の表面に設けられており、平坦な頂面を有する多数の島状の凸状部12と、研磨パッド本体11の表面における凸状部12同士の間に存在する凹部13とを備えている。・・・」
イ 図面
「【図1】[図:0001391214000003.jpg]」
ウ 引用文献2記載の技術的事項
上記ア、イより、引用文献2には、その第1の実施形態において、非発泡性のポリウレタン樹脂等からなる研磨パッドの凸状部の頂面の辺又は径の長さの平均値Lに関して、0.1mm≦L≦5mm、L≦2Sであり、L,Sをこれらの式に従い、L=S=2.0mmとした場合、「非発泡性のポリウレタン樹脂等からなる研磨パッドの単位面積(1cm2)辺りの凸状部12の個数は6.25個であり、単位面積(1cm2)辺りの凸状部の面積は、0.25cm2であり、凸状部12の頂面の合計面積は研磨パッド本体11の表面の面積の2分の1以下であること」(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が、記載されている。
(2)引用文献3
当審拒絶理由で引用した引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明
「【0019】前記研磨用パッド10をなすポリウレタン系発泡体12の材料硬度は、研磨性能、殊に段差緩和性についての重要な指標の1つであり、また他の面内均一性とにも大きく影響を及ぼす。本発明においては、前記材料硬度として、ショアーD硬度が使用され、該ショアーD硬度が40~80、好ましくは55~75の範囲に設定される。前記ショアーD硬度が40未満の場合、柔らか過ぎてウェハ等の被研磨物の凸凹表面に馴染んで凸部からの積極的な研磨がなされず、例えば1μm以下といった所定のマージン内で前記段差緩和性が満足されない。【0020】一方、ショアーD硬度が80を越える場合、相対的に前記研磨用パッド10の粘りが低下して脆くなる。このため、前記研磨用パッド10自体が研磨時に削れて、削れたくずが前記セル18の目詰まりを引き起こす。その結果、前記セル18へのスラリーの保持力が低下し、被研磨物の研磨のスピードを表す研磨レートが不安定となり、また被研磨面のスクラッチも発生し易くなる。従って、前述のスクラッチを発生させず、かつ段差緩和性に優れる研磨用パッドのショアーD硬度としては、55~75が好適である。」
イ 引用文献3記載の技術的事項
上記アより、引用文献3には、「ポリウレタン系発泡体を材料の選択肢として含む研磨パッドの研磨面のショアD硬度が、40~80、好ましくは55~75の範囲に設定されること」(以下、「引用文献3記載の技術的事項」という。)という技術的事項が記載されている。
(3)引用文献4
当審拒絶理由で引用した引用文献4には、以下の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明
「【0038】一方、後者の非水溶性部分および該非水溶性部分に分散した空孔を含有する素材を備える化学機械研磨パッドを構成する非水溶性部材としては、例えば、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリビニルアセテート等を挙げることができる。このような非水溶性部分中に分散する空孔の大きさは、平均値で、好ましくは0.1~500μm、より好ましくは0.5~100μmである。【0039】本発明の化学機械研磨パッドは、上記した材料の他、砥粒、酸化剤、アルカリ金属の水酸化物、酸、pH調節剤、界面活性剤等を任意的に含有することができる。ただし、これらのうち、砥粒及び酸化剤は含有しない方が好ましい。本発明の化学機械研磨パッドのショアD硬度は、好ましくは35以上であり、より好ましくは35~100であり、さらに好ましくは50~90であり、特に好ましくは50~75である。このようなショアD硬度とすることにより、被研磨体に負荷できる圧力を大きくでき、これに伴い研磨速度を向上させることができる。さらに加えて、高い研磨平坦性が得られることとなる。」
イ 引用文献4記載の技術的事項
上記アより、引用文献4には、「ポリウレタンを素材の選択肢として含む研磨パッドの研磨面のショアD硬度が、好ましくは35以上であり、より好ましくは35~100であり、さらに好ましくは50~90であり、特に好ましくは50~75であること」(以下、「引用文献4記載の技術的事項」という。)が記載されている。
(4)引用文献5
当審拒絶理由で引用した引用文献5には、段落【0210】の記載からみて、「研磨パッドにおいて研磨層をポリウレタンアクリレートにより形成すること」(以下、「引用文献5記載の技術的事項」という。)が記載されている。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1Aとを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1Aの「基材3」は本願発明1の「基材」に、同様に「点状パターンのパッド層22」は「凸部」にそれぞれ相当し、引用発明1Aの点状パターンのパッド層22が基材3上に「印刷法により転写した」ものである点は、本願発明1における「凸部」が基材上に「別体として配された」に相当する。
また、引用発明1Aの「熱硬化性樹脂部」は印刷法により転写したものであり、繊維状物質と接着剤からなる構造物には該当しないから、本願発明1の「樹脂部(但し、繊維状物質と接着剤からなる構造物を含むものを除く)」に相当する。
イ 引用発明1Aの「被研磨部材であるウェハ102」は本願発明1の「被研磨物」に相当し、引用発明1Aの点状パターンのパッド層22の表面が、「被研磨部材であるウェハ102を研磨」することは、本願発明1の凸部の表面が、「被研磨物を研磨するための研磨面を有」することに相当する。
ウ 引用発明1Aが「研磨剤105は研磨剤供給部104から研磨パッド101上に供給するもの」であることは、研磨材105が研磨パッド101に含まれていないことを意味するから、本願発明1の「研磨面が、固定砥粒を実質的に含まないもの」であることに相当する。
エ 引用発明1Aの「PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム」は本願発明1の「ポリエステル系フィルム」に相当する。
オ したがって、本願発明1と引用発明1Aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(2)一致点
「基材と、該基材上に別体として配された凸部となる樹脂部(但し、繊維状物質と接着剤からなる構造物を含むものを除く)と、を備え、前記凸部の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面を有し、前記研磨面が、固定砥粒を実質的に含まないものであり、前記基材が、ポリエステル系フィルムを含む、研磨パッド。」
(3)相違点
ア 相違点1A
本願発明1は、(a)表面の単位面積(1cm2)当たり、5~80個の凸部を有し、(b)研磨面における研磨有効面積が、表面の単位面積(1cm2)当たり、0.15~0.70cm2であり、(c)樹脂部のショアD硬度が60~95であるのに対して、引用発明1Aにおいては、表面の単位面積(1cm2)当たりにおける、凸部の個数の特定がなく、研磨面における研磨有効面積について、表面の単位面積(1cm2)当たりの数値の特定がなく、樹脂部の硬度の数値の特定がない点。
イ 相違点2
本願発明1の研磨パッドは、ドレスをして用いるのに対して、引用発明1Aの研磨パッドは、ドレスをして用いることは条件ではない点。
(4)判断
ア 相違点1Aについて
(ア)相違点1Aの(c)について
上記相違点1Aの(c)樹脂部のショアD硬度が60~95であることに関し、引用発明1Aの凸部を形成する樹脂としては、引用文献1の段落【0016】にウレタン樹脂が例示され、本願明細書において研磨レートがより向上する傾向にある樹脂として段落【0028】に例示されているポリウレタン樹脂と共通するが、このような樹脂はショアD硬度が一定ではないことが技術常識であるところ、ショアD硬度の具体的な数値については引用文献1に記載されていない。また、やはりポリウレタン樹脂を用いる引用文献2にも、樹脂のショアD硬度の数値についての開示はされていない。
その一方で、本願明細書の段落【0029】には、「ショアD硬度が60以上であることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。また、ショアD硬度が95以下であることにより、被研磨物との密着性がより向上する傾向にある。」と記載され、本願発明1のショアD硬度は、研磨レートの向上と被研磨物との密着性の観点から選択されているものであることが認められる(以下「相違点1A(c)の技術的意義」という。)。
これに対して、研磨面に固定砥粒を含まず凹凸構造を有する引用発明1Aとも共通するポリウレタン樹脂からなる研磨パッドの研磨面のショアD硬度について、引用文献3には、40~80、好ましくは55~75の範囲に設定されること(上記第5の2(2)イの引用文献3記載の技術的事項)が、あるいは引用文献4には、好ましくは35以上であり、より好ましくは35~100であり、さらに好ましくは50~90であり、特に好ましくは50~75であること(上記第5の2(3)イの引用文献4記載の技術的事項)が記載され、本願発明1のショアD硬度の60~95と一部において重複するものの、上記相違点1A(c)の技術的意義の観点から、相違点1A(c)の60~95の範囲を選択することについて記載も示唆もされていない。
さらに、引用文献5(上記第5の2(4)の引用文献5記載の技術的事項)には、研磨パッドにおいて研磨層をポリウレタンアクリレートにより形成することが記載されているが、その硬度については開示がなく、よって、引用文献1-5には、いずれも、上記相違点1A(c)の技術的意義の観点から相違点1Aの(c)のショアD硬度が60~95の範囲を選択することについては記載されていない。
(イ)相違点1Aの(a)~(c)の関連性について
加えて、相違点1Aの(a)の凸部の密度に関する特定事項、(b)の研磨有効面積の特定事項は、本願明細書の段落【0021】及び【0023】の記載から研磨レートを向上させるものであることが認められるところ、相違点1A(c)の技術的意義とも関連するものであるから、相違点1Aの(a)~(c)は、その全てを備えることによって、研磨レートの向上を図っているものと認められる。一方、引用発明1Aについてみても、研磨パッドの研磨面に微細な凹凸構造を容易に形成することを目的とするものであって、引用文献1には、(a)~(c)の構成ついては開示がない。そして、引用文献2記載の技術的事項(上記第5の2(1))は、相違点1Aの(a)表面の単位面積(1cm2)当たり、5~80個の凸部を有すること、及び(b)研磨面における研磨有効面積が、表面の単位面積(1cm2)当たり、0.15~0.70cm2の範囲内であることに該当し、また、段落【0021】及び【0023】の記載から研磨レートを向上させるものであることが認められるものの、上記相違点1A(c)の技術的意義については開示も示唆もない。
(ウ)相違点1Aの容易想到性
上記(ア)、(イ)のとおり、研磨レートを向上させるために、相違点1Aの(a)~(c)を備えることを開示する証拠がないところ、引用発明1Aを基に、相違点1Aに係る構成を採用することが容易に想到し得た程度のことということはできない。
特に、引用発明1Aに引用文献2記載の技術的事項を適用して、相違点1Aの(a)及び(b)の事項を備えたものと比較しても、本願発明1は、当該(a)及び(b)に加え、さらに研磨レートの向上という観点から選択された上記(c)を具備することにより、研磨レートについて相乗的な効果を奏するものである。
イ 相違点2について
本願発明1の研磨パッドは、相違点2によりドレスをして用いることが前提となっていることが認められる。
その一方で、引用発明1Aの研磨パッドは、引用文献1の段落【0020】-【0026】の実施例において、実施例1及び実施例2はドレスを行わないもの、実施例3及び実施例4がドレスを行うものであることからみて、引用発明1Aはドレスをして用いることは前提となっておらず、また、引用文献2記載の技術的事項は、むしろ、研磨パッドに対してドレスをする必要ないことを前提とするものである(段落【0018】、【0020】を参照。)。
そうすると、引用発明1Aの研磨パッドがドレスを行わないものである場合には、引用文献2記載の技術的事項を適用しても、ドレスをして用いることを前提とする本願発明1には至らないし、引用発明1Aの研磨パッドがドレスを行うものの場合には、ドレスを行う必要がない引用文献2記載の技術的事項を適用する阻害要因があるから、やはり本願発明1には至らない。また、引用文献2記載の技術的事項の数値が、上記相違点1Aの(a)及び(b)の事項の範囲内に該当するとしても、当該数値は研磨パッドに対してドレスをする必要がないことを前提とするものであり、引用発明1Aに適用して、ドレスをして用いる本願発明1に想到することが容易であるとはいえない。
(5)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1A、引用文献2-5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2-5、7について
本願発明2-5、7(本願発明7は請求項1-5を引用する部分。)も、本願発明1の上記相違点1A、及び相違点2と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1A、及び引用文献2-5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 請求項6について
(1)対比
本願発明6と引用発明1Bとを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1Bの「基材3」は本願発明6の「基材」に、同様に「熱硬化性樹脂」は「硬化性組成物」にそれぞれ相当し、引用発明1Bの熱硬化性樹脂が基材3上に「印刷法により転写した」ものである点は、本願発明6における「硬化性組成物」が基材の上に「付着させる付着工程」に相当する。
また、引用発明1Bの「熱硬化性樹脂」は印刷法により転写したものであり、繊維状物質と接着剤からなる構造物には該当しないから、本願発明6の「硬化性組成物(但し、繊維状物質と接着剤からなる構造物を含むものを除く)」に相当する。
イ 引用発明1Bの「パッド層22」は本願発明6の「硬化層」に相当し、引用発明1Bのパッド層22を「形成」することは本願発明6の硬化層を「得る硬化工程」を有することに相当する。
ウ 引用発明1Bの「凹凸構造」は本願発明6の「凹凸パターン」に相当し、引用発明1Bのパッド層22が、「基材3の表面に凹凸構造を形成」することは、本願発明6の硬化層が「単独で又は前記基材と共に凹凸パターンを構成」することに相当する。
エ 引用発明1Bの「被研磨部材であるウェハ102」は本願発明6の「被研磨物」に相当し、引用発明1Bの凹凸構造の表面が、「被研磨部材であるウェハ102を研磨」することは、本願発明6の凹凸パターンの表面が、「被研磨物を研磨するための研磨面を有する」ことに相当する。
オ 引用発明1Bが「研磨剤105は研磨剤供給部104から研磨パッド101上に供給するもの」であることは、研磨材105が研磨パッド101に含まれていないことを意味するから、本願発明6の「研磨面が、固定砥粒を実質的に含まないもの」であることに相当する。
カ したがって、本願発明6と引用発明1Bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(2)一致点
「基材の上に硬化性組成物(但し、繊維状物質と接着剤とを含むものを除く)を付着させる付着工程と、付着した前記硬化性組成物を硬化させて硬化層を得る硬化工程と、を有し、前記硬化層は、単独で又は前記基材と共に凹凸パターンを構成し、前記凹凸パターンの表面は、被研磨物を研磨するための研磨面を有し、前記研磨面が、固定砥粒を実質的に含まないものであり、研磨パッドの製造方法。」
(3)相違点
ア 相違点1B
本願発明6は、(b)研磨面における研磨有効面積が、表面の単位面積(1cm2)当たり、0.15~0.70cm2であり、(c)樹脂部のショアD硬度が60~95であるのに対して、引用発明1Bにおいては、表研磨面における研磨有効面積について、表面の単位面積(1cm2)当たりの数値の特定がなく、樹脂部の硬度の数値の特定がない点。
(4)判断
相違点1Bは、上記1(3)アの相違点1Aの(a)-(c)のうち、(a)を省いたものに相当するが、相違点1Bの(c)についての判断は、上記1(4)ア(ア)で検討した相違点1Aの(c)に対しての判断と同様であり、また、相違点1Bの(b)により研磨レートの向上に相乗的な効果があることも上記1(4)ア(イ)と同様であるから、相違点1Bに対する判断は相違点1Aと同様である。
(5)小括
したがって、本願発明6は、当業者であっても引用発明1B、引用文献2-5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本願発明7について
本願発明7(請求項6を引用する部分。)も、本願発明6の上記相違点1Bと同一の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1B、及び引用文献2-5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
本件補正により補正された補正後の請求項1-5、7は、上記相違点1Aに係る本願発明1の構成を有し、当該相違点1Aは、原査定における引用文献A-Eには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-5、7は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本件補正により補正された補正後の請求項6-7は、上記相違点1Bに係る本願発明6の構成を有し、当該相違点1Bは、原査定における引用文献A-Eには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明6-7は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおり、当審拒絶理由、及び原査定の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-007848