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特許拒絶査定不服審判

2020-006601

ケーブル及びハーネス

審判番号
2020-006601
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-027249外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年05月15日
審決日
2021年01月04日
公報発行日
2021年02月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2019- 27249「ケーブル及びハーネス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日出願公開,特開2019- 71307,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

理 由

第1 手続の経緯

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本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年(平成28年) 2月16日を出願日とする特願2016- 26720号(以下,「原出願」という。)の一部を,平成31年 2月19日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年11月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月31日  :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 2月 6日付け:拒絶査定
令和 2年 5月15日  :審判請求書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和 2年 2月 6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1-9に係る発明は,以下の引用文献1-6に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 国際公開第2015/090658号

引用文献2 特開2014-220043号公報

引用文献3 実願昭56-085311号(実開昭57-197109号)のマイクロフィルム

引用文献4 中西正恵,丹波雅子,単一織布および積層布の通気抵抗の繊維集合構造からの予測,日本家政学会誌,日本,1992年,Vol.43,No.12,p.1217-p.1222

引用文献5 特開2013-152789号公報

引用文献6 実願昭52-059637号(実開昭53-153489号)のマイクロフィルム

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正は,補正前の請求項1を,補正前の請求項2-5,7で限定するとともに,補正前の請求項3の内方突出部に関する記載を限定し,補正後の請求項1とする補正を含むものであるから,特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。

また,審判請求時の補正は,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえ,当該補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,令和 2年 5月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「  【請求項1】
導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁体とを備える複数の電線と,
前記複数の電線の周囲に設けられており前記複数の電線と接触する層状の介在層と,
前記介在層の外周を被覆するウレタン系樹脂からなる外皮と,
続きを表示(全15行)
を備え,
前記介在層は,ポリエステル,ポリプロピレン,アラミド繊維,ナイロン,アクリル繊維,またはガラス繊維からなる1枚の不織布テープ部材がその一部が重なり合うとともにその一部が重なり合わないで巻きつけられて構成されているとともに,
前記介在層は,前記複数の電線との間に空間を有し,厚さが0.03mm以上0.10mm以下であり通気性が30cc/cm2/sec以上である部分を長手方向に有し,
前記複数の電線は,複数の第1電線と,複数の絶縁電線が内部シースにより一括して被覆された多芯電線と,を含み,
前記複数の第1電線と前記多芯電線とは互いに撚り合わされており,
前記テープ部材は,前記複数の第1電線及び前記多芯電線の周囲に螺旋状に巻き付けられており,
前記複数の第1電線と前記多芯電線とが撚り合わされてなる集合体の撚り方向と,前記テープ部材の巻き付け方向とが同じ方向であり,
前記集合体の撚りピッチは,前記テープ部材の巻きピッチの±10%以内であり,
前記テープ部材と前記外皮は,最外層に配置され周方向に隣り合う2本の前記電線の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,前記隣り合う電線の間の谷間部分に入り込むように形成されており,ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部を有し,
前記内方突出部の突出長は,前記第1電線の外径の10%以上35%以下である,
ケーブル。」

なお,本願発明2-4は,概略,本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献,引用発明等

1 引用文献1について

(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:訳は,引用文献1の日本語のパテントファミリーである特表2016-533007号公報による。下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「
」(第11頁第10行-第12頁第23行)

(訳;【0032】

好適な改良形態において,分離用スリーブは合成不織布又はプラスチックフィルムであり,すなわち,特に,概してプラスチックから作られる分離フィルムである。粉体(powder)でできている分離フィルムとは対照的に,絶縁体が除去されるとき,分離フィルムは残留物なしに特に容易に除去され得,したがってリード線に嵌合のための準備を行うことが簡単になる。残留物なしの除去はさらに,後続の機能素子の一体成形において特に重要である。粉体分離層の場合,射出成形によるそれぞれのリード線の封入の前に,最初に,リード線を残りの粉体を取り除いてきれいにしなくてはならない。好ましい一改良形態において,部分リード線はしたがって分離手段なしに実現される,すなわちその外側に分離手段が設けられない,特に,粉状の又はペースト状の分離手段が設けられない。結果として,追加的なクリーニングが回避される。代わりに,分離フィルムが用いられる場合,前記フィルムが,特に,共通のシースと共に,引き剥がされ得,有利には残留物なしに除去され得る。概して,任意の連続的なフィルム材料又は層状材料,例えば,不織材料,紙材料,織物材料又はその組合せが分離用スリーブとして使用され得る。しかしながら,特に金属化されたプラスチック材料が特に好ましく,その理由は,前記プラスチック材料は同時に,特に,好適な切取挙動及び良好な安定性及び可撓性を有するからである。

【0033】

好適な一展開形態において,分離用スリーブ,特に分離フィルムが2つの部分リード線へ長手方向に延在して施される。分離フィルムにおけるそのような長手方向の延在は,特に好ましい切取挙動を有し,その結果今度は,複合ケーブルに嵌合のための準備を行うことが単純化される。長手方向に延在する方式で施すことは,例えば,テーピングに比べて加工速度が非常に速いため,そのような複合ケーブルは特に迅速に,すなわちまた対応して単位時間当たりより多くの個数が,製造され得る。

【0034】

分離用スリーブを取り付けるために,分離用スリーブは好ましくは,特定の長手方向シームの重複及び特定の幅を有する部分リード線束の周りに置かれる。長手方向のならしは好ましくはらせん状に実施される。本文脈において,分離用スリーブは好ましくは部分リード線を互いに撚る間に施され,対応してまた,長手方向シームがらせん形状の部分リード線の撚られた形状に従うように撚りが加えられる。このことは,特に,通常個別に実施され,したがって加工工学の点でより費用のかかるテーピングとは対照的に,長手方向シームが部分リード線に沿って長手方向延びることを意味する。好適な一代替形態において,分離用スリーブは部分リード線が組み合わされた後,複合ケーブルの共通のシースが施される前又は間まで,施されない。この場合,長手方向シームは複合ケーブルの長手方向に真っ直ぐに延びる。共通のシースが次いで施され,好ましくは押し出される。分離フィルムの間隙への挿入は,このとき,共通のシースが施されるときに接触圧力により好ましくは実施される。長手方向シームの重複はこのとき,特に共通のシースを施した後に残る長手方向シームの重複が可能な限り小さくなるように選択される。)

「
」(第14頁第15-19行)

(訳;【0040】

好ましい一改良形態において,電気リード線の組立体全体において,第1の部分リード線の導体が互いに撚られ,これらはその後第2の部分リード線の電力用導体と撚り合わされる。特に,複数の電力用導体の場合,複数の電力用導体は最初に互いに撚られ,最終的に第1の部分リード線が第2の部分リード線と撚り合わされる。)

「
」(第15頁第25行-第17頁第3行)

(【0046】

図1において,複合ケーブルとして実現される電気リード線2が示され,この電気リード線2は,2つの部分リード線4,6を含む。本文脈において,第1の部分リード線4は,ここでは,共通の部分リード線用シース10で囲まれる2つの信号用導体8を有する信号用リード線である。第2の部分リード線6は,対照的に,ここでは,電力用リード線として実現され,この点において,信号用導体8よりも大きな断面を有し共通の部分リード線用シースを有しない2つの電力用導体12を含む。導体8,12は各々,導線8a,12a及びそれぞれ導線8a,12aを囲む導体シース8b,12bを含む。特に,それぞれの導体シース8b,12bの分離を促すために,導体分離層13であって,ここではホットシール層として実現され,それぞれの導体シース8b,12bへ実質的に接合した形式で接続される導体分離層13が,前記導体シース8b,12bと関連する導線8a,12aとの間に配置される。

【0047】

第1の部分リード線4の部分リード線用シース10は,ここでは,2つの層を有して実現され,第1に内部シース部10aが2つの信号用導体8を囲み,かつ本文脈においてはまた,信号用導体8間に形成される間隙を満たす。この内部シース部10aはさらに円形外輪郭を有する。半径方向において,外部シース部10bは内部シース部10aに隣接し,前記外部シース部10bは,本明細書においては特に環状で実現される。本文脈において,外部シース部10bは,内部シース部10aよりも硬い材料から作られ,内部シース部10aへ実質的に接合した形式で接続される。

【0048】

本明細書において示される例示的な改良形態において,シース部10a,10bは両方とも熱可塑性ポリウレタンエラストマーから作られ,材料組成は外部シース部10bがより硬くなるように変えられる。内部及び外部シース部10a及び10b間の接合部は,図1においては,それぞれ破線により示されている。本文脈において,外部シース部10bが信号用リード線4の半径全体Rのおよそ半分にわたって延び,同時に特に,信号用導体8と電力用導体12との間のスペーサ要素としても機能することが明らかとなる。

【0049】

2つの部分リード線4,6は,図1及び2において太線として示される共通の分離用スリーブ14により囲まれる。この分離用スリーブ14は,プラスチックから作られ,部分リード線4,6の周囲を長手方向に延在する方式で案内され,かつ本文脈において,2つの部分リード線4,6により形成される間隙に存在する,分離フィルムである。部分リード線4,6と分離用スリーブ14との間の追加的な充填要素は,ここでは不要である。部分リード線4,6は両方とも最終的に,共通の分離用スリーブ14へ施される共通のシース16により組み合わせられる。本文脈において,特に共通のシース16及び部分リード線用シース10が同じ材料から製造され,それにも関わらず嵌合のための準備を行う間に互いに容易に分離することが,分離用スリーブ14により可能となる。共通のシース16はまた,円形外輪郭を有し,ここでは直径がおよそ10mmであり,この直径はまた電気リード線2の外径Dにも一致する。共通のシース16は,したがってリード線2の最外シースでもある。)

「
」

(2)ここで,引用文献1に記載されている事項を検討する。

ア 引用文献1の第15頁第25行-第16頁第3行及びFig.1(特表2016-533007号公報の段落0046及び図1,以下同様である。)の記載から,引用文献1の「電気リード線2」は,「部分リード線用シース10」で囲まれる2つの「信号用導体8」を有する「第1の部分リード線4」と,「導線12a」及び導線12aを囲む「導体シース12b」を含む,2つの「電力用導体12」を含む「第2の部分リード線6」を含んでいる。

また,「信号用導体8」は,「導線8a」及び導線8a囲む「導体シース8b」を含んでいることも記載されている。

イ 引用文献1の第16頁第23行-第17頁第3行及びFig.1(段落0049及び図1)の記載から,引用文献1の「第1の部分リード線4」及び「第2の部分リード線6」は,「分離用スリーブ14」により囲まれており,「分離用スリーブ14」の外周は,共通の「シース16」により被覆されていることは明らかである。

ここで,引用文献1の第16頁第14行-21行(段落0048)の「シース部10a,10bは両方とも熱可塑性ポリウレタンエラストマーから作られ」る旨の記載,及び,第16頁第23行-第17頁第3行(段落0049)の「特に共通のシース16及び部分リード線用シース10が同じ材料から製造され」る旨の記載を参照すると,引用文献1の共通の「シース16」は,「熱可塑性ポリウレタンエラストマー」から作られると認められる。

ウ 引用文献1の第11頁第10-28行(段落0032)には,「分離用スリーブ14」が「合成不織布又はプラスチックフィルム」から作られることが記載されている。

また,引用文献1の第12頁第6-23行(段落0034)には,「分離用スリーブは好ましくは,特定の長手方向シームの重複及び特定の幅を有する部分リード線束の周りに置かれ」,「長手方向シームがらせん形状の部分リード線の撚られた形状に従うように撚りが加えられる」ことも記載されている。

エ 引用文献1の第14頁第15-19行(段落0040)には,「第1の部分リード線が第2の部分リード線と撚り合わされる」ことが記載されている。

オ 引用文献1のFig.1を参酌すると,引用文献1において「分離用スリーブ14」と共通の「シース16」とは,最外層に配置され周方向に隣り合う「第1の部分リード線4」と「電力用導体12」の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,谷間部分に入り込むように形成されているものと認められる。

(3)上記(1),(2)より,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 部分リード線用シース10で囲まれる2つの信号用導体8を有する第1の部分リード線4と,導線12a及び導線12aを囲む導体シース12bを含む,2つの電力用導体12を含む第2の部分リード線6を含み,
信号用導体8は,導線8a及び導線8a囲む導体シース8bを含み,
第1の部分リード線4及び第2の部分リード線6は,分離用スリーブ14により囲まれており,分離用スリーブ14の外周は,共通のシース16により被覆されており,
共通のシース16は熱可塑性ポリウレタンエラストマーから作られ,
分離用スリーブ14が合成不織布又はプラスチックフィルムから作られ,
分離用スリーブ14は,特定の長手方向シームの重複及び特定の幅を有する部分リード線束の周りに置かれ,長手方向シームがらせん形状の部分リード線の撚られた形状に従うように撚りが加えられ,
第1の部分リード線4と第2の部分リード線6とが,撚り合わされ,
分離用スリーブ14と共通のシース16は,最外層に配置され周方向に隣り合う第1の部分リード線4と電力用導体12の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,谷間部分に入り込むように形成されている,
電気リード線2。」

2 その他の文献について

(1)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0025】
紙テープ2は,コア電線1の外周に螺旋状に巻き付けられ,コア電線1と後述する内部シース7との間に配置される。紙テープ2は,その厚さが0.02~0.06mmの範囲,好ましくは,0.03~0.05mmの範囲に含まれるものが用いられる。なお,材料としては紙テープに限られず,ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良い。また,巻き付け方としては,螺旋巻きに限られず,縦添えであっても良い。また,巻き方向としては,Z巻きでもS巻きでも良い。また巻き方向は,コア電線1の各コア部材4の撚り方向と反対の向きにしても良い。紙テープ2の巻き方向とコア部材4の撚り方向とを反対にすることにより,巻き付けられた紙テープ2の表面に凹凸が生じにくく,外径が安定し易い。」
「【0036】
(第2の実施形態)
次に,本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお,第1の実施形態と同一構成の部分には同一符号を付すことで説明を省略する。図3は,第2の実施形態に係る電気絶縁ケーブル30の断面を示している。本例の電気絶縁ケーブル30は,電動パーキングブレーキの電気信号を送信する用途に加えて,アンチロックブレーキシステム(Antilock Brake System:ABS)の動作を制御する電気信号を送信するのに用いることができる。
【0037】
図3に示すように,本例の電気絶縁ケーブル30は,コア電線1Aが,2本の第1のコア材4に加えて,ABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有する点で第1の実施形態と異なっている。
【0038】
サブユニット31は,第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成されている。2本の第2のコア材32の各々は,導体33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成されている。」
「【0041】
上記のように構成されたサブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されてコア電線1Aが形成される。このコア電線1Aに対して,外周に紙テープ2が巻き付けられ,さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成されて電気絶縁ケーブル30が形成される。」
「
」

(2)上記(1)の記載から,上記引用文献2には次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「電気絶縁ケーブル30は,コア電線1Aが,2本の第1のコア材4に加えて,ABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有し,
サブユニット31は,第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32が互いに撚り合されて形成されており,
サブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されてコア電線1Aが形成され,このコア電線1Aに対して,外周に紙テープ2が巻き付けられ,さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成されて電気絶縁ケーブル30が形成され,
紙テープ2は,コア電線1の外周に螺旋状に巻き付けられ,コア電線1と後述する内部シース7との間に配置され,
紙テープ2は,その厚さが0.02~0.06mmの範囲,好ましくは,0.03~0.05mmの範囲に含まれるものが用いられ,
材料としては紙テープに限られず,ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良く,
巻き付け方としては,螺旋巻きに限られず,縦添えであっても良く,
巻き方向としては,Z巻きでもS巻きでも良く,
巻き方向は,コア電線1の各コア部材4の撚り方向と反対の向きにしても良いこと。」

(3)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3の,第4頁第1-17行及び第2図には,「ケーブルコア4の複数本を撚り合わせた上にEPゴムを充実押し出し被覆して下シース5Aを形成し,この下シース5Aの上にテープ状のポリエステル不織布を横巻きしてなる通気性プラスチック繊維の2重巻き層9を形成したケーブルにおいて,通気性プラスチック繊維の2重巻き層9としては,通気量が50cc/cm2/秒以上の通気性を有し,厚さが0.25mm程度のポリエステル不織布が使用されること。」(以下,「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

(4)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4の,特にFig.4には,「織布や不織布の通気性は当該布の厚さに反比例すること。」(以下,「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

(5)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献5の,特に段落0007-0008には,「細径電線が複数本撚り合わされた集合コアの外周に,テープが螺旋状に巻付けられた多心ケーブルであって,上記のテープは,集合コアの撚り方向と同じ巻付け方向で,且つ,集合コアの撚りピッチと同じ巻付けピッチで巻付けられていること。」(以下,「引用文献5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

(6)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献6の,第5頁第6行-第6頁13行及び第2図には,「2本の線芯(1)の外周に,保護層(5)として,厚さ50μm程度の紙のテープを螺旋状にラップ巻きし,保護層(5)が,2本の線芯(1)の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,2本の線芯(1)の間の谷間部分に入り込むように形成されていること。」(以下,「引用文献6記載事項」という。)が記載されていると認められる。

第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明において,「部分リード線用シース10」及び「導体シース12b」が絶縁体であることは明らかであるから,引用発明の「第1の部分リード線4」及び「電力用導体12」が,本願発明1の「複数の電線」に相当する。

イ 引用発明における「第1の部分リード線4」は,「導線8a」及び導線8a囲む「導体シース8b」を含む2つの「信号用導体8」を有し,「信号用導体8」は「部分リード線用シース10」で囲まれている。

ここで,「導体シース8b」も絶縁体であることは明らかであるから,引用文献1の「2つの信号用導体8」,「部分リード線用シース10」,「第1の部分リード線4」が,それぞれ,本願発明1の「複数の絶縁電線」,「内部シース」,「多芯電線」に相当する。

また,引用発明における「第2の部分リード線6」は,「導線12a」及び導線12aを囲む「導体シース12b」を含む,2つの「電力用導体12」を含んでいるから,引用発明の,2つの「電力用導体12」が,本願発明1の,複数の「第1電線」に相当する。

ウ 引用発明の「分離用スリーブ14」は,「第1の部分リード線4」及び「第2の部分リード線6」を囲んでおり,特に引用文献1のFig.1を参照すると,「第1の部分リード線4」及び「電力用導体12」と接触することは明らかである。

また,引用発明において「分離用スリーブ14」は,「合成不織布又はプラスチックフィルム」であり,また引用文献1のFig.1を参照すると,「層状」の「テープ部材」であるといえる。

さらに,引用発明において「分離用スリーブ14」は,「特定の長手方向シームの重複及び特定の幅を有する部分リード線束の周りに置かれ」,「長手方向シームがらせん形状の部分リード線の撚られた形状に従うように撚りが加えられる」ことから,「その一部が重なり合うとともにその一部が重なり合わないで巻きつけられ」ていると認められる。

すると,引用発明の「分離用スリーブ14」は,本願発明1の「介在層」と,「前記複数の電線の周囲に設けられており前記複数の電線と接触する層状」であり,「合成不織布のテープ部材がその一部が重なり合うとともにその一部が重なり合わないで巻きつけられて構成されている」点で一致し,また,本願発明1の「テープ部材」と,「前記テープ部材は,前記複数の第1電線及び前記多芯電線の周囲に巻き付けられて」いる点で一致する。

エ 引用発明の「シース16」は,「熱可塑性ポリウレタンエラストマー」から作られ,「分離用スリーブ14」の外周を被覆しているから,本願発明1の「外皮」と,「介在層の外周を被覆するウレタン系樹脂からなる外皮」である点で一致する。

オ 引用発明において,「第1の部分リード線4」と「第2の部分リード線6」とが,撚り合わされており,ここで,「第2の部分リード線6」は「電力用導体12」を含んでいるから,「第1の部分リード線4」と「電力用導体12」とが,撚り合わされていることは明らかである。

すると,引用発明の「第1の部分リード線4と第2の部分リード線6とが,撚り合わされ」る点は,本願発明1の「前記複数の第1電線と前記多芯電線とは互いに撚り合わされて」いる点と一致する。

カ 引用発明における「分離用スリーブ14と共通のシース16は,最外層に配置され周方向に隣り合う第1の部分リード線4と電力用導体12の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,谷間部分に入り込むように形成されている」点は,本願発明1の「前記テープ部材と前記外皮は,最外層に配置され周方向に隣り合う2本の前記電線の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,前記隣り合う電線の間の谷間部分に入り込むように形成されており,ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部を有」する点で一致する。

キ 引用発明の「電気リード線2」が,本願発明1の「ケーブル」に対応する。

(2)一致点・相違点

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)

「 導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁体とを備える複数の電線と,
前記複数の電線の周囲に設けられており前記複数の電線と接触する層状の介在層と,
前記介在層の外周を被覆するウレタン系樹脂からなる外皮と,
を備え,
前記介在層は,合成不織布テープ部材がその一部が重なり合うとともにその一部が重なり合わないで巻きつけられて構成されているとともに,
前記複数の電線は,複数の第1電線と,複数の絶縁電線が内部シースにより一括して被覆された多芯電線と,を含み,
前記複数の第1電線と前記多芯電線とは互いに撚り合わされており,
前記テープ部材は,前記複数の第1電線及び前記多芯電線の周囲に巻き付けられており,
前記テープ部材と前記外皮は,最外層に配置され周方向に隣り合う2本の前記電線の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し,前記隣り合う電線の間の谷間部分に入り込むように形成されており,ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部を有する,
ケーブル。」

(相違点)

(相違点1)介在層の材料に関して,本願発明1は,「ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維からなる1枚の不織布テープ部材」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点2)介在層の通気性に関して,本願発明1は,「前記複数の電線との間に空間を有し,厚さが0.03mm以上0.10mm以下であり通気性が30cc/cm2/sec以上である部分を長手方向に有し」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点3)テープ部材に関して,本願発明1は,「前記複数の第1電線及び前記多芯電線の周囲に螺旋状に巻き付けられて」いると特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点4)本願発明1は,「前記複数の第1電線と前記多芯電線とが撚り合わされてなる集合体の撚り方向と,前記テープ部材の巻き付け方向とが同じ方向であり,前記集合体の撚りピッチは,前記テープ部材の巻きピッチの±10%以内であ」ると特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点5)本願発明1は,「前記内方突出部の突出長は,前記第1電線の外径の10%以上35%以下である」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(3)相違点についての判断

ア 相違点2について

事案に鑑み,上記相違点2について先に検討する。

引用文献2記載事項には,「コア電線1」の外周に螺旋状に巻き付けられ」る「紙テープ2」において,その厚さを「0.02~0.06mmの範囲,好ましくは,0.03~0.05mmの範囲」とすること,及び,「紙テープ2」について「ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良い」ことが記載されているが,「通気性」については何ら記載されていない。

引用文献3記載事項には,「通気性プラスチック繊維の2重巻き層9」として,「通気量が50cc/cm2/秒以上の通気性を有し,厚さが0.25mm程度のポリエステル不織布」が使用されることが記載されているが,「通気性プラスチック繊維の2重巻き層9」は,ケーブルコア4の複数本を撚り合わせた上にEPゴムを充実押し出し被覆して形成された「下シース5A」の上に形成されたものであり,複数の電線と接触するものではなく,引用発明の「分離用スリーブ14」に,引用文献3記載事項の「通気性プラスチック繊維の2重巻き層9」を適用する動機付けがあるとはいえない。

また,引用文献4-6記載事項にも,「前記複数の電線の周囲に設けられており前記複数の電線と接触する層状の介在層」として,「前記複数の電線との間に空間を有し,厚さが0.03mm以上0.10mm以下であり通気性が30cc/cm2/sec以上である部分を長手方向に有」する点は記載されておらず,また,この点が原出願の出願前に周知技術であったともいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2-6記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-4について

本願発明2-4は,概略,本願発明1を減縮した発明であり,相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-6記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について

1 理由1について

本願発明1-4は,上記「第6 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点2に係る構成を有するものとなっており,拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

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2020-006601

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