2020-005557
内燃機関の制御装置
- 審判番号
- 2020-005557
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-120986外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月24日
- 審決日
- 2021年01月04日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (F02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下、「本願」という。)は、平成30年6月26日の出願であって、その手続は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
この出願については、令和元年7月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等 1、3
・請求項 2、3
・引用文献等 1-3
<引用文献等一覧>
1.特開2010-285957号公報
2.特許第5379918号公報
3.特許第4335249号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和元年7月3日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】内燃機関の吸気管に吸入される空気量である機関吸気量を算出する機関吸気量算出部と、前記内燃機関のインテークマニホールド圧を測定するインテークマニホールド圧測定部と、前記内燃機関のエキゾーストマニホールド圧を算出するエキゾーストマニホールド圧算出部と、続きを表示(全16行)前記内燃機関の回転速度を測定する回転速度測定部と、前記内燃機関の吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態を可変制御する可変動弁制御部と、前記機関吸気量と前記内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸気量とを関連付ける体積効率補正係数を算出する体積効率補正係数算出部と、前記機関吸気量および前記体積効率補正係数に基づいて、前記吸気管から前記シリンダ内に吸入される空気量であるシリンダ吸気量を算出するシリンダ吸気量算出部とを備え、前記体積効率補正係数算出部は、前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比、前記回転速度、並びに、前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態に基づいて、前記体積効率補正係数を算出し、前記体積効率補正係数算出部は、前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の基準となる作動状態における前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップを保持し、前記基準となる作動状態と前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の最新の作動状態とのずれに基づいて、前記マップに記憶されている体積効率補正係数を補正する、内燃機関の制御装置。【請求項2】前記エキゾーストマニホールド圧算出部は、エキゾーストマニホールド圧と大気圧との圧力比である大気圧圧力比と、排気ガス流量との関係が予め記憶されたマップを保持し、該マップに基づいて前記エキゾーストマニホールド圧を算出する、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。【請求項3】前記内燃機関には過給機が搭載され、前記エキゾーストマニホールド圧算出部は、前記過給機のタービンの上流側の圧力であるタービン上流圧を算出して前記エキゾーストマニホールド圧とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。」
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2010-285957号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「エンジンの吸気制御装置」に関して、図面(特に図1及び2を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
ア「【0010】
しかし、体積効率は、排気圧力、雰囲気温度などにより変化するため吸気制御の精度が悪化してしまうという問題がある。」
イ「【0013】
そこで、本発明の目的は、前記課題を解決し、吸気制御の精度を向上させることができるエンジンの吸気制御装置を提供することにある。」
ウ「【0023】
図1に示すように、吸気制御装置1は、エンジン2の吸気管5に設けられたインテークスロットルバルブ4と、吸気管5にエンジン2の排気管3を連通させるためのEGR管6に設けられたEGRバルブ7とによりエンジン2の吸気制御を行い、その吸気制御における吸気酸素濃度あるいはEGR率を少なくともエンジン2の体積効率を基に決定すると共に、その体積効率を、エンジン2の運転状態ごとの体積効率が予め記憶された体積効率テーブルから読み取るようにしたものであり、EGR管6に設けられ該EGR管6を通るガスの流量を検出するEGR流量センサ8と、EGR流量センサ8の検出値に基づいて体積効率テーブルの体積効率を学習補正する学習補正手段をなすエンジン制御ユニット(以下、ECUという)9とを備える。
【0024】
より具体的には、エンジン2は、複数のシリンダ16を有するエンジン本体11と、そのエンジン本体11のシリンダ16に吸気を供給するための吸気管5と、シリンダ16からの排気ガスを排出するための排気管3と、その排気管3から排気ガスの一部を取り出して吸気管5に戻して還流する排気還流装置(EGR装置)12と、シリンダ16に供給される吸気(新気)を加圧、圧縮するためのターボチャージャ13と、エンジン2を制御するためのECU9とを備える。
【0025】
エンジン本体11は、各シリンダ16に燃料を噴射、供給するインジェクタ18を有する。それらインジェクタ18は、ECU9により燃料の噴射量や噴射時期が制御される。図例ではインジェクタ18に、コモンレール17内に貯留された高圧燃料が供給される。また、エンジン本体11にはクランクセンサ21とカムセンサ22とが設けられる。それらセンサ21、22はエンジン回転数を検出するための検出手段をなしており、センサ21(または22)の検出値がECU9に送信され、そのECU9が検出値を基にエンジン回転数を算出する。
【0026】
吸気管5には、上流側から順に、MAFセンサ(吸入空気量センサ)26と、インタークーラ27と、ターボチャージャ13のコンプレッサ28と、インテークスロットルバルブ4とが設けられる。
【0027】
MAFセンサ26は、吸気管5内を流れる吸気の流量(質量流量)を検出し、その検出値をECU9に送信する。インテークスロットルバルブ4は、吸気管5を通る吸気の流量を調整するためのものであり、その弁開度がECU9により連続的に制御される。
【0028】
吸気管5の下流端には、エンジン本体11の各シリンダ16に連通する吸気マニホールド29が設けられる。その吸気マニホールド29には吸気温度検出手段をなす温度センサ(以下、吸気温度センサという)31と吸気圧力検出手段をなす圧力センサ(以下、吸気圧力センサという)32とが設けられる。吸気温度センサ31が吸気マニホールド29内の温度(ガス温度)を検出し、吸気圧力センサ32が吸気マニホールド29内の圧力(ガス圧力)を検出し、それらセンサ31、32の検出値がECU9に送信される。」
エ「【0035】
詳しくは後述するが、ECU9は、エンジン2の運転状態が定常状態のときに、吸気温度センサ31と吸気圧力センサ32とMAFセンサ26とEGR流量センサ8との検出値を基に定常状態における体積効率を算出し、その算出した体積効率で体積効率テーブルの体積効率を補正する。
【0036】
また、ECU9は、エンジン2の運転状態を基に体積効率テーブルから体積効率を求め、その求めた体積効率を基に吸気酸素濃度(またはEGR濃度)を求め、目標とする吸気酸素濃度(またはEGR濃度)に、その算出された吸気酸素濃度(またはEGR濃度)を一致させるべくインテークスロットルバルブ4とEGRバルブ7とを制御(例えばフィードバック制御)する制御手段をなす。」
オ「【0039】
過渡時においては、吸排気を単なる容積とみなし、一次遅れで近似することにより表現する。シリンダ吸入ガス量はスピードデンシティ方式をベースとした状態方程式で記述され、あらかじめ実験的に得られる体積効率テーブルを初期値としてECU9に保存しておき、EGR流量センサ8の情報などから算出される体積効率で逐次学習する。」
カ「【0042】
シリンダ16の吸入ガス流量MCYLを式1で算出する。この式1は、ガソリンエンジンの制御で利用されている。
【0043】
【数1】
【0044】
体積効率ηVOLは、吸気圧力とエンジン回転数のテーブルデータとする。あるいは吸気と排気の圧力比でもよい。
【0045】
定常状態なのでEGRガス質量MEGRは、
【0046】
【数2】
」
キ「【0068】
図2に、エンジン2の定常運転時に計測したデータ(体積効率)の一例を示す。体積効率はエンジン回転数、吸気圧力に対して整理する。吸気圧力のかわりに吸気圧と排気圧の圧力比でもよい。図2の丸印が実験データである。」
ク「【0080】
ここで、単位時間当たりのシリンダ吸入ガス量は、エンジン回転数Ne、体積効率η、ガス定数Rとすると、以下の式12で表せる。体積効率ηは、前述した体積効率テーブルのデータである。
【0081】
【数12】
」
ケ「【0090】
3.体積効率テーブルの学習
体積効率ηVOL_Mを1気筒、1行程あたりの質量で計算する。前述の式1、式2を利用する。これら式1、式2から体積効率ηVOL_Mは以下の式16となる。
【0091】
【数16】
【0092】
ここで、吸気マニホールド29の温度TINM、吸気マニホールド29の圧力PINM、吸入空気量MAIR、EGR流量MEGRに各センサ8、26、31、32で計測された値を与えれば、体積効率ηVOL_Mが算出される。
【0093】
前述の「1.3 体積効率テーブルデータの作成」であらかじめ実験的に得られている体積効率をηVOLとすると、その誤差eVOLは以下の式17あるいは式18のようになる。
【0094】
【数17】
【0095】
あるいは、
【0096】
【数18】
【0097】
で示してもよい。
【0098】
所定の学習条件になったら、あらかじめ用意したECUメモリ42に誤差eVOLを保存する。誤差eVOLはECUメモリ42内に補正係数のテーブルとして記憶される。
【0099】
以下の表1にそのテーブルを示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示すように、補正係数eVOLの初期値は1.0である。テーブルは以下の式19の形態が考えられる。式19に示すように、補正係数eVOLのテーブルは、エンジン回転数Neと燃料噴射量QFINのテーブル、あるいは吸気マニホールド圧力PINMとのテーブルであり、排気圧力センサが利用できれば吸排気圧力比PINM/PEXMで参照してもよい。
【0102】
【数19】
【0103】
つまり、補正係数eVOLのテーブルのパラメータとしては、エンジン回転数Neと燃料噴射量QFINとの組み合わせ、あるいはエンジン回転数Neと吸気マニホールド圧力PINMとの組み合わせ、あるいはエンジン回転数Neと排吸排気圧力比PINM/PEXMとの組み合わせが考えられる。ECU9は、補正係数のテーブルから読み取った補正係数を基に式17あるいは式18により体積効率テーブルの体積効率を補正する。」
コ 上記ケの記載事項(特に段落【0101】ないし【0103】を参照。)からみて、引用文献1には、吸気圧力センサ32によって検出した吸気マニホールド圧力PINMだけでなく、排気圧力センサを用いてPEXMも用いて、吸排気圧力比PINM/PEXMを参照することにより、補正係数eVOLを求め、体積効率を補正することが記載されているといえる。したがって、引用文献1には排気圧力センサによって排気マニホールド圧力PEXMを検出することも記載されているといえる。
サ 上記ウないしケの記載事項からみて、引用文献1に記載のECU9は、前記エンジンのシリンダ16に吸入される空気量である吸入ガス流量MCYLの算出に用いる体積効率ηVOLを算出する部分と、前記体積効率ηVOLを用いて前記吸気管から前記シリンダ16内に吸入される空気量である吸入ガス流量MCYLを算出する部分とを有しているといえる。
上記アないしケの記載事項及びコないしサの認定事項並びに図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「エンジンの吸気管に吸入される吸入空気量MAIRを検出するMAFセンサ26と、前記エンジンの吸気マニホールド圧力PINMを検出する吸気圧力センサ32と、前記エンジンの排気マニホールド圧力PEXMを検出する排気圧力センサと、前記エンジンのエンジン回転数Neを検出するクランクセンサ21及びカムセンサ22と、ECU9において、前記エンジンのシリンダ16に吸入される空気量である吸入ガス流量MCYLの算出に用いる体積効率ηVOLを算出する部分と、ECU9において、前記体積効率ηVOLを用いて、前記吸気管から前記シリンダ16内に吸入される空気量である吸入ガス流量MCYLを算出する部分とを備え、前記ECU9において体積効率ηVOLを算出する部分は、前記吸気マニホールド圧力PINMと前記排気マニホールド圧力PEXMとの吸排気圧力比PINM/PEXM並びに前記エンジン回転数Neに基づいて、前記体積効率ηVOLを算出し、前記ECU9において体積効率ηVOLを算出する部分は、前記エンジン回転数Neおよび前記吸排気圧力比PINM/PEXMと前記体積効率ηVOLとの関係を記憶したテーブルを保持し、前記テーブルに記憶されている体積効率ηVOLを算出する、エンジンのECU9。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特許第5379918号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「内燃機関の制御装置」に関して、図面(特に図1、2、7、10ないし13を参照。)とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0024】
この発明による内燃機関の制御装置は、内燃機関の排気路に設けられたタービンと、上記内燃機関の吸気路に設けられたスロットルバルブの上流側に設けられ、上記タービンと一体に回転する圧縮機を有する過給機を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
上記スロットルバルブの下流に設けられるサージタンク及びインテークマニホールドを含む部分で構成されるインマニの内部圧力をインマニ圧として検出するインマニ圧検出手段と、上記インマニの内部吸気温度をインマニ温として検出するインマニ温検出手段と、
上記タービンを迂回するバイパス通路に設けられ、開度を変更して上記バイパス通路の流路断面積を変更するウェイストゲートバルブと、上記内燃機関の回転速度を検出する回転速度検出手段と、上記タービンの上流に設けられる排気路内の圧力を排気圧として算出する排気圧算出手段と、上記ウェイストゲートバルブの所定開度ないし所定開度指示値における上記インマニから上記内燃機関のシリンダに入る空気量を示す指標である補正前体積効率相当値を、上記インマニ圧と上記内燃機関の回転速度に基づいて算出する補正前体積効率相当値算出手段と、上記補正前体積効率相当値に対する排気圧である補正前体積効率相当値用排気圧を、上記インマニ圧と上記内燃機関の回転速度に基づいて算出する補正前体積効率相当値用排気圧算出手段と、を備え、
上記排気圧と上記補正前体積効率相当値用排気圧と上記インマニ圧から補正算出用パラメータを算出し、該補正算出用パラメータを用いて上記補正前体積効率相当値を補正することにより補正後体積効率相当値を算出し、上記補正後体積効率相当値に基づいて上記インマニから上記シリンダに入る空気量を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明による内燃機関の制御装置によれば、インマニ圧と内燃機関の回転速度に基づいて算出される補正前体積効率相当値に対して、排気圧と上記補正前体積効率相当値に対する排気圧とインマニ圧から補正算出用パラメータを算出し、該補正算出用パラメータを用いて上記補正前体積効率相当値を補正することにより、過給機を搭載する内燃機関においても排気圧の変化に関わらず運転状態に応じてシリンダ吸入空気量を精度良く算出できる。」
イ「【0047】
図17中の縦破線Cよりも排気ガス流量が少ない領域はW/Gバルブの開度にかかわらず排気ガスのタービンへの流入量が少なく排気圧÷大気圧は略同等である。縦破線Cよりも排気ガス流量が多い領域では、排気ガス流量が多くなるほど排気圧÷大気圧は高くなる傾向を示し、また、同一の排気ガス流量でもW/Gバルブの開度が開き側ほどバイパス通路へと分流する排気ガスの量が増える(タービンへの流入量が減る)ので排気圧÷大気圧は低くなる傾向を示す。そして、インマニ圧やエンジン回転数にかかわらず、排気ガス流量とW/Gバルブの開度に対して排気圧÷大気圧が一意である。よって、実機試験により対象エンジンの各運転領域で予め取得した排気圧÷大気圧を、排気ガス流量とW/Gバルブの開度ないし開度指示値を軸としたマップに格納等を行うことで、実際のエンジン制御においては排気ガス流量とW/Gバルブの開度ないし開度指示値から排気圧÷大気圧を算出し、排気圧÷大気圧に大気圧を乗じて排気圧を算出することができる。」
ウ「【0055】
図2は、実施の形態1における内燃機関100の制御部を示すブロック図である。スロットル開度センサ15で測定されたスロットルバルブ6の開度と、インマニ温センサ13で測定されたインマニ温と、インマニ圧センサ14で測定されたインマニ圧と、大気圧センサ23で測定された大気圧と、クランク角センサ19で測定されたクランク角検出用信号は、ECU200に入力される。また上記以外の各種センサ(例えば水温センサ24やアクセルポジションセンサ25等)からもECU200に測定値が入力される。
【0056】
ECU200では、詳細を後述するシリンダ吸入空気量算出手段30において、シリンダ吸入空気量が算出される。ここで算出されたシリンダ吸入空気量に基づいて、インジェクタ8、点火コイル16が駆動される。また、シリンダ吸入空気量と入力された各種データに基づきスロットル開度指示値、吸気VVT位相角指示値、W/Gバルブ開度指示値を算出し、これらを達成するようにスロットルバルブ6の開度、吸気VVT11の位相角、W/Gバルブ21の開度が制御される。その他の各種アクチュエータも必要に応じて制御される。また、ECU200は、後述する3行程前までのシリンダ吸入空気量Qと3行程前までの目標空燃比AFtを保存するためのメモリ領域を持つものとする。
【0057】
図3は、シリンダ吸入空気量算出手段30を示すブロック図である。シリンダ吸入空気量算出手段30は、補正前体積効率相当値Kv0の補正算出用パラメータηを算出するための手段として、排気ガス流量Qex(n)算出手段301と、排気圧P3(n)、P30(n)算出手段302と、補正算出用パラメータη(n)算出手段303を備えるとともに、補正前体積効率相当値Kv0を算出するための補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304と、補正前体積効率相当値Kv0を補正するための補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段305と、シリンダ吸入空気量Q(n)を算出するための吸入空気量Q(n)算出手段306と、を備えている。以下、図3及び後述の図を用いて、シリンダ吸入空気量算出手段30について説明する。
【0058】
まずシリンダ吸入空気量算出手段30のうち、図3の排気ガス流量Qex(n)算出手段301について説明する。 排気ガス流量Qex(n)算出手段301では、排気圧P3(n)の算出に必要な排ガス流量Qex(n)を算出する。図4に、排気ガス流量Qex(n)算出手段301のフローチャートを示す。 図4のステップS401にて、3行程前のシリンダ吸入空気量Q(n-3)と目標空燃比AFt(n-3)を取得する。3行程前のシリンダ吸入空気量Q(n-3)と目標空燃比AFt(n-3)に関しては、後述のとおり、吸入空気量Q(n)算出手段306を経てシリンダ吸入空気量Q、目標空燃比AFtを算出した後に3行程前までの値をECU200内のメモリに逐次保存するようにしている。そして、ステップS402にて、3行程前のシリンダ吸入空気量Q(n-3)と目標空燃比AFt(n-3)、及び(10)式から、排気ガス流量Qex(n)を算出する。なお、前述のとおり、3行程前の目標空燃比AFt(n-3)の代わりにO2センサ等から検出される実空燃比を用いてもよく、その場合は(10)式の目標空燃比AFt(n-3)を実空燃比AF(n)に置き換える形となり、後述のECU200内のメモリに目標空燃比AFtを逐次保存する処理は不要である。
【0059】
続いて、排気圧P3(n)、P30(n)算出手段302について説明する。 排気圧P3(n)、P30(n)算出手段302では、補正算出用パラメータη(n)の算出に必要な排気圧P3(n)、P30(n)を算出する。図5に排気圧P3、P30算出手段302のフローチャートを示す。 図5のステップS501にて、エンジン回転数Ne(n)、W/Gバルブ開度指示値D(n)、大気圧P1(n)、インマニ圧Pb(n)、吸気VVT位相角IVT(n)、排気ガス流量Qex(n)算出手段301にて算出した排ガス流量Qex(n)を取得する。次にステップS502~ステップS503にて排気圧P3(n)、ならびにステップS504~ステップS505にて排気圧P30(n)を算出する。
【0060】
まず、排気圧P3(n)については、ステップS502にて、排ガス流量Qex(n)とW/Gバルブ開度指示値D(n)、及び図6に示すマップ601を用いて{排気圧P3÷大気圧P1}(n)を算出する。なお、前述のとおり、実機試験により対象エンジンの排ガス流量QexとW/Gバルブ開度指示値D、及び排気圧P3÷大気圧P1の関係を予め図6のマップ601に格納しておく。マップ601は、排ガス流量QexとW/Gバルブ開度指示値Dを軸とし、排気圧P3÷大気圧P1の値が格納されている。ここで、排気圧ではなく排気圧÷大気圧としているのは、前述のとおり、高地での運転等で大気圧が平地よりも比較的低い状態でも精度よく排気圧を算出するためであり、ステップS503にて、ステップS502で算出した{排気圧P3÷大気圧P1}(n)とステップS501で取得した大気圧P1(n)とを乗じて排気圧P3(n)を算出する。なお、W/Gバルブ21またはW/Gバルブアクチュエータ22にW/Gバルブ21の実開度を検出するセンサが配設されている場合は、W/Gバルブ開度指示値の代わりにW/Gバルブ21の実開度を用いてもよい。
【0061】
次に、補正前体積効率相当値Kv0に対する排気圧P30(n)については、ステップS504にて、エンジン回転数Ne(n)、インマニ圧Pb(n)、吸気VVT位相角IVT(n)、及び図7に示すマップ701を用いて{排気圧P30÷大気圧P1}(n)を算出する。なお、実機試験により対象エンジン回転数Ne、インマニ圧Pb、吸気VVT位相角IVT、及び排気圧P30÷大気圧P1の関係を予め図7のマップ701に格納しておく。マップ701は、エンジン回転数Neとインマニ圧Pbを軸とし、補正前体積効率相当値Kv0に対する排気圧P30÷大気圧P1の値が格納されている。ここで、排気圧ではなく排気圧÷大気圧としているのは、マップ601と同様に、高地での運転等で大気圧が平地よりも比較的低い状態でも精度よく排気圧を算出するためでる。また、このマップ701は吸気VVT位相角IVTの作動範囲の代表点毎に持つものであり、吸気VVT位相角IVTが0~50度である場合は、例として吸気VVT位相角IVT=0、10、20、30、40、50度でそれぞれマップ701を持つ。なお、補正前体積効率相当値Kv0に対する排気圧P30とは、前述のとおり、後述する補正前体積効率相当値Kv0のマップ1101のマップ値を実機試験により取得する際に合わせて取得した排気圧である。そして、ステップS505にて、ステップS504で算出した{排気圧P30÷大気圧P1}(n)とステップS501で取得した大気圧P1(n)とを乗じて排気圧P30(n)を算出する。
【0062】
なお、本実施の形態では使用していない排気圧センサを備えたシステムである場合は、実際のエンジン制御においても排気圧センサから排気圧P3(n)を検出できるので、上記のうち、排気ガス流量Qex(n)算出手段301と、排気圧P3(n)、P30(n)算出手段302の内のステップS502~ステップS503とマップ601は不要である。
【0063】
続いて、補正算出用パラメータη(n)算出手段303について説明する。
補正算出用パラメータη(n)算出手段303では、補正前体積効率相当値Kv0(n)の補正に必要な補正算出用パラメータη(n)を算出する。図8に補正算出用パラメータη(n)算出手段303のフローチャートを示す。
図8のステップS801にて、インマニ圧Pb(n)、及び排気圧P3(n)、P30(n)算出手段302で算出した排気圧P3(n)とP30(n)を取得する。
【0064】
次に、ステップS802にてインマニ圧Pb(n)と排気圧P3(n)と図9に示すテーブル901を用いてバッファBF(n)を算出する。なお、バッファBF(n)とは前述の(8)式に示す補正算出用パラメータη(n)のうちの分子に当るものである。また、ステップS803ではインマニ圧Pb(n)と排気圧P30(n)とテーブル901を用いてバッファBF0(n)を算出する。なお、バッファBF0(n)とは前述の(8)式に示す補正算出用パラメータη(n)のうちの分母に当るものである。
【0065】
テーブル901は、図9に示すように、インマニ圧Pb÷排気圧P3またはインマニ圧Pb÷排気圧P30に対するバッファBFまたはBF0の値が格納される。なお、バッファBF、BF0は測定値ではなく、前述の(8)式に基づいた計算値であり、図9中の記号αでは、流体のチョークを考慮してインマニ圧Pb÷排気圧Px=0.528の時と同値を格納し、記号βではインマニ圧Pb÷排気圧Pxの変動に対する過度のバッファBF、BF0変動を防ぐためインマニ圧Pb÷排気圧Px=0.95の時と同値を格納している。ステップS802にてバッファBF(n)、ステップS803にてバッファBF0(n)を算出した後に、ステップS804にて前述の(8)式からバッファBF(n)、BF0(n)を用いて補正算出用パラメータη(n)を算出する。
【0066】
続いて、補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304について説明する。補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304では補正前体積効率相当値Kv0(n)を算出する。図10に補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304のフローチャートを示す。 ステップS1001にて、エンジン回転数Ne(n)、インマニ圧Pb(n)、吸気VVT位相角IVT(n)を取得する。次に、ステップS1002にて、エンジン回転数Ne(n)とインマニ圧Pb(n)と吸気VVT位相角IVT(n)と図11に示すマップ1101を用いて補正前体積効率相当値Kv0を算出する。なお、前述したように、実機試験により対象エンジンのエンジン回転数Neとインマニ圧Pbと吸気VVT位相角IVTと補正前体積効率相当値Kv0の関係を予め図11に示すマップ1101に格納しておく。マップ1101は、エンジン回転数Neとインマニ圧Pbを軸とし、補正前体積効率相当値Kv0の値が格納されている。また、このマップ1101は、吸気VVT位相角IVTの作動範囲の代表点毎に持つものであり、吸気VVT位相角IVTが0~50度である場合は、例として吸気VVT位相角IVT=0、10、20、30、40、50度でそれぞれマップ1101を持つ。
【0067】
続いて、補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段305について説明する。補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段305では補正算出用パラメータη(n)を用いて補正前体積効率相当値Kv0(n)を補正する。図12に補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段305のフローチャートを示す。 ステップS1201にて、補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304で算出した補正前体積効率相当値Kv0(n)と、補正算出用パラメータη(n)算出手段303で算出した補正算出用パラメータη(n)を取得する。次に、ステップS1202にて(9)式のとおり補正前体積効率相当値Kv0(n)と補正算出用パラメータη(n)を用いて補正後体積効率相当値Kv_newを算出する。
【0068】
最後に、シリンダ吸入空気量Q(n)算出手段について説明する。吸入空気量Q(n)算出手段306では、シリンダ吸入空気量Q(n)を算出する。図13に吸入空気量Q(n)算出手段306のフローチャートを示す。 ステップS1301にて、補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段305で算出した補正後体積効率相当値Kv_new(n)、エンジン回転数Ne(n)、インマニ圧Pb(n)、インマニ温Tb(n)を取得する。次に、ステップS1302にて(1)式によりエンジン回転数Ne(n)から所定クランク角周期T_SGT(n)を算出する。そして、ステップS1303にて(1)式により補正後体積効率相当値Kv_new(n)とインマニ圧Pb(n)とインマニ温Tb(n)と所定クランク角周期T_SGT(n)を用いてシリンダ吸入空気量Q(n)を算出する。前述のとおり、ここで算出されたシリンダ吸入空気量Q(n)ならびにECU200に入力された各種データに基づき、各種制御値が算出される。」
上記アないしウの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献2記載事項〕
「内燃機関の制御装置において、前記内燃機関のインマニの内部圧力であるインマニ圧Pb(n)を検出するインマニ圧センサ14と、前記内燃機関の排気路内の圧力を排気圧P3(n)として算出する排気圧P3(n)算出手段302と、補正前体積効率相当値Kv0(n)を算出する補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304及び補正後体積効率相当値Kv_new(n)を算出する補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段と、補正後体積効率相当値Kv_new(n)とエンジン回転数Ne(n)とインマニ圧Pb(n)とインマニ温Tb(n)とを用いて内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸入空気量W(n)を算出するシリンダ吸入空気量算出手段30と、を備え、前記排気圧P3(n)算出手段302は、排気圧P3(n)と大気圧P1との比である排気圧P3÷大気圧P1と、排気ガス流量Qexとの関係が予め記憶されたマップ601を保持し、該マップ601に基づいて排気圧P3(n)を算出すること。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特許第4335249号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「内燃機関の制御装置」に関して、図面(特に図1ないし3及び9を参照。)とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0023】
実シリンダ吸入空気流量算出手段21は、エンジン1のシリンダ2内に吸入される実シリンダ吸入空気流量Qcr(以下、「実シリンダ吸気量Qcr」と略称する)を算出する。
そのため、まず、実シリンダ吸入空気流量算出手段21は、エンジン1の回転速度Neとインマニ圧Pimとに基づいて、吸気管3からシリンダ2内に吸入される空気の体積効率相当値Kv(以下、「体積効率補正係数Kv」と称する)を算出する。
【0024】
続いて、実シリンダ吸入空気流量算出手段21は、体積効率補正係数Kvと、スロットルバルブ6の下流側からシリンダ2の入口までの吸気管容積Vsと、シリンダ2の行程容積Vcとに基づいて、吸気系の応答遅れモデルを算出する。
次に、実シリンダ吸入空気流量算出手段21は、エアフロセンサ4からの実機関吸気量Qarと、吸気系の応答遅れモデルとに基づいて実シリンダ吸気量Qcrを算出する。」
イ「【0039】
まず、エアフロセンサ4で測定される1行程間の実機関吸気量Qar(n)T(n)[g]が取り込まれ、メモリに記憶される(ステップS51)。
ここで、エアフロセンサ4が質量流量計である場合には、エアフロセンサ4の出力電圧を例えば1.25ms毎にサンプリングしながら積算し、1行程前(行程n-1)の割り込み処理から今回の割り込み処理までの間の積算値に基づいて、1行程間の実機関吸気量Qar(n)T(n)を算出することができる。
また、エアフロセンサ4が体積流量計である場合には、標準大気密度と、大気圧センサ13で測定される大気圧Poと、吸気温センサ5で測定される吸気温Toとに基づいて、体積を質量に変換することにより、1行程間の実機関吸気量Qar(n)T(n)を算出することができる。
【0040】
続いて、エンジン1の回転速度Neとインマニ圧Pimとに基づいて、行程nにおける体積効率補正係数Kv(n)が算出され、メモリに記憶される(ステップS52)。
ここで、回転速度Neおよびインマニ圧Pimと、体積効率補正係数Kvとの関係があらかじめエンジン1にて測定され、マップとしてメモリに記憶されている。
実シリンダ吸入空気流量算出手段21は、割り込み処理のタイミングで現行程(行程n)の回転速度Neおよびインマニ圧Pimを用いてマッピングすることにより、行程nにおける体積効率補正係数Kv(n)を算出することができる。
【0041】
次に、上記式(3)内の算出式に従って、フィルタ定数Kfが算出される(ステップS53)。
続いて、上記式(3)のフィルタ演算式(吸気系の応答遅れモデル)に従って、1行程間の実シリンダ吸気量Qcr(n)T(n)が算出され(ステップS54)、メモリに記憶される(ステップS55)。
ここで、ステップS54における1行程間の実シリンダ吸気量Qcr(n)T(n)の算出には、ステップS51~S53で得られた各値の他に、1行程前(行程n-1)の割り込み処理においてメモリに記憶された体積効率補正係数Kv(n-1)と、1行程間の実シリンダ吸気量Qcr(n-1)T(n-1)とが用いられる。
【0042】
このように、実シリンダ吸入空気流量算出手段21は、1行程間の実機関吸気量Qar(n)T(n)と、上記式(3)のフィルタ演算式で表される吸気系の応答遅れモデルとに基づいて、1行程間の実シリンダ吸気量Qcr(n)T(n)を算出する。
そのため、吸気系の物理モデルから導かれた単純な算出式を用いて、スロットルバルブ6近傍の1行程間の実機関吸気量Qar(n)T(n)から、エンジン1のシリンダ2内に吸入される1行程間の実シリンダ吸気量Qcr(n)T(n)を高精度に算出することができる。」
ウ「【0067】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置のエンジン制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
図9において、ECU12Aは、エンジン1の吸気バルブ(図示せず)および排気バルブ(図示せず)の少なくとも一方の作動状態を可変制御する可変動弁制御手段27をさらに含んでいる。また、ECU12Aは、図1に示した実シリンダ吸入空気流量算出手段21に代えて、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aを含んでいる。
【0068】
ここで、吸気バルブまたは排気バルブのリフト量や位相角等の作動状態毎に、回転速度Neおよびインマニ圧Pimと、体積効率補正係数Kvとの関係があらかじめエンジン1にて測定され、マップとしてメモリに記憶されている。
その他の構成については、上記実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0069】
以下、図9を参照しながら、この発明の実施の形態2に係る実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aの動作について説明する。
なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
まず、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、回転速度Neおよびインマニ圧Pimを用いて各マップをマッピングする。
続いて、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、最新の吸気バルブまたは排気バルブの作動状態に基づいて、マッピングした値を補間して体積効率補正係数Kvを算出する。
【0070】
この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置によれば、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、最新の吸気バルブまたは排気バルブの作動状態に基づいて、回転速度Neおよびインマニ圧Pimからマッピングされた値を補間して体積効率補正係数Kvを算出する。
そのため、吸気バルブおよび排気バルブの少なくとも一方の作動状態を可変制御する可変動弁制御手段27を有するエンジン1であっても、単純な演算で高精度に実シリンダ吸気量Qcrを算出することができる。
【0071】
なお、上記実施の形態2では、吸気バルブまたは排気バルブのリフト量や位相角等の作動状態毎に、回転速度Neおよびインマニ圧Pimと、体積効率補正係数Kvとの関係があらかじめマップとしてメモリに記憶されているとしたが、これに限定されない。
より簡単な方法として、吸気バルブまたは排気バルブの作動時と非作動時との2つのパターンについて、それぞれ回転速度Neおよびインマニ圧Pimと、体積効率補正係数Kvとの関係があらかじめマップとしてメモリに記憶されており、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aが、吸気バルブまたは排気バルブの作動時には、作動時用のマップを使用し、吸気バルブまたは排気バルブの非作動時には、非作動時用のマップを使用して体積効率補正係数Kvを算出してもよい。
この場合も、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0072】
また、基準となる吸気バルブまたは排気バルブの作動状態における体積効率補正係数が基準体積効率としてメモリに記憶されるとともに、上記の基準体積効率からのずれに応じた補正量がマップとしてメモリに記憶されており、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aが、最新の吸気バルブまたは排気バルブの作動状態に基づいて補正量をマッピングし、基準体積効率を補正して体積効率補正係数Kvを算出してもよい。
この場合も、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。」
上記アないしウの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項1」及び「引用文献3記載事項2」という。)が記載されている。
〔引用文献3記載事項1〕
「体積効率補正係数Kvに基づいて実シリンダ吸入空気流量Qcrを算出する内燃機関の制御装置において、当該体積効率補正係数Kv及び実機関吸気量Qar(n)T(n)に基づいて、実シリンダ吸入空気流量Qcrを算出すること。」
〔引用文献3記載事項2〕
「体積効率補正係数Kvを算出する実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aを備える内燃機関の制御装置において、内燃機関の吸気バルブおよび排気バルブの少なくとも一方の作動状態を可変制御する可変動弁制御手段27を備え、前記実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、インマニ圧Pim、内燃機関の回転速度Ne、並びに、前記吸気バルブおよび前記排気バルブの少なくとも一方の作動状態に基づいて、前記体積効率補正係数Kvを算出し、前記実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、基準となる前記吸気バルブまたは排気バルブの作動状態における体積効率補正係数を基準体積効率としてメモリに記憶するとともに吸気バルブまたは排気バルブの作動状態毎に回転速度Neおよびインマニ圧Pimと体積効率補正係数Kvとの関係をマップとしてメモリに記憶し、基準体積効率からのずれに応じた補正量をマップとしてメモリに記憶し、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aが、最新の吸気バルブまたは排気バルブの作動状態に基づいて補正量をマッピングし、基準体積効率を補正して体積効率補正係数Kvを算出すること。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「エンジン」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「吸気管」は「吸気管」に、「吸入空気量MAIR」は「機関吸気量」に、「吸入空気量MAIRを検出するMAFセンサ26」は「機関吸気量を算出する機関吸気量算出部」に、「吸気マニホールド圧力PINM」は「インテークマニホールド圧」に、「吸気マニホールド圧力PINMを検出する吸気圧力センサ32」は「インテークマニホールド圧を測定するインテークマニホールド圧測定部」に、「排気マニホールド圧力PEXM」は「エキゾーストマニホールド圧」に、「エンジン回転数Ne」は「回転速度」に、「エンジン回転数Neを検出するクランクセンサ21及びカムセンサ22」は「回転速度を測定する回転速度測定部」に、「シリンダ16」は「シリンダ」に、「吸入ガス流量MCYL」は「シリンダ吸気量」に、「体積効率ηVOL」は「体積効率補正係数」に、「吸排気圧力比PINM/PEXM」は「前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比」に、「前記エンジン回転数Neおよび前記吸排気圧力比吸排気圧力比PINM/PEXMと前記体積効率ηVOLとの関係を記憶したテーブル」は「前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップ」に、「ECU9」は「制御装置」に、それぞれ相当する。
引用発明の「排気マニホールド圧力PEXMを検出する排気圧力センサ」と本願発明1の「エキゾーストマニホールド圧を算出するエキゾーストマニホールド圧算出部」は、「エキゾーストマニホールド圧を取得するエキゾーストマニホールド圧算出部」という限りにおいて一致する。
引用発明の「ECU9において、前記エンジンのシリンダ16に吸入される空気量である吸入ガス流量MCYLの算出に用いる体積効率ηVOLを算出する部分」と本願発明1の「前記機関吸気量と前記内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸気量とを関連付ける体積効率補正係数を算出する体積効率補正係数算出部」とは、上記相当関係を踏まえると、「前記内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸気量と関連する体積効率補正係数を算出する体積効率補正係数算出部」という限りにおいて一致する。
引用発明の「ECU9において、前記体積効率ηVOLを用いて、前記吸気管から前記シリンダ16内に吸入される空気量である吸入ガス流量MCYLを算出する部分」と本願発明1の「前記機関吸気量および前記体積効率補正係数に基づいて、前記吸気管から前記シリンダ内に吸入される空気量であるシリンダ吸気量を算出するシリンダ吸気量算出部」とは、上記相当関係を踏まえると、「前記体積効率補正係数に基づいて、前記吸気管から前記シリンダ内に吸入される空気量であるシリンダ吸気量を算出するシリンダ吸気量算出部」という限りにおいて一致する。
引用発明の「前記ECU9において体積効率ηVOLを算出する部分は、前記吸気マニホールド圧力PINMと前記排気マニホールド圧力PEXMとの吸排気圧力比PINM/PEXM並びに前記エンジン回転数Neに基づいて、前記体積効率ηVOLを算出し、」と本願発明1の「前記体積効率補正係数算出部は、前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比、前記回転速度、並びに、前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態に基づいて、前記体積効率補正係数を算出し、」とは、上記相当関係を踏まえると、「前記体積効率補正係数算出部は、前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比並びに前記回転速度に基づいて、前記体積効率補正係数を算出し、」という限りにおいて一致する。
引用発明の「前記ECU9において体積効率ηVOLを算出する部分は、前記エンジン回転数Neおよび前記吸排気圧力比PINM/PEXMと前記体積効率ηVOLとの関係を記憶したテーブルを保持し、前記テーブルに記憶されている体積効率ηVOLを算出する、」と本願発明の「前記体積効率補正係数算出部は、前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の基準となる作動状態における前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップを保持し、前記基準となる作動状態と前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の最新の作動状態とのずれに基づいて、前記マップに記憶されている体積効率補正係数を補正する、」とは、上記相当関係を踏まえると、「前記体積効率補正係数算出部は、前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップを保持し、前記マップに記憶されている体積効率補正係数を算出する、」という限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。
〔一致点〕
「内燃機関の吸気管に吸入される空気量である機関吸気量を算出する機関吸気量算出部と、前記内燃機関のインテークマニホールド圧を測定するインテークマニホールド圧測定部と、前記内燃機関のエキゾーストマニホールド圧を取得するエキゾーストマニホールド圧算出部と、前記内燃機関の回転速度を測定する回転速度測定部と、前記内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸気量と関連する体積効率補正係数を算出する体積効率補正係数算出部と、前記体積効率補正係数に基づいて、前記吸気管から前記シリンダ内に吸入される空気量であるシリンダ吸気量を算出するシリンダ吸気量算出部とを備え、前記体積効率補正係数算出部は、前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比並びに前記回転速度に基づいて、前記体積効率補正係数を算出し、前記体積効率補正係数算出部は、前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップを保持し、前記マップに記憶されている体積効率補正係数を算出する、内燃機関の制御装置。」
〔相違点1〕
「エキゾーストマニホールド圧を取得するエキゾーストマニホールド圧算出部」に関して、本願発明1においてはエキゾーストマニホールド圧を「算出」するのに対して、引用発明においては排気圧力センサが排気マニホールド圧力PEXMを「検出」するものであって、「算出」して求めるのではない点。
〔相違点2〕
「体積効率補正係数算出部」及び「シリンダ吸気量算出部」に関して、
本願発明1においては、体積効率補正係数算出部が「前記機関吸気量と前記内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸気量とを関連付ける」体積効率補正係数を算出するものであり、シリンダ吸気量算出部が「前記機関吸気量および前記体積効率補正係数」に基づいてシリンダ吸気量を算出するものであり、かつ、前記体積効率補正係数算出部は、前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比並びに前記回転速度だけでなく、さらに、「前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態」に基づいて、前記体積効率補正係数を算出するものであって、「前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の基準となる作動状態における」前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップを保持し、「前記基準となる作動状態と前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の最新の作動状態とのずれに基づいて」前記マップに記憶されている体積効率補正係数を「補正」するのに対して、
引用発明においては、かかる構成を備えていない点。
相違点について検討する。
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記第4の2及び3で述べたとおり、
引用文献2記載事項は、
「内燃機関の制御装置において、前記内燃機関のインマニの内部圧力であるインマニ圧Pb(n)を検出するインマニ圧センサ14と、前記内燃機関の排気路内の圧力を排気圧P3(n)として算出する排気圧P3(n)算出手段302と、補正前体積効率相当値Kv0(n)を算出する補正前体積効率相当値Kv0(n)算出手段304及び補正後体積効率相当値Kv_new(n)を算出する補正後体積効率相当値Kv_new(n)算出手段と、補正後体積効率相当値Kv_new(n)とエンジン回転数Ne(n)とインマニ圧Pb(n)とインマニ温Tb(n)とを用いて内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸入空気量W(n)を算出するシリンダ吸入空気量算出手段30と、を備え、前記排気圧P3(n)算出手段302は、排気圧P3(n)と大気圧P1との比である排気圧P3÷大気圧P1と、排気ガス流量Qexとの関係が予め記憶されたマップ601を保持し、該マップ601に基づいて排気圧P3(n)を算出すること。」
というものであり、
引用文献3記載事項1は、
「体積効率補正係数Kvに基づいて実シリンダ吸入空気流量Qcrを算出する内燃機関の制御装置において、当該体積効率補正係数Kv及び実機関吸気量Qar(n)T(n)に基づいて、実シリンダ吸入空気流量Qcrを算出すること。」
というものであり、
引用文献3記載事項2は、
「体積効率補正係数Kvを算出する実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aを備える内燃機関の制御装置において、内燃機関の吸気バルブおよび排気バルブの少なくとも一方の作動状態を可変制御する可変動弁制御手段27を備え、前記実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、インマニ圧Pim、内燃機関の回転速度Ne、並びに、前記吸気バルブおよび前記排気バルブの少なくとも一方の作動状態に基づいて、前記体積効率補正係数Kvを算出し、前記実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aは、基準となる前記吸気バルブまたは排気バルブの作動状態における体積効率補正係数を基準体積効率としてメモリに記憶するとともに吸気バルブまたは排気バルブの作動状態毎に回転速度Neおよびインマニ圧Pimと体積効率補正係数Kvとの関係をマップとしてメモリに記憶し、基準体積効率からのずれに応じた補正量をマップとしてメモリに記憶し、実シリンダ吸入空気流量算出手段21Aが、最新の吸気バルブまたは排気バルブの作動状態に基づいて補正量をマッピングし、基準体積効率を補正して体積効率補正係数Kvを算出すること。」
というものである。
ここで、特に引用文献3記載事項2の「実シリンダ吸入空気流量算出手段21A」はその機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1の「体積効率補正係数算出部」に対応するものの、引用文献3記載事項2の「マップ」は「吸気バルブまたは排気バルブの作動状態毎に回転速度Neおよびインマニ圧Pimと体積効率補正係数Kvとの関係」を記憶したものであり、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項における「吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の基準となる作動状態における回転速度および圧力比と体積効率補正係数との関係を記憶したマップ」とは異なるものであり、記憶されるデータが異なっている以上、体積効率補正係数を算出するために必要なマップが引用文献3記載事項2と本願発明1とではその前提において異なるものである。
さらに、引用発明の「前記ECU9において体積効率ηVOLを算出する部分」が備える「前記エンジン回転数Neおよび前記吸排気圧力比PINM/PEXMと前記体積効率ηVOLとの関係を記憶したテーブル」と引用文献3記載事項2の「吸気バルブまたは排気バルブの作動状態毎に回転速度Neおよびインマニ圧Pimと体積効率補正係数Kvとの関係」を記憶した「マップ」とは、記憶されているデータが異なるため、引用発明の「テーブル」において引用文献3記載事項2の「マップ」に直ちに置換ないし適用することができるものでもない。また、引用発明はその「テーブル」によって「体積効率ηVOL」を算出することができるものであるから、引用発明の「テーブル」において引用文献3記載事項2の「マップ」に置換ないし適用しようとする動機も見当たらない。
そして、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2のいずれも、体積効率補正係数算出部が「インテークマニホールド圧とエキゾーストマニホールド圧との圧力比、回転速度、並びに、吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態」に基づいて、体積効率補正係数を算出し、「吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の基準となる作動状態における回転速度および圧力比と体積効率補正係数との関係を記憶したマップ」を保持し、「前記基準となる作動状態と吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の最新の作動状態とのずれ」に基づいて、前記マップに記憶されている体積効率補正係数を「補正」するものといえるものではないから、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、本願の出願前の周知技術であったというべき証拠も無く、当業者が適宜決定し得た設計的な事項であるともいえない。
そして、本願発明1は、
「前記内燃機関の吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態を可変制御する可変動弁制御部と、前記機関吸気量と前記内燃機関のシリンダに吸入される空気量であるシリンダ吸気量とを関連付ける体積効率補正係数を算出する体積効率補正係数算出部と、前記機関吸気量および前記体積効率補正係数に基づいて、前記吸気管から前記シリンダ内に吸入される空気量であるシリンダ吸気量を算出するシリンダ吸気量算出部とを備え、前記体積効率補正係数算出部は、前記インテークマニホールド圧と前記エキゾーストマニホールド圧との圧力比、前記回転速度、並びに、前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態に基づいて、前記体積効率補正係数を算出し、前記体積効率補正係数算出部は、前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の基準となる作動状態における前記回転速度および前記圧力比と前記体積効率補正係数との関係を記憶したマップを保持し、前記基準となる作動状態と前記吸気バルブおよび前記排気バルブのいずれかまたは両方の最新の作動状態とのずれに基づいて、前記マップに記憶されている体積効率補正係数を補正する」という発明特定事項を備えることにより、インテークマニホールド圧とエキゾーストマニホールド圧との圧力比、内燃機関の回転速度、並びに、吸気バルブおよび排気バルブのいずれかまたは両方の作動状態に基づいて、体積効率補正係数を算出するため、過給機および吸排気VVTの搭載の有無に依存することなく、シリンダ吸気量を高精度に算出することができる(本願明細書の段落【0021】を参照。)という特有の作用効果を奏するものである。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2を参酌しても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできず、本願発明1が有する上述の作用効果を奏することはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2及び3について
本願の特許請求の範囲における請求項2及び3は、請求項1の記載を置換することなく引用するものであるから、本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2及び3は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 小括
よって、本願発明1ないし3は、原査定で引用された引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-005557