特許拒絶査定不服審判
2020-007626
姿勢安定性評価のための方法およびシステム
- 審判番号
- 2020-007626
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-041674
- 請求日
- 2020年06月03日
- 審決日
- 2021年02月03日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】タタ・コンサルタンシー・サーヴィシズ・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 森 竜介
- 分類
- P18 .121-WY (A61B) / P18 .537-WY (A61B) / P18 .57 -WY (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018- 41674「姿勢安定性評価のための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月31日出願公開、特開2019- 13730、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月8日(パリ条約による優先権主張2017年7月7日 インド)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年5月7日 :手続補正書の提出
平成31年4月18日付け:拒絶理由通知書
令和元年8月7日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年1月27日付け :拒絶査定(原査定)
令和2年6月3日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和2年11月4日付け :令和2年6月3日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶理由通知書
令和2年12月8日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、令和2年12月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
ユーザの姿勢安定性評価のためのプロセッサ実装方法であって、
姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する入力を収集するステップと、
前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定するステップと、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザについて姿勢安定性インデックススコアを生成するステップと、
前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップと
を含み、
前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域が前記それぞれのカテゴリに該当すると決定する前記ステップが、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、リアルタイムに収集された前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の値を、対応するメンバーシップ関数の範囲と比較するステップを含み、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域に対応するメンバーシップ関数の前記範囲が、前記ユーザについて動的に決定され、
メンバーシップ関数の前記範囲を動的に決定する前記ステップが、
前記ユーザに関する入力を収集するステップであって、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含む、ステップと、
と、
前記入力を学習モデルと比較するステップと、
前記収集した入力に合致する前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を決定するステップと
を含む方法。」
なお、本願発明2及び3の概要は以下のとおりである。
本願発明2及び3は、それぞれ、本願発明1に対応するシステム及び記録媒体の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるKingshuk Chakravarty et al,“Quantification of balance in single limb stance using kinect”,2016 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing,IEEE,2016年5月19日,p.854-858(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。引用文献の記載において以下同様。)。なお、表記上の制約から、数式の表記を変形した箇所がある。
(引1ア)第854頁タイトル
「QUANTIFICATION OF BALANCE IN SINGLE LIMB STANCE USING KINECT」
(和訳:Kinectを使用した単肢スタンスのバランスの定量化)
(引1イ)第854頁左欄1~13行
「ABSTRACT
This paper presents a novel single limb body balance analysis system which will aid medical practitioners to analyze crucial factor for fall risk minimization, injury prevention, fitness and rehabilitation programs. We use skeleton data obtained from Microsoft Kinect which captures full human body as well as ensures user's privacy. A new eigen vector based curvature analysis algorithm is developed to compute single limb stance (SLS) duration on the skeleton data. Two parameters vibration-jitter and force per unit mass (FPUM) are derived for each body part to assess postural stability during SLS. Experimental results show the efficacy of our system to apply it in medical domain.」
(和訳:概要
この論文は、新しい単肢の身体バランス分析システムを提示し、それは、医療従事者が転倒リスクの最小化、傷害予防、フィットネス及びリハビリテーションプログラムのための重要な要因を分析するのを支援します。Microsoft Kinectから取得した骨格データを使用します。これは、人体全体をキャプチャし、ユーザーのプライバシーを確保します。新しい固有ベクトルベースの曲率分析アルゴリズムが、骨格データに基づく単肢スタンス(SLS)持続時間を計算するために開発されました。SLS中の姿勢の安定性を評価するために、振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)の2つのパラメーターが各身体部位に対して導出されます。実験結果は、我々のシステムを医療分野に適用するための有効性を示しています。)
(引1ウ)第854頁右欄18行~下から5行
「Under this circumstance, in this work we have proposed an automatic unobtrusive system to measure SLS duration and body balance. For this purpose, vibration-jitter analysis is performed which gives a clear view of relative variation of frequency of different joints over time.The whole processing is done on the skeleton data obtained from Kinect. Skeleton data is used instead of video which ensures user privacy concerns. The key contribution in this work are as follows:
1. An eigen vector based curvature point detection method is proposed to calculate SLS duration from noisy skeleton data obtained from Kinect and it is found to be better than standard curvature detection technique [12].
2. The vibration for different body joints are measured in terms of frequency variation i.e. vibration-jitter and force per unit mass (FPUM).
The paper is organized as, in Section 2, SLS balance analysis is presented which includes dataset creation, noise removal, SLS duration measurement and vibration analysis. Section 3 contains the results and discussion followed by concluding remarks in Section 4.」
(和訳:このような状況のもと、本研究では、SLSの持続時間と身体バランスを測定するための自動で目立たないシステムを提案しました。この目的のために、振動ジッタ解析が実行され、さまざまな関節の周波数の相対的な変動が時間とともに明確に表示されます。処理全体は、Kinectから取得した骨格データに対して実行されます。ビデオの代わりに骨格データが使用され、ユーザーのプライバシーの問題が保証されます。この研究における主要な貢献は次のとおりです。
1.Kinectから得られたノイズの多い骨格データからSLS持続時間を計算するために、固有ベクトルベースの曲率点検出方法が提案され、標準の曲率検出技術[12]よりも優れていることがわかりました。
2.さまざまな身体の関節の振動が、周波数変動、つまり振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)に関して測定されます。
この報告は次のように構成されています。セクション2で、SLSバランス分析が示され、データセットの作成、ノイズの除去、SLS持続時間の測定、及び、振動解析が含まれています。セクション3には結果と議論が含まれ、続いてセクション4で結論が述べられています。)
(引1エ)第854頁右欄下から4行~第855頁左欄3行
「2. METHODOLOGY TO ANALYZE BALANCE IN SINGLE-LIMB-STANCE
Here static single-limb balance assessment[6] is taken into consideration using skeleton data obtained from Kinect. SLS exercise is opted for analyzing static balance of different healthy subjects. The flow diagram of our proposed method is shown in Figure 1.」
(和訳:2.単肢スタンスのバランスを分析する方法
ここでは、Kinectから取得した骨格データを使用して、静的な単肢バランスの評価[6]が考慮されます。SLS運動は、さまざまな健康な被験者の静的バランスを分析するために選択されます。提案した方法のフロー図を図1に示します。)
(引1オ)第855頁左欄上部のFig. 1
「
Fig. 1: Block diagram of proposed methodology 」
(和訳:
図1:提案した方法のブロック図 )
(引1カ)第855頁左欄4行~下から6行
「2.1. Dataset Creation
As no standard public dataset exists for static single limb balance estimation using skeleton data, we create our own dataset using Kinect [13] [14]. Our experimental setup is shown in Figure 2. Participants perform the tests with bare feet, eyes open, arms on the hips looking straight ahead and standing at 7-8 feet distance away from Kinect. The3-D spatio-temporal information about 20 joints are obtained from Kinect. For ground truth, time synchronized data capture is carried out using Kinect and Force plate based setup [8]. Subject's video is also recorded to validate our experimental finding manually.
Thirty eight healthy volunteer (age: 21-65 years, weight: 45kg-120 kg & height: 4ft6inch-6ft5inch) with no pre-existing symptom of neurological diseases, major orthopedic lesions, vestibular are examined for single limb balance analysis. Three of them did not perform the experiment seriously, so we have discarded their data. Our study is mainly based on the rest 35 subjects. Intentionally we have included few sportsmen (like Subject A & B in Table 1) into our experiment to investigate the effect of physical fitness on single limb balance.」
(和訳:2.1.データセット作成
骨格データを使用した静的な単肢バランス推定のための標準的なパブリックデータセットは存在しないため、Kinect [13] [14]を使用して独自のデータセットを作成します。実験のセットアップを図2に示します。参加者は、素足で目を開き、両腕を腰に当て、正面を見て、Kinectから7~8フィートの距離に立ってテストを実行します。20の関節に関する3次元空間の時間情報が、Kinectから取得されます。グラウンドトゥルースのために、Kinect及びフォースプレートベースのセットアップ[8]を使用して、時間同期データ取得が実行されます。実験結果を手動で検証するために、被験者のビデオも記録されます。
神経疾患、主要な整形外科病変、前庭の既存の症状がない38人の健康なボランティア(年齢:21~65歳、体重:45kg~120kg及び身長:4ft6inch~6ft5inch)が、単一肢バランス分析のために検査されます。3人は実験を真剣に行っていないため、データを破棄しました。私たちの研究は、主に残りの35人の被験者に基づいています。意図的に、私たちは実験に少数のスポーツマン(表1の被験者A及びBなど)を含めて、身体のフィットネスが単一の肢 のバランスに及ぼす影響を調査しました。)
(引1キ)第855頁左欄下から5行~右欄3行
「2.2. Noise Removal
Skeleton data obtained from Kinect is very noisy and it is practically visible when the subject stands completely static, but some joints are moving in skeleton. There are many parameters [15] [16] that affect the characteristics and level of noise, which include room lighting, IR interference, quantization noise etc. The noisy skeleton data is filtered using method similar to [17].」
(和訳:2.2.ノイズ除去
Kinectから取得した骨格データは非常にノイズが多く、被験者が完全に静止しているが、一部の関節は骨格内で移動しているときに、実際に見てわかります。ノイズの特性とレベルに影響する多くのパラメーター[15] [16]があり、室内照明、IR干渉、量子化ノイズなどを含みます。ノイズの多い骨格データは、[17]と同様の方法でフィルタ処理されます。)
(引1ク)第855頁右欄4行~第856頁左欄2行
「2.3. SLS Duration Measurement
During SLS exercise, variation in lifted leg's ankle coordinates is very much obvious. We have used this fact in computing SLS duration. The skeleton joints obtained from Kinect are represented by 3D world co-ordinates (x,y,z) where ‘x’ represents left/right variation, ‘y’ represents up/down variation w.r.t ground and ‘z’ represents to/from variation of subject w.r.t Kinect. So here, changes in the lifted leg's ankle y-co-ordinate (say, left leg is lifted) YAnkleLeft can give us meaningful information about the precise timing when a subject lifts leg (here, left-leg) above the ground. Figure 3a clearly legitimizes our claim and shows substantial change in YAnkleLeft at point R, F and the zone R-to-F is our desired zone of SLS posture. In the other words, R is the frame where foot is flexed off the floor and F is the frame where it again touches the ground. The duration between R & F is considered as SLS duration.・・・(中略)・・・Finally SLS duration is measured by finding difference between time-stamps corresponding R and F frames.」
(和訳:2.3.SLS持続時間測定
SLS運動中、持ち上げた脚の足首座標の変動は、非常に明白です。この事実を使用して、SLS持続時間を計算しました。Kinectから取得した骨格関節は、3次元空間座標(x、y、z)で表されます。「x」は左右の変化を表し、「y」は地面に対する上下の変化を表し、「z」は被験者のKinectに対する前後の変化を表します。したがって、ここでは、持ち上げられた脚の足首のy座標の変化(例えば、左脚が持ち上げられた場合)YAnkleLeftは、被験者が脚(ここでは左脚)を地面から持ち上げる正確なタイミングに関する有意義な情報を提供します。図3aは、私たちの主張を明確に正当化し、ポイントR、FでYAnkleLeftの実質的な変化を示し、領域R~FはSLS姿勢の望ましい領域です。つまり、Rは足が曲げられ床から離れるフレームであり、Fは再び足が地面に触れるフレームです。RとFの間の期間は、SLS持続時間と見なされます。・・・(中略)・・・最後に、R及びFのフレームに対応するタイムスタンプ間の差を見つけることにより、SLS継続時間が測定されます。)
(引1ケ)第856頁左欄3行~右欄下から5行
「2.4. Body Vibration Analysis
Balance is generally defined as person's ability to maintain or rest ore the equilibrium with minimum movement or sway[19]. Balance is assessed as the amount of postural sway of the human body. Sway is the slight postural movements made by individual joint in order to maintain balanced position. During SLS exercise while standing on single limb, subject oscillates in order to maintain the balance. Moreover, for a given posture a subject can not move some of the joints like HipCenter, ShoulderCenter etc. easily and flexibly [20]. Hence, the twenty different joints in the skeleton have different degree of freedom (DOF) e.g. it is high for hand but low for HipCenter. This DOF has strong impact on joint movement.
To measure the oscillation quantitatively, velocity profile of each joint is used for its vibration analysis. Vibration is composed of frequency and amplitude. Higher frequency indicates more vibration and less balance. The velocity V→el = [vx, vy, vz] in all the three directions viz. x, y, z is analyzed for estimating the vibration or indirectly balance. The velocity is obtained from the filtered data as following,
where [xj , yj , zj]|t is the displacement at time t in (x, y, z) direction respectively for jth skeleton joint. It is observed from the AnkleLeft's velocity profile that velocity is maximum near R and minimum (considering sign) near F. Also the the mean velocity of AnkleLeft in first segment S-to-R (see Figure 3a) is almost similar to the the third one, whereas the velocity in the second is much higher than the other two. Start (R) and end (F) frames/time of one leg stance posture have already been identified in the subsection 2.3. Hence, three different segments namely S-to-R (segment-1), R-to-F (segment-2) and F-to-E (segment-3) need to be analyzed separately. This fact is also true for all 20 joints. To get the information about frequency, every joint data in each segment is partitioned into a window of 50 samples and Fourier transform of each segment is evaluated as following:
where V jk (ω) is the frequency response of ith window for jth joint velocity vjk. This is done for all joints and in all three directions (x,y,z). Frequency (fjk) corresponding to the maximum amplitude (Ajk) in each window is selected and the mean frequency of each segment is evaluated as following,
Using above equation 4, mean frequencies fjm|S-to-F , fjm|R-to-F , fjm|F-to-E in each segment are computed. These calculated mean frequencies will eventually help us to analyze relative frequency variation (vibration) in corresponding segments i.e. before, during and after SLS. In this work, the relative frequency variation is considered as vibration-jitter (in Hz) and for each segment it is mathematically modeled using following equation
where J1,2,3 is vibration-jitter and fjm is mean frequency in each segment whereas fj∀k is the frequency for all windows in each segment. J1,2,3 also quantifies vibration in terms of frequency for three segments, where more vibration indicates worse balance. For convenience, we will use the term jitter instead of vibration-jitter in rest of the article. The dominant component of velocity for each window can be written as vjk[n] = Ajkcos(2πfjkn) where fjk is the frequency corresponding to the maximum amplitude Ajk in kth window for jth joint of each segment.
It is evident from Biomechanics [21] that during SLS, the force imposed on each joint to restore the equilibrium state is due to body weight, abductor muscles force and joint reaction force. This force can be a good measure for joint balance estimation. Keeping these facts in mind, the reaction force per unit mass (FPUM = force(F)/mass(m) in meter/second2) for each joint is measured as the rate of change of velocity for that joint, i.e. acceleration (a). This can be better explained using Newton’s law of motion i.e. F = ma ⇒ a = F/m.」
(和訳:2.4.身体振動解析
バランスとは一般に、最小限の動きや揺れで平衡を維持又は回復する能力として定義されます[19]。バランスは、人体の姿勢の揺れの量として評価されます。揺れは、バランスの取れた位置を維持するために個々の関節によって行われるわずかな姿勢の動きです。単肢立ちでのSLS運動中、被験者はバランスを保つために振動します。さらに、定められた姿勢のため、被験者は腰中心、肩中心などの関節の一部を、簡単かつ柔軟に動かすことはできません[20]。したがって、骨格内の20の異なる関節は、自由度の程度(DOF)が異なります。例えば、手にとって自由度は高いが、腰中心にとっては低いです。この自由度は、関節の動きに強い影響を与えます。振動を定量的に測定するために、各関節の速度プロファイルがその振動解析に使用されます。振動は、周波数と振幅で構成されます。より高い周波数は、より多くの振動とより低いバランスを示します。全3方向、つまりx、y、zにおける速度V→el = [vx,vy,vz]。は、振動又は間接的にバランスを推定するために分析されます。速度は、フィルタ処理されたデータから次のように取得されます。
ここで、[xj,yj,zj]|tは、それぞれj番目の骨格関節の(x,y,z)方向の時間tでの変位です。左足首の速度プロファイルから、速度はR付近で最大であり、F付近で最小(符号を考慮)であることが観察されます。また、最初のセグメントS~Rにおける左足首の平均速度(図3a参照)は、3番目のセグメントとほぼ同じですが、2番目のセグメントの速度は、他の2つのセグメントよりもはるかに高速です。単脚スタンス姿勢の開始(R)及び終了(F)フレーム/時間は、サブセクション2.3.ですでに特定されています。したがって、3つの異なるセグメント、つまりS~R(セグメント1)、R~F(セグメント2)、及びF~E(セグメント3)を個別に分析する必要があります。この事実は、20個すべての関節にも当てはまります。周波数に関する情報を取得するために、各セグメントのすべての関節データが50サンプルのウィンドウに分割され、各セグメントのフーリエ変換が次のように求められます。
ここで、Vjk(ω)は、j番目の関節速度vjkに対するi番目のウィンドウの周波数応答です。これは、すべての関節に対して、全3方向(x,y,z)で行われます。各ウィンドウの最大振幅(Ajk)に対応する周波数(fjk)が選択され、各セグメントの平均周波数が次のように求められます。
上記の式4を使用して、各セグメントの平均周波数fjm|S-to-F、fjm|R-to-F、fjm|F -to-Eが計算されます。これらの計算された平均周波数は、最終的に、対応するセグメント、すなわちSLSの前、最中、後における相対的な周波数変動(振動)を分析するのに役立ちます。この研究では、相対的周波数変動は振動ジッタ(Hz単位)と見なされ、各セグメントに対して次の方程式を使用して数学的にモデル化されます。
ここで、J1,2,3は振動ジッタであり、fjmは各セグメントの平均周波数であり、fj∀kは各セグメントにおける全ウィンドウの周波数です。J1,2,3は、3つのセグメントの振動を周波数に関して定量化します。振動が大きいほど、よりバランスが悪いことを示します。便宜上、残りの部分では振動ジッタの代わりにジッタという用語を使用します。各ウィンドウの速度の支配的な成分は、vjk[n] =Ajkcos(2πfjkn)と書くことができます。fjkは、各セグメントのj番目の関節のk番目のウィンドウの最大振幅Ajkに対応する周波数です。
バイオメカニクス[21]から明らかなように、SLSの間、平衡状態を回復するために各関節に加えられる力は、体重、外転筋力、及び関節反力によるものです。この力は、関節のバランスの推定に適した尺度になります。これらの事実を念頭に置いて、各関節の単位質量あたりの反力(FPUM= 力(F)/質量(m)単位 m/s2)は、その関節の速度の変化率、つまり加速度(a)として測定されます。これは、ニュートンの運動の法則、つまりF= ma⇒a = F/mを使用してよりよく説明できます。)
(引1コ)第856頁右欄下から4行~第857頁右欄19行
「3. RESULTS AND DISCUSSION
This section comprises of the results for SLS duration, jitter and FPUM measurements for estimating total body balance in SLS exercise. We have experimented on 35 subjects and have analyzed the results in all three directions, but due to space constraint we are restricting our jitter and FPUM results only in x-direction and reporting FPUM comparison matrix for only 4 subjects in Table1.
The SLS duration computed from skeleton data using proposed curvature point detection algorithm (mentioned in 2.3) and state-of-the-art technique [12] are compared with the SLS duration obtained from Force Platform based System (Ground Truth/GT) where change in ground reaction force is tracked to get the same. The difference shown using Bland-Altman plot in Figure 4 is mainly plotted against their mean, the mean difference and its 95% confidence levels. Figure 4(a) clearly reveals that the measurements made by proposed method is very much close (max absolute difference 238.3ms) to the ground truth whereas duration computed using [12] is far off from GT (shown in4(b)). This is due to noisy skeleton data which our eigen vector based curvature analysis algorithm can better handle.
For a particular subject “A”, the results for body vibration analysis is shown in Figure 5. As discussed in subsection 2.4, it is quite clear that each and every joint has different order of vibration during SLS. Based on this, for every subject we have analyzed jitter and FPUM (in x-plane) for three joints from upper (ShoulderRight), mid(HipCenter) and lower body (KneeRight). Figure 5(a) clearly depicts that the vibration in ShoulderRight is greater than HipCenter but lower than KneeRight and the observation holds good for all three segments (S-to-R, R-to-F and F-to-E). It is mainly because when body's center of gravity changes during SLS, different body parts having different degree of freedom behave differently to maintain postural stability [21]. For subject “A”, the extent of change is high in KneeRight than HipCenter & ShoulderCenter. Figure 5(a) also reflects the same. Similar fact is also verified by observing the recorded SLS video of subject “A”.
Moreover, the jitter in segment-1 (S-to-R) and segment-3 (F-to-E) are comparable but much less than segment-2 (R-to-F), as body vibration is more during one leg stance. Although the results are given for three joints in Figure 5, but the same pattern i.e. J|S-to-R ≒ J|F-to-E << J|R-to-F is followed by other joints. The above finding is also valid for FPUM based balance analysis as presented in Figure 5(b). The values mean ± std listed in Table 1 demonstrate how FPUM changes for segment-1, 2, 3 for different subjects and joints. It is also noticed that for every subject either physically fit or unfit, FPUM required to maintain body equilibrium is much in segment-2 than segment-1 and 3. The FPUM value listed in Table 1 for segment-2 is almost 50-100 (e.g. subject 4: 100) times greater than segment-1 & 3 for HipCenter and there is substantial difference for other joints too. However, the results for 4 subjects are presented here but the analysis on several others reveals that the jitter and FPUM values (Table 1) for physically fit subjects is much less than unfit one, which also supports the medical fact in [22].」
(和訳:3.結果と考察
このセクションには、SLS運動での全身バランスを推定するためのSLS持続時間、ジッタ及びFPUM測定の結果が含まれます。35の被験者で実験を行い、3方向すべての結果を分析しましたが、スペースの制約により、ジッタとFPUMの結果をx方向のみに制限し、被験者4人のみのFPUM比較マトリックスを表1に報告しています。
提案された曲率点検出アルゴリズム(2.3で説明)及び最新技術[12]を使用して骨格データから計算されたSLS持続時間は、フォースプレートベースのシステム(グランドトゥルース/GT)から得られたSLS持続時間と 比較されます。フォースプレートベースのシステムでは、地面の反力の変化がそれを得るために追跡されます。図4にブランドアルトマンプロットを使用して示される差は、主にそれらの平均、平均差、及びその95%信頼レベルに対してプロットされます。図4(a)は、提案された方法で行われた測定がグランドトゥルースに非常に近い(最大絶対差238.3ms)のに対し、[12] を使用して計算された持続時間はGTから遠い(図4(b)に示す)ことを明確に示しています。これは、我々の固有ベクトルベースの曲率解析アルゴリズムがより適切に処理できるノイズの多い骨格データによるものです。
特定の被験者「A」について、身体振動解析の結果を図5に示します。サブセクション2.4で説明したように、すべての関節がSLS中に振動の程度が異なることは明らかです。これに基づいて、すべての被験者について、上部(右肩)、中央部(腰中心)、下部(右膝)の3つの関節のジッタとFPUM(x平面)を分析しました。図5(a)は、右肩の振動が腰中心よりも大きく、右膝よりも小さいことを明確に示しており、3つのセグメントすべて(S~R、R~F及びF~E)で観測結果が良好です。これは主に、SLS中に体の重心が変化すると、自由度の異なるさまざまな体の部分が、姿勢の安定性を維持するために異なる動作をするためです[21]。被験者「A」の場合、右膝の変化の範囲は腰中心及び肩中心よりも広くなっています。図5(a)も同じことを反映しています。同様の事実は、被験者「A」のSLS記録ビデオを観察することでも検証されます。
さらに、セグメント1(S~R)及びセグメント3(F~E)のジッタは匹敵しますが、身体の振動は片脚のスタンス中により多くなるように、セグメント2(R~F)よりもはるかに小さいです。図5では3つの関節について結果が示されていますが、同じパターン、つまりJ|S-to-R≒ J|F-to-E<<J|R-to-Fに他の関節も従います。上記の結果は、図5(b)に示すように、FPUMベースのバランス分析にも有効です。表1にリストされている平均±標準偏差の値は、セグメント1、2、3において異なる被験者及び 関節のFPUMがどのように変化するかを示しています。また、身体的に優れているか又は優れていない被験者のすべてについて、体の平衡を維持するために必要なFPUMは、セグメント1及び3よりもセグメント2の方が大きいことに注意してください。表1にリストされているセグメント2のFPUMの値は、腰中心に関してセグメント1及び3のほぼ50~100倍(例えば、被験者4で100倍)以上であり、他の関節にも大きな違いがあります。ただし、ここでは4人の被験者の結果が示されていますが、他のいくつかの被験者の分析では、身体的に優れた被験者のジッタとFPUM値(表1)が優れていない被験者のものよりもはるかに小さいことが明らかになり、これも[22]の医学的事実を裏付けています。)
(引1サ)第857頁右欄下から13行~末行
「4. CONCLUSION
In this paper quantification of balance using single limb stance (SLS) exercise is proposed and tested on 35 healthy subjects with various fitness level, age, height, weight etc. An effective curvature finding algorithm is proposed which performs better than [12] to find the SLS duration from skeleton data. The quantitative measurement of vibration is formulated in terms of relative frequency variation and force per unit mass (FPUM) for each joint. Results indicate that the vibration jitter and FPUM during one leg stance varies with subjects physical fitness level and is much higher than bipedal one. But how these bio-markers (age, height, BMI etc.) affect single limb balance will be our future scope of research.」
(和訳:4.結論
この論文では、単肢スタンス(SLS)運動を使用したバランスの定量化を提案し、さまざまなフィットネスレベル、年齢、身長、体重などの35人の健康な被験者を対象にテストしました。効果的な曲率点検出アルゴリズムが提案され、それは骨格データからSLS期間を検出するために、[12]の方法よりも優れています。振動の定量的測定は、各関節の相対的周波数変動と単位質量あたりの力(FPUM)の観点から定式化されます。結果は、片足スタンス中の振動ジッタとFPUMは、被験者の体力レベルによって異なり、二足スタンスのものよりもはるかに高いことを示しています。しかし、これらのバイオマーカー(年齢、身長、BMIなど)がどのように単肢バランスに影響するかは、今後の研究範囲になります。)
2 引用文献1に記載された発明
(1)(引1ウ)には、「本研究では、SLSの持続時間と身体バランスを測定するための自動で目立たないシステムを提案しました。この目的のために、振動ジッタ解析が実行され、さまざまな関節の周波数の相対的な変動が時間とともに明確に表示されます。処理全体は、Kinectから取得した骨格データに対して実行されます。」と記載されていることから、単肢の身体バランス分析システムは、Kinectから取得した骨格データに対してコンピュータプロセッサによって実行されることが分かる。
(2)上記(1)を踏まえると、上記1の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「単肢の身体バランス分析システムをMicrosoft Kinectから取得した骨格データに対してコンピュータプロセッサによって実行するための方法であって、
単肢の身体バランス分析システムがコンピュータプロセッサによって、取得した骨格データに基づく単肢スタンス(SLS)持続時間を計算し、評価者がSLS中の姿勢の安定性を評価するために、振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)の2つのパラメーターが各身体部位に対して導出される、方法。」
3 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特表2012-502771号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
(引2ア)
「【請求項17】
患者に関する生理的情報を取得するステップと、
前記生理的情報をファジーロジックメンバーシップ関数の第1のセットにマッピングするステップと、
第1のファジーロジック推論を使用して、ファジーロジックメンバーシップ関数の前記第1のセットに対する前記生理的情報の前記マッピングから症状状態を導出するステップと、
前記症状状態をファジーロジックメンバーシップ関数の第2のセットにマッピングするステップと、
第2のファジーロジック推論を使用して、ファジーロジックメンバーシップ関数の前記第2のセットに対する前記症状状態の前記マッピングから疾患状態を導出するステップとを備える方法。
【請求項18】
前記疾患状態を前記導出するステップは、非代償性心不全状態を導出することを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生理的情報を前記取得するステップは、埋め込み型生理的センサまたは外部生理的センサの少なくとも一方を監視することを含む請求項17または18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記生理的情報を前記取得するステップは、心拍数、呼吸数、呼吸タイミング、血圧、肺一回換気量、身体活動レベル、体重、胸腔内インピーダンス、心音タイミング、または心音マグニチュードの少なくとも1つから導出される情報を取得することを含む請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のファジーロジック推論を使用して前記症状状態を前記導出するステップは、
少なくとも1つの生理的センサが、信頼性がないか、利用可能でないかに関する情報を使用してルールを選択するステップと、
前記選択されたルールを使用して前記症状状態を導出するステップとを備える、請求項17から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記生理的情報の少なくとも一部についてユーザに質問するステップとにおいて、質問は、前記患者が、息切れを経験したか、異常な疲労感を経験したか、異常な疼痛を経験したか、異常な膨満感を経験したか、慢性の咳を経験したか、食欲減退を経験したか、または睡眠時における特別な枕についての必要性を経験したかの少なくとも1つを含む、質問するステップと、
前記生理的情報の少なくとも一部を含むユーザ応答を受信するステップとをさらに備える請求項17から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記症状状態を前記導出するステップは、呼吸困難スコア、水分過負荷指数、左室充満圧指数、疲労指数、または心拍出量指数の少なくとも1つを導出することを含む請求項17から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記症状状態または前記非代償性心不全状態の少なくとも一方をユーザに表示することを含む請求項17から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記非代償性心不全状態が急性非代償性心不全の発生を指示するとき、ユーザに警報を提供することを含む請求項17から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
言語学用語によって、ファジーロジックメンバーシップ関数の前記第1または第2のセットに含まれる少なくとも1つのメンバーシップ関数をカテゴリ化することを含む請求項17から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記言語学用語は、非常に低い、低い、中程度、高い、または非常に高い、のうちの少なくとも1つを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記言語学用語を使用して、ベースラインからの変化の程度によって前記生理的情報または前記症状状態の少なくとも一方を分類することを含む請求項26から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記言語学用語を使用して、変化率によって前記生理的情報または前記症状状態の少なくとも一方を分類することを含む請求項26から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1または第2のファジーロジック推論の一方を前記使用することは、履歴患者データから取得される情報に基づいて少なくとも1つのルールを使用することを含む請求項26から29のいずれか1項に記載の方法。」
4 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるMALIK, Owais A. et al,“An Adaptive Interval Type-2 Fuzzy Logic Framework for Classification of Gait Patterns of Anterior Cruciate Ligament Reconstructed Subjects”,IEEE International Conference on Fuzzy Systems(FUZZ-IEEE),2014年,p.1068-1075(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
(引3ア)
「An Adaptive Interval Type-2 Fuzzy Logic Framework for Classification of Gait Patterns of Anterior Cruciate Ligament Reconstructed Subjects」
(前十字靭帯再建患者の歩行パターン分類のための適応的インターバル2型ファジーロジックフレームワーク)
(引3イ)
「Abstract This paper aims to investigate a gait pattern classification system for anterior cruciate ligament reconstructed (ACL-R) subjects based on the interval type-2 fuzzy logic (FL). The proposed system intends to model the uncertainties present in kinematics and electromyography (EMG) data used for gaitanalysis due to intra- and inter-subject stride-to-stride variability and nature of signals. Four features were selected from kinematics and EMG data recorded through wearable wireless sensors. The parameters for the membership functions of these input features were determined using the data recorded for 12 healthy and ACL-R subjects. The parameters for output membership functions and rules were chosen based on the recommendations from physiotherapists and physiatrists. The system was trained by using steepest descent method and tested for singleton and non-singleton inputs. The overall classification accuracy results show that the interval type-2 FL system outperforms the type-1 FL system in recognizing the gait patterns of healthy and ACL-R subjects.」
(要旨 本論文では、前十字靭帯再建術を受けた前十字靭帯再建術の被験者を対象に、インターバル2型ファジーロジック(FL)に基づいた歩行パターン分類システムの検討を行う。提案するシステムは、歩行解析に用いられる運動学と筋電図(EMG)データに存在する不確実性をモデル化することを目的としている。ウェアラブル無線センサを介して記録された運動学・筋電図データから4つの特徴を選択した。これらの入力特徴のメンバーシップ関数のパラメーターは、健常者とACL-R被験者12名のデータを用いて決定した。出力メンバーシップ関数のパラメーターおよびルールは、理学療法士および理学療法士からの推奨に基づいて選択した。システムは急峻降下法を用いて学習し、シングルトン入力と非シングルトン入力についてテストを行った。総合的な分類精度の結果は,健常者とACL-R被験者の歩行パターンの認識において、インターバル2型FLシステムが1型FLシステムよりも優れていることを示している。)
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「単肢の身体バランス分析システム」は、「評価者がSLS中の姿勢の安定性を評価するために」用いるから、本願発明の「姿勢安定性評価システム」に相当する。
よって、引用発明の「単肢の身体バランス分析システムをMicrosoft Kinectから取得した骨格データに対してコンピュータプロセッサによって実行するための方法」は、本願発明1の「ユーザの姿勢安定性評価のためのプロセッサ実装方法」に相当する。
イ 引用発明の「単肢スタンス(SLS)持続時間」は、本願発明1の「片脚立ち(SLS)持続時間」に相当する。また、引用発明の「振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)の2つのパラメーター」は、本願発明1の「身体関節振動」に相当する。
よって、引用発明の「単肢の身体バランス分析システムがコンピュータプロセッサによって、取得した骨格データに基づく単肢スタンス(SLS)持続時間を計算し、評価者がSLS中の姿勢の安定性を評価するために、振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)の2つのパラメーターが各身体部位に対して導出される」ことと、
本願発明1の「姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する入力を収集するステップと、
前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定するステップと、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザについて姿勢安定性インデックススコアを生成するステップと、
前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップ」とは、
「姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動を収集するステップと、
前記SLS持続時間、および前記身体関節振動に基づいて、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップ」の点で共通する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 ユーザの姿勢安定性評価のためのプロセッサ実装方法であって、
姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動を収集するステップと、
前記SLS持続時間、および前記身体関節振動に基づいて、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップ
を含む方法。」
(相違点)
姿勢安定性評価のための監視対象が、
本願発明1では、「ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域」であるのに対し、引用発明では、本願発明の「SLS持続時間」に相当する「単肢スタンス(SLS)持続時間」、及び本願発明の「身体関節振動」に相当する「振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)」であり、
姿勢安定性評価が、
本願発明1では、「姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する入力を収集するステップと、
前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定するステップと、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザについて姿勢安定性インデックススコアを生成するステップと、
前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップと
を含み、
前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域が前記それぞれのカテゴリに該当すると決定する前記ステップが、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、リアルタイムに収集された前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の値を、対応するメンバーシップ関数の範囲と比較するステップを含み、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域に対応するメンバーシップ関数の前記範囲が、前記ユーザについて動的に決定され、
メンバーシップ関数の前記範囲を動的に決定する前記ステップが、
前記ユーザに関する入力を収集するステップであって、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含む、ステップと、
と、
前記入力を学習モデルと比較するステップと、
前記収集した入力に合致する前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を決定するステップと
を含む」のに対し、引用発明では、「単肢の身体バランス分析システム」によって、「コンピュータプロセッサ」を介して、「骨格データ」を入力し、入力された「骨格データ」に基づいて「単肢スタンス(SLS)持続時間」、および「振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)」が求められ、求められた「単肢スタンス(SLS)持続時間」、および「振動ジッタと単位質量あたりの力(FPUM)」から、「評価者がSLS中の姿勢の安定性を評価する」点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用文献2(上記第3の3参照。)には、患者に関する生理的情報からファジーロジックを用いて疾患状態を求めることが記載されており、引用文献3(上記第3の4参照。)には、前十字靭帯再建術を受けた被験者の運動学・筋電図データからファジーロジックを用いて歩行パターンを分類することが記載されている。
よって、引用文献2及び3の記載により、何らかの入力データからファジーロジックを用いて何らかの出力結果を得ることが周知技術であるといえる。
イ 本願発明1は、「姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する入力」に対し、いわゆるファジーロジックを適用し、
「前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定するステップと、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザについて姿勢安定性インデックススコアを生成するステップと、
前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップと
を含み、
前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域が前記それぞれのカテゴリに該当すると決定する前記ステップが、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、リアルタイムに収集された前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の値を、対応するメンバーシップ関数の範囲と比較するステップを含み、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域に対応するメンバーシップ関数の前記範囲が、前記ユーザについて動的に決定され、
メンバーシップ関数の前記範囲を動的に決定する前記ステップが、
前記ユーザに関する入力を収集するステップであって、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含む、ステップと、
と、
前記入力を学習モデルと比較するステップと、
前記収集した入力に合致する前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を決定するステップと
を含む」ものに特定したものである。
つまり、本願発明1は、姿勢安定性評価システムに「ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域」を入力し、姿勢安定性評価システムによってメンバーシップ関数が規則と組み合わされ、「ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域」に基づく「姿勢安定性インデックススコア」が生成され、生成された「姿勢安定性インデックススコア」から「ユーザの姿勢安定性の評価」を結果として出力することを、上記のとおり具体的に特定したものである。
一方、引用発明は、姿勢安定性評価システムによって、ハードウェアプロセッサを介して、「骨格データ」を入力し、入力された「骨格データ」に基づいてユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動が求められ、求められたユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動から、評価者がユーザの姿勢安定性の評価するものである。
よって、引用発明では、「骨格データ」を姿勢安定性評価システムへの入力データとするのに対し、本願発明1では、「ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域」を姿勢安定性評価システムへの入力データとするものであり、また、引用発明では、ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動を姿勢安定性評価システムからの出力結果とし、ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動に基づく姿勢安定性インデックススコアを生成すること無しに、評価者が出力結果からユーザの姿勢安定性を評価するのに対し、本願発明1は、姿勢安定性評価システムが、入力されたユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、および身体関節振動、および身体動揺領域に基づき姿勢安定性インデックススコアを生成し、姿勢安定性インデックススコアから、ユーザの姿勢安定性の評価を出力結果とするものであるから、引用発明と本願発明1とは、姿勢安定性評価システムへの入力データ、姿勢安定性評価システム内での処理、姿勢安定性評価システムからの出力結果のいずれにおいても異なるものである。
そして、上記周知技術として例示された引用文献2及び3は、いずれも、姿勢安定性評価システムに「ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域」を入力し、姿勢安定性評価システムによってメンバーシップ関数が規則と組み合わされ、「ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域」に基づく「姿勢安定性インデックススコア」が生成され、生成された「姿勢安定性インデックススコア」から「ユーザの姿勢安定性の評価」を結果として出力するものではない。
そうすると、引用発明において仮に上記周知技術を適用しても、上記相違点に係る本願発明1の構成を当業者が想到し得ることでない。
ウ したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、それぞれ、本願発明1に対応するシステム及び記録媒体の発明であり、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1~10について上記引用文献1~3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和2年12月8日付け手続補正により補正された請求項1~3は、上記相違点に係る本願発明1の構成、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1~3は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
令和2年6月3日付けの手続補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下されることとなった。そして、当審では、令和元年8月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項4に記載の「前記ユーザに関する入力を収集するステップであって、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含む、ステップ」は、請求項1に記載の「前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置に基づいて、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域が少なくとも1つのそれぞれのカテゴリに該当すると決定するステップ」との技術的関係が不明である、との拒絶の理由を通知しているが、令和2年12月8日付けの手続補正により請求項4は削除された結果、この拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1~3は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-007626