2020-007081
光学フィルム用転写体、光学フィルムの製造方法及び画像表示装置の製造方法
- 審判番号
- 2020-007081
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-171717外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年05月25日
- 審決日
- 2020年12月04日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続等の経緯
特願2015-171717号(以下「本件出願」という。)は、平成27年9月1日に出願したものであって、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 原査定の概要
本件出願の請求項1-5に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2005-84296号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2011/024683号(以下「引用文献2」という。)に記載された事項に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第3 本願発明
本件出願の請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和2年5月25日でされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項によって特定される、以下のものである。
「【請求項1】少なくとも支持体と、前記支持体上に膜厚50nm以上、200nm以下に形成された配向膜と、前記配向膜の配向規制力により規則的に配列しており透過光に位相差を付与する位相差層とを備え、少なくも前記位相差層が転写法により被転写体に転写される光学フィルム用転写体であって、前記支持体は、配向膜側面が、算術平均粗さRaが5nm以上20nm未満の平滑面であり、かつ、前記平滑面から前記配光膜側へ突出する凸部は、50nm以下の高さであり、続きを表示(全19行)前記配向膜とは逆側面が、アンチブロッキング面である光学フィルム用転写体。【請求項2】前記配向膜側面の平滑面は、フィラーが混入されていない樹脂材による平滑面である請求項1に記載の光学フィルム用転写体。【請求項3】前記支持体が、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルムの何れかである請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム。【請求項4】請求項1、請求項2、請求項3の何れかに記載の光学フィルム用転写体の前記位相差層を、転写法により転写して作製する光学フィルムの製造方法。【請求項5】請求項4に記載の光学フィルムの製造方法により作製された前記光学フィルムを画像表示パネルのパネル面に配置する画像表示装置の製造方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(1)「【請求項1】基材フィルム(1)上に、液晶ポリマーにより形成されている液晶層(2)を有する液晶フィルム(A)の当該液晶層(2)を、配向基材(3)に、前記液晶ポリマーのガラス転移点以上の温度で熱ラミネーションする工程、前記液晶ポリマーのガラス転移点以下に冷却してから、基材フィルム(1)を剥離して、前記配向基材(3)に液晶層(2)を転写する工程、前記液晶ポリマーのガラス転移点以上の温度に再加熱を行って、前記配向基材(3)上で液晶層(2)を配向して、液晶配向層(2′)にする工程、前記液晶ポリマーのガラス転移点以下の温度に冷却して、液晶配向層(2′)の配向を固定化する工程、を有することを特徴とする液晶配向フィルムの製造方法。」
(2)「【技術分野】【0001】本発明は、液晶ポリマーを用いた液晶配向フィルムの製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られた液晶配向フィルム、当該液晶配向フィルムを少なくとも1つ用いた光学フィルムに関する。本発明の液晶配向フィルムは位相差板として使用できる。また本発明の液晶配向フィルムは単独でまたは他のフィルムと組み合わせて、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム等の光学フィルムとして使用できる。さらに本発明は、上記光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置に関する。【背景技術】続きを表示(全12行)【0002】近年、光学分野および光エレクトロニクス分野などにおいては光の位相を制御する位相差板は重要な光学素子の一つとなっている。従来、位相差板は高分子フィルムを1軸延伸または2軸延伸することにより作製されている。しかし高分子フィルムを用いた位相差板では十分な光学特性を満足できない。また、位相差板としては、配向膜上に形成された液晶配向層が知られている。当該液晶配向層は、配向膜上に液晶モノマーを塗布、硬化させる方法や、液晶ポリマーを塗布、乾燥させる方法により得られる(特許文献1参照)。前記液晶層を、配向膜上に均一な厚みで形成するには、一般的には前記液晶材料をスピンコート法により塗布した後、配向させる方法が一般的に行なわれる。しかし、スピンコート法では、高価な液晶材料(塗布液)の通常90%以上が飛び散ってしまうため、液晶材料の材料歩留まりが悪く、コスト的に高価なものとなってしまう。【0003】位相差板としては、面内に異なる方向の遅相軸または進相軸を複数の領域で形成したものが求められる場合がある。しかしながら、高分子フィルムを延伸配向することにより得られる位相差板は、フィルム状であり、そのフィルム内の全ての領域で均一な遅相軸または進相軸を有するものとなる。したがって、高分子フィルムから得られ位相差板においては、面内に異なる方向の遅相軸または進相軸を複数の領域で形成することは非常に困難である。【0004】また、遅相軸方向または進相軸方向が異なる複数の位相差領域を有する位相差素子が提案されている(特許文献2参照)。当該位相差素子は、光により配向可能な高分子層を偏光で露光して配向させ、その高分子層に接するように液晶層を設けることにより液晶層内に配向軸方向が異なる領域をパターン形成している。しかし、この方法では、光により配向可能な高分子層の作製後に光が照射されると、高分子層の配向が変化して、目的の方向に液晶が配向しなくなるという問題がある。【0005】また、フォトレジストを用いてある領域を形成し、かつその領域ごとに異なる方向にラビング処理を施したポリイミド配向膜を用いて、当該配向膜上に液晶層を塗布などによって形成し、配向させた位相差素子が提案されている(特許文献3参照)。しかし、この方法では、液晶材料を溶剤に溶解した溶液を塗布する際に、溶剤により配向膜が変化する場合があり、目的の方向に液晶材料が配向しなくなるという問題がある。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明は、液晶ポリマーを液晶配向フィルムを歩留りよく製造する方法を提供することを目的とする。【0007】続きを表示(全30行)また本発明は、遅相軸方向または進相軸方向が異なる複数の位相差領域を有する液晶配向フィルムを歩留りよく製造する方法を提供することを目的とする。【0008】さらには、当該製造方法により得られる液晶配向フィルム、当該液晶配向フィルムを用いた光学フィルム、当該光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0009】本発明者らは上記目的を達成すべく、鋭意研究した結果、以下に示す液晶配向フィルムの製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。【0010】すなわち本発明は、基材フィルム(1)上に液晶ポリマーにより形成されている液晶(2)を有する液晶フィルム(A)の当該液晶層(2)を、配向基材(3)に、前記液晶ポリマーのガラス転移点以上の温度で熱ラミネーションする工程、前記液晶ポリマーのガラス転移点以下に冷却してから、基材フィルム(1)を剥離して、前記配向基材(3)に液晶層(2)を転写する工程、前記液晶ポリマーのガラス転移点以上の温度に再加熱を行って、前記配向基材(3)上で液晶層(2)を配向して、液晶配向層(2′)にする工程、前記液晶ポリマーのガラス転移点以下の温度に冷却して、液晶配向層(2′)の配向を固定化する工程、を有することを特徴とする液晶配向フィルムの製造方法。【0011】上記本発明の液晶配向フィルムの製造方法は、図1の概念図に示す通りであり、配向基材上に液晶材料をスピンコートなどの塗布によって液晶層を形成するのではなく、基材フィルム(1)上に予め設けられた液晶層(2)を、配向基材(3)に熱ラミネーションすることにより液晶層(2)を転写し、その後、液晶層(2)を再加熱して液晶配向層(2′)を形成している。このように、基材フィルム(1)に予め形成した液晶層(2)を、配向基材(3)上に転写しているため、スピンコート方式等の塗布法に比べて、液晶材料の歩留まりが非常に良い。また本発明の製造方法によれば、大型の配向基材(3)上に液晶配向層(2′)を形成することが可能である。さらには、本発明の製造方法では、基材フィルム(1)上への液晶層(2)を形成を、グラビアコート法やダイコート法などの塗工液の使用ロスの少ないコーティングを採用すれば、ロールtoロール方法により、配向基材(3)へ連続して熱ラミネーション可能であり、生産性の面でのコスト削減効果も大きい。【0012】また上記本発明の製造方法では、基材フィルム(1)に予め形成した液晶層(2)を、配向基材(3)上に転写しているために、配向基材(3)が溶剤により侵されない。そのため、配向基材(3)の性能が変化しない。配向基材(3)として、領域ごとに異なる方向にラビング処理を施したポリイミド配向膜を用いれば、目的の方向に液晶層を配向させることができ遅相軸方向または進相軸方向が異なる複数の位相差領域を有する液晶配向フィルム(位相差板)を作製することができる。【0013】前記液晶配向フィルムの製造方法において、前記液晶層(2)が、基材フィルム(1)上に液晶ポリマーを塗布、乾燥することより形成したものであることが好ましい。液晶層(2)の形成方法は特に制限されず、基材フィルム(1)に液晶モノマーを塗布、硬化させる方法や、液晶ポリマーを塗布、乾燥させる方法により得られるが、液晶層(2)は、液晶モノマーを塗布、硬化させる場合には再配向時に液晶性を示さないことがあることから、液晶ポリマーを塗布、乾燥させることにより形成するのが好ましい。【0014】前記液晶配向フィルムの製造方法において、前記基材フィルム(1)として配向基材を用い、液晶層(2)を形成する液晶ポリマーを配向して用いることができる。【0015】前記液晶配向フィルムの製造方法において、基材フィルム(1)が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。液晶層(2)を設ける基材フィルム(1)は、液晶層(2)を形成している液晶ポリマーのガラス転移点以上で熱ラミネーションを行うことから耐熱性に優れていることが好ましい。また、コスト面を考慮すると二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが最も適している。【0016】液晶配向フィルムの製造方法において、液晶層(2)を形成する側の、基材フィルム(1)表面の中心線平均粗さ(Ra)が20nm以下であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)が、20nmよりも大きい基材フィルム(1)を使用した場合には、熱ラミネーション後の液晶層(2)の再加熱により、得られる液晶配向層(2′)表面に、はじきなどの外観欠点が生じやすいために好ましくない。中心線平均粗さ(Ra)は、17nm以下であるのがより好ましい。【0017】なお、中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B0601に準じ、触針式表面粗さ測定機として株式会社東京精密製のサーフコム470Aを用いて測定した。なお、測定はダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定することにより行い、それを記録した表面粗さ曲線から算出した。」
(4)「【発明を実施するための最良の形態】【0024】本発明の液晶配向フィルムの製造方法では、基材フィルム(1)上に液晶ポリマーにより形成されている液晶層(2)を有する液晶フィルム(A)が用いられる。【0025】続きを表示(全45行)前記液晶層(2)は、たとえば、基材フィルム(1)上に液晶ポリマーを、塗布し、乾燥することにより形成することができる。当該液晶ポリマーは、ネマチック性、コレステリック性またはスメクチック性示す主鎖型、側鎖型またはこれらの複合型の各種骨格のポリマーを特に制限なく使用できる。液晶ポリマーとしては、液晶状態でネマチック配向し、液晶転移点以下ではガラス状態となる液晶ポリマーが好ましい。また、前記液晶ポリマーは前記基材フィルム(1)に液晶層(2)を形成可能であり、また配向基材(3)に転写可能であり、さらにはその後配向可能であるものが好ましい。…(省略)…【0039】また基材フィルム(1)は配向基材とすることができる。配向基材としては、従来より知られている各種のものを使用できる。たとえば、前記透明基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄層の配向膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの、透明基材を延伸処理した延伸フィルム、シンナメート骨格やアゾベンゼン骨格を有するポリマーまたはポリイミドに偏光紫外線を照射したもの等を用いることができる。基材フィルム(1)を配向基材とする場合には、透明基材を延伸処理した延伸フィルムを用いるのが好ましい。特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。…(省略)…【0043】液晶層(2)を配向させる場合には、液晶ポリマーまたは液晶モノマーが液晶状態を示す温度において、熱処理により行う。当該熱処理温度は、液晶ポリマーまたは液晶モノマーにより適宜に調整する。熱処理方法としては、上記の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。また熱処理時間は、熱処理温度および前記液晶ポリマーまたは液晶モノマーにより異なるため一概には言えないが、通常10秒~2時間、好ましくは20秒~30分の範囲で選択される。…(省略)…【0046】上記のようにして、基材フィルム(1)上に液晶層(2)を設けた液晶フィルム(A)を調製する。次いで当該液晶フィルム(A)は、その液晶層(2)を、配向基材(3)に、熱ラミネーションする。…(省略)…【0049】次いで、前記液晶ポリマーのガラス転移点以下に冷却してから、基材フィルム(1)を剥離する。冷却は、ガラス転移点よりも、-10~-150℃程度、さらに-40~-80℃になるまで行なうのが好ましい。冷却は、ガラス転移点以下の雰囲気下に放置することにより行なうことができる。また空冷、水冷等の強制冷却をすうこともできる。基材フィルム(1)の剥離によって、配向基材(3)に液晶層(2)が転写される。【0050】次いで、前記液晶ポリマーのガラス転移点以上の温度に再加熱を行って、前記配向基材上(3)で液晶層(2)を配向させ、液晶配向層(2′) にする。…(省略)…【0052】次いで、前記液晶ポリマーのガラス転移点以下の温度に冷却して、液晶配向層(2′)の配向を固定化する。ネマチック液晶ポリマーの場合には、ネマチック構造が固定化される。こうして、配向基材(3)に、配向が固定された液晶配向層(2′)を有する液晶配向フィルムが得られる。【0053】前記液晶配向フィルムは、前記配向基材(3)とともに用いることができ、また配向基材(3)から剥離して、光学フィルムとして用いることができる。さらには別の光学フィルムに転写して用いることもできる。前記液晶配向フィルムは単独でまたは他のフィルムと組み合わせて、位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム等の光学フィルムとして使用できる。以下これらについて説明する。…(省略)…【実施例】【0102】以下、本発明を実施例等をあげれ説明する。(当合議体注:「本発明を実施例等をあげれ説明する」は、「本発明を実施例等をあげて説明する」の誤記である。)…(省略)…【0105】実施例1中心線平均粗さ(Ra)が15nmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、上記化4の液晶ポリマーをシクロペンタノンに溶解し濃度15重量%に調整した溶液をワイヤーバーにより塗布、150℃で4分間乾燥して、厚さ1.1μmの液晶層を形成した液晶フィルムを作製した。【0106】一方、ガラス基板上にフォトマスクを利用して、図2に示すように交互に帯状の微細加工を施したポリイミド配向膜を形成した。ポリイミド配向膜は、交互の隣接帯の配向方向が45°となるように形成した。【0107】上記配向膜上に、液晶フィルムの液晶層側を、150℃の温度で、60秒間、熱ラミネーションした。この際、PETフィルムの配向方向と配向膜の2つの配向方向とのなす角度が図3において、θ1=0°、θ2=45°になるように貼り合わせた。その後、室温(23℃)まで冷却した後、PETフィルムを180°ピールしながら剥離し、液晶層をガラス基板上の配向膜に転写した。【0108】次いで、155℃に加熱したステージ付きの偏光顕微鏡(偏光子、検光子はクロスニコル) に、液晶層付きガラス基板の配向方向1(図3の(3a1)) が偏光軸と平行になるように設置し、液晶層を配向し、液晶配向層とした。その後、顕微鏡の視野内が消光するまでの時間を計測して再配向時間1とした。同様にして配向方向2(図3の(3a2))についても再配向時間2を計測した。【0109】上記再加熱による再配向後に、室温(23℃)まで冷却して、液晶配向層のネマチック構造を固定化した。その後、偏光顕微鏡を用いて、再配向したガラス基板上の液晶配向層表面のはじき状態を目視観察した。○ : ハジキなし、良好。× : ハジキあり。結果を表1に示す。…(省略)…【0111】【表1】表1より基材フィルム(PETフィルム)の表面粗さが20nmの場合には、得られう液晶配向層のはじき状態が良いことが分かる。また、基材フィルム(PET)の配向方向と、配向膜の配向方向が平行に近いほど再配向時間が短く、またはじき状態も良いことが分かる。実施例、参考例ともに、液晶層の配向工程において、問題は生じず液晶層を歩留りよく配向することができた。」
(5) 図1
「」
2.引用発明
引用文献1の【0010】~【0016】(特に、【0011】、【0014】)には、同文献において「本発明」とされる、「液晶配向フィルムの製造方法」の発明が記載されている。また、【0024】には、当該製造方法において用いられる、「基材フィルム(1)上に液晶ポリマーによって形成されている液晶層(2)を有する液晶フィルム(A)」が記載されている。
さらに、【0039】には、「基材フィルム(1)」を、「配向基材」とする場合の具体例として、「透明基材上に」「配向膜」を形成したものが明記されている。
くわえて、【0053】には、上記「液晶配向フィルム」の用途が記載されている。
以上総合すると、引用文献1には、次の「液晶フィルム(A)」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「液晶配向フィルムの製造方法に用いられる、基材フィルム(1)上に液晶ポリマーにより形成されている液晶層(2)を有する液晶フィルム(A)であって、基材フィルム(1)として配向基材を用い、液晶層(2)を形成する液晶ポリマーを配向して用いることができ、前記配向基材としては、透明基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄層の配向膜を形成してそれをラビングする方法により形成したものを用いることができ、前記液晶配向フィルムの製造方法は、基材フィルム(1)上に予め設けられた液晶層(2)を、配向基材(3)に熱ラミネーションすることにより液晶層(2)を転写し、その後、液晶層(2)を再加熱して液晶配向層(2′)を形成するものであり、液晶配向フィルムは、配向基材(3)とともに用いることができ、また配向基材(3)から剥離して、光学フィルムとして用いることができる、液晶フィルム(A)。」
3.引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用文献2の技術的事項の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(1)「技術分野[0001] 本発明は、光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関するものである。」
(2)「背景技術[0002] 一般に、液晶表示装置には、視野角特性等の光学特性を改善するために、光学補償性能を有する光学フィルムが使用されている。このような光学補償フィルムとしては、液晶化合物を含有し、その液晶化合物が配向された光学異方性層を備えた光学補償フィルムが知られている。[0003] 一方、透明性フィルム基材上に光学異方性層を備える光学補償フィルムには、光学異方性層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設けることが好ましい。この場合、バックコート層は、好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、そのため、バックコート層形成用塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるための微粒子を添加することが行なわれている。」
(3)「発明を実施するための形態[0021] つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。(光学補償フィルム)本発明による光学補償フィルムは、セルロースエステル系樹脂透明性フィルム基材の片面に、配向された液晶化合物を含む光学異方性層が設けられ、同透明性フィルム基材の他面に、セルロースエステル系樹脂バインダーと微粒子とを含有するバックコート層が設けられている光学補償フィルムであって、バックコート層に含まれる微粒子の粒径が1μm以下であり、バックコート層基層表面の微粒子の存在しない領域の中心線平均粗さ(Ra)が、2~10nmの範囲であることを特徴としている。続きを表示(全11行)…(省略)…[0084] また、活性線硬化樹脂が、活性線硬化性化合物を硬化させて得られるものであることが好ましい。そして、その活性線硬化性化合物としては、ウレタンアクリレートオリゴマー及びアクリレートオリゴマーの少なくともいずれか一方であることがより好ましい。(バックコート層)本発明では、セルロースエステル系樹脂透明性フィルム基材の光学異方性層を設けた側の面と反対側の面にはバックコート層が設けられている。[0085] ここで、バックコート層は、ブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層形成用塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されている。…(省略)…[0107] バックコート層は、具体的には、微粒子、バインダー、およびセルロースエステル系樹脂透明性フィルム基材を溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒、およびフィルム基材を溶解させない溶媒を含むバックコート層形成用塗布組成物を、セルロースエステル系樹脂透明性フィルム基材の表面上に、塗布することによって行なわれる。」
4.引用文献2に記載された技術的事項
上記3(1)~(3)(特に、[0021]、[0084]、[0085])によれば、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(1)配向された液晶化合物を含む光学異方性層が設けられた光学補償フィルム。
(2)透明性フィルム基材上に光学異方性層を備える光学補償フィルムにおいて、光学異方性層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設け、バックコート層は、ブロッキング防止層を兼ねて塗設されている。
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のとおりとなる。
ア 支持体
引用発明の「液晶フィルム(A)」は、「基材フィルム(1)上に液晶ポリマーにより形成されている液晶層(2)を有する」。また、上記「基材フィルム(1)」は、「透明基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄層の配向膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの」である。
上記積層構造から、引用発明の「透明基材」は、「薄層の配向膜」及び「液晶層(2)」を支持しているといえる。
そうしてみると、引用発明の「透明基材」は、本願発明1の「支持体」に相当する。
イ 配向膜
引用発明の「基材フィルム(1)」は、「透明基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄層の配向膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの」である。また、引用発明の「基材フィルム(1)」は、「液晶層(2)を形成する液晶ポリマーを配向して用いることができ」る。ここで、「液晶層(2)を形成する液晶ポリマーの配向」が、「配向膜」の機能(配向膜の配向規制力の機能)によるものであることは技術常識である。
以上の点及び上記アによれば、引用発明の「配向膜」は、本願発明1の「配向膜」に相当し、「支持体上に」「形成された」という点において共通する。
ウ 位相差層
引用発明の「液晶層(2)」は、上記イで述べたとおり、「配向膜」により配向されるものであり、配向膜の配向規制力により規則的に配列しているといえる。
そうしてみると、引用発明の「液晶層(2)」と、本願発明1の「位相差層」とは、「配向膜の配向規制力により規則的に配列して」いる「層」である点で、共通する。
エ 転写法、被転写体
引用発明の「基材フィルム(1)上に予め設けられた液晶層(2)を、配向基材(3)に熱ラミネーションすることにより液晶層(2)を転写」する工程は、技術的にみて、「転写法」に該当する。
また、引用発明の「液晶フィルム(A)」における「液晶層(2)」は、「配向基材(3)に熱ラミネーションすることにより液晶層(2)を転写し、その後、液晶層(2)を再加熱して液晶配向層(2′)を形成するものであ」る。この場合、「液晶層(2)」の「転写」先、すなわち、被転写体は、「配向基材(3)」である。
そうしてみると、引用発明の「配向基板(3)」は、その役割からみて、本願発明1の「被転写体」に相当する。
オ 光学フィルム用転写体
引用発明の「液晶フィルム(A)」は、「液晶配向フィルムの製造方法に用いられる」ものであり、この「液晶配向フィルムは、配向基材(3)とともに用いることができ、また配向基材(3)から剥離して、光学フィルムとして用いることができる」。
そうすると、引用発明の「液晶フィルム(A)」は、その用途と使用方法(上記エ参照。)からみて、本願発明1の「光学フィルム用転写体」に相当する。
また、引用発明の「液晶フィルム(A)」は、「基材フィルム(1)上に液晶ポリマーにより形成されている液晶層(2)を有する」。ここで、「基材フィルム(1)」は、「透明基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄層の配向膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの」であり、「液晶層(2)」は、「配向基材(3)に熱ラミネーションすることにより液晶層(2)を転写し、その後、液晶層(2)を再加熱して液晶配向層(2′)を形成するものであ」る。
以上の点及び上記ア~エの対比結果から、引用発明の「液晶フィルム(A)」と、本願発明1の「光学フィルム用転写体」とは、「少なくとも支持体と、前記支持体上に形成された配向膜と、前記配向膜の配向規制力により規則的に配列している層とを備え、少なくも前記層が転写法により被転写体に転写される」という点において共通するといえる。
以上ア~オによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「少なくとも支持体と、前記支持体上に形成された配向膜と、前記配向膜の配向規制力により規則的に配列している層とを備え、少なくも前記層が転写法により被転写体に転写される光学フィルム用転写体。」
(相違点)
(相違点1)「配向膜」が、本願発明1では、「膜厚50nm以上、200nm以下に形成された」ものであるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。
(相違点2)「配向膜の配向規制力により規則的に配列して」いる「層」が、本願発明1では、「透過光に位相差を付与する位相差層」であるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。
(相違点3)「支持体」が、本願発明1は、「配向膜側面が、算術平均粗さRaが5nm以上20nm未満の平滑面であり、かつ、前記平滑面から前記配光膜側へ突出する凸部は、50nm以下の高さであり、前記配向膜とは逆側面が、アンチブロッキング面である」のに対して、引用発明では、このように特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
ア 相違点3に係る構成の想到容易性について
引用文献1の【0016】には、「液晶配向フィルムの製造方法において、液晶層(2)を形成する側の、基材フィルム(1)表面の中心線平均粗さ(Ra)が20nm以下であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)が、20nmよりも大きい基材フィルム(1)を使用した場合には、熱ラミネーション後の液晶層(2)の再加熱により、得られる液晶配向層(2′)表面に、はじきなどの外観欠点が生じやすいために好ましくない。」という技術的事項が記載されている。
しかしながら、引用発明の「基材フィルム(1)」は、「透明基板上に」「薄層の配向膜」が形成されたものであるから、仮に上記技術的事項を引用発明に適用しても、配向膜の表面の中心線平均粗さ(Ra)が20nm以下である構成に到るにすぎず、相違点3に係る本願発明1の構成のうち、「支持体は、配向膜側面が、算術平均粗さRaが5nm以上20nm未満の平滑面であり、かつ、前記平滑面から前記配光膜側へ突出する凸部は、50nm以下の高さであり」との構成には到らない。
また、引用文献2に記載された技術的事項は、光学補償フィルムにおいて、光学異方性層を設けた側と反対側の面(本願発明1の「支持体」の「配向膜とは逆側面」)にバックコート層を設け、バックコート層は、ブロッキング防止層を兼ねて塗設させる」という構成にとどまり、他に、支持体の配向膜側面が、算術平均粗さRaが5nm以上20nm未満の平滑面であり、かつ、平滑面から配光膜側へ突出する凸部は、50nm以下の高さとすることを開示する証拠もない。
さらにすすんで検討する。
引用発明の「液晶層(2)」は、その配向が最終的に固定されるのは、「配向基材(3)に熱ラミネーションすることにより液晶層(2)を転写し、その後、液晶層(2)を再加熱して液晶配向層(2’)を形成する」段階である。仮に、位相差板等の光学フィルムにおける光学的機能(位相差ムラ等)の信頼性向上に関心を寄せる当業者であれば、所定の算術平均粗さRaとする対象は、「配向基材(3)」であっても、「透明基板」ではないと考えられる。
以上によれば、相違点3に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
イ 相違点3に係る構成による効果について
本願発明1は、本願の明細書の段落【0011】の「配向膜とは逆側面がアンチブロッキング面であることにより、ブロッキングを防止して生産性を向上することができる。また配向膜側面が算術平均粗さRaが5nm以上20nm未満の平滑面であることにより、はじきの起点となる凸部の発生を防止することができ、その結果、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減することができる。」、段落【0042】の「ここでこの凸部20にあっては、配向膜8の厚みより充分に小さい場合には、配向膜8の樹脂材料により覆い隠され、この場合、位相差層6においては、はじきが防止されて欠陥の発生が防止される。これにより少なくともこの配向膜8の厚みより凸部20の高さが小さくなるように、より好ましくは、配向膜8の厚みの1/2より凸部20の高さが小さくなるように作製して、欠陥の発生を具体的かつ確実に防止することができる。…中略…ここで光配向膜の配向膜8にあっては、膜厚50nm以上、200nm以下により作製されることにより、凸部20は、50nm以下の高さhとなるように、より好ましくは、2 5nm以下の高さhとなるように設定することが望まれる。」、【0044】の「ここでこのようなはじきによる欠陥を防止する観点からは、平滑面は、極力、算術平均粗さRaが小さいことが望ましい。しかしながら光学フィルム4は、転写法により位相差層6を配向膜8と一体に支持体17より剥離して作製することにより、支持体17からの剥離強度を適切に管理することが必要になる。」、段落【0045】の「このような剥離強度を適切な値に設定する観点より、さらには支持体のアンチブロッキング性を充分に確保する観点から、基材の平滑面は、上述したように、算術平均粗さRaの下限値が5nm 以上、より好ましくは10nm以上により作製される。」という有利な効果を奏するものであり、この効果は本件出願当時の技術常識から当業者が予測することができたものとまではいえない。
したがって、上記相違点1、2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献1及び2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2-5について、
本願発明2-5は、いずれも、本願発明1の「支持体は、配向膜側面が、算術平均粗さRaが5nm以上20nm未満の平滑面であり、かつ、平滑面から配光膜側へ突出する凸部は、50nm以下の高さであり、配向膜とは逆側面が、アンチブロッキング面である」という相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明並びに引用文献1及び2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むずび
以上のとおり、本願発明1-5は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献1及び2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する
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2020-007081