2020-007473
拡張型ネットワーク
- 審判番号
- 2020-007473
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-229109外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月02日
- 審決日
- 2021年04月20日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .55 -WY (H04W) / P18 .121-WY (H04W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、2014年(平成26年)12月3日に出願した特願2014-244653号の一部を平成30年12月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月 6日 手続補正書、上申書の提出
令和 元年 7月25日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 8月29日 意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 1日付け 拒絶理由通知書
令和 元年11月20日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月25日付け 拒絶査定
令和 2年 6月 2日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和 2年12月 2日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 2年12月16日 意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月18日 応対記録
令和 3年 2月18日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 3年 3月 2日 意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1ないし5
・引用文献等 1及び2
<引用文献等一覧>
1. 米国特許出願公開第2008/0080414号明細書
2.特開2007-288267号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和3年2月18日付け拒絶理由通知書)の概要は次のとおりである。
1.(新規事項)令和2年12月16日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
令和2年12月16日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により、補正された明細書の段落[0006]には、拡張補助アクセスポイントについて、「前記高層建造物を大型アンテナとする」との事項があるが、当該事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という)に記載されておらず、当業者にとって当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、本件補正は、明細書に対して、当業者によって当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第4 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和2年12月16日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】高層建造物の近隣に構築される拡張型ネットワークであって、前記高層建造物の地上側に設けられ、第1の帯域の無線電波による基幹通信を行う地上側アクセスポイントと、前記高層建造物の屋上付近に設けられ、前記地上側アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行う拡張補助アクセスポイントと、前記高層建造物の近隣の屋外に設けられ、前記拡張補助アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行い、前記第1の帯域の周波数より周波数が低い第2の帯域の無線電波を送受信して通信エリアを拡張する複数の拡張用アクセスポイントと、を備え、前記地上側アクセスポイントは、前記高層建造物の側面の周方向に間隔をおいた複数の箇所に設けられており、前記複数の拡張用アクセスポイントは、中継機器として機能し、前記第2の帯域の無線電波を中継して無線通信エリアを拡張するものであり、前記高層建造物の近隣の地上および建物の屋上に設置されていること、を特徴とする拡張型ネットワーク。」
第5 引用例の記載事項及び引用発明
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1.引用例1について
原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由で引用された米国特許出願公開第2008/0080414号明細書(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
(1)「[0027] As shown in FIG. 1, the example wireless mesh network 100 includes two types of mesh nodes: a root access point (root AP, RAP, root mesh AP) 103, shown here on the roof of a building, and a mesh access point (mesh AP, MAP) 105, 107, and 109 each shown here on a pole-top. Each of these also acts as an access point. A mesh node without the AP capability is simply called a mesh node, and in this description, mesh APs can act as simple mesh nodes when there are no client stations, or if the wireless AP capabilities are disabled.[0028] In one embodiment, the mesh access points 103, 105, 107, and 109 are light-weight access points whose AP functionalities are centrally controlled by, and work together with an entity in the wired network called a WLAN controller (WLC), or simply a controller. Each mesh AP can be controlled by a single controller, or some of the mesh APs can be controlled by a first controller, while others by another controller. In the example network 100, the root AP is controlled by a first controller 115, while the mesh APs 105, 107, and 109 are controlled by a second controller 125. The functionality of each of these access points is managed by messages between the corresponding WLAN controller 115 or 125 and the AP using a protocol called the Lightweight AP Protocol (LWAPP), which is the basis of a draft IETF specification known as Control And Provisioning of Wireless Access Points (CAPWAP) protocol. See for example www.capwap.org.」
(当審仮訳:
[0027] 図1に示すように、例示的な無線メッシュネットワーク100は、2つのタイプのメッシュノード、すなわち、建物の屋上に示されているルートアクセスポイント(ルートAP、RAP、根元のメッシュAP)103、及び、各々、ポールトップ上に示されるメッシュアクセスポイント(AP、MAP)105、107、109を含む。これらの各々は、アクセスポイントとしても機能する。AP機能のないメッシュノードは単にメッシュノードと呼ばれ、この説明では、クライアントステーションがない場合、またはワイヤレスAP機能が無効になっている場合、メッシュAPは単純なメッシュノードとして機能できる。
[0028] 一実施形態では、メッシュアクセスポイント103、105、107、および109は、AP機能が一元的に制御され、WLANコントローラ(WLC)又は単にコントローラと呼ばれる有線ネットワーク内のエンティティと連携して動作する軽量アクセスポイントである。各メッシュAPは、単一のコントローラで制御できる、またはメッシュAPのうちのいくつかは第1のコントローラで制御でき、他のメッシュAPは別のコントローラで制御できる。例示的なネットワーク100では、ルートAPは第1のコントローラ115によって制御され、メッシュAP105、107、および109は第2のコントローラ125によって制御される。これらの各アクセスポイントの機能は、ワイヤレスアクセスポイントの制御及びプロビジョニングプロトコルとして知られるドラフトIETF仕様の基礎となる軽量APプロトコル(LWAPP)と呼ばれるプロトコルを使用する対応するWLANコントローラ115又は125とAPの間のメッセージによって管理される。例えば、www.capwap.orgを参照されたい。)
(2)「[0035] A root AP 103 uses its backhaul wireless interface to communicate to neighboring mesh APs 105, 107, and 109. Thus, root APs are the root nodes to any bridging or mesh network and connect a bridge or mesh network to the wired network. Root APs form the roots of any wireless mesh networks that have a tree topology.[0036] As used herein, mesh APs are APs that are also mesh nodes. FIG. 1 shows mesh APs 105, 107, and 109. The architectures discussed herein are when the mesh nodes also are operative as lightweight APs. Mesh APs 105, 107, and 109 are mesh nodes and APs that have no wired connection to a controller such as controller 125 that controls the AP functionality of each mesh AP. A mesh AP 105, 107, 109 has a backhaul wireless interface to connect to other mesh nodes, shown here as an 802.11a 5 GHz radio interface. In one embodiment, a mesh AP 105, 107, 109 has a second wireless interface, shown here as an 802.11b,g 2.4 GHz radio interface to connect with client stations, acting as an AP for the client stations. They can be completely wireless supporting clients, communicating to other mesh APs and root APs to access an external network, or as described in the following paragraph, a mesh AP can have a wire interface connectable to a wired network, and serve a bridging entity to a remote wired network.」
(当審仮訳:
[0035] ルートAP103は、バックホール無線インタフェースを用いて、隣接するメッシュAP105、107、および109に通信する。このように、ルートAPは、任意のブリッジング又はメッシュネットワークへのルートノードであり、ブリッジ又はメッシュネットワークを有線ネットワークに接続する。ルートAPは、ツリートポロジを有する任意のワイヤレスメッシュネットワークのルートを形成する。
[0036] 本明細書で使用されるように、メッシュAPはまた、メッシュノードでもあるAPである。図1は、メッシュAP105、107、および109を示している。本明細書で説明されるアーキテクチャは、メッシュノードが軽量APとしても動作する場合である。メッシュAP105、107、および109は、各メッシュAPのAP機能を制御するコントローラ125のようなコントローラへの有線接続を持たないメッシュノードおよびAPである。メッシュAP105、107、109は、ここでは802.11a 5GHz無線インタフェースとして示されるバックホール無線インタフェースを有している。一実施形態では、メッシュAP105、107、109は、ここではクライアントステーションに接続するための802.11b、g 2.4GHzの無線インタフェースとして示される第2の無線インタフェースを有し、クライアントステーションのAPとして機能する。それらは完全にワイヤレスをサポートするクライアントであり、外部ネットワークにアクセスするために他のメッシュAP及びルートAPと通信する、または、次の段落で説明するように、メッシュAPは、有線ネットワークに接続可能な有線インタフェースを有することができ、リモート有線ネットワークへのブリッジエンティティを提供できる。)
(3)「[0074] In one embodiment, the one or mesh nodes that are on the path between the root access point and the client station include information on the respective mesh node's backhaul radio in data with the call admission request as the call admission request is relayed towards the root access point, such that the receiving of the call admission request at the root AP 103's controller 115 includes the receiving of the metrics of all the intermediate mesh nodes in the path.(中略)[0146] FIG. 11 illustrates an example backhaul call admission control method 1100 operating in a controller 115 of a root AP 103 of a mesh network, or, in an alternate embodiment in which the root AP is not a lightweight AP, in the root AP itself Such an alternate embodiment is the same as the case of the root AP controller being in the controller so that no encapsulation for messaging between the root AP and its controller is needed. Therefore the lightweight AP case is assumed. As FIG. 11 shows, in 1101, a root AP 103's controller 115 receives a call admission request from a client station 111, e.g., CAC ADDTS request that originated as an ADDTS frame in the a client station 111 via a mesh AP 107 and its controller 125.(以下略)」
(当審仮訳:
[0074] 一実施形態では、ルートアクセスポイントとクライアントステーションとの間のパス上にある1つ又は複数のメッシュノードは、ルートAP103のコントローラ115でのコールアドミッション要求の受信が、パス内のすべての中間メッシュノードのメトリックの受信を含むように、コールアドミッション要求がルートアクセスポイントに向けて中継されるときに、コールアドミッション要求を伴うデータにそれぞれのメッシュノードのバックホール無線に関する情報を含める。(中略)
[0146] 図11は、メッシュネットワークのルートアクセスポイント103のコントローラ115、又はルートAPが軽量APではない代替の実施形態、そのような代替の実施形態では、ルートAPコントローラがコントローラ内にある場合と同じであるため、ルートAPとそのコントローラとの間のメッセージングのためのカプセル化は必要とされず、ルートAP自体において動作する例示的なバックホールコールアドミッション制御方法1100を示す、したがって、軽量APである場合を想定する。図11に示すように、1101において、ルートアクセスポイント103のコントローラ115は、クライアントステーション111からコールアドミッション要求、例えば、メッシュAP107およびそのコントローラ125を介してクライアントステーション111でADDTSフレームとして発信されたCAC ADDTS要求を受信する。(以下略))
(4)「」
引用例1の上記記載、及びこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。
ア 上記(1)の「図1に示すように、例示的な無線メッシュネットワーク100は、2つのタイプのメッシュノード、すなわち、建物の屋上に示されているルートアクセスポイント(ルートAP、RAP、根元のメッシュAP)103、及び、各々、ポールトップ上に示されるメッシュアクセスポイント(AP、MAP)105、107、109を含む。」との記載及び上記(4)によれば、引用例1の無線メッシュネットネットワークは、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントとポールトップに設けられる複数のメッシュアクセスポイントを含む。
上記(2)の「ルートAP103は、バックホール無線インタフェースを用いて、隣接するメッシュAP105、107、および109に通信する。」との記載によれば、ルートアクセスポイントが隣接する複数のメッシュアクセスポイントと通信する。
してみれば、引用例1の無線メッシュネットワークは、建物の屋根に設けられるルートアクセスポイントが隣接する複数のメッシュアクセスポイントと通信する無線メッシュネットワークであるといえる。
イ 上記「ア」で説示したように、引用例1のルートアクセスポイントは、建物の屋上に設けられている。
ウ 上記「ア」で説示したとおり、無線メッシュネットネットワークは、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントとポールトップに設けられる複数のメッシュアクセスポイントを含むものであり、ルートアクセスポイントが隣接する複数のメッシュアクセスポイントと通信するものであるから、複数のメッシュアクセスポイントは、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられるといえる。そして、上記(4)によれば、ポールトップが屋外に設けられていることも明らかである。
また、上記(2)の「ルートAP103は、バックホール無線インタフェースを用いて、隣接するメッシュAP105、107、および109に通信する。」及び「メッシュAP105、107、109は、ここでは802.11a 5GHz無線インタフェースとして示されるバックホール無線インタフェースを有している。一実施形態では、メッシュAP105、107、109は、ここではクライアントステーションに接続するための802.11b、g 2.4GHzの無線インタフェースとして示される第2の無線インタフェースを有し、クライアントステーションのAPとして機能する。」との記載によれば、引用例1の複数のメッシュアクセスポイントは、ルートアクセスポイントとの間で5GHzのバックホール無線通信インタフェースによる通信を行う。また、上記記載によれば、引用例1の複数のメッシュアクセスポイントは、クライアントステーションのAPとして動作するのであるから,2.4GHzの無線通信インタフェースによりクライアントステーションと通信するといえる。
エ 上記(3)の「ルートアクセスポイント103のコントローラ115は、クライアントステーション111からコールアドミッション要求、・・・を受信する。」との記載によれば、クライアントステーションはコールアドミッション要求というクライアントステーションの要求を送信するといえる。そして、上記(3)の「ルートアクセスポイントとクライアントステーションとの間のパス上にある1つ又は複数のメッシュノードは、・・・コールアドミッション要求がルートアクセスに向けて中継されるときに、コールアドミッション要求を伴うデータにそれぞれのメッシュノードのバックホール無線に関する情報を含める。」との記載を合わせると、引用例1の複数のメッシュノードはクライアントステーションの要求を中継するといえる。また、上記(2)に「メッシュAPはまた、メッシュノードでもあるAPである。」の記載も考慮すると、複数のメッシュアクセスポイントはクライアントステーションの要求を中継するといえる。さらに、上記「ウ」で説示したように、複数のメッシュアクセスポイントは、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられているといえる。
以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントが隣接する複数のメッシュアクセスポイントと通信する無線メッシュネットワークであって、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントと、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接して屋外のポールトップに設けられ、ルートアクセスポイントとの間で5GHzのバックホール無線通信インタフェースによる通信を行い、2.4GHzの無線通信インタフェースによりクライアントステーションと通信する複数のメッシュアクセスポイントと、を含み、複数のメッシュアクセスポイントは、クライアントステーションの要求を中継するものであり、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられている、無線メッシュネットワーク。」
2.引用例2について
原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由で引用された特開2007-288267号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
(1)「【0016】図1に示すように、建設物10に隣接して、建設物10の高層部に対して作業を行うタワークレーン20が設置されている。タワークレーン20は、ベース22及びタワー23(マストとも呼ばれる。)により旋回台21が支えられており、旋回台21上に運転室24やブーム25が配置されている。」
(2)「【0046】また、本実施形態では、基地局30は、無線通信網と有線通信網との間の中継を行うものとしたが、基地局30を無線通信により外部と接続する無線通信間の中継を行う中継機器としてもよい。この場合、通信ケーブル40を敷設する必要がないので、容易に無線通信環境を構築することができる。また、無線中継を行う複数の基地局30をタワー23に設け、各基地局30間で電波の中継を行って、建設物10の上層部と地上との間の電波の中継を行うようにしてもよい。これにより、通信ケーブル40を用いなくても、確実に電波を中継することができる。」
(3)「【0051】また、本実施形態ではタワークレーン20は、建設物10から独立して設置されるものとしたが、建設物10の頂部に設置される形態としてもよい。この場合、例えば、通信ケーブル40は、タワー23に沿って建設物10の頂部まで配線し、建設物10の内部を通じて地上まで配線するようにすることができる。」
(4)「【図1】」
上記(1)の「タワークレーン20は、ベース22及びタワー23(マストとも呼ばれる。)により旋回台21が支えられており、旋回台21上に運転室24やブーム25が配置されている。」の記載及び上記(4)によれば、タワークレーンは、タワーを含む。
また、上記(2)の「無線中継を行う複数の基地局30をタワー23に設け」との記載によれば、タワーに無線中継を行う基地局が設けられる。
さらに、上記(3)の「タワークレーン20は、・・・建設物10の頂部に設置される」との記載によれば、タワークレーンは建設物の頂部に設置される。
以上を総合すると、引用例2には、「無線中継を行う基地局が設けられるタワーを含むタワークレーンは建造物の頂部に設置される」という技術的事項が記載されていると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)本願発明1の「高層建造物」と、引用発明の「建物」とは、「建造物」である点で共通する。また、引用発明の無線メッシュネットワークにおいては、メッシュアクセスポイントが中継を行うことによりネットワークの通信エリアを拡張するものであることは明らかであって、引用発明の「無線メッシュネットワーク」は、本願発明1の「拡張型ネットワーク」に含まれる。そして、引用発明の建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントは、隣接する複数のメッシュアクセスポイントと通信するのであるから、無線メッシュネットワークが建物の近隣に構築されるものであることは明らかである。してみれば、本願発明1の「高層建造物の近隣に構築される拡張型ネットワーク」と、引用発明の「建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントが隣接する複数のメッシュアクセスポイントと通信する無線メッシュネットワーク」とは、「建造物の近隣に構築される拡張型ネットワーク」である点で共通する。
(2)引用発明の「ルートアクセスポイント」は、ルートとなるアクセスポイントであって、上記(1)で説示したメッシュアクセスポイントによりなされる無線メッシュネットワークの拡張を補助するものであることは明らかであるから、本願発明1の「拡張補助アクセスポイント」に相当する。そうすると、本願発明1の「前記高層建造物の屋上付近に設けられ、前記地上側アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行う拡張補助アクセスポイント」と、引用発明の「建物の屋上に設けられるルートアクセスポイント」とは、「建造物の屋上付近に設けられる拡張補助アクセスポイント」である点で共通する。
(3)引用発明の「複数のメッシュアクセスポイント」は、上記(1)で説示したとおり、それぞれが無線メッシュネットワークを拡張するものであるから、本願発明1の「複数の拡張用アクセスポイント」に相当する。また、引用発明のポールトップは、屋外にあるから、複数のメッシュアクセスポイントも屋外に設けられていることも明らかである。そして、複数のメッシュアクセスポイントは、建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接しているから、建物の近隣に設けられていることも明らかである。そうすると、本願発明1の「複数の拡張用アクセスポイント」が、「前記高層建造物の近隣の屋外に設けられ」ることと、引用発明の「複数のメッシュアクセスポイント」が、「建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられ」ることとは、「複数の拡張用アクセスポイント」が、「建造物の近隣の屋外に設けられ」る点で共通する。
また、引用発明の「5GHzのバックホール無線通信インタフェース」が、5GHzの帯域の周波数の無線電波を送受信して通信することは明らかであり、また、バックホールの通信が基幹となる通信であることは技術常識であるから、引用発明の「ルートアクセスポイントとの間で5GHzのバックホール無線通信インタフェースによる通信を行い」との事項は、本願発明1の「前記拡張補助アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行い」との事項に相当する。さらに、引用発明の「2.4GHzの無線通信インタフェース」が、2.4GHzの帯域の周波数の無線電波を送受信して通信することも明らかであり、また、2.4GHzの帯域の周波数の無線電波は5GHzの帯域の周波数より低い帯域の無線電波であるから、引用発明の「2.4GHzの無線通信インタフェースによりクライアントステーションと通信する」ことは、本願発明1の「前記第1の帯域の周波数より周波数が低い第2の帯域の無線電波を送受信」することに相当する。
そして、引用発明の「複数のメッシュアクセスポイント」は、上記(1)で説示したように無線メッシュネットワークの通信エリアを拡張するものであるから、「建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられ、ルートアクセスポイントとの間で5GHzのバックホール無線通信インタフェースによる通信を行い、2.4GHzの無線通信インタフェースによりクライアントステーションと通信する」ことで通信エリアを拡張することは明らかである。
してみると、本願発明1の「前記高層建造物の近隣の屋外に設けられ、前記拡張補助アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行い、前記第1の帯域の周波数より周波数が低い第2の帯域の無線電波を送受信して通信エリアを拡張する複数の拡張用アクセスポイント」と、引用発明の「建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられ、ルートアクセスポイントとの間で5GHzのバックホール無線通信インタフェースによる通信を行い、2.4GHzの無線通信インタフェースによりクライアントステーションと通信する複数のメッシュアクセスポイント」とは、「建造物の近隣の屋外に設けられ、前記拡張補助アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行い、前記第1の帯域の周波数より周波数が低い第2の帯域の無線電波を送受信して通信エリアを拡張する複数の拡張用アクセスポイント」である点で共通する。
(4)引用発明において、「複数のメッシュアクセスポイント」は「クライアントステーションの要求を中継するもの」であるから、本願発明1の「複数の拡張用アクセスポイント」と同様に、「中継機器として機能し」ている。また、上記(3)で説示したように、引用発明の「複数のメッシュアクセスポイント」は、建物の近隣に設けられているから、本願発明1の「複数の拡張用アクセスポイント」は、「前記高層建造物の近隣の地上および建物の屋上に設置されていること」と、引用発明の「複数のメッシュアクセスポイント」は、「建物の屋上に設けられるルートアクセスポイントに隣接してポールトップに設けられている」ことは、「複数の拡張用アクセスポイント」は、「建造物の近隣に設置されていること」という点で共通する。
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「 建造物の近隣に構築される拡張型ネットワークであって、前記建造物の屋上付近に設けられ、基幹通信を行う拡張補助アクセスポイントと、前記建造物の近隣の屋外に設けられ、前記拡張補助アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行い、前記第1の帯域の周波数より周波数が低い第2の帯域の無線電波を送受信して通信エリアを拡張する複数の拡張用アクセスポイントと、を備え、前記複数の拡張用アクセスポイントは、中継機器として機能し、前記建造物の近隣に設置されていること、を特徴とする拡張型ネットワーク。」
(相違点1)
建造物につき、本願発明1は、「高層建造物」であるのに対し、引用発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1の拡張型ネットワークは、「前記高層建造物の地上側に設けられ、第1の帯域の無線電波による基幹通信を行う地上側アクセスポイント」を備え、拡張補助アクセスポイントは、「前記地上側アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行」い、「前記地上側アクセスポイントは、前記高層建造物の側面の周方向に間隔をおいた複数の箇所に設けられて」いるのに対し、引用発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。
(相違点3)
複数の拡張用アクセスポイントにつき、本願発明1では、「前記第2の帯域の無線電波を中継して無線通信エリアを拡張するものであり、前記高層建造物の近隣の地上および建物の屋上に設置されている」のに対し、引用発明では、当該発明特定事項が特定されていない点
事案に鑑み、上記相違点2について先に検討すると、上記相違点2のように拡張型ネットワークは、「前記高層建造物の地上側に設けられ、第1の帯域の無線電波による基幹通信を行う地上側アクセスポイント」を備え、拡張補助アクセスポイントは、「前記地上側アクセスポイントとの間で前記第1の帯域の無線電波による基幹通信を行」い、「前記地上側アクセスポイントは、前記高層建造物の側面の周方向に間隔をおいた複数の箇所に設けられて」いることは、引用例2に記載も示唆もされておらず、周知技術であるともいえない。
したがって、上記相違点1及び3を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
本願発明1は、上記「第6」の「1.」のとおり、当業者であっても、原査定において引用された引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 当審拒絶理由の判断
令和3年3月2日にされた手続補正により、拡張補助アクセスポイントについて、「前記高層建造物を大型アンテナとする」との事項はなくなったため、令和3年2月18日付けで通知した当審拒絶理由は解消された。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-007473